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技術 水素センサ

出願人 山里産業株式会社山口周武津典彦
発明者 山口周武津典彦木村秀雄
出願日 1999年3月26日 (21年3ヶ月経過) 出願番号 1999-085001
公開日 2000年10月6日 (19年8ヶ月経過) 公開番号 2000-275209
状態 特許登録済
技術分野 濃淡電池(酸素濃度の測定) 電気化学的な材料の調査、分析
主要キーワード ガス導入チューブ ファラデイ 発生環境 水素濃度変化 中温度域 炭化水素化合物ガス 金属酸化物半導体センサ 保護チューブ内
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図面 (11)

課題

200℃〜500℃程度の温度域における高温高圧の過酷な環境下でも正常に作動し得る水素センサを提供することを目的とする。

解決手段

金属パラジウム主体とし、被測定物質中の水素を選択透過させる測定極3を先端に設けた保護チューブ2と、この保護チューブ2の内に配設された参照極5と、前記測定極3と参照極5との間に介在するイオン伝導体6とからなる濃淡電池を備えると共に、両電極3,5間の起電力を測定する電圧計14と、ネルンストの式に基づいてこの起電力に対応する被測定物質中の水素濃度を算出する測定装置とを備えた水素センサである。

概要

背景

水、雰囲気ガス有機溶媒並びに金属中に含まれる微量の水素分子または水素原子濃度測定は、材料劣化の程度を測ったり、製造プロセスを管理する上で重要である。

例えば、(1)沸騰水型軽水炉では、炉内構造物に使用されているオーステナイト系ステンレス鋼粒界応力腐食割れ照射誘起応力腐食割れの防止を目的として、系内への水素注入が行われるが、その水素濃度が高すぎると金属材料活性溶解が起こり、これに起因する様々な問題が生じるため、その水素濃度を厳密に制御する必要がある。また、加圧水型軽水炉においても、中性子の照射により発生した水素の累積により、燃料棒を構成するジルカロイが水素腐食して燃料棒が破壊され易くなるという問題があるので、水素濃度の制御は必要である。(2)また、火力発電所発電ステムでは、発電システムの更なる効率化をめざして、水素ボイラ高温高圧化が行われており、前記と同じ材料劣化の問題が発生するので、このような過酷な環境下でも作動し得る水素センサが求められている。(3)また、水素と親和力の強い活性金属を含む溶液合金中に含まれる水素は、凝固時の欠陥低温脆性の原因となることが知られているため、脱水素処理が必要となり、同時に水素濃度を測定するプロセス監視が必要とされている。(4)そして、メタンアンモニアなどの合成プロセスにおいては、水素ガス濃度他成分ガスの影響を受けずに反応容器内で計測してプロセス監視をすることも必要となっている。

従来の水素センサとしては、例えば、特許第2813578号公報に開示されるように、非導電性基板上に非晶質のNiZrからなる金属合金膜を形成し、この金属合金膜上にパラジウム薄膜を形成した水素センサが存在するが、この種の水素センサは、室温〜150℃程度の測定温度域でしか作動しない。また、金属酸化物半導体センサー材料のSnO2をシリコーン蒸気被毒し、水素以外のガスへの感度消滅させて水素選択性を得る水素センサなども知られているが、測定温度域は、室温〜200℃程度である。

また、高温度域で実用化されている固体電解質型水素センサも知られているが、このような固体電解質型水素センサは、温度変化激しく高圧の過酷な環境下では、固体電解質水素イオンプロトン)の輸率が低下し、固体電解質がネルンスト型応答を示さなくなるためネルンストの式に基づいた濃度測定ができなくなるという問題や、炭化水素化合物ガスなどの水素以外の他成分ガスを多量に含む雰囲気下では、固体電解質が他成分ガスと反応し分解などを起こして化学的平衡状態を維持し難くなり、水素濃度の測定精度が著しく低下するという問題を有していた。

概要

200℃〜500℃程度の温度域における高温・高圧の過酷な環境下でも正常に作動し得る水素センサを提供することを目的とする。

金属パラジウム主体とし、被測定物質中の水素を選択透過させる測定極3を先端に設けた保護チューブ2と、この保護チューブ2の内に配設された参照極5と、前記測定極3と参照極5との間に介在するイオン伝導体6とからなる濃淡電池を備えると共に、両電極3,5間の起電力を測定する電圧計14と、ネルンストの式に基づいてこの起電力に対応する被測定物質中の水素濃度を算出する測定装置とを備えた水素センサである。

目的

本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、200℃〜500℃程度の中温度域における高温・高圧の過酷な環境下でも正常に作動し得る水素センサを提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
3件
牽制数
1件

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請求項1

金属パラジウム主体とし、被測定物質中の水素を選択透過させる測定極を先端に設けた本体部と、この本体部内に配設され所定の水素濃度に対応する参照電位を規定する参照極と、前記測定極と参照極間に介在し且つ両電極に接する水素イオンを含むイオン伝導体と、を備えて濃淡電池を形成すると共に、前記測定極と参照極間の起電力を測定し、ネルンストの式に基づいて該起電力に対応する被測定物質中の水素濃度を算出する測定装置を備えることを特徴とする水素センサ

請求項2

前記イオン伝導体が水酸化物イオン導電性溶融塩電解質からなる請求項1記載の水素センサ。

請求項3

前記イオン伝導体が固体電解質からなる請求項1記載の水素センサ。

請求項4

所定の水素濃度を有する試料物質と接し、該試料物質中の水素を選択透過させる参照極を備えて濃淡電池を構成した請求項1〜3の何れか1項に記載の水素センサ。

請求項5

前記試料物質として水素含有ガスを用いる請求項4記載の水素センサ。

請求項6

被測定物質中の水素を選択透過させる測定極(アノード)を先端に設けた本体部と、この本体部内に配設され水素を取り込む参照極(カソード)と、この参照極(カソード)と前記測定極(アノード)間に介在し且つ両電極に接する水素イオンを含むイオン伝導体と、前記測定極(アノード)の内部または被測定物質側の隣接領域において水素の拡散律速を起こす拡散層と、を備えると共に、前記測定極(アノード)と参照極(カソード)間に電圧印加する外部電源と、両極間の限界電流値を測定し、該限界電流値に対応する被測定物質中の水素濃度を算出する測定装置と、を備えることを特徴とする水素センサ。

請求項7

金属パラジウムを主体とした測定極(アノード)を用いる請求項6記載の水素センサ。

請求項8

前記イオン伝導体が水酸化物イオン導電性の溶融塩電解質からなる請求項6または7記載の水素センサ。

請求項9

前記イオン伝導体が固体電解質からなる請求項6または7記載の水素センサ。

請求項10

前記測定極(アノード)の周囲に、単または複数の拡散孔を有するダイアフラムもしくは被覆層を形成してなる請求項6〜9の何れか1項に記載の水素センサ。

請求項11

前記測定極(アノード)および参照極(カソード)の分極により輸送される水素を選択透過させる参照極を備えた請求項6〜10の何れか1項に記載の水素センサ。

請求項12

前記測定極(アノード)および参照極(カソード)の分極により輸送される水素と親和力のある活性金属もしくは水素吸蔵金属からなる参照極を用いた請求項6〜10の何れか1項に記載の水素センサ。

技術分野

0001

本発明は、気相、液相もしくは固相中の水素濃度を測定する水素センサに関し、特に、200℃〜500℃程度の温度域の過酷な環境においても正常に動作し得る水素センサに関するものである。

背景技術

0002

水、雰囲気ガス有機溶媒並びに金属中に含まれる微量の水素分子または水素原子濃度測定は、材料劣化の程度を測ったり、製造プロセスを管理する上で重要である。

0003

例えば、(1)沸騰水型軽水炉では、炉内構造物に使用されているオーステナイト系ステンレス鋼粒界応力腐食割れ照射誘起応力腐食割れの防止を目的として、系内への水素注入が行われるが、その水素濃度が高すぎると金属材料活性溶解が起こり、これに起因する様々な問題が生じるため、その水素濃度を厳密に制御する必要がある。また、加圧水型軽水炉においても、中性子の照射により発生した水素の累積により、燃料棒を構成するジルカロイが水素腐食して燃料棒が破壊され易くなるという問題があるので、水素濃度の制御は必要である。(2)また、火力発電所発電ステムでは、発電システムの更なる効率化をめざして、水素ボイラ高温高圧化が行われており、前記と同じ材料劣化の問題が発生するので、このような過酷な環境下でも作動し得る水素センサが求められている。(3)また、水素と親和力の強い活性金属を含む溶液合金中に含まれる水素は、凝固時の欠陥低温脆性の原因となることが知られているため、脱水素処理が必要となり、同時に水素濃度を測定するプロセス監視が必要とされている。(4)そして、メタンアンモニアなどの合成プロセスにおいては、水素ガス濃度他成分ガスの影響を受けずに反応容器内で計測してプロセス監視をすることも必要となっている。

0004

従来の水素センサとしては、例えば、特許第2813578号公報に開示されるように、非導電性基板上に非晶質のNiZrからなる金属合金膜を形成し、この金属合金膜上にパラジウム薄膜を形成した水素センサが存在するが、この種の水素センサは、室温〜150℃程度の測定温度域でしか作動しない。また、金属酸化物半導体センサー材料のSnO2をシリコーン蒸気被毒し、水素以外のガスへの感度消滅させて水素選択性を得る水素センサなども知られているが、測定温度域は、室温〜200℃程度である。

0005

また、高温度域で実用化されている固体電解質型水素センサも知られているが、このような固体電解質型水素センサは、温度変化激しく高圧の過酷な環境下では、固体電解質水素イオンプロトン)の輸率が低下し、固体電解質がネルンスト型応答を示さなくなるためネルンストの式に基づいた濃度測定ができなくなるという問題や、炭化水素化合物ガスなどの水素以外の他成分ガスを多量に含む雰囲気下では、固体電解質が他成分ガスと反応し分解などを起こして化学的平衡状態を維持し難くなり、水素濃度の測定精度が著しく低下するという問題を有していた。

発明が解決しようとする課題

0006

このように、従来の水素センサは、室温〜200℃程度の低温度域でしか作動しなかったり、固体電解質型センサのようにたとえ高温度域で作動するものでも、上述の(1),(2)に示したような過酷な環境下や、上述の(3),(4)に示したような水素以外の他成分が多量に存在する雰囲気下では、水素イオンの輸率が低下したり、他成分の影響を受けることで水素濃度を正確に測定できないという問題を有していた。

0007

本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、200℃〜500℃程度の中温度域における高温・高圧の過酷な環境下でも正常に作動し得る水素センサを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

前記目的を達成するために、本発明者らは、水素を良好に選択透過する金属パラジウムに着目して鋭意研究を行った結果、以下の発明に到達するに至った。すなわち、第1発明の濃淡電池型水素センサは、金属パラジウムを主体とし、被測定物質中の水素を選択透過させる測定極を先端に設けた本体部と、この本体部内に配設された所定の水素濃度に対応する参照電位を規定する参照極と、前記測定極と参照極間に介在し且つ両電極に接する水素イオンを含むイオン伝導体とを備えて濃淡電池を形成すると共に、前記測定極と参照極間の起電力を測定し、ネルンストの式に基づいて該起電力に対応する被測定物質中の水素濃度を算出する測定装置を備えることを特徴とするものである。

0009

ここで、前記イオン伝導体として、水酸化物イオン導電性溶融塩電解質もしくは固体電解質を用いることができる。

0010

また、前記参照極としては、所定の水素濃度を有する試料物質と接し、該試料物質中の水素を選択透過させるものを用いて濃淡電池を形成することが好ましい。このような参照極として、前記測定極と同じ金属パラジウムを用いてもよい。また、前記試料物質として、所定の水素濃度を有する水素含有ガスを用いることができる。

0011

次に、第2発明の限界電流型水素センサは、例えば金属パラジウムなどを主体とし、被測定物質中の水素を選択透過させる測定極(アノード)を先端に設けた本体部と、この本体部内に配設され水素を取り込む参照極(カソード)と、この参照極(カソード)と前記測定極(アノード)間に介在し且つ両電極に接する水素イオンを含むイオン伝導体と、前記測定極(アノード)の内部または被測定物質側の隣接領域において水素の拡散律速を起こす拡散層とを備えると共に、前記測定極(アノード)と参照極(カソード)間に電圧印加する外部電源と、両極間の限界電流値を測定し、該限界電流値に対応する被測定物質中の水素濃度を算出する測定装置とを備えることを特徴とするものである。

0012

ここで、前記イオン伝導体として、水酸化物イオン導電性の溶融塩電解質もしくは固体電解質を用いることができる。

0013

また、水素の拡散律速を制御したい場合は、前記測定極(アノード)の周囲に、単または複数の拡散孔を有するダイアフラムもしくは被覆層を形成することが好ましい。

0014

また、前記測定極(アノード)および参照極(カソード)の分極により輸送される水素を参照極表面から除くために、参照極(カソード)として、金属パラジウムなどの水素選択性透過材料を用いたり、水素と親和力のある活性金属もしくは水素吸蔵金属を用いることが望ましい。

発明を実施するための最良の形態

0015

以下に、本発明に係る水素センサの種々の実施形態について図面を参照しながら説明する。

0016

図1は、本発明に係る濃淡電池型水素センサの一実施例を示す概略断面図である。本実施例の水素センサ1は、高温・高圧下でも十分な強度と安定性を有するステンレス材料などからなる保護チューブ(本体部)2と、この保護チューブ(本体部)2の一端を封止する金属パラジウムを主体とした水素選択透過膜の測定極3と、この保護チューブ2の内部に同軸状に配設されたガス流通チューブ4と、このガス流通チューブ4の一端を封止する金属パラジウムを主体とした水素選択透過膜の参照極5とを備えると共に、測定極3と参照極5との間に介在し且つ両電極3,5に接する水酸化物イオン導電性の溶融塩電解質6を備えて構成されている。尚、前記測定極3の厚みは、被測定物質の水素濃度変化に素早く応答するため充分に薄く設定し、特に1mm以下であることが好ましい。

0017

また、ガス流通チューブ4には、所定の水素濃度を有する参照ガスを導入し参照極5に接触させるガス導入チューブ7が配設され、導入した参照ガスを流通させるためのガス排出孔8が設けられている。ガス流通チューブ4の他端は、外気などが参照ガスと接触しないように封止部材9で封止されており、保護チューブ2の他端も、溶融塩電解質6が外気と触れて外気中の炭酸ガスと反応し固体炭酸塩となることなどを防ぐべく、封止部材10で封止されている。また、保護チューブ2およびガス流通チューブ4からは、それぞれリード線11,12が導出されおり、測定極3および参照極5と電気的に接続している。そして、ガス流通チューブ4と保護チューブ2との間には、両者の電気的接触を避けるべく絶縁体スペーサー13を介在させている。尚、本実施例では、測定極3と参照極5は、それぞれコンプレッション治具15,16を用いて保護チューブ2とガス流通チューブ4に気密状態圧接されているが、この代わりに溶接により接合されてもよい。また、このような水素センサ1は、その測定極3の表面が被測定物質に曝されるようにフランジなどを用いて固定される。

0018

前記水酸化物イオン導電性の電解質6には、NaOH−KOH混合溶融塩を用いる。この溶融塩系は、共晶温度が約170℃であり、この温度以上で溶融塩電解質となり高いイオン導電性を示すことが知られている。よって、従来の固体電解質型水素センサでは困難であった約200℃以上の低温域で作動する水素センサを得ることが可能となる。尚、前記の溶融塩電解質を用いる代わりに、InをドープしたCaZrO3,GdをドープしたBaCeO3,アンチモン酸ウラニル酸,ヒドロニウム型β−アルミナなどの固体電解質を用いてもよい。このような溶融塩電解質6や固体電解質は、測定極3と保護チューブ2により被測定物質と反応し変質しないように保護されるので、従来の固体電解質型水素センサの固体電解質が変質するような過酷な環境下でも水素濃度を正確に測定できる信頼性の高い水素センサを得ることが可能となる。

0019

また、前記リード線11,12は電圧計14と接続している。後述するように、測定極3の表面が被測定物質に曝されているとき、この電圧計14によって両電極間生起する起電力が測定され、この起電力に基づいて被測定物質中の水素濃度が算出される。

0020

このような水素センサ1の濃淡電池の式は、参照ガス(Ar−1体積%H2)|参照極(Pd膜)|溶融塩電解質(KOH−NaOH)|測定極(Pd膜)|被測定物質、となる。参照ガスとして、Arガス中に1体積%の水素ガスを含有した混合ガスを用いた。また、測定極3に金属パラジウムからなる水素選択透過膜を用いているので、この測定極3と被測定物質中の水素との間に水素のみに関する部分平衡を起こすことができる。よって、水素以外の他成分や、副次的な電極反応により発生する他成分が、水素に関する部分平衡に影響を与えることが無くなる。このように水素に関する部分平衡が成立溶融電解質両端の水素ポテンシャルが定まるので、濃淡電池の原理により、この電池理論起電力は、E=−K ln(P1/P2),K=RT/(2F)のネルンストの式で表すことができる。式中、E:起電力、P1:測定物質(ガス)中の水素分圧、P2:参照ガス中の水素分圧、R:気体定数、T:絶対温度、F:ファラデイ定数である。

0021

ここで、P2は一定であるから、絶対温度(T)と起電力(E)を測定することで、被測定物質中の水素分圧(P1)を算出できる。本実施例のように被測定物質がガスの場合、水素分圧(P1)を知れば、予め作成した検量線を用いて水素ガス濃度を算出できるのである。

0022

尚、被測定物質には上記のガス以外にも液体固体が適用できる。このとき、水素が原子状で溶解している場合は、ジーベルツの法則により、P1=KCH1/2(K:定数,CH:水素原子の濃度)の関係式代入し、水素が分子状で溶解している場合は、P1=K'CH2(K':定数,CH2:水素分子の濃度)の関係式を代入することにより、被測定物質に溶解している水素原子または水素原子の濃度を測定できる。

0023

以上の濃淡電池型水素センサ1の測定性能を調べるために、試験環境を設定した。図2は、この試験環境を示す概略説明図である。上記濃淡電池型水素センサ1は、電気炉20に配設したガラスチューブ21の中に設置された。また、ガラスチューブ21の中には、被測定物質のガス(ArとH2の混合ガス)を流入孔21aから流入させ、排出孔21bから流出させた。この流通ガス中の水素ガス濃度と温度を変化させたとき、測定極3と参照極5との間に生ずる起電力を測定しその応答特性を調べた。この測定結果を、図3図5に示す。

0024

図3は、400℃の環境下で、流通ガスの水素濃度を変化させたときの起電力の経時変化を示すグラフである。同図において曲線に付した数字は、水素濃度(体積%)を示している。この図から分かるように、水素濃度の変化に対する起電力の応答速度は速く、本実施例の濃淡電池型水素センサ1の応答性の良さを示している。

0025

また、図4は、400℃の環境下における水素分圧(P1)と起電力(E)との対応関係を示すグラフである。この図から分かるように、測定点は、広い水素濃度範囲(0.01〜100体積%)で最小自乗法により作成した直線30の近辺に高い相関性をもって分布し、よって上記ネルンストの式が成立することが確認された。実際の水素濃度測定では、このような濃度と起電力との関係を示す検量線を予め作成しておくことにより、測定電圧から水素分圧ひいては水素濃度が測定される。

0026

そして、図5は、被測定ガスが、室温(約30℃)の環境下で飽和水蒸気を含む場合、含まない場合の水素濃度と起電力との対応関係を示すグラフである。この図に示すように、飽和水蒸気(酸素)を含む場合と飽和水蒸気(酸素)を含まない場合の両者の測定点は、誤差範囲内で、最小自乗法で作成した直線31の近辺に高い相関性をもって分布しており、他成分である水蒸気や酸素の影響を受けることなく、水素に関する部分平衡が成立していることが確認された。測定極3を酸素が透過する場合の起電力と、水素のみが透過する場合の起電力とは大きく異なることが理論的に示されている(例えば、文献「Carl Wagner; Advances inElectrochemistry and Electrochemical Engineering, Vol.4, ( INTERSCIENCE, NY ) 1966, p.1」を参照)。従って、本実施例の濃淡電池型水素センサ1は、水素以外の他成分と水素とが混在する環境下においても、水素のみの濃度測定を高精度で行うことが可能であることが確認された。

0027

以上、濃淡電池型水素センサの一実施例について説明したが、本発明においては、使用環境や温度・圧力条件などにより、種々の変形例をとることができる。例えば、上記保護チューブ2と溶融塩電解質6との反応を抑制し、センサの長寿命化を図るため、当該保護チューブ内面にPd,Auなどをコーティングしてもよい。

0028

また、上記実施例では、参照極5に金属パラジウムからなる水素選択透過膜を用い、この水素選択透過膜に接する参照ガスを常に供給する必要があった。そこで、参照ガスを不要にするため、参照極における水素ポテンシャルが一定つまり水素の平衡分圧を一定に保つことが可能な固体や固体−液体の参照極を採用できる。このような参照極には、上記イオン伝導体と反応して一定の水素ポテンシャルを発生させるが、副次的な反応を生じさせないものが好ましい。例えば、上記溶融塩電解質にNaOH−KOH系溶融塩を用いる場合、Pd+PdO(+H2O)系固体からなる参照極が挙げられる。これは、Pd+H2O(ガス)=PdO+H2(ガス)という化学平衡を利用するものであり、保護チューブと参照極との間の空間の水蒸気分圧を一定に保つことにより、参照極における一定の水素ポテンシャルを可能にするものである。

0029

また、他の例として、上記イオン伝導体に(NaOH−KOH)(液体)+KOH(固体)の固液共存電解質を用いる場合、参照極としてPd(固体)+PdO(固体)+M2O3+K2M2O4(固体)(M:金属元素)が挙げられる。例えば金属元素(M)が鉄の場合、参照極は、Pd(固体)+PdO(固体)+Fe2O3+K2Fe2O4(固体)となる。これは、2KOH(固体)+M2O3(固体)+Pd(固体)=PdO(固体)+K2M2O4(固体)+H2(ガス)という化学平衡を利用して、参照極における一定の水素ポテンシャルを可能とするものである。

0030

次に、本発明に係る他の実施形態について説明する。図6は、本発明に係る限界電流型水素センサの一実施例を示す概略断面図である。尚、上記の濃淡電池型水素センサ1と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。

0031

本実施例の限界電流型水素センサ40は、保護チューブ2と、この保護チューブ2の一端を封止する金属パラジウムを主体とした水素選択透過膜の測定極(アノード)3'と、この保護チューブ2の内部に同軸状に配設されたガス流通チューブ4と、このガス流通チューブ4の一端を封止する水素選択透過膜の参照極(カソード)5'と、前記測定極(アノード)3'と参照極(カソード)5'との間に介在し且つ両極3',5'に接する水酸化物イオン導電性の溶融塩電解質6とを備える共に、前記測定極(アノード)3'と参照極(カソード)5'との間に外部電圧を印加するためにリード線11,12に接続された外部電源41と、両電極間の電流量を測定する電流計42とを備えて構成されている。尚、前記溶融塩電解質6の代わりに、上記した固体電解質を用いてもよい。

0032

また、前記ガス流通チューブ4の内部にはガス導入チューブ7が配設されているが、このガス導入チューブ7のガス導入孔7aから導入する流通ガスは、ArガスやArと酸素を含む混合ガスなどである。アノード(測定極)3'を正に、カソード(参照極)5'を負となすように外部電源41を用いて直流電圧を印加すると、両電極が分極し、溶融塩電解質6の中をアノード3'側からカソード5'側へ水素が輸送され、この輸送された水素は水素選択透過性のカソード5'を透過する。前記の流通ガスは、この透過水素を系外へ運び去る役目を果たすものである。尚、流通ガスに代わるものとして、カソード(参照極)にチタンなどの水素と親和力の強い活性金属や、LaNi5などの水素吸蔵合金などを用いることができる。この場合、これら活性金属や水素吸蔵合金と溶融塩電解質6(または固体電解質)とが反応するのを避けるため、水素透過性の良好なパラジウムなどを参照極表面にコーティングすることが好ましい。

0033

本実施例の限界電流型水素センサ40の構成は、流通ガス|カソード(Pd膜)|溶融塩電解質(KOH−NaOH)|アノード(Pd膜)|拡散層|被測定物質、で表現される。この拡散層は、被測定物質中の水素を拡散律速させ、限界電流を生ぜしめるものであり、アノード3'の内部または被測定物質側の隣接領域に形成されるものである。尚、良好な水素の拡散律速過程を得るため、アノード3'の厚みは、当該アノード(測定極)の水素透過率に依って最適値となるように適宜調整されるが、本実施例の場合は1mm〜10mm程度が好適であった。そして、アノード3'を正に、カソード5'を負となすように直流電圧を印加し、アノード3'側からカソード5'側へ水素が輸送されるように分極させる。このとき、被測定物質中の水素は拡散層において拡散律速し、印加電圧に依存しない限界電流が発生する。また、この限界電流値は被測定物質中の水素濃度に比例し、この水素濃度は、ジーベルツの法則により水素分圧の1/2乗に比例する。以上の原理に従って、予め作成した検量線を利用し、測定した限界電流値に基づいて被測定物質中の溶解水素濃度を算出できる。

0034

次に、本実施例の限界電流型水素センサ40の測定性能を調べるために、図2と同じ試験環境を設定した。そして、アノード(測定極)3'とカソード(参照極)5'との間に直流電圧を印加し、被測定物質中の水素濃度と温度を変化させたとき、両極3',5'間に流れる限界電流量を測定しその応答特性を調べた。この結果を、図7〜10に示す。

0035

図7は、400℃の環境下で被測定物質中の水素濃度を変化させたとき、印加電圧と電流値との対応関係を示すグラフである。各曲線の下に付した数字は、水素濃度(体積%)を示す。この図より、水素濃度に対応した限界電流43,44,45,46が発生し、本実施例の限界電流型水素センサ40が機能していることが示された。

0036

また、図8は、400℃と300℃の各環境における被測定物質中の水素分圧と限界電流との対応関係を示すグラフである。400℃の環境下で電極3',5'間に800mV,1000mV,1200mVの各電圧を印加したときの測定点は、水素分圧の1/2乗に略比例しており、最小自乗法により作成した直線47の近辺に高い相関性をもって分布している。また、300℃の環境下で電極3',5'間に1200mVの電圧を印加したときの測定点も、水素分圧の1/2乗に略比例しており、最小自乗法により作成した直線48の近辺に高い相関性をもって分布している。実際の水素濃度測定では、このような検量線を予め作成しておくことにより、測定した限界電流値から水素濃度が測定される。

0037

そして、図9は、400℃の環境下で電極3',5'間に1000mVの電圧を印加し、被測定物質の水素濃度を変化させたときの限界電流値の経時変化を示すグラフである。同図において曲線に付した数字は、水素濃度(体積%)を示す。この図より、限界電流は水素濃度の変化に対応して素早く変化し、十分な応答速度を示していることが分かる。

0038

ところで、被測定物質中の溶解水素の濃度が高すぎると、上記拡散層において水素の拡散律速とすることが困難である場合がある。このような場合には、上記測定極3'として、金属パラジウムに透過水素をトラップするニッケルや銀などの金属元素を添加した合金を用いることが好ましい。その添加元素を選択し添加量を調整することで、測定極の透過水素量を調整できるため、透過水素の拡散律速を容易に起こすことが可能となる。

0039

また、上記限界電流型水素センサ40は、配管内腔から透過する水素のモニターとして用いることができる。例えば、ステンレス製の配管は、その結晶粒界を通して透過する水素を拡散律速させる性質を有することが知られている。この性質を利用して、上記水素選択透過性のアノード(測定極)3'を当該配管表面に接触させ、配管からの透過水素をアノード(測定極)3'に透過させて、限界電流を測定し、水素濃度を算出することができる。これにより、配管の内腔を流れる流体の状態を監視したり、配管の劣化の程度を推し量ることができる。

0040

また、図10に示すように、水素の拡散律速過程を安定にするために、上記測定極3'の周りに拡散孔50aを備えたダイアフラム50を設けることも効果的である。この拡散孔の径と長さを適宜調整することにより、水素の拡散律速を制御し限界電流の発生環境をつくることが可能になる。また、このダイアフラム50の代わりに、上記アノード(測定極)3'の表面に、多孔質性焼結体などからなる被覆層を設けても、同様の効果を得ることができる。このようなダイアフラム50や被覆層を設けた水素センサは、高温熱水中にわずかに溶解した水素分子や、金属溶体中にわずかに溶解した水素原子の濃度検出に好適に用いられる。

発明の効果

0041

以上、本発明の濃淡電池型水素センサは、金属パラジウムを主体とし被測定物質中の水素を選択透過させる測定極を先端に設けた本体部と、この本体部内に配設され参照電位を規定する参照極と、前記測定極と参照極間に介在する水素イオンを含むイオン伝導体とを備えるものであるから、(1)特にイオン伝導体に溶融塩電解質を用いることで従来の化学電池型センサでは困難であった200℃〜600℃の中温度域において正常に作動し、(2)また、本体部先端に設けた水素選択性の測定極の存在によりイオン伝導体が被測定物質から保護されるため、イオン伝導体の変質が防止され、よってセンサの性能低下が防止されると共にイオン伝導体の選択の幅を広げることができ、(3)更に、測定極と参照極間に生ずる起電力の信号出力を得て連続測定ができることから、(4)高温熱水や石油改質プロセスなどの過酷な環境下(高温・高圧)でも水素濃度を高精度に測定することが可能となる。

0042

また、本発明の限界電流型水素センサは、被測定物質中の水素を選択透過させる測定極(アノード)を先端に設けた本体部と、この本体部内に配設され水素を取り込む参照極(カソード)と、該参照極(カソード)と前記測定極(アノード)間に介在する水素イオンを含むイオン伝導体と、前記測定極(アノード)の内部または被測定物質側の隣接領域において水素の拡散律速を起こす拡散層と、両極間に電圧を印加する外部電源とを備えるものであるから、前記(1)および(2)と同様の効果を得ると共に、(5)測定極(アノード)と参照極(カソード)間に生ずる限界電流の信号出力を得て連続測定できることから、前記(4)と同様に過酷な環境下(高温・高圧)でも水素濃度を高精度に測定することが可能となる。

0043

また、前記測定極(アノード)の周囲に、単または複数の拡散孔を有するダイアフラムもしくは被覆層を形成することにより、水素の拡散律速を制御し限界電流の発生環境を容易につくることが可能となり、例えば、高温熱水中にわずかに溶解した水素分子や、金属溶体中にわずかに溶解した水素原子の濃度検出を高精度に行うことが可能となる。

図面の簡単な説明

0044

図1本発明に係る濃淡電池型水素センサの一実施例を示す概略断面図である。
図2本発明に係る濃淡電池型水素センサの試験環境を示す概略図である。
図3本発明に係る濃淡電池型水素センサの応答特性を示すグラフである。
図4起電力と水素濃度との対応関係を示すグラフである。
図5水素に関する部分平衡を説明するためのグラフである。
図6本発明に係る限界電流型水素センサの一実施例を示す概略断面図である。
図7本発明に係る限界電流型水素センサの限界電流特性を示すグラフである。
図8限界電流と水素分圧との対応関係を示すグラフである。
図9本発明に係る限界電流型水素センサの応答特性を示すグラフである。
図10本発明に係る限界電流型水素センサの測定極(アノード)の周囲に拡散孔を有するダイアフラムを設けた状態を示す概略断面図である。

--

0045

1濃淡電池型水素センサ2保護チューブ(本体部)
3測定極3'アノード
4ガス流通チューブ5参照極
5'カソード6溶融塩電解質
7ガス導入チューブ7aガス導入孔
8ガス排出孔9封止部材
10 封止部材 11,12リード線
13スペーサー14電圧計
15,16コンプレッション式治具20電気炉
21ガラスチューブ21aガス流入孔
21b ガス排出孔 30 直線
31 直線 40限界電流型水素センサ
41外部電源42電流計
43,44,45,46 限界電流 47 直線
50ダイアフラム50a 拡散孔

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