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技術 ケトエノール互変異性を利用した刺激応答性高分子及びそれを用いた刺激応答型分離材料

出願人 国立研究開発法人産業技術総合研究所財団法人化学技術戦略推進機構
発明者 大西徳幸片岡一則上野勝彦
出願日 1997年12月9日 (22年11ヶ月経過) 出願番号 1997-354003
公開日 1999年6月29日 (21年4ヶ月経過) 公開番号 1999-171928
状態 特許登録済
技術分野 クロマトグラフィによる材料の調査、分析 媒体導出入付与装置 体外人工臓器 医療用材料 媒体導出入付与装置 固体収着剤及びろ過助剤 付加系(共)重合体、後処理、化学変成
主要キーワード 反応後エタノール 刺激応答性材料 高温度環境 熱応答性高分子 生体物 刺激応答性高分子 アミド結合部位 スイッチング型
関連する未来課題
重要な関連分野

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課題

高温度環境の好ましくない物質の固定、分離、吸着等に有効な刺激応答性高分子を得る。

解決手段

ケトエノール互変異性を利用した上限臨界温度(UCST)を有する刺激応答性高分子誘導体、又は、ケトエノール互変異性を利用した、水素イオン濃度の変化もしくは有機溶媒の添加で相転移する刺激応答性高分子誘導体を得、更に該高分子誘導体を用いて刺激応答性分離材料を得る。

概要

背景

近年、刺激応答性高分子ドラッグデリバリーシステムDDS)、各種分離剤カテーテル人工筋肉などに広く応用され、その重要性は急激に増大している。例えば特開平8−103653号公報には、刺激応答性高分子として、熱、pH、電位、光などにより高次構造が変化して水溶液中で膨潤したり収縮する高分子が記載され、水に対する上限臨界温度(UCST)又は下限臨界温度(LCST)を有し、温度変化応答して膨潤−収縮する高分子として、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルメタアクリルアミドなどのアクリルアミドやメタアクリルアミドの誘導体類ビニルメチルエーテルなどのビニルエーテル類が記載されている。

概要

高温度環境の好ましくない物質の固定、分離、吸着等に有効な刺激応答性高分子を得る。

ケトエノール互変異性を利用した上限臨界温度(UCST)を有する刺激応答性高分子誘導体、又は、ケトエノール互変異性を利用した、水素イオン濃度の変化もしくは有機溶媒の添加で相転移する刺激応答性高分子誘導体を得、更に該高分子誘導体を用いて刺激応答性分離材料を得る。

目的

一方、pHの変化により高次構造が変化する高分子としては、ポリアクリル酸ポリメタクリル酸が知られている。しかしながら、これらは電荷を有するカルボン酸を含有しているため、この高分子を用いた分離剤では、目的とする化合物以外の吸着(非特異的吸着)があり、効率良く分離精製を行うことができないという問題があった。

本発明は、上記課題を解決することを目的とし、上限臨界温度(UCST)を有する刺激応答性高分子、あるいは、水素イオン濃度又は溶媒添加による可逆的な溶解、沈殿を発生させる刺激応答性高分子を提供することである。本発明の更なる目的は、上記刺激応答性高分子を用いた刺激応答型分離材料を提供することである。

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
2件

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請求項1

請求項2

ケトエノール互変異性を利用した水素イオン濃度の変化又は有機溶媒の添加で相転移する刺激応答性高分子誘導体。

請求項3

下記一般式(2)で示されるモノマー重合成分として含有する請求項1又は2記載の刺激応答性高分子誘導体。

請求項

ID=000002HE=040 WI=067 LX=0265 LY=0800式(2)中、R1 は、炭素数1から10の直鎖状分岐状又は環状の、ハロゲン化されていてもよい、アルキル基アルコキシル基アルキルアミノ基又はフェニル基を示す。R2 は、単結合、又は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化されていてもよいアルキレン基を示す。R3 、R4 及びR5 はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示す。X及びX′はそれぞれ独立に、酸素原子硫黄原子セレン原子又はテルル原子を示す。

請求項4

親水性又は疎水性モノマーと請求項3記載の一般式(2)で示されるモノマーとを共重合成分として含有する請求項1又は2記載の刺激応答性高分子誘導体。

請求項5

下記一般式(3) で示されるモノマーを重合成分として含有する請求項3記載の刺激応答性高分子誘導体。

請求項

ID=000003HE=030 WI=063 LX=0285 LY=2000

請求項6

請求項1〜5のいずれかに記載の刺激応答性高分子誘導体を含む刺激応答分離材料

技術分野

0001

本発明はドラッグデリバリーシステムDDS)、各種分離剤カテーテル人工筋肉などに利用される、優れた刺激応答性高分子誘導体に関する。

背景技術

0002

近年、刺激応答性高分子はドラッグデリバリーシステム(DDS)、各種分離剤、カテーテル、人工筋肉などに広く応用され、その重要性は急激に増大している。例えば特開平8−103653号公報には、刺激応答性高分子として、熱、pH、電位、光などにより高次構造が変化して水溶液中で膨潤したり収縮する高分子が記載され、水に対する上限臨界温度(UCST)又は下限臨界温度(LCST)を有し、温度変化応答して膨潤−収縮する高分子として、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルメタアクリルアミドなどのアクリルアミドやメタアクリルアミドの誘導体類ビニルメチルエーテルなどのビニルエーテル類が記載されている。

発明が解決しようとする課題

0003

しかしながら、これらの温度変化に応答して膨潤−収縮するとして公知の高分子化合物は、上限臨界温度(UCST)又は下限臨界温度(LCST)を有すると記載されるものの、実際には、いずれも下限臨界温度(LCST)を有する、即ち、可逆的にその温度以上において高分子間同士での凝集をおこし水に不溶化し、それ以下では水に溶解するという性質を有するものであった。例えば、現在DDS等で応用されているポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)は、水溶液中で32℃の下限臨界温度を有し、ポリマーゲル化した場合、熱によりその温度で可逆的に膨潤収縮を繰り返す。

0004

下限臨界温度(LCST)を有する高分子化合物は、ある一定温度以上において収縮するものであるから、DDSや分離剤等に適用する際、収縮を低温(好ましくは体温以下)で行いたいという要請に対して、その調整が難しいという課題があった。しかしながら、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)に代表される公知の刺激応答性高分子は下限臨界温度(LCST)と上限臨界温度(UCST)の変換、或いは水素イオン濃度による可逆的な溶解、沈殿を発生させることはできなかった。

0005

一方、pHの変化により高次構造が変化する高分子としては、ポリアクリル酸ポリメタクリル酸が知られている。しかしながら、これらは電荷を有するカルボン酸を含有しているため、この高分子を用いた分離剤では、目的とする化合物以外の吸着非特異的吸着)があり、効率良く分離精製を行うことができないという問題があった。

0006

このため下限臨界温度(LCST)と上限臨界温度(UCST)の変換、或いは水素イオン濃度等の温度以外の要因による可逆的な溶解、沈殿を発生させる高分子が待望されていた。

0007

本発明は、上記課題を解決することを目的とし、上限臨界温度(UCST)を有する刺激応答性高分子、あるいは、水素イオン濃度又は溶媒添加による可逆的な溶解、沈殿を発生させる刺激応答性高分子を提供することである。本発明の更なる目的は、上記刺激応答性高分子を用いた刺激応答分離材料を提供することである。

課題を解決するための手段

0008

本発明者らは前述の問題点を解決すべく鋭意努力した結果、下限臨界温度(LCST)と上限臨界温度(UCST)の変換、或いは水素イオン濃度又は溶媒添加による可逆的な溶解、沈殿を発生させる高分子を見出すに至った。

0009

すなわち本発明は、
1)ケトエノール互変異性を利用した上限臨界温度を有する刺激応答性高分子誘導体。

0010

2)ケトエノール互変異性を利用した水素イオン濃度の変化又は有機溶媒の添加で相転移する刺激応答性高分子誘導体。

0011

3)下記一般式(2)で示されるモノマー重合成分として含有する上記1)又は2)記載の刺激応答性高分子誘導体。

0012

0013

式(2)中、R1 は、炭素数1から10の直鎖状分岐状又は環状の、ハロゲン化されていてもよい、アルキル基アルコキシル基アルキルアミノ基又はフェニル基を示す。R2 は、単結合、又は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化されていてもよいアルキレン基を示す。R3 、R4 及びR5 はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示す。X及びX′はそれぞれ独立に、酸素原子硫黄原子セレン原子又はテルル原子を示す。

0014

4)親水性又は疎水性モノマーと請求項3記載の一般式(2)で示されるモノマーとを共重合成分として含有する上記1)又は2)記載の刺激応答性高分子誘導体。

0015

5)下記一般式(3) で示されるモノマー重合成分として含有する上記3)記載の刺激応答性高分子誘導体。

0016

0017

6)上記1)〜5)のいずれかに記載の刺激応答性高分子誘導体を含む刺激応答型分離材料。

0018

本発明者らは、ペプチド結合に代表される強い水素結合性と可逆的なケトエノール互変異性に着目し、下記反応式Aに示す如く、ケトエノールスイッチングを用いて上限臨界温度(UCST)を有する熱応答性高分子が得られると想定の下、本発明に到達したものである。

0019

0020

即ち、高温時にエノール化して水和し、低温時にケト体に変換されて水素結合で凝集するように、コンピューターによる分子軌道計算の手法を用いて設計したところ、上限臨界温度(UCST)が発現されることを見出した。より具体的には、上記ペプチド結合を有する部位が、熱力学的にケト体が安定な化合物を合成することが望ましい。

0021

更に、上記理論から、ケトエノール互変異性を利用することによって、熱によって変化させるのみならず、水素イオン濃度の変化あるいは有機溶媒の添加によっても、上記ケトエノールスイッチング(ケト体とエノール体の可逆的変換)が有効に行われること、即ち、温度を上下させなくとも、水素イオン濃度の変化あるいは有機溶媒の添加により、可逆的に膨潤−収縮を繰り返す刺激応答性高分子が得られることが見出された。

0022

本発明の刺激応答性高分子誘導体は、各種物質の分離、固定化検量、制御等に有効に適用することができる。特に、上限臨界温度(UCST)を有する、即ち、温度を下げることで凝集したり、あるいは温度を上下させなくとも、水素イオン濃度の変化又は有機溶媒の添加により可逆的に膨潤−収縮を繰り返すものであることから、特に高温環境が好ましくない物質(例えばバイオプロダクト酵素、抗体などの蛋白質)の分離・精製、固定化、検量、制御等に有効である。

発明を実施するための最良の形態

0023

更に本発明について詳細に説明する。本発明によれば、上記の通り、ケトエノール互変異性を利用して適宜分子設計することにより、容易に上限臨界温度を有する刺激応答性高分子誘導体、あるいは水素イオン濃度の変化又は有機溶媒の添加で相転移する刺激応答性高分子誘導体を得ることができる。

0024

例えば、下記一般式(1)で示される置換基成分を含有する高分子誘導体を好ましく用いることができる。

0025

0026

式(1)中、R1 、X及びX′はそれぞれ式(2) で定義される通りであり、好ましい範囲も後述の式(2) で記載する範囲と同様である。

0027

式(1)の置換基成分を含有する高分子誘導体(以下説明の簡略化のため、X及びX′が酸素原子である場合を用いて説明する)は、そのアミド結合部位が、熱或いは水素イオン濃度の変化又は有機溶媒の添加により、下記反応式Bに示されるようにケト体とエノール体に可逆的に変換される。

0028

0029

更に、本発明は効率的に可逆的なケトエノール変換を行うのに、上記一般式(2)で示されるモノマーを重合体成分として含有する高分子誘導体が特に有効であることを見いだした。

0030

一般的にアミド結合を有する化合物は水溶液中で強い水素結合による自己凝集作用があり、水溶液中でケト体として存在するポリアミドは水に不溶である。しかしこのケト体を熱或いは水素イオン濃度の変化により、エノール体に変換させ、自己凝集作用を切断することにより、水溶性の化合物となるものと推定される。

0031

一般式(2)で示されるモノマーを更に具体的に説明する。式(2) 中、R1 は好ましくは炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状の、アルキル基、アルコキシル基、アルキルアミノ基又はフェニル基であり、更に好ましくはメチル基、エチル基プロピル基イソプロピル基、フェニル基、メトキシ基エトキシ基プロポキシル基、イソプロポキシル基、メチルアミノ基、エチルアミノ基であり、特に好ましくはメチル基、エトキシ基、メチルアミノ基である。更にこれの基はハロゲン原子、例えばフッ素原子臭素原子塩素原子ヨウ素原子等で置換されていてもよい。特に好ましい置換基は、フッ素原子、塩素原子である。

0032

R2 は好ましくは単結合又は炭素数1〜2の直鎖状もしくは分岐状の、アルキレン基もしくはハロゲン化されたアルキレン基であり、特に好ましくは単結合である。好ましい置換基は、フッ素原子、塩素原子である。X及びX′はそれぞれ好ましくは酸素原子又は硫黄原子である。

0033

式(2) で示されるモノマーとしては、例えば、N−アセチルアクリルアミド、N−フルオロアセチルアクリルアミド、N−プロピオニルアクリルアミド、N−ブタノイルアクリルアミド、N−ペンタノイルアクリルアミド、N−ヘキサノイルアクリルアミド、N−イソブタノイルアクリルアミド、N−ベンゾイルアクリルアミド、N−(3−フルオロベンゾイル)アクリルアミド、N−(2,3−ジフルオロベンゾイル)アクリルアミド、N−ピリジルカルボニルアクリルアミド、N−ピリミジルカルボニルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−フルオロアセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−ブタノイルメタクリルアミド、N−ペンタノイルメタクリルアミド、N−ヘキサノイルメタクリルアミド、N−イソブタノイルメタクリルアミド、N−ベンゾイルメタクリルアミド、N−(3−フルオロベンゾイル)メタクリルアミド、N−(2,3−ジフルオロベンゾイル)メタクリルアミド、N−ピリジルカルボニルメタクリルアミド、N−ピリミジルカルボニルメタクリルアミド、

0034

N−アクイル−N′−メチルウレア、N−アクロイル−N′−エチルウレア、N−アクロイル−N′−フルオロメチルウレア、N−アクロイル−N′−ジフルオロメチルウレア、N−アクロイル−N′−トリフルオロメチルウレア、N−メタクロイル−N′−メチルウレア、N−メタクロイル−N′−エチルウレア、N−メタクロイル−N′−フルオロメチルウレア、N−メタクロイル−N′−ジフルオロメチルウレア、N−メタクロイル−N′−トリフルオロメチルウレア、

0035

N−アクロイルカルバミン酸メチル、N−アクロイルカルバミン酸エチル、N−アクロイルカルバミン酸-n-プロピル、N−アクロイルカルバミン酸イソプロピル、N−アクロイルカルバミン酸-n-ブチル、N−アクロイルカルバミン酸イソブチル、N−アクロイルカルバミン酸-t-ブチル、N−アクロイルカルバミン酸フルオロメチル、N−アクロイルカルバミン酸ジフルオロメチル、N−アクロイルカルバミン酸トリフルオロメチル、N−アクロイルカルバミン酸-2.2.2-トリフルオロエチル、N−メタクロイルカルバミン酸メチル、N−メタクロイルカルバミン酸エチル、N−メタクロイルカルバミン酸-n-プロピル、N−メタクロイルカルバミン酸イソプロピル、N−メタクロイルカルバミン酸-n-ブチル、N−メタクロイルカルバミン酸イソブチル、N−メタクロイルカルバミン酸-t-ブチル、N−メタクロイルカルバミン酸フルオロメチル、N−メタクロイルカルバミン酸ジフルオロメチル、N−メタクロイルカルバミン酸トリフルオロメチル、N−メタクロイルカルバミン酸-2.2.2-トリフルオロエチル等が挙げられる。

0036

具体的には一般式(2)で示されるモノマーを用いて単独で重合、或いは親水性もしくは疎水性のモノマーと共重合することにより、様々な温度範囲でUCSTを有する熱応答性高分子或いは様々な水素イオン濃度で応答するpH応答性高分子、又は有機溶媒の添加に応答する溶媒応答性高分子を得ることができる。また一般式(2)で示されるモノマーと、LCSTを有する熱応答性高分子のモノマーとを共重合することにより、熱応答性と同時にpH応答性を発現させる熱−pH応答性高分子を得ることもできる。

0037

UCSTを有する熱応答性高分子において、分離剤を目的とする場合、好ましい上限臨界温度は0〜50℃、特に好ましくは0〜38℃である。更に、スイッチング範囲(転移温度の範囲)は狭ければ狭いほどよく、本発明によれば、実用的な10℃以下のスイッチング範囲の熱応答性高分子を得ることができる。

0038

有機溶媒を刺激に用いる場合、水に対する溶解度がある有機溶媒なら特に限定されるものではない。具体的には、メタノールエタノールプロパノールイソプロパノールアセトン、THF、ジオキサン酢酸プロピオン酸エチレングリコールプロピレングリコール等が挙げられる。用いる刺激応答性高分子の種類にもよるが、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、THFが効率よく凝集を促すことができる。

0039

また、有機溶媒刺激を加えることによって、ケトエノールスイッチング型の熱応答性を発現させることもできることが見出された。

0040

更に、本発明の新規な刺激応答性高分子誘導体は、高温環境が好ましくない物質の分離、固定化、検量、制御等に有効であり、例えば、ドラッグデリバリーシステム(DDS)、各種分離剤、カテーテル、人工筋肉などに有効に適用することができる。

0041

特に本発明の刺激応答性高分子誘導体は、標的物質に対して親和性を有する領域と、上記刺激応答性を示す領域とを含有することにより、有効な刺激応答型分離材料を提供できる。

0042

本発明の刺激応答型分離材料は、当該分野で通常用いられる態様に従うものである。標的物質は特に限定的ではないが、例えば、蛋白質(酵素、抗体、分子シャペロン、バイオプロダクト等)、糖蛋白質核酸細胞人工細胞合成高分子化合物等を挙げることができる。

0043

本発明の分離材料は、上記ケトエノール互変異性を利用した刺激応答性を示す領域と標的物質に対して親和性を有する領域とを有する材料である。刺激応答性を示す領域として、上記式(1)の置換基成分を含有することが好ましい。より具体的には上記式(2)のモノマー成分を共重合成分として含有することが好ましい。

0044

標的物質に対して親和性を有する領域は、標的物質と結合ないし吸着する成分を含有するものである。より具体的には、該標的物質と結合ないし吸着する成分を含有するモノマー成分を上記刺激応答性を示すモノマー成分との共重合成分として含有することが好ましい。標的物質との結合は、必ずしも共有結合である必要はなく、イオンコンプレックス電荷移動錯体を利用した結合、生化学的親和性を利用した結合であってもよい。

0045

更に具体的には、抗体、酵素などの蛋白質を結合させる場合、蛋白質には、アミノ基とカルボキシル基等の官能基が存在する場合が多く、これらの官能基の反応性を利用して刺激応答性材料(親和性を有する領域)と蛋白質とを結合させることができる。例えば、蛋白質のアミノ基を利用する場合は、刺激応答性材料にカルボキシル基を導入して、下記に示すような反応式でアマイド結合を作ることができる。

0046

0047

下記に示すようなアルデヒド基を利用する方法、エポキシ基を利用する方法もある。

0048

0049

また、蛋白質のカルボキシル基を利用する場合は、刺激応答性材料にアミノ基を導入して、下記に示すような反応式でアマイド結合を作ることができる。

0050

0051

また、刺激応答性材料に抗体を導入して、標的物質としての蛋白質と結合させることができる。その場合、pHが中性付近燐酸トリスバッファーの中で行われることが好ましい。また、塩濃度は目的に応じて適宜設定できる。

0052

更に、刺激応答性材料に磁性体粒子を結合させて複合化させ、分離時に磁石等を用いることにより、標的物質を結合ないし吸着した刺激応答性材料をより効率よく凝集させることもできる。

0053

本発明の刺激応答性材料に結合ないし吸着した標的物質は、例えば、塩濃度を上げる、pHを変える(酸性又はアルカリ性にする)、阻害剤基質等を加える、尿素、SDSなどの変性剤を加える、有機溶媒、金属イオンなどを加える、温度を変える、などの方法により容易に溶出することができる。

0054

本発明の刺激応答型分離材料は、更に具体的には、残留農薬の検出等の如き検査薬診断薬への応用、微生物細胞培養生体物等のバイオプロダクトの分離、酵素や分子シャペロン等の固定化による生体反応機能の活性化・維持などに特に有効に利用できる。

0055

以下の実施例において、本発明を例証するが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。

0056

実施例1
〔N-アセチル(メタ)アクリルアミドの合成(化学式イ)〕

0057

0058

窒素ガス雰囲気下、アクリルアミド30.5g、N,N-ジメチルアセトアミドジメチルアセタール80g、THF400mlをフラスコ内に仕込み65℃で3時間撹拌した。得られた反応液減圧下濃縮を行った。残留物を1mmHgの減圧単蒸留を行いアクロイルイミド体、45gを得た。得られたアクロイルイミド体を2N-塩酸100mlに溶解させフラスコ内に仕込み、酢酸20mlを加え入れた。室温下4時間撹拌し、反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を減圧下、濃縮をおこなった。得られた在留物を酢酸エチル溶媒を用いてカラムクロマトを行った。得られたフラクションを減圧下濃縮し在留物を酢酸エチル溶媒を用いて再結晶を行ったところ白色結晶を30g収得した。同様の合成法でメタクリルアミド30.5gを原料に用いて32gの目的物を収得した。この化合物の質量分析NMR分析の結果は標題化合物をよく指示した。

0059

実施例2
〔ポリN-アセチルアクリルアミドの合成とその物性〕窒素ガス雰囲気下N-アセチルアクリルアミド1.0g、AIBN10mgをエタノールに溶解させフラスコ内に仕込み、75℃で3時間撹拌を行った。析出したポリマーを濾過し、エタノールで十分洗浄した後、減圧下室温で乾燥させたところ、850mgの白色固体を得た。

0060

このポリマー50mgを10%、20%、30%エタノール溶液5mlにそれぞれ一旦加熱溶解した後、冷却し均一な白濁液の状態で加温時の透明点を測定したところ、それぞれ38.5℃、39.4℃、41.9℃、透明点に達した後、降温時の凝集温度をそれぞれ測定したところ44.7℃、45.2℃、50.2℃でUCSTが観測され、この温度による`溶解、沈殿現象は何度でも可逆的に行われた。なお、転移温度の測定は可視光透過率で測定した。また、転移温度の範囲(加湿時は透過率2〜100%。降温時は98〜0%に達するまでの温度範囲)はエタノール濃度によりそれぞれ異なるが、2〜6℃と非常に鋭いものであった。

0061

実施例3
〔ポリ-N-アセチルメタクリルアミドの合成とその物性〕窒素ガス雰囲気下N-アセチメタクリルアミド1.0g、AIBN10mgをエタノールに溶解させフラスコ内に仕込み、75℃で3時間撹拌を行った。析出したポリマーを濾過し、エタノールで十分洗浄した後、減圧下室温で乾燥させたところ、810mgの白色固体を得た。このポリマー50mgを5mlの1N-水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、0.1N-塩酸を滴下した。その結果pH10.3以上で溶解、それ以下で沈殿を繰り返すpH応答性高分子であることが確認された。

0062

実施例4
〔N-アセチルメタクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド共重合高分子の合成とその物性〕窒素ガス雰囲気下N-アセチメタクリルアミド1.0g、N-イソプロピルアクリルアミド1.0g、AIBN10mgをエチレングリコールジメチルエーテル10mlに溶解させフラスコ内に仕込み、75℃で3時間撹拌を行った。析出したポリマーを濾過し、エタノールで十分洗浄した後、減圧下室温で乾燥させたところ、1.1gの白色固体を得た。このポリマー50mgをそれぞれpH=1、5、7、10、12の緩衝液5mlに溶解し、LCSTを測定したところ、52、48、48、35、32℃であった。転移温度の範囲(透過率98〜0%に達するまでの温度範囲)はpHによりそれぞれ異なるが、1.5〜6℃と非常に鋭いものであった。

0063

比較例1
〔ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)の合成と物性〕窒素ガス雰囲気下N-イソプロピルアクリルアミド1.0g、AIBN5mgをエチレングリコールジメチルエーテル5mlに溶解させフラスコ内に仕込み、75℃で3時間撹拌を行った。得られた反応液をシクロヘキサン/酢酸エチル=10/1の混合溶媒再沈を行い0.6gの白色固体を得た。このポリマー50mgをそれぞれpH=1、5、7、10、12の緩衝液5mlに溶解し、LCSTを測定したところpHに殆ど依存することなく、約30℃であった。

0064

実施例5
〔N-メタクロイルカルバミン酸トリフルオロエチルの合成(化学式ロ)〕

0065

0066

フラスコ内にメタクロイルイソシアネート4mlをTHF50mlに溶解し、窒素雰囲気下−40℃で2,2,2-トリフルオロエタノール10mlを滴下した。滴下終了後室温で1時間撹拌した。減圧下溶媒を留去し、酢酸エチルを展開溶媒に用いて残留物をシリカゲルカラムクロマトを行った。得られたフラクションを濃縮し、酢酸エチル溶媒を用いて再結晶を行い、4.0gの白色結晶を得た。

0067

NMR分析を測定したところ、下記の通り、標題化合物を良く指示した。NMR分析値:δ2.00(s,3H)、δ4.52(qr,2H)、δ5.65(s,1H)、δ5.96(s,1H)、δ8.68(s,1H)

0068

実施例6
〔ポリ-N-メタクロイルカルバミン酸トリフルオロエチルの合成とその物性〕窒素ガス雰囲気下N-メタクロイルカルバミン酸トリフルオロエチル1.0g、AIBN10mgをエタノールに溶解させフラスコ内に仕込み、75℃で3時間撹拌を行った。析出したポリマーを濾過し、エタノールで十分洗浄した後、減圧下室温で乾燥させたところ、520mgの白色固体を得た。このポリマー50mgを5mlの1N-水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、0.1N-の塩酸を滴下した。その結果pH10.5以上で溶解、それ以下で沈殿を繰り返すpH応答性高分子であることが確認された。

0069

実施例7
〔N-メタクロイル-N-メチルウレアの合成(化学式ハ)〕

0070

0071

フラスコ内にメタクロイルイソシアネート15mlをTHF100mlに溶解し、窒素雰囲気下−40℃で2mol/lのメチルアミンTHF溶液100mlを滴下した。滴下終了後室温で1時間撹拌した。減圧下溶媒を留去し、酢酸エチルを展開溶媒に用いて残留物をシリカゲルカラムクロマトを行った。得られたフラクションを濃縮し、酢酸エチル/エタノール=10/1の溶媒を用いて再結晶を行い、12gの白色結晶を得た。NMR分析で標題化合物を良く指示した。

0072

実施例8
〔ポリ- N-メタクロイル-N-メチルウレアの合成とその物性〕窒素ガス雰囲気下 N-メタクロイル-N-メチルウレア1.0g、AIBN10mgをエタノールに溶解させフラスコ内に仕込み、75℃で3時間撹拌を行った。析出したポリマーを濾過し、エタノールで十分洗浄した後、減圧下室温で乾燥させたところ、880mgの白色固体を得た。このポリマー50mgを5mlの1N-水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、0.1N-の塩酸を滴下した。その結果pH12.1以上で溶解、それ以下で沈殿を繰り返すpH応答性高分子であることが確認された。

0073

実施例9
イムノグロブリン分離用吸着材料の作成〕イムノグロブリンGを標的物質として、その分離を刺激応答性高分子と蛋白質を用いて検討した。刺激応答性高分子としてポリ-N-アセチルアクリルアミドを用い、蛋白質として特異的親和性を有するプロテインAを用いた。N-アクリロキシスクシンイミド1gと、N-アセチルアクリルアミド20gをAIBNを開始剤に用いてエチレングリコールジメチルエーテルを溶媒に用いて70℃で3時間重合し、析出した固体を濾過し、アセトンで十分洗浄した後、減圧乾燥させることにより、18gの共重合体を得た。

0074

この共重合体とプロテインA5gを37℃で蒸留水500mlに溶解させ、12時間攪拌を行った。反応後エタノールを10ml添加し、水溶液の温度を15℃にすることによりプロテインAを含む共重合体が析出した。この共重合体を濾過した後、5℃の蒸留水で十分リンスすることにより、プロテインAを含む刺激応答型分離材料を得た。

0075

窒素雰囲気下、この材料5gと5%マウス血漿水溶液1000mlを37℃で溶解し、攪拌を20分行った後、20mlのエタノールを加え入れ、10℃に冷却し固体を沈殿させた。得られた沈殿を飽和食塩水でリンスし、その洗浄液高速液体クロマトグラフィー分析したところ、純度92%のイムノグロブリンGが得られることを確認した。

発明の効果

0076

本発明によれば、上限臨界温度(UCST)を有する刺激応答性高分子、あるいは、水素イオン濃度又は溶媒添加による可逆的な溶解、沈殿を発生させる刺激応答性高分子を得ることができる。更に、上記刺激応答性高分子を用いることにより、特に高温環境が好ましくない標的物質の分離に有効な、優れた刺激応答型分離材料が得られる。

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