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技術 シミュレーション装置及び方法並びにプログラム記録媒体

出願人 富士通株式会社
発明者 本間克己向井誠田中義朗
出願日 1998年12月1日 (21年11ヶ月経過) 出願番号 1998-340906
公開日 2000年6月16日 (20年5ヶ月経過) 公開番号 2000-163403
状態 特許登録済
技術分野 その他の電気量の測定 CAD 複合演算
主要キーワード 電子機器要素 解法プログラム 金属対象物 周波数距離 分解行列 解析周波数 特性係数 解析結果ファイル
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図面 (20)

課題

本発明は、解析周波数に応じて定義される連立一次方程式解くことで、電子機器に流れる電流シミュレートするシミュレーション装置に関し、高速シミュレーション処理の実現を目的とする。

解決手段

解析周波数領域の持つ両端以外の1つの周波数解析対象として、直接法に従って連立一次方程式を解き、それ以外の周波数については、直接法で分解した係数行列を使って変形しつつ反復法により解く。また、解析周波数領域を分割し、その分割した各領域毎に、1つの周波数を解析対象として、直接法に従って連立一次方程式を解き、それ以外の周波数については、直接法で分解した係数行列を使って変形しつつ反復法により解く。また、反復法による解析時間が長くなると、直接法を実行して解析周波数に適合した形で分解される係数行列を得て、それを使って連立一次方程式を変形しつつ反復法により解く。

概要

背景

電磁界解析シミュレーション方法として、差分法有限要素法モーメント法などが知られている。

この中でも、モーメント法は、解析対象境界面のみを2次元的に離散化するだけでよく、最大4次元の時空間を離散化する必要のある差分法や有限要素法に比べて実用的なシミュレーション方法として期待されている。このモーメント法についての参考文献としては、「H.N.Wang, J.H.Richmond and M.C.Gilreath:"Sinusoidal reaction formulation for radiation and scattering from cond-ucting surface"IEEE TRANSACTIONS ANTENNAS PROPAGATION vol.AP-23 1975 」がある。

これらのシミュレーション方法は、周波数領域で定義される連立一次方程式解くことで、電子機器の各要素に流れる電流シミュレートすることになる。これから、このシミュレーション方法を使って、時間領域でのシミュレーションを行う場合には、同一対象における多数の周波数を解析対象とする連立一次方程式を解く必要がある。また、多数の周波数を持つ波源が存在する場合にも、同一対象における多数の周波数を解析対象とする連立一次方程式を解く必要がある。

この連立一次方程式を高速で解くために、従来では、「G.Hoyler,R.Unbehauen"An Efficient Algorithm for The Treatment of Multiple Frequencies withThe Metod of Moments" Proceedings ofEMC'96 ROMA pp.368-371(1966) 」に記載されるように、FFS法(Fast Frequency Stepping法)を使い、先ず最初に、最低周波数を解析対象として連立一次方程式を導出し、その連立一次方程式の係数行列コレスキー分解(A=CCt )しつつ、直接法を使ってその連立一次方程式を解き、続いて、周波数の昇順解析周波数を選択し、その解析周波数を解析対象として連立一次方程式を導出して、最初の直接法の求解で得た前処理行列(C)による反復法を使って、その連立一次方程式を解くという方法を採っていた。

図19に示すような「Ax=b」という連立一次方程式(係数行列A=(aij)は複素対称行列)を解く方法として、直接法と反復法とがある。

この直接法は、係数行列Aを図20に示すような形式にコレスキー分解(対称行列LU分解)し、図21に示す算出式に従って、解(xi )を求めていくという方法である。計算オーダーはO(n3 )(nは係数行列Aの次数)となる。

一方、共役勾配法と呼ばれる反復法で説明するならば、反復法は、図22に示すアルゴリズムに従って、第k段階の値「x(k),α(k),p(k)」を用いて第(k+1)段階の値「x(k+1)」を求めていくことで、解(xi )を求めていくという方法である。計算オーダーはO(Kn2 )(nは係数行列Aの次数、Kは反復回数で最大n)であり、従って直接法よりも計算量的に有利となる。

この反復法で、係数行列Aが「A≒CCt 」というようにコレスキー分解に近い形になれば、本来の連立一次方程式「Ax=b」を、
C-1ACt*-1Ct x=C-1b
但し、C-1は行列Cの逆行列
Ct は行列Cの転置行列
Ct*-1は行列Cの転置行列の逆行列
と変形するときに、行列C-1ACt*-1が単位行列に近い形となり、速く収束することが期待される。これが前処理付きの共役勾配法と呼ばれるもので、図23に示すアルゴリズムで実行される。

これから、従来技術では、上述したように、同一対象における多数の周波数を解析対象とする連立一次方程式を解く場合には、FFS法を使い、先ず最初に、最低周波数を解析対象として連立一次方程式を導出し、その連立一次方程式の係数行列をコレスキー分解(A=CCt )しつつ、直接法を使ってその連立一次方程式を解き、続いて、周波数の昇順に解析周波数を選択し、その解析周波数を解析対象として連立一次方程式を導出して、最初の直接法の求解で得た前処理行列(C)による反復法を使って、その連立一次方程式を解くという方法を採っていたのである。

概要

本発明は、解析周波数に応じて定義される連立一次方程式を解くことで、電子機器に流れる電流をシミュレートするシミュレーション装置に関し、高速なシミュレーション処理の実現を目的とする。

解析周波数領域の持つ両端以外の1つの周波数を解析対象として、直接法に従って連立一次方程式を解き、それ以外の周波数については、直接法で分解した係数行列を使って変形しつつ反復法により解く。また、解析周波数領域を分割し、その分割した各領域毎に、1つの周波数を解析対象として、直接法に従って連立一次方程式を解き、それ以外の周波数については、直接法で分解した係数行列を使って変形しつつ反復法により解く。また、反復法による解析時間が長くなると、直接法を実行して解析周波数に適合した形で分解される係数行列を得て、それを使って連立一次方程式を変形しつつ反復法により解く。

目的

本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、モーメント法などに従って、解析周波数に応じて定義される連立一次方程式を解くことで、電子機器に流れる電流をシミュレートする構成を採るときにあって、そのシミュレーション処理を高速に実現できるようにする新たなシミュレーション装置及び方法の提供と、そのシミュレーション装置の実現に用いられるプログラムが格納される新たなプログラム記録媒体の提供とを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

解析周波数に応じて定義される連立一次方程式解くことで、電子機器に流れる電流シミュレートするシミュレーション装置において、解析周波数領域の中から、両端の周波数を除外しつつ1つの解析周波数を選定する選定手段と、上記選定手段の選定する解析周波数を解析対象とし、連立一次方程式の係数行列を規定の形式に分解しつつ、直接法に従って連立一次方程式を解く第1の解析手段と、上記選定手段の選定する解析周波数を起点として昇順及び降順に解析周波数を選択し、その選択した解析周波数を解析対象として、上記第1の解析手段の分解する係数行列を使って連立一次方程式を変形し、反復法に従ってその変形した連立一次方程式を解く第2の解析手段とを備えることを、特徴とするシミュレーション装置。

請求項2

請求項1記載のシミュレーション装置において、選定手段は、解析周波数領域の概略中間に位置する解析周波数を選定することを、特徴とするシミュレーション装置。

請求項3

請求項1又は2記載のシミュレーション装置において、第2の解析手段は、直前解析処理により求められた解を初期値として連立一次方程式を解くことを、特徴とするシミュレーション装置。

請求項4

解析周波数に応じて定義される連立一次方程式を解くことで、電子機器に流れる電流をシミュレートするシミュレーション装置において、解析周波数領域を複数の領域に分割する分割手段と、上記分割手段の分割する各解析周波数領域の中から、1つの解析周波数を選定する選定手段と、上記選定手段の選定する解析周波数を解析対象とし、連立一次方程式の係数行列を規定の形式に分解しつつ、直接法に従って連立一次方程式を解く第1の解析手段と、上記分割手段の分割する解析周波数領域毎に、その解析周波数領域の中から解析周波数を選択し、その選択した解析周波数を解析対象として、上記第1の解析手段の分解する係数行列を使って連立一次方程式を変形し、反復法に従ってその変形した連立一次方程式を解く第2の解析手段とを備えることを、特徴とするシミュレーション装置。

請求項5

請求項4記載のシミュレーション装置において、選定手段は、分割手段の分割する各解析周波数領域の中から、両端の周波数を除外しつつ1つの解析周波数を選定し、第2の解析手段は、選定手段の選定する解析周波数を起点として昇順及び降順に解析周波数を選択することを、特徴とするシミュレーション装置。

請求項6

請求項5記載のシミュレーション装置において、選定手段は、分割手段の分割する各解析周波数領域の概略中間に位置する解析周波数を選定することを、特徴とするシミュレーション装置。

請求項7

請求項4〜6のいずれかに記載されるシミュレーション装置において、第2の解析手段は、直前の解析処理により求められた解を初期値として連立一次方程式を解くことを、特徴とするシミュレーション装置。

請求項8

請求項4〜7のいずれかに記載されるシミュレーション装置において、分割手段は、規定のアルゴリズムに従って総計算時間が最小になることを実現する分割形態を求めて、それに従って解析周波数領域を分割することを、特徴とするシミュレーション装置。

請求項9

請求項4〜8のいずれかに記載されるシミュレーション装置において、分割手段の分割する各解析周波数領域内での解析処理が並列に実行されるように構成されることを、特徴とするシミュレーション装置。

請求項10

解析周波数に応じて定義される連立一次方程式を解くことで、電子機器に流れる電流をシミュレートするシミュレーション装置において、指定される解析周波数を解析対象として、連立一次方程式の係数行列を規定の形式に分解しつつ、直接法に従って連立一次方程式を解く第1の解析手段と、上記第1の解析手段の解析する解析周波数から昇順及び/又は降順に解析周波数を選択し、その選択した解析周波数を解析対象として、上記第1の解析手段の分解する係数行列を使って連立一次方程式を変形し、反復法に従ってその変形した連立一次方程式を解く第2の解析手段と、上記第2の解析手段が動作しているときに、直接法か反復法のどちらで連立一次方程式を解くのが有利なのかを判断して、直接法で解くことが有利であることを判断するときには、上記第2の解析手段の解析処理を停止させて、上記第1の解析手段を起動する解法制御手段とを備えることを、特徴とするシミュレーション装置。

請求項11

請求項10記載のシミュレーション装置において、解法制御手段は、直接法で解くことが有利であることを判断するときには、第2の解析手段の解析処理を直ちに停止させていくことを、特徴とするシミュレーション装置。

請求項12

請求項10記載のシミュレーション装置において、解法制御手段は、直接法で解くことが有利であることを判断するときには、解析中の解析処理が終了する時点で、第2の解析手段の解析処理を停止させていくことを、特徴とするシミュレーション装置。

請求項13

請求項10〜12に記載されるいずれかのシミュレーション装置において、解法制御手段は、第1の解析手段が最後に解析した解析周波数からの周波数距離に従って、直接法か反復法のどちらで連立一次方程式を解くのが有利なのかを判断することを、特徴とするシミュレーション装置。

請求項14

請求項10〜12に記載されるいずれかのシミュレーション装置において、解法制御手段は、第1の解析手段の解析時間から設定される判定時間と、第2の解析手段の解析時間とを比較することで、直接法か反復法のどちらで連立一次方程式を解くのが有利なのかを判断することを、特徴とするシミュレーション装置。

請求項15

請求項10〜12に記載されるいずれかのシミュレーション装置において、解法制御手段は、第1の解析手段の解析時間から設定される判定時間と、第2の解析手段の反復一回当たりの解析時間とから許容反復回数を設定して、その許容反復回数と第2の解析手段の反復回数とを比較することで、直接法か反復法のどちらで連立一次方程式を解くのが有利なのかを判断することを、特徴とするシミュレーション装置。

請求項16

請求項10〜15に記載されるいずれかのシミュレーション装置において、第2の解析手段は、直前の解析処理により求められた解を初期値として連立一次方程式を解くことを、特徴とするシミュレーション装置。

請求項17

解析周波数に応じて定義される連立一次方程式を解くことで、電子機器に流れる電流をシミュレートするシミュレーション方法において、解析周波数領域の中から、両端の周波数を除外しつつ1つの解析周波数を選定する第1の処理過程と、第1の処理過程で選定した解析周波数を解析対象とし、連立一次方程式の係数行列を規定の形式に分解しつつ、直接法に従って連立一次方程式を解く第2の処理過程と、第1の処理過程で選定した解析周波数を起点として昇順及び降順に解析周波数を選択し、その選択した解析周波数を解析対象として、第2の処理過程で分解した係数行列を使って連立一次方程式を変形し、反復法に従ってその変形した連立一次方程式を解く第3の処理過程とを備えることを、特徴とするシミュレーション方法。

請求項18

解析周波数に応じて定義される連立一次方程式を解くことで、電子機器に流れる電流をシミュレートするシミュレーション方法において、解析周波数領域を複数の領域に分割する第1の処理過程と、第1の処理過程で分割した各周波数領域の中から、1つの解析周波数を選定する第2の処理過程と、第2の処理過程で選定した解析周波数を解析対象とし、連立一次方程式の係数行列を規定の形式に分解しつつ、直接法に従って連立一次方程式を解く第3の処理過程と、第1の処理過程で分割した解析周波数領域毎に、その解析周波数領域の中から解析周波数を選択し、その選択した解析周波数を解析対象として、第3の処理過程で分解した係数行列を使って連立一次方程式を変形し、反復法に従ってその変形した連立一次方程式を解く第4の処理過程とを備えることを、特徴とするシミュレーション方法。

請求項19

解析周波数に応じて定義される連立一次方程式を解くことで、電子機器に流れる電流をシミュレートするシミュレーション方法において、指定される解析周波数を解析対象として、連立一次方程式の係数行列を規定の形式に分解しつつ、直接法に従って連立一次方程式を解く第1の処理過程と、第1の処理過程で解析した解析周波数から昇順及び/又は降順に解析周波数を選択し、その選択した解析周波数を解析対象として、第1の処理過程で分解した係数行列を使って連立一次方程式を変形し、反復法に従ってその変形した連立一次方程式を解く第2の処理過程と、第2の処理過程が動作しているときに、直接法か反復法のどちらで連立一次方程式を解くのが有利なのかを判断して、直接法で解くことが有利であることを判断するときには、第2の処理過程の解析処理を停止させて、第1の処理過程を起動する第3の処理過程とを備えることを、特徴とするシミュレーション方法。

請求項20

解析周波数に応じて定義される連立一次方程式を解くことで、電子機器に流れる電流をシミュレートするシミュレーション装置の実現に用いられるプログラムが格納されるプログラム記録媒体であって、解析周波数領域の中から、両端の周波数を除外しつつ1つの解析周波数を選定する選定処理と、上記選定処理の選定する解析周波数を解析対象とし、連立一次方程式の係数行列を規定の形式に分解しつつ、直接法に従って連立一次方程式を解く第1の解析処理と、上記選定処理の選定する解析周波数を起点として昇順及び降順に解析周波数を選択し、その選択した解析周波数を解析対象として、上記第1の解析処理の分解する係数行列を使って連立一次方程式を変形し、反復法に従ってその変形した連立一次方程式を解く第2の解析処理とをコンピュータに実行させるプログラムが格納されることを、特徴とするプログラム記録媒体。

請求項21

解析周波数に応じて定義される連立一次方程式を解くことで、電子機器に流れる電流をシミュレートするシミュレーション装置の実現に用いられるプログラムが格納されるプログラム記録媒体であって、解析周波数領域を複数の領域に分割する分割処理と、上記分割処理の分割する各解析周波数領域の中から、1つの解析周波数を選定する選定処理と、上記選定処理の選定する解析周波数を解析対象とし、連立一次方程式の係数行列を規定の形式に分解しつつ、直接法に従って連立一次方程式を解く第1の解析処理と、上記分割処理の分割する解析周波数領域毎に、その解析周波数領域の中から解析周波数を選択し、その選択した解析周波数を解析対象として、上記第1の解析処理の分解する係数行列を使って連立一次方程式を変形し、反復法に従ってその変形した連立一次方程式を解く第2の解析処理とをコンピュータに実行させるプログラムが格納されることを、特徴とするプログラム記録媒体。

請求項22

解析周波数に応じて定義される連立一次方程式を解くことで、電子機器に流れる電流をシミュレートするシミュレーション装置の実現に用いられるプログラムが格納されるプログラム記録媒体であって、指定される解析周波数を解析対象として、連立一次方程式の係数行列を規定の形式に分解しつつ、直接法に従って連立一次方程式を解く第1の解析処理と、上記第1の解析処理の解析する解析周波数から昇順及び/又は降順に解析周波数を選択し、その選択した解析周波数を解析対象として、上記第1の解析処理の分解する係数行列を使って連立一次方程式を変形し、反復法に従ってその変形した連立一次方程式を解く第2の解析処理と、上記第2の解析処理が動作しているときに、直接法か反復法のどちらで連立一次方程式を解くのが有利なのかを判断して、直接法で解くことが有利であることを判断するときには、上記第2の解析処理の解析処理を停止させて、上記第1の解析処理を起動する解法制御処理とをコンピュータに実行させるプログラムが格納されることを、特徴とするプログラム記録媒体。

技術分野

0001

本発明は、解析周波数に応じて定義される連立一次方程式解くことで、電子機器に流れる電流シミュレートするシミュレーション装置及び方法と、そのシミュレーション装置の実現に用いられるプログラムが格納されるプログラム記録媒体とに関し、特に、高速シミュレーション処理を実現するシミュレーション装置及び方法と、そのシミュレーション装置の実現に用いられるプログラムが格納されるプログラム記録媒体とに関する。

0002

電子機器に対する社会的規制として、一定のレベル以上の不要な電波ノイズ放射してはならないということがあり、各国の規格で厳しく規制されるようになってきた。

0003

このような電波規格を満足させるために、シールド技術やフィルタ技術などのような種々の対策技術が用いられるが、これらの対策技術の採用に当たって、それらがどの程度電波を減少できるのかを定量的に算出できるようにするシミュレーション技術の開発が必要である。

0004

このようなことを背景にして、本出願人は、モーメント法を使って電子機器の放射する電磁界強度を算出するシミュレーション技術の発明を開示してきた。このシミュレーション技術を実用的なものとしていくには、シミュレーション処理を高速に実行できるようにする技術を構築していく必要がある。

背景技術

0005

電磁界解析シミュレーション方法として、差分法有限要素法、モーメント法などが知られている。

0006

この中でも、モーメント法は、解析対象境界面のみを2次元的に離散化するだけでよく、最大4次元の時空間を離散化する必要のある差分法や有限要素法に比べて実用的なシミュレーション方法として期待されている。このモーメント法についての参考文献としては、「H.N.Wang, J.H.Richmond and M.C.Gilreath:"Sinusoidal reaction formulation for radiation and scattering from cond-ucting surface"IEEE TRANSACTIONS ANTENNAS PROPAGATION vol.AP-23 1975 」がある。

0007

これらのシミュレーション方法は、周波数領域で定義される連立一次方程式を解くことで、電子機器の各要素に流れる電流をシミュレートすることになる。これから、このシミュレーション方法を使って、時間領域でのシミュレーションを行う場合には、同一対象における多数の周波数を解析対象とする連立一次方程式を解く必要がある。また、多数の周波数を持つ波源が存在する場合にも、同一対象における多数の周波数を解析対象とする連立一次方程式を解く必要がある。

0008

この連立一次方程式を高速で解くために、従来では、「G.Hoyler,R.Unbehauen"An Efficient Algorithm for The Treatment of Multiple Frequencies withThe Metod of Moments" Proceedings ofEMC'96 ROMA pp.368-371(1966) 」に記載されるように、FFS法(Fast Frequency Stepping法)を使い、先ず最初に、最低周波数を解析対象として連立一次方程式を導出し、その連立一次方程式の係数行列コレスキー分解(A=CCt )しつつ、直接法を使ってその連立一次方程式を解き、続いて、周波数の昇順に解析周波数を選択し、その解析周波数を解析対象として連立一次方程式を導出して、最初の直接法の求解で得た前処理行列(C)による反復法を使って、その連立一次方程式を解くという方法を採っていた。

0009

図19に示すような「Ax=b」という連立一次方程式(係数行列A=(aij)は複素対称行列)を解く方法として、直接法と反復法とがある。

0010

この直接法は、係数行列Aを図20に示すような形式にコレスキー分解(対称行列LU分解)し、図21に示す算出式に従って、解(xi )を求めていくという方法である。計算オーダーはO(n3 )(nは係数行列Aの次数)となる。

0011

一方、共役勾配法と呼ばれる反復法で説明するならば、反復法は、図22に示すアルゴリズムに従って、第k段階の値「x(k),α(k),p(k)」を用いて第(k+1)段階の値「x(k+1)」を求めていくことで、解(xi )を求めていくという方法である。計算オーダーはO(Kn2 )(nは係数行列Aの次数、Kは反復回数で最大n)であり、従って直接法よりも計算量的に有利となる。

0012

この反復法で、係数行列Aが「A≒CCt 」というようにコレスキー分解に近い形になれば、本来の連立一次方程式「Ax=b」を、
C-1ACt*-1Ct x=C-1b
但し、C-1は行列Cの逆行列
Ct は行列Cの転置行列
Ct*-1は行列Cの転置行列の逆行列
と変形するときに、行列C-1ACt*-1が単位行列に近い形となり、速く収束することが期待される。これが前処理付きの共役勾配法と呼ばれるもので、図23に示すアルゴリズムで実行される。

0013

これから、従来技術では、上述したように、同一対象における多数の周波数を解析対象とする連立一次方程式を解く場合には、FFS法を使い、先ず最初に、最低周波数を解析対象として連立一次方程式を導出し、その連立一次方程式の係数行列をコレスキー分解(A=CCt )しつつ、直接法を使ってその連立一次方程式を解き、続いて、周波数の昇順に解析周波数を選択し、その解析周波数を解析対象として連立一次方程式を導出して、最初の直接法の求解で得た前処理行列(C)による反復法を使って、その連立一次方程式を解くという方法を採っていたのである。

発明が解決しようとする課題

0014

しかしながら、このような従来技術に従っていると、昇順に選択していく解析周波数が最低周波数から離れていくに従って、前処理行列による前処理が所望の形態から外れていくことで、反復法での解析時間が増加し、これがために高速にシミュレーション処理を実行できないという問題点があった。

0015

すなわち、昇順に選択していく解析周波数が最低周波数から離れていくに従って、行列C-1ACt*-1が単位行列から外れていくことで、反復法での解析時間が増加し、これがために高速にシミュレーション処理を実行できないという問題点があったのである。

0016

本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、モーメント法などに従って、解析周波数に応じて定義される連立一次方程式を解くことで、電子機器に流れる電流をシミュレートする構成を採るときにあって、そのシミュレーション処理を高速に実現できるようにする新たなシミュレーション装置及び方法の提供と、そのシミュレーション装置の実現に用いられるプログラムが格納される新たなプログラム記録媒体の提供とを目的とする。

課題を解決するための手段

0017

図1に本発明の原理構成を図示する。

0018

図中、1は本発明を具備するシミュレーション装置であって、解析周波数に応じて定義される連立一次方程式を解くことで、電子機器の各要素に流れる電流をシミュレートするものである。

0019

本発明のシミュレーション装置1は、解析周波数ファイル10と、係数行列ファイル11と、解析結果ファイル12と、分割手段13と、選定手段14と、第1の解析手段15と、第2の解析手段16と、解法制御手段17とを備える。

0020

この解析周波数ファイル10は、解析対象となる周波数の情報を格納する。係数行列ファイル11は、解析周波数に応じて定義される連立一次方程式の係数行列を格納する。解析結果ファイル12は、解析結果となる電子機器の各要素に流れる電流の情報を格納する。

0021

分割手段13は、解析周波数領域を複数の領域に分割する。選定手段14は、解析周波数を選定する。

0022

第1の解析手段15は、選定手段14の選定する解析周波数を解析対象とし、連立一次方程式の係数行列を規定の形式に分解しつつ、直接法に従って連立一次方程式を解く。

0023

第2の解析手段16は、第1の解析手段15の解析する解析周波数から昇順や降順に従って解析周波数を選択し、その選択した解析周波数を解析対象として、第1の解析手段15の分解した係数行列を使って連立一次方程式を変形し、反復法に従ってその変形した連立一次方程式を解く。

0024

解法制御手段17は、第2の解析手段16が動作しているときに、直接法か反復法のどちらで連立一次方程式を解くのが有利なのかを判断して、直接法で解くことが有利であることを判断するときには、第2の解析手段16の解析処理を停止(途中で停止させたり、解析中の解析処理の終了時点で停止させる)させて、第1の解析手段15を起動する。

0025

ここで、本発明のシミュレーション装置1の持つ機能は具体的にはプログラムで実現されるものであり、このプログラムは、フロッピィディスクなどに格納されたり、サーバなどのディスクなどに格納され、それらからシミュレーション装置1にインストールされてメモリ上で動作することで、本発明を実現することになる。

0026

このように構成される本発明のシミュレーション装置1では、選定手段14は、解析周波数領域の中から、両端の周波数を除外しつつ、好ましくは概略中間に位置する形態で1つの解析周波数を選定し、これを受けて、第1の解析手段15は、選定手段14の選定した解析周波数を解析対象とし、連立一次方程式の係数行列を規定の形式に分解しつつ、直接法に従って連立一次方程式を解く。

0027

そして、第2の解析手段16は、選定手段14の選定した解析周波数を起点として昇順及び降順に解析周波数を選択し、その選択した解析周波数を解析対象として、第1の解析手段15の分解した係数行列を使って連立一次方程式を変形し、反復法に従ってその変形した連立一次方程式を解く。このとき、第2の解析手段16は、好ましくは、直前の解析処理により求められた解を初期値として連立一次方程式を解く。

0028

このように、本発明のシミュレーション装置1では、解析周波数領域の持つ両端以外の1つの周波数を解析対象として、直接法に従って連立一次方程式を解き、それ以外の周波数については、直接法で分解した係数行列を使って連立一次方程式を変形しつつ反復法により解く構成を採るので、反復法で解く周波数と直接法で解く周波数との間の周波数距離が従来技術に比べて小さくなることで、反復法で解く連立一次方程式が所望のものに近い形に変形でき、これにより、高速に解析処理を実行できるようになる。

0029

また、このように構成される本発明のシミュレーション装置1では、分割手段13は、例えば規定のアルゴリズムに従って総計算時間が最小になることを実現する分割形態を求めて、それに従って解析周波数領域を複数の領域に分割し、これを受けて、選定手段14は、分割手段13の分割した各解析周波数領域の中から、好ましくは概略中間に位置する形態で1つの解析周波数を選定する。

0030

これを受けて、第1の解析手段15は、選定手段14の選定した解析周波数を解析対象とし、連立一次方程式の係数行列を規定の形式に分解しつつ、直接法に従って連立一次方程式を解く。

0031

そして、第2の解析手段16は、分割手段13の分割した各解析周波数領域毎に、その解析周波数領域の中から、例えば選定手段14の選定した解析周波数を起点として昇順及び降順に解析周波数を選択し、その選択した解析周波数を解析対象として、第1の解析手段15の分解した係数行列を使って連立一次方程式を変形し、反復法に従ってその変形した連立一次方程式を解く。このとき、第2の解析手段16は、好ましくは、直前の解析処理により求められた解を初期値として連立一次方程式を解く。

0032

このように、本発明のシミュレーション装置1では、解析周波数領域を分割し、その分割した各解析周波数領域毎に、その分割した解析周波数領域の中の1つの周波数を解析対象として、直接法に従って連立一次方程式を解き、それ以外の周波数については、直接法で分解した係数行列を使って連立一次方程式を変形しつつ反復法により解く構成を採るので、反復法で解く周波数と直接法で解く周波数との間の周波数距離が従来技術に比べて小さくなることで、反復法で解く連立一次方程式が所望のものに近い形に変形でき、これにより、高速に解析処理を実行できるようになる。

0033

また、このように構成される本発明のシミュレーション装置1では、第1の解析手段15は、指定される解析周波数を解析対象として、連立一次方程式の係数行列を規定の形式に分解しつつ、直接法に従って連立一次方程式を解く。

0034

これを受けて、第2の解析手段16は、第1の解析手段15の解析した解析周波数から昇順及び/又は降順に解析周波数を選択し、その選択した解析周波数を解析対象として、第1の解析手段15の分解した係数行列を使って連立一次方程式を変形し、反復法に従ってその変形した連立一次方程式を解く。このとき、第2の解析手段16は、好ましくは、直前の解析処理により求められた解を初期値として連立一次方程式を解く。

0035

そして、解法制御手段17は、第2の解析手段16が動作しているときに、直接法か反復法のどちらで連立一次方程式を解くのが有利なのかを判断して、直接法で解くことが有利であることを判断するときには、第2の解析手段16の解析処理を停止させて第1の解析手段15を起動する。

0036

例えば、解法制御手段17は、第1の解析手段15が最後に解析した解析周波数からの周波数距離に従って、その周波数距離が大きくなるときには、直接法で解くことが有利であることを判断したり、第1の解析手段15の解析時間から設定される判定時間と、第2の解析手段16の解析時間とを比較して、その解析時間が判定時間を超えるときには、直接法で解くことが有利であることを判断したり、第1の解析手段15の解析時間から設定される判定時間と、第2の解析手段16の反復一回当たりの解析時間とから許容反復回数を設定して、第2の解析手段16の反復回数がその許容反復回数を超えるときには、直接法で解くことが有利であることを判断する。

0037

このように、本発明のシミュレーション装置1では、直接法で分解した係数行列を使って連立一次方程式を変形しつつ反復法により解く構成を採るときにあって、反復法で解く周波数と直接法で解く周波数との間の周波数距離が大きくなることで、その係数行列を用いる反復法では解析時間が長くなってしまうことになると、直接法を実行することで解析周波数に適合した形で分解される係数行列を得て、それを使って反復法により連立一次方程式を解くようにする構成を採ることから、反復法で解く連立一次方程式が所望のものに近い形に変形でき、これにより、高速に解析処理を実行できるようになる。

0038

このように、本発明のシミュレーション装置1によれば、モーメント法などに従って、解析周波数に応じて定義される連立一次方程式を解くことで、電子機器に流れる電流をシミュレートする構成を採るときにあって、そのシミュレーション処理を高速に実現できるようになる。

発明を実施するための最良の形態

0039

以下、実施の形態に従って本発明を詳細に説明する。

0040

図2に、本発明を具備する電磁界強度算出装置20の一実施例を図示する。

0041

この電磁界強度算出装置20は、モーメント法を用いて電子機器の放射する電磁界強度をシミュレートするものであって、シミュレーション対象となる電子機器の構造情報を格納する電子機器データファイル21と、フロッピィディスクや回線などを介してインストールされて、モーメント法の連立一次方程式を作成する連立一次方程式作成プログラム22と、連立一次方程式作成プログラム22の作成するモーメント法の連立一次方程式を格納する連立一次方程式格納ファイル23と、フロッピィディスクや回線などを介してインストールされて、連立一次方程式格納ファイル23に格納されるモーメント法の連立一次方程式を解くことで電子機器に流れる電流を算出する連立一次方程式解法プログラム24と、フロッピィディスクや回線などを介してインストールされて、連立一次方程式解法プログラム24の算出結果から電子機器の放射する電磁界強度を算出する電磁界強度算出プログラム25と、電磁界強度算出プログラム25の算出結果を表示する出力装置26とを備える。

0042

連立一次方程式作成プログラム22は、電子機器データファイル21に格納される電子機器の構造情報に従って、シミュレーション対象の電子機器をメッシュ化するとともに、その電子機器の持つ波源から解析周波数を設定する。そして、その解析周波数について、メッシュ化した要素間の相互インピーダンス相互アドミッタンスや相互リアクションを所定の計算処理によって求めて、その求めた相互インピーダンスなどと波源とから、メッシュ化した電子機器の各要素に流れる電流や磁流を導出するためのモーメント法の連立一次方程式を作成する処理を行う。

0043

以下、説明の便宜上、電子機器が金属対象物のみからなることを想定する。この場合には、解析周波数での電子機器要素間の相互インピーダンスZijを求めて、この相互インピーダンスZijと、解析周波数成分の波源Vi と、電子機器要素に流れる解析周波数成分の電流Ii との間に成立する図3に示すモーメント法の連立一次方程式を作成することになる。

0044

このとき算出する相互インピーダンスは、具体的には、図4に示すようなモノポール(図中の〜)を想定することで実行される。

0045

すなわち、要素iと要素jとの間の相互インピーダンスZijの一般式は、図5(a)に図示する数式で表される。図中、ωは角周波数、kは波数、rはモノポール間の距離、J1,J2 はモノポール上の電流分布の形状、φはモノポール間の傾きを表し、ρ1 =(−1/jω)×〔∂J1 /∂t〕、ρ2 =(−1/jω)×〔∂J2 /∂t〕である。

0046

モノポール上の電流分布J1,J2 として、
電流モノポール J1=sink(z-z0)/sinkd1
電流モノポール J1=sink(z2-z)/sinkd2
電流モノポール J2=sink(t-t0)/sinkd3
電流モノポール J2=sink(t2-t)/sinkd4
d1:モノポールの長さ、d2:モノポールの長さ
d3:モノポールの長さ、d4:モノポールの長さ
を想定すると、モノポールとモノポールの相互インピーダンスZ13と、モノポールとモノポールの相互インピーダンスZ14とは、図5(b)に図示する数式のように表される。

0047

モノポールとモノポールの相互インピーダンスZ23と、モノポールとモノポールの相互インピーダンスZ24とについても同様の数式で表される。これから、要素iと要素jとの間の相互インピーダンスZij(=Z13+Z14+Z23+Z24)が求まる。

0048

このようにして算出される相互インピーダンスは、「Zij=Zji」の形態を示す複素対称行列となる。

0049

この連立一次方程式作成プログラム22の処理を受けて、連立一次方程式管理ファイル23は、連立一次方程式作成プログラム22の設定した解析周波数毎に、連立一次方程式作成プログラム22の算出したその解析周波数での相互インピーダンスZijと、連立一次方程式作成プログラム22の抽出したその解析周波数成分の波源Vi とを格納することで、連立一次方程式作成プログラム22の作成したモーメント法の連立一次方程式を格納する。

0050

連立一次方程式解法プログラム24は、連立一次方程式管理ファイル23に格納されるモーメント法の連立一次方程式を解くことで、電子機器の各要素に流れる解析周波数成分の電流Ii を算出する。このとき、連立一次方程式管理ファイル23に格納されるモーメント法の連立一次方程式の数が多くなるとき、すなわち、解析周波数が多くなるときには、電子機器に流れる電流を算出するのに多大な時間を要することを考慮して、後述する本発明に特徴的な処理に従って、その算出処理を高速に実行する構成を採っている。

0051

電磁界強度算出プログラム25は、連立一次方程式解法プログラム24の算出した電子機器の各要素に流れる電流から、電子機器の放射する電磁界強度を算出する。この算出処理については、公知であるのでその詳細については省略するが、例えば、図6に示すような波源と観測点との関係を想定するとともに、波源の電流分布として図中に示すJ+ を想定すると、電流J+ による電界のz方向成分Ez + とρ方向成分Eρ+ とは、図7に示す算出式に従って算出されることになる。

0052

図8に、連立一次方程式解法プログラム24の実行する処理フローの一実施例を図示する。次に、この処理フローに従って本発明について詳細に説明する。

0053

連立一次方程式解法プログラム24は、シミュレーション対象の電子機器の各要素に流れる電流の算出要求発行されると、図8の処理フローに示すように、先ず最初に、ステップ1で、連立一次方程式格納ファイル23に格納される解析周波数の好ましくは概略中間に位置する解析周波数を選択する。

0054

続いて、ステップ2で、連立一次方程式格納ファイル23から、その選択した解析周波数の相互インピーダンスZ0 を読み込んで、それを図20に示すような形式にコレスキー分解(Z0 =CCt )する。続いて、ステップ3で、そのコレスキー分解した相互インピーダンスZ0 を用いて、図21に示した算出式に従って、その選択した解析周波数の連立一次方程式「Z0 I0 =V0 」を直接法で解く。

0055

続いて、ステップ4で、ステップ1で選択した解析周波数を起点として、連立一次方程式格納ファイル23に格納される解析周波数の中から昇順に解析周波数fs (s=1,2,3,・・)を1つ選択する。続いて、ステップ5で、ステップ2で得た分解行列Cを用いて、ステップ4で選択した解析周波数fs の連立一次方程式「Zs Is =Vs 」を、「C-1Zs Ct*-1Ct Is =C-1Vs 」と変形し、1つ前の解析周波数fs-1 で得た解Is-1 をIs の初期値として、それを反復法で解く。

0056

ここで、1つ前の解析周波数fs-1 で得た解Is-1 をIs の初期値とするのは、周波数が近いことで、1つ前の解析周波数fs-1 で得た解Is-1 とIs とが大きく異なることはなく、これから、この初期値設定を行うことで、Is を少ない反復回数で求めることができるようになるからである。

0057

続いて、ステップ6で、ステップ4での選択処理により最高の解析周波数まで解いたのか否かを判断して、解いていないことを判断するときは、ステップ4に戻り、解いたことを判断するときには、ステップ7に進んで、ステップ1で選択した解析周波数を起点として、連立一次方程式格納ファイル23に格納される解析周波数の中から降順に解析周波数f-s(s=1,2,3,・・)を1つ選択する。

0058

続いて、ステップ8で、ステップ2で得た分解行列Cを用いて、ステップ7で選択した解析周波数f-sの連立一次方程式「Z-sI-s=V-s」を、「C-1Z-sCt*-1Ct I-s=C-1V-s」と変形し、上述理由により、1つ前の解析周波数f-s+1で得た解I-s+1をI-sの初期値として、それを反復法で解く。

0059

続いて、ステップ9で、ステップ7での選択処理により最低の解析周波数まで解いたのか否かを判断して、解いていないことを判断するときは、ステップ7に戻り、解いたことを判断するときには、全処理を終了する。

0060

このようにして、連立一次方程式解法プログラム24は、図9に示すように、好ましくは概略中間に位置する解析周波数を起点として、その起点となる解析周波数については直接法を使って連立一次方程式を解き、それ以外の解析周波数については、昇順及び降順に選択しながら、直接法で得た分解行列を使って連立一次方程式を変形して、それを反復法で解くように処理するのである。

0061

これに対して、従来技術では、図中の破線で示すように、最低周波数の解析周波数を起点として、その起点となる解析周波数については直接法を使って連立一次方程式を解き、それ以外の解析周波数については、昇順に選択しながら、直接法で得た分解行列を使って連立一次方程式を変形して、それを反復法で解くように処理していた。

0062

図9に示すように、起点となる周波数から離れるほど、直接法で得た分解行列による連立一次方程式の変形が好ましいものから外れていくために、反復法の反復回数が多くなる。これから、連立一次方程式解法プログラム24は、図8の処理フローを実行することで、最低周波数の解析周波数を起点とする従来技術よりも高速に連立一次方程式を解くことができることで、電子機器の各要素に流れる電流を高速に算出することができるようになる。

0063

更に、連立一次方程式解法プログラム24は、この反復法を実行するにあたって、1つ前の解析周波数で得た解を初期値とするという従来技術では開示されていない構成を採ることで、この高速処理を一層確かなものにすることを実現している。

0064

図10及び図11に、連立一次方程式解法プログラム24の実行する処理フローの他の実施例を図示する。

0065

この処理フローに従う場合には、連立一次方程式解法プログラム24は、シミュレーション対象の電子機器の各要素に流れる電流の算出要求が発行されると、先ず最初に、ステップ1で、連立一次方程式格納ファイル23に格納される解析周波数の好ましくは概略中間に位置する解析周波数を選択する。

0066

続いて、ステップ2で、連立一次方程式格納ファイル23から、その選択した解析周波数の相互インピーダンスZ0 を読み込んで、それを図20に示すような形式にコレスキー分解(Z0 =CCt )し、そのコレスキー分解した相互インピーダンスZ0 を用いて、図21に示した算出式に従って、その選択した解析周波数の連立一次方程式「Z0 I0 =V0 」を直接法で解く。

0067

続いて、ステップ3で、ステップ1で選択した解析周波数を起点として、連立一次方程式格納ファイル23に格納される解析周波数の中から昇順に解析周波数fs (s=1,2,3,・・)を1つ選択する。続いて、ステップ4で、規定の周期に従って反復法の続行可否を判断しつつ、ステップ2で得た分解行列Cを用いて、ステップ3で選択した解析周波数fs の連立一次方程式「Zs Is =Vs 」を、「C-1Zs Ct*-1Ct Is =C-1Vs 」と変形し、1つ前の解析周波数fs-1で得た解Is-1 をIs の初期値として、それを反復法で解く。

0068

このステップ4で行う反復法続行の可否の判断処理としては、例えば、分解行列Cを得た直接法の解析周波数からの周波数距離に判断値を設定して、反復法の解析周波数がこの判断値を超えない間は反復法の続行を判断し、超えるときに反復法の続行不可を判断することで行う。あるいは、分解行列Cを得た直接法の解析時間Tと、0から1の値の間で設定される係数との乗算値から反復法の許容解析時間T0 (T0 <T)を設定して、反復法の解析時間がこの許容解析時間T0よりも小さい間は反復法の続行を判断し、大きくなるときに反復法の続行不可を判断することで行う。あるいは、反復法に入ってからの規定反復回数の解析時間を計時することで、反復一回当たりの解析時間t1 を求めて、「K=T0 /t1」により許容反復回数Kを設定して、反復法の反復回数がこの許容反復回数Kよりも小さい間は反復法の続行を判断し、大きくなるときに反復法の続行不可を判断することで行う。

0069

このようにして、ステップ4で、反復法の続行の可否を判断しつつ、「C-1Zs Ct*-1Ct Is =C-1Vs 」と変形した連立一次方程式を反復法を使って解くときに、ステップ5で、反復法の続行可を判断したのか否かを判断して、続行可を判断するときには、ステップ6に進んで、ステップ4の解析処理で解が求まったのか否かを判断する。そして、解が未だ求まっていないことを判断するときには、ステップ4に戻っていくことでステップ4で実行する反復法を続行していく。

0070

一方、ステップ6で、ステップ4の解析処理で解が求まったことを判断するときには、ステップ7に進んで、ステップ3での選択処理により最高の解析周波数まで解いたのか否かを判断して、解いていないことを判断するときは、ステップ3に戻り、解いたことを判断するときには、後述するステップ9(図11の処理フロー)に進む。

0071

一方、ステップ5で反復法の続行不可を判断するときには、ステップ8に進んで、ステップ4で実行する反復法を中断し、ステップ3で選択した解析周波数fs の連立一次方程式「Zs Is =Vs 」を直接法で解くべく、相互インピーダンスZs を図20に示すような形式にコレスキー分解(Zs =CCt )し、そのコレスキー分解した相互インピーダンスZs を用いて、図21に示した算出式に従って、その連立一次方程式「Zs Is =Vs 」を直接法を解いてから、ステップ7に進む。

0072

そして、上述したように、続くステップ7で、ステップ3での選択処理により最高の解析周波数まで解いたのか否かを判断して、解いていないことを判断するときは、ステップ3に戻り、解いたことを判断するときには、後述するステップ9に進む。

0073

ここで、ステップ4で反復法の解析処理を実行するときにあって、ステップ8を経由してきた場合には、ステップ8で得た分解行列Cを用いて、ステップ3で選択した解析周波数の連立一次方程式を変形していくことになる。

0074

ステップ3ないしステップ8の処理に従って、ステップ1で選択した解析周波数よりも昇順側にある解析周波数の解析処理を終了すると、ステップ9(図11の処理フロー)に進んで、ステップ1で選択した解析周波数を起点として、連立一次方程式格納ファイル23に格納される解析周波数の中から降順に解析周波数f-s(s=1,2,3,・・)を1つ選択する。

0075

続いて、ステップ10で、上述した方法を用い規定の周期に従って反復法の続行の可否を判断しつつ、ステップ2で得た分解行列Cを用いて、ステップ10で選択した解析周波数f-sの連立一次方程式「Z-sI-s=V-s」を、「C-1Z-sCt*-1Ct I-s=C-1V-s」と変形し、1つ前の解析周波数f-s+1で得た解I-s+1をI-sの初期値として、それを反復法で解く。

0076

このとき、ステップ11で、反復法の続行可を判断したのか否かを判断して、続行可を判断するときには、ステップ12に進んで、ステップ10の解析処理で解が求まったのか否かを判断する。そして、解が未だ求まっていないことを判断するときには、ステップ10に戻っていくことでステップ10で実行する反復法を続行していく。

0077

一方、ステップ12で、ステップ10の解析処理で解が求まったことを判断するときには、ステップ13に進んで、ステップ9での選択処理により最低の解析周波数まで解いたのか否かを判断して、解いていないことを判断するときは、ステップ9に戻り、解いたことを判断するときには、全処理を終了する。

0078

一方、ステップ11で反復法の続行不可を判断するときには、ステップ14に進んで、ステップ10で実行する反復法を中断し、ステップ9で選択した解析周波数f-sの連立一次方程式「Z-sI-s=V-s」を直接法で解くべく、相互インピーダンスZ-sを図20に示すような形式にコレスキー分解(Z-s=CCt )し、そのコレスキー分解した相互インピーダンスZ-sを用いて、図21に示した算出式に従って、その連立一次方程式「Z-sI-s=V-s」を直接法を解いてから、ステップ13に進む。

0079

そして、上述したように、続くステップ13で、ステップ9での選択処理により最低の解析周波数まで解いたのか否かを判断して、解いていないことを判断するときは、ステップ9に戻り、解いたことを判断するときには、全処理を終了する。

0080

ここで、ステップ10で反復法の解析処理を実行するときにあって、ステップ14を経由してきた場合には、ステップ14で得た分解行列Cを用いて、ステップ9で選択した解析周波数の連立一次方程式を変形していくことになる。

0081

このようにして、連立一次方程式解法プログラム24は、図10及び図11の処理フローに従うときには、図12に示すように、先ず最初に、好ましくは概略中間に位置する解析周波数について、直接法を使って連立一次方程式を解き、続いて、その解析周波数を起点として、解析周波数を昇順及び降順に選択しながら、直接法で得た分解行列を使って連立一次方程式を変形し、それを反復法で解いていく。そして、直接法で解いた解析周波数より周波数距離が離れることで、反復法による解析処理が計算時間を要する状態になることを検出すると、その時点で反復法を中断して直接法を使って連立一次方程式を解き、その後、その直接法で得た分解行列を使って連立一次方程式を変形し、それを反復法で解いていくことを繰り返していくように処理するのである。

0082

この処理構成を採ることで、無条件に反復法を用いていくことによる計算量の増大を防止できることで、電子機器の各要素に流れる電流を高速に算出することができるようになる。

0083

図10及び図11の処理フローでは、反復法の続行の不可を判断するときに、その時点で実行している反復法の解析処理を直ちに中断していくという構成を採ったが、もう少しで解が求まるであろうことを考慮して、その時点で実行している反復法の解析処理については最後まで実行する構成を採って、次の解析周波数について直接法を解いていくという構成を採ることも可能である。

0084

図13及び図14に、この処理構成を採る場合の処理フローの一実施例を図示する。

0085

すなわち、この処理フローに従う場合には、連立一次方程式解法プログラム24は、シミュレーション対象の電子機器の各要素に流れる電流の算出要求が発行されると、先ず最初に、ステップ1で、連立一次方程式格納ファイル23に格納される解析周波数の好ましくは概略中間に位置する解析周波数を選択する。

0086

続いて、ステップ2で、連立一次方程式格納ファイル23から、その選択した解析周波数の相互インピーダンスZ0 を読み込んで、それを図20に示すような形式にコレスキー分解(Z0 =CCt )し、そのコレスキー分解した相互インピーダンスZ0 を用いて、図21に示した算出式に従って、その選択した解析周波数の連立一次方程式「Z0 I0 =V0 」を直接法で解く。

0087

続いて、ステップ3で、ステップ1で選択した解析周波数を起点として、連立一次方程式格納ファイル23に格納される解析周波数の中から昇順に解析周波数fs (s=1,2,3,・・)を1つ選択する。続いて、ステップ4で、ステップ2で得た分解行列Cを用いて、ステップ3で選択した解析周波数fs の連立一次方程式「Zs Is =Vs 」を、「C-1Zs Ct*-1Ct Is =C-1Vs 」と変形し、1つ前の解析周波数fs-1 で得た解Is-1 をIs の初期値として、それを反復法で解が求まるまで解く。

0088

続いて、ステップ5で、ステップ3での選択処理により最高の解析周波数まで解いたのか否かを判断して、解いたことを判断するときには、後述するステップ9(図14の処理フロー)の処理に進み、解いていないことを判断するときは、ステップ6に進んで、ステップ4でかかった反復法の解析時間や反復回数などを使って、上述した方法に従って反復法の続行の可否を判断する。

0089

このステップ6の判断処理により、反復法の続行可を判断するときには、ステップ3に戻り、反復法の続行不可を判断するときには、ステップ7に進んで、昇順の形態に従って次の解析周波数fs+1 を選択する。

0090

続いて、ステップ8で、連立一次方程式格納ファイル23から、その選択した解析周波数fs+1 の相互インピーダンスZs+1 を読み込んで、それを図20に示すような形式にコレスキー分解(Zs+1 =CCt )し、そのコレスキー分解した相互インピーダンスZ0 を用いて、図21に示した算出式に従って、その選択した解析周波数の連立一次方程式「Zs+1 Is+1 =Vs+1 」を直接法で解いてから、ステップ3に戻っていく、ここで、ステップ4で反復法の解析処理を実行するときにあって、ステップ8を経由してきた場合には、ステップ8で得た分解行列Cを用いて、ステップ3で選択した解析周波数の連立一次方程式を変形していくことになる。

0091

一方、ステップ5で、最高の解析周波数まで解いたことを判断するときには、ステップ9(図14の処理フロー)に進んで、ステップ1で選択した解析周波数を起点として、連立一次方程式格納ファイル23に格納される解析周波数の中から降順に解析周波数f-s(s=1,2,3,・・)を1つ選択する。

0092

続いて、ステップ10で、ステップ2で得た分解行列Cを用いて、ステップ9で選択した解析周波数f-sの連立一次方程式「Z-sI-s=V-s」を、「C-1Z-sCt*-1Ct I-s=C-1V-s」と変形し、1つ前の解析周波数f-s+1で得た解I-s+1をI-sの初期値として、それを反復法で解が求まるまで解く。

0093

続いて、ステップ11で、ステップ9での選択処理により最低の周波数波数まで解いたのか否かを判断して、解いたことを判断するときには、全処理を終了し、解いていないことを判断するときは、ステップ12に進んで、ステップ10でかかった反復法の解析時間や反復回数などを使って、上述した方法に従って反復法の続行の可否を判断する。

0094

このステップ12の判断処理により、反復法の続行可を判断するときには、ステップ9に戻り、反復法の続行不可を判断するときには、ステップ13に進んで、降順の形態に従って次の解析周波数f-s-1を選択する。

0095

続いて、ステップ14で、連立一次方程式格納ファイル23から、その選択した解析周波数f-s-1の相互インピーダンスZ-s-1を読み込んで、それを図20に示すような形式にコレスキー分解(Z-s-1=CCt )し、そのコレスキー分解した相互インピーダンスZ-s-1を用いて、図21に示した算出式に従って、その選択した解析周波数の連立一次方程式「Z-s-1I-s-1=V-s-1」を直接法で解いてから、ステップ9に戻っていく、ここで、ステップ10で反復法の解析処理を実行するときにあって、ステップ14を経由してきた場合には、ステップ14で得た分解行列Cを用いて、ステップ9で選択した解析周波数の連立一次方程式を変形していくことになる。

0096

このようにして、連立一次方程式解法プログラム24は、図13及び図14の処理フローに従うときには、先ず最初に、好ましくは概略中間に位置する解析周波数について、直接法を使って連立一次方程式を解き、続いて、その解析周波数を起点として、解析周波数を昇順及び降順に選択しながら、直接法で得た分解行列を使って連立一次方程式を変形し、それを反復法で解いていく。そして、反復法を解き終えた時点で、直接法で解いた解析周波数より周波数距離が離れることで、反復法による解析処理が計算時間を要する状態になることを検出すると、次の解析周波数については直接法を使って連立一次方程式を解き、その後、その直接法で得た分解行列を使って連立一次方程式を変形し、それを反復法で解いていくことを繰り返していくように処理するのである。

0097

次に、連立一次方程式解法プログラム24により実行される本発明の他の実施例について説明する。

0098

この実施例に従う場合、連立一次方程式解法プログラム24は、図15に示すように、解析周波数の領域を複数に分割して、それらの各領域に対して、図8の処理フローに従う解析処理を実行する構成を採ることで、電子機器の各要素に流れる電流を高速に算出することを実現する。

0099

図16に、この実施例を実現するために連立一次方程式解法プログラム24が実行する処理フローの一実施例を図示する。

0100

この処理フローに従う場合、連立一次方程式解法プログラム24は、先ず最初に、ステップ1で、図15に示すように解析周波数の領域を複数に分割する。この分割形態については後述する。

0101

続いて、ステップ2で、未処理の分割領域の中から分割領域を1つ選択し、続くステップ3で、全ての分割領域を選択したのか否かを判断して、全ての分割領域を選択したことを判断するときには、全処理を終了する。

0102

一方、ステップ3で、全ての分割領域を選択していないことを判断するとき、すなわち、ステップ2で未処理の分割領域を選択できたことを判断するときには、ステップ4に進んで、その選択した分割領域を処理対象として、図8の処理フローに従ってシミュレーション処理を実行する。そして、未処理の分割領域に対する解析処理を行うべくステップ2に戻る。

0103

ここで、この実施例の基本的な技術思想は、解析周波数の領域を複数に分割することにある。これから、図8の処理フローで選択する起点解析周波数(直接法で解く解析周波数)については、各分割領域の両端の周波数から選んでもよい。勿論、各分割領域の概略中間に位置する解析周波数を選ぶことが好ましい。

0104

このようにして、連立一次方程式解法プログラム24は、解析周波数の領域を複数に分割して、それらの各分割領域に対して、図8の処理フローに従う解析処理を実行する構成を採ることで、電子機器の各要素に流れる電流を高速に算出するのである。

0105

この実施例と、図10及び図11の処理フローや図14及び図15の処理フローで説明した実施例とを組み合わせることも可能である。すなわち、この実施例に従って各分割領域を反復法で解いていくときに、その計算時間が大きくなるときには、直接法で解いて、その結果得られる分解行列を使って連立一次方程式を変形して反復法で解いていくという構成を採ることも可能である。

0106

この図16の処理フローから分かるように、各分割領域に対して行われる図8の処理フローに従う解析処理はそれぞれ独立したものであり、これから、複数のプロセッサを使って並列処理することが可能である。この並列処理構成を採ると、極めて高速にシミュレーション処理を実行できるようになる。

0107

この実施例で実行する解析周波数の分割処理については、総計算時間が最も少なくように解析周波数の領域を分割することが好ましい。次に、この分割を実現するためのアルゴリズムについて説明する。

0108

反復法で解が求まるまでの計算時間(反復回数)は、後述する実験結果からも分かるように、概略、直接法で解析した起点となる解析周波数からの周波数距離に比例する。すなわち、起点からn離れた解析周波数での反復法の計算時間tは、概略、
t=a×n+b
と表される。

0109

従って、直接法の計算時間をA、解析周波数の領域を0〜N、反復法を用いる解析周波数の間隔を1、分割する解析周波数の領域数をK、k番目の分割領域をDk-1 〜Dk (D0=0,DK =N)、各分割領域での起点となる解析周波数(直接法で解く解析周波数)をd1 〜dK と表すならば、総計算時間Tは、
T(K,D1,・・・DK-1, d1,・・・dK )
=KA+(N−K)b
+Σk=d1-1k=D0a(d1 −k)+Σk=d1+1k=D1-1a(k−d1 )
+・・・・・・・・・・・・・
+Σk=dK-1k=DK-1a(dK −k)+Σk=dK+1k=DK-1a(k−dK )
=KA+(N−K)b
+ad1(d1+1)/2+a(D1-d1-1)(D1-d1)/2
+・・・・・・・・・・・・・
+a(dK-DK-1)(dK-DK-1+1)/2+a(N-dK-1)(D1-dK)/2
と表される。

0110

この総計算時間Tを最小とする「K,D1,・・・DK-1,d1,・・・dK 」が最適な起点周波数及び領域分割を与えることになる。

0111

この問題は、
xk=dk−Dk-1 ,yk=Dk−dk k=1〜K
書き直すと、
Σk=1k=Kxk+yk=N xk≧0,yk≧1
という拘束条件の下で、
T(K,x1,・・・xK ,y1,・・・yK )=(A−b)K+bN+(a/2)Σk=1k=Kxk2+yk2+xk−yk
と表される総計算時間Tを最小とする、「整数」K, xk,yk (k=1〜K)を求めよという問題に帰着する。

0112

この問題を解くために、先ず最初に、Kを固定し、近似的にxk,yk (k=1〜K)を連続値として見なして、この総計算時間Tの極値を計算すると、
x0k=(N−K)/2K,y0k=(N+K)/2K k=1〜K
T0(K)=T(K,x01,・・・,x0K,y01,・・・,y0K)
=(A−(a/4)−b)K+(an2/4K)+bN
が求まる。ここで、上記式は、極値において、x0k,y0kがkに依存しないことを示している。

0113

このことは、各分割領域の大きさが均等になるようにと解析周波数の領域を分割するとともに、各分割領域の起点となる解析周波数(直接法で解く解析周波数)として、各分割領域の中点を用いる必要があることを示している。

0114

次に、Kを連続値と見なして、このT0 (K)の極値を計算すると、
K0=N〔a/(4A−a−4b)〕1/2
T0=T0(K0)=N〔(a(4A−a−4b)1/2 /2+b〕
が求まる。

0115

以上のことから、直接法の計算時間Aと反復法の計算時間の特性係数a,bとが知られているときや、実際に解析処理を行うことでこれらを求める(反復法の計算時間の特性係数a,bについては、少し解析処理を行うことで求めることが可能である)と、
K0=N〔a/(4A−a−4b)〕1/2
を計算することが可能になり、これから、このK0 に近い整数Kを求めて、それに従って解析周波数をK個に等分割するとともに、各分割領域の中点で直接法を解いていくことで、総計算時間Tを最小にできることが分かる。

0116

なお、「(4A−a−4b)<0」となるときには、反復法を使わずに直接法のみを用いることになる。また、分割領域を等分できないときには、これまでの実験結果に基づく経験から、高周波数領域を広めに取ることが好ましい。また、中点が正確に取れないときには、これまでの実験結果に基づく経験から、低周波よりに中点を取ることが好ましい。

0117

次に、本発明の有効性を検証するために行った実験結果について説明する。

0118

この実験は、電源層グランド層とから構成される正方形プリント板を解析対象とし、220MHz〜1000MHz間に20MHzの間隔で設定される40点の解析周波数を想定することで行った。相互インピーダンスの行列次元数は1733である。

0119

図17に、図8の処理フローに従う場合の実験結果を図示する。

0120

この実験では、起点解析周波数を600MHzとした。この実験から、40点の解析周波数の全てを直接法で解くと764.2秒(1周波数当たり19.11秒)かかるのに対して、図8の処理フローの本発明に従うと619.32秒で済むという結果が得られた。

0121

また、この実験から、反復法で解が求まるまでの計算時間は、概略、直接法で解析した起点解析周波数からの周波数距離に比例することが分かり、これから、起点解析周波数を最低周波数とする従来技術に比べて、少ない計算時間で済むという結果が得られた。

0122

図17の実験結果から、上述した直接法の計算時間Aと反復法の計算時間の特性係数a,bとは、
A=19.11, a=1.143, b=4.957
となることが分かる。従って、上述した式に従って、最適な分割数Kは、
K=N〔a/(4A−a−4b)〕1/2 =5.744≒6
と求まる。

0123

これから、
領域1:220〜320MHz(6周波数) 起点260MHz
領域2:340〜440MHz(6周波数) 起点380MHz
領域3:460〜580MHz(7周波数) 起点520MHz
領域4:600〜720MHz(7周波数) 起点660MHz
領域5:740〜860MHz(7周波数) 起点800MHz
領域6:880〜1000MHz(7周波数) 起点940MHz
と分割して、図16の処理フローに従う実験を行った。図18に、この実験結果を図示する。

0124

この実験から、40点の解析周波数の全てを直接法で解くと764.2秒(1周波数当たり19.11秒)かかるのに対して、図16の処理フローの本発明に従うと357.07秒で済むという結果が得られた。このようにして、本発明の有効性を検証できた。

0125

図示実施例に従って本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、実施例ではモーメント法への適用を具体例にして本発明を説明したが、本発明は有限要素法や差分法などのようなその他の解析方法に対しても、そのまま適用できる。

発明の効果

0126

以上説明したように、本発明のシミュレーション装置では、解析周波数領域の持つ両端以外の1つの周波数を解析対象として、直接法に従って連立一次方程式を解き、それ以外の周波数については、直接法で分解した係数行列を使って連立一次方程式を変形しつつ反復法により解く構成を採るので、反復法で解く周波数と直接法で解く周波数との間の周波数距離が従来技術に比べて小さくなることで、反復法で解く連立一次方程式が所望のものに近い形に変形でき、これにより、高速に解析処理を実行できるようになる。

0127

また、本発明のシミュレーション装置では、解析周波数領域を分割し、その分割した各解析周波数領域毎に、その分割した解析周波数領域の中の1つの周波数を解析対象として、直接法に従って連立一次方程式を解き、それ以外の周波数については、直接法で分解した係数行列を使って連立一次方程式を変形しつつ反復法により解く構成を採るので、反復法で解く周波数と直接法で解く周波数との間の周波数距離が従来技術に比べて小さくなることで、反復法で解く連立一次方程式が所望のものに近い形に変形でき、これにより、高速に解析処理を実行できるようになる。

0128

また、本発明のシミュレーション装置では、直接法で分解した係数行列を使って連立一次方程式を変形しつつ反復法により解く構成を採るときにあって、反復法で解く周波数と直接法で解く周波数との間の周波数距離が大きくなることで、その係数行列を用いる反復法では解析時間が長くなってしまうことになると、直接法を実行することで解析周波数に適合した形で分解される係数行列を得て、それを使って反復法により連立一次方程式を解くようにする構成を採ることから、反復法で解く連立一次方程式が所望のものに近い形に変形でき、これにより、高速に解析処理を実行できるようになる。

0129

このようにして、本発明のシミュレーション装置によれば、モーメント法などに従って、解析周波数に応じて定義される連立一次方程式を解くことで、電子機器に流れる電流をシミュレートする構成を採るときにあって、そのシミュレーション処理を高速に実現できるようになる。

図面の簡単な説明

0130

図1本発明の原理構成図である。
図2本発明の一実施例である。
図3モーメント法の連立一次方程式の説明図である。
図4相互インピーダンスの算出方法の説明図である。
図5相互インピーダンスの算出方法の説明図である。
図6波源と観測点との関係図である。
図7電界の算出式の説明図である。
図8連立一次方程式解法プログラムの処理フローである。
図9連立一次方程式解法プログラムの処理説明図である。
図10連立一次方程式解法プログラムの処理フローである。
図11連立一次方程式解法プログラムの処理フローである。
図12連立一次方程式解法プログラムの処理説明図である。
図13連立一次方程式解法プログラムの処理フローである。
図14連立一次方程式解法プログラムの処理フローである。
図15連立一次方程式解法プログラムの処理説明図である。
図16連立一次方程式解法プログラムの処理フローである。
図17実験結果の説明図である。
図18実験結果の説明図である。
図19連立一次方程式の説明図である。
図20コレスキー分解の説明図である。
図21連立一次方程式の解の説明図である。
図22共役勾配法の説明図である。
図23前処理付き共役勾配法の説明図である。

--

0131

1シミュレーション装置
10解析周波数ファイル
11係数行列ファイル
12解析結果ファイル
13 分割手段
14選定手段
15 第1の解析手段
16 第2の解析手段
17解法制御手段

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