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技術 化学物質過敏症の患者のために居住空間内に設置される部屋

出願人 ダイキン工業株式会社
発明者 小畑光央田中利夫
出願日 1998年10月20日 (21年4ヶ月経過) 出願番号 1998-298945
公開日 2000年4月25日 (19年10ヶ月経過) 公開番号 2000-116726
状態 未査定
技術分野 換気3 看護設備、治療台
主要キーワード 引き扉 清浄化作業 隙間充填材 構成パーツ 吸込用ファン 段差端面 清浄化能力 外気環境
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2000年4月25日)のものです。
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図面 (15)

課題

化学物質過敏症患者は、絶対に発病しないという安心感を持つことができ、万一発病した際には、その症状を速やかに鎮静化させることのできる場所を切望している。

解決手段

居住空間2内に設置できる部屋1を作る。部屋1は、揮発性有害化学物質の発生が少ない材料を主体として作り、居住空間2内での組立てが可能である。組立てられた部屋1は、揮発性有害化学物質を低減した閉空間9を形成する。閉空間9内に清浄した空気を導入する導入空気清浄装置17と、閉空間9内の空気を循環させながら清浄化する部屋内空気清浄装置18とを設ける。

効果

化学物質過敏症患者のニーズ応えることのできる部屋1を提供できる。

概要

背景

この発明に興味ある先行技術としては、特開平5−231684号公報に記載の「パーソナルクリーンブース」の発明がある。この公報記載の発明は、空気中のエアロゾルによるアレルギー反応を抑えて、患者に健康と安らぎを与えるクリーンブースを与えるものである。

この公報記載のクリーンブースは、花粉煙草の煙、塵、ダニ等の空気中のエアロゾルをアレルゲンとするアレルギー患者にとっては有益と思われるが、クリーンブース内の空間中の揮発性化学物質を十分に除去できる構成にはなっていない。特に、ブース帯電防止シートによって外部と区画されているため、この帯電防止シート自体から多くの揮発性有害化学物質放散されてしまう。

従って、化学物質過敏症患者にとって、上記公報に記載のクリーンブースは利用することができない。この発明は、発明の背景でも述べたように、化学物質過敏症患者に対して有効な、揮発性有害化学物質を低減した閉空間を形成する部屋を提供することを主たる目的としている。

概要

化学物質過敏症患者は、絶対に発病しないという安心感を持つことができ、万一発病した際には、その症状を速やかに鎮静化させることのできる場所を切望している。

居住空間2内に設置できる部屋1を作る。部屋1は、揮発性有害化学物質の発生が少ない材料を主体として作り、居住空間2内での組立てが可能である。組立てられた部屋1は、揮発性有害化学物質を低減した閉空間9を形成する。閉空間9内に清浄した空気を導入する導入空気清浄装置17と、閉空間9内の空気を循環させながら清浄化する部屋内空気清浄装置18とを設ける。

化学物質過敏症患者のニーズ応えることのできる部屋1を提供できる。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

居住空間(2)内に設置され、揮発性有害化学物質濃度を低減した閉空間(9)を形成するための部屋(1)であって、主に揮発性有害化学物質の発生が少ない材料を用いて作られていることを特徴とする部屋。

請求項2

請求項1記載の部屋は、居住空間(2)内での組立てが可能であることを特徴とする部屋。

請求項3

請求項1または2記載の部屋であって、前記閉空間(9)を形成する壁面の少なくとも一部は、居住空間(2)と閉空間(9)との間の光の透過を可能にするために透明または半透明の材料で形成されていることを特徴とする部屋。

請求項4

化学物質過敏症患者のために居住空間(2)内に設置される部屋(1)であって、揮発性有害化学物質の発生が少ない材料を主体としてなり、居住空間(2)内での組立てが可能であって、組立てられることによって揮発性有害化学物質を低減した所定の閉空間(9)が形成され、さらに、その閉空間(9)内の空気に含まれる揮発性有害化学物質を低減するための空気清浄装置を有することを特徴とする部屋。

請求項5

請求項4記載の部屋において、前記空気清浄装置(17,18)は、前記閉空間(9)内の空気を循環させて、その際に、空気中に含まれる揮発性有害化学物質を低減する部屋内空気清浄装置(18)を含むことを特徴とする部屋。

請求項6

請求項4または5記載の部屋であって、前記空気清浄装置(17,18)は、部屋外の空気を前記閉空間(9)内に導入する際に、空気中に含まれる揮発性有害化学物質を低減する導入空気清浄装置(17)を含むことを特徴とする部屋。

請求項7

請求項4記載の部屋であって、前記空気清浄装置(17,18)は、請求項5記載の部屋内空気清浄装置(18)および請求項6記載の導入空気清浄装置(17)の両方を備え、部屋内空気清浄装置(18)の清浄化能力の方が導入空気清浄装置(17)の清浄化能力よりも大きくされていることを特徴とする部屋。

請求項8

請求項4記載の部屋であって、前記空気清浄装置(17,18)は、請求項5記載の部屋内空気清浄装置(18)および請求項6記載の導入空気清浄装置(17)の両方を備え、部屋内空気清浄装置(18)の送風量が導入空気清浄装置(17)の送風量に比べて大きくされていることを特徴とする部屋。

請求項9

請求項1〜5のいずれかに記載の部屋であって、部屋(1)内に化学物質過敏症患者が所定時間以上滞在した場合に、該患者の呼気由来によるCO2 濃度上昇および酸素欠乏を抑えるために、閉空間(9)内と居住空間(2)内との通気を可能にする通気手段(80)を含むことを特徴とする部屋。

請求項10

請求項1〜5のいずれかに記載の部屋であって、前記閉空間(9)内の気圧を、居住空間(2)内の気圧に比べて陽圧にするための手段(17)を有することを特徴とする部屋。

請求項11

請求項10記載の部屋であって、前記陽圧にするための手段(17)は、部屋外の空気を前記閉空間(9)内に導入する際に、空気中に含まれる揮発性有害化学物質を低減する導入空気清浄装置(17)を含むことを特徴とする部屋。

技術分野

0001

この発明は、化学物質過敏症患者等により利用される居住空間内に設置される部屋に関する。特に、空気中に含まれる揮発性有害化学物質濃度が十分に低減された閉空間を構成する部屋に関する。

0002

身の回りに溢れ化学物質によって身体の不調訴える「化学物質過敏症」に悩む人が増えている。「化学物質過敏症」は一言で定義することは難しいが、たとえば「過敏性を獲得し、極めて微量な化学物質に反応し不愉快な症状を示す病気」と言うことができる。

0003

健康な人が大量の化学物質に曝露されると、過敏状態になり、化学物質過敏症を発症する恐れがある。たとえば、近隣除草剤が使用されたり、シロアリ駆除剤を使用したことに起因して発症した例が報告されている。化学物質過敏症になると、従来の中毒という概念からは考えられないほどのごく微量の化学物質に対しても反応し、アレルギー様の反応を起こす。また、過敏状態の原因となった特定の化学物質だけではなく、症状がひどくなると多種類の化学物質に対しても反応をしてしまう。さらに、化学物質過敏症は、アレルギー疾患様の性格だけではなく、低濃度の化学物質に反復曝露されていると体内に化学物質が蓄積して、慢性的な症状をきたすという中毒性疾患に近い性格も兼ね備えている。

0004

化学物質過敏症の患者は、上述のように、ごく微量の化学物質に対して反応し発病するが、その原因物質としては、除草剤等の農薬、シロアリ駆除剤、殺虫剤パラジクロロベンゼン等の芳香剤建材塗料等に含まれるホルムアルデヒド排ガスジーゼル粉塵等身近に存在する多くの物質が挙げられる。患者は、一旦発作が起きると、数時間から数日、頭痛、目眩、耳鳴り全身倦怠等の色々な症状に悩まされ、根本的な治療のしようがないのが現状である。たとえば、投薬という方法を採ろうとしても、薬自体が化学物質であり、患者によっては、拒否反応をする。また、救急車病院内は、消毒薬充満しており、症状を一層悪化させる場合もある。

0005

一方、住環境を見てみると、外気環境的には、自動車排気ガスゴミ焼却煙、農薬等の患者本人では制御できない化学物質が溢れている。また室内環境では、様々な化学物質を放散する機器雑貨家具が溢れており、家屋を構成する合板フローリング、壁紙等も化学物質を放散する。このように、現在の生活は、化学物質をなくしては考えられない環境にある。

0006

しかし、このような環境の中でも、患者たちはできるだけの努力をし、身の回りから化学物質を放散するものを取り除き、不安定ながらも生活をしている状況にある。過敏症患者が発病する場面としては、
・家具や日用品から出る化学物質と接触した、
外出中に車の排気ガスを吸った、
・隣家のペンキが塗られた、
来客香水をつけてきた、
等枚挙にいとまがない。このため、患者は、日から化学物質と接触しないように注意し、
・化学物質を出す日用品を近くに置かない、
外出時は活性炭入りマスクをする、
・窓を開けない、
等を心掛けているが、発病への不安を常時抱えている状況である。

0007

そこで発明者は、化学物質過敏症患者に対して、
絶対に発病しないという安心感を与えることのできる場所を提供し、
一発病した際には、その症状を速やかに鎮静化させることのできる場所を提供する、という発想のもとに、この発明を完成するに至ったものである。

背景技術

0008

この発明に興味ある先行技術としては、特開平5−231684号公報に記載の「パーソナルクリーンブース」の発明がある。この公報記載の発明は、空気中のエアロゾルによるアレルギー反応を抑えて、患者に健康と安らぎを与えるクリーンブースを与えるものである。

0009

この公報記載のクリーンブースは、花粉煙草の煙、塵、ダニ等の空気中のエアロゾルをアレルゲンとするアレルギー患者にとっては有益と思われるが、クリーンブース内の空間中の揮発性化学物質を十分に除去できる構成にはなっていない。特に、ブース帯電防止シートによって外部と区画されているため、この帯電防止シート自体から多くの揮発性有害化学物質が放散されてしまう。

0010

従って、化学物質過敏症患者にとって、上記公報に記載のクリーンブースは利用することができない。この発明は、発明の背景でも述べたように、化学物質過敏症患者に対して有効な、揮発性有害化学物質を低減した閉空間を形成する部屋を提供することを主たる目的としている。

課題を解決するための手段

0011

請求項1記載の発明は、居住空間内に設置され、揮発性有害化学物質濃度を低減した閉空間を形成するための部屋であって、主に揮発性有害化学物質の発生が少ない材料を用いて作られていることを特徴とする部屋である。請求項2記載の発明は、請求項1記載の部屋は、居住空間内での組立てが可能であることを特徴とするものである。

0012

請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の部屋であって、前記閉空間を形成する壁面の少なくとも一部は、居住空間と閉空間との間の光の透過を可能にするために透明または半透明の材料で形成されていることを特徴とするものである。請求項4記載の発明は、化学物質過敏症の患者のために居住空間内に設置される部屋であって、揮発性有害化学物質の発生が少ない材料を主体としてなり、居住空間内での組立てが可能であって、組立てられることによって揮発性有害化学物質を低減した所定の閉空間が形成され、さらに、その閉空間内の空気に含まれる揮発性有害化学物質を低減するための空気清浄装置を有することを特徴とする部屋である。

0013

請求項5記載の発明は、請求項4記載の部屋において、前記空気清浄装置は、前記閉空間内の空気を循環させて、その際に、空気中に含まれる揮発性有害化学物質を低減する部屋内空気清浄装置を含むことを特徴とするものである。請求項6記載の発明は、請求項4または5記載の部屋であって、前記空気清浄装置は、部屋外の空気を前記閉空間内に導入する際に、空気中に含まれる揮発性有害化学物質を低減する導入空気清浄装置を含むことを特徴とするものである。

0014

請求項7記載の発明は、請求項4記載の部屋であって、前記空気清浄装置は、請求項5記載の部屋内空気清浄装置および請求項6記載の導入空気清浄装置の両方を備え、部屋内空気清浄装置の清浄化能力の方が導入空気清浄装置の清浄化能力よりも大きくされていることを特徴とするものである。請求項8記載の発明は、請求項4記載の部屋であって、前記空気清浄装置は、請求項5記載の部屋内空気清浄装置および請求項6記載の導入空気清浄装置の両方を備え、部屋内空気清浄装置の送風量が導入空気清浄装置の送風量に比べて大きくされていることを特徴とするものである。

0015

請求項9記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の部屋であって、部屋内に化学物質過敏症患者が所定時間以上滞在した場合に、該患者の呼気由来によるCO2 濃度上昇および酸素欠乏を抑えるために、閉空間内と居住空間内との通気を可能にする通気手段を含むことを特徴とするものである。請求項10記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の部屋であって、前記閉空間内の気圧を、居住空間内の気圧に比べて陽圧にするための手段を有することを特徴とするものである。

0016

請求項11記載の発明は、請求項10記載の部屋であって、前記陽圧にするための手段は、部屋外の空気を前記閉空間内に導入する際に、空気中に含まれる揮発性有害化学物質を低減する導入空気清浄装置を含むことを特徴とするものである。請求項1の構成によれば、揮発性有害化学物質を発生する建材資材を用いて作られた部屋や、揮発性有害化学物質を発生する家具等が置いてある部屋の中に、この発明にかかる部屋を設置しても、部屋内の閉空間は部屋外の影響を受けにくいので、化学物質過敏症患者にとって有益である。また、部屋外の居住空間にある資産を利用しやすいため、患者にとって日常に近い生活が可能となる。

0017

たとえば、部屋内閉空間外に香水をつけた人が一時的に入って来て出て行った場合を想定すれば、閉空間内に汚染が拡大しないうちに汚染源がなくなるため、閉空間内に患者がいる場合と、閉空間外に患者がいる場合とでは、患者に対する影響は閉空間内にいる場合の方が少ない。請求項2記載の構成では、既設の住宅内に設置できるので、新たに住宅を作るよりも安価である。また、組立て可能なために、多くの既設住宅に適用でき、汎用性のある部屋とすることができる。

0018

請求項3記載の構成では、居住空間に備えられた照明ランプ等の光が閉空間内に届く。このため部屋内で過ごす際に、閉空間内に特別の灯を設置する必要はない。また、閉空間内の患者は、居住空間内の様子を確認できるから、閉塞感緩和等も期待できる。請求項4の構成によれば、空気中の揮発性有害化学物質が低減された閉空間を提供することができ、化学物質過敏症患者に対して、絶対に発症しないという安心感を得られる場所を与えることができる。また、患者が発症した後に、その症状を速やかに鎮静化させる際に利用できる。

0019

さらに、部屋は、居住空間内に設置されるから、患者の日常生活への支障を最小限に抑えることができる。さらに、部屋は、居住空間内で組立て可能であるから、既設の住宅内に設置でき、新たに専用の住宅を作るよりも安価に実現できる。また、組立て可能なために、多くの既設住宅に適用でき、汎用性のある部屋とすることができる。

0020

請求項5記載の構成では、部屋により区画される閉空間内の空気が部屋内空気清浄装置で循環されて清浄化されるので、効率良くかつ良好に部屋内の揮発性有害化学物質を低減することが可能である。請求項6記載の構成では、部屋内に空気が導入される際に、導入される空気が導入空気清浄装置により清浄化されるので、揮発性有害化学物質の多い空気が部屋内に入り込まない。

0021

また、患者が部屋内に長時間滞在する場合であっても、部屋内には清浄化された空気が導入されるため、患者の呼気由来による二酸化炭素濃度の上昇や、酸素欠乏という状態を招かない。また、部屋内に空気が導入されると、部屋内の気圧が居住空間の気圧に比べて高い陽圧となるから、部屋の構造上生じる隙間等から居住空間の空気が部屋内に進入することを防止できる。

0022

請求項7記載のように、空気清浄装置を、部屋内空気清浄装置および導入空気清浄装置の両方とし、部屋内空気清浄装置の清浄化能力の方を大きくすれば、突発的に発生する汚染によって部屋内の揮発性有害化学物質濃度が増えても、速やかに清浄化が行われる。ここで「清浄化能力」とは、一定時間で一定の空気量をどの程度清浄化できるかを示す能力であって、(通風量)×(一過性除去効率)と定義することができる。この定義によれば、通風量が1m3 /minで、一過性除去効率が90%の場合と、通風量が3m3 /minで、一過性除去効率が30%の場合とは、等しい清浄化能力ということになる。請求項7では、上記のように定義される清浄化能力が、部屋内空気清浄装置の方が大きくされているのである。

0023

請求項8記載のように、部屋内空気清浄装置の循環風量を大きくした場合、部屋内の空気は繰り返して循環され、その際に揮発性有害化学物質が除去される。従って、一過性清浄度を高めようとした構成よりも、空気清浄装置の構成を小型化でき、安価な部屋を作ることが可能である。より具体的に説明すれば、一過性の除去効率を上げようとすると、有害化学物質を吸着するためのフィルタの構成を大きくしなければならない。たとえば活性炭を多量に使用した大型のフィルタ等を構成しなければならない。一方、清浄化能力は、請求項7に関連して説明したように、(通風量)×(一過性除去効率)で定義されるから、通風量を大きくすれば、清浄化能力も大きくなる。請求項8は、通風量を大きくして、部屋内の空気が繰り返して部屋内空気清浄装置で清浄化され、その結果部屋内の清浄度を高めるという構成である。

0024

請求項9記載のように通気手段を設ければ、患者が部屋内で長時間過ごし、それにより酸素が消費されて二酸化炭素が発生することに起因する酸素の欠乏および二酸化炭素濃度の増加という問題を解決することができ、患者が長時間部屋内で過ごすことができる部屋になる。請求項10記載のように部屋内を陽圧にする手段を設けると、部屋を構成する材料からの揮発性有害化学物質の発生が抑止される。その結果、部屋内の空気に含まれる有害化学物質の濃度を低減できる。

0025

なぜなら、部屋を構成する部材や部屋内に存在する日用品が、居住空間を構成している部材等と同等の揮発性有害化学物質を含んでいる場合であっても、居住空間の気圧に比べて閉空間内の気圧を陽圧にすることにより、部屋内における揮発性有害化学物質の揮発を抑えることができるからである。請求項11記載のように、陽圧にする手段を導入空気清浄装置とすれば、部屋内に導入される空気から揮発性有害化学物質が除去され、部屋内の清浄度をより向上させることができる。

発明を実施するための最良の形態

0026

以下には、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施形態にかかる化学物質過敏症患者用の部屋の概要を示す斜視図である。この部屋1は、既存の居住空間(いわゆる普通の部屋)2内に設置されるシェルタ様の閉じた空間を形成するもので、いわば「ルームインルーム」というコンセプトで作られたものである。

0027

化学物質過敏症の患者は、ごく微量の濃度の化学物質に触れても発症するため、部屋1内の化学物質濃度を十分に低く抑える必要がある。そのために、部屋1は、揮発性有害化学物質の発生が少ない材料を主体として作られている。たとえば、無機金属天然木材セラミックガラス等の化学物質を放散しにくい材料で構成されるか、化学物質放散の少ない素材で表面を完全にコーティングした材料で構成されている。

0028

具体的には、部屋1は、たとえば直方体状をしており、各辺は図示を省略した木枠(たとえば等の無垢の天然木材の木枠)で形成されている。また、部屋1は、床面3、正面4、背面5、左側面6、右側面7および天面8の6面で囲まれた閉空間9を有している。床面3は、たとえばセラミック板で形成され、正面4、左側面6および天面8はガラス板で形成され、背面5および右側面7は天然木(杉等の無垢の木板)で構成されている。

0029

図2に、部屋1の組立構造の一例を、図解的な断面で示す。床面3は、複数枚のセラミック板3a,3bが連結されて作られている。セラミック板3a,3bの接続端面には凹凸10が形成され、該凹凸10が嵌合し合うことによって、隙間がほとんど生じることなく、セラミック板3a,3b同士が接続されている。また必要があれば、セラミック製や無機系金属製のまたはピン11が接続凹凸10部分に打ち込まれて、接続が固定されている。

0030

枠(たとえば杉の木枠)12とセラミック製床板3aとの接続も、凹凸13を形成し、両者を嵌合させることにより、ほとんど隙間のない接続が実現されている。この接続部にも、必要に応じて、木製、セラミック製、無機系金属製等の釘またはピン14が使用され、接続状態が固定されている。正面を形成するガラス板4は、その下辺および上辺ならびに図には現れていないが左右両側辺が木枠12に保持されている。木枠12には、ガラス板4の端辺を嵌め込む溝15が形成され、その溝15にガラス板4の端辺が密接するように挿入されている。この場合、ガラス板4を嵌め込んだ後、木枠12同士を連結すれば、ガラス板4は四方が木枠12で保持されているので、しっかりと固定可能である。

0031

天面8を構成するガラス板8も、同様に、木枠12により保持されている。以上説明した図2の組立構造は、一例であり、これ以外の組立構造が採用されていてもよい。重要なことは、部屋1を形成する材料が、上述したように、揮発性有機化学物質の発生が少ない材料が主体として作られることにある。図1に戻って、部屋1は、この実施形態では正面4、左側面6および天面8がガラス板で構成されているので、部屋1が形成する閉空間9内に、居住空間2に備えられた光源(照明ランプ等)16の光が十分に届く。このため、部屋1内で過ごす際に、閉空間9内に特別の灯を設置する必要はない。また、ガラス板で構成されたこれら3面を通して、部屋1内の患者は居住空間2内の様子を確認できるから、閉塞感の緩和等も期待できる。

0032

部屋1には、2種類の空気清浄装置17,18が備えられている。一方の空気清浄装置17は、導入空気清浄装置であり、居住空間2の空気を浄化して部屋1内へ導入するための清浄装置である。他方の空気清浄装置18は、部屋内空気清浄装置であり、部屋1内の空気を循環させながら浄化するための清浄装置である。

0033

図3は、導入空気清浄装置17の構成例を示す断面構造図である。この清浄装置17は、居住空間2の空気を吸い込むための吸い込み口21を備え、吸い込み口21にはプレフィルタ22が嵌められている。プレフィルタ22は吸い込み口21から吸い込まれる空気中に含まれる塵埃等を捕獲するためのものである。清浄装置17内にはモータ23で回転されるターボファン24が備えられており、ターボファン24の回転により吸い込み口21から空気が吸い込まれる。吸い込まれた空気の通路にはフィルタ25が備えられている。フィルタ25は吸い込まれる空気中に含まれている有害化学物質を、たとえば吸着することによって除去するフィルタである。フィルタ25に含まれる化学物質の吸着材としては、活性炭、活性炭素繊維ゼオライト化学フィルタ等を単独または組合わせて用いることができる。

0034

また、化学物質をたとえば水吸収等を用いて吸収することにより除去するようなフィルタとしてもよい。あるいは、化学物質を、酸化燃焼触媒光触媒または高温での燃焼分解等により分解することで除去するフィルタを採用することもできる。さらに、フィルタ25は、化学物質を除去するだけでなく、ごく細かな粒子状物質も除去できるように、HEPAフィルタ等の濾材が併設されたものとしてもよい。

0035

フィルタ25を通過した浄化された空気は、吹出口26から部屋1内へ吹き出される。吹出口26には風向板27が備えられており、吹き出される空気の方向を調整可能にされている。導入空気清浄装置17は、揮発性有害化学物質の発生が少ない材料を主体として構成されている。たとえばターボファン24等は、樹脂成形品ではなく、たとえばセラミックや、無機系金属で構成される等の配慮がされている。

0036

図4は、部屋内空気清浄装置18の構成例を示す断面構造図である。この清浄装置18は、ハウジング31のたとえば上面に吸込口32が備えられており、吸込口32の内側には吸込用ファンとしてたとえばシロッコファン33が配置されている。シロッコファン33の回転により吸込口32から吸い込まれた空気は、風路34内を通る。風路34内には化学物質吸着フィルタ35が配置されており、風路34を流れる空気中に含まれる化学物質がフィルタ35で除去される。この実施例では、風路34は、ハウジング31内でUターンされており、比較的長い風路にされている。そして、この長い風路34内にフィルタ35が充填されているから、化学物質を除去する清浄化能力の高い構成となっている。

0037

風路34の出口側には吹出用ファンとしてシロッコファン36が備えられている。シロッコファン36の回転により風路34内の空気が吸引されて、ハウジング31の正面に形成された吹出口37から清浄化された空気が吹き出される。清浄装置18に、吸い込み用のシロッコファン33および吹き出し用のシロッコファン36という2つのファンを設けることにより、清浄装置18の清浄化能力を大きくすることができる。なぜなら、2つのファン33,36を用いることで、風路34内を流れる単位時間当たりの空気流量を大きくすることができ、単位時間当たりに多くの空気が清浄化される。また、風路34が長くされ、その中にフィルタ34が充填されているから、通過する空気がフィルタ35に接する割合が大きく、空気中の化学物質が十分に除去され得る。

0038

吸込口32および吹出口37には、それぞれ、風向板38,39が備えられており、空気吸い込み方向や空気吹き出し方向が調整可能にされている。これにより、循環する空気の方向を調整できるから、循環する空気が閉空間9内でいわゆるショートサーキットを形成することを防止できる。部屋内空気清浄装置18も、ハウジング38を始めとして、すべての構成パーツは、揮発性有害化学物質の発生が少ない材料を主体として作られている。

0039

導入空気清浄装置17と部屋内空気清浄装置18との清浄化能力について、ここで両者を比較して説明する。「清浄化能力」とは、一定時間で一定量の空気をどの程度清浄化できるかを示す能力であって、通風量×一過性除去効率(一過性清浄効率)と定義することができる。

0040

導入空気清浄装置17は、居住空間2の空気を清浄化して閉空間9内へ導入するものであるから、空気は一過性で清浄される。このため、導入空気清浄装置17は、一過性清浄効率の高い構成とするのが好ましい。導入空気清浄装置17の通風量は、部屋内空気清浄装置18に比べて低くて構わない。一方、部屋内空気清浄装置18は、導入空気清浄装置17に比べて通風量が大きいことが好ましい。なぜなら、部屋内空気清浄装置18は、閉空間9内の空気を繰り返し循環させながら清浄化するので、通風量が大きければ、循環量も大きく、閉空間9内の空気の清浄化が促進されるからである。部屋内空気清浄装置18の清浄化能力は、送風量を大きくすることにより、導入空気清浄装置17の清浄化能力よりも大きくされているのが良い。たとえば、導入空気清浄装置17の一過性清浄効率が70〜90%であるとした場合、部屋内空気清浄装置18の一過性清浄効率は20〜40%程度でよい。しかし、部屋内空気清浄装置18の送風量を大きくすれば、結局、清浄化能力を導入空気清浄装置17に比べて大きくすることが可能である。

0041

図5は、この発明の一実施形態にかかる部屋に備えることのできる空気清浄装置の他の例を示す図解的な断面構造図である。図5に示す空気清浄装置40は、導入空気の清浄処理および部屋内空気の清浄処理の両方の処理が1台で行える構成である。居住空間2の空気は、第1吸込口41から吸い込まれる。第1吸込口41にはプレフィルタ42が嵌められており、居住空間2内の空気に含まれる塵埃等が除去される。第1吸込口41から吸い込まれた空気は第1フィルタ43および第2フィルタ44を通過する。第1フィルタ43および第2フィルタ44は、化学物質吸着フィルタである。これらフィルタ43,44を通過した空気は、吹出口45から閉空間9内へ吹き出される。なお、吹出口45には風向板46が備えられており、吹き出す風の向きが調整可能である。

0042

第1フィルタ43および第2フィルタ44の間には、ファン47が備えられていて、このファン47は図示しないモータにより駆動される。この実施形態のように、空気の流れを基準にして、ファン47の上流側および下流側にそれぞれ化学物質除去用のフィルタを分散して配置してもよい。ファン47の回転に伴って、第1吸込口41から居住空間2内の空気が吸い込まれるとともに、閉空間9内に臨んだ第2吸込口48からも、閉空間9内の空気が吸い込まれる。そしてその空気は第1フィルタ43および第2フィルタ44を通過し、その間に化学物質が除去されて、吹出口45から閉空間9内へと吹き出される。このようにファン47の回転により、閉空間9内の空気は、第2吸込口48から吸い込まれて、第1フィルタ43および第2フィルタ44を通過し、吹出口45から吹き出されるように循環される。

0043

第1吸込口41から吸い込まれる居住空間2内の空気と、第2吸込口48から吸い込まれる閉空間9内の空気との割合は、ダンパ49により調整できる。ダンパ49は支点50を中心に回動可能であり、第1吸込口41を閉じる状態と、第2吸込口48を閉じる状態との間で所望の位置に停止可能である。それゆえダンパ48の停止位置を調整することにより、第1吸込口41から吸い込まれる空気の割合(または第2吸込口48から吸い込まれる空気の割合)を0〜100%(または100〜0%)に調整できる。

0044

この空気清浄装置40も、揮発性有機化学物質の発生が少ない材料を主体として作られている。図1を再び参照して、部屋1内に形成される閉空間9は、上述のように、導入空気清浄装置17および部屋内空気清浄装置18という2種類の空気清浄装置により浄化され、空気中に含まれる化学物質が除去されて、化学物質濃度が低減される。

0045

化学物質過敏症の専門医によれば、閉空間9内の化学物質濃度が、下記の範囲であれば効果が見込まれると報告している。
・ホルムアルデヒド:16ppb以下(WHOや厚生省の室内基準80ppbの1/5)
・パラジクロロベンゼン:5ppb以下
有機リン系ガス:総量が100μg/m3 以下
なお、上記3種類の化学物質以外にも、化学物質過敏症の患者が発症する原因となるものは多いが、専門医による解明が不十分で、現時点でのしきい値の設定は困難である。

0046

しかしながら、この実施形態にかかる部屋1内の化学物質濃度は、上記3種類の化学物質について言えば上記の濃度以下にすることができ、他の化学物質についても極めて低い濃度に減らすことができるので、化学物質過敏症の患者にとり有益な部屋1を提供することができる。化学物質過敏症の症状を発した患者は、部屋1内に入ることによって、速やかに症状を回復することができるし、発症していない場合でも、この部屋1内にいる限り発症の可能性がなく、安心である。

0047

ところで、図1に示す部屋1は、既設の住宅内の居住空間2に設置するものであるから、居住空間2内で組立て可能にされている。すなわち部屋1は、先に説明した木枠12や各面を構成するセラミック板やガラス板や木板等により作られているが、これらはすべて既設住宅の入出口や窓等から居住空間内へ持ち込むことができる大きさのパーツとされ、居住空間内において組立て可能とされている。

0048

組立てられた部屋1の大きさは、一般の住宅内に設置することを考慮して、次の範囲であることが好ましい。大きさの上限は、設置する居住空間2の大きさの半分程度が好ましいと考えられる。たとえば8畳間(一般には30m3 と言われる)の場合は、部屋1の外形は15m3 以下にするのが好ましい。あるいは、8畳間に設置する部屋1は、占有床面積が4畳以下としてもよい。

0049

一方、部屋1の大きさの下限は、患者が内部に入って横臥するために必要な最低限のスペースということができ、数値で示せば、2m3 以上あるいは1畳以上が適当と考えられる。また、部屋1の重量は、居住空間内に設置するという観点から、ピアノの重量相当以下が好ましく、150〜200kgを上限とするのが望ましい。但し、重量は軽いほど好ましいと考えられる。

0050

部屋1は、上述した閉空間9を形成する部材および2種類の空気清浄装置17,18の他、閉空間9内で患者が横臥できるベッドが備えられているのが好ましい。このベッドも揮発性有害化学物質の発生の少ない材料で作る必要がある。さらに、患者が閉空間9内に入っている際に、ストレス感じないよう、背面5の壁にコルク等の材料でできた装飾可能な壁面が備えられていることが好ましい。

0051

また、部屋1内の閉空間9は密閉性が高いことを考慮して、閉空間9内の患者が居住空間2内の人と自由にコミュニケーションができるように、インターホンマイクおよびスピーカ装置等が備えられていてもよい。図1を参照して、部屋1のたとえば右側面7には、患者が閉空間9内に出入りするための扉51が備えられている。次に、この扉51の特徴について説明をする。

0052

図6は、扉51の構成を示す図解的な正面図である。扉51は、スライド式の扉とされている。扉51をスライド式の扉とした場合、扉の開閉に伴う周囲の空気の乱れが少なく、患者が部屋1内に入る際に、居住空間2内の空気が直接閉空間9内へ進入する割合を低減することができる。より詳しく説明すると、従来から、閉塞空間高清浄度を作り出す装置においては、出入り口扉構造は、押し扉または引き扉が採用されていた(たとえば特公平4−16177号公報、特公平5−46255号公報参照)。

0053

ところが、押し扉または引き扉の場合は、扉の開閉時に空気の乱れが大きく、汚染空気が閉空間内に流入しやすい。そのため、大規模設備の場合には、2重扉を採用する等の配慮をすることもできる。しかしながら、この発明が対象としている居住空間内に設置する部屋においては、出入り口の構造に大掛かりな設備を設けることができない。

0054

そこで、この実施形態では、扉51をスライド式とすることにより、扉開閉時の空気の乱れを少なくするようにしたものである。さらに、扉51には、開閉の力が加えられない放置された状態では、常に閉まった状態が保証されるように、自動閉塞機構52が備えられている。自動閉塞機構52は、滑車53、ワイヤ54および重り55を備えている。ワイヤ54の一端はスライド扉51のたとえば上部先端につながれており、滑車53で案内されたワイヤの他端は重り55に接続されている。このため、扉51は、その先端がワイヤ54を介して重り55で常に引っ張られており、放置された状態では、重り55の重量によって自動的に閉じる。

0055

重り55は、シリンダ56内を上下動する。図7に示すように、重り55はシリンダ56内で動くが、シリンダ56の内径と重り55の外径との間にはわずかの隙間が生じる構成になっている。このため、重り55が下方へ移動する際、シリンダ56内の下方空間に溜まった空気が重り55の落下に対する抵抗力を生じる。下方空間の空気は重り55とシリンダ56との隙間から徐々に抜ける。この結果、重りは、シリンダ56内をゆっくりと下がり、扉51の急激な開閉動作を防止できる。

0056

なお、扉51の急激な閉塞動作を防止するための構成は必須のものではなく、かかる構成が省略されても構わない。図8は、スライド扉51を自動的に閉じるための自動閉塞機構の他の例を示す図解図である。図8に示すように、スライド扉51の後方倒立振り子60を取り付けてもよい。倒立振り子60は、支点61を中心に振り子玉62が反時計方向に回動するように動く。振り子玉62の動きは、扉51に対して常に閉じる方向への力として作用している。よって倒立振り子60によっても、扉51の自動閉塞機構を実現できる。

0057

さらに、扉51には、閉じた場合の密閉性を高めるために、図9および図10に示す工夫がされている。まず、図9は、扉51の横断面を表わす図である。扉51の先端65には上下に延びる凸条66が形成されている。一方、扉51を閉じた時に先端65が当接する木枠12の当接面には、凸条66と係合する凹溝67が形成されている。従って、扉51が閉じた時には、平面同士が接触するのではなく、凸条66と凹溝67とが係合し、気密性が良好である。

0058

さらに、扉51の後端68側の外表面は、緩く外方へテーパ状に張り出した上下に延びる張出部69が作られている。扉51の閉塞時に張出部69に対向する右側面板7にも、張出部70が形成されている。扉51を閉じた時には、2つの張出部69,70同士が圧接されるので、気密性が向上する。さらに、後に詳述するように、導入空気清浄装置17が動作されることにより、閉空間9内は、居住空間2に比べて陽圧になる。そこで、図10に示すように、扉51の上下のレール部分73,74は、扉51が閉空間9内から加圧された際に、扉51の上端辺71および下端辺72部分に密着し得る段差端面75,76を有している。

0059

図11に、2種類の空気清浄装置17,18で行われる空気の清浄化の様子を図解的に示す。図11に示すように、居住空間2の空気は導入空気清浄装置17で清浄化されて、部屋1の閉空間9内へ導入される。閉空間9内では、部屋内空気清浄装置18が作動しており、閉空間9内の空気は、この清浄装置18で吸い込まれて清浄化され、閉空間9内へ再び吹き出される。よって、閉空間9内の空気は、循環されながら清浄化される。

0060

空気清浄装置17,18を2種類使用すると、次のような利点がある。部屋1内の閉空間9は、密閉度の高い空間であるから、化学物質過敏症の患者が長時間内部にいた場合、呼気由来のCO2 濃度が高まる。また、酸素不足が生じるおそれがある。逆に、密閉度を低くした場合は、CO2 濃度の上昇や酸素不足の心配はなくなるが、居住空間2内の空気、すなわち化学物質濃度が十分に低くない空気が閉空間9内へ進入するおそれがある。

0061

そこで、導入空気清浄装置17を備えることにより、積極的に居住空間2内の空気を清浄化して、閉空間9内へ送り込むことができる。その結果、患者が長時間閉空間9内に留まっていても、閉空間9内におけるCO2 濃度が上昇せず、また、酸素不足の心配を無くすることができる。上述のように密閉度の高い空間で患者が長時間過ごす場合は、患者の呼気由来によるCO2 濃度の上昇や、酸素の欠乏という不具合が発生する。そこで、閉空間9内に、CO2センサ赤外線センサ等による人検知センサを設け、該CO2センサや人検知センサの出力に基づいて導入空気清浄装置17の動作を制御してもよい。たとえば、CO2 センサの出力に基づき、閉空間9内のCO2 濃度が所定値以上になった場合にだけ、導入空気清浄装置17を動作させてもよい。こうすると、閉空間9内に居住空間2の空気が導入されるのを必要最小限に抑えることができるから、閉空間9内の化学物質濃度をより低く保つことができる。しかもCO2 濃度の上昇等の不具合もなくなる。

0062

あるいは、人検知センサの出力に基づき、閉空間9内に患者がいる場合に、導入空気清浄装置17を所定の態様で動作させてもよい。所定の態様とは、連続運転、酸素の欠乏等を生じない程度の間欠運転等である。なお、CO2センサや人検知センサを用いて、閉空間9内への空気導入を制御する場合には、導入空気清浄装置17ではなく、換気扇等を制御することにより行ってもよい。あるいは、CO2 センサや人検知センサの出力に基づいて、通風口開閉制御するという構成であってもよい。

0063

さらには、閉空間9内での患者の呼気由来に基づく上記不具合を解消するために、閉空間9内に空気ボンベ等を設けておき、CO2センサの出力に基づいて空気ボンベを開いたり、人検知センサおよびタイマの出力に基づいて、空気ボンベを開く等の制御を行ってもよい。また、閉空間9内に揮発性有害化学物質の濃度を検知するセンサ(VOCセンサ等)を設け、該センサの出力に基づいて導入空気清浄装置17や部屋内空気清浄装置18の風量や能力を制御してもよい。あるいは揮発性有害化学物質の濃度を検知するセンサデータに基づき、有害化学物質を除去するフィルタの交換再生時期を知らせるようにしてもよい。

0064

なお上述の実施形態では、導入空気清浄装置17は、居住空間2内の空気を清浄化して閉空間9内へ導入するものとしたが、建物外の空気が揮発性有害化学物質で汚染されていないきれいな空気の場合には、たとえばダクトで建物外の空気を導入空気清浄装置17の吸込口へ与えてもよい。すなわち導入空気清浄装置17は、居住空間2内の空気ではなく、建物外の空気を清浄化して閉空間9へ導入する構成としてもよい。建物外の空気が、汚染が少ないか、汚染のない清浄な空気である場合は、導入空気清浄装置17における有害化学物質を除去するフィルタを、簡単なフィルタとするか、化学物質吸着フィルタのない構造とすることもできる。

0065

一方、部屋内空気清浄装置18は、閉空間9内の空気を循環し、清浄化する。閉空間9内の空気は、自然対流による空気の流れではなく、清浄装置18による強制対流によって早期に清浄化される。閉空間9内の空気は、たとえば扉51を開けて患者が閉空間9内へ入った時等に、化学物質濃度が増加する。あるいは患者が持ち込む生活用品等から揮発性有害化学物質が放散すること等により、あるいはその他の原因で、突発的に、閉空間9内の化学物質濃度が高くなる場合が考えられる。閉空間9内で突発的に化学物質濃度が高くなった場合には、部屋内空気清浄装置18により化学物質濃度が低減される。

0066

つまり、閉空間9内の空気の化学物質濃度が上昇した場合には、導入型空気清浄装置17ではなく、部屋内空気清浄装置18が、清浄化作業を行う。よって、部屋内空気清浄装置18の清浄能力を大きくしておけば、上述のように突発的に閉空間9内の化学物質濃度が高くなった場合や、導入空気清浄装置17で導入される空気が汚染された空気となった場合にも対処できる。

0067

なお、上記は強制対流によるものを例示したが、閉空間9を形成する内壁面天井面も含む)に活性炭等の化学物質吸着材を保持した部材を着脱可能に取り付けておいてもよい。かかる部材はできるだけ壁面に広く取り付ければ、空気が強制対流される場合に壁面に取り付けられた活性炭等で化学物質が吸着される。また、強制対流に依らなくても、閉空間9内の自然対流によって、空気中の揮発性有害化学物質が壁面の活性炭等に吸着される。このように、内壁面に広く取り付けた化学物質吸着材により、静的な空気清浄装置を構成することも可能である。

0068

以上の2種類の空気清浄装置17,18の関係をまとめると、以下のとおりとなる。
導入空気清浄装置17に比べて部屋内空気清浄装置18の清浄化能力を大きくする方が好ましい。部屋1を構成する設備全体としては良好な構成となるからである。

0069

導入空気清浄装置17の送風量に比べて部屋内空気清浄装置18の送風量を大きくする方が好ましい。なぜなら、閉空間9内の空気の清浄化が良好に行えるからである。図11に示すように、部屋1内の閉空間9が密閉度の高い空間である場合、導入空気清浄装置17によって閉空間9内に空気を送り込むことにより、閉空間9内の気圧は居住空間2の気圧に比べて陽圧となる。閉空間9内を陽圧にすると、閉空間9内での揮発性有害化学物質の発生を抑止できるという効果がある。

0070

より詳しく説明する。導入型空気清浄装置17で閉空間9内を加圧しておけば、閉空間9内に存在する物品、または、閉空間9を構成する部屋1の構成材料から、閉空間9内に揮発性有機化学物質が揮発するのを低減できるという利点がある。つまり、閉空間9を構成する部材や、閉空間9内に持ち込んだものが、居住空間2内に存在する部材と同等の揮発性有害化学物質を含んだ部材であったとしても、閉空間9内を陽圧にすることにより、居住空間2に比べて閉空間9内では、揮発性有害化学物質が揮発しにくくなる。これにより、閉空間9内の揮発性有害化学物質の濃度を低減できる。

0071

また、閉空間9内を陽圧にすると、居住空間2の空気が閉空間9を構成する部材の隙間等から閉空間9内へ進入しにくくなるという効果もある。ところで、部屋1は、上述したように、居住空間2内で組立て可能な構造であり、しかも、組立てた際の隙間等に隙間充填材等を埋めることはできない。なぜなら、隙間充填材等は、化学物質が多く、揮発性有害化学物質の発生を招くからである。

0072

このため、組立てられた部屋1は、密閉度が高いとは言うものの、構造上の隙間が多数存在し、その隙間から空気の流通が可能である。導入空気清浄装置17によって、閉空間9内を陽圧にした場合、閉空間9内の空気は、上記構造上の隙間等から居住空間2へ流出する。従って閉空間9内の気圧は所定の陽圧に落ち着く。

0073

部屋1を構成する部材同士継ぎ目に生じる隙間を排気口として積極的に利用しようとする場合は、図2で説明したように、継ぎ目を凹凸形状にせず、平面同士が対向するようにして、隙間を生じやすくしてもよい。あるいは、凹凸形状にする場合でも、しっかりとした接触を保たないようにしてもよい。ところで、部屋1の密閉性が高い場合、構造上の隙間からだけ空気を排出するのではなく、積極的に排気口を形成してもよい。

0074

図12に、部屋1に対する排気口80の配置位置の一例を図解的に示す。図12に示すように、部屋1には、複数の排気口80を配置するのが好ましい。また、排気口80は、導入空気清浄装置17から導入される空気がいわゆるショートサーキットを形成して排気口80から逃げるような位置には形成しないように注意する必要がある。

0075

複数の排気口80を積極的に設けた部屋1では、閉空間9内における空気の清浄度にむらが生じることがない。なぜなら、閉空間9内の空気は、複数の排気口80から分散して居住空間2へ排出されるからである。しかも、閉空間9内は導入空気清浄装置17により導入される空気により適度な陽圧に保たれる。なお、排気口80を、部屋1の上方および下方にそれぞれ配置しておけば、停電対策としても有効である。停電時には、モータ等で駆動される導入空気清浄装置17等の駆動が停止するので、閉空間9内の気圧は居住空間2内の気圧と等しくなる。この閉空間9内に患者がいる場合、患者の体熱等により閉空間9内の空気は自然対流をする。その結果、下方の排気口80から居住空間2内の空気が進入し、上方の排気口80からは閉空間9内の空気が居住空間2へと流れ出る。従って、閉空間9内で、患者の呼気由来のCO2 濃度が高まることが防止できる。

0076

ところで、部屋1をストレスなく快適に利用するためには、先に述べたように、内部を嗜好に合ったように装飾して使うことが考えられる。このため、固定式の排気口80では、部屋1内に持ち込む日用品の配置等が制約を受ける。そこで、図13に示すように、排気口80を部屋1の隅だけでなく、部屋1を構成する平面の種々の位置に形成し、必要なもの以外は、蓋81で塞ぐことにより、排気口80の配置位置を所望の位置にする構造としてもよい。

0077

図14に、たとえば背面5に形成した排気口80を塞ぐ蓋81の構成を示す。排気口80に蓋81を嵌めることにより、排気口80を塞ぐことができる((A)(B)参照)。また、(C)に示すように、背面5に大きめの排気口80aを形成し、この大きめの排気口80aが大き過ぎる場合は、第1の蓋81aによって排気口80aを塞ぎ、小さめの排気口80bとなるようにしてもよい。さらに、小さめの排気口80bを第2の蓋80bで塞げるようにされているのが好ましい。

0078

以上のように、排気口80,80a,80bは、複数の排気口が選択的に使用できるようにするか、排気口の大きさを変更できるようにするのが実用上好ましい。以上説明した各排気口80は、部屋1を構成する部材にあけた単なる連通孔でもよいが、排気口内に揮発性有害化学物質を除去するフィルタが嵌められた構成であってもよい。たとえば活性炭フィルタや活性炭フィルタと塵埃除去フィルタとが組合わされたフィルタが排気口に挿入されていてもよい。

0079

さらに、排気口は、通気方向にだけ空気を通過し、逆方向には通気しないように逆止弁が備えられているものでもよい。上述の説明では、導入空気清浄装置17によって閉空間9を陽圧にする旨説明したが、居住空間2の汚染度が低く、かつ、部屋1内に清浄化能力の比較的大きな部屋内空気清浄装置18が備えられている場合には、導入空気清浄装置17ではなく、空気導入用ファン空気清浄機能を有しないもの)によって閉空間9内を陽圧にするようにしてもよい。

0080

以上説明した実施形態では、空気清浄装置を2種類備えた部屋1について説明した。しかしながら、部屋1は、空気清浄装置を備えていればよく、場合によっては1種類の空気清浄装置だけであってもよい。たとえば導入空気清浄装置17だけを備えた部屋1であってもよい。このような部屋1は、居住空間内の空気の汚れが少ない場合等に使用することができるであろう。

0081

あるいは、部屋内空気清浄装置18だけを備えた部屋1であってもよい。この場合は、患者が閉空間9内に長時間滞在しないようなものに適している。あるいは、患者が閉空間9内に長時間滞在する場合には、閉空間9内のCO2 濃度の上昇や酸素欠乏が生じないような構成(たとえば自然対流口を設ける等)の構成を追加すればよい。

発明の効果

0082

この発明によれば、化学物質過敏症患者の要求に応えることができ、絶対に発病しないという安心感を得られる場所であるとともに、発病後の症状を速やかに鎮静化させることのできる部屋を提供することができる。

図面の簡単な説明

0083

図1この発明の一実施形態にかかる化学物質過敏症患者用の部屋の概要を示す斜視図である。
図2部屋1の組立て構造の一例を示す図解的な断面図である。
図3導入空気清浄装置17の構成例を示す断面構造図である。
図4部屋内空気清浄装置18の構成例を示す断面構造図である。
図5この発明の一実施形態にかかる部屋に備えることのできる空気清浄装置の他の例を示す図解的な断面構造図である。
図6扉51の構成を示す図解的な正面図である。
図7シリンダ56内を動く重り55の動作を説明するための図である。
図8スライド扉51を自動的に閉じるための自動閉塞機構の他の例を示す図解図である。
図9扉51の縦断面を表わす図である。
図10扉51の上下のレール部分73,74における密閉構造を説明するための図である。
図112種類の空気清浄装置17,18で行われる空気の清浄化の様子を図解的に示す図である。
図12部屋1に備えることのできる排気口80の構成例を示す図解図である。
図13部屋1に備える排気口80の他の例を示す図解的な斜視図である。
図14排気口80を選択的に使用するために蓋81で排気口80を塞ぐ様子を示す説明図である。

--

0084

1 部屋
2居住空間
17空気清浄装置(導入空気清浄装置)
18 空気清浄装置(部屋内空気清浄装置)
40 空気清浄装置
51 扉
52 自動閉塞機構
80排気口

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