図面 (/)
課題
解決手段
概要
背景
一般に、超伝導特性を利用した、フィルタ回路やアンプ回路等の超伝導回路は、超伝導状態を実現するために、断熱特性に優れた低温保持容器に収納され、外部からの熱的影響を遮断した環境で使用される。従来技術に係る、超伝導回路を低温状態に保持する装置について、図7を参照して説明する。
図7において、11は真空封止され、外部の熱的影響を遮断して、内部の低温状態を保持する低温保持容器、12は超伝導回路13を載置する熱拡散板12a、及び、超伝導回路13に所定の低温状態を与える蓄冷器12bとから構成されるコールドヘッド、14は低温保持容器11の外部と超伝導回路13の入力パッドとを信号入力線14aを介して電気的に接続する入力コネクタ、15は低温保持容器11の外部と超伝導回路13の出力パッドとを信号出力線15aを介して電気的に接続する出力コネクタである。
また、図示していないが、低温保持容器11には所定の低温状態を保持するための液体ヘリウムや液体窒素等の冷却剤、若しくはスターリング冷却機やパルス管冷却機等の冷却手段が付設されている。このような低温保持容器11により、超伝導回路13特有の動作特性が実現される。
次に、低温保持容器11に収納される超伝導回路13の具体的な実装構造について、図8を参照して説明する。図8において、例えばセラミックス系の超伝導材料を用いた高温超伝導フィルタ回路21は、所定のフィルタ回路の回路パターンが上面に、グランド面が下面に形成されたフィルタ基板22と、フィルタ基板22を搭載し、グランド面に所定の基準電位を供給するフィルタケース24と、フィルタ基板22とフィルタケース24間に介在するインジウム(In)箔27と、フィルタ基板22をIn箔27を介してフィルタケースに圧接固定する固定治具25と、を具備して構成されている。
また、図示を省略したが、フィルタ基板22への入出力信号を伝達するための入出力コネクタがフィルタケース24に設けられている。このように、フィルタ基板22とフィルタケース24間にInの薄膜(In箔)を介在させ、固定治具25によりフィルタ基板22をフィルタケース24に圧接するように押圧力を印加することにより、フィルタケース24からIn箔27を介してフィルタ基板22のグランド面へ基準電位が供給される。
ここで、高温超伝導フィルタ回路21は、例えば、酸化マグネシウム(MgO)基板の上面にイットリウム(Y)、バリウム(Ba)、銅オキサイド(CuO)からなるY−Ba−Cu−O系超伝導薄膜により形成された回路パターンと、基板の下面全面に同じY−Ba−Cu−O系超伝導薄膜上に金(Au)を蒸着して形成したグランド面とを有して構成される。
概要
本発明は、真空封止された密封容器に収納された超伝導回路の動作特性を向上させるとともに、密封容器内に放出されるガスの量を抑制して、長期にわたり超伝導状態の実現に必要な圧力状態を維持することができる超伝導回路の実装構造を提供することを課題とする。
高温超伝導フィルタ回路1は、表面に超伝導薄膜によりフィルタ回路の回路パターン3が形成されたフィルタ基板2と、フィルタ基板2を搭載し、Au箔7を介してフィルタ基板2に所定の基準電位を供給するフィルタケース4と、フィルタ基板2をAu箔7を介してフィルタケース4に圧接固定する板バネ5と、フィルタ基板2に形成された回路パターン3と電気的に接続され、入出力信号を高温超伝導フィルタ回路1の外部と伝達するコネクタ6と、を具備して構成されている。
目的
このように、In箔を介在させた高温超伝導フィルタ回路の実装構造においては、上記、の問題点の一方を解決しようとすると、他方の問題点が顕在化して、良好な高周波通過特性と長期にわたる真空状態の維持を両立させることが困難であった。本発明の目的は、上記課題を解決し、真空封止された密封容器に収納された超伝導回路の動作特性を向上させるとともに、密封容器内に放出されるガスの量を抑制して、長期にわたり超伝導状態の実現に必要な圧力状態を維持することができる超伝導回路の実装構造を提供することにある。
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 2件
- 牽制数
- 5件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
外部と熱的に遮断された系内で用いられ、該系内の所定の圧力雰囲気によって実現される熱的雰囲気内でのみ超伝導特性を示す超伝導回路が形成された基板を所定の搭載基材に実装する超伝導回路の実装構造において、前記超伝導回路基板が、高い導電性を有するとともに高い柔軟性を有する金属を介し、かつ、該金属に所定の圧接力を印加するように、前記搭載基材に圧接固定されていることを特徴とする超伝導回路の実装構造。
請求項2
前記金属が、前記超伝導回路基板の所定の領域にのみ介在し、該所定の領域に対応して前記超伝導回路基板に印加される押圧力により、前記金属に前記所定の圧接力を印加することを特徴とする請求項1記載の超伝導回路の実装構造。
請求項3
前記金属は、前記超伝導回路基板の縁辺領域にのみ介在し、該縁辺領域に対応して前記超伝導回路基板に押圧力が印加されることを特徴とする請求項1又は2記載の超伝導回路の実装構造。
請求項4
請求項5
請求項6
前記金属は、前記超伝導回路基板を構成するグランド面上に積層して膜状に設けられていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の超伝導回路の実装構造。
請求項7
前記金属は、前記超伝導回路基板が圧接固定される前記搭載基材上に積層して膜状に設けられていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の超伝導回路の実装構造。
請求項8
前記金属は、箔又は膜状、若しくは、バンプ状に形成した金であり、該金に印加される圧接力が、0.05〜5kg/cm2であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の超伝導回路の実装構造。
請求項9
技術分野
0001
本発明は、超伝導回路の実装構造に関し、詳しくは真空封止された密封容器内において、超伝導回路基板と搭載基材間の導電性を向上させるとともに、密封容器内でのガスの放出を抑制した超伝導回路の実装構造に関する。
背景技術
0002
一般に、超伝導特性を利用した、フィルタ回路やアンプ回路等の超伝導回路は、超伝導状態を実現するために、断熱特性に優れた低温保持容器に収納され、外部からの熱的影響を遮断した環境で使用される。従来技術に係る、超伝導回路を低温状態に保持する装置について、図7を参照して説明する。
0003
図7において、11は真空封止され、外部の熱的影響を遮断して、内部の低温状態を保持する低温保持容器、12は超伝導回路13を載置する熱拡散板12a、及び、超伝導回路13に所定の低温状態を与える蓄冷器12bとから構成されるコールドヘッド、14は低温保持容器11の外部と超伝導回路13の入力パッドとを信号入力線14aを介して電気的に接続する入力コネクタ、15は低温保持容器11の外部と超伝導回路13の出力パッドとを信号出力線15aを介して電気的に接続する出力コネクタである。
0004
また、図示していないが、低温保持容器11には所定の低温状態を保持するための液体ヘリウムや液体窒素等の冷却剤、若しくはスターリング冷却機やパルス管冷却機等の冷却手段が付設されている。このような低温保持容器11により、超伝導回路13特有の動作特性が実現される。
0005
次に、低温保持容器11に収納される超伝導回路13の具体的な実装構造について、図8を参照して説明する。図8において、例えばセラミックス系の超伝導材料を用いた高温超伝導フィルタ回路21は、所定のフィルタ回路の回路パターンが上面に、グランド面が下面に形成されたフィルタ基板22と、フィルタ基板22を搭載し、グランド面に所定の基準電位を供給するフィルタケース24と、フィルタ基板22とフィルタケース24間に介在するインジウム(In)箔27と、フィルタ基板22をIn箔27を介してフィルタケースに圧接固定する固定治具25と、を具備して構成されている。
0006
また、図示を省略したが、フィルタ基板22への入出力信号を伝達するための入出力コネクタがフィルタケース24に設けられている。このように、フィルタ基板22とフィルタケース24間にInの薄膜(In箔)を介在させ、固定治具25によりフィルタ基板22をフィルタケース24に圧接するように押圧力を印加することにより、フィルタケース24からIn箔27を介してフィルタ基板22のグランド面へ基準電位が供給される。
0007
ここで、高温超伝導フィルタ回路21は、例えば、酸化マグネシウム(MgO)基板の上面にイットリウム(Y)、バリウム(Ba)、銅オキサイド(CuO)からなるY−Ba−Cu−O系超伝導薄膜により形成された回路パターンと、基板の下面全面に同じY−Ba−Cu−O系超伝導薄膜上に金(Au)を蒸着して形成したグランド面とを有して構成される。
発明が解決しようとする課題
0008
しかしながら、上述したような高温超伝導フィルタ回路の実装構造においては、以下のような問題を有している。フィルタ基板22に印加される押圧力Fd、すなわち、フィルタ基板22及びフィルタケース24によるIn箔27への圧接力が弱いと、フィルタケース24から供給される基準電位がばらつき、高温超伝導フィルタ回路の高周波通過特性が悪化する。フィルタ基板22に印加される押圧力Fd、すなわち、フィルタ基板22及びフィルタケース24によるIn箔27への圧接力が強いと、高温超伝導フィルタ回路21の実装工程において、フィルタ基板22とIn箔27間、In箔27とフィルタケース24間の圧接境界に閉じ込められたガスが、低温保持容器の真空封止後に徐々に放出され、容器内の圧力状態が悪化する。
0009
以上のような問題点について、図9及び図10を参照してさらに詳しく説明する。図9は、In箔に圧接加重を印加した場合の高温超伝導フィルタ回路のフィルタ通過帯域外の減衰量及び圧接境界から放出されるガスの量を示すものであり、図10は、一般的なフィルタ回路におけるフィルタ特性を示すものである。
0010
図10に示すように、一般に、常温で動作する通常のフィルタ回路においては、フィルタ通過帯域に対する通過帯域外の減衰量が、90dB以上確保されていることが要求される。したがって、高温超伝導フィルタ回路においても、フィルタ通過帯域外の減衰量は、90dB以上であることが望ましく、90dB以下では実用性に劣るとされている。
0011
このような条件に基づいて、In箔に印加される圧接加重を検討すると、図9の実験結果に示すように、90dB以上のフィルタ通過帯域外の減衰量を実現するには、5.0kg/cm2以上の圧接加重(圧接力)を必要とする。一方、超伝導回路を通信機器等に使用する場合、小型軽量化やメンテナンスフリー等の実用面を考慮すると、超伝導回路が収納される低温保持容器内の圧力状態を長期にわたり一定に維持することが極めて重要となる。
0012
超伝導状態を実現する上で実用的な圧力状態の条件として、低温保持容器内の各部品から放出されるガスの量は、1×10E−9Pa・m3/sec以下であることが要求される。このような条件に基づいて、In箔に印加される圧接加重を検討すると、1×10E−9Pa・m3/sec以下のガスの放出量を実現するには、0.05kg/cm2以下の圧接加重が必要となる。
0013
このように、In箔を介在させた高温超伝導フィルタ回路の実装構造においては、上記、の問題点の一方を解決しようとすると、他方の問題点が顕在化して、良好な高周波通過特性と長期にわたる真空状態の維持を両立させることが困難であった。本発明の目的は、上記課題を解決し、真空封止された密封容器に収納された超伝導回路の動作特性を向上させるとともに、密封容器内に放出されるガスの量を抑制して、長期にわたり超伝導状態の実現に必要な圧力状態を維持することができる超伝導回路の実装構造を提供することにある。
課題を解決するための手段
0014
本発明は、上述の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、外部と熱的に遮断された系内で用いられ、該系内の所定の圧力雰囲気によって実現される熱的雰囲気内でのみ超伝導特性を示す超伝導回路が形成された基板を所定の搭載基材に実装する超伝導回路の実装構造において、前記超伝導回路基板が、高い導電性を有するとともに高い柔軟性を有する金属を介し、かつ、該金属に所定の圧接力を印加するように、前記搭載基材に圧接固定されていることを特徴としている。
0015
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の超伝導回路の実装構造において、前記金属が、前記超伝導回路基板の所定の領域にのみ介在し、該所定の領域に対応して前記超伝導回路基板に印加される押圧力により、前記金属に前記所定の圧接力を印加することを特徴としている。また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の超伝導回路の実装構造において、前記金属は、前記超伝導回路基板の縁辺領域にのみ介在し、該縁辺領域に対応して前記超伝導回路基板に押圧力が印加されることを特徴としている。
0016
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載の超伝導回路の実装構造において、前記超伝導回路基板の中心領域が半田により前記搭載基材に接合されていることを特徴としている。また、請求項5記載の発明は、請求項1、2、3又は4記載の超伝導回路の実装構造において、前記金属に印加される圧接力は、板状の弾性体を締め込み調整することにより前記超伝導回路基板に印加される押圧力に応じて生成されることを特徴としている。
0017
また、請求項6記載の発明は、請求項1、2、3、4又は5記載の超伝導回路の実装構造において、前記金属は、前記超伝導回路基板を構成するグランド面上に積層して膜状に設けられていることを特徴としている。また、請求項7記載の発明は、請求項1、2、3、4又は5記載の超伝導回路の実装構造において、前記金属は、前記超伝導回路基板が圧接固定される前記搭載基材上に積層して膜状に設けられていることを特徴としている。
0018
さらに、請求項8記載の発明は、請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の超伝導回路の実装構造において、前記金属は、箔又は膜状、若しくは、バンプ状に形成した金であり、該金に印加される圧接力が、0.05〜5kg/cm2であることを特徴としている。そして、請求項9に記載の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の超伝導回路の実装構造において、前記超伝導回路は、高温超伝導フィルタ回路であり、前記搭載基材から前記金属を介して所定の電位が供給されることを特徴としている。
0019
このような超伝導回路の実装構造によれば、導電性に優れ、かつ、柔軟性(変形性)に優れた金属、例えば、金を箔状又は膜状、あるいはバンプ状にし、超伝導回路基板と搭載基材との間に介在させ、該金に適度な圧接力を与えて超伝導回路基板を搭載基材に圧接固定することにより、超伝導回路基板と搭載基材との高い導電性が確保され、所定の基準電位を良好に供給することができるとともに、超伝導回路基板、金、搭載基材相互間の圧接境界に閉じ込められるガスの量を低減して、系内に放出されるガスの量を抑制することができるため、超伝導回路の動作特性を向上させつつ、所望の圧力状態を長期にわたり維持することができる。
0020
また、超伝導回路基板と搭載基材間に介在する金を基板の縁辺領域にのみ設け、該領域に対応して超伝導回路基板に押圧力を印加し、基板中心領域を半田により搭載基材に接合することにより、半田を介して超伝導回路基板の中心付近を搭載基材に固定することができるため、長期にわたり良好な圧接力を維持することができ、超伝導回路基板に供給される基準電位の経時変化を抑制して良好な動作特性を実現することができる。
0021
また、超伝導回路基板に印加される押圧力を板バネ等の弾性体により調整する構成を採用することにより、金に印加される圧接力を容易に変更、調整することができるため、超伝導回路の所望の動作特性を実現しつつ、ガスの放出量を抑制することができる。また、金を超伝導回路基板、あるいは、搭載基材上に蒸着等の方法により積層形成することにより、ガスの閉じ込めを完全に防止することができるため、密封容器内に放出されるガスをさらに抑制して、長期にわたり良好な圧力状態を維持することができる。
0022
特に、本発明の超伝導回路の実装構造を高温超伝導フィルタ回路に適用した場合、フィルタ基板のグランド面とフィルタケース間の導電性を向上させて、フィルタ基板に良好に所望の基準電位を供給して高周波通過特性を向上させることができ、また、フィルタ基板とフィルタケースとの圧接部から放出されるガスの量を低減して、密封容器内の圧力状態を長期にわたり維持することができる。
発明を実施するための最良の形態
0023
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。本発明に係る超伝導回路の実装構造の第1の実施例について、図1を参照して説明する。図1(a)、(b)において、超伝導回路を構成する高温超伝導フィルタ回路1は、超伝導回路基板を構成するフィルタ基板2と、回路パターン3と、搭載基材を構成するフィルタケース4と、板状の弾性体を構成する板バネ5と、コネクタ6と、膜状の金属を構成する金箔(Au箔)7と、を具備している。
0024
フィルタ基板2は、従来技術において示したように、例えば、MgO基板であって、基板2上面にはY−Ba−Cu−O系超伝導薄膜により所定のフィルタ回路の回路パターン3が形成され、図示を省略したが下面には、全面に同じY−Ba−Cu−O系超伝導薄膜上にAuを蒸着したグランド面が形成されている。フィルタケース4は、フィルタ基板2を搭載し、後述するAu箔7を介してフィルタ基板2のグランド面に所定の基準電位を供給する。フィルタケース4は、銅(Cu)あるいはアルミニウム(Al)のような導電性に優れた材料、若しくは、これらの材料表面をメッキや物理蒸着によりAuをコーティングした材料により構成される。
0025
板バネ5は、フィルタ基板2をAu箔7を介してフィルタケース4に圧接固定するための固定部品であって、フィルタ基板2を均等に保持固定するために、フィルタ基板2の周辺に複数個設けられている。そして、板バネ5の弾性力による押圧力Faは、Au箔7が介在する領域上のフィルタ基板2上面側の領域に均等に印加される。
0026
ここで、板バネ5は、板バネ5を固定するボルト等の締結部品5aの締め込み量により、フィルタ基板2に印加される押圧力Faを調整可能にした構成であってもよい。コネクタ6は、フィルタ基板2に形成された回路パターン3と電気的に接続され、入出力信号を高温超伝導フィルタ回路1の外部と伝達するものである。
0027
Au箔7は、フィルタ基板2とフィルタケース4との間に介在して、相互の電気的な導通を確保するものであって、Au箔7を介してフィルタケース4から基準電位がフィルタ基板2のグランド面に供給される。上述した高温超伝導フィルタ回路1は、従来技術において示した真空封止された低温保持容器中に収納されて、超伝導状態を実現するために必要な低温状態に置かれる。
0028
次に、上述した実施例におけるAu箔への圧接加重と高温超伝導フィルタ回路の動作特性及びガスの放出量について、図2を参照して説明する。従来技術において示したように、高温超伝導フィルタ回路に要求されるフィルタ通過帯域外の減衰量は、90dB以上とする。このような条件に基づいて、Au箔に印加される圧接加重とフィルタ通過帯域外減衰量の関係を検討すると、図2に示すように、90dB以上のフィルタ通過帯域外減衰量を実現するには、0.05kg/cm2以上の圧接加重(圧接力)を印加すればよい。
0029
一方、超伝導状態を実現する上で実用的な圧力状態の条件として、低温保持容器内の各部品から放出されるガスの量を、1×10E−9Pa・m3/sec以下とする。このような条件に基づいて、Au箔に印加される圧接加重とガスの放出量の関係を検討すると、図2に示すように、1×10E−9Pa・m3/sec以下のガスの放出量を実現するには、5.0kg/cm2以下の圧接加重を印加すればよい。
0030
このように、Au箔を介在させた高温超伝導フィルタ回路の実装構造においては、Au箔に対する圧接力を0.05kg/cm2以上5.0kg/cm2以下とすることにより、90dB以上のフィルタ通過帯域外減衰量を実現しつつ、1×10E−9Pa・m3/sec以下のガスの放出量を実現することができる。したがって、上記実施例の実装構造において、Au箔7に0.05kg/cm2以上5.0kg/cm2以下の圧接力が印加されるように、Au箔7の面積とフィルタ基板2に印加される板バネ5の押圧力Faを調整することにより、高周波通過特性に優れ、かつ、低温保持容器内の真空状態を長期にわたり維持することができる高温超伝導フィルタ回路を提供することができる。
0031
次に、本発明に係る超伝導回路の実装構造の第2の実施例について、図3を参照して説明する。なお、上述した実施例と同等の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。図3(a)、(b)に示すように、上述した第1の実施例において、超伝導回路基板を構成するフィルタ基板2が円形形状を有し、回路パターン3がフィルタ基板2と略同心円状に形成されている。
0032
そして、フィルタ基板2上の回路パターン3が形成されていない縁辺領域(外周領域)は、上述した第1の実施例と同様に、複数個の板バネ5によりAu箔7を介してフィルタケース4に押圧力Fa´で圧接固定される。また、フィルタ基板2上の回路パターン3が形成されていない中心付近は、フィルタケース4のフィルタ基板2搭載面側全体を覆うケースカバー4a内に突出して設けられた押圧片4bによりAu箔7を介してフィルタケース4に押圧力Fbで圧接固定される。
0033
ここで、押圧片4bは、図3(a)に示すように、フィルタ基板2の中心付近に加え、回路パターン3の入出力領域を分離する仕切板状に設けられる。このような実装構造によれば、フィルタ基板2は縁辺領域に加え、中心付近においても所定の押圧力で圧接固定されるため、フィルタ基板2の縁辺領域にのみAu箔7を介在させて押圧した場合に比較して、フィルタ基板2のグランド面に安定した基準電位を供給することができ、かつ、振動等によるフィルタ基板2の移動を抑制して、長期にわたり良好な圧接力を維持することができる。
0034
次に、本発明に係る超伝導回路の実装構造の第3の実施例について、図4を参照して説明する。なお、上述した実施例と同等の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。図4(a)、(b)に示すように、同一のフィルタ基板2上に2つのフィルタ回路を構成する回路パターン3a、3bが形成され、フィルタ基板2の縁辺領域は、上述した第1の実施例と同様に、複数個の板バネ5によりAu箔7を介してフィルタケース4に押圧力Fa″で圧接固定される。
0035
また、フィルタ基板2上の回路パターン3a、3b間の中心領域は、フィルタケース4のフィルタ基板2搭載面側全体を覆うケースカバー4a内に突出して設けられた押圧片4cによりAu箔7を介してフィルタケース4に押圧力Fcで圧接固定される。ここで、押圧片4cは、図4(a)に示すように、回路パターン3a及び3bの形成領域を分離する仕切板状に設けられる。
0036
このような実装構造によれば、上述した第2の実施例と同様に、フィルタ基板2は縁辺領域に加え、中心付近においても所定の押圧力で圧接固定されるため、フィルタ基板2の縁辺領域にのみAu箔7を介在させて押圧した場合に比較して、フィルタ基板2のグランド面に安定した基準電位を供給することができ、かつ、振動等によるフィルタ基板2の移動を抑制して、長期にわたり良好な圧接力を維持することができる。
0037
次に、本発明に係る超伝導回路の実装構造の第4の実施例について、図5を参照して説明する。本実施例の特徴は、上述した実施例と同等の実装構造において、Au箔をフィルタ基板のグランド面あるいはフィルタケースに積層形成することにより、相互の境界におけるガスの閉じ込めを防止することにある。
0038
本実施例の実装構造の一例として、図5(a)に示すように、フィルタ基板2のグランド面(図面下方)上にAu薄膜7aが積層形成され、フィルタケース4に図示を省略した固定部品により、Au薄膜7aが形成された領域に対応する領域、すなわちAu薄膜7aに対向するフィルタ基板2の上面側領域に所定の押圧力が印加されて圧接固定される。
0039
又、別の例として、図5(b)に示すように、フィルタケース4上にAu薄膜7bが積層形成され、フィルタ基板2はフィルタケース4との間にAu薄膜7bが介在するように固定部品により圧接固定される。ここで、Au薄膜7a、7bの積層形成の方法としては、周知の蒸着による薄膜形成方法等を適用することができる。
0040
このような実装構造により、Au薄膜7a、7bを積層形成した境界部は、積層対象となるフィルタ基板2のグランド面、あるいはフィルタケース4を構成する金属原子とAu薄膜7a、7bを構成するAu原子が密接に整合するため、ガスの閉じ込めが完全に防止され、真空封止された低温保持容器内に放出されるガスの量をさらに抑制して、長期にわたり良好な圧力状態を維持することができる。
0041
次に、本発明に係る超伝導回路の実装構造の第5の実施例について、図6を参照して説明する。本実施例の特徴は、上述した実施例と同等の実装構造において、Au箔が介在していないフィルタ基板中心付近を固定することにより、長期にわたり良好な圧接力を維持し、フィルタ基板のグランド面に供給される基準電位の経時変化を抑制することにある。
0042
本実施例の実装構造は、図6に示すように、フィルタ基板2の縁辺領域にAu箔7を介在させて、板バネ5により所定の押圧力を印加して圧接固定するとともに、フィルタ基板2の中心2a付近を半田8によりフィルタケース4に接合させる。このような実装構造により、フィルタ基板2の縁辺領域にのみAu箔7を介在させた場合に比較して、中部付近が半田を介して完全に固定されるため、比較的弱い圧接力においてもフィルタ基板が振動等により移動することがなく、長期にわたり良好な圧接力を維持することができる。
0043
なお、上述した各実施例においては、超伝導回路基板(高温超伝導フィルタ回路)と搭載基材(フィルタケース)との間に介在させる金属として金を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、要するに、高い導電性を有するとともに高い柔軟性を有する金属であって、特定の圧接力で所定の条件、すなわち上記高温超伝導フィルタ回路においては、フィルタ通過帯域外減衰量が90dB以上で、かつ、ガス放出量が1×10E−9Pa・m3/sec以下の条件を満たす金属であれば、他の金属、合金であってもよいことはいうまでもない。
0044
また、超伝導回路基板を圧接固定する構成として、板バネを示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成の押圧部材、あるいは固定部品を用いるものであってもよい。要するに、超伝導回路基板を搭載基材に圧接固定する際に、所望の押圧力を超伝導回路基板、すなわち介在する金属に印加することができるものであればよい。特に、押圧力を調整できるものであれば超伝導回路の動作特性を任意の調整することができる。
発明の効果
0045
本発明の超伝導回路の実装構造によれば、導電性に優れ、かつ、柔軟性に優れた金属、例えば、金を箔状又は膜状、あるいはバンプ状にし、超伝導回路基板と搭載基材との間に介在させ、該金に適度な圧接力を与えて超伝導回路基板を搭載基材に圧接固定することにより、超伝導回路基板と搭載基材との高い導電性が確保され、所定の基準電位を良好に供給することができるとともに、超伝導回路基板、金、搭載基材相互間の圧接境界に閉じ込められるガスの量を低減して、系内に放出されるガスの量を抑制することができるため、超伝導回路の動作特性を向上させつつ、所望の圧力状態を長期にわたり維持することができる。
0046
特に、本発明の超伝導回路の実装構造を高温超伝導フィルタ回路に適用した場合、フィルタ基板とフィルタケース間の導電性を向上させて、フィルタ基板に良好に所望の基準電位を供給して高周波通過特性を向上させることができ、また、フィルタ基板とフィルタケースとの圧接部から放出されるガスの量を低減して、密封容器内の圧力状態を長期にわたり維持することができる。
図面の簡単な説明
0047
図1本発明に係る超伝導回路の実装構造の第1の実施例を示す図である。
図2Au箔への圧接加重と通過帯域外減衰量及びガス放出量の関係を示す実験結果である。
図3本発明に係る超伝導回路の実装構造の第2の実施例を示す図である。
図4本発明に係る超伝導回路の実装構造の第3の実施例を示す図である。
図5本発明に係る超伝導回路の実装構造の第4の実施例を示す図である。
図6本発明に係る超伝導回路の実装構造の第5の実施例を示す図である。
図7超伝導回路を低温状態に保持する装置構成を示す概略図である。
図8従来技術に係る超伝導回路の実装構造を示す図である。
図9In箔への圧接加重と通過帯域外減衰量及びガス放出量の関係を示す実験結果である。
図10フィルタ回路におけるフィルタ特性を示す図である。
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0048
1、21高温超伝導フィルタ回路
2、22フィルタ基板
2a基板中心
3、3a、3b回路パターン
4、24フィルタケース
4aケースカバー
4b押圧片
5板バネ
5a締結部品
6コネクタ
7、7a、7b Au箔
8半田
11低温保持容器
12コールドヘッド
12a熱拡散板
12b蓄冷器
13超伝導回路
14入力コネクタ
14a信号入力線
15出力コネクタ
15a信号出力線
25固定部品
27 In箔
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