図面 (/)
目的
構成
概要
背景
非鉄金属の溶湯用部材には、溶湯に浸漬して接触する部材と、浸漬しないで溶湯に繰返し接触する部材とがある。例えば、溶湯に浸漬する部材として熱電対保護管やストーク、溶湯と繰返し接触する部材としてラドルや樋等がある。従来、これらの部品には、表面に塗型材を塗布した鋳鉄材料を用いるのが一般的であった。近年はこれに代わって、サイアロンセラミックの適用が拡がりつつある。
また、表面に被覆層を形成した本発明と同一用途の溶湯用部材の例として、特開昭49−54229号公報には、CrとAlを含む鉄系材料の表面に複合酸化物被膜を形成した鋳造工具が記載されている。また、用途を特定していないが、特公平7−5392号公報には、鉄系材料の酸化被膜と珪酸塩が反応した結合層を形成した上に、微粒子状金属酸化物又は有機金属結合剤を焼固することにより、酸化鉄拡散防止層を形成した、高温の腐食性排気ガスに曝される用途等を示唆するセラミック・鉄製部材接合体が記載されている。
概要
鉄系材料を基材にして、非鉄金属溶湯に浸漬又は繰返し接触しても耐溶損性があり、安全に使用できる非鉄金属溶湯用部材を提供する。
鉄系材料基材の表面に、鉄系材料基材表面と金属的に結合したAl−Fe合金の中間層を形成し、さらにAl−Fe合金の中間層の表面をセラミック層で被覆した、二重被覆構造の非鉄金属溶湯用部材である。セラミック層は扁平状セラミック粉末を含み、溶融ガラスで結合するか、或いは珪酸塩又は燐酸塩が主成分のセラミック結合材で結合して、下地のAl−Fe合金層に融着被覆する。扁平状セラミック粉末は、炭化珪素、扁平状アルミナ、雲母のなかの1種又は2種以上の粉末からなり、セラミック層のなかに20〜70重量%含まれる。非鉄金属溶湯としては、主にアルミニウム合金、亜鉛合金、銅合金等の溶湯を対象とする。
目的
上記問題点を解決するため、前記特開昭49−54229号公報、特公平7−5392号公報以外にも、鉄系材料の表面に被覆層を形成した種々の耐熱、耐食、耐溶損部材が提供されている。本発明においても、上記問題点を解決するため、同様に鉄系材料を用い、非鉄金属溶湯に浸漬接触或いは繰返し接触しても耐用性があり、安全に使用できる溶湯用部材の提供を目的とする。
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 1件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
鉄系材料からなる基材表面に、基材表面と金属的に結合したAl−Fe合金層を形成し、さらにAl−Fe合金層の表面をセラミック層で被覆した構造にてなり、セラミック層は扁平状セラミック粉末を含み、溶融ガラスにより結合して、Al−Fe合金層に融着してなることを特徴とする非鉄金属溶湯用部材。
請求項2
請求項3
セラミック層は扁平状セラミック粉末を20〜70重量%含んでなることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の非鉄金属溶湯用部材。
請求項4
鉄系材料からなる基材表面に、基材表面と金属的に結合したAl−Fe合金層を形成し、さらにAl−Fe合金層の表面をセラミック層で被覆した構造にてなり、セラミック層は扁平状セラミック粉末を含み、珪酸塩又は燐酸塩を主成分とするセラミック結合材により結合して、Al−Fe合金層に融着してなることを特徴とする非鉄金属溶湯用部材。
請求項5
セラミック層に含まれる扁平状セラミック粉末は、炭化珪素、扁平状アルミナ、雲母のなかの1種又は2種以上の粉末を含んでなることを特徴とする請求項4に記載の非鉄金属溶湯用部材。
請求項6
セラミック層は扁平状セラミック粉末を20〜70重量%含んでなることを特徴とする請求項4又は5の何れかに記載の非鉄金属溶湯用部材。
請求項7
非鉄金属溶湯がアルミニウム合金溶湯であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の非鉄金属溶湯用部材。
請求項8
請求項9
非鉄金属溶湯が銅合金溶湯であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の非鉄金属溶湯用部材。
発明の効果
背景技術
0001
本発明の非鉄金属溶湯用部材は、例えば実施例により、アルミニウム合金、亜鉛合金、銅合金の溶湯に用いて健全であり、優れた耐溶損性を有していること明らかである。また、耐溶損性が良いので基材材質の成分が溶湯中に溶け込むことがなく、非鉄金属鋳造製品の品質が向上する。さらに基材が鉄系材料のため、強靱且つ安価である。これらにより、非鉄金属製品を製造する溶解又は鋳造設備の保守作業能率の向上及び経費の節減、並びに非鉄金属製品の品質向上に大きく寄与する。
0002
非鉄金属の溶湯用部材には、溶湯に浸漬して接触する部材と、浸漬しないで溶湯に繰返し接触する部材とがある。例えば、溶湯に浸漬する部材として熱電対保護管やストーク、溶湯と繰返し接触する部材としてラドルや樋等がある。従来、これらの部品には、表面に塗型材を塗布した鋳鉄材料を用いるのが一般的であった。近年はこれに代わって、サイアロンセラミックの適用が拡がりつつある。
発明が解決しようとする課題
0003
また、表面に被覆層を形成した本発明と同一用途の溶湯用部材の例として、特開昭49−54229号公報には、CrとAlを含む鉄系材料の表面に複合酸化物被膜を形成した鋳造工具が記載されている。また、用途を特定していないが、特公平7−5392号公報には、鉄系材料の酸化被膜と珪酸塩が反応した結合層を形成した上に、微粒子状金属酸化物又は有機金属結合剤を焼固することにより、酸化鉄拡散防止層を形成した、高温の腐食性排気ガスに曝される用途等を示唆するセラミック・鉄製部材接合体が記載されている。
0004
従来の塗型材を塗布した鋳鉄材料を用いた溶湯用部材は、塗型材の剥離した部分が溶湯と反応して、少しづつ侵食されて溶損するばかりでなく、主成分であるFeが溶湯中に溶け込み、鋳造製品の機械的性質を劣化させる等の欠点がある。近年適用が拡がりつつあるサイアロンセラミックは、溶湯と反応しないので、溶湯用部材に適している。そして、従来のセラミックに比べて、ある程度の強靱性を有しているので、用途によっては十分満足した結果が得られている。しかし、本質的にセラミック材質の域を越えず、金属材料よりも脆弱なため、破損しやすく、取扱が難しいという欠点がある。また、高価なため、安易に適用できるものではない。
課題を解決するための手段
0005
上記問題点を解決するため、前記特開昭49−54229号公報、特公平7−5392号公報以外にも、鉄系材料の表面に被覆層を形成した種々の耐熱、耐食、耐溶損部材が提供されている。本発明においても、上記問題点を解決するため、同様に鉄系材料を用い、非鉄金属溶湯に浸漬接触或いは繰返し接触しても耐用性があり、安全に使用できる溶湯用部材の提供を目的とする。
0006
本発明の第1発明は、図1の本発明溶湯用部材表層部の模式断面図にて示すように、鉄系材料基材1の表面に、鉄系材料基材1と金属的に結合したAl−Fe合金層2を形成し、さらにAl−Fe合金層2の表面にセラミック層3を被覆した構造にてなり、セラミック層3は扁平状セラミック粉末を含み、溶融ガラスにより結合して、Al−Fe合金層2に融着してなる非鉄金属溶湯用部材である。
0007
本発明を完成するための研究において、セラミック層の密着性を確保するには、Al−Fe合金の中間層を介在させることが有効であると判明した。Al−Fe合金層を形成するためには、下地基材はFe源となる鉄系材料を用いる必要がある。Al−Fe合金層自体は、金属であると共に下地鉄系材料基材と金属的に結合しているので、亀裂や剥離が発生し難い。そして、Al−Fe合金層に含まれるFe成分が、Al−Fe合金層の表面に被覆するセラミック層の密着性を得るのに有効のようである。さらに、セラミック層に含まれる扁平状セラミック粉末は、層状に積層して、扁平面方向に広がった形態をしているので、各粒子が自由方向を向いて混在することにより結合性が向上する。
0008
一般に金属溶湯用部材が溶損するときは、金属溶湯との浸漬接触又は繰返し接触による熱的負荷を受けて、被覆層に微細な亀裂や剥離が発生し、この亀裂部や剥離部に溶湯が浸入して下地を侵食し始め、最終的に大きな溶損に至ると考えられる。本発明の非鉄金属溶湯用部材は、このような事態に遭遇しても、上記諸作用により亀裂や剥離が発生し難い。そして、溶湯の侵入による鉄系材料基材の溶損が起こり難く、安全に使用できる非鉄金属溶湯用部材となる。
0009
第2及び第3発明は、第1発明のセラミック層に含まれる扁平状セラミック粉末を、炭化珪素、扁平状アルミナ、雲母のなかの1種又は2種以上の粉末により構成し、この扁平状セラミック粉末をセラミック層の20〜70重量%とする。そして、最表面層として被覆するセラミック層のなかの扁平状セラミックを適切な成分と量に規定することで、より一層効果的な溶湯用部材となる。
0010
第4発明は、図1の模式断面図にて示す鉄系材料基材1の表面に、鉄系材料基材1の表面と金属的に結合したAl−Fe合金層2を形成し、さらにAl−Fe合金層2の表面を、扁平状セラミック粉末を含むセラミック層3で被覆した、第1発明と同様の構造である。但し、セラミック層は珪酸塩又は燐酸塩を主成分とするセラミック結合材により結合して、Al−Fe合金層2に融着してなる非鉄金属溶湯用部材である。そして、扁平状セラミック粉末を含むセラミック層3を溶融ガラスにより結合する第1発明と同等の効果を得る。
0011
第5及び第6発明は、第4発明のセラミック層のなかの扁平状セラミック粉末の成分と量を規定する。第2及び第3発明と同様の規定であり、第4発明をより一層効果的にする。
発明を実施するための最良の形態
0012
第7乃至第9発明は、第1乃至第6発明における適用非鉄金属溶湯の材質を、アルミニウム合金、亜鉛合金、銅合金に特定するものである。
0013
本発明溶湯用部材の基材は、Al−Fe合金層を形成するためのFe源となる普通炭素鋼、合金鋼、普通鋳鉄、合金鋳鉄等の鉄系材料に限られ、その材質全般を用いることができるが、材質詳細は特定しない。これら鉄系材料基材にAl−Fe合金層を形成するには、溶融アルミニウムめっき法、アルミニウム浸透法等により行う。溶融アルミニウムめっき法の場合は、アルミニウムめっき層をAl−Fe合金にするため、例えば760〜800℃に1〜3時間加熱して、鉄系材料基材からFe成分をアルミニウムめっき層へ拡散させ、Al−Fe合金層にする。アルミニウム浸透法の場合は、アルミニウムの浸透した領域自体がAl−Fe合金層になっているので、アルミニウムを拡散させる加熱は不要である。以上により調製するAl−Fe合金層は、厚み50〜200μm、Fe30〜70重量%である。
0014
扁平状セラミック粉末としては、炭化珪素、扁平状アルミナ、雲母等の粉末を用いることができる。扁平状セラミック粉末の量はセラミック層のなかに20〜70重量%含むのが好ましく、大きさは長軸が2〜100μm、長軸と厚みとの比が5以上が好ましい。炭化珪素と雲母は粉末自体が本質的に扁平状で、殆んどの粉末が上記大きさの範囲内にあり、そのまま使用できる。アルミナは上記大きさの範囲内の粉末に調製する必要がある。
0015
セラミック層のなかの結合材は、高温溶融ガラス形成材、或いは珪酸塩溶液又は燐酸塩溶液を用いる。珪酸塩溶液には珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム水溶液の1種又は2種以上の混合溶液が、燐酸塩溶液には燐酸アルミニウム水溶液が使用できる。珪酸塩溶液又は燐酸塩溶液には、硬化剤としてMgO、ZnO等の酸化物を適宜添加してもよい。セラミック層のなかの結合材は10〜80重量%[但し、水分は除く]含むのが好ましい。セラミック層において、扁平状セラミック粉末と結合材との合計量の残部は通常のアルミナ、ジルコニア、シリカ等の酸化物、炭化珪素等の炭化物、窒化珪素等の窒化物と、不可避的不純物である。
0016
セラミック層を被覆するときは、扁平状セラミック粉末と結合材との混合スラリーを下地のAl−Fe合金層の表面に塗布して乾燥する。結合材に高温溶融ガラス形成材を用いるときは、水等の溶媒に混合してスラリー化する。塗布及び乾燥の後は、そのガラスの溶融温度まで加熱して、下地に融着させる。結合材に珪酸塩溶液又は燐酸塩溶液を用いるときは、塗布及び乾燥の後、少なくとも結晶水が消滅する温度以上、即ち概略500℃以上に加熱して融着させる。このようにして形成するセラミック層の厚みは100〜500μmが好ましい。厚みが100μm未満では溶湯に対する耐溶損効果が少なく、500μmを越えると熱衝撃等により剥離しやすくなる。
0017
実施例1
表1の各種の鉄系材料基材の試験片について、アルミニウム合金溶湯に対する耐溶損性を調べた。先ず、直径20mm、長さ200mmの丸棒試験片素材に溶融アルミニウムめっきを施し、厚み50μmのアルミニウム被覆層を形成した。この被覆層を有する試験片素材を、760℃にて3時間拡散処理の加熱をして、アルミニウム被覆層をAl−Fe合金層にした。別に、粒度10μmの炭化珪素粉末30重量%、粒度80μmの扁平状アルミナ10重量%、溶融ガラス形成材60重量%を混合して、水によりスラリー化したセラミック層形成材を準備した。溶融ガラス形成材の組成はSiO230重量%、B2O325重量%、CaO20重量%、Na2O13重量%、K2O12重量%である。このスラリーの中へAl−Fe合金層被覆した丸棒試験片素材を浸漬して、全面にスラリーを塗布した。常温乾燥、さらに110℃乾燥の後、650℃にて1時間加熱して溶融ガラス形成材を溶融し、下地のAl−Fe合金層へ融着させることにより、セラミック層を被覆形成した。この被覆セラミック層はねずみ色をし、厚みは概略200〜300μmであった。
0018
表1の4種類の鉄系基材材料の本発明被覆の試験片、並びに被覆せずに比較のために作製した従来の塗型のみ施した試験片の合計8個を、図2の溶損試験装置を用いて試験した。各試験片4は、例示の1個のように、先端から80mmまでの部分がアルミニウム合金溶湯5へ浸漬するようにして、直径200mmの円形の試験片保持板6の周囲8箇所に取り付けた。750℃に保持したアルミニウム合金[ADC12]溶湯5に10時間浸漬して各試験片の溶損状況を調べた。各試験片の状況を表1に示す。表中の数値は溶損により試験片の直径が減少した値である。この結果から、本発明の被覆はアルミニウム合金溶湯に対する耐溶損性が優れていること明らかである。
0019
0020
実施例2
実施例1と同一鉄系材料基材の同一寸法の試験片について、亜鉛合金溶湯に対する耐溶損性を調べた。先ず、アルミニウム浸透法により各丸棒試験片素材の表面に厚み100μmのAl−Fe合金層を被覆形成した。別に、粒度10μmの炭化珪素粉末30重量%、雲母20重量%、濃度30重量%の珪酸ナトリウム水溶液50重量%を混合し、スラリー化したセラミック層形成材を準備した。このスラリーの中へAl−Fe合金層を被覆形成した丸棒試験片素材を浸漬して、全面にスラリーを塗布した。常温乾燥、さらに350℃乾燥の後、650℃に加熱して、下地のAl−Fe合金層へ融着させることにより、セラミック層を被覆形成した。この被覆セラミック層の厚みは概略300μmであった。
0021
実施例1と同じ4種類の鉄系基材材料の本発明被覆の試験片、並びに被覆せずに比較のために作製した従来の塗型のみ施した試験片の合計8個を、実施例1と同様に、図2の溶損試験装置に取り付けて試験した。650℃に保持した亜鉛合金[ZDC1]溶湯5に20時間浸漬して各試験片の溶損状況を調べた。各試験片の状況を表2に示す。表中の数値は溶損により試験片の直径が減少した値である。この結果から、本発明の被覆は亜鉛合金溶湯に対して耐溶損効果のあることが明らかである。
0022
0023
実施例3
表3に示すステンレス鋼基材の試験片について、銅合金[黄銅]溶湯に対する耐溶損性を調べた。先ず、直径20mm、長さ200mmの丸棒試験片素材に溶融アルミニウムめっきを施し、厚み50μmのアルミニウム被覆層を形成した。この被覆層を有する試験片素材を、800℃にて1時間拡散処理の加熱をして、アルミニウム被覆層をAl−Fe合金層にした。さらにこの表面に被覆するセラミック層は、実施例1と同一組成で、同一処理により形成した。この被覆セラミック層の厚みは概略300μmであった。
0024
上記作製のステンレス鋼の本発明被覆試験片、並びに被覆せずに比較のために作製した従来の塗型のみ施した試験片について試験した。各試験片は、先端から80mmまでの部分を、1100℃に保持した黄銅[YBsC3]溶湯に2時間浸漬して溶損状況を調べた。その状況を表3に示す。本発明の被覆は銅合金溶湯に対しても耐溶損効果のあることが明らかである。
0025
0026
実施例4
アルミニウム合金ダイカスト設備のラドルに本発明被覆を試験適用した。容量2kg用の普通鋳鉄[FC200]製のラドル素材に溶融アルミニウムめっきを施し、厚み50μmのアルミニウム被覆層を形成し、さらに760℃にて3時間加熱して、アルミニウム被覆層をAl−Fe合金層にした。別に、粒度10μmの炭化珪素粉末22重量%、粒度80μmの扁平状アルミナ38重量%、溶融ガラス形成材40重量%を混合し、スラリー化したセラミック層形成材を準備した。溶融ガラス形成材の組成はSiO230重量%、B2O325重量%、CaO20重量%、Na2O13重量%、K2O12重量%である。このスラリーの中へAl−Fe合金層被覆したラドル素材を浸漬して、全面にスラリーを塗布した。常温乾燥、さらに350℃乾燥の後、650℃に加熱して溶融ガラス形成材を溶融し、下地のAl−Fe合金層へ融着させることにより、セラミック層を被覆形成した。この被覆セラミック層の厚みは概略300μmであった。
0027
上記作製の本発明被覆のラドルを、概略750℃のアルミニウム合金[ADC12]溶湯の汲み上げ用に、連続して60日間使用した。この使用により、溶湯と延べ35000回繰返し接触して加熱冷却されたが、下地素材に溶損がないことは勿論、溶湯接触面にも亀裂や剥離の発生がなく、健全であった。また、溶湯接触面は比較的滑らかでノロの付着が少なく、付着したノロも容易に取り除くことができた。一方、被覆処理をしていない従来から使用の塗型のみを施した普通鋳鉄製ラドルは、手入れと塗型を毎日なされていたが、それでも毎日少しづつ溶損があったと思われ、1週間も使用すると、その注湯口付近の内面に片肉1mm程度の溶損が起こっていた。このことから、本発明被覆のラドルは顕著な耐溶損効果があり、且つ溶損がないので、Fe成分の溶湯への溶け込みがなく、アルミニウム合金ダイカスト製品の品質を向上させること明らかである。
0028
実施例5
アルミニウム合金低圧鋳造設備のストークに本発明被覆を試験適用した。外径135mm、内径100mm、長さ800mmの普通鋳鉄[FC200]製ストーク素材の表面に、アルミニウム浸透法により、厚み100μmのAl−Fe合金層を被覆形成した。別に、粒度10μmの炭化珪素粉末30重量%、粒度80μmの扁平状アルミナ20重量%、濃度30重量%の珪酸ナトリウム水溶液50重量%を混合し、スラリー化したセラミック層形成材を準備した。このスラリーのなかへAl−Fe合金層を被覆したストーク素材を浸漬して、全面にスラリーを塗布した。常温乾燥、さらに350℃乾燥の後、650℃に加熱して、下地のAl−Fe合金層へ融着させることにより、セラミック層を被覆形成した。この被覆セラミック層の厚みは概略400μmであった。
図面の簡単な説明
0029
上記作製の本発明被覆のストークを、低圧鋳造設備の溶湯保持炉の概略750℃のアルミニウム合金[AC4B]浴湯中に、3週間連続浸漬して使用した。ストークを取外して点検の結果、下地素材に溶損がないことは勿論、溶湯接触面にも亀裂や剥離の発生がなく、健全であった。一方、従来から使用の被覆処理をしていない塗型のみ施した普通鋳鉄製ストークは、手入れと塗型を毎日なされていたが、2週間も使用すると、その外面と内面は片肉1mm程度の溶損が起こっていた。このことから、本発明被覆のストークは顕著な耐溶損効果があり、且つ溶損がないのでFe成分の溶湯への溶け込みがなく、アルミニウム合金低圧鋳造製品の品質を向上させる。
--
0031
1;鉄系材料基材2;Al−Fe合金層3;セラミック層
4;試験片5;非鉄金属溶湯6;試験片保持板
6a;支持軸7;溶湯浴槽