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技術 加工性の優れた高張力熱延鋼板の製造方法

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 大沢紘一山内克久
出願日 1998年5月29日 (22年2ヶ月経過) 出願番号 1998-148836
公開日 1999年12月14日 (20年7ヶ月経過) 公開番号 1999-343521
状態 特許登録済
技術分野 薄鋼板の熱処理
主要キーワード 混合域 保持条件 発明供試体 比較用供試体 フラッシュ溶接 層状組織 広がり率 ランナウト
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課題

材質の変動が大でも、鋼板長手方向および幅方向における材質の均一性熱処理によって安定して高めることができる、残留オーステナイトを5%以上含有する、材質の均一性および加工性に優れた高張力熱延鋼板を製造する。

解決手段

C:0.08〜0.20% 、Si:0.80〜1.80% 、Mn:1.0〜2.0% 、P:0.005〜0.04% を含有する成分組成を有する鋼片を、仕上げ温度Ar3 点以上、巻取り温度650℃以下の条件で熱間圧延して熱延鋼帯を調製し、これを酸洗した後、連続焼鈍設備においてAc3−25℃〜Ac3 +25℃の温度に再加熱し、1sec 以上保持した後、10℃/sec 以上の速度で冷却し次いで350〜450℃の温度で30sec 以上保持し、常温まで冷却した後巻き取る。

概要

背景

自動車燃費向上を目的とした車体構造部材として、軽量化と衝突安全性とを共に満足させるために、加工性の優れた590〜780MPa級高張力熱延鋼板が要求されている。

590〜780MPa級の高張力熱延鋼板に優れた加工性を付与するためには、強度と延性バランスを向上させることが必要であり、また、その用途によっては、強度および延性と共に、良好な伸びフランジを有していることが必要とされている。

強度と延性のバランスが優れた高張力熱延鋼板を製造する手段として、残留オーステナイトを含有させ、この相の変形時におけるTRI現象を利用して鋼板の延性を高める方法が提案されている。

例えば、特開昭63−4017号公報および特開昭64−79345号公報には、C:0.1 5〜0.4wt.% 、Si:0.5〜2.0wt.% 、Mn:0.5〜2.0wt.% を含有し、残り、Feおよび不可避不純物からなる化学成分組成を有する鋼片を、仕上げ圧延温度Ar3 ±50℃、全圧下率80%以上の条件で熱間圧延し、次いで、冷却制御を行いながら、350〜500℃の温度で巻き取ることにより、残留オーステナイトを5%以上含有し、残部がフェライトベイナイトとからなる、強度と延性のバランスを表す「引張り強さ(TS)×伸び(El)」の値が24000MPa・%以上の高張力熱延鋼板を製造する方法(以下、先行技術1という )が開示されている。

先行技術1によれば、熱間圧延の圧下率、仕上げ圧延温度、ランナウト冷却条件および巻取り温度を、特定の範囲に規定することにより、オーステナイトからポリゴナルフェライトの生成を促進し、オーステナイトにCを濃化させ、更に、ベイナイト変態させることによりCの濃化をさらに進行させ、オーステナイトの安定化を図り、これによって、最終的に5%以上の残留オーステナイトを含有するフェライトとベイナイトとの混合組織が得られるとされている。

先行技術1のような、残留オーステナイトを含有する熱延鋼板は、加工性に優れているが、一方、鋼板の機械的性質特に引張り強さの変動が大きいために、歩留りが悪いという問題がある。高張力熱延鋼板の引張り強さの変動は、例えば590MPa級の場合には、590〜690MPaの範囲内に収めることが必要であるが、この鋼板では、しばしば100MPaを超える大きな変動が生じ、そのために、大きな変動の生じた材質不良部分を切断除去せざるを得ず、製品歩留りが低下する問題が生ずる。

熱延ままで製造した残留オーステナイトを含有する熱延鋼板の材質の変動は、熱延過程における鋼帯の長さ方向および幅方向温度条件の変動と、コイルに巻き取った後のコイル外周部、内周部およびエッジ部と内部の冷却速度の変動により、ミクロ組織が変化することによるものであり、従来、やむを得ないことと考えられている。

そこで、このような残留オーステナイトを含有する熱延鋼板の材質の変動を解決し、加工性の良好な残留オーステナイトを含有する熱延鋼板を効率よく製造する製造する方法について研究開発が進められており、例えば、特開平5−271764号公報には、C:0.10〜0.25mass% 、Si:0.8〜3.0mass% 、Mn:1.0〜3.0mass% 、S:0.005mass% 以下、Al:0.01〜0.10mass% を含有し、残り、Feおよび不可避不純物からなる化学成分組成を有する熱延鋼帯再加熱し、再加熱時の最高到達温度T1℃が、(Ac1+(Ac3−Ac1)/6〜Ac3 −(Ac3 −Ac1)/6)の温度範囲であり、かつ、この温度で1sec 以上保持した後、20℃/sec 以上の平均冷却速度で冷却し、350〜450℃の温度域で巻き取るか、または、この温度域で100sec 以上保持し次いで50℃以下まで冷却した後巻き取ることによって、体積率6%以上の残留オーステナイトを含有する高強度熱延鋼板を製造する方法(以下、先行技術2という)が開示されている。

概要

材質の変動が大でも、鋼板の長手方向および幅方向における材質の均一性熱処理によって安定して高めることができる、残留オーステナイトを5%以上含有する、材質の均一性および加工性に優れた高張力熱延鋼板を製造する。

C:0.08〜0.20% 、Si:0.80〜1.80% 、Mn:1.0〜2.0% 、P:0.005〜0.04% を含有する成分組成を有する鋼片を、仕上げ温度Ar3 点以上、巻取り温度650℃以下の条件で熱間圧延して熱延鋼帯を調製し、これを酸洗した後、連続焼鈍設備においてAc3−25℃〜Ac3 +25℃の温度に再加熱し、1sec 以上保持した後、10℃/sec 以上の速度で冷却し次いで350〜450℃の温度で30sec 以上保持し、常温まで冷却した後巻き取る。

目的

従って、この発明の目的は、上述した問題を解決し、残留オーステナイトを5%以上含有する590〜780MPa級の高張力熱延鋼板を製造するに際し、材質の変動が大きくても、熱処理によって、熱延鋼帯の長手方向および幅方向における材質の均一性を安定して高めることができる、加工性に優れた高張力熱延鋼板を製造する方法を提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
2件

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請求項1

C:0.08〜0.20mass% 、Si:0.80〜1.80mass% 、Mn:1.0 〜2.0 mass% 、および、P:0.005〜0.04mass%を含有する化学成分組成を有する鋼片を調製し、前記鋼片を、仕上げ圧延温度Ar3 点以上、巻取り温度650℃以下の条件で連続的に熱間圧延して熱延鋼帯を調製し、前記熱延鋼帯を酸洗した後、酸洗された熱延鋼帯に対し、連続焼鈍設備において、Ac3−25℃〜Ac3 +25℃の温度範囲再加熱し、その温度に1sec以上保持した後、10℃/sec 以上の速度で冷却し、次いで、350〜450℃の温度範囲で30sec 以上保持した後、常温まで冷却し、次いで、これを巻き取ることにより、残留オーステナイトを5%以上含有する、材質均一性に優れた高張力熱延鋼板を製造することを特徴とする、加工性の優れた高張力熱延鋼板の製造方法。

技術分野

0001

この発明は、自動車構造部材等に使用される、引張り強度が590〜780MPa級残留オーステナイトを5%以上含有する、材質均一性および加工性に優れた高張力熱延鋼板の製造方法に関するものである。

背景技術

0002

自動車の燃費向上を目的とした車体構造部材として、軽量化と衝突安全性とを共に満足させるために、加工性の優れた590〜780MPa級の高張力熱延鋼板が要求されている。

0003

590〜780MPa級の高張力熱延鋼板に優れた加工性を付与するためには、強度と延性バランスを向上させることが必要であり、また、その用途によっては、強度および延性と共に、良好な伸びフランジを有していることが必要とされている。

0004

強度と延性のバランスが優れた高張力熱延鋼板を製造する手段として、残留オーステナイトを含有させ、この相の変形時におけるTRI現象を利用して鋼板の延性を高める方法が提案されている。

0005

例えば、特開昭63−4017号公報および特開昭64−79345号公報には、C:0.1 5〜0.4wt.% 、Si:0.5〜2.0wt.% 、Mn:0.5〜2.0wt.% を含有し、残り、Feおよび不可避不純物からなる化学成分組成を有する鋼片を、仕上げ圧延温度Ar3 ±50℃、全圧下率80%以上の条件で熱間圧延し、次いで、冷却制御を行いながら、350〜500℃の温度で巻き取ることにより、残留オーステナイトを5%以上含有し、残部がフェライトベイナイトとからなる、強度と延性のバランスを表す「引張り強さ(TS)×伸び(El)」の値が24000MPa・%以上の高張力熱延鋼板を製造する方法(以下、先行技術1という )が開示されている。

0006

先行技術1によれば、熱間圧延の圧下率、仕上げ圧延温度、ランナウト冷却条件および巻取り温度を、特定の範囲に規定することにより、オーステナイトからポリゴナルフェライトの生成を促進し、オーステナイトにCを濃化させ、更に、ベイナイト変態させることによりCの濃化をさらに進行させ、オーステナイトの安定化を図り、これによって、最終的に5%以上の残留オーステナイトを含有するフェライトとベイナイトとの混合組織が得られるとされている。

0007

先行技術1のような、残留オーステナイトを含有する熱延鋼板は、加工性に優れているが、一方、鋼板の機械的性質特に引張り強さの変動が大きいために、歩留りが悪いという問題がある。高張力熱延鋼板の引張り強さの変動は、例えば590MPa級の場合には、590〜690MPaの範囲内に収めることが必要であるが、この鋼板では、しばしば100MPaを超える大きな変動が生じ、そのために、大きな変動の生じた材質不良部分を切断除去せざるを得ず、製品歩留りが低下する問題が生ずる。

0008

熱延ままで製造した残留オーステナイトを含有する熱延鋼板の材質の変動は、熱延過程における鋼帯の長さ方向および幅方向温度条件の変動と、コイルに巻き取った後のコイル外周部、内周部およびエッジ部と内部の冷却速度の変動により、ミクロ組織が変化することによるものであり、従来、やむを得ないことと考えられている。

0009

そこで、このような残留オーステナイトを含有する熱延鋼板の材質の変動を解決し、加工性の良好な残留オーステナイトを含有する熱延鋼板を効率よく製造する製造する方法について研究開発が進められており、例えば、特開平5−271764号公報には、C:0.10〜0.25mass% 、Si:0.8〜3.0mass% 、Mn:1.0〜3.0mass% 、S:0.005mass% 以下、Al:0.01〜0.10mass% を含有し、残り、Feおよび不可避不純物からなる化学成分組成を有する熱延鋼帯再加熱し、再加熱時の最高到達温度T1℃が、(Ac1+(Ac3−Ac1)/6〜Ac3 −(Ac3 −Ac1)/6)の温度範囲であり、かつ、この温度で1sec 以上保持した後、20℃/sec 以上の平均冷却速度で冷却し、350〜450℃の温度域で巻き取るか、または、この温度域で100sec 以上保持し次いで50℃以下まで冷却した後巻き取ることによって、体積率6%以上の残留オーステナイトを含有する高強度熱延鋼板を製造する方法(以下、先行技術2という)が開示されている。

発明が解決しようとする課題

0010

しかしながら、先行技術2によると再加熱による最高到達温度T1℃が(Ac1+(Ac3−Ac1)/6〜Ac3 −(Ac3 −Ac1)/6)の温度範囲、即ち、「フェライト+オーステナイト」の2相混合領域の中央部に限定されている。そのために、熱延鋼帯の長手方向や幅方向のミクロ組織が大幅に変動していると、これを熱処理によって均一化することが困難になる。

0011

従って、この発明の目的は、上述した問題を解決し、残留オーステナイトを5%以上含有する590〜780MPa級の高張力熱延鋼板を製造するに際し、材質の変動が大きくても、熱処理によって、熱延鋼帯の長手方向および幅方向における材質の均一性を安定して高めることができる、加工性に優れた高張力熱延鋼板を製造する方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0012

本発明者等は、上述した問題を解決し、残留オーステナイトを5% 以上含有する、材質の均一性に優れた高張力熱延鋼板の製造方法を開発すべく鋭意研究を重ねた。その結果、次の知見を得た。

0013

残留オーステナイトを5% 以上含有する、材質の均一性に優れた高張力熱延鋼板を製造するためには、鋼の化学成分組成が、C:0.08〜0.20mass% 、Si:0.80〜1.80mass% 、Mn:1.0〜2.0mass% およびP:0.005〜0.04mass% を含有していることが必要である。

0014

このような化学成分組成を有する鋼片を、仕上げ圧延温度Ar3 点以上、巻取り温度650℃以下の条件で熱間圧延したときに、巻取り温度および巻取り後の冷却条件によって、鋼のフェライト+パーライト、フェライト+ベイナイト、フェライト+マルテンサイトなどのミクロ組織が変動しているため、熱延鋼板の機械的性質が大きく変化することから、熱延鋼板に対し均一なミクロ組織と機械的性質を付与するためには、熱延鋼板に対し連続焼鈍設備により熱処理を施し、これによって、同一のミクロ組織にする必要がある。

0015

そこで、熱処理後のミクロ組織と機械的性質に及ぼす再加熱後の影響について調査したところ、フェライト+オーステナイト2相域では、熱処理前のミクロ組織の影響を十分になくすことはできないが、フェライト+オーステナイト2相域の組織でも、その鋼板を、オーステナイトの体積率が80%以上になるAc3変態点直下まで加熱するか、または、オーステナイト単相となるAc3 変態点直上の温度領域に加熱すれば、熱処理前におけるミクロ組織の影響がなくなり、熱処理後に同一のミクロ組織と機械的性質が得られる。

0016

この発明は、上記知見に基づいていなされたものであって、請求項1に記載の発明は、C:0.08〜0.20mass% 、Si:0.80〜1.80mass% 、Mn:1.0〜2.0mass% およびP:0.005〜0.04mass% を含有する化学成分組成を有する鋼片を調製し、前記鋼片を仕上げ圧延温度Ar3 点以上、巻取り温度650℃以下の条件で連続的に熱間圧延して熱延鋼帯を調製し、前記熱延鋼帯を酸洗した後、酸洗された熱延鋼帯に対し、連続焼鈍設備において、Ac3−25℃〜Ac3 +25℃の温度範囲に再加熱し、その温度に1sec 以上保持した後、10℃/sec 以上の速度で冷却し、次いで、350〜450℃の温度範囲で30sec 以上保持した後、常温まで冷却し、次いで、これを巻き取ることに特徴を有するものである。

発明を実施するための最良の形態

0017

この発明の方法において、鋼の化学成分組成を、上述したように限定した理由を以下に述べる 。

0018

C:C含有量が0.08mass% 未満では、残留オーステナイトを5%以上とすることができず、一方、C含有量が0.20mass% を超えるとスポット溶接性が低下する。従って、C含有量は0.08〜0.20mass% の範囲内に限定すべきである。

0019

Si:Siは、フェライト形成元素であり、後述する鋼帯の熱処理時におけるオーステナイト単相域またはAc3変態点直下のフェライトーオーステナイト2相域に加熱後の冷却過程において、フェライトの生成を促進し、オーステナイトへのCの濃化を助け、冷却後350〜450℃の温度範囲で保持する際の、オーステナイトからのセメンタイトへの析出を遅らせる作用を有している。従って、Siは残留オーステナイトを確保する上で有効な元素である。

0020

しかしながら、Si含有量が0.80mass% 未満では、上述した作用に所望の効果が得られない。一方、Si含有量が1.80mass% を超えると、鋼帯を酸洗ラインを通して酸洗する際の、入側におけるフラッシュ溶接性が劣化する問題が生ずる。従って、Si含有量は、0.80〜1.80mass% の範囲内に限定すべきである。

0021

Mn:Mnは、後述する鋼帯の熱処理時における、オーステナイト単相域またはAc3変態点直下のフェライトーオーステナイト2相域に加熱後の冷却過程において、オーステナイト中に濃化して、オーステナイトの安定度を高め、パーライト変態マルテンサイト変態を抑制する作用を有している。

0022

しかしながら、Mn含有量が1.0mass% 未満では、上述した作用に所望の効果が得られない。一方、Mn含有量が2.0mass% を超えると、冷却過程におけるフェライトの生成が不十分になり、これに伴って、オーステナイトへの濃化が不十分になるため、オーステナイトが残留しにくくなる。従って、Mn含有量は1.0〜2.0mass% の範囲内に限定すべきである。

0023

P:Pは、Siと同様にフェライト中に固溶して鋼板の強度を高め、且つ、Siの添加によって生ずる赤スケールの発生を抑制する作用を有している。しかしながら、P含有量が0.005mass% 未満では、上述した作用に所望の効果が得られない。一方、P含有量が0.04mass% を超えると、Pの偏析により伸びフランジ性が低下する問題が生ずる。従って、P含有量は、0.005〜0.04mass% の範囲内に限定すべきである。

0024

本発明においては、上記以外の元素の含有について特に限定されるものではなく、例えば、脱酸剤として使用されるsol.Al、SおよびN等の元素は、本発明の効果を阻害しない範囲で含有されていてもよい。

0025

上述した化学成分組成を有する鋼は、転炉法および電気炉法のいずれの方法によって溶製してもよく、また、鋼片は、連続鋳造法および造塊法のいずれの方法によって鋳造してもよい。

0026

次に、この発明において、熱間圧延機における熱延条件即ち熱延鋼帯の仕上げ圧延温度および巻取り温度を、上述したように限定した理由について以下に述べる。

0027

仕上げ圧延温度:熱間圧延機での鋼帯の仕上げ圧延温度は、Ar3変態点以上のオーステナイト単相域とすべきである。仕上げ圧延温度がAr3 変態点未満で、フェライト+オーステナイト2相混合域の場合には、層状組織が形成され、熱処理時の加熱温度をAc3変態点直上まで高めても十分な組織にならず、伸びフランジ性が低下する問題が生ずる。

0028

巻取り温度:熱間圧延機での鋼帯の巻取り温度は、650℃以下とすべきである。本発明において、残留オーステナイトを5%以上とする組織の調整は、鋼帯の熱処理時に行われるので、熱延工程においては、特別な組織調整を行う必要がなく、フェライト+パーライト、ベイナイト、マルテンサイトのどのような混合組織でも対応が可能であり、種々の組織が鋼帯の長手方向および幅方向に変動して分布していても、巻取り温度を650℃以下とすることによって、所定の熱処理条件による熱処理後に均一な組織となり、機械的性質の均一性を高めることができる。しかしながら、巻取り温度が650℃を超えると、粗大なセメンタイトが形成されると共に、フェライト粒の粗大化が生じやすくなり、伸びフランジ性を低下させる原因になる。

0029

鋼帯を巻き取るまでの、ランナウトテーブルにおける冷却制御は必要でなく、通常の条件でよい。なお、冷却制御を行い、ベイナイト単相組織にすると、熱処理時の加熱時間を短くすることができるメリットがある。

0030

上述した条件で熱間圧延された熱延鋼帯は、酸洗後、連続焼鈍設備に導かれて熱処理が施されるが、鋼帯の形状が悪い場合には、スキンパス圧延を施す必要がある。その際のスキンパス量はできるだけ低くすることが好ましい。

0031

上記により熱間圧延された熱延鋼帯は、酸洗した後、連続焼鈍設備において、Ac3−25℃〜Ac3 +25℃の温度範囲に再加熱し、その温度に1sec 以上保持した後、10℃/sec 以上の速度で冷却し、次いで、350〜450℃の温度範囲で30sec 以上保持し次いで常温まで冷却した後、巻き取る。

0032

次に、この発明において連続焼鈍設備における熱処理条件を、上述したように限定した理由について述べる。
再加熱条件:熱延鋼帯に対し、その長手方向および幅方向でミクロ組織が、フェライト+パーライト、フェライト+ベイナイト、フェライト+マルテンサイトなどと異なっていても、熱処理によって均一な機械的性質を付与するためには、場所によらず同一なミクロ組織とする必要がある。

0033

熱処理前の不均一なミクロ組織を、熱処理後に同一で均一なミクロ組織とするためには、フェライト+オーステナイト2相域でも、オーステナイトの体積率が80%以上になるAc3変態点直下から、オーステナイト単相となるAc3 変態点直上の温度領域、即ち、Ac3 −25℃〜Ac3 +25℃の温度領域で再加熱し、且つ、その温度に1sec 以上保持することが必要である。

0034

従って、この発明においては、連続焼鈍設備における鋼帯に対する再加熱温度を上述した範囲に限定した。これによって、鋼帯の組織を、熱処理後に均一なミクロ組織とすることができる。

0035

冷却・保持条件:上述した条件で鋼帯を再加熱し、オーステナイトの体積率が80%以上のフェライト+オーステナイト2相組織またはオーステナイト単相組織とした後、10℃/sec 以上の速度で冷却し、次いで、350〜450℃の温度範囲で30sec以上保持し、常温まで冷却した後、巻き取る。

0036

冷却速度を10℃/sec 以上とした理由は、途中でオーステナイトがパ−ライト変態するのを抑制し、ベイナイト変態させるためである。また、保持温度を350〜450℃の範囲とし、この温度で30sec 以上保持する理由は、ベイナイト変態に進行させるためであり、ベイナイト変態が進むに従って、残っているオーステナイトにCが濃化して安定性が高まり、常温に冷却してもオーステナイトが残留しやすくなる。

0037

保持温度が450℃を超えると、オーステナイトがパーライトに変態し、一方、保持温度が350℃未満では、オーステナイトがマルテンサイトに変態するため、残留オーステナイトの体積率を5%以上に確保することができなくなる。なお、ベイナイト変態をさせ、オーステナイトにCを濃化させ安定性を高めるためには、この温度範囲で30sec 以上保持することが必要である。

0038

次に、この発明を実施例により、比較例と対比しながら説明する。表1に示す、本発明の範囲内の化学成分組成を有する鋼A〜F、および、本発明の範囲外の鋼G〜Mを転炉にて溶製し、次いで、連続鋳造することによってスラブを調製した。

0039

0040

上記スラブを、表2に示す本発明の範囲内および範囲外の圧延条件で熱間圧延し、板厚1.6 mmの熱延鋼帯を調製した。得られた熱延鋼帯に対し、酸洗後、同じく表2に示す本発明の範囲内および範囲外の熱処理条件で熱処理を施し、次いで、1%のスキンパス圧延を施して、本発明供試体No. 1〜10および比較用供試体No. 1から11を調製した。

0041

このようにして調製された本発明供試体および比較用供試体の各々について、下記によりその残留オーステナイト体積率および機械的性質を調べ、表2に併せて示した。

0042

0043

引張り試験:引張り試験は、板幅中央部とエッジ部から25mmの位置から圧延方向にJIS5号試験片切り出して行い、幅中央部の機械的性質と幅方向の変動を評価した。

0044

穴広げ試験:穴広げ試験は、150×150mmの試験片の中央部に直径10mmの穴を打抜き、生成したバリポンチ側とし、これを頂角60°の円錐ポンチで押し広げ、穴縁に板厚を貫通して亀裂が入った時点での穴径を測定し、次式により穴広がり率(λ)を求めた。

0045

穴広がり率(λ)=(df −do )/do ×100(%)
但し、do :初期穴径、 df :破断時の穴径。
残留オーステナイト体積率(γ):残留オーステナイト体積率(γ)は、供試体の板厚1/4のオーステナイト量X線回析により測定することによって求めた。

0046

表2から明らかなように、本発明の範囲内の成分組成を有し且つ本発明の範囲内の熱延条件お よび熱処理条件で調製した本発明供試体No. 1〜10は、いずれも残留オーステナイト体積率(γ)が5%以上であって、良好な伸びおよび穴広がり率(λ)を有しており、且つ、幅方向の引張り強さ(TS)の変動は50MPa以内であって、機械的性質の均一性も良好であった。

0047

これに対し、化学成分組成が本発明の範囲内である鋼(C)を使用しても、熱処理条件のうち再加熱温度が本発明の範囲を外れて低い比較用供試体No.1およびNo.2は、幅方向中央部の伸びおよび穴広げ率(λ)は良好であったが、幅方向の引張り強さ(TS)の変動が50MPa以上であって大きかった。

0048

また、同じく、成分組成が本発明の範囲内である鋼(C)を使用しても、熱処理条件のうち、再加熱温度が本発明の範囲を超えて高い比較用供試体No.3は、残留オーステナイト量(γ)が少なく、良好な伸びが得られなかった。

0049

同じく、成分組成が本発明の範囲内である鋼(C)を使用しても、熱延時の巻取り温度が本発明の範囲を超えて高い比較用供試体No.4は、熱延鋼帯のミクロ組織即ちフェライト結晶粒およびセメンタイトが粗大化しており、熱処理後の残留オーステナイト体積率(γ)は5%以上であっても穴広がり率(λ)が悪く、幅方向の機械的性質の変動も大きかった。

0050

熱延条件および熱処理条件が本発明の範囲内であっても、鋼の成分組成が本発明の範囲を外れているものは、残留オーステナイト量(γ)が本発明の範囲外で、良好な伸びが得られなかったり、あるいは、残留オーステナイト量(γ)が本発明の範囲内で良好な伸びは得られたものの、穴広がり率(λ)が悪かった。

0051

即ち、C量が本発明の範囲を外れて少ない比較用供試体No.5は、残留オーステナイト体積率(γ)が少なく良好な伸びは得られなかった。C量が本発明の範囲を超えて多い比較用供試体No.6は、残留オーステナイト量(γ)は5%以上で機械的性質は良好であったが、スポット溶接性が悪く、実用的ではなかった。

0052

Si量が本発明の範囲を外れて少ない比較用供試体No.7は、残留オーステナイト体積率(γ)が0で、良好な伸びは得られなかった。また、Si量が本発明の範囲を超えて多い比較用供試体No.8は、残留オーステナイト量(γ)は5%以上であったが、酸洗でのフラッシュ溶接性が劣っていた。

0053

Mn量が本発明の範囲を外れて少ない比較用供試体No.9も、残留オーステナイト体積率(γ)が少なく、良好な伸びは得られなかった。Mn量が本発明の範囲を超えて多い比較用供試体No.10は、残留オーステナイト体積率(γ)が少ない上、穴広がり率(λ)も悪かった。P量が本発明の範囲を超えて多い比較用供試体No.11は、残留オーステナイト体積率(γ)は5%以上であったが、穴広がり率(λ)が低かった。

発明の効果

0054

以上述べたように、この発明によれば、材質の変動が大きくても、熱延鋼帯の長手方向および幅方向における材質の均一性を、熱処理によって安定して高めることができ、残留オーステナイトを5% 以上含有する、加工性に優れた590〜780MPa級の高張力熱延鋼板を製造することができる、工業上有用な効果がもたらされる。

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  • 東京製鐵株式会社の「 自動車用鋼板」が 公開されました。( 2020/06/04)

    【課題】電炉材を自動車用鋼板として利用可能な化成処理性に優れる鋼板を提供すること。【解決手段】本発明の鋼板は、銅(Cu)を0.10質量%以上0.50質量以下%含む。そして、表面の残留スケールの個数が1... 詳細

  • 株式会社特殊金属エクセルの「 ステンレス鋼帯またはステンレス鋼箔及びその製造方法」が 公開されました。( 2020/06/04)

    【課題】高精密な加工を必要とする用途、ミクロ的な化学活性が求められる用途に適した準安定オーステナイトステンレス鋼帯または鋼箔を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.2%以下、Si:2.0%以下、Mn... 詳細

  • 東京製鐵株式会社の「 熱延鋼板」が 公開されました。( 2020/06/04)

    【課題】自動車用鋼板としても利用可能な化成処理性に優れる鋼板を提供すること。【解決手段】本発明の鋼板は、鋼板表面の残留物がマイクロカソードを含み、上記マイクロカソードが、線状のマイクロカソードを70個... 詳細

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