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技術 動物細胞の高密度培養法及びその装置

出願人 筑波大学長
発明者 大島宣雄柳健一
出願日 1998年2月18日 (22年1ヶ月経過) 出願番号 1998-035616
公開日 1999年8月24日 (20年6ヶ月経過) 公開番号 1999-225751
状態 特許登録済
技術分野 微生物・酵素関連装置 酵素,微生物の固定化,処理 微生物、その培養処理
主要キーワード フィッティングカーブ 含有酸素濃度 立体網状 樹脂多孔質体 各仕切板 ハイブリッド型人工臓器 容積流量 灌流量
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(1999年8月24日)のものです。
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図面 (20)

課題

密度に培養される動物細胞をより一層最適な状態に維持する。

解決手段

動物細胞8を多孔質担体4に固定化し、動物細胞8を培地5中に浸漬して培養するにあたり、培地5中の酸素濃度と培地5の流動速度の少なくとも一方を所定の範囲内に制御する。これにより、培養肝細胞アンモニア代謝能を従来の2倍以上に改善することができる。

概要

背景

肝臓は、物質代謝中枢臓器として、種々の物質代謝機能を有する。肝臓には、例えば、胆汁の産生と分泌栄養物糖質タンパク質、脂質)やビタミンの代謝、生理活性物質毒物ステロイドホルモン等)の不活化血漿タンパクアルブミン血液凝固因子等)の合成や免疫(クッパー細胞)等のはたらきがある。

劇症肝炎では、これらの肝臓の機能が急激に失われる。この劇症肝炎を内科的に治療する試みでは、死亡率が70%以上にも及び、現在のところ、肝臓移植以外の有効な治療法はない。例えば、透析濾過吸着といった純人工的な手法では、重症肝不全患者救命は困難である。

これは、肝臓の機能が、機械的な方法では代行することが困難な物質代謝機能を中心としているためである。この解決策として、肝細胞培養系を装置内に組み込み、その代謝機能を利用するといったハイブリッド型人工肝臓の開発が期待されている。

概要

密度に培養される動物細胞をより一層最適な状態に維持する。

動物細胞8を多孔質担体4に固定化し、動物細胞8を培地5中に浸漬して培養するにあたり、培地5中の酸素濃度と培地5の流動速度の少なくとも一方を所定の範囲内に制御する。これにより、培養肝細胞アンモニア代謝能を従来の2倍以上に改善することができる。

目的

本発明は、高密度に培養された動物細胞をより一層最適な状態に維持することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

動物細胞多孔質担体固定化し、前記動物細胞を培地中に浸漬して培養するにあたり、前記培地の酸素濃度を、204〜969μMに制御することを特徴とする、動物細胞の高密度培養法。

請求項2

前記培地を、152〜722mmHgの酸素分圧気体曝すことを特徴とする、請求項1記載の動物細胞の高密度培養法。

請求項3

前記培地を、5.4〜10.8cm/分の線速度で流動させることを特徴とする、請求項1又は2記載の動物細胞の高密度培養法。

請求項4

前記培地の流れが偏らないように前記培地を分流させることを特徴とする、請求項3記載の動物細胞の高密度培養法。

請求項5

前記培地の流れを邪魔板により制御することを特徴とする、請求項3又は4記載の動物細胞の高密度培養法。

請求項6

動物細胞を多孔質担体に固定化し、前記動物細胞を培地中に浸漬して培養するにあたり、前記培地を、152〜722mmHgの酸素分圧の気体に曝すことを特徴とする、動物細胞の高密度培養法。

請求項7

動物細胞と、前記動物細胞が固定化される多孔質担体と、前記動物細胞が浸漬される培地に酸素を導入する酸素加器とを具えており、前記動物細胞を前記培地中に浸漬して培養する動物細胞の高密度培養装置であって、前記培地の酸素濃度が、204〜969μMに制御されることを特徴とする、動物細胞の高密度培養装置。

請求項8

動物細胞を多孔質担体に固定化し、前記動物細胞を培地中に浸漬して培養するにあたり、前記培地を、5.4〜10.8cm/分の線速度で流動させることを特徴とする、動物細胞の高密度培養法。

請求項9

動物細胞と、前記動物細胞が固定化される多孔質担体とを具えており、前記動物細胞を培地中に浸漬して培養する、動物細胞の高密度培養装置であって、前記培地が、5.4〜10.8cm/分の線速度で流動することを特徴とする、動物細胞の高密度培養装置。

技術分野

0001

本発明は、動物細胞培養技術に関する。

背景技術

0002

肝臓は、物質代謝中枢臓器として、種々の物質代謝機能を有する。肝臓には、例えば、胆汁の産生と分泌栄養物糖質タンパク質、脂質)やビタミンの代謝、生理活性物質毒物ステロイドホルモン等)の不活化血漿タンパクアルブミン血液凝固因子等)の合成や免疫(クッパー細胞)等のはたらきがある。

0003

劇症肝炎では、これらの肝臓の機能が急激に失われる。この劇症肝炎を内科的に治療する試みでは、死亡率が70%以上にも及び、現在のところ、肝臓移植以外の有効な治療法はない。例えば、透析濾過吸着といった純人工的な手法では、重症肝不全患者救命は困難である。

0004

これは、肝臓の機能が、機械的な方法では代行することが困難な物質代謝機能を中心としているためである。この解決策として、肝細胞培養系を装置内に組み込み、その代謝機能を利用するといったハイブリッド型人工肝臓の開発が期待されている。

発明が解決しようとする課題

0005

孔性立体網状多孔質構造を有する粒子状担体に、肝細胞等の動物細胞を高密度固定化し、この固定化物充填した充填層培養装置は、有用物質を生産させるバイオリアクターや、人工肝臓等の人工肝機能補助装置として、有益な応用が期待できる。

0006

本発明者は、一例の細胞固定化物を、特開平6−277050号及び特開平5−76364号公報に記載した。かかる細胞固定化物では、動物細胞を高密度に固定化して培養することができる。

0007

臨床応用が可能なハイブリッド型人工肝臓を開発するためには、肝細胞を更に高密度、大量に培養する技術が不可欠である。本発明者は、これまでに、多孔質樹脂である、ポリビニルホルマールPVF)樹脂多孔質体を細胞固定化用の担体として用い、充填層型リアクターを開発した。

0008

本発明者の研究によれば、かかるリアクター内で、肝細胞を1×107細胞/cm3 の高密度で培養でき、また、1週間以上にわたり肝細胞の代謝能を維持することができた〔(1) K. Yanagi, H. Miyoshi, H. Fukuda and N. Ohshima (1992), A packed-bed reactor utilizing porous resin enables high density culture of hepatocytes., Appl. Microbiol. Biotechnol., 37 : 316-320、(2) H.Miyoshi, K. Yanagi, H. Fukuda, N. Ohshima (1994), Long-term continuousculture of hepatocytes in a packed-bed reactor utilizing porous resin.,Biotechnol. Bioeng., 43 : 635-644 、(3) H. Miyoshi, K. Yanagi, H. Fukudaand N. Ohshima (1996), Long-term performance of albumin secretion of hepatocytes cultured in a packed-bed reactor utilizing porous resin., Artif. Organs, 20 : 803-807 〕。

0009

本発明は、高密度に培養された動物細胞をより一層最適な状態に維持することを目的とする。

課題を解決するための手段

0010

本発明は、動物細胞を多孔質担体に固定化し、前記動物細胞を培地中に浸漬して培養するにあたり、前記培地の酸素濃度を204〜969μMに制御する、動物細胞の高密度培養法に係るものである。

0011

また、本発明は、動物細胞を多孔質担体に固定化し、前記動物細胞を培地中に浸漬して培養するにあたり、前記培地を5.4〜10.8cm/分の線速度で流動させる、動物細胞の高密度培養法に係るものである。

0012

肝臓は、生体内では活発再生能を示すことが知られているが、人工的な培養条件下では、肝細胞はほとんど増殖能を示さず、急速にその活性を失う。本発明者は、ハイブリッド型人工肝臓を開発するためには、これらの問題点を如何にして克服するかが重要であると考えている。

0013

実用可能な人工肝臓を開発するためには、1cm当たり107 個以上の高密度で、生体の肝臓の約1/3の量に匹敵する1010のオーダーの大量の肝細胞を、生体内に匹敵する代謝能を維持したままに、人工的に培養する技術が不可欠である。また、臨床応用のためには、スケールアップ無菌的操作が容易なリアクターを開発することが不可欠である。

0014

前述したように、本発明者は、これまでに、ポリビニルホルマール樹脂多孔質体を担体として、充填層型リアクターを開発し、107細胞/cm3 −PVFの肝細胞密度でディッシュによる単層培養と同等の代謝能を1週間以上維持しながら肝細胞を培養できることを報告した(上記文献参照)。

0015

本発明者は、かかる培養方法を更に改善し、肝細胞を最適な条件で高密度に培養するため、種々の培養条件を検討した。

0016

その結果、驚くべきことに、本発明者は、従来、細胞に障害を与えることから好ましくないと考えられていた高酸素濃度の条件が、動物細胞の高密度培養にとってむしろ好ましいことを見出した。

0017

本発明者は、培地中の酸素濃度と培地の流動速度の少なくとも一方を所定の範囲内に制御することにより、肝細胞のアンモニア代謝能を従来の2倍以上に改善することができることを突き止め、本発明を完成させた。

0018

本発明は、所定量以上の高密度の動物細胞を培養する条件において、動物細胞が多量の酸素消費し、培地による酸素の供給がその消費に追いつかないこと、また、培地の流れに偏りができることが、これらの細胞の単位細胞当たりの活性を悪化させる傾向があることを見出したことに起因する。

0019

本発明によれば、培地中の酸素濃度と培地の流動速度の少なくとも一方を所定の範囲内に制御することにより、培養細胞の機能をより一層良好な状態に保つことができる。

発明を実施するための最良の形態

0020

本発明では、動物細胞を固定化する多孔質担体として、微孔性の立体網状多孔質構造を有する担体を用いるのが好ましい。かかる担体には、ポリビニルホルマール樹脂多孔質体等の種々の材質のものが含まれる。

0021

動物細胞としては、人工肝機能補助装置への応用が期待される肝細胞を含め、有用物質生産能を有する種々の動物細胞や、遺伝子操作を施した動物細胞を用いることができる。

0022

本発明では、培地中の酸素濃度を、204〜969μMの範囲に設定する。この範囲内の酸素が培地に付与されれば、培養細胞は良好な機能を維持することができる。204μMの酸素濃度は、通常の5%CO2 −20%O2 の条件下で、培地に酸素を溶け込ませた時の溶存酸素濃度に相当する。また、969μMの酸素濃度は、5%CO2 −95%O2 の条件下で、培地に酸素を溶け込ませた時の溶存酸素濃度に相当する。

0023

培地中への酸素の導入には、表面通気を用いることができる。培地を高酸素濃度の気相等に曝す処理は、特別な装置を必要とせず、汚染心配も少ない。

0024

培地中の酸素濃度を、204〜969μMに制御するには、通常の大気圧の下で、培地を152〜722mmHgの酸素分圧(20〜95%の含有酸素濃度に相当)の気体に曝すことにより行うことができる。

0025

効率よく酸素を導入するには、酸素加器を用いるのが好ましい。この酸素加器としては、培地中に酸素を溶け込ませる種々の手段が含まれる。例えば、培地をテフロンチューブ内に通し、このチューブ高濃度の酸素に曝すことにより、培地内に酸素を溶け込ませることができる。この際、このチューブの表面積を大きくすれば、酸素をより一層培地に溶け込み易くすることができる。

0026

また、本発明では、培養細胞に接する培地の流動速度を、5.4〜10.8cm/分の線速度の範囲に設定する。これらの線速度は、例えば、内径20mmのリアクターであれば、17〜34mL/分の流速に相当する。この範囲内では、培養細胞に良好な代謝能が維持される。5.4cm/分未満の線速度では、動物細胞に十分な酸素を供給することができない。また、線速度が10.8cm/分を超えると、細胞を擦るような剪断応力が細胞に傷害を発生させる。これらの線速度では、細胞の生存率が低下し、その結果、培地中のアラニントランスアミナーゼALT)濃度が上昇する。ALTは、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼGPT)とも称され、肝細胞が破壊された場合に、細胞外に放出される酵素である。

0027

以下、図面を参照して、本発明を詳細に説明する。図1は、一例の培養装置の模式図である。図1に示すような装置は、本発明の動物細胞の高密度培養方法に適切であり、肝細胞の代謝能を極めて良好に制御することができる。図1の装置1では、充填層型リアクター2を用いる。本発明の装置には、平板型、積層型、充填層型、流動床型等の種々の型の反応器を用いることができる。

0028

図1に示す充填層型リアクター2では、筒状の反応器3内に、多孔質担体4が充填されている。反応器3は、培地5が流入する下部ポート3aと培地5が流出する上部ポート3bとを有している。この下部ポート3aには、培地の流れを整える分流器を設けることができる。

0029

分流器には、例えば、図1に示すように、下部ポート3aの内側にテフロン球6を充填したものが用いられる。また、反応器3内に、複数の仕切板7を設け、担体4の充填空間を適切な間隔で仕切り、培地5の流れが均質になるようにすることができる。かかる仕切板としては、邪魔板等を用いることができる。更に、反応器3は、培養すべき細胞8が注入されるコック9を有し、ウォータジャケット10に包み込まれ、その中を温水11が循環するような設計にすることができる。

0030

多孔質担体4には、例えば、肝細胞を固定化する。この細胞8は培地5に浸漬されて培養される。この培地5は、ポンプ12により、下部ポート3aから充填層型リアクター2内に送られ、細胞8で処理され、その後、上部ポート3bから出て、リザーバ13に蓄えられる。リザーバ13には、培地5を供給する上部ポート13aが設けられている。リザーバ13も、反応器3と同様に、ウォータジャケット等で保温することができる。リザーバ13内の培地5は、再び、ポンプ12により、下部ポート3aから充填層型リアクター2内に灌流する。

0031

本発明では、図1に示すように、培地5には、充填層型リアクター2内に入る前に、酸素加器14を介して高濃度の酸素15が導入される。酸素15は、酸素加器14の上部ポート14aから供給する。酸素加器14内を通る培地のライン16には、例えば、テフロンのような酸素透過性の高いチューブを用い、このライン16を培地5が流れる間に、酸素15が培地5に溶け込むようにする。高濃度の酸素は、リザーバ13の上部ポート13aから、培地5に直接導入することもできる。

0032

本発明では、培地5が、所定の流速で細胞8の表面を流れるようにする。この培地5の流れは、分流器で整流し、各仕切板7間の担体4を攪拌し、培地5の流れの偏りを減少させて、培地5を充填層型リアクター2内に灌流させることができる。

0033

本発明の培養装置は、肝細胞を培養する人工肝臓として応用することが期待できる。図2は、一例の人工肝臓の模式図である。図2に示すように、本発明の培養装置は、血漿分離器を介して、肝機能に障害のある患者の人工肝臓として機能させることができる。この際、図2に示すように、人工肝臓25は、血漿分離器26とポンプ27と本発明の培養装置1とを具える。患者の動脈から取り出された血液は、ライン28を通って血漿分離器26に送られ、この血液から血漿を分離する。血漿は、ライン29を通り、ポンプ27で培養装置1のリザーバー14に送られて処理される。処理された血漿は、ライン30を通り、血漿以外の成分を患者に戻すライン31と合わさって、ポンプ27によって患者の静脈送り返される。

0034

本発明の方法によれば、培地中へ所定濃度の酸素を導入することや、培地の流動速度を所定の速度で均質に保たせることにより、バイオリアクターや人工肝臓としての機能を著しく改善することができる。かかるリアクターを用いれば、動物細胞の単位細胞当たりの活性を著しく向上させることができる。

0035

以下、図面を参照して、実験例に基づき、本発明をより詳細に説明する。
実験例1
1.実験方法
本実験例では、ポリビニルホルマール樹脂多孔質体を用いる充填層型リアクターで、肝細胞の代謝能を操作条件の改良により改善することを目的とし、培地中の酸素濃度の影響と培地の灌流速度の影響を検討した。はじめに、培養肝細胞に対する酸素濃度の影響をコラーゲンコートしたディッシュを用いる単層培養系において調べた後、充填層型リアクターによる灌流培養系で検討した。

0036

1−1.実験材料
肝細胞固定化用の担体として、平均孔径が250μmのポリビニルホルマール〔PVF樹脂、カネボウ化成(株)製〕を2×2×2mm3 に細切して用いた。反応器には、筒状のものと平板状のものを用いた。この担体250個を内径20mmの筒状の反応器に充填し、オートクレーブにて滅菌した後、ハンクス液(Hanks'balanced salt solution)で洗浄し、充填層型リアクターとした。また、平板状の反応器には、35mmのペトリディッシュ(Petri dish, Falcon 1008 )を0.06%I型コラーゲン溶液にてコートして用い、単層培養とした。

0037

肝細胞は体重190〜250gのWistar系雄性ラットからコラゲナーゼ灌流法により遊離して用いた。遊離時の肝細胞の生存率は、トリパンブルー排除法(trypan blue exclusion test)により80%以上であった。1匹あたり、1.2〜1.6×108 個の細胞が得られた。

0038

基本培地としては、Williams' E培地に、デキサメタゾン(0.1μM)、インシュリン(0.1μM)、アプロチニン(5,000KIU/L)、ペニシリンG(20,000IU/L)、ストレプトマイシン(20mg/L)、アンホテリシンB(50μg/L)を添加したものに、10%ウシ胎児血清を加えて用いた。

0039

1−2.培養方法
単層培養では、1×106 個の生細胞を2mlの培地に懸濁して、ディッシュに播種した。培地の酸素化は表面通気により行った。インキュベータの気相中の酸素分圧を75〜375mmHgに変化させて、培地に酸素を溶け込ませた。この培地中の溶存酸素濃度は、計算上、102〜510μMに対応する。例えば、表面通気には、5%CO2 −50%空気−45%N2 (10%O2 、75mmHgのO2分圧、102μMのO2 )、5%CO2 −95%空気(20%O2 、150mmHgのO2 分圧、204μMのO2 )、5%CO2 −55%空気−40%O2 (50%O2 、375mmHgのO2 分圧、510μMのO2 )等の条件を用いた。

0040

灌流培養では、充填層型リアクターを用いた。図3は、本実験例にかかる培養装置の模式図である。この装置17は、充填層型リアクター18とリザーバ19とローラポンプ20からなり、充填層型リアクター18とリザバー19とがライン21,22により繋がれている。ライン21の途中で、酸素加器23を設け、培地に酸素を導入した。また、ライン22の途中に、酸素電極24を配置することにより、培地の溶存酸素濃度を測定した。この装置17は、ウォータジャケットを用いて、37℃に保った。

0041

肝細胞を充填層型リアクター18内へ播種するために、肝細胞を3mLの培地に懸濁させ、肝細胞浮遊液を調製し、これをモジュール当たり8〜10×107となるように、リアクター18の上部から注入した。この培養装置17をクリーンベンチ内に置き、総量50mLの培地を、リザーバー19内での表面通気か、酸素加器23により酸素化して、灌流させた。酸素加器23では、図1に示すようなシリコンチューブ16を用いた。培地中の酸素濃度を変える(60〜470μM)か、培地の灌流速度を変えて(17〜50mL/分)、肝細胞を5日間培養した。培地中の酸素濃度は、単層培養と同様の気相を用いて調節し、灌流速度はポンプにより調節した。尚、灌流培養では、通常の培養条件である5%CO2−95%空気(20%O2 )により、酸素加器を介して培地に酸素を導入しても、培養細胞による酸素消費の結果、リアクターを出るときの培地の酸素濃度は、単層培養における計算上の200μMから150μM前後に低下する。したがって、この実験で用いた酸素濃度60〜470μMの条件は、リアクター出口の培地の酸素濃度であり、リアクター入口では102〜510μMの酸素濃度に対応する。

0042

実験のプロトコールを、図4を参照して説明する。図4は、培養時間と培地交換時期を示す説明図である。左右に伸びる直線は時間の経過を示す。この直線上に目盛られた数字は培養時間を表す。これらの時間のそれぞれにおいて、培地を交換した。また、この直線の下に記した黒又は白の矢印は、培地の種類を示す。黒い矢印は、Williams’E培地にウシ胎児血清、ホルモン、抗生物質を加えた基本培地であり、白い矢印は、基本培地に1mMの塩化アンモニウムを加えた培地である。

0043

図4に示すように、0時間において、肝細胞を平板型ディッシュ又は充填層型リアクターに播種して、培養を開始した。浮遊細胞を除去するために、培養開始後3時間において、培地を交換し、その後は培地を毎日交換した。肝細胞のアンモニア代謝能を評価するため、培養開始後20時間(2日目)と68時間(4日目)には、基本培地に1mMの塩化アンモニウムを添加し、経時的にアンモニア濃度を測定した。

0044

培養開始後92時間(5日目)に培養実験を終了し、リアクター内又はディッシュ内に固定化された肝細胞数を測定した。肝細胞数は、細胞を超音波破砕機にて破砕後、蛍光色素法によりDNA量を測定し、DNA量を細胞数換算することにより求めた。

0045

1−3.アンモニア代謝能の評価
アンモニアアミノ酸の代謝の結果できる老廃物で、これを尿素に変換するのは肝臓の重要な機能の一つである。1mMのアンモニア濃度は、肝不全の患者において一般的に見られる最大レベルの濃度である。

0046

各培養条件下での肝細胞のアンモニア代謝能を定量的に評価するために、反応速度論的解析を試みた。即ち、アンモニアを負荷した後、経時的に培地中のアンモニア濃度を測定すると、濃度変化を次の式(1)で近似することができる〔N. Ohshima, M. Shiota, H. Kusano, G. Wada, T. Tsunetsugu, K. Ookawa andK. Yanagi, (1994), Kinetic analysis of the performance of a hybrid-typeartificial liver support system utilizing isolated hepatocytes. Mater.Sci. Eng., C1 : 79-85 〕。
dC/dt=−KmNC(1)
式中、C:アンモニア濃度(mM)、Km:アンモニア代謝速度定数(L/細胞/hr)、N:肝細胞濃度(細胞/L)である。

0047

図5は、アンモニア濃度と培養時間との関係を示すグラフである。このグラフには、培養2日目(◆)と4日目(▲)の培養液中のアンモニア濃度の経時的変化を示す。このグラフの傾きはKmNに相当し、本実験例では、主としてこのKmNの値を代謝能の指標とした。

0048

1−4.放出ALTの量
本実験では、培地の交換毎に、アラニントランスアミナーゼ(ALT)の濃度を測定した。ALTは、グルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)とも称され、肝細胞が破壊されると放出される酵素である。肝細胞1g、1×108 個の細胞が破壊されると、約40IUのALTが放出される。この値が低いほど、培地中で傷害を受けた肝細胞が少ないことになる。

0049

2.単層培養における結果と考察
2−1.細胞の固定化率と溶存酸素濃度
図6は、細胞の固定化率を示すグラフである。このグラフでは、溶存酸素濃度が細胞の固定化率に及ぼす影響を知ることができる。このグラフの縦軸は、固定化率(%)であり、播種した生細胞(retained cell density )の何パーセントが4日間の培養後に固定化されたかを示す。図6に示すように、細胞の固定化率は、低酸素濃度で低い傾向を示し、200〜510μMの酸素濃度で、50〜70%のほぼ一定の固定化率を示した。

0050

2−2.アンモニア代謝能と溶存酸素濃度
図7は、アンモニア代謝能を示すグラフである。図7中、●は培養2日目の代謝能を示し、△は培養4日目の代謝能を示す。培養2日目の代謝能は、溶存酸素濃度に依存して著しく改善される。特に、300〜400μMの酸素濃度で優れた代謝能が得られた。細胞の固定化率がどの酸素濃度でもほぼ同じであることから、細胞当たりの代謝能が高酸素濃度下で良好になると考えられた。一方、培養4日目の代謝能は、200μMの酸素濃度でわずかに良くなり、高酸素、低酸素濃度とも代謝能がわずかに低下する。

0051

2−3.放出ALT量と溶存酸素濃度
図8は、放出されたALTの量を示すグラフである。このグラフでは、4日間の培養で培地中に放出されたALTの総量を示す。図8に示すように、ALTの放出は、低酸素濃度でやや高い傾向があるが、溶存酸素濃度によってほとんど影響を受けないことがわかる。

0052

3.充填層型リアクターにおける結果と考察
3−1.細胞の固定化率と溶存酸素濃度
図9は、細胞の固定化率を示すグラフである。この固定化率も、溶存酸素濃度の影響を調べたものであり、単層培養の場合(図5)と同様、播種した生細胞の何パーセントが4日間の培養後に固定化されたかを示す。但し、この実験では、図3に示すような充填層型リアクターを用い、培地を灌流(17mL/分)させた。この図に示すように、細胞の固定化率は、溶存酸素濃度を上昇させることで改善した。培養1日の時点での細胞の固定化率が30%前後であることから、培養4日後の細胞が30〜40%の固定化率であることは、著しい改善といえる。

0053

3−2.アンモニア代謝能と溶存酸素濃度
図10は、アンモニア代謝能を示すグラフである。この図の中の記号も、図7の単層培養のものと同一である。灌流培養では、培養2日目(●)と培養4日目(△)ともに、酸素濃度の増加により代謝能が上昇する。但し、300μMを超えてもほとんど差がでなくなる。

0054

3−3.放出ALT量と溶存酸素濃度
図11は、放出されたALTの量を示すグラフである。図11に示すように、300μMの酸素濃度までは、ALTの放出量は酸素濃度の上昇に伴い低下するが、500μMを超えるところでやや上昇する。

0055

3−4.細胞の固定化率と灌流速度
図12は、灌流速度が細胞の固定化率に及ぼす影響を示すグラフである。この固定化率は、酸素加器で酸素濃度が5%CO2 −95%空気(20%O2 )の気相を用い、灌流速度の影響を調べたものである。この図では、酸素濃度の影響を調べる場合(図9)と同様、播種した細胞の何パーセントが4日間の培養後に固定化されたかを示す。この図11で示すように、細胞の固定化率はいずれの灌流速度においても20%前後で、若干右上がりに改善するが、ほとんど差がなかった。

0056

3−5.アンモニア代謝能と灌流速度
図13は、アンモニア代謝能を示すグラフである。図中の記号は、図10の酸素濃度の影響を見るものと同一である。この図13で示すように、低灌流量でやや低いほか、灌流速度の影響はほとんどなかった。

0057

3−6.放出ALT量と灌流速度
図14は、放出されたALTの量を示すグラフである。この図で示すように、灌流速度が30mL/分までは、灌流速度とともに、ALTの放出量はやや低下する傾向がある。この充填層型リアクターでは、17〜34mL/分、好ましくは20〜30mL/分の灌流速度が適切と考えられた。

0058

3−7.細胞1個当たりのアンモニア代謝能と溶存酸素濃度
装置全体の代謝能を表すKmN値を用いる代わりに、固定化された細胞1個当たりの代謝能を表すKm値を用いて、溶存酸素濃度がアンモニア代謝能に及ぼす影響を評価した。図15は、このアンモニア代謝能を示すグラフである。細胞数は、4日間の培養終了後の細胞数を用い、培養2日目の代謝能の結果を得た。ディッシュによる単層培養(△)では、酸素濃度の上昇とともに、細胞当たりの代謝能が上昇した。一方、充填層型リアクターによる灌流培養(灌流速度:17mL/分)では、低酸素濃度で代謝能が悪いのに対し、200μM以上の酸素濃度でほぼ一定の代謝能に達した。また、この充填層型リアクターでの代謝能は、生体内の肝細胞の代謝能にほぼ匹敵するとされている20%酸素下のディッシュ培養での代謝能よりも良好で、充填層型リアクターの優位性が示された。

0059

実験例2
1.実験方法
本実験例では、実験例1と同様の条件で、培地中の酸素濃度の影響及び培地の灌流速度の影響を検討した。但し、培地の酸素化を、5%CO2 −50%空気−45%N2 (10%O2 )、5%CO2 −95%空気(20%O2 )及び5%CO2 −55%空気−40%O2 (50%O2 )の3条件の気相による表面通気とし、灌流培養での培地の酸素化を、リザーバー内への表面通気により行い、培地の灌流速度を8、17、34mL/分の3条件とした。

0060

また、本実験例では、アンモニア代謝能を評価するため、培養1日目と3日目に培地内に1mMの塩化アンモニウムを添加し、培養4日目に培養実験を終了させた。本実験例では、最小二乗法により近似式(1)のKmの値を計算し、細胞1個当たりのアンモニア代謝能の指標とした。

0061

2.単層培養における結果と考察
2−1.アンモニア代謝能と溶存酸素濃度
図16は、アンモニア代謝能を示すグラフである。斜線が施されているカラムは、培養1日目のアンモニア代謝能を示し、斜線が施されていないカラムは、培養3日目のアンモニア代謝能を示す。この図に示すように、20%酸素濃度の条件で肝細胞の代謝能は最も良好であり、高濃度と低濃度酸素条件では代謝能が低下した。特に、高濃度の酸素条件では、培養初期においては代謝能に与える影響は少ないものの、細胞の活性の維持に悪影響を与えると考えられた。

0062

3.充填層型リアクターにおける結果と考察
3−1.細胞の固定化率に及ぼす灌流速度と溶存酸素濃度の影響
培地の灌流量と培養時の酸素濃度について、表1に示す条件下に、5回の灌流培養実験を行った。表1に示すように、4日間の培養後、リアクター内に播種された生細胞の15〜20%が基材内に固定化された。細胞の固定化率は、高酸素濃度、低酸素濃度の両極端の条件(実験番号4、5)でやや低く、これらの条件において細胞の維持に問題があることが示唆された。一方、20%の酸素濃度下では、培地の灌流速度は細胞の固定化率に影響を及ぼさなかった。同様の充填層型リアクターを用いた本発明者の研究において、基材内への細胞の固定化率は、灌流培養1日目で約30%、7日目で15%程度であったことから、PVF樹脂内に固定化された肝細胞数は、灌流培養の期間中、徐々に減少するものと考えられた。

0063

0064

3−2.アンモニア代謝能と培養時間
図17は、アンモニア濃度と培養時間との関係を示すグラフである。このグラフには、培養1日目(■)と3日目(●)の培養液中のアンモニア濃度の経時的変化を示す。この図では、灌流培養における培地中のアンモニア濃度の経時変化が示されている。実線および破線は、式(1)によるシミュレーションの結果である。代謝能の評価は、フィッティングカーブからKm・Nの値を算出し、培養終了時における細胞密度(N)で除し、細胞1個当たりのアンモニア代謝能の指標、Kmを得た。灌流培養では、培養1日目の固定化細胞密度は培養終了時の値よりも高いものと推測されるため、以下に示す灌流培養群の培養1日目のKmの値は過大評価されていると考えられる。

0065

3−3.アンモニア代謝能と溶存酸素濃度
図18は、アンモニア代謝能を示すグラフである。斜線が施されているカラムは、培養1日目のアンモニア代謝能を示し、斜線が施されていないカラムは、培養3日目のアンモニア代謝能を示す。この図に示すように、充填層型リアクターによる灌流培養においては、肝細胞の代謝能は通気中の酸素濃度に依存して、良好な値を示した。尚、本実験例では、灌流培養の培地の酸素化はリザーバ内の表面通気のみによって行った。このため、50%酸素の通気によっても培地中の溶存酸素濃度はディッシュによる同条件の培養ほど高くない可能性がある。

0066

3−4.アンモニア代謝能と灌流速度
図19は、アンモニア代謝能を示すグラフである。この図でも、培養1日目と培養3日目を比較した。この図では、培地の灌流量がアンモニアの代謝能に与える影響が示される。表1に示す高灌流量(34mL/分;実験番号3)の実験において、アンモニア代謝能はやや良好な傾向を示した。充填層型リアクターにおいて培地の灌流量を論じる場合、灌流量は容積流量よりもリアクター内での線速度が問題となるが、本実験例において使用したリアクターでは、34mL/分の灌流量において10.8cm/分となる。この速度においても培養開始直後を除き、肝細胞のリアクター外への流出は観察されなかった。

0067

以上、実験例1及び実験例2で述べたように、単層培養及び充填層型リアクターによる動物細胞の高密度培養系において、培地中の酸素濃度を204〜969μMに制御すること、又は培地を5.4〜10.8cm/分の線速度で灌流させることにより、培養細胞の代謝能をより一層改善できることがわかった。特に、培養肝細胞の機能は、培地の灌流量を増やすことにより、やや良好に維持される傾向を示し、培地の溶存酸素濃度を上げることにより、良好に維持された。

発明の効果

0068

本発明の動物細胞の高密度培養方法によれば、培地中の溶存酸素濃度と培地の流動速度を所定の範囲に制御することにより、培養動物細胞の代謝能をより一層適切な状態に維持することができる。また、本発明の動物細胞の高密度培養装置は、培養動物細胞の代謝能をより一層適切な状態に維持することができ、種々の動物細胞を用いたハイブリッド型人工臓器として有望である。

図面の簡単な説明

0069

図1一例の培養装置の模式図である。
図2一例の人工肝臓の模式図である。
図3実験例にかかる培養装置の模式図である。
図4培養時間と培地交換時期を示す説明図である。
図5アンモニア濃度と培養時間との関係を示すグラフである。
図6細胞の固定化率を示すグラフである。
図7アンモニア代謝能を示すグラフである。
図8放出されたALTの量を示すグラフである。
図9細胞の固定化率を示すグラフである。
図10アンモニア代謝能を示すグラフである。
図11放出されたALTの量を示すグラフである。
図12細胞の固定化率を示すグラフである。
図13アンモニア代謝能を示すグラフである。
図14放出されたALTの量を示すグラフである。
図15アンモニア代謝能を示すグラフである。
図16アンモニア代謝能を示すグラフである。
図17アンモニア濃度と培養時間との関係を示すグラフである。
図18アンモニア代謝能を示すグラフである。
図19アンモニア代謝能を示すグラフである。

--

0070

1、17培養装置
2、18充填層型リアクター
3反応器
3a 下部ポート
3b 上部ポート
4多孔質担体
5培地
6テフロン球
7仕切板
8細胞
9コック
10ウォータジャケット
11温水
12、20、27ポンプ
13、19リザーバ
13a 上部ポート
14、23酸素加器
14a 上部ポート
15 酸素
16、21、22、28、29、30、31ライン
24酸素電極
25人工肝臓
26血漿分離器
27 ポンプ

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