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解決手段

効果

ベラプロストに代表されるプロスタン酸誘導体は、肝細胞増殖因子誘引剤として優れた効果が認められ、その結果、脳血管障害脳神経細胞障害虚血性脳障害痴呆症糖尿病等に起因する中枢及び末梢神経障害の優れた予防薬あるいは治療薬として有効であり、さらに外科手術あるいは交通事故等の外傷による神経障害、移植手術における神経線維の当該部位への伸展促進等にも有効な薬剤である。

概要

背景

肝細胞増殖因子HGF: Hepatocyte Growth Factor)は当初肝再生因子実体として同定されたが、近年の研究により主として上皮細胞の増殖、運動性、そして形態形成を促進させる多面機能因子であることが知られている。この肝細胞増殖因子は神経系においては神経誘引因子として運動神経軸索四肢へ導く働きをするとともに、強い神経栄養因子として中枢神経や運動神経に対し、神経細胞生存を促すことが明らかにされた。

従って肝細胞増殖因子は神経変性を伴う種々の難治性神経系疾患に対し有効な治療薬となることが期待されるが、本因子を通常の経口、注射等の投与経路投与しても充分な量を目的部位に到達させることは困難であり、臨床適応、特に脳領域への適応は課題が多く残されていた。

一方で、近年、高齢化社会進展とともに種々の脳血管疾患が増加している。脳血管疾患は加齢高血圧動脈硬化高脂血症などが原因となって発症するものと考えられており一般に脳卒中と呼ばれる。脳卒中の原因疾患には、脳梗塞脳血栓脳塞栓)、脳出血クモ膜下出血のほか、一過性脳虚血高血圧性脳症などがあげられる。これらの原因疾患によって虚血およびその周辺部位の神経系構成細胞障害壊死に陥り脳血管性痴呆などの局所精神・神経症状を現す。また近年代表的初老期痴呆としてアルツハイマー病の増加がみられる。アルツハイマー病は初老期痴呆の代表的疾患であり、記銘力障害、空間的・時間的見当識障害がみられ、時に失語失行失認などの症状もみられる。本症では全体的な脳機能の障害が特徴であり、末期には痴呆が高度となり、全身衰弱死亡する。病理学的には広汎な脳萎縮が認められアルツハイマー神経原線維変化および老人斑がみられることが知られている。

このように脳神経障害老年期痴呆に伴う精神神経症状改善を目的として脳循環改善薬脳機能改善薬などが用いられてきたが、いずれの薬剤も十分な効果を示していない。

末梢神経障害多発性神経炎神経炎とも言われ、遺伝、外傷中毒、炎症、糖尿病などの代謝異常悪性腫瘍末梢神経腫瘍圧迫など、多彩な原因によって生じる。症状は知覚障害、運動障害筋緊張低下、反射消失自律神経障害などがみられ、筋電図では神経原性パターンを示し、末梢神経伝導速度低下を認める。病理所見軸索変性、節性脱髄、Waller変性などの非特異的変化である。治療リハビリテーションとともに、ステロイドビタミン抗炎症剤鎮痛剤などが用いられるが治療効果は十分ではなかった。

上述した各種の病態においては、原因は多岐にわたるが、最終的に神経系を構成する細胞が懐死、脱落あるいは機能障害が生じるため、痴呆をはじめとする各種の精神症状、知覚障害、運動障害、自律神経障害などの症状をもたらす。このため、神経細胞を強力に保護することができれば障害を軽減し症状の改善が期待できる。さらに上述したグリア細胞など神経細胞以外の神経構成細胞は、神経細胞の機能維持に極めて重要な役割を果たすことが明らかにされており、グリア細胞の障害の軽減は神経細胞の機能維持に有効である。

プロスタン酸誘導体は多彩な生理活性を有することが知られているが、C−8からC−12よりなる5員環の部分が修飾されることによりいくつかの群に分けられる。このうち6位と9位の炭素原子酸素原子を介して結合している化合物PGIと呼ばれ、プロスタグランジンI2(PGI2、プロスタサイクリン)が代表的なものとして知られている。このPGI2は強力な血小板凝集抑制作用及び末梢血管拡張作用を有する物質として知られる(Nature268巻688頁1976年参照)。

またPGI2の不安定さを大幅に改善した化合物として、PGI2の特徴的構造であるエキソエノールエーテル部分の構造をインタ−m−フェニレン型に変換した骨格を有するPGI誘導体が、特公平2−12226号公告、特公平2−57548号公告、特公平1−53672号公告に記載されている。また6位と9位の炭素原子が酸素であるPGI誘導体に加え、この酸素原子が炭素原子や他のヘテロ原子置換したPGI誘導体が知られている。例を挙げると、アタプロストイロプロストクリンプロスト、シプロステン、ナクサプロステン、タプロステン、シカプロスト、ピミルプロスト、CH−169、CS570、SM10902がある(現代医療総説プロスタグランジンNo.1 123頁1994年、明日の新薬15−IV−185頁1996年、明日の新薬 15−III−551頁1996年 参照)。しかしながら、これらのプロスタン酸誘導体が神経系構成細胞において肝細胞増殖因子を誘引するということは全く知られていない。

概要

プロスタン酸誘導体を有効成分とする肝細胞増殖因子誘引剤

ベラプロストに代表されるプロスタン酸誘導体は、肝細胞増殖因子誘引剤として優れた効果が認められ、その結果、脳血管障害脳神経細胞障害虚血性脳障害痴呆症、糖尿病等に起因する中枢及び末梢神経障害の優れた予防薬あるいは治療薬として有効であり、さらに外科手術あるいは交通事故等の外傷による神経障害、移植手術における神経線維の当該部位への伸展促進等にも有効な薬剤である。

目的

本発明は、中枢および末梢神経における神経系構成細胞において強力な保護作用および神経誘引作用を有する肝細胞増殖因子を誘引することにより神経系構成細胞の強力な保護作用および神経誘引作用を示し、その結果、脳血管障害、脳神経細胞障害、虚血性脳障害、痴呆症、糖尿病等に起因する中枢及び末梢の神経障害の優れた予防薬あるいは治療薬として有効であり、さらに外科手術あるいは交通事故等の外傷による神経障害、移植手術における神経線維の当該部位への伸展促進等にも有効な予防剤あるいは治療剤を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
3件
牽制数
1件

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請求項1

プロスタン酸誘導体が神経系構成細胞に作用することを特徴とする肝細胞増殖因子誘引剤

請求項2

プロスタン酸誘導体がプロスタグランジンA、B、C、D、E、F、G、H、I、またはJ誘導体である請求項1記載の肝細胞増殖因子誘引剤。

請求項3

プロスタグランジンI誘導体がプロスタグランジンI2誘導体である請求項2記載の肝細胞増殖因子誘引剤。

請求項4

プロスタグランジンI2誘導体が一般式(I)

請求項

ID=000002HE=040 WI=103 LX=0535 LY=0600[式中、R1 は、(A)COOR2 ここでR2 は、1)水素または薬理学的に受け入れられる陽イオン、2)炭素数1〜12の直鎖アルキルまたは炭素数3〜14の分岐アルキル3)−Z−R3ここでZは原子価結合、またはCt H2tで表される直鎖または分岐アルキレンであり、tは1〜6の整数を示し、R3 は炭素数3〜12のシクロアルキルまたはR4 の1〜3個で置換された炭素数3〜12の置換シクロアルキルであり、R4 は水素または炭素数1〜5のアルキル、4)−(CH2 CH2 O)n CH3ここで、nは1〜5の整数、5)−Z−Ar1ここでZは前記定義に同じ、Ar1 はフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、α−フリル、β−フリル、α−チエニル、β−チエニルまたは置換フェニル(ここで置換基は少なくとも1個の塩素臭素フッ素ヨウ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜4のアルキル、ニトロ、シアノ、メトキシ、フェニル、フェノキシ、p−アセトアミドベンズアミド、−CH=N−NH−C(=O)−NH2 、−NH−C(=O)−Ph、−NH−C(=O)−CH3 または−NH−C(=O)−NH2 であるもの)、6)−Ct H2tCOOR4ここでCt H2t、R4 は前記定義に同じ、7)−Ct H2tN(R4 )2ここでCt H2t、R4 は前記定義に同じ、8)−CH(R5 )−C(=O)−R6ここでR5 は水素またはベンゾイル、R6 はフェニル、p−ブロモフェニル、p−クロロフェニル、p−ビフェニル、p−ニトロフェニル、p−ベンズアミドフェニル、2−ナフチル、9)−CP H2P−W−R7ここで、Wは−CH=CH−、−CH=CR7 −または、−C三C−であり、R7 は水素または、炭素数1〜30の直鎖もしくは分岐アルキルまたはアラルキルであり、pは1〜5の整数、または、10)−CH(CH2 OR8 )2ここでR8 は炭素数1〜30のアルキルまたはアシル、(B)−CH2 OH(C)−C(=O)N(R9 )2ここでR9 は水素、炭素数1〜12の直鎖アルキル、炭素数3〜12の分岐アルキル、炭素数3〜12のシクロアルキル、炭素数4〜13のシクロアルキルアルキレン、フェニル、置換フェニル(ここで置換基は上記(A)5)の場合と同義)、炭素数7〜12のアラルキルまたは−SO2R10を表わし、R10は炭素数1〜10のアルキル、炭素数3〜12のシクロアルキル、フェニル、置換フェニル(ここで置換基は上記(A)5)の場合と同義)、炭素数7〜12のアラルキルを表わし、2つのR9 は同一でも異なっていてもよいが、一方が−SO2 R10を表わす場合は他のR9は−SO2 R10ではないものとする、または、(D)−CH2 OTHP(THPはテトラヒドロピラニル基)であり、Aは、1)−(CH2 )m −2)−CH=CH−CH2 −3)−CH2 −CH=CH−4)−CH2 −O−CH2 −5)−CH=CH−6)−O−CH2 −または7)−C三C−であり、ここで、mは1から3の整数を示し、Yは、水素、炭素数1〜4のアルキル、塩素、臭素、フッ素、ホルミル、メトキシまたはニトロであり、Bは、−X−C(R11)(R12)OR13ここで、R11は水素、または炭素数1〜4のアルキルであり、R13は水素、炭素数1〜14のアシル、炭素数6〜15のアロイルテトラヒドロピラニルテトラヒドロフラニル、1−エトキシエチルまたはt−ブチルであり、Xは、1)−CH2 −CH2 −2)−CH=CH−3)−C三C−であり、R12は、1)炭素数1〜12の直鎖アルキル、炭素数3〜14の分岐アルキルまたは、2)−Z−Ar2ここでZは前記定義に同じ、Ar2 はフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、または少なくとも1個の塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜4のアルキル、ニトロ、シアノ、メトキシ、フェニルもしくはフェノキシ置換したフェニルを表わし、または、3)−Ct H2tOR14ここでCt H2tは前記定義に同じ、R14は炭素数1〜6の直鎖アルキル、炭素数3〜6の分岐アルキル、フェニル、少なくとも1個の塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜4のアルキル、ニトロ、シアノ、メトキシ、フェニルもしくはフェノキシ置換したフェニル、シクロペンチルシクロヘキシル、または、炭素数1〜4の直鎖アルキルの1〜4個で置換されたシクロペンチルまたはシクロヘキシルを表わし、または、4)−Z−R3ここでZ、R3 は前記定義に同じ、または、5)−Ct H2t−CH=C(R15)R16ここでCt H2tは前記定義に同じ、R15、R16は水素、メチル、エチル、プロピル、またはブチルを表わし、または、6)−Cu H2u−C三C−R17ここでuは1〜7の整数であり、Cu H2uは直鎖または分岐アルキレンを表わし、R17は炭素数1〜6の直鎖アルキルを表わし、Eは、水素、または−OR18ここでR18は炭素数1〜12のアシル、炭素数7〜15のアロイルまたはR2(ここでR2 は前記定義に同じ)を表わし、一般式はd体、l体またはdl体を表わす]で表わされる4,8−インタ−m−フェニレンプロスタグランジンI2誘導体または薬理学的に許容し得るその塩である請求項3記載の肝細胞増殖因子誘引剤。

請求項5

プロスタグランジンI2誘導体がベラプロスト、アタプロストイロプロストクリンプロスト、シプロステン、ナクサプロステン、タプロステン、シカプロスト、ピミルプロスト、CH−169、CS570、SM10902又はその塩である請求項3記載の肝細胞増殖因子誘引剤。

請求項6

神経系構成細胞がグリア細胞または神経細胞である請求項1〜5記載の肝細胞増殖因子誘引剤。

請求項7

該疾患が中枢及び末梢神経障害である請求項1〜6記載の肝細胞増殖因子誘引剤。

技術分野

0001

本発明はプロスタン酸誘導体を有効成分とする肝細胞増殖因子誘引剤に関するものである。

背景技術

0002

肝細胞増殖因子(HGF: Hepatocyte Growth Factor)は当初肝再生因子実体として同定されたが、近年の研究により主として上皮細胞の増殖、運動性、そして形態形成を促進させる多面機能因子であることが知られている。この肝細胞増殖因子は神経系においては神経誘引因子として運動神経軸索四肢へ導く働きをするとともに、強い神経栄養因子として中枢神経や運動神経に対し、神経細胞生存を促すことが明らかにされた。

0003

従って肝細胞増殖因子は神経変性を伴う種々の難治性神経系疾患に対し有効な治療薬となることが期待されるが、本因子を通常の経口、注射等の投与経路投与しても充分な量を目的部位に到達させることは困難であり、臨床適応、特に脳領域への適応は課題が多く残されていた。

0004

一方で、近年、高齢化社会進展とともに種々の脳血管疾患が増加している。脳血管疾患は加齢高血圧動脈硬化高脂血症などが原因となって発症するものと考えられており一般に脳卒中と呼ばれる。脳卒中の原因疾患には、脳梗塞脳血栓脳塞栓)、脳出血クモ膜下出血のほか、一過性脳虚血高血圧性脳症などがあげられる。これらの原因疾患によって虚血およびその周辺部位の神経系構成細胞障害壊死に陥り脳血管性痴呆などの局所精神・神経症状を現す。また近年代表的初老期痴呆としてアルツハイマー病の増加がみられる。アルツハイマー病は初老期痴呆の代表的疾患であり、記銘力障害、空間的・時間的見当識障害がみられ、時に失語失行失認などの症状もみられる。本症では全体的な脳機能の障害が特徴であり、末期には痴呆が高度となり、全身衰弱死亡する。病理学的には広汎な脳萎縮が認められアルツハイマー神経原線維変化および老人斑がみられることが知られている。

0005

このように脳神経障害老年期痴呆に伴う精神神経症状改善を目的として脳循環改善薬脳機能改善薬などが用いられてきたが、いずれの薬剤も十分な効果を示していない。

0006

末梢神経障害多発性神経炎神経炎とも言われ、遺伝、外傷中毒、炎症、糖尿病などの代謝異常悪性腫瘍末梢神経腫瘍圧迫など、多彩な原因によって生じる。症状は知覚障害、運動障害筋緊張低下、反射消失自律神経障害などがみられ、筋電図では神経原性パターンを示し、末梢神経伝導速度低下を認める。病理所見軸索変性、節性脱髄、Waller変性などの非特異的変化である。治療リハビリテーションとともに、ステロイドビタミン抗炎症剤鎮痛剤などが用いられるが治療効果は十分ではなかった。

0007

上述した各種の病態においては、原因は多岐にわたるが、最終的に神経系を構成する細胞が懐死、脱落あるいは機能障害が生じるため、痴呆をはじめとする各種の精神症状、知覚障害、運動障害、自律神経障害などの症状をもたらす。このため、神経細胞を強力に保護することができれば障害を軽減し症状の改善が期待できる。さらに上述したグリア細胞など神経細胞以外の神経構成細胞は、神経細胞の機能維持に極めて重要な役割を果たすことが明らかにされており、グリア細胞の障害の軽減は神経細胞の機能維持に有効である。

0008

プロスタン酸誘導体は多彩な生理活性を有することが知られているが、C−8からC−12よりなる5員環の部分が修飾されることによりいくつかの群に分けられる。このうち6位と9位の炭素原子酸素原子を介して結合している化合物PGIと呼ばれ、プロスタグランジンI2(PGI2、プロスタサイクリン)が代表的なものとして知られている。このPGI2は強力な血小板凝集抑制作用及び末梢血管拡張作用を有する物質として知られる(Nature268巻688頁1976年参照)。

0009

またPGI2の不安定さを大幅に改善した化合物として、PGI2の特徴的構造であるエキソエノールエーテル部分の構造をインタ−m−フェニレン型に変換した骨格を有するPGI誘導体が、特公平2−12226号公告、特公平2−57548号公告、特公平1−53672号公告に記載されている。また6位と9位の炭素原子が酸素であるPGI誘導体に加え、この酸素原子が炭素原子や他のヘテロ原子置換したPGI誘導体が知られている。例を挙げると、アタプロストイロプロストクリンプロスト、シプロステン、ナクサプロステン、タプロステン、シカプロスト、ピミルプロスト、CH−169、CS570、SM10902がある(現代医療総説プロスタグランジンNo.1 123頁1994年、明日の新薬15−IV−185頁1996年、明日の新薬 15−III−551頁1996年 参照)。しかしながら、これらのプロスタン酸誘導体が神経系構成細胞において肝細胞増殖因子を誘引するということは全く知られていない。

発明が解決しようとする課題

0010

本発明は、中枢および末梢神経における神経系構成細胞において強力な保護作用および神経誘引作用を有する肝細胞増殖因子を誘引することにより神経系構成細胞の強力な保護作用および神経誘引作用を示し、その結果、脳血管障害脳神経細胞障害虚血性脳障害痴呆症、糖尿病等に起因する中枢及び末梢神経障害の優れた予防薬あるいは治療薬として有効であり、さらに外科手術あるいは交通事故等の外傷による神経障害、移植手術における神経線維の当該部位への伸展促進等にも有効な予防剤あるいは治療剤を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0011

上述の課題は、プロスタン酸誘導体、好ましくはプロスタグランジンA、B、C、D、E、F、G、H、I、またはJ誘導体、さらに好ましくはプロスタグランジンI誘導体を有効成分とする肝細胞増殖因子誘引剤によって達成される。

0012

本発明のプロスタン酸誘導体としては、プロスタグランジンA、B、C、D、E、F、G、H、I、またはJ誘導体またはそれらの塩のいずれでも良いが、好ましくはプロスタグランジンI誘導体またはその塩が用いられる。

0013

さらに好ましくは下記一般式(I)

0014

ID=000003HE=040 WI=046 LX=1270 LY=1200
[式中、R1 は、
(A)COOR2 ここでR2 は、
1)水素または薬理学的に受け入れられる陽イオン
2)炭素数1〜12の直鎖アルキルまたは炭素数3〜14の分岐アルキル
3)−Z−R3
ここでZは原子価結合、またはCt H2tで表される直鎖または分岐アルキレンであり、tは1〜6の整数を示し、R3 は炭素数3〜12のシクロアルキルまたはR4 の1〜3個で置換された炭素数3〜12の置換シクロアルキルであり、R4 は水素または炭素数1〜5のアルキル
4)−(CH2 CH2 O)n CH3
ここで、nは1〜5の整数、
5)−Z−Ar1
ここでZは前記定義に同じ、Ar1 はフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、α−フリル、β−フリル、α−チエニル、β−チエニルまたは置換フェニル(ここで置換基は少なくとも1個の塩素臭素フッ素ヨウ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜4のアルキル、ニトロ、シアノ、メトキシ、フェニル、フェノキシ、p−アセトアミドベンズアミド、−CH=N−NH−C(=O)−NH2 、−NH−C(=O)−Ph、−NH−C(=O)−CH3 または−NH−C(=O)−NH2 であるもの)、
6)−Ct H2tCOOR4
ここでCt H2t、R4 は前記定義に同じ、
7)−Ct H2tN(R4 )2
ここでCt H2t、R4 は前記定義に同じ、
8)−CH(R5 )−C(=O)−R6
ここでR5 は水素またはベンゾイル、R6 はフェニル、p−ブロモフェニル、p−クロロフェニル、p−ビフェニル、p−ニトロフェニル、p−ベンズアミドフェニル、2−ナフチル、
9)−CP H2P−W−R7
ここで、Wは−CH=CH−、−CH=CR7 −または、−C三C−であり、R7 は水素または、炭素数1〜30の直鎖もしくは分岐アルキルまたはアラルキルであり、pは1〜5の整数、または、
10)−CH(CH2 OR8 )2
ここでR8 は炭素数1〜30のアルキルまたはアシル、
(B)−CH2 OH
(C)−C(=O)N(R9 )2
ここでR9 は水素、炭素数1〜12の直鎖アルキル、炭素数3〜12の分岐アルキル、炭素数3〜12のシクロアルキル、炭素数4〜13のシクロアルキルアルキレン、フェニル、置換フェニル(ここで置換基は上記(A)5)の場合と同義)、炭素数7〜12のアラルキルまたは−SO2R10を表わし、R10は炭素数1〜10のアルキル、炭素数3〜12のシクロアルキル、フェニル、置換フェニル(ここで置換基は上記(A)5)の場合と同義)、炭素数7〜12のアラルキルを表わし、2つのR9 は同一でも異なっていてもよいが、一方が−SO2 R10を表わす場合は他のR9は−SO2 R10ではないものとする、または、
(D)−CH2 OTHP(THPはテトラヒドロピラニル基)であり、Aは、
1)−(CH2 )m −
2)−CH=CH−CH2 −
3)−CH2 −CH=CH−
4)−CH2 −O−CH2 −
5)−CH=CH−
6)−O−CH2 −または
7)−C三C−であり、
ここで、mは1から3の整数を示し、Yは、水素、炭素数1〜4のアルキル、塩素、臭素、フッ素、ホルミル、メトキシまたはニトロであり、Bは、
−X−C(R11)(R12)OR13
ここで、R11は水素、または炭素数1〜4のアルキルであり、R13は水素、炭素数1〜14のアシル、炭素数6〜15のアロイルテトラヒドロピラニルテトラヒドロフラニル、1−エトキシエチルまたはt−ブチルであり、Xは、
1)−CH2 −CH2 −
2)−CH=CH−
3)−C三C−であり、R12は、
1)炭素数1〜12の直鎖アルキル、炭素数3〜14の分岐アルキルまたは、
2)−Z−Ar2
ここでZは前記定義に同じ、Ar2 はフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、または少なくとも1個の塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜4のアルキル、ニトロ、シアノ、メトキシ、フェニルもしくはフェノキシ置換したフェニルを表わし、または、
3)−Ct H2tOR14
ここでCt H2tは前記定義に同じ、R14は炭素数1〜6の直鎖アルキル、炭素数3〜6の分岐アルキル、フェニル、少なくとも1個の塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、トリフルオロメチル、炭素数1〜4のアルキル、ニトロ、シアノ、メトキシ、フェニルもしくはフェノキシ置換したフェニル、シクロペンチルシクロヘキシル、または、炭素数1〜4の直鎖アルキルの1〜4個で置換されたシクロペンチルまたはシクロヘキシルを表わし、または、
4)−Z−R3
ここでZ、R3 は前記定義に同じ、または、
5)−Ct H2t−CH=C(R15)R16
ここでCt H2tは前記定義に同じ、R15、R16は水素、メチル、エチル、プロピル、またはブチルを表わし、または、
6)−Cu H2u−C三C−R17
ここでuは1〜7の整数であり、Cu H2uは直鎖または分岐アルキレンを表わし、R17は炭素数1〜6の直鎖アルキルを表わし、Eは、水素、または−OR18
ここでR18は炭素数1〜12のアシル、炭素数7〜15のアロイルまたはR2(ここでR2 は前記定義に同じ)を表わし、一般式はd体、l体またはdl体を表わす]で表わされる4,8−インタ−m−フェニレンプロスタグランジンI2誘導体または薬理学的に許容し得るその塩が用いられる。

0015

本発明の好ましいプロスタグランジンI2誘導体の具体例としては、下記式で示されるベラプロスト又はその塩、

0016

ID=000004HE=040 WI=039 LX=0405 LY=0300
イロプロスト、クリンプロスト、アタプロスト、シプロステン、ナクサプロステン、タプロステン、シカプロスト、ピミルプロスト、CH−169、CS570、SM−10902等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。

0017

本発明のプロスタン酸誘導体は、公知の方法で製造することができるが、例えば一般式(I)で表される化合物は、特公平1−53672号公報に記載されている方法により製造することができる。

0018

本発明における神経系構成細胞には、脳においては神経細胞および、オリゴデンドロサイトアストロサイトミクログリア上衣細胞などのグリア細胞、神経分泌細胞、末梢神経においては神経細胞およびシュワン細胞外套細胞パラニューロンを含み、本発明の肝細胞増殖因子誘引剤は、これらの細胞に有効であり、グリア細胞、神経細胞に特に有効である。

0019

本発明のプロスタン酸誘導体は、優れた肝細胞増殖因子誘引能を有し、中枢及び末梢の神経障害の優れた予防薬あるいは治療薬として有効であり、さらに神経線維の当該部位への伸展促進等にも有効な薬剤である。具体的には、脳血管障害、脳神経細胞障害、虚血性脳障害、痴呆症、糖尿病等に起因する中枢及び末梢の神経障害の優れた予防薬あるいは治療薬として有効であり、さらに外科手術あるいは交通事故等の外傷による神経障害、移植手術における神経線維の当該部位への伸展促進等にも有効な予防剤あるいは治療剤として用いることができる。

0020

本発明のプロスタン酸誘導体は、経口的あるいは非経口的に投与することによって顕著な肝細胞増殖因子誘引能をもたらす。本発明における投与量は、プロスタン酸誘導体を成人に対して0.01〜100mg/人を1日1〜3回投与する。

0021

本発明の肝細胞増殖因子誘引剤は、1種または数種のプロスタン酸誘導体またはその塩をそのまま用いても良いが、錠剤糖衣錠粉末顆粒トローチ剤カプセル剤丸剤シロップ剤などの通常用いられる剤形医薬組成物として経口投与することもできる。かかる剤形は製剤分野において通常用いられる以下の添加剤を用いて調製される。

0023

本発明の肝細胞増殖因子誘引剤は上記経口用の製剤の他、各種注射剤、座剤など非経口的にも幅広い投与法を応用できる。注射剤は本発明で用いられるプロスタン酸誘導体またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌水性または油性液に溶解、懸濁、または乳化することによって調製される。用いられる水性液としては注射用水生理食塩水ブドウ糖溶液等が挙げられ、油性液としてはゴマ油大豆油等が挙げられ、それぞれ溶解補助剤懸濁化剤等張化剤緩衝剤防腐剤無痛化剤等を併用しても良い。また座剤は本発明で用いられるプロスタン酸誘導体またはその塩を通常の座薬基剤に混合し、成形することで調製される。

0024

以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
実施例1
培養単離ミクログリア細胞に対する肝細胞増殖因子誘引効果ラット胎仔由来ミクログリア細胞を用い、プロスタグランジンE2の肝細胞増殖因子誘引効果を検討した。

0025

胎生20日のラットより無菌的に大脳皮質をとりだし、パパインと DNase処理によって細胞を分散し、培養用ポリスチレンフラスコ16 cm x 13 cm (無コーティング)に植えた。胎仔1頭あたり、フラスコ1/2枚の割合である。培養がコンフルエントになるまで10%の非働化したウシ胎仔血清を含む D-MEM培養液を用いて、37℃で5%二酸化炭素飽和水蒸気を含む空気中で培養した。以下、培養細胞は、別記ある以外、上記とすべて同一の条件下で培養した。ミクログリア細胞の単離は振盪によって行い、60万 cells/cm2 の密度6穴チャンバースライド、あるいは、培養用100mmポリスチレン皿に植えた。24時間培養した後、プロスタグランジンに対する反応性を調べた。DiI ラベルしたアセチルの培養細胞への取り込み、および、抗 CD11 抗体を用いた染色実験により、この段階で、培養中の全細胞に対するミクログリアの割合は99%以上であり、抗グリア酸性繊維抗体、および、抗神経特異的エノラーゼ抗体、抗 OX-21抗体を用いた染色実験に対し陽性を示す細胞の混入は認められなかった。用いたプロスタグランジンE2は 1mMの濃度でエタノールに溶解したものを10μlずつ分注し、用いるまで-20度で保存し、遅くとも開封から2分以内にすべて使用し終わった。

0026

1.免疫化学的手法によって、プロスタグランジンE2が培養ミクログリア細胞に肝細胞増殖因子を誘導することを検出した。チャンバースライド上に調製した単離ミクログリア細胞に対し、プロスタグランジンE2 を加えた。用いたプロスタグランジンE2は、上記分注液を10%の胎仔血清を含む D-MEM培養液にて希釈し、1μMの濃度で細胞に加えた。対照群として、0.1%のエタノールと10%の牛胎仔血清を含む D-MEM培養液で処理した単離ミクログリア細胞を用いた。8時間および16時間後に細胞を1Mのリン酸緩衝液を含む4%パラフォルムアルデヒド液で固定し、抗肝細胞増殖因子抗体を用いてABC(Avidin-Biotin Complex)法を用いて最終的にジアミノベンチジンによって発色させた。その結果、対照群には全く反応が見られなかったのに対し、プロスタグランジンE2投与群では、すべての細胞が一様に染色された。

0027

2.ウェスタンブロット法によって、プロスタグランジンE2が培養ミクログリア細胞に肝細胞増殖因子を誘導すること、および、細胞内の肝細胞増殖因子量はプロスタグランジンE2処理開始後16時間で最大になることを検出した。100mm培養皿上に調整した単離ミクログリア細胞に対し、プロスタグランジンE2を加えた。用いたプロスタグランジンE2は、上記分注液を10%の牛胎仔血清を含むD-MEM培養液にて希釈し、1μMの濃度で細胞に加えた。8時間、16時間、24時間後に細胞を掻き取り、遠心して集め、15%ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動し、分離したタンパク質ニトロセルロース膜転写した。抗肝細胞増殖因子抗体を用い、最終的にECL(Enhanced chemiluminescense)法で発光させたシグナルエックス線フィルム感光させた。シグナルの強さは、NIH-image 1.57を用いて、マッキントッシュコンピュータ上で画像解析した。各群におけるシグナル強度を定量した結果を図1に示す。無処置群に比較して、プロスタグランジンE2共存下で培養した場合は、8時間後で4.5倍、16時間後で12倍の高い肝細胞増殖因子産生を示した。

0028

実施例2
培養単離ミクログリア細胞の肝細胞増殖因子誘引効果:ラット胎仔由来ミクログリア細胞を用い、プロスタグランジンI2誘導体ベラプロストの肝細胞増殖因子誘引効果を検討した。

0029

胎生20日のラットより無菌的に大脳皮質をとりだし、パパインと DNase処理によって細胞を分散し、培養用ポリスチレンフラスコ16 cm x 13 cm (無コーティング)に植えた。胎仔1頭あたり、フラスコ1/2枚の割合である。培養がコンフルエントになるまで10%の非働化したウシ胎仔血清を含む D-MEMを用いて、37℃で5%二酸化炭素と飽和水蒸気を含む空気中で培養した。以下、単離した以降の培養細胞は、無血清D-MEMを用い別記ある以外、同一の条件下で培養した。ミクログリアの単離は振盪によって行い、20〜30万 cells/cm2の密度でポリスチレン製の無コーティング48穴マルチウエルプレート(イワキ)に植えた。24時間培養した後、ベラプロストに対する反応性を調べた。DiI ラベルしたアセチルの培養細胞への取り込み、および、抗 CD11 抗体を用いた染色実験により、この段階で、培養中の全細胞に対するミクログリアの割合は99%以上であり、抗グリア酸性繊維抗体、および、抗神経特異的エノラーゼ抗体、抗 OX-21抗体を用いた染色実験に対し陽性を示す細胞の混入は認められなかった。

0030

用いたプロスタグランジンI2誘導体ベラプロストはあらかじめ 10mM(mol/litter以下同様)の濃度で蒸留水に溶解し、-20 度で保存したものを用いた。ラットHGF用ELIZAキット(特殊免疫研究所)により、PGI2誘導体ベラプロストが培養ミクログリアに HGFを誘導することを検出した。無コーティング48穴マルチウエルプレート(イワキ)上に調製した単離ミクログリア細胞に対し、ベラプロストを加えた。用いたベラプロストは、無血清D-MEMにて希釈し、1μM及び10μMの濃度で細胞に加えた。22時間後に培養上清中のHGFを上記ELIZAキットを用いて測定した。

0031

その結果、溶媒添加群に対して、ベラプロスト共存下で培養した場合は、1μM共存群は2.6倍、10μM共存群は3倍の高いHGF産生を示した。

発明の効果

0032

本発明の肝細胞増殖因子誘引剤は、経口あるいは非経口投与のいずれにおいても神経系構成細胞において優れた肝細胞増殖因子誘引効果を有し、その結果、脳血管障害、脳神経細胞障害、虚血性脳障害、痴呆症、糖尿病等に起因する中枢及び末梢の神経障害の優れた予防薬あるいは治療薬として有効であり、さらに外科手術あるいは交通事故等の外傷による神経障害、移植手術における神経線維の当該部位への伸展促進等にも有効な薬剤である。

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