図面 (/)
課題
解決手段
重量%で、C:0.03〜0.13%、Mn:0.2〜4%、Cu:1〜5%、Ni:15〜25%、Cr:15〜25%、W:0.5〜3%、Nb:0.15〜1.5%、N:0.1〜0.35%、B:0.001〜0.01%、Al:0.01%以下、O:0.01%以下、Mo:0〜1.5%、Ca:0〜0.01%、Mg:0〜0.01%、Zr:0〜0.02%、Hf:0〜0.02%、Ta:0〜0.02%を含み、SiとNbが式、Ni、Cu、Crが式を満たす鋼である溶接材料、およびこの溶接材料を用いた溶接継手。
: Si≦0.2・Nb+0.25 : 0.7≦(Ni+Cu)/Cr≦1.4
概要
背景
従来、発電用ボイラ、高温用装置等には主に18Cr-8Ni系のオーステナイトステンレス鋼が使用されてきた。しかし、近年のボイラ等での運転条件の苛酷化にともない、より高温強度および耐食性に優れた材料が必要とされるようになった。このような要求から、様々な元素を添加することにより高温強度を高めた新材料が多数開発されてきた。例えば、特開平8-13102号公報にはCu、W、N、Nb、Bを添加することにより高温強度の改善を図ったオーステナイト鋼が提案されている。
そして、このようなオーステナイト鋼用溶接材料としては母材をそのまま溶接材料として使用する共金系溶接材料、または高Ni合金用溶接材料(例えば、JISZ3324中のYNiCr-3)を使用することが考えられる。しかし、母材は溶製後、圧延、熱処理により組織の調整を受けて高温強度の確保が図られるのに対し、溶接金属はほとんどの場合、凝固ままの組織で使用されるため、共金系溶接材料では母材に比べ高温強度を高めることは本質的に容易ではない。このため、多くの共金系溶接材料が提案されたが(特開昭63-309392号公報、特開平5-220594号公報、特開平6-142980号公報、特開平7-60481号公報、特開平8-71784号公報等)、これらの共金系溶接材料は、特開平8-13102号公報に提案されている材料に使用した場合には、高温強度を満足できない。
このうち、特開平8-71784号公報に開示されている共金系の溶接材料は、高温の引張強度および短時間でのクリ−プ強度は満足しうるもののNiがCrに比して十分含まれていないため、組織の安定性が不十分である。この結果、高温で長時間使用した場合、急激に高温強度が低下したり、衝撃性能が劣化する場合がある。さらに、多層溶接時に溶接金属内に極めて微小な割れが発生するという問題があることが判明した。
一方、高Ni合金用の溶接材料は高価であり、経済性の観点から好ましくない。
概要
多層溶接時の微小割れを防止することが可能で、高温強度に優れるオーステナイト鋼用の溶接材料および溶接継手の提供。
重量%で、C:0.03〜0.13%、Mn:0.2〜4%、Cu:1〜5%、Ni:15〜25%、Cr:15〜25%、W:0.5〜3%、Nb:0.15〜1.5%、N:0.1〜0.35%、B:0.001〜0.01%、Al:0.01%以下、O:0.01%以下、Mo:0〜1.5%、Ca:0〜0.01%、Mg:0〜0.01%、Zr:0〜0.02%、Hf:0〜0.02%、Ta:0〜0.02%を含み、SiとNbが式、Ni、Cu、Crが式を満たす鋼である溶接材料、およびこの溶接材料を用いた溶接継手。
: Si≦0.2・Nb+0.25 : 0.7≦(Ni+Cu)/Cr≦1.4
目的
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 2件
この技術が所属する分野
請求項1
重量%で、C:0.03〜0.13%、Mn:0.2〜4%、Cu:1〜5%、Ni:15〜25%、Cr:15〜25%、W:0.5〜3%、Nb:0.15〜1.5%、N:0.1〜0.35%、B:0.001〜0.01%、Al:0.01%以下、O(酸素):0.01%以下、Mo:0〜1.5%、Ca:0〜0.01%、Mg:0〜0.01%、Zr:0〜0.02%、Hf:0〜0.02%、およびTa:0〜0.02%を含み、かつ不純物としてのP、SがそれぞれP:0.01%以下、S:0.005%以下を満足し、さらにSiとNbが式の関係を満たし、かつNi、CuおよびCrが式の関係を満たす鋼であることを特徴とする高温高強度鋼用溶接材料。: Si≦0.2・Nb+0.25: 0.7≦(Ni+Cu)/Cr≦1.4式および式における元素記号はその元素の含有率(重量%)を表す。
請求項2
母材および溶接金属を備える溶接継手であって、重量%で、母材はCr:15〜30%、およびNi:15〜30%を含むオーステナイト鋼であり、溶接金属はC:0.03〜0.13%、Mn:0.2〜4%、Cu:1〜5%、Ni:15〜25%、Cr:15〜25%、W:0.5〜3%、Nb:0.1〜1.5%、N:0.1〜0.35%、B:0.001〜0.01%、Al:0.05%以下、O(酸素):0.08%以下、Mo:0〜1.5%、Ca:0〜0.01%、Mg:0〜0.01%、Zr:0〜0.02%、Hf:0〜0.02%およびTa:0〜0.02%を含み、かつ不純物としてのP、SがそれぞれP:0.02%以下、S:0.01%以下を満足し、さらにSiとNbが下記式の関係を満足し、かつNi、CuおよびCrが下記式を満たす鋼であることを特徴とする溶接継手。: Si≦0.2・Nb+0.25: 0.7≦(Ni+Cu)/Cr≦1.4式および式における元素記号はその元素の含有率(重量%)を表す。
技術分野
背景技術
0002
従来、発電用ボイラ、高温用装置等には主に18Cr-8Ni系のオーステナイトステンレス鋼が使用されてきた。しかし、近年のボイラ等での運転条件の苛酷化にともない、より高温強度および耐食性に優れた材料が必要とされるようになった。このような要求から、様々な元素を添加することにより高温強度を高めた新材料が多数開発されてきた。例えば、特開平8-13102号公報にはCu、W、N、Nb、Bを添加することにより高温強度の改善を図ったオーステナイト鋼が提案されている。
0003
そして、このようなオーステナイト鋼用溶接材料としては母材をそのまま溶接材料として使用する共金系溶接材料、または高Ni合金用溶接材料(例えば、JISZ3324中のYNiCr-3)を使用することが考えられる。しかし、母材は溶製後、圧延、熱処理により組織の調整を受けて高温強度の確保が図られるのに対し、溶接金属はほとんどの場合、凝固ままの組織で使用されるため、共金系溶接材料では母材に比べ高温強度を高めることは本質的に容易ではない。このため、多くの共金系溶接材料が提案されたが(特開昭63-309392号公報、特開平5-220594号公報、特開平6-142980号公報、特開平7-60481号公報、特開平8-71784号公報等)、これらの共金系溶接材料は、特開平8-13102号公報に提案されている材料に使用した場合には、高温強度を満足できない。
0004
このうち、特開平8-71784号公報に開示されている共金系の溶接材料は、高温の引張強度および短時間でのクリ−プ強度は満足しうるもののNiがCrに比して十分含まれていないため、組織の安定性が不十分である。この結果、高温で長時間使用した場合、急激に高温強度が低下したり、衝撃性能が劣化する場合がある。さらに、多層溶接時に溶接金属内に極めて微小な割れが発生するという問題があることが判明した。
0005
一方、高Ni合金用の溶接材料は高価であり、経済性の観点から好ましくない。
発明が解決しようとする課題
0006
本発明の目的は、多層溶接時の微小割れを防止することが可能で、高温強度に優れるオーステナイト鋼用の溶接材料およびこの溶接材料を用いた溶接継手に関する。
課題を解決するための手段
0008
(a) 様々な鋼について長時間クリ−プ試験を実施し、高温、長時間での急激な強度の低下が認められたものにつき、詳細な調査を行った。その結果、クリープ強度低下の原因は組織の不安定性にあることが明らかとなった。すなわち、凝固ままで溶接金属は実質オ−ステナイト単相であるものの、高温、長時間の試験中に凝固時の元素偏析に起因して、オ−ステナイト相から、脆弱なMo、W等を含んだ金属間化合物相が生成し、強度が低下する。このオ−ステナイト相の安定性は、Cu、Ni、Crを所定の範囲に制限することにより確保しうる。
0009
(b) 上記(a) の知見により、高温長時間での組織の安定性は確保できたものの、Cu、Ni、Crを所定の範囲に制限すると、多層溶接金属中に非常に微細な割れが発生しやすくなる。破面形態の観察などから、この割れは粒界に沿った割れであった。各種分析技術を駆使したところ、多層溶接時に発生する再熱割れが発生する結晶粒界にはSi、Cの顕著な濃化が認められた。したがって、再熱割れは次パスの熱サイクル時に、結晶粒界に偏析したSi、CがFeと低融点の共晶化合物を生成し、液化、開口したものである。以後の説明では、この微小割れを、原則として再熱割れと呼ぶ。本発明者らは、再熱割れの防止には、Nbの添加が効果的であることを見いだした。Nbは、CをNbCとして固定し、再熱割れ発生の原因を取り除き、割れ発生を防止しうることを確認した。そこで、再熱割れ防止に必要なNb量とSiの関係について調査した。
0011
本発明は、上記の事項を基に、多くの溶接試験を経て完成されたもので下記の溶接材料および溶接継手をその要旨とする。
0012
(1)重量%で、C:0.03〜0.13%、Mn:0.2〜4%、Cu:1〜5%、Ni:15〜25%、Cr:15〜25%、W:0.5〜3%、Nb:0.15〜1.5%、N:0.1〜0.35%、B:0.001〜0.01%、Al:0.01%以下、O(酸素):0.01%以下、Mo:0〜1.5%、Ca:0〜0.01%、Mg:0〜0.01%、Zr:0〜0.02%、Hf:0〜0.02%、およびTa:0〜0.02%を含み、かつ不純物としてのP、SがそれぞれP:0.01%以下、S:0.005%以下を満足し、さらにSiとNbが式の関係を満たし、かつNi、CuおよびCrが式の関係を満たす鋼である溶接材料。
0014
(2)母材および溶接金属を備える溶接継手であって、重量%で、母材はCr:15〜30%、およびNi:15〜30%を含むオーステナイト鋼であり、溶接金属はC:0.03〜0.13%、Mn:0.2〜4%、Cu:1〜5%、Ni:15〜25%、Cr:15〜25%、W:0.5〜3%、Nb:0.1〜1.5%、N:0.1〜0.35%、B:0.001〜0.01%、Al:0.05%以下、O(酸素):0.08%以下、Mo:0〜1.5%、Ca:0〜0.01%、Mg:0〜0.01%、Zr:0〜0.02%、Hf:0〜0.02%およびTa:0〜0.02%を含み、かつ不純物としてのP、SがそれぞれP:0.02%以下、S:0.01%以下を満足し、さらにSiとNbが上記式の関係を満足し、かつNi、CuおよびCrが上記式を満たす鋼である溶接継手。
0015
本発明の溶接材料は、通常の溶接方法に適用可能である。例えば、ガスシ−ルドア−ク溶接(GMAW:Gas Metal Arc Welding、GTAW:Gas Tungsten Arc Welding)のワイヤ、フラックスを塗布した被覆ア−ク溶接材料(SMAW:Shielded Metal ArcWelding)の芯線、フラックス中で潜弧溶接(SAW:Sub-merged Arc Welding)するときのワイヤ等、どのような溶接法の溶接材料であってもよい。要するに、溶接材料の鋼の部分の化学組成が本発明の範囲内に入ればよい。溶接継手についても、上記(2)の範囲に入ればそれがどのような溶接法で溶接されたものであってもよい。(2)に記載の母材は、CrとNiが上記母材の範囲に入れば形状は問わず、管、板、棒等であってよい。
発明を実施するための最良の形態
0016
次に本発明の溶接材料および溶接金属の化学組成の限定理由について述べる。Al、O(酸素)、Nb、不純物元素としてのP以外のその他の元素は、母材が溶接材料の化学組成と類似しているために、溶接金属の組成は溶接材料とほとんど同じ組成となる。したがって、とくに必要でない場合は、溶接材料と溶接金属とは区別しないで以後の説明を行う。また、以後の説明において、合金元素の「%」は「重量%」を意味する。
0017
1.溶接材料および溶接金属
C:0.03〜0.13%
Cは高温強度の向上に寄与する。そのためには0.03%以上が必要である。しかし、過剰に含むと多量の炭窒化物として析出し、強度低下を招くとともに粒界に偏析したSiおよびFeと反応し、低融点化合物を生成し、再熱割れ感受性を増大させるので、0.13%以下とする。さらに望ましい範囲は0.05〜0.11%である。
0018
Mn:0.2〜4%
Mnは脱酸剤として添加されるが、Sを固定する効果があるので溶接時の凝固割れ感受性の低減に寄与する。さらに、溶接金属中のNの活量を下げることによりア−ク雰囲気中からのNの飛散を抑制し、高温強度の向上に寄与する。そのためには、0.2%以上が必要である。しかし、過剰の含有率は、脆化を招くので4%以下とする。好ましい上限は3%である。
0019
Cu:1〜5%
Cuは溶接金属のオ−ステナイト相を安定にする作用がある。また、高温中で析出し、高温強度の向上に寄与する。強度向上の効果を得るためには1%以上が必要であり、また、組織の安定化のためには、後述のNi、Crとの関係式を満足する必要がある。しかし、過剰に含むとε-Cu相の過剰の析出を招き、却って脆化を招くとともに、溶接時の凝固割れ感受性を大きくするので上限は5%とする。さらに好ましい範囲は1.5〜4.5%である。
0020
Ni:15〜25%
Niはオーステナイト相を安定化させるために必須の元素であり、高温強度の向上に寄与する。しかし、高温、長時間での組織の安定性を確保するためには15%以上が必要であり、かつ、後述のCu、Crとの関係式を満足する必要がある。しかし、Niは高価な元素であるため多量の添加はコストの増大を招くとともに、再熱割れ感受性を著しく増大させるので、上限は25%とする。
0021
Cr:15〜25%
Crは高温強度、耐酸化性および耐食性の確保のためには必須の元素である。十分な、耐酸化性および耐食性を満足するためには15%以上が必要であり、さらに、組織の安定性の確保の点から、後述のNi、Crとの関係式を満足する必要がある。しかし、過剰の添加は高温での組織の安定性を劣化させ、強度の低下を招くとともに、熱間加工性を劣化させるので、上限は25%とする。
0022
W:0.5〜3%
Wはマトリックスに固溶して高温強度の向上に寄与する元素である。この効果を発揮させるためには0.5%以上の含有率が必要である。しかし、過剰に含むと効果は飽和するとともに、高価な元素であるため、コストの増大を招く。そのため、上限を3%とする。さらに望ましい範囲は、0.8〜2.5%である。
0023
Nb:溶接材料0.15〜1.5%、溶接金属0.1〜1.5%
Nbは炭窒化物として微細に粒内および粒界に析出することにより高温強度の向上に寄与する。さらに、Cを固定し、多層溶接時の再熱割れを防止する。その効果を発揮させるためには、溶接金属の含有率として0.1%以上が必要であり、さらに、後述のSiとの関係を満足する必要がある。しかし、過剰に含むとNbCの粗大化を招き、靱性の劣化を招く。そのため、上限は1.5%とする。望ましくは0.15〜1.2%である。また、溶接ワイヤ中には、Nbを含まないかNb含有率の低い母材による希釈を考慮しても0.15%以上含めば上述の溶接金属中の下限を満足すると考えられるため、0.15%以上とし、上限は溶接金属と同じ1.5%とする。
0024
N:0.1〜0.35%
Nは高温強度を確保するのに必須の元素である。すなわち、Nは凝固組織のマトリックスに固溶してこれを強化するとともに一部は窒化物として析出し、析出強化を行う。しかし、過剰に含むと高温下での使用中に多量の炭窒化物を析出し、脆化の原因となる。さらに、溶接時にブロ−ホ−ル生成の原因となる。そのため0.1〜0.35%とする。望ましい上限は0.3%である。
0025
B:0.001〜0.01%
Bは粒界に偏析してクリープ強度の向上に寄与する。そのためには0.001%以上が必要である。ただし、過剰に含むと溶接時の凝固割れを助長するため上限は、0.01%とする。
0026
Al:溶接材料0.01%以下、溶接金属0.05%以下
Alは脱酸剤として添加されるが、溶接ワイヤ中への多量の添加はスラグの生成を促し、溶接金属の湯流れおよび溶接ビードの均一性を劣化させ、溶接施工性を著しく低下させる。さらに、裏波形成する溶接条件領域を狭くするため溶接ワイヤ中のAl含有率は0.01%以下とする必要がある。しかし、溶接金属中には被覆ア−ク溶接やSAW溶接時にはフラックス成分から、Alが混入し、Al含有率が増加する。この場合、溶接金属中に0.05%以上のAlが含まれると清浄度が著しく劣化し、脆化を招く。そのため、溶接金属中のAl含有率は0.05%以下とする。下限はとくに定めないが、溶接材料および溶接金属ともに0.0005%程度以上であることが望ましい。
0027
O:溶接材料0.01%以下、溶接金属0.08%以下
Oの溶接材料中への過度の添加はスラグの生成を助長し、湯流れを劣化させ溶接施工性を低下させるため溶接材料中のOは0.01%以下とする必要がある。しかし、溶接金属中にはシ−ルドガスやフラックス成分からOが混入し、含有率が増加する。とくに、溶接金属中の含有率が0.08%以上になると清浄度が著しく劣化し、脆化を招く。そのため、溶接金属中のO量は0.08%以下とする必要がある。下限はとくに設けないが、溶接材料および溶接金属中ともに0.0005%程度とするのが望ましい。
0028
Mo:0〜1.5%
Moはマトリックスに固溶し、高温強度を高める効果がある。そのため、高温強度が必要な場合は含ませても良い。しかし、1.5%程度でその効果が飽和するばかりか耐食性劣化の原因となるので、上限は1.5%とする。
0029
Ca:0〜0.01%
Caは含まなくても良い。線材加工時の熱間加工性の改善に有効であるため、熱間加工性を高める必要がある場合には添加してもよい。しかし、過剰に含むと溶接金属中の介在物を増加させ、清浄度を劣化させるため0.01%以下とする。
0030
Mg:0〜0.01%
Mgは含まなくてもよい。MgはCaと同様に線材加工時の熱間加工性の改善に有効であるため、添加してもよい。しかし、過剰に含むと溶接金属中の介在物を増加させ、清浄度を劣化させるため0.01%以下とする。
0031
Zr:0〜0.02%
Hf:0〜0.02%
Ta:0〜0.02%
Zr、Hf、Taは含まなくてもよい。しかし、これらの元素はNbと同様、Cを固定し、再熱割れ感受性の低減に効果がある。再熱割れの危険性が高い場合には用いることができる。0.0005%未満ではこれら元素の上記の効果は十分ではないので、含む場合には、各元素とも0.0005%以上とする必要がある。しかし、0.02%以上含むと炭化物が粗大化し、脆化を招くため、0.02%以下とする。
0032
P:溶接材料0.01%以下、溶接金属0.02%以下
Pは溶接の際、溶接金属の凝固時に低融点の共晶物を形成し、高温割れを発生させる。そのため、溶接金属中のPは0.02%以下とする必要がある。また、溶接材料中のPは母材との希釈を考慮しても0.01%以下とすれば、上述の溶接金属中のP含有率の範囲を満足しうるので、0.01%以下とする。
0033
S:溶接材料0.005%以下、溶接金属0.01%以下
SはPと同様、溶接の際、溶接金属の凝固時に低融点の共晶物を形成し、高温割れを発生させる。そのため、溶接金属中のSは0.01%以下とする必要がある。また、溶接材料中のSが0.005%を超えるとア−クが不安定性となり、溶接作業性が劣化する。また、母材との希釈を考慮しても0.005%以下とすれば、上述の溶接金属中のS含有率を満足しうるので、0.005%以下とする。
0034
Si:≦0.2・Nb+0.25
Siは脱酸剤として添加されるが、溶接金属の凝固時に粒界に偏析し、CおよびFeと反応し、低融点の化合物を生成し、多層溶接時の再熱割れの原因となる。上述のようにNbはCを固定し、再熱割れ感受性を低減させるが、十分な耐再熱割れ性を確保するためには、Siを(0.2・Nb+0.25)%以下とする。しかし、過度の低減は、製造コストの増大を招くため、特に下限は設けないが、望ましくは0.01%以上とする。
0035
0.7≦(Ni+Cu)/Cr≦1.4
Ni、Cuは高温でのオ−ステナイト相を安定にし、逆にCrは不安定とする。これらの元素が、(Ni+Cu)/Crが0.7以上であると、高温でもオーステナイト相が安定であり、高温強度が確保される。しかし、(Ni+Cu)/Crが1.4より大きくとなると、溶接時の凝固割れ感受性が増大するばかりが、再熱割れ発生の感受性も上昇する。そのため、1.4以下とする必要がある。
0036
2.母材
母材は高温強度、その他の使用性能を確保するためにNi:15〜30%、およびCr:15〜30%を含む。Niが15%未満では高温強度、熱間加工性の確保が十分でなく、一方30%を超えると表面性状が劣化するので30%以下とする。Crは15%未満では高温耐食性が十分でなく、一方、30%を超えると熱間加工が困難になる場合があるので30%以下とする。
0037
その他の母材の合金元素については、例えば、つぎの範囲にあることが高温強度、高温耐食性、耐再熱割れ等の点から望ましい。C:0.02〜0.16%、Si:0.5%以下、Cu:1〜5%、W:0.5〜3%、Nb:0.1〜1.5%、N:0.05〜0.4%、B:0.001〜0.02%、残余実質的にFe等が望ましい。
0038
次ぎに実施例により、本発明の効果を説明する。
0039
表1は、実験に用いた母材の化学組成を示す。
0040
0042
表2は使用した16種類の溶接材料を示す。
0043
0044
これらの溶接材料は、実験室溶製後、外径1.2mmの線材に加工したものである。またA11については、4.0mm径の溶接ワイヤに金属炭酸塩、金属弗化物、Si化合物、Ti化合物および金属粉末からなる被覆材を塗布した被覆ア−ク溶接棒(SMAW棒)である。継手性能の試験は図2に示した開先加工を施した母材を図3に示すように拘束溶接し、開先に対して供試溶接材料を用いてGTAW(TIG溶接)、MAG溶接、またはSMAWにより多層溶接を行った。
0045
表3はこれらの溶接によって得られた溶接金属の化学組成を示す。
0046
0047
溶接の際には拘束されているために溶接による熱応力が生じて割れが発生し易い。溶接施工後に溶接金属部を中央部に有するミクロ試験片、側曲げ試験片、およびクリープ試験片を採取しそれぞれ試験に供した。図4は側曲げ試験片、また図5はクリープ試験片を示す。
0048
ミクロ試験片については、バフ研磨後、光学顕微鏡にて400倍の倍率にて溶接金属部を全て観察し、再熱割れ発生の有無を観察した。また、側曲げ試験は板厚の2倍の曲げ半径で180゜曲げを行い、溶接金属での凝固割れの有無を調べ、再熱割れおよび凝固割れのないものを合格とした。再熱割れおよび曲げ試験にて欠陥のなかった継手についてのみクリ−プ試験を行った。クリープ試験は母材の破断時間が3000時間となる温度700℃、応力17kgf/mm2の条件で試験を行い、溶接金属の破断時間を調査した。そして、母材の破断時間の80%を良否判定基準とし、それに達しないものをクリープ強度不足とした。
0049
表4は耐再熱割れ性能および継手性能の評価結果を示す。
0050
0051
表4より明らかなように、比較例の溶接材料B1を使用した場合、溶接材料の(Cu+Ni)/Crが0.66と低く、そのため、溶接継手WB1でも溶接金属の(Cu+Ni)/Crが0.69と範囲外であったため、クリ−プ試験時の組織は不安定であり、破断時間は2203hとなり、母材の80%を満足しなかった。また、溶接材料B2はSiが0.45%であり、0.42(=0.2・Nb+0.25)以下を満足していなかった。そのため、溶接継手WB2、WB3でも溶接金属のSiがそれぞれ0.43%、0.42%となり、式を満足しなかった。そのため、溶接金属中に微細な再熱割れが多数発生した。また、溶接材料B3を使用した場合は溶接継手WB4の溶接金属の(Cu+Ni)/Crが1.4を超えたため、SiとNbは式を満足するものの再熱割れ感受性が上がり、再熱割れが発生した。溶接材料B4を使用した場合、溶接継手WB5、WB6の溶接金属の(Cu+Ni)/Crが1.4をわずかに下回っているものの、Siが式に対して過剰に含まれるため、再熱割れが発生するとともに、それが側曲げ試験時に拡大した割れとなった。また、溶接材料B1を使用した場合、溶接継手WB8では、WA1と同様に溶接材料の(Cu+Ni)/Crが0.69と所定の範囲を下回っていたため、クリ−プ試験時の組織が不安定となり、破断時間が2310hであり、母材の80%を満足しなかった。
発明の効果
図面の簡単な説明
0054
図1再熱割れを生じないSiとNbの含有率の範囲を示す。
図2再熱割れ試験の開先形状を示す。
図3再熱割れ試験の試験方法を示す。(a)は上面図、(b)は正面図である。
図4側曲げ試験片形状を示す。
図5クリープ試験片形状を示す。