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技術 耐HIC性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板の製造方法

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 遠藤茂鈴木伸一諏訪稔村岡隆二
出願日 1997年9月5日 (23年3ヶ月経過) 出願番号 1997-256232
公開日 1999年3月26日 (21年8ヶ月経過) 公開番号 1999-080833
状態 未査定
技術分野 鋼の加工熱処理
主要キーワード 間欠冷却 空冷処理 強度水準 IC性能 耐サワー性能 基本元素 自己焼戻し 水量制御
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (5)

課題

APIX70、X80グレード高強度材で、耐HIC性に優れた鋼材を、経済的な製造方法での製造を可能とすることを課題とする。

解決手段

重量%で、C:0.03〜0.08%、Si:0.05〜0.50%、Mn:1.0〜1.9%、P:0.010%以下、S:0.002%以下、Nb:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.02%、Al:0.01〜0.07%、Ca:0.0005〜0.0040%を含有し、かつ、Ceq:0.32以上を満たし、残部がFe及びその他不可避的不純物からなる鋼片を、1000〜1200℃でスラブ加熱し、熱間圧延終了後鋼板加速冷却を、まず鋼板の表面温度が500℃以下となるまで行った後加速冷却を一旦中断し、鋼板の表面温度が500℃以上になるまで復熱させ、その後3℃/s以上50℃/s以下の冷却速度で再び鋼板を600℃以下の温度まで加速冷却することを特徴とする、耐HIC性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板の製造方法である。

概要

背景

一般に、硫化水素を含む原油天然ガス輸送に用いられるラインパイプには、強度、靭性溶接性などパイプラインとして必要な基本特性の他、耐水素誘起割れ性耐HIC性)や耐応力腐食割れ性(耐SSCC性)などの、いわゆる耐サワー性能が要求される。ここでHICとは、腐食反応により生成した水素イオン鋼材の表面に吸着し、原子状水素として鋼材の内部に侵入して、鋼中のMnSなどの非金属介在物や硬い第2相組織の周囲に拡散集積し、分子状の水素となり、その内圧により生ずる割れをいう。

このため、HICの発生を防ぐために、以下の方法がこれまでに開示されている。
1)MnS介在物形態制御(例えば、特開昭54−110119号公報)
鋼中のMnSは、圧延により長く伸ばされ、それに沿ってHICが発生、伝播することから、鋼中のS含有量下げ、同時に、CaやREMなどを適量含有させることにより、介在物の形態を、長く伸長したMnSから、応力集中の小さい微細に分散した球状に変えて、割れの発生と伝播を抑制する方法である。

2)偏析組織の軽減(例えば、特開昭61−60866号公報、特開昭61−165207号公報など)
HICは、連続鋳造スラブ中央偏析帯に対応する鋼板板厚中央部で発生することが多いことから、割れの起点となりうる硬い島状マルテンサイト等の組織の生成を抑制するとともに、割れの伝播経路となりやすいマルテンサイトベイナイトなどの硬化組織の生成を抑制し、耐HIC性の改善を図る方法である。

このために、C、Mn、Pなどの偏析しやすい元素を低減するほか、圧延前のスラブ加熱段階で合金元素の拡散を促進する均熱処理を採用したり、あるいは圧延後の冷却時に起こる変態に伴うCの拡散によって生ずる硬化組織の生成を防止するために加速冷却を採用する。

3)ミクロ組織の改善(例えば、特開昭54−12782号公報、特開昭62−7819号公報、特開平6−73450号公報)
圧延後に、焼入れ焼戻し熱処理を施したり、圧延仕上温度をオーステナイト再結晶温度以上として展伸粒を防止するなどして、割れ感受性の低いミクロ組織を得る。

4)保護皮膜の形成(例えば、特開昭52−111815号公報)
鋼にCuを含有させることにより、鋼材の表面にCu保護皮膜を形成し、鋼中への水素の侵入を抑制する。

これらの方法を採用することにより、耐HIC性は向上し、強度レベルAP規格X65グレードまでの、耐サワー性が求められるラインパイプが大量に生産されてきた。しかしながら、近年、輸送効率の向上やパイプの敷設費低減のために、より高強度の鋼管ニーズが高まり、サワー環境で使用されるラインパイプにも、X70、X80グレードという高強度鋼管が要求されるようになった。一方、HICは、強度の上昇とともにその割れ感受性が高まり、HICが発生しやすくなるため、上記の1)〜4)の方法では、HICの発生を完全に抑制することが困難になってきた。

すなわち、X70,X80グレードのような高強度材では、HICに対する割れ感受性が著しく高まるため、上記1)の形態制御を行った球状の介在物からも割れが発生する場合があり、また、2)の中央偏析の影響を軽減する対策を施しても、板厚中心部以外の部分でも割れが発生するようになる。一方、3)の焼入れ−焼戻し処理再結晶温度域以上での圧延仕上による組織制御は、高強度材では有力な方法であるが、ラインパイプ用鋼板大量生産にはコスト、能率の面から不適当であり、また、充分な低温靭性も得にくい。

さらに、4)のCu皮膜の効果も、pHの低い環境ではその効果が期待できず、実際にpHが約3の、硫化水素を飽和させた5%NaCl+0.5%CH3COOH水溶液通称NACE溶液)では、皮膜の効果が得られていない。

このような課題に対応すべく、最近、耐サワー性を有するX80グレードのラインパイプ用鋼板の製造方法がいくつか開示されている。その骨子は、極低S鋼にCaを添加して介在物の形態制御を行いつつ、低Cとともに、特に連続鋳造スラブの中央偏析帯に偏析しやすいMn含有量を制限し、それに伴う強度低下を、Cr添加で補う方法(特開平5−9575号公報)、Cr−Mo添加で補う方法(特開平5−271766号公報、特開平7−109519号公報)、あるいはNi−Cr−Mo添加で補う方法(特開平7−173536号公報)であり、いずれも圧延終了後に加速冷却を施している。

しかし、これらのX80グレード鋼板の製造方法に関する先行技術は、いずれも中央偏析帯のHICの発生を防止するのに有効な方法であるものの、中央偏析帯以外の部分で発生するHICの防止については、具体的な割れ対策とはなっていない。すなわち、サワー環境で使用される鋼管の強度水準が上昇すると、素材である鋼板の介在物の形態制御と板厚中心の中央偏析部の組織制御を行っても、HICが発生しやくなり、特に加速冷却を適用すると、中央偏析部だけでなく板厚方向の表面側にもHICが発生しやすくなり、このようなHICの発生防止が大きな課題となる。

概要

APIX70、X80グレードの高強度材で、耐HIC性に優れた鋼材を、経済的な製造方法での製造を可能とすることを課題とする。

重量%で、C:0.03〜0.08%、Si:0.05〜0.50%、Mn:1.0〜1.9%、P:0.010%以下、S:0.002%以下、Nb:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.02%、Al:0.01〜0.07%、Ca:0.0005〜0.0040%を含有し、かつ、Ceq:0.32以上を満たし、残部がFe及びその他不可避的不純物からなる鋼片を、1000〜1200℃でスラブ加熱し、熱間圧延終了後の鋼板の加速冷却を、まず鋼板の表面温度が500℃以下となるまで行った後加速冷却を一旦中断し、鋼板の表面温度が500℃以上になるまで復熱させ、その後3℃/s以上50℃/s以下の冷却速度で再び鋼板を600℃以下の温度まで加速冷却することを特徴とする、耐HIC性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板の製造方法である。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
2件

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請求項1

重量%で、C:0.03〜0.08%、Si:0.05〜0.50%、Mn:1.0〜1.9%、P:0.010%以下、S:0.002%以下、Nb:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.02%、Al:0.01〜0.07%、Ca:0.0005〜0.0040%を含有し、かつ、Ceq:0.32%以上を満たし、残部がFe及びその他不可避的不純物からなる鋼片を、1000〜1200℃でスラブ加熱し、熱間圧延終了後鋼板加速冷却を、まず鋼板の表面温度が500℃以下となるまで行った後加速冷却を一旦中断し、鋼板の表面温度が500℃以上になるまで復熱させ、その後3℃/s以上50℃/s以下の冷却速度で再び鋼板を600℃以下の温度まで加速冷却することを特徴とする、耐HIC性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板の製造方法。ここで、Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/15

請求項2

前記鋼が、さらに、重量%で、Cu:0.50%以下、Ni:0.50%以下、Cr:0.50%以下、Mo:0.50%以下、V:0.1%以下のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1記載の耐HIC性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板の製造方法。

請求項0001

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0002

一般に、硫化水素を含む原油天然ガス輸送に用いられるラインパイプには、強度、靭性溶接性などパイプラインとして必要な基本特性の他、耐水素誘起割れ性耐HIC性)や耐応力腐食割れ性(耐SSCC性)などの、いわゆる耐サワー性能が要求される。ここでHICとは、腐食反応により生成した水素イオン鋼材の表面に吸着し、原子状水素として鋼材の内部に侵入して、鋼中のMnSなどの非金属介在物や硬い第2相組織の周囲に拡散集積し、分子状の水素となり、その内圧により生ずる割れをいう。

背景技術

0003

このため、HICの発生を防ぐために、以下の方法がこれまでに開示されている。
1)MnS介在物形態制御(例えば、特開昭54−110119号公報)
鋼中のMnSは、圧延により長く伸ばされ、それに沿ってHICが発生、伝播することから、鋼中のS含有量下げ、同時に、CaやREMなどを適量含有させることにより、介在物の形態を、長く伸長したMnSから、応力集中の小さい微細に分散した球状に変えて、割れの発生と伝播を抑制する方法である。

0004

2)偏析組織の軽減(例えば、特開昭61−60866号公報、特開昭61−165207号公報など)
HICは、連続鋳造スラブ中央偏析帯に対応する鋼板板厚中央部で発生することが多いことから、割れの起点となりうる硬い島状マルテンサイト等の組織の生成を抑制するとともに、割れの伝播経路となりやすいマルテンサイトベイナイトなどの硬化組織の生成を抑制し、耐HIC性の改善を図る方法である。

0005

このために、C、Mn、Pなどの偏析しやすい元素を低減するほか、圧延前のスラブ加熱段階で合金元素の拡散を促進する均熱処理を採用したり、あるいは圧延後の冷却時に起こる変態に伴うCの拡散によって生ずる硬化組織の生成を防止するために加速冷却を採用する。

0006

3)ミクロ組織の改善(例えば、特開昭54−12782号公報、特開昭62−7819号公報、特開平6−73450号公報)
圧延後に、焼入れ焼戻し熱処理を施したり、圧延仕上温度をオーステナイト再結晶温度以上として展伸粒を防止するなどして、割れ感受性の低いミクロ組織を得る。

0007

4)保護皮膜の形成(例えば、特開昭52−111815号公報)
鋼にCuを含有させることにより、鋼材の表面にCu保護皮膜を形成し、鋼中への水素の侵入を抑制する。

0008

これらの方法を採用することにより、耐HIC性は向上し、強度レベルAP規格X65グレードまでの、耐サワー性が求められるラインパイプが大量に生産されてきた。しかしながら、近年、輸送効率の向上やパイプの敷設費低減のために、より高強度の鋼管ニーズが高まり、サワー環境で使用されるラインパイプにも、X70、X80グレードという高強度鋼管が要求されるようになった。一方、HICは、強度の上昇とともにその割れ感受性が高まり、HICが発生しやすくなるため、上記の1)〜4)の方法では、HICの発生を完全に抑制することが困難になってきた。

0009

すなわち、X70,X80グレードのような高強度材では、HICに対する割れ感受性が著しく高まるため、上記1)の形態制御を行った球状の介在物からも割れが発生する場合があり、また、2)の中央偏析の影響を軽減する対策を施しても、板厚中心部以外の部分でも割れが発生するようになる。一方、3)の焼入れ−焼戻し処理再結晶温度域以上での圧延仕上による組織制御は、高強度材では有力な方法であるが、ラインパイプ用鋼板大量生産にはコスト、能率の面から不適当であり、また、充分な低温靭性も得にくい。

0010

さらに、4)のCu皮膜の効果も、pHの低い環境ではその効果が期待できず、実際にpHが約3の、硫化水素を飽和させた5%NaCl+0.5%CH3COOH水溶液通称NACE溶液)では、皮膜の効果が得られていない。

0011

このような課題に対応すべく、最近、耐サワー性を有するX80グレードのラインパイプ用鋼板の製造方法がいくつか開示されている。その骨子は、極低S鋼にCaを添加して介在物の形態制御を行いつつ、低Cとともに、特に連続鋳造スラブの中央偏析帯に偏析しやすいMn含有量を制限し、それに伴う強度低下を、Cr添加で補う方法(特開平5−9575号公報)、Cr−Mo添加で補う方法(特開平5−271766号公報、特開平7−109519号公報)、あるいはNi−Cr−Mo添加で補う方法(特開平7−173536号公報)であり、いずれも圧延終了後に加速冷却を施している。

0012

しかし、これらのX80グレード鋼板の製造方法に関する先行技術は、いずれも中央偏析帯のHICの発生を防止するのに有効な方法であるものの、中央偏析帯以外の部分で発生するHICの防止については、具体的な割れ対策とはなっていない。すなわち、サワー環境で使用される鋼管の強度水準が上昇すると、素材である鋼板の介在物の形態制御と板厚中心の中央偏析部の組織制御を行っても、HICが発生しやくなり、特に加速冷却を適用すると、中央偏析部だけでなく板厚方向の表面側にもHICが発生しやすくなり、このようなHICの発生防止が大きな課題となる。

0013

本発明では、このようなAPI X70、X80グレードの高強度材で、耐HIC性に優れた鋼材を、経済的な製造方法での製造を可能とすることを課題とする。

0014

本発明者らは、高強度のラインパイプ用鋼合金成分、鋼板の製造条件、特に加速冷却条件を種々変化させ、鋼板の強度、靭性と耐HIC性との関係について調査を行った。その結果、X70、X80の高強度材においても、加速冷却は、中央偏析部の耐HIC性の改善に効果が認められる。しかし、従来の加速冷却方法では、鋼板表面近傍にベイナイト等の硬化組織が生成し硬さが上昇するため、これらの組織の境界部分でHICが発生しやすくなる。特に、X70、X80のような高強度材では、合金元素の添加量が多いため、この傾向は顕著である。一方、加速冷却方法をいわゆる間欠型とすることで、X70、X80グレードの高強度材においても、鋼板の表面近傍の硬さの上昇を抑制することができ、その結果、HICの発生を防止することが可能であることを見出した。

課題を解決するための手段

0015

すなわち、本発明の骨子は、加速冷却方法をいわゆる間欠型とすることにある。この方法を、従来の加速冷却方法と比較して、以下に説明する。図1及び図2は、従来の方法及び本発明の方法について、熱間圧延した鋼板の加速冷却過程温度履歴を、模式的に示したものである。

0016

従来の方法では、圧延鋼板に加速冷却を施すと、冷却は鋼板の表面及び裏面から行われるため、当然のことながら、板厚方向に温度分布を有しつつ、所定の加速冷却停止温度(一般的には500℃前後)まで加速冷却され、その後の空冷により、この温度分布を減少しつつ室温まで冷却される。従って、X70、X80グレードの高強度材では、この鋼板の表面近傍の速い冷却速度のため、表面側はベイナイトあるいはマルテンサイト変態しやすく、硬い組織を生じる。その結果、板厚中央部分のHICを防止できたにしても、表面側でHICが発生しやすくなる。

0017

一方、本発明の間欠型の加速冷却方法では、圧延後の最初の加速冷却により板厚方向に温度分布のついた鋼板を、一旦加速冷却を中断し、一定時間空冷する。この空冷処理により、まだ十分に冷え切っていない鋼板の中央部分が保有する熱により、鋼板表面側は温度が復熱し、温度分布の均一化が図られるとともに、表面側に生成した硬化組織は焼戻し処理を受ける。そして、復熱した温度域から、再度加速冷却を行って、所定の強度を得るものである。

0018

このときの加速冷却を中断する表面温度は、表面近傍での変態を充分に進行させるために、500℃以下であることが必要である。また、鋼板表面の復熱温度は、自己焼戻しによる表面の硬度を低下させるために、500℃以上とする必要がある。また、最終の加速冷却は、必要強度を確保するために、600℃以下まで行う。なお、このような間欠型の加速冷却における温度制御は、加速冷却装置を通過する鋼板の搬送速度、各冷却帯水量制御、途中での温度計測等により可能となるものである。

0019

以上の基本的考え方に加え、ラインパイプ用鋼として必要な高強度、高靭性、溶接性を得るために、化学成分等を限定して、以下の発明をなした。すなわち、第1の発明は、重量%で、C:0.03〜0.08%、Si:0.05〜0.50%、Mn:1.0〜1.9%、P:0.010%以下、S:0.002%以下、Nb:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.02%、Al:0.01〜0.07%、Ca:0.0005〜0.0040%を含有し、かつ、Ceq:0.32以上を満たし、残部がFe及びその他不可避的不純物からなる鋼片を、1000〜1200℃でスラブ加熱し、熱間圧延終了後の鋼板の加速冷却を、まず鋼板の表面温度が500℃以下となるまで行った後加速冷却を一旦中断し、鋼板の表面温度が500℃以上になるまで復熱させ、その後3℃/s以上50℃/s以下の冷却速度で再び鋼板を600℃以下の温度まで加速冷却することを特徴とする、耐HIC性に優れた高強度ラインパイプ用鋼の製造方法である。ここで、
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/15
本発明の、いわゆる間欠冷却型の加速冷却を採用することで、鋼板の表面近傍の硬度上昇を抑えつつ、所定の強度が得られ、これにより高強度材の耐HIC性を向上することを可能とするものである。

0020

第2の発明は、前記鋼が、さらに、重量%で、Cu:0.50%以下、Ni:0.50%以下、Cr:0.50%以下、Mo:0.50%以下、V:0.1%以下のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする、耐HIC性に優れた高強度ラインパイプ用鋼の製造方法である。本発明により、合金成分の選択の自由度が増すため、靭性、溶接性の一層の向上が可能となる。

0021

次に、本発明における合金成分ならびに鋼板の製造条件、加速冷却条件の限定理由を以下に述べる。まず本発明における必須元素の限定理由を以下に示す。

発明を実施するための最良の形態

0022

C:Cは鋼の強化元素として必要であり、X70,X80グレードの所定の強度を確保するためには、0.03%以上の含有が必要である。一方、過剰に含有すると、鋼板の靭性と耐HIC性の劣化を招くとともに、溶接性や耐硫化物応力腐食割れ性の観点からもC量の低減が望ましいため、その上限を0.08%とする。

0023

Si:Siは脱酸のために添加され、0.05%未満では充分な脱酸効果が得られず、一方過剰な含有は靭性や溶接性の劣化を引き起こすため、その上限を0.50%とする。

0024

Mn:Mnは鋼の強度および勒性の向上に有効な基本元素として含有されるが、1.0%未満ではその効果が小さく、また1.9%を超えると溶接性と耐HIC性が著しく劣化するため、その範囲を1.0〜1.9%とする。なお、Mnは中央偏析部に偏析しやすいため、その上限の含有量をより低く制限する先行技術もあるが、本発明の範囲内であれば、加速冷却条件を最適化することにより、その弊害を防止できる。

0025

P:Pは溶接性と耐HIC性とを劣化させる不純物元素であり、極力低減することが望ましい。しかし、過度の脱Pは製造コストの上昇を招くため、その上限を0.010%とする。

0026

S:Caを含有して、介在物を伸びたMnSから球状のCaS系に形態制御を行ったとしても、高強度材の場合には、微細に分散したCaS系介在物も割れの起点となり得る。従って、S含有量は0.002%以下にまで低減し、割れの起点を減ずる必要がある。

0027

Nb:Nbは、析出硬化による強度上昇に加えて、特に熱間圧延において、オーステナイトの再結晶を抑制し結晶粒の微細化を図ることから、ラインパイプ用鋼として充分な勒性を付与するために必須の成分である。しかし、0.005%未満ではその効果が十分でなく、また、0.05%を超えるとその効果がほぼ飽和するとともに溶接熱影響部の勒性を劣化させるため、その範囲を0.005〜0.05%とする。

0028

Ti:Tiは、TiNを形成しスラブ加熱時の粒成長を抑制し、組織の微細化をもたらすため勒性を改善する効果がある。しかし、0.005%未満ではその効果が不十分であり、一方0.02%を越えると逆に勒性の劣化を引き起こすため、その範囲を0.005〜0.02%とする。

0029

Al:Alは、ラインパイプ用鋼では主として、脱酸剤として含有される。含有量が0.01%未満ではその効果が安定せず、一方0.07%を超えると鋼の清浄性が低下して耐HIC性の劣化を引き起こすため、その範囲を0.01〜0.07%とする。

0030

Ca:Caは硫化物系介在物の形態制御に不可欠な元素であり、0.0005%以上でその効果が認められる。一方、0.0040%を超えると効果が飽和し、逆に鋼の清浄性を低下させて耐HIC性を劣化させるため、その範囲を0.0005〜0.0040%とする。

0031

Ceq:本発明の製造方法でX70グレード以上の強度を安定して得るためには、Ceqは0.32%以上が必要であるため、その下限を0.32%とする。なお、上限は、耐HIC性の点からは特に限定する必要はない。但し、溶接性の観点からは、Ceqは低いほど好ましいため、一般的には、強度と溶接性の要求とのバランスにより定められる。なお、Ceqは次式で示される。
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/15

0032

本発明では、上記元素の他に、下記元素を含有することができる。その限定理由を以下に示す。Cu:Cuは靭性の改善と強度の上昇に有効な元素の1つであるが、含有量が0.50%を超えと、圧延時のCu疵が発生しやすくなることから、その上限を0・50%とする。

0033

Ni:Niは靭性の改善と強度の上昇に有効な元素の1つであるが、含有量が0.50%を超えるとその効果が飽和するとともに、サワー環境での応力腐食割れが発生しやすくなるため、その上限を0.50%とする。

0034

Mo:Moは靭性の改善と強度の上昇に有効な元素の1つであるが、含有量が0.50%を超えるとその効果が飽和するとともに、溶接性や耐HIC性を阻害するため、その上限を0.50%とする。

0035

Cr:Crは、Moとともに、低C系のX70、80グレードとして充分な強度を得るために有効な元素であるが、含有量が0.50%を超えると、溶接性を害するために、その上限を0.50%とする。

0036

V:適量のVの含有は勒性、溶接性、耐サワー性を劣化させずに強度を高めることができるため、低C系のX70、80グレードとして充分な強度を得るために有効な元素である。しかし、0.10%を越えると溶接性を著しく損なうため、上限を0.10%とする。

0037

次に圧延条件、加速冷却条件の限定理由を述べる。
スラブ加熱温度:1000〜1200℃とする。
スラブ加熱温度が1000℃を下回ると、Nbの固溶が不十分となり,析出効果が小さく充分な強度が得られない。また加熱温度が1200℃を超えると、オーステナイト結晶粒が粗大化するため、良好な靭性が得られない。なお、圧延終了温度は特に限定しないが、低温度域での過度な圧下は、耐HIC性の点で好ましくないので、Ar3変態温度以上であることが望ましい。

0038

加速冷却を中断する表面温度:500℃以下とする。
加速冷却を表面温度が500℃を上回る温度で中断すると、表面近傍での変態が充分に進行していないため、復熱後の再度の加速冷却時に、ベイナイトなどの組織に変態する。従って、加速冷却を中断し復熱させることにより、鋼板の表面近傍の硬度低下を図る、本発明の骨子を達成できないため、加速冷却を中断する温度は、500℃以下とする。

0039

一方、加速冷却が中断する表面温度が低温すぎると、板厚中央部も過冷却されるため、その後の復熱が十分に行われない。従って、加速冷却中断時の表面温度は、復熱温度500℃以上が確保される温度以上である必要がある。具体的には、鋼板の板厚、冷却方式により定まる、鋼板の表面と板厚中央部の冷却曲線を考慮して設定される。

0040

表面の復熱温度:500℃以上とする。
復熱は、加速冷却により表面温度を500℃以下まで冷却し、表面近傍をベイナイト変態させ、その後鋼板の板厚中央部が保有する熱により、自己焼戻しさせることで、表面の硬度を低下させる意味を持つ。従って、表面の復熱温度が500℃未満では、変態した表層部分の焼戻しが十分でないため、硬さが低下せず、HICの発生原因となるので、表面復熱温度を500℃以上とする。

0041

加速冷却停止温度:600℃以下とする。
最終的な加速冷却は、板厚全体で所定の強度を確保するために行うものであり、加速冷却の停止温度が600℃を超えると充分な強度が得られない場合があるので、加速冷却の冷却停止温度は600℃以下とする。なお、本発明においては、いわゆる間欠型の加速冷却を行うため、表面近傍に過剰に硬化される部分は生成されない。従って、加速冷却停止温度は、600℃以下であれば、特に制限を加える必要はない。すなわち、常温まで加速冷却で冷却することも許容される。

0042

冷却速度:3℃/s以上50℃/s以下とする。
冷却速度が3℃/s未満では、加速冷却による組織変化が十分でないため、所定の強度が得られない場合がある。また、50℃/sを超えると、マルテンサイト組織を生じ、強度が上昇しすぎるため、耐HIC性の劣化をまねく。従って、冷却速度はを3℃/s以上50℃/s以下とする。

0043

上記の製造条件を満たすかぎり、耐HIC性の優れた高強度鋼を製造できるので、その他の鋼板の圧延条件は特に限定されない。また、鋼管の成型方法も冷間であるかぎり特に限定されない。

0044

以下に、本発明で得られた実施例を、発明鋼を比較鋼と対比して説明する。図3として示す表1は、供試鋼の化学成分を示したものである。ここで、鋼A〜Kは本発明の化学組成の範囲にある鋼である。これに対し、鋼LはCeq、鋼OはMn含有量及びCeq、鋼QはNb含有量が、各々本発明の範囲を下回る。また、鋼NはC含有量、鋼PはP及びS含有量、鋼RはCa含有量及びNi含有量が、各々本発明の範囲を上回る。さらに、鋼Mは本発明に対しC含有量が下回り、Mn含有量が上回るものである。

0045

これらの鋼について、図4として示す表2に示した、熱間圧延及び加速冷却の条件で、板厚25mmの鋼板を製造した。鋼板の機械的性質と鋼板表面と板厚中央部の硬度差、耐HIC性、溶接性の結果を表2に併せて示す。強度、靭性については、本発明鋼の適用を考えて、降伏強さ448MPa以上、シヤルピー衝撃試験での破面遷移温度が一60℃以下の場合を良好とした。また、鋼板の機械的性質と鋼板表面と板厚中央部の硬度差は、表面から0.5mmの位置における硬さ(Hv10)と板厚中央部の硬さを各々5点測定し、その平均値の差より求めた。

0046

HIC試験はpHが約3の硫化水素を飽和させた5%NaCl+0.5%CH3COOH水溶液(通称NACE溶液)中で行い、割れ長さ率(CLR)が15%以下の場合を、耐HIC性は良好と判断した。

0047

また溶接性は、溶接性は、実鋼管のシーム溶接に相当するサブマージアーク溶接を行い、溶接高温割れ低温割れの有無を溶接部断面観察により調査した。溶接部に割れの発生の無い場合を、溶接性は良好と判断した。

0048

表2に示されるように、本願発明の鋼に本願発明の熱間圧延及び加速冷却を行ったものは、充分な強度、靭性と良好な耐HIC性能、溶接性が得られている。一方、本願発明の鋼Aを用いても、本願発明の熱間圧延及び加速冷却を行わない鋼板(A−1、A−2、A−3、A−5、A−6)では充分な性能が得られていない。

0049

すなわち、A−1は、加熱温度が低温の場合であり強度が不十分である。A−2は、加熱温度が高温の場合であり、十分な強度が得られるものの、靭性が不足している。A−3は、復熱温度が低温であるため、鋼板の表面−板厚中心部での硬度差が大きく、HIC性能が不十分である。A−5は、加速冷却の冷却速度が極めて速い場合であり、この場合も、鋼板の表面−板厚中心部での硬度差が大きく、HIC性能が不十分である。また、A−6は、加速冷却の冷却速度が遅い場合であり、強度が不足している。

0050

一方、本願発明でない鋼に本願発明の圧延加速冷却を行った鋼板(L−1、Q、−1、R−1)、あるいは、本願発明でない鋼に本願発明でない圧延加速冷却を行った鋼板(M−1、N−1、0−1、P−1)では充分な性能が得られていない。

0051

すなわち、Ceqが本願発明の範囲を下回る鋼板L−1は強度が不十分、Nbを含有しない鋼板Q−1は靭性が不十分であり、Ca含有量及びNi含有量が本願発明の範囲を上回る鋼板R−1は、耐HIC性と溶接性が良くない。また、Mn含有量が高く、加熱温度が高温である鋼板M−1は、靭性、耐HIC性、溶接性が良くない。C含有量が高く、加速冷却中断温度が高温である鋼板N−1は、耐HIC性、溶接性が良くない。Mn含有量とCeqが低く、復熱温度が低温である鋼板O−1は、強度、耐HIC性、溶接性が不十分である。さらに、P及びSが高く、最終の加速冷却停止温度が高温である鋼板P−1は、強度と耐HIC性が不十分である。

0052

本発明により、耐HIC性に優れたAPI規格X70、X80グレードの高強度ラインパイプ用鋼板を、経済的にかつ安定して製造することが可能となった。その結果、硫化水素を含有するサワー環境において、HICに対する安全性とともに、応力が付加された状態における応力腐食割れに対する信頼性も著しく向上する。

発明の効果

0053

図1従来の加速冷却法について、熱間圧延後の加速冷却過程の温度履歴を、模式的に示した図である。
図2本発明の方法について、熱間圧延後の加速冷却過程の温度履歴を、模式的に示した図である。
図3本発明の実施例及び比較例に用いた供試鋼の化学成分を、表1として示す図である。
図4供試鋼板熱間圧延条件、加速冷却条件、及び機械的性質、耐HIC性、溶接性の結果を表2として示す図である。

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