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課題

電解液溶媒の分解を抑制すると共に放電容量が高く、高速充放電が可能なリチウム二次電池を実現するための負極材料、及びその負極材料を用いたリチウム二次電池を提供する。

解決手段

有機物不活性ガスとの混合ガスであって前記混合ガス中の有機物のモル濃度が2〜50%である混合ガスを用いて、黒鉛粒子流動床反応炉中で900〜1200℃で化学蒸着処理することによって、黒鉛粒子と、前記黒鉛粒子の全表面を被覆する結晶性炭素層とからなり、前記黒鉛粒子の全表面が前記炭素層炭素110面とが平行であるリチウム二次電池用負極材料を形成する。

概要

背景

電子機器小型軽量化に伴い、電池高エネルギー密度化が要求されている。また省資源の面からも、繰り返し充放電が可能な高性能二次電池の開発が要求されている。このような要求に応えることを目的として、従来、高エネルギー密度、軽量、小型、且つ充放電サイクル特性に優れたリチウム二次電池が提案されている。

リチウム二次電池は、電解質の種類によって、リチウムイオン二次電池リチウムポリマー二次電池全固体リチウム二次電池等に分類される。これらの二次電池のうち、リチウムイオン二次電池は、リチウム金属二次電池の持つ、急速充電性に劣る問題、サイクル寿命が短い問題、及び安全性に劣る問題等を解決するために開発が続けられている二次電池である。

リチウム金属二次電池は、負極にリチウム金属が用いられている。これに対し、リチウムイオン二次電池は、負極に炭素材料を用いられている。負極に炭素材料を用いることにより、上記の要求を解決しようとするものである。即ち、リチウム化合物で正極を構成し、炭素材料で負極を構成したリチウムイオン二次電池は、これを充電すると、負極ではリチウムイオンが炭素材料にドーピングされ、いわゆる炭素リチウム層間化合物が形成される。一方、放電時には、炭素材料の層間からリチウムイオンが脱ドーピンクされ、脱ドーピンクされたリチウムイオンは再び正極に移動してリチウム化合物に戻る。このような機構で、リチウムイオン二次電池は繰返し充放電をすることが出来る。

リチウムイオン二次電池に用いる負極としては、黒鉛系負極と炭素系負極とがある。これらの負極を用いて構成した電池において、実用性を無視して長時間の放電を行う場合は、炭素系負極の放電容量は600mAh/g以上である。この放電容量は黒鉛系負極の実用的使用条件における放電容量の350〜370mAh/gと比較して大きい。しかし、実用的な使用条件では、炭素系負極の放電容量は250〜300mAh/gであり、黒鉛系負極の実用的使用条件における放電容量の350〜370mAh/gよりも低い値である。更に、炭素系負極は、炭素材料の密度が低く、放電圧も低い。このため、炭素系負極を用いた電池は黒鉛系負極を用いた電池に比べて放電エネルギーも劣っている。

以上の理由から、多くのリチウムイオン二次電池において、黒鉛系負極が用いられている。

黒鉛系負極を用いるリチウムイオン二次電池の場合、短時間で効率よく充放電が行われるためには、黒鉛系負極の構成粒子である黒鉛が微粒子であることが望ましい。黒鉛を微粒子化することにより、電池内で黒鉛と電解液との接触可能な表面積が増大し、その結果電解液と黒鉛との間におけるリチウムイオンの授受が容易になると考えられる。

本発明者らはリチウムイオン二次電池の負極に用いる黒鉛を微粒子化することについて研究した。その結果、黒鉛の微粒子化に伴って電池の放電容量の増加は認められた。しかし、黒鉛の微粒子化に伴い電池に必要な充電量も増加し、結果としてクーロン効率が低下することを見出した。更に、黒鉛の微粒子化に伴い、黒鉛と電池の電解液を構成する溶媒との反応性が高くなり、その結果溶媒が分解してガスの発生を著しく高めることを見出した。密閉された電池内にガスが発生すると、電池の内部圧が上昇して電池が爆発する危険性が増大する。従って、電池内部においてガスの発生を抑制することは極めて重要なことである。

一般に、リチウムイオン二次電池に使用される電解液の主溶媒は、エチレンカーボネート(以下ECと略す)、プロピレンカーボネート(以下PCと略す)等の炭酸エステル類が多い。これらの主溶媒に、LiPF6或はLiBF4等の電解質を添加混合して電解液を得ている。PCやEC等の溶媒が、電解液の主溶媒として多く使用されている理由は、これらの溶媒が高い比誘電率と広い作動温度範囲等の好ましい溶媒特性を有するからである。中でもPCは低温で使用できる溶媒である。しかし、前述のようにPCを含む電解液と黒鉛系負極とを電池中で共存させると、PCが分解してガスを発生する。PCの分解は、電池の負極に黒鉛を用いる場合にのみ見られる現象である。炭素系負極を用いる場合には見られない現象である。

このように、電池において、PCを含む電解液と黒鉛系負極とを共存させると、PCが分解する。その結果、電池のクーロン効率が低下するのみならず、電池の内部圧が上昇して電池が爆発する危険性が増大する。このため、PCを含む電解液に用いてもPCが分解することなく、かつクーロン効率の低下を生じない黒鉛系負極、即ち耐PC性の高い黒鉛系負極の開発が切望されている。

従来、PCを分解しない低結晶性炭素黒鉛粒子の表面を被覆することにより、PCの分解を抑制する方法が提案されている。

このような例としては、化学蒸着法を用いて黒鉛を低結晶性炭素で被覆した複合材料負極材料として用いる方法(特許第2643035号公報)、黒鉛を平均面間隔d002が0.337nm以上の炭素で被覆した複合材料を負極材料として用いる方法(特開平5−121066号公報)、並びに黒鉛をアモルファス炭素で被覆した複合材料を負極材料として用いる方法(特開平5−275076号公報)が挙げられる。

これらの方法により得られた複合材料を用いた負極は、PCの分解を抑制する。しかし、これらの複合材料を負極として用いた電池は、低結晶性炭素を被覆していない黒鉛粒子のみから構成された負極を用いた電池と比較して、実用的な使用条件では放電容量が低いこと、高速充放電ができないこと等の、本来低結晶性炭素に由来する問題を付加することになる。

リチウムイオン二次電池に用いる炭素系負極又は黒鉛系負極においては、黒鉛系負極は黒鉛系材料に由来する問題を、炭素系負極は炭素系材料に由来する問題を抱えており、これらの問題は互いに相反する。従って、これらの問題を同時に解決するリチウムイオン二次電池用負極材料、及びその負極材料を用いたリチウムイオン二次電池の開発が切望されている。

概要

電解液溶媒の分解を抑制すると共に放電容量が高く、高速充放電が可能なリチウム二次電池を実現するための負極材料、及びその負極材料を用いたリチウム二次電池を提供する。

有機物不活性ガスとの混合ガスであって前記混合ガス中の有機物のモル濃度が2〜50%である混合ガスを用いて、黒鉛粒子を流動床反応炉中で900〜1200℃で化学蒸着処理することによって、黒鉛粒子と、前記黒鉛粒子の全表面を被覆する結晶性炭素層とからなり、前記黒鉛粒子の全表面が前記炭素層炭素110面とが平行であるリチウム二次電池用負極材料を形成する。

目的

従って、本発明は、上記の諸問題を解決し、電解液溶媒の分解を抑制すると共に、放電容量が高く、高速充放電が可能なリチウム二次電池を実現できる負極材料、その製造方法、同負極材料を用いて形成したリチウム二次電池を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
10件
牽制数
13件

この技術が所属する分野

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請求項1

黒鉛粒子と、前記黒鉛粒子の全表面を被覆する結晶性炭素層とからなり、前記黒鉛粒子の全表面が炭素110面で被覆されたことを特徴とするリチウム二次電池用負極材料

請求項2

リチウムイオンインターカレーションした負極材料の7Li−NMRスペクトルが、塩化リチウム基準ケミカルシフトの40〜50ppmと、10〜20ppmとに吸収スペクトルを有する請求項1に記載のリチウム二次電池用負極材料。

請求項3

炭素層平均面間隔d002が0.337nm未満である請求項1に記載のリチウム二次電池用負極材料。

請求項4

炭素層が偏光顕微鏡下に光学的異方性を示す請求項1に記載のリチウム二次電池用負極材料。

請求項5

黒鉛粒子として天然黒鉛を用いる請求項1に記載のリチウム二次電池用負極材料。

請求項6

請求項1乃至5の何れかに記載の負極材料を用いて形成したリチウム二次電池

請求項7

黒鉛粒子を流動床式反応炉中で有機物ガス又は有機物不活性ガスとの混合ガスを用いて化学蒸着処理することにより、黒鉛粒子の表面に炭素層を形成することを特徴とする、黒鉛粒子と前記黒鉛粒子の表面を被覆する結晶性炭素層とからなり、前記黒鉛粒子の表面と前記炭素層の炭素110面とが平行であるリチウム二次電池用負極材料の製造方法。

請求項8

混合ガス中の有機物のモル濃度が2〜50%で、化学蒸着処理温度が900〜1200℃である請求項7に記載のリチウム二次電池用負極材料の製造方法。

請求項9

黒鉛粒子として天然黒鉛を用いる請求項7に記載のリチウム二次電池用負極材料の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、大容量で、高電位で、充放電サイクル特性に優れ、且つ電解液の分解を防止したリチウム二次電池を製造することのできる負極材料、その製造方法、及び同負極材料を備えたリチウム二次電池に関する。

背景技術

0002

電子機器小型軽量化に伴い、電池高エネルギー密度化が要求されている。また省資源の面からも、繰り返し充放電が可能な高性能二次電池の開発が要求されている。このような要求に応えることを目的として、従来、高エネルギー密度、軽量、小型、且つ充放電サイクル特性に優れたリチウム二次電池が提案されている。

0003

リチウム二次電池は、電解質の種類によって、リチウムイオン二次電池リチウムポリマー二次電池全固体リチウム二次電池等に分類される。これらの二次電池のうち、リチウムイオン二次電池は、リチウム金属二次電池の持つ、急速充電性に劣る問題、サイクル寿命が短い問題、及び安全性に劣る問題等を解決するために開発が続けられている二次電池である。

0004

リチウム金属二次電池は、負極にリチウム金属が用いられている。これに対し、リチウムイオン二次電池は、負極に炭素材料を用いられている。負極に炭素材料を用いることにより、上記の要求を解決しようとするものである。即ち、リチウム化合物で正極を構成し、炭素材料で負極を構成したリチウムイオン二次電池は、これを充電すると、負極ではリチウムイオンが炭素材料にドーピングされ、いわゆる炭素リチウム層間化合物が形成される。一方、放電時には、炭素材料の層間からリチウムイオンが脱ドーピンクされ、脱ドーピンクされたリチウムイオンは再び正極に移動してリチウム化合物に戻る。このような機構で、リチウムイオン二次電池は繰返し充放電をすることが出来る。

0005

リチウムイオン二次電池に用いる負極としては、黒鉛系負極と炭素系負極とがある。これらの負極を用いて構成した電池において、実用性を無視して長時間の放電を行う場合は、炭素系負極の放電容量は600mAh/g以上である。この放電容量は黒鉛系負極の実用的使用条件における放電容量の350〜370mAh/gと比較して大きい。しかし、実用的な使用条件では、炭素系負極の放電容量は250〜300mAh/gであり、黒鉛系負極の実用的使用条件における放電容量の350〜370mAh/gよりも低い値である。更に、炭素系負極は、炭素材料の密度が低く、放電圧も低い。このため、炭素系負極を用いた電池は黒鉛系負極を用いた電池に比べて放電エネルギーも劣っている。

0006

以上の理由から、多くのリチウムイオン二次電池において、黒鉛系負極が用いられている。

0007

黒鉛系負極を用いるリチウムイオン二次電池の場合、短時間で効率よく充放電が行われるためには、黒鉛系負極の構成粒子である黒鉛が微粒子であることが望ましい。黒鉛を微粒子化することにより、電池内で黒鉛と電解液との接触可能な表面積が増大し、その結果電解液と黒鉛との間におけるリチウムイオンの授受が容易になると考えられる。

0008

本発明者らはリチウムイオン二次電池の負極に用いる黒鉛を微粒子化することについて研究した。その結果、黒鉛の微粒子化に伴って電池の放電容量の増加は認められた。しかし、黒鉛の微粒子化に伴い電池に必要な充電量も増加し、結果としてクーロン効率が低下することを見出した。更に、黒鉛の微粒子化に伴い、黒鉛と電池の電解液を構成する溶媒との反応性が高くなり、その結果溶媒が分解してガスの発生を著しく高めることを見出した。密閉された電池内にガスが発生すると、電池の内部圧が上昇して電池が爆発する危険性が増大する。従って、電池内部においてガスの発生を抑制することは極めて重要なことである。

0009

一般に、リチウムイオン二次電池に使用される電解液の主溶媒は、エチレンカーボネート(以下ECと略す)、プロピレンカーボネート(以下PCと略す)等の炭酸エステル類が多い。これらの主溶媒に、LiPF6或はLiBF4等の電解質を添加混合して電解液を得ている。PCやEC等の溶媒が、電解液の主溶媒として多く使用されている理由は、これらの溶媒が高い比誘電率と広い作動温度範囲等の好ましい溶媒特性を有するからである。中でもPCは低温で使用できる溶媒である。しかし、前述のようにPCを含む電解液と黒鉛系負極とを電池中で共存させると、PCが分解してガスを発生する。PCの分解は、電池の負極に黒鉛を用いる場合にのみ見られる現象である。炭素系負極を用いる場合には見られない現象である。

0010

このように、電池において、PCを含む電解液と黒鉛系負極とを共存させると、PCが分解する。その結果、電池のクーロン効率が低下するのみならず、電池の内部圧が上昇して電池が爆発する危険性が増大する。このため、PCを含む電解液に用いてもPCが分解することなく、かつクーロン効率の低下を生じない黒鉛系負極、即ち耐PC性の高い黒鉛系負極の開発が切望されている。

0011

従来、PCを分解しない低結晶性炭素黒鉛粒子の表面を被覆することにより、PCの分解を抑制する方法が提案されている。

0012

このような例としては、化学蒸着法を用いて黒鉛を低結晶性炭素で被覆した複合材料を負極材料として用いる方法(特許第2643035号公報)、黒鉛を平均面間隔d002が0.337nm以上の炭素で被覆した複合材料を負極材料として用いる方法(特開平5−121066号公報)、並びに黒鉛をアモルファス炭素で被覆した複合材料を負極材料として用いる方法(特開平5−275076号公報)が挙げられる。

0013

これらの方法により得られた複合材料を用いた負極は、PCの分解を抑制する。しかし、これらの複合材料を負極として用いた電池は、低結晶性炭素を被覆していない黒鉛粒子のみから構成された負極を用いた電池と比較して、実用的な使用条件では放電容量が低いこと、高速充放電ができないこと等の、本来低結晶性炭素に由来する問題を付加することになる。

0014

リチウムイオン二次電池に用いる炭素系負極又は黒鉛系負極においては、黒鉛系負極は黒鉛系材料に由来する問題を、炭素系負極は炭素系材料に由来する問題を抱えており、これらの問題は互いに相反する。従って、これらの問題を同時に解決するリチウムイオン二次電池用負極材料、及びその負極材料を用いたリチウムイオン二次電池の開発が切望されている。

発明が解決しようとする課題

0015

本発明者らは、化学蒸着法を用いて種々の条件下で黒鉛を炭素で被覆し、得られた黒鉛−炭素複合材をリチウムイオン二次電池用負極材料として評価した。その結果、黒鉛の表面を結晶性炭素で均一、かつ完全に被覆した複合材料をリチウムイオン二次電池の負極として用いる場合、この負極はPC等の分解を確実に抑制すると共に、得られる電池は放電容量が高く、高速充電が可能であり、この負極は従来の低結晶性炭素で被覆された負極材料よりも優れた電極性能を有することを見出した。

0016

更に、上記の負極材料は、リチウムポリマー二次電池、全固体リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池等のリチウム二次電池のいずれにも用いることができることを見出した。

0017

更に、リチウムイオンをインターカレーションした上記負極材料の7Li−NMRスペクトルを測定した。そして、この7Li−NMRスペクトルを検討した結果、この7Li−NMRスペクトルは上記負極材料の結晶性の評価に用いることができることを見出した。これらの成果に基づき本発明は完成された。

0018

従って、本発明は、上記の諸問題を解決し、電解液溶媒の分解を抑制すると共に、放電容量が高く、高速充放電が可能なリチウム二次電池を実現できる負極材料、その製造方法、同負極材料を用いて形成したリチウム二次電池を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0019

上記目的を達成するために、本発明は以下のことを提案するのものである。

0020

〔1〕黒鉛粒子と、前記黒鉛粒子の全表面を被覆する結晶性炭素層とからなり、前記黒鉛粒子の全表面と前記炭素層炭素110面で被覆されたことを特徴とするリチウム二次電池用負極材料

0021

〔2〕リチウムイオンをインターカレーションした負極材料の7Li−NMRスペクトルが、塩化リチウム基準ケミカルシフトの40〜50ppmと、10〜30ppmとに吸収スペクトルを有する〔1〕に記載のリチウム二次電池用負極材料。

0022

〔3〕炭素層の平均面間隔d002が0.337nm未満である〔1〕に記載のリチウム二次電池用負極材料。

0023

〔4〕炭素層が偏光顕微鏡下に光学的異方性を示す〔1〕に記載のリチウム二次電池用負極材料。

0024

〔5〕黒鉛粒子として天然黒鉛を用いる〔1〕に記載のリチウム二次電池用負極材料。

0025

〔6〕 〔1〕乃至〔5〕の何れかに記載の負極材料を用いて形成したリチウム二次電池。

0026

〔7〕黒鉛粒子を流動床式反応炉中で有機物ガス又は有機物不活性ガスとの混合ガスを用いて化学蒸着処理することにより、黒鉛粒子の全表面に炭素層を形成することを特徴とする、黒鉛粒子と前記黒鉛粒子の全表面を被覆する結晶性炭素層とからなり、前記黒鉛粒子の表面と前記炭素層の炭素110面とが平行であるリチウム二次電池用負極材料の製造方法。

0027

〔8〕混合ガス中の有機物のモル濃度が2〜50%で、化学蒸着処理温度が900〜1200℃である〔7〕に記載のリチウム二次電池用負極材料の製造方法。

0028

〔9〕黒鉛粒子として天然黒鉛を用いる〔7〕に記載のリチウム二次電池用負極材料の製造方法。

0029

以下、本発明を詳細に説明する。

発明を実施するための最良の形態

0030

本発明のリチウム二次電池用負極材料は、黒鉛粒子と、その表面を被覆した炭素層とからなる黒鉛−炭素複合材である。前記炭素層は、化学蒸着処理により形成できる、所定の分子配向を有する結晶性炭素である。

0031

リチウム二次電池の「負極材料」としては、主材料である炭素系又は黒鉛系の負極材料以外にも、ペースト導電材等の副材料もあるが、本発明において、リチウム二次電池の「負極材料」という場合には、特に断りがない限り、主材料である炭素系又は黒鉛系の負極材料を指すものとする。

0032

黒鉛粒子の原料に用いる黒鉛は天然黒鉛でも人造黒鉛でもよいが、平均面間隔d002は0.336nm以下の、高結晶性のものであることが望ましい。原料の黒鉛は、最大粒子径100μm以下に粉砕してあることが望ましい。平均粒子径は5〜30μmが好ましく、より好ましくは10〜20μmである。

0033

黒鉛の粉砕の方法としては、公知の衝撃粉砕方法や磨砕方法等何れの方法でも良い。粉砕後の黒鉛粒子のタップ密度は、特に制限はないが、取扱いの容易さを考慮すると0.7g/cm3以上であることが望ましい。なお、粉砕後の黒鉛粒子のタップ密度が0.7g/cm3未満の場合は、コンパクターローラーミルディスクミル、又は振動ミル等でこの黒鉛粒子をタップ密度が0.7g/cm3以上になるように圧縮処理することにより、取扱いを容易にすることができる。

0034

黒鉛粒子を炭素で被覆して黒鉛粒子の外表面に炭素層を形成する方法としては、黒鉛粒子をピッチ又は樹脂混練して被覆した後、この混練被覆物炭化する方法や、静置式の固定床化学蒸着処理法が知られている。

0035

ピッチ又は樹脂と黒鉛とを混練被覆後炭化する方法は、被覆したピッチや樹脂が炭化する際に生ずる収縮により炭化物表面に亀裂や剥離が発生し、黒鉛粒子を完全に炭素で被覆することが出来ない。

0036

静置式の固定床化学蒸着処理法は、例えば石英管中に備えた黒鉛板上に黒鉛粒子を静置し、石英管内炭素源となる有機物と希釈ガスとからなる混合ガスを供給しながら有機物の熱分解温度以上に加熱する方法である。この方法においては、混合ガスと黒鉛粒子とが接触する部分だけしか、黒鉛粒子は炭素で被覆されない。そのため、固定床化学蒸着処理法で黒鉛粒子を処理する場合は、黒鉛粒子表面に多くの被覆されない部分が残される。よって、静置式の固定床化学蒸着処理法によっては、黒鉛粒子を完全に炭素で被覆することが出来ない場合がある。

0037

これらの被覆方法に対して、流動床式の化学蒸着処理法は、黒鉛粒子の外表面を簡単かつ完全に炭素で被覆することができ、しかも結晶性の炭素が主として黒鉛粒子表面に蒸着する(以下、蒸着炭素と略す)。よって、化学蒸着処理は流動床反応炉を用いて行うことが望ましい。流動床反応炉を用いて化学蒸着処理を行うことにより、効率良く大量に化学蒸着処理をすることができる。更に、黒鉛粒子の表面を蒸着炭素で均一に被覆できる。

0038

流動床式の化学蒸着処理においては、流動床反応炉中の黒鉛粒子は流動層を形成する。その流動層の嵩密度は、0.1〜0.5g/cm3が望ましい。

0039

化学蒸着処理温度は850〜1200℃が好ましく、より好ましい温度は900〜1200℃、更により好ましい温度は950〜1150℃である。化学蒸着処理温度は、処理をする際に用いる炭素源としての有機物の種類により異なるが、化学蒸着処理温度が850℃未満の場合は、熱分解炭素析出速度が小さく、化学蒸着処理に長時間を要するので好ましくない。

0040

化学蒸着処理温度が高くなるに従って、有機物の炭素への変換率は高くなる。しかし、化学蒸着処理温度が1200℃を超えると、蒸着炭素が繊維状或は不定形スス状に成長し、膜状に成長し難くなる。このため、均一な膜状の被膜の形成を目的とする本発明においては、化学蒸着処理を1200℃を超える温度で行うことは好ましくない。

0041

化学蒸着処理の炭素源として好ましい有機物としては、ベンゼントルエンキシレンスチレンエチルベンゼンジフェニルメタンジフェニルナフタレンフェノールクレゾールニトロベンゼンクロルベンゼンインデンクマロンピリジンアントラセンフェナントレン等の1環乃至3環の芳香族炭化水素、又はその誘導体、或はその混合物が挙げられる。中でも、化学蒸着処理時にタールを生成し難いので、芳香族環が1箇のベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン等の誘導体が好ましい。

0042

又、石炭系のタールの蒸留工程で得られるガス軽油クレオソート油アントラセン油石油系の分解油ナフサ分解タール油メタンエタンプロパンブタンペンタンヘキサン等の脂肪族炭化水素、及び前記脂肪族炭化水素の誘導体であるアルコールも単独で、或は混合物として用いることができる。更に、アセチレンエチレンプロピレンイソプロピレンブタジエン等の二重結合を有する有機物も用いることができる。

0043

化学蒸着処理法により被覆する炭素の量は、核となる黒鉛粒子を基準としてその2〜30wt%とすることが好ましく、更に好ましくは7〜25wt%である。炭素を黒鉛粒子に2wt%以上被覆することにより、電解液溶媒の分解抑制作用発現する。30wt%を超える場合は、電解液溶媒の分解抑制作用がほぼ飽和すると共に、得られる黒鉛粒子同士の接着が顕著となり、負極材料の粗大化を招きやすいので好ましくない。

0044

化学蒸着処理において、流動床反応炉に供給する炭素源としての有機物は、不活性ガスで稀釈した混合ガスの形態で供給することが好ましい。不活性ガスとしては、窒素アルゴン等が挙げられる。入手や取扱いのしやすさから窒素が特に好ましい。

0045

流動床反応炉を用いて化学蒸着処理を行う際には、不活性ガスは反応系内から酸素や未反応の残存有機物を排出させると共に、黒鉛粒子の流動床を形成する流動化媒体としても重要な役割を果す。

0046

混合ガス中の有機物の濃度は、生成する蒸着炭素の結晶性及び分子配向に大きな影響を与える。混合ガス中の好ましい有機物のモル濃度は、2〜50%、更に好ましくは5〜33%である。上記濃度範囲に混合ガス中の有機物濃度を調節することにより、簡単に所定の結晶性及び分子配向性を有する蒸着炭素層を黒鉛粒子表面に被覆できる。混合ガス中の有機物のモル濃度が2%未満の場合は、化学蒸着処理により得られる炭素層の結晶性は高いが、熱分解炭素の析出速度が小さく、化学蒸着処理に長時間を要するので好ましくない。一方、混合ガス中の有機物のモル濃度が50%を超える場合は、熱分解炭素の析出速度は大きい。しかし、蒸着により得られる炭素層の結晶性が低下し、更に蒸着炭素の形態が膜状ではなく繊維状或はスス状に成長する。このため、均一な炭素層の被膜を黒鉛粒子外表面に被覆することを目的とする本発明の負極材料の製造には好ましくない。

0047

以上の諸条件を適宜選択し、その条件において化学蒸着処理を行うことにより、黒鉛粒子表面上に析出する炭素層の平均面間隔d002を、0.337nm未満にすることができるものであり、より好ましい被覆炭素層の平均面間隔d002は、0.3352〜0.3369nm、更により好ましい平均面間隔d002は、0.3352〜0.3359nmとすることができるものである。しかし、炭素層の平均面間隔は必ずしも上記範囲に有ることを必要とするものでは無い。

0048

次に、上記負極材料を透過型電子顕微鏡等を用いて観察し、得られた結果につき図面を参照して説明する。負極材料の黒鉛粒子表面に蒸着した炭素層の特徴は以下の通りである。

0049

図1は、本発明の負極材料の一例を示すものである。この模式的断面図に示す負極材料6は略平板状の黒鉛粒子2と、その表面を炭素で均一に被覆する炭素層4とからなる。

0050

図2図1中の境界線Aで示される部分の拡大図である。黒鉛粒子2及び炭素層4の分子配向を、図2を参照して詳細に検討すると以下の知見を得る。

0051

図2に示されるように、略平板状の黒鉛粒子2は、側面(002面)を側面炭素層14で被覆され、また、上面(110面)を上面炭素層16で被覆されている。

0052

図2において、上方から下方に向かって透過型電子顕微鏡の電子線Xを照射して上面炭素層16を観察すると、炭素110面の明瞭な格子像が観察することはできない。しかし、電子線回折法によると、炭素110面が観察される。

0053

一方、上方から下方に向かって透過型電子顕微鏡の電子線Yを照射して側面炭素層14を観察すると、炭素002面の明瞭な格子像を観察することができる。従って、側面炭素層は結晶構造をなしており、しかも側面炭素層14の炭素110面は黒鉛粒子表面に平行であることが理論的結論される。

0054

この観察結果は、黒鉛粒子表面の炭素110面は炭素層の炭素110面で被覆されていること、更に黒鉛粒子表面の炭素002面も同様に炭素層の炭素110面で被覆されていることを意味する。

0055

よって、本発明の負極材料は、炭素層の炭素110面で黒鉛粒子の全表面を被覆した構造のものであることが分かる。

0056

なお、透過型電子顕微鏡観察により、炭素002面の層間隔を介して蒸着炭素層の結晶性及び分子配向を評価することもできる。

0057

更に、上記の負極材料にリチウムイオンをインターカレーションしたものについて7Li−NMRを測定し、この7Li−NMRの測定結果を上記の負極材料の構造評価に用いることができる。

0058

具体的には、負極材料を用いて形成した負極にリチウムイオンをインターカレーションする。次いで、リチウムイオンをインターカレーションした負極について7Li−NMR測定を行う。塩化リチウム基準(0ppm)でケミカルシフトが、40〜50ppmの位置の吸収スペクトルと、10〜30ppmの位置の吸収スペクトルとからなる複合スペクトルを有するものは、リチウム二次電池用負極材料として好ましいものである。

0059

ここで、40〜50ppmの位置の吸収スペクトルは、高結晶性黒鉛粒子にインターカレーションしたリチウムイオンに由来する吸収スペクトルである。また、10〜30ppmの位置の吸収スペクトルは、結晶性の炭素層にインターカレーションしたリチウムイオンに由来するスペクトルである。これらの2つのスペクトルの存在、及び存在位置、並びに90〜120ppmの位置に吸収スペクトルが存在しないことは、本発明の負極材料を特徴づけるもので、特に炭素層が結晶性であることを示すものとして重要である。

0060

一方、黒鉛粒子に非晶質炭素層を被覆した負極材料にリチウムイオンをインターカレーションしたものの7Li−NMR吸収スペクトルには、10〜30ppmの吸収スペクトルは認められず、90〜120ppmの位置に吸収スペクトルが観察される。

0061

また、黒鉛粒子に低結晶性炭素層を被覆した負極材料にリチウムイオンをインターカレーションしたものの7Li−NMR吸収スペクトルには、10〜30ppmの位置と、90〜120ppmの位置にそれぞれ吸収スペクトルが観察されることがある。

0062

上記電子顕微鏡、NMRの測定結果は、黒鉛粒子の全ての表面が炭素層の炭素110面で被覆され、かつその炭素層が結晶性炭素構造であることを示している。

0063

従って、本発明において、結晶性炭素層とは上記透過型電子顕微鏡、NMRの測定結果から炭素110面の存在を確認することの出来る炭素層と定義できる。

0064

更に、化学蒸着法により製造した本発明負極材料の炭素層は以下の性質を有する。
(1)化学蒸着処理により被覆させる炭素、即ち蒸着炭素は、黒鉛粒子の分子配向の影響を大きく受け、黒鉛粒子の平均層間距離が小さければ、蒸着炭素の平均層間距離も小さい。
(2)黒鉛粒子に蒸着した炭素層は、偏光顕微鏡下で分子配向を確認できる程度に、十分結晶化している。また、黒鉛粒子に蒸着した炭素層は結晶化組織走査型顕微鏡でも十分確認できる程度に結晶化している。
(3)黒鉛粒子に蒸着した炭素層の平均面間隔d002は、黒鉛粒子の平均面間隔と完全同一とまではいかないものの、黒鉛粒子の平均面間隔に非常に近い値であり、僅かに大きい値である。具体的には、その炭素層の平均面間隔d002は、0.3352〜0.3369である。

0065

図3は本発明の負極材料を製造する際に用いる流動床化学蒸着装置の一例を示すものである。

0066

本発明の負極材料を製造するにあたって、黒鉛粒子は流動化した状態で化学蒸着処理することが好ましい。ここで流動化とは、反応器42の下部からガスを供給して粒子に浮力を与えることにより、反応器42内で個々の黒鉛粒子が浮遊し、激しく不規則運動をする状態をいう。流動化した黒鉛粒子はその上部に明瞭な界面を持つので流動層又は流動床と呼ばれる。流動化した黒鉛粒子の体積は、静置している場合の体積の1.2〜1.6倍程度に膨張した状態となることが多い。

0067

流動化に用いるガスとしては、炭素源である有機物ガス、又は有機物ガスと不活性ガスとの混合ガスが好ましい。

0068

ガスの流れのみによって黒鉛粒子の流動化を行う場合には、反応器42の下部に公知の整流板(不図示)を設けてガスの流れが反応器42の断面に対して均一な流れとなるようにすることが好ましい。ガスの流れが不均一の場合には流動層を均一な状態に保持できず、極端な場合には、ガスが、流動層の中を泡立つように流れたり、特定のガス流路ラットホール)を生じて流動層を形成しないことがある。

0069

本発明においては、ガスの流れだけで黒鉛粒子を流動化しても良い。しかし、黒鉛粒子の性状に起因して安定した流動層が得られない場合には、反応器42の内部に攪拌機40を設けて黒鉛粒子を攪拌することが好ましい。これにより、より確実に均一な流動層を形成することができる。黒鉛粒子に炭素層を蒸着するにあたって、攪拌羽根41の先端における周速度は250〜20000cm/分が好ましい。反応温度等の蒸着処理条件にもよるが、周速度が250cm/分未満の場合は攪拌羽根に炭素の沈着を起こし易くなる。また、周速度が20000cm/分を超えるときは粒子の飛散が多くなり、収率が低下するので好ましくない。

0070

又、攪拌機40を設ける代わりに、若しくは攪拌機40を設けると共に、反応器42の外部に振動機(不図示)を取付けて反応器42を振動し、間接的に黒鉛粒子に振動を与えることにより、均一な流動層を形成することができる。振動は反応器42の規模等により異なるが、例えば系の共振周波数2〜30ヘルツ振幅0.2〜30mmとすることが好ましい。この振動は通常の電動式振動機により容易に発生させることができる。

0071

蒸着処理の操作は、回分式でも連続式でも行うことができる。回分式の場合、黒鉛粒子を、黒鉛ホッパー22から反応器42内に供給する。また、連続式の場合は、その供給手段に制限はないが、例えば、定量式のスクリューフィーダー(不図示)を用いて反応器42内に供給することができる。反応器42内では黒鉛粒子は流動化した完全混合状態にあるので、反応器42内に黒鉛粒子を供給する位置は特に制限がない。この流動化した状態にある黒鉛粒子を化学蒸着処理することによって、本発明の負極材料が反応器42内に生成する。

0072

生成した負極材料を反応器42内から連続的に排出させる方法としては、例えば、負極材料取り出し孔46に連結した定量式のスクリューフィダー等で負極材料を抜き出す方法等がある。これ以外にも、流動層の上部から負極材料をオーバーフローさせて取り出す方法がある。

0073

流動層は熱伝達が非常に良いので、流動層を所定の化学蒸着処理温度に昇温するには、通常は反応器42の外部から電気ヒーター44で加熱すれば充分である。しかし、必要により混合ガスを予熱しても良い。

0074

なお、図3中、24は炭素源、26は定量液体ポンプ、28は炭素源送液ライン、30は不活性ガス、32はガス流量計、34は不活性ガス−炭素源混合ライン、36はガス流量計、38は不活性ガスライン、48はバグフィルター、50は排気ラインである。

0075

前述のように、黒鉛粒子の平均粒子径は1〜100μmのものが好ましい。この粒子径は、流動床式反応炉を用いて化学蒸着処理を行う場合は、特に好ましいものである。黒鉛粒子の平均粒子径が1μm未満の場合は、黒鉛粒子を炭素層で完全に被覆することが実質的に困難であり、またガス流により反応系外へ飛散する黒鉛粒子の量が多くなって負極材料の収率が低下するので好ましくない。一方、平均粒子径が100μmを超えると、均一な流動層の形成が困難になる場合があるので好ましくない。

0076

黒鉛粒子の真密度は、約2g/cm3である。化学蒸着処理中の流動化状態にある黒鉛粒子の嵩密度の好ましい範囲は、0.1〜0.5g/cm3程度である。流動化状態の黒鉛粒子の嵩密度が低いほど化学蒸着処理は均一に行われる傾向にある。しかし、流動化状態の黒鉛粒子が嵩密度が0.1g/cm3未満の場合は、嵩密度を更に低下させても、それに比例して蒸着の均一化の向上がされ難くなる。むしろ、嵩密度を低くするために、より大きな装置が必要になると共に、黒鉛粒子を流動化させるために供給するガス量が多くなり、それにつれて、そのガスを加熱するために多くのエネルギーを必要とするようになるので好ましくない。一方、流動化状態の黒鉛粒子の嵩密度が0.5g/cm3を超える場合は、反応炉中でガスが偏流して黒鉛粒子の均一な流動化状態を保ち難い。このため黒鉛粒子の化学蒸着処理を均一に行うことが困難となる。

0077

上記嵩密度の流動層において行う化学蒸着処理は、次に示すように反応器空間中の粒子の体積占有率から見て、好ましい処理環境であることが理解できる。例えば、用いる黒鉛粒子の真密度は約2g/cm3であるから、蒸着処理において黒鉛粒子が嵩密度0.2g/cm3の良好な流動化状態を形成する場合、反応器空間中の黒鉛粒子の体積占有率は10体積%となる。従って、反応器中の90体積%はガスで占有されることとなり、これは黒鉛粒子の9倍の体積を占有していることになる。このため黒鉛粒子は充分に広い空間内に保持された状態で激しく不規則な運動をすることになる。この流動化状態における化学蒸着処理においては、固気接触が充分に達成され、固気接触効率が高くなり、その結果有機物から炭素層への変換率が高いものとなる。更に、得られた蒸着膜も均一なものとなる。また更に、固気接触域は流動層で行われるので、黒鉛粒子が激しく不規則運動をするのに充分な広い空間が確保されている。このため、黒鉛粒子同士の接着等のトラブルも回避できる。これに対し、従来の化学蒸着処理は、静置した状態で蒸着処理するものである。従って、固気接触効率が低く、しかも黒鉛粒子間の接着等のトラブルが生じ易いものである。

0078

本発明の負極材料を流動化状態で化学蒸着処理して製造する装置としては、流動床化学蒸着装置であれば、種々の様式の流動床化学蒸着装置を用いることができる。

0079

図4は本発明の負極材料を製造する流動床化学蒸着装置の別の例を示すものである。

0080

図4において、反応器84は連続式竪型反応器であり、反応器84の外部を覆って取り付けた電気ヒーター86により反応器84の内部を加熱することができる。また反応器84下部の外側には電動振動機82を設けている。タンク62内の黒鉛粒子は定量フィーダー64によって反応器84下部に送られ、ここから反応器84内に供給される。生成物である負極材料は反応器84の上部から生成物取り出しライン88を通して生成物受け器90に排出される。

0081

一方、炭素源66としての有機物は、定量液体ポンプ68により、炭素源送液ライン70を通して反応器84の下部から反応器84内部に供給される。また、反応器84の下部に連結した不活性ガスライン80から、反応器84内に不活性ガス72を供給する。これにより、反応器84中の粒子を流動化させる。更に、電動振動機82を作動させることにより反応器84中の黒鉛粒子を振動させる。これらの作用により、反応器84内の黒鉛粒子(不図示)の安定した流動化状態を形成させる。以上の操作で黒鉛粒子に炭素層を被覆し、負極材料を得る。

0082

なお、図4中、74はガス流量計、76は不活性ガス−炭素源混合ライン、78はガス流量計、92はバグフィルター、94は排気ラインである。

0083

図5は本発明の負極材料を製造する流動床装置の更に別の例を示すものである。

0084

図5において、反応器124は連続式竪型反応器である。反応器124の外部を覆って取り付けた電気ヒーター126により反応器124の内部を加熱することができる。また反応器124下部の外部には電動振動機122を設けている。黒鉛粒子はタンク102から定量フィーダー104によって反応器124上部より反応器124内に供給される。生成物である負極材料は反応器124の下部から生成物取り出しライン128を通して生成物受け器130に排出される。

0085

一方、炭素源106としての有機物を定量液体ポンプ108により炭素源送液ライン110を通して反応器124の下部から反応器124内部へ供給される。また、反応器124の下部に設けた不活性ガスライン120から、反応器124内に不活性ガス112を供給する。この不活性ガスの供給により、反応器124中の黒鉛粒子を流動化させると共に、電動振動機122を作動させることにより反応器124中の黒鉛粒子を振動させる。これにより、反応器124内の黒鉛粒子(不図示)の安定した流動化状態を形成させる。以上の操作で黒鉛粒子に炭素層を被覆し、負極材料を得る。

0086

なお、図5中、114はガス流量計、116は不活性ガス−炭素源混合ライン、118はガス流量計、132はバグフィルター、134は排気ラインである。以上のようにして製造した本発明の負極材料を用いて、リチウムイオン二次電池の負極を調製する方法は特に限定されないが、その一例を以下に示す。

0087

負極材料に、バインダー(例えば、PVDFポリビニリデンフルオライド)を溶解した溶剤(例えば、1−メチル2−ピロリドン)を加え、十分に混練する。この操作により、負極材料濃度40wt%以上の高濃度の負極材料スラリーを調製することができる。この負極材料スラリーを、金属箔(例えば銅箔)からなる集電体ドクターブレード等を用いて20〜100μmの厚みにコーティングする。これを乾燥させることにより、負極材料粒子金属箔集電体密着する。必要があれば加圧して密着性を高め、またコーティング層の厚みを均一化する。バインダーには公知の材料、例えば、各種のピッチ、ラバー合成樹脂等を用いることができる。これらの中でもPVDFやEPDMエチレンプロピレンジエンモノマー)やカルボキシメチルセルロースCMC)が好適である。なお、負極材料とバインダーとの混合比(重量比)は100:2〜100:20とすることが望ましい。

0088

正極材料は特に限定されないが、当業者に公知のLiCoO2、LiNiO2又はLiMn2O4等のリチウム含有化合物、或はこれらの混合物が好適である。粉末状の正極材料は、必要があれば導電材を加え、バインダーを溶解した溶剤等と十分に混練後、集電体と共に成形して調製できる。又、セパレーターについても特に限定はなく、公知の材料を用いることができる。

0089

電解液の主溶媒である非水溶媒としては、リチウム塩を溶解する非プロトン性低誘電率の公知の溶媒が挙げられる。例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート(以下DMCと略す)、メチルエチルカーボネート(以下MECと略す)、プロピレンカーボネート、ジエチレンカーボネート、アセトニトリルプロピオニトリルテトラヒドロフランγ−ブチロラクトン、2−メチルテトラヒドロフラン、1、3−ジオキソラン、4−メチル−1、3−ジオキソラン、1、2−ジメトキシエタン、1、2−ジエトキシエタン、ジエチルエーテルスルホランメチルスルホランニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルスルホキシド等の溶媒を単独で、又は2種以上の溶媒を混合して用いることができる。

0090

電解質として用いるリチウム塩としては、LiCiO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiB(C6H5)4、LiCl、LiBr、CH3SO3Li、CF3SO3Li等があり、これらの塩を単独、又は2種類以上の塩を混合して用いることができる。

0091

なお、上記電解液の主溶媒である非水溶媒と電解質とをゲル化したゲル電解質、又はポリチエレンオキサイド若しくはポリアクリロニトリル等の高分子電解質等を用いてリチウムポリマー二次電池とすることもできる。

0092

更には、固体電解質を用いて全固体リチウム二次電池を製造することもできる。

0093

これら二次電池の構成自体は公知のものである。

0094

以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。

0095

以下の実施例1〜4、及び比較例1においては、各物性値は以下の方法で測定した。

0096

蒸着炭素量:島津製作所製熱重量分析装置GDT−50を用い、空気流中で重量の減少を測定し、基材黒鉛と明確に異なる重量減少分を蒸着炭素量とした。

0097

平均粒子径:島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置SALD1100を用いて測定した。

0098

比表面積: 日本ベル製表面積測定装置を用い、液体窒素温度窒素吸着量多点法で測定し、BET法で比表面積を求めた。

0099

タップ密度: 100mlのガラスメスシリンダー試料を入れてタッピングし、試料の容積が変化しなくなったところで試料容積を測定し、試料重量を試料容積で除した値をタップ密度とした。

0100

平均面間隔d002: 東X線回折装置XC−40Hを用い、Cu−Kα線をNiで単色化し、高純度シリコン標準物質として学振法で測定した。

0101

(実施例1〜4、比較例1)ブラジル産天然黒鉛を振動ロッドミル圧縮粉砕し、粒子径45μm以下(平均粒子径18μm)の黒鉛粒子を得た。図3に示す流動床反応器22を用いて、この黒鉛粒子を熱化学蒸着処理した。

0102

図3において、反応器42は直径100mm、加熱部管長300mmのバッチ式竪型反応器であり、反応器42の外部を覆って取り付けた電気ヒーター44により、反応器42の内部を加熱することができる。また反応器42の内部には攪拌機40を設けた。黒鉛粒子500gをホッパー22から反応器42内に供給した。黒鉛粒子を反応器42内に供給した後、反応器42の下部に設けた不活性ガスライン38を通して、反応器42内に不活性ガス30として窒素を1L/minの流量で供給した。この状態で反応器42内を昇温して反応器42内が900℃に到達した後、定量液体ポンプ26を用いて炭素源24としてベンゼンを2mL/minの流量で反応器42の下部に供給した。

0103

下方から上方へ反応器42内を流れるガス流により反応器42中の黒鉛粒子を流動化させると共に、攪拌機40を攪拌羽根先端周速度1200cm/分で作動させることにより反応器42中の黒鉛粒子を攪拌した。これにより、反応器42内の黒鉛粒子(不図示)の安定した流動化状態を形成した。この状態で黒鉛粒子を所定の時間熱化学蒸着処理した。所定時間の1バッチの処理が終了した後、生成物は反応器42の下部に設けた生成物取り出し孔46から排出させた。

0104

得られた負極材料の45μm篩下試料について、表1の条件で、リチウムイオン二次電池用負極材料としての評価試験を行った。その評価試験結果を表2に示す。

0105

ID=000002HE=135 WI=114 LX=0480 LY=0750
*1PVDF:ポリビニリデンフルオライド
*2 PC:プロピレンカーボネート
*3 MEC:メチルエチルカーボネート
*4 EC:エチレンカーボネート
*5DMC:ジメチルカーボネート

0106

ID=000003HE=110 WI=114 LX=0480 LY=0300
*1化学蒸着処理を行っていない黒鉛粒子
*2黒鉛の平均面間隔の値である。
表2に示すように、実施例1〜4の負極材料は、炭素層の平均面間隔d002が0.337nm未満であり、更にNMR、電子顕微鏡の観察結果から、黒鉛粒子が結晶性炭素層で被覆された負極材料であった。しかも、充放電試験結果に示すように、これらの負極材料は、電解液溶媒を分解することなく、高い放電容量及び高いクーロン効率を有している。

0107

また、実施例3の負極材料をポリエステル樹脂に埋め込み、常法により研磨し、反射偏光顕微鏡下に組織を観察した。その結果、図6に示すように負極材料は全ての部分で光学的異方性を示し、蒸着した炭素層が基材の黒鉛粒子と同じ分子配向を持って析出し、黒鉛粒子を被覆していることが確認された。

0108

(実施例5) 実電池の製作
正極活物質(LiCoO2)と、導電材(人造黒鉛)とを9:1(重量基準)で混合した。これをPVDFを5wt%含有する1−メチル−2−ピロリドン溶液に分散させてLiCoO2スラリーを調製した。同スラリーをドクターブレードを用いてアルミニウム箔上に厚さ60μmに塗布した後、130℃で2時間乾燥して正極を調製した。

0109

実施例3の負極材料を、PVDFを9wt%含有する1−メチル−2−ピロリドン溶液に分散させて、負極材料濃度65wt%のスラリーを調製した。得られた負極材料スラリーを、ドクターブレードを用いて銅箔上に厚さ30μmに塗布し、130℃で2時間乾燥して負極を調製した。

0110

セパレーターとしてセラニーズ社製セルガードを使用した。セパレーターを介して、正極と負極とを積層して巻取り、これを負極を兼ねたステンレスに入れた。電解質として濃度1M/LのLiPF6を溶解した、PC/メチルカーボネート/EC(体積比1:1:1.5)の溶液を負極缶注入した後、正極蓋をして、リチウムイオン二次電池を製作した。

0111

この電池を用いて、200mAで、4.2Vと2.7Vの電位の間でこの電池の充放電をさせた。その結果、本電池の容積エネルギー密度は377wh/Lであった。又、1000回の充放電を行ったが、1000回目の放電量は初回の放電量の92%であった。又、25℃放電容量と比較して、60℃放電容量は102%、0℃放電容量は98%であった。以下の実施例6、並びに比較例2及び3においては、各物性値は、以下の方法で測定した。

0112

蒸着炭素量:島津製作所製熱重量分析装置GDT−50を用い、空気流下重量減少を測定し、基材黒鉛と明確に異なる重量減少分を蒸着炭素量とした。

0113

平均粒子径:島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置SALD1100を用いて測定した。

0114

比表面積: 日本ベル製表面積測定装置BELSORB28を用い、液体窒素温度で窒素吸着量を多点法で測定し、BET法で比表面積を求めた。

0115

タップ密度: 100mlのガラス製メスシリンダーに試料を入れてタッピングし、試料の容積が変化しなくなったところで試料容積を測定し、試料重量を試料容積で除した値をタップ密度とした。

0116

平均面間隔d002: 理学製X線回折装置LINT1111を用い、Cu−Kα線をNiで単色化し、高純度シリコンを標準物質として学振法で測定した。

0117

透過型電子顕微鏡及び電子線回折日本電子製透過型電子顕微鏡2000FXを用い、明視野像撮影及び電子線回折測定を行った。

0118

7Li固体NMR:ブルカー製固体核磁気共鳴装置DSX300wbに多核広幅プローブヘッドを装着し、塩化リチウム水溶液標準として測定を行った。

0119

(実施例6)ブラジル産天然黒鉛を振動ロッドミルで圧縮粉砕した後、53μmで篩分けをし、その篩下であるタップ密度0.800g/cm3の黒鉛粒子を得た。次いで、寸法等は異なるが、形状は同一の図3に示す流動床反応器42を用いて、上記の黒鉛粒子を熱化学蒸着処理した。

0120

図3において、反応器42は直径500mm、加熱部管長1500mmのバッチ式竪型反応器であり、反応器42の外部を覆って取り付けた電気ヒーター44により反応器42の内部を加熱することができる。また反応器42の内部には攪拌機40を設けた。黒鉛粒子60kgはホッパー22から反応器42内に供給された。

0121

黒鉛粒子を反応器42内に供給し、反応器42の下部に設けた不活性ガスライン38を通して反応器42内に不活性ガスとして窒素30を50L/minの流量で供給した。この状態で反応器42内を昇温した。反応器42内が1000℃に到達した後、炭素源24としてトルエンを定量液体ポンプ26を用いて158mL/minの流量で反応器42の下部に供給した(トルエン−窒素混合ガス中のトルエンのモル濃度:40%)。下方から上方へ反応器42内を流れるガス流により反応器42中の黒鉛粒子を流動化させた。更に、攪拌機40を攪拌羽根先端周速度1200cm/分で作動させ、これにより反応器42中の黒鉛粒子を攪拌した。これにより、反応器42内の黒鉛粒子(不図示)の安定した流動化状態を形成した。この状態で黒鉛粒子を120分間化学蒸着処理した。この1バッチの処理が終了した後、生成物は反応器42の下部に設けた生成物取り出し孔46から排出させた。

0122

得られた負極材料の53μm篩下試料について、表3の条件で、リチウムイオン二次電池用負極材料としての評価試験を行った。その評価試験結果を表4に示す。

0123

ID=000004HE=140 WI=105 LX=0525 LY=0300
*1PVDF:ポリビニリデンフルオライド
*2 PC:プロピレンカーボネート
*3 EC:エチレンカーボネート
*4 MEC:メチルエチルカーボネート

0124

ID=000005HE=140 WI=095 LX=0575 LY=0300
*1被覆ピッチ炭化のための熱処理時間
*2ピークブロードで測定不能
実施例6の負極材料の炭素層を、透過型電子顕微鏡を用いる電子線回折法により構造解析した。負極材料は図1に示す平板状の形状である。この負極材料の透過型電子顕微鏡写真図7に示す。図7の透過型電子顕微鏡写真に示すように、負極材料の炭素層には明瞭な炭素002面の格子縞が認められた。この格子縞間隔、即ち炭素002面の平均面間隔は0.33645nmであった。また、この側面炭素層14の面方向(図2のY方向)に電子線を照射して得た電子線回折写真図8に示す。図8は、結晶性炭素の炭素002面を示している。

0125

なお、この負極材料の上面の平板状部に形成された上面炭素層16についても、上面炭素層の面に垂直方向図2のX方向)に透過型電子顕微鏡の電子線を照射して電子線回折写真を得た。その写真は、結晶性炭素の炭素110面を示していた。

0126

次に、充電状態(負極材料にリチウムイオンをインターカレーションした状態)の負極材料の7Li−NMRの測定結果を図9に示す。42.9ppmに、天然黒鉛にインターカレーションしたリチウムイオンが観察された。また、15.1ppmに、結晶性炭素にインターカレーションした或は吸蔵されたリチウムイオンが観察された。

0127

以上の結果から、黒鉛粒子は、黒鉛粒子の表面と炭素層の炭素110面とを平行にして炭素層で被覆され、且つ被覆炭素層は結晶性であることが明らかである。

0128

(比較例2)実施例6で用いた黒鉛粒子10gを固定床化学蒸着反応器に仕込み、実施例6と同一濃度(40モル%)のトルエン−窒素混合ガスを用いて化学蒸着処理を行った。得られた負極材料について、表3の条件でリチウムイオン二次電池用負極材料としての評価試験を行った。その評価試験結果を表4に示す。表4に示すように、固定床化学蒸着法で製造した負極材料は、黒鉛粒子表面の炭素被覆不完全であることが明らかである。

0129

なお、固定床化学蒸着反応器は、石英円筒状反応器内に黒鉛板を取付けたものである。前記黒鉛板状に黒鉛粒子を盛上げ、反応器外部から加熱しながら混合ガスを供給した。反応器は直径95mm、長さ800mm、黒鉛板は95mm×120mmの平板状であった。蒸着温度は1000℃であった。

0130

(比較例3)実施例6で用いた黒鉛粒子100gと、コールタールピッチ由来のメソフェースピッチ軟化点295℃、固定炭素量82wt%)25gとを320℃で混練後冷却し、次いで粉砕した。これを330℃で30分間空気流通下に加熱し、被覆ピッチの不融化を行った。その後、昇温速度10℃/minで1000℃まで昇温した。次いで、同温度で120分間熱処理を行い、負極材料を調製した。得られた負極材料について、表3の条件でリチウムイオン二次電池用負極材料としての評価試験を行った。その評価試験結果を表4に示す。表4に示すように、黒鉛粒子とピッチとを混練後炭化して製造した負極材料は、黒鉛粒子表面の炭素被覆が不完全であることが明らかである。

0131

図10は、充電状態(負極材料にリチウムイオンをインターカレーションした状態)の比較例3の負極材料の7Li−NMRの吸収スペクトルを示す。この吸収スペクトルによれば、15ppmの位置に結晶性炭素にインターカレーションしたリチウムイオンに由来する吸収スペクトルが、また110ppmの位置に等方性炭素にインターカレーションしたリチウムイオンに由来する吸収スペクトルが認められる。

0132

上述したように、実施例6の黒鉛粒子を流動床化学蒸着法で被覆した蒸着炭素層は、炭素110面で黒鉛粒子の全表面を被覆している結晶性炭素層である。

0133

一方、比較例2の黒鉛粒子を固定床化学蒸着法で被覆した蒸着炭素、及び比較例3の黒鉛粒子とピッチとを混練後炭化した被覆炭素は、黒鉛粒子表面の炭素による被覆が不完全である。

0134

以上の事実は、低結晶性炭素層で被覆した黒鉛粒子をリチウムイオン二次電池用負極材料とする従来の負極材料からは、全く予想されなかった知見である。

0135

一方、流動床を採用する化学蒸着処理法によると、黒鉛粒子は、炭素源となる有機物と、必要により共存させる不活性ガスと、更には前記有機物の分解ガスとによって浮遊状態におかれているため、常にその全表面が、これらのガスで均一に覆われている。このため、黒鉛粒子の全表面を少量の炭素で均一にかつ完全に被覆することが出来る。

0136

更に、上記流動床化学蒸着処理法において諸条件を適切に設定して得られた負極材料は、この炭素層が結晶性であることに加えて、この炭素層は黒鉛粒子の全表面を炭素層の炭素110面で被覆した構造である。しかも、炭素層を従来よりも薄く形成しても黒鉛粒子の全表面を均一にかつ完全に被覆することができるものである。その結果として、
(1)被覆炭素量が少ないため、更に高い充放電速度が得られる
(2)被覆炭素量が少ないため、負極材料中の黒鉛の占める割合が高い。このため高い放電容量を有する
(3)黒鉛粒子の全表面を炭素層で均一にかつ完全に被覆するため、クーロン効率が高い
(4)黒鉛粒子の全表面を炭素層で均一にかつ完全に被覆するため、PC等の溶媒の分解を抑制する。このためこの負極材料を用いて形成した電池は溶媒の分解ガスに基づく爆発の危険を防止する
等の利点がある。

0137

以上のような利点は、低結晶性炭素で被覆した黒鉛をリチウムイオン二次電池用負極材料とする従来の知見からばかりでなく、黒鉛粒子と、この黒鉛粒子を固定床化学蒸着法で被覆した蒸着炭素とからなる負極材料からも、黒鉛粒子とピッチとを混練後炭化することにより得られる負極材料からも全く予想されないことである。

発明の効果

0138

本発明のリチウム二次電池用負極材料は、黒鉛粒子と、化学蒸着処理法を用いて黒鉛粒子の表面を炭素110面で結晶性炭素で被覆した炭素層からなるので、これを用いて製造したリチウム二次電池は、高速充放電が可能であり、放電容量が大きく、クーロン効率が高く、低温特性並びに高温特性等に優れており、更にPC等の溶媒の分解を抑制して電池を爆発から守り安全なものにするという利点を有するものである。

図面の簡単な説明

0139

図1本発明のリチウム二次電池用負極材料の一例を示す模式的断面図である。
図2図1に示す負極材料の部分Aの拡大図である。
図3本発明のリチウム二次電池用負極材料製造用化学蒸着処理装置の一例を示す概略図である。
図4本発明のリチウム二次電池用負極材料製造用化学蒸着処理装置の別の例を示す概略図である。
図5本発明のリチウム二次電池用負極材料製造用化学蒸着処理装置の更に別の例を示す概略図である。
図6本発明のリチウム二次電池用負極材料の一例を示す偏光電子顕微鏡写真である。
図7本発明のリチウム二次電池用負極材料の一例を示す透過型電子顕微鏡写真である。
図8本発明のリチウム二次電池用負極材料の一例を示す電子線回折写真である。
図9リチウムイオンをインターカレーションした本発明のリチウム二次電池用負極材料の一例を示す7Li−NMRスペクトルである。
図10リチウムイオンをインターカレーションした比較例3のリチウム二次電池用負極材料を示す7Li−NMRスペクトルである。

--

0140

2黒鉛粒子
4被覆炭素層
6負極材料
14 側面炭素層
16 上面炭素層
22黒鉛ホッパー
24炭素源
26定量液体ポンプ
28 炭素源送液ライン
30不活性ガス
32ガス流量計
34 不活性ガス−炭素源混合ライン
36 ガス流量計
38 不活性ガスライン
40攪拌機
41攪拌羽根
42反応器
44電気ヒーター
46 負極材料取り出し孔
48バグフィルター
50排気ライン
62タンク
64定量フィーダー
66 炭素源
68 定量液体ポンプ
70 炭素源送液ライン
72 不活性ガス
74 ガス流量計
76 不活性ガス−炭素源混合ライン
78 ガス流量計
80 不活性ガスライン
82電気振動
84 反応器
86 電気ヒーター
88生成物取り出しライン
90 生成物受け器
92 バグフィルター
94 排気ライン
102 タンク
104 定量フィーダー
106 炭素源
108 定量液体ポンプ
110 炭素源送液ライン
112 不活性ガス
114 ガス流量計
116 不活性ガス−炭素源混合ライン
118 ガス流量計
120 不活性ガスライン
122 電気振動機
124 反応器
126 電気ヒーター
128 生成物取り出しフィーダー
130 生成物受け器
132 バグフィルター
134 排気ライン

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