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技術 耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼及びその製造方法

出願人 新日鐵住金株式会社
発明者 植森龍治間渕秀里冨田幸男
出願日 1999年1月21日 (21年11ヶ月経過) 出願番号 1999-013501
公開日 2000年8月2日 (20年4ヶ月経過) 公開番号 2000-212705
状態 未査定
技術分野 磁性鉄合金の熱処理
主要キーワード 脆性特性 恒温加 化学反応容器 最大添加量 後焼き 焼き入れ前 粒界偏析量 限定条件
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (3)

課題

耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼を提供する。

解決手段

重量%にて、C:0.05〜0.4%、Si:0.02〜0.6%,Mn:0.02〜2.0%、Mo:0.02〜3.0%、Cr:0.01〜5.0%、Ni:3.0〜10.0%、P:0.001〜0.03%、S:0.0005〜0.03%、N:0.001〜0.015%を基本成分とし、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼において、粒界Al量が0.6%以上ないしは粒界での{Al−(Si+Mn+Cr)}量が−3%以上の値、あるいは粒界の(Si+Mn+Cr)量が3.5%以下であることを特徴とする耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼。さらに必要に応じてCu,Nb,V,Ti,Bの1種または2種以上を含有することを特徴とする。

概要

背景

近年科学技術の進歩に伴い、化学反応容器等は次第に大型化される傾向にあり、又使用される鋼材の環境もますます苛酷なものとなり、これら鋼材に対して要求される材質は必然的に高度な要求が強く、就中焼き戻し脆性及び水素脆性に対する要求は、鋼材の厚肉化に伴う溶接後熱処理応力除去焼鈍)の長時間化、使用温度高温化により、極めて厳しくその対策が困難になっているのが実状である。

概要

耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼を提供する。

重量%にて、C:0.05〜0.4%、Si:0.02〜0.6%,Mn:0.02〜2.0%、Mo:0.02〜3.0%、Cr:0.01〜5.0%、Ni:3.0〜10.0%、P:0.001〜0.03%、S:0.0005〜0.03%、N:0.001〜0.015%を基本成分とし、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼において、粒界Al量が0.6%以上ないしは粒界での{Al−(Si+Mn+Cr)}量が−3%以上の値、あるいは粒界の(Si+Mn+Cr)量が3.5%以下であることを特徴とする耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼。さらに必要に応じてCu,Nb,V,Ti,Bの1種または2種以上を含有することを特徴とする。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

重量%にて、C :0.05〜0.4%、Si:0.02〜0.6%、Mn:0.02〜2.0%、Mo:0.02〜3.0%、Cr:0.01〜5.0%、Ni:3.0〜10.0%、P :0.001〜0.03%、S :0.0005〜0.03%、N :0.001〜0.015%を基本成分とし、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼において、旧オーステナイト粒界のAl量が0.6〜5.0%の値を有することを特徴とする耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼

請求項2

重量%にて、C :0.05〜0.4%、Si:0.02〜0.6%、Mn:0.02〜2.0%、Mo:0.02〜3.0%、Cr:0.01〜5.0%、Ni:3.0〜10.0%、P :0.001〜0.03%、S :0.0005〜0.03%、N :0.001〜0.015%を基本成分とし、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼において、旧オーステナイト粒界の(Si+Mn+Cr)量が0.05〜3.5%の値を有することを特徴とする耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼。

請求項3

重量%にて、C :0.05〜0.4%、Si:0.02〜0.6%、Mn:0.02〜2.0%、Mo:0.02〜3.0%、Cr:0.01〜5.0%、Ni:3.0〜10.0%、P :0.001〜0.03%、S :0.0005〜0.03%、N :0.001〜0.015%を基本成分とし、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼において、旧オーステナイト粒界の{Al−(Si+Mn+Cr)}量が−3.0〜4.0%の値を有することを特徴とする耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼。

請求項4

重量%にて、さらにCu:0.01〜0.5%、Nb:0.001〜0.2%、V :0.001〜0.2%、Ti:0.001〜0.2%、B :0.0001〜0.02%の一種又は二種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼。

請求項5

請求項1〜4のいずれか1項に記載の化学成分を有する鋼塊をAr3変態点以上に加熱後焼き入れし、さらにAc1以下の温度で焼き戻し処理をすることを特徴とする耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼に関するものであり、詳しくは圧延又は鍛造材等によって製造される低合金鋼で、鋼材加工時溶接後熱処理(又は応力除去焼鈍)又は高温使用に供されるNi系調質鋼に関する。

背景技術

0002

近年科学技術の進歩に伴い、化学反応容器等は次第に大型化される傾向にあり、又使用される鋼材の環境もますます苛酷なものとなり、これら鋼材に対して要求される材質は必然的に高度な要求が強く、就中焼き戻し脆性及び水素脆性に対する要求は、鋼材の厚肉化に伴う溶接後熱処理(応力除去焼鈍)の長時間化、使用温度の高温化により、極めて厳しくその対策が困難になっているのが実状である。

発明が解決しようとする課題

0003

焼き戻し脆性は古くより膨大な研究がなされてきており、その主因が鋼中の不純物元素または合金元素旧オーステナイト粒界への偏析であることは良く知られている。また、水素脆性もPやMn等の粒界脆化元素量に敏感であることから詳細が不明にも関わらず、粒界偏析帰着した現象と考えられている。従って、耐焼き戻し脆性ないしは耐水素脆性を鋼材に付与するためには粒界脆化元素を極力低減することが従来技術の基本であり、偏析量の低減に工夫がなされてきた。

0004

しかしながら、未だに抜本的な方法は確立しておらず、上述したようにその対策は厳しいものになっている。したがって、本発明では実用鋼として広く使用されているNi鋼に着目し、その耐粒界脆化特性を向上させることを目的としている。

課題を解決するための手段

0005

本発明者等は、Ni系調質鋼の焼き戻し脆性及び水素脆性について詳細に鋭意検討した結果、本発明をなすに至った。その特徴は次の通りである。
(1)重量%にて、
C :0.05〜0.4%、 Si:0.02〜0.6%、
Mn:0.02〜2.0%、 Mo:0.02〜3.0%、
Cr:0.01〜5.0%、 Ni:3.0〜10.0%、
P :0.001〜0.03%、S :0.0005〜0.03%、
N :0.001〜0.015%
を基本成分とし、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼において、旧オーステナイト粒界のAl量が0.6〜5.0%の値を有することを特徴とする耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼。
(2)重量%にて、
C :0.05〜0.4%、 Si:0.02〜0.6%、
Mn:0.02〜2.0%、 Mo:0.02〜3.0%、
Cr:0.01〜5.0%、 Ni:3.0〜10.0%、
P :0.001〜0.03%、S :0.0005〜0.03%、
N :0.001〜0.015%
を基本成分とし、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼において、旧オーステナイト粒界の(Si+Mn+Cr)量が0.05〜3.5%の値を有することを特徴とする耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼。

0006

(3)重量%にて、
C :0.05〜0.4%、 Si:0.02〜0.6%、
Mn:0.02〜2.0%、 Mo:0.02〜3.0%、
Cr:0.01〜5.0%、 Ni:3.0〜10.0%、
P :0.001〜0.03%、S :0.0005〜0.03%、
N :0.001〜0.015%
を基本成分とし、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼において、旧オーステナイト粒界の{Al−(Si+Mn+Cr)}量が−3.0〜4.0%の値を有することを特徴とする耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼。
(4)重量%にて、さらに
Cu:0.01%〜0.5%、 Nb:0.001%〜0.2%、
V :0.001%〜0.2%、Ti:0.001%〜0.2%、
B :0.0001%〜0.02%
一種又は二種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼。

0007

(5)前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の化学成分を有する鋼塊をAr3変態点以上に加熱後焼き入れし、さらにAc1以下の温度で焼き戻し処理をすることを特徴とする耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性に優れたNi系調質鋼の製造方法。

発明を実施するための最良の形態

0008

本発明は、Ni系調質鋼の耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性を改善するために、鋼中の旧オーステナイト粒界におけるAl量を0.6%以上確保することにより脆化を抑制せしめることにある。あるいは粒界Al量を確保することにより、主要な脆化元素である(Si+Mn+Cr)を低減させ、脆化を抑制するものである。

0009

一般に、鋼中にはAlが含有されているのが普通であり、この含有量を多くすることあるいはNとの結合が強いことからAlNを形成させないことにより十分な固溶Alを含有せしめることにより、旧オーステナイト粒界にAlが偏析し、P,Sb,As等の不純物元素の粒界偏析量が減少し、かつNi鋼で有害とされているSi、Mn、Crのような合金元素の粒界偏析も抑制されることになり、その結果Ni調質鋼の焼き戻し脆性を著しく改善せしめることになる。

0010

通常低合金鋼の焼き戻し脆性は、鋼材の加工又は溶接後における長時間の熱処理(応力除去焼鈍、溶接後熱処理)時、又は高温における使用時、更には圧力容器等をシャットダウンする際の徐冷時に、鋼中の粒界が持つエネルギー又は鋼中の元素間に働く相互作用斥力)によって、旧オーステナイト粒界にP,Sb,As,Si,Mn及びCr等の不純物又は合金元素が偏析して粒界の結合エネルギーを弱める結果、脆化が進行するものである。

0011

また、脆化度を表す指数としては、加速脆化熱処理とステップクーリング前後における50%延性脆性破面遷移温度FATT)の差ΔFATT、又は400〜500℃における長時間(1000時間内外)の恒温加熱処理前後におけるFATTの差ΔFATTが使われる。

0012

本発明者は、Ni系調質鋼の焼き戻し脆性及び水素脆性について仔細に研究した結果、次式で定義される固溶Alを0.15%以上含有せしめることにより、Ni系調質鋼の耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性を著しく改善できることが明らかになった。
固溶Al=Sol.Al−2N
ここで、Sol.Al;酸可溶Al、N;鋼中Nである。
溶Al量が多いほどその効果が大きい理由は、平衡偏析理論によると固溶Alが大きいほど粒界偏析Al量が多くなり、これにより耐脆化特性が向上するためである。

0013

さて、鋼中Nレベルは、鋼の溶製法平炉電気炉転炉)、脱酸レベル、溶鋼注入及び造塊法によって大きく変動するものであり、単にAl含有量の制御だけでは、該鋼の耐焼き戻し脆性および耐水素脆性の改善は望めない。即ち、本発明が対象とするようなNi調質鋼では、種々の熱処理が加えられるのが普通であり、溶体化処理後の圧延、又は鍛造引き続く熱処理(焼準焼鈍焼き入れ等)時の再加熱過程フェライト高温域)において、鋼中のAlとNとは結合し、AlNとして析出するため鋼中の固溶Al量は減少する。

0014

従って、単なる鋼中の固溶Al量の制御だけでは、その効果はバラツキが大きく、鋼中Nとの関連において、前述のように定義された固溶Al量0.15%以上固溶せしめることが必要であり、この確保により粒界偏析Al量が増大し、耐焼き戻し脆性および耐水素脆性が著しく改善できる。

0015

図1は、本発明者が得たΔFATTと粒界偏析Al量の関係を模式的に示したものであり、粒界Al量が増大するに従ってΔFATTが小さくなっていることが判る。また、粒界Al量だけでなく(Si+Cr+Mn)量あるいは[ Al−( Si+Cr+Mn)}量を横軸にとった場合にも、図2図3の様に良い相関が認められる。この場合はSi、Cr、Mnが脆化元素であることから、(Si+Cr+Mn)の値が小さい時にΔFATTが小さくなっている。

0016

本発明では、ΔFATTとして100を基準にとり、これ以下では十分な脆化特性を有しているものとして、Al量が0.6(重量%)、{Al−(Si+Cr+Mn)}量が−3%を粒界脆化を抑制できる下限値として評価した。また、(Si+Cr+Mn)量が3.5%を粒界脆化を抑制できる上限値として評価した。なお、いずれの値も固溶Al量の影響を受け、さらに粒界の偏析サイト有限であることから、Alの粒界偏析量の上限値によって(Si+Cr+Mn)量の下限値と{Al−(Si+Cr+Mn)}量の上限値は自ずと規定されることになる。

0017

本発明では、種々の成分を有するNi鋼により粒界Al量を実験的に測定した結果、粒界偏析Al量はバルクAl量に従って増加するがほぼ5%で飽和することから、粒界偏析Alの上限値を5.0%に規定した。その結果、(Si+Cr+Mn)量の下限値と{Al−(Si+Cr+Mn)}量の上限値もそれぞれ0.05%、4.0%になることが実験的に判明した。それぞれの粒界偏析量が以上の範囲内である場合には、Ni系調質鋼の耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性は飛躍的に向上する。

0018

以下に、これ以外の合金元素の限定条件に付いて説明する。合金元素の含有量は全て重量%である。Cは0.4%を超えると低温靱性及び溶接性を著しく損ない、0.05%未満では必要な強度が確保できないため0.05〜0.4%と限定した。

0019

Si及びMnは、焼き戻し脆性が(Si+Mn)%に比例して悪化するため低い程好ましいが、製鋼上0.02%以上は必要であり、また強度を確保するためにも更に0.02%以上添加される。しかし、0.6%超のSi及び2%超のMnは低温靱性、溶接性をともに阻害することから、Siは0.02〜0.6%、Mnは0.02〜2%に限定することが好ましい。

0020

Moは耐焼き戻し脆化及び耐水素脆化特性を向上させるために0.02%以上とし、3%を超えると低温靱性、溶接性を著しく阻害するため3%以下に限定され、更に経済性の点から1%以下が好ましい。

0021

Crは高温強度及びハイドロジェンアタックの観点からは溶接性を阻害しない5%以下に限定するが、Si、Mnが共存すると図2で説明した様に著しく焼き戻し脆性を助長するためには1%以下にすることが好ましい。しかし、0.01%未満では十分な高温強度向上の効果が認められないことから、その下限を0.01%と限定した。

0022

Niは低温靱性を改善する主要元素であり、その効果を発揮させるためには3%以上必要であり、10%を超えて添加しても強度、低温靱性が向上しないため、3〜10%に限定する。

0023

Pは不純物元素で粒界破壊を生じやすくするため、低いほうが好ましい。0.03%超含有すると粒界破壊による靱性低下が顕著となるので、上限値を0.03%とした。また、下限値はコスト高になることを考慮して0.001%にした。

0024

SはMnSを生成して延性、特に、板厚方向の伸びを低下させる上に、疲労破壊の起点となって疲労強度のバラツキを大きくするので、低いほうが好ましい。0.03%超含有するとこの影響が顕著となるので、上限値を0.03%とした。下限値はPの場合と同様な理由から0.0005%にした。

0025

Nは0.015%超含有すると、母相中に固溶して靱性低下を来す。従って、上限値を0.015%とした。下限値はPやSと同様にコスト高になることを考慮して0.001%にした。

0026

なお、C,Si,Mn,Cr,Mo及びNiの含有量は、所定の強度及び用途の特性から上記成分範囲内で適宜組み合わされることは言うまでもない。また、上記成分の鋼に、他の合金元素(Cu,Nb,V,Ti,B等)を一種乃至二種以上複合して含有させても、本発明の効果はいささかも損なわれない。

0027

従って、Cu,Nb,V,Ti,Bの一種又は二種以上を溶接性の観点からC,Cr,Mo等を減少した場合や、焼き戻し脆性と水素脆性の観点からSi,Mnを減少した場合に所定の強度を得るために適宜選定して添加するものである。この場合、これら元素の最大添加量は良好な溶接性及び靱性の両面を確保するためには、Cu,Nb,V,Ti,Bはそれぞれ0.5%、0.2%、0.2%、0.2%、0.02%が限界であり、一方添加量としてCuが0.01%、Nb、V及びTiが0.001%、Bが0.0001%未満では所定の強度上昇が望めないため、これらの値以上の添加が必要である。

0028

なお、長時間の溶接後熱処理又は高温使用に供される低合金鋼の水素脆性は、粒界における不純物の偏析と水素との複合作用によるものであるから、本発明によるNi系調質鋼は耐焼き戻し脆性特性のみでなく、優れた耐水素脆性も有することは明白である。

0029

次に、本発明では焼き戻し脆性および水素脆性特性の改善を図るために行う熱処理条件を限定した理由について説明する。まず、焼き入れ前の温度をAc3以上に限定した理由は、母材組織マルテンサイト主体にし、十分な母材強度を得るための下限温度であり、これ以下では十分な固溶Al量も確保されず、本発明の効果が十分に反映されない。また、焼き戻し温度の下限をAc1以上に限定した理由は、十分な靭性を得るためである。

0030

なお、熱処理法としては、ここに示した焼き入れ・焼き戻し(Quench−Temper:QT)だけでなく、Qを繰り返すQQT処理、圧延後の直接焼き入れDQ+QT[DQQT処理]、QT間でAc1〜Ac3での加熱後焼き入れ処理(L処理)を行う[DQLT処理]等も有効である。さらに、大型化学反応容器用等のNi鋼では従来利用されている焼ならし+焼き戻し[NT処理]も利用できることは容易に類推できる。

0031

(実施例1)本発明のNi系調質鋼A,B,C,D,E,Fと、比較鋼G,H,Iを表1(表1−1、表1−2)に示す。これらの各鋼を50mm厚さの鋼板に圧延し、1000℃×2hrの焼き入れ及び650℃×2hrの焼き戻し[QT処理]を行い、更に各鋼の半数試験片に480℃×1000hrの恒温時効を施し、衝撃試験(JIS4号、C方向)及びWOL試験(23℃、1気圧水素中)を行った結果を併せて示す。

0032

鋼Cは比較例Gと同じレベルのSol.Alを有しているが、AlNとしての消費量が少ないCは固溶Alが多く、且つ粒界Al量が0.6%以上の値になっておりGより脆化度が著しく小さい。又、鋼Bは比較例Hと同じレベルのNを含有し、AlNとしてのSol.Alの消費量は殆ど同じであるが、添加されているSol.Alが多く、結果的に粒界Alが多くなり、Hより脆化度が少ない。

0033

また、同じ発明鋼でも、鋼A及びBは共に同レベルのNを含有しているが、固溶Al量と粒界Al量が多く、Aの方が更に優れていることが分かる。また、以上の発明鋼では、いずれも{Al−(Si+Cr+Mn)}の値が−3以上になっていることもわかる。一方、発明鋼Eは粒界Al量が少ないが、同時に(Si+Cr+Mn)量が少なく、逆にFは(Si+Cr+Mn)量が多いにも関わらず粒界Al量も顕著に多いため、いずれも耐脆化特性が優れている。

0034

以上のように0.15%以上の固溶Alがある場合には、粒界のAl量が増加し、畢竟Si、Cr、Mn等の粒界脆化元素の粒界偏析率が低下し、耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性が改善される。本発明鋼Dはバルクの(Si+Mn)量が低い場合に対応しており、粒界Al量が多いために本発明例の中でも最も脆化度が少ない。

0035

比較例Iはバルクの(Si+Mn)量が0.60%と比較的少ないが、本発明例に比べて粒界の(Si+Cr+Mn)量が多いために脆化度は大きい。即ち粒界のAl量の増加により更に耐焼き戻し脆性が改善され、(Si+Mn)の値を低減することにより、その効果を助長していることは明らかである。

0036

0037

0038

(実施例2)本発明のNi系調質鋼A、B、C、Dと比較例E、F、G、Hを表2(表2−1、表2−2)に示す。これらの各鋼を25mm厚さの鋼板に圧延し、900℃×2hrの焼き入れ及び590℃×1hrの焼き戻し[QT処理]を行った。更に実施例1と同様の試験を行った結果を併せて示す。

0039

鋼A,Eは9%Ni鋼他は5%Ni鋼である。本発明鋼はいずれも比較例よりも固溶Alが多いことにより粒界Al量が増加し、耐焼き戻し脆化、水耐素脆化が改善されている。更に鋼D,Hは実施例1と同様に(Si+Mn)の値が小さく、比較例Hも本発明鋼B,Cよりも脆化度が小さいが、本発明鋼Dは更に優れた耐焼き戻し脆性及び耐水素脆性を有しており、その効果は実施例1と変わらないばかりか、低C化による靱性レベル全体の改善が可能となった。

0040

0041

0042

(実施例3)本発明のNi系調質鋼A,B,C,Dを表3(表3−1、表3−2)に示す。A〜Cは5%Ni鋼、Dは9%Ni鋼であり、全て25mm厚さの鋼板に圧延したものである。熱処理としてはAの場合に900℃×2hrの焼き入れを行った後、さらに880℃×2hrの焼き入れ及び590℃×1hrの焼き戻し(QQT処理)を行った。またB,C及びDはそれぞれ圧延後900℃から直ちに焼き入れ、590℃×1hrの焼き戻しを行ったもの(DQ処理)、900℃×2hrの焼き入れ後、780℃で1時間加熱後焼き入れ、これに590℃×1hrの焼き戻しを行ったもの(QLT処理)、圧延後空冷した後に、590℃×1hrの焼き戻しを行ったもの(NT処理)である。

0043

本発明鋼はいずれも単純なQT処理ではないが、いずれも表1や表2の比較例よりも固溶Alが多いことにより粒界Al量が増加し、耐焼き戻し脆化、水耐素脆化が改善されている。

0044

0045

発明の効果

0046

以上説明したように、本発明鋼は旧オーステナイト粒界のAl量を高めることにより、耐焼き戻し脆性及び耐水素脆化特性が著しく向上し、産業上の発展に寄与するところ大である。

図面の簡単な説明

0047

図1縦軸に脆化度、横軸に旧オーステナイト粒界におけるAl量をとり、脆化度が粒界Al量の増大に従って低下していることを模式的に示す図。
図2縦軸に脆化度、横軸に旧オーステナイト粒界における(Si+Cr+Mn)量をとり、脆化度が前記式内の量の増加に従って増加していることを模式的に示す図。
図3縦軸に脆化度、横軸に旧オーステナイト粒界における{Al−(Si+Cr+Mn)}量をとり、脆化度が前記式内の量の増加に従って低下していることを模式的に示す図。

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