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技術 熱間鍛造型肉盛溶接用コバルト基合金

出願人 トヨタ自動車株式会社
発明者 野口政光五島利夫
出願日 1998年3月24日 (22年9ヶ月経過) 出願番号 1998-075564
公開日 1999年3月23日 (21年9ヶ月経過) 公開番号 1999-077375
状態 未査定
技術分野 溶接材料およびその製造
主要キーワード 肉盛部分 機械的荷重 肉盛性 熱間鍛造成形 スライス切断 耐損傷性 損傷形態 材料流れ
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(1999年3月23日)のものです。
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図面 (12)

課題

解決手段

この熱間鍛造型肉盛溶接用コバルト基合金は、重量%で、C:0.35〜1.10%、Si:≦1.5%、Mn:≦1.5%、Ni:≦3.0%、Cr:26.0〜32.0%、Mo:0.5〜6.0%、W:0.5〜6.0%含有し、残部Co及び不可避不純物からなる。この合金は熱間鍛造型に肉盛される。

概要

背景

熱間鍛造は、鍛造型を用い、高温状態例えば1000〜1200°Cに加熱した金属素材(一般的には鋼系)を鍛造型にセットし、その後、機械的もしくは油圧などの加圧手段により金属素材を鍛造型で高圧成形する技術である。熱間鍛造は、生産効率経済性高強度化に優れた成形法であることから、自動車部品等の生産に広く適用されている。

上記したように熱間鍛造は、高温状態に加熱した金属素材を加圧し、しかも極く短時間で成形する技術であるため、熱間鍛造型は過酷な機械的応力熱的応力とを受ける。そのため熱間鍛造型に対する要求特性は厳しい。一般的には、熱間鍛造型には次の(1)〜(3)が要請される。とりわけ、(3)に対する要請が強い。
(1)過酷な機械的圧力と熱的応力との負荷に耐えるべく、強度、特に高温における強度(疲労強度、硬さ)と靱性とが優れていること。
(2)高温・高圧における材料流れなどに耐えるべく、加熱軟化抵抗に優れるとともに、耐摩耗性特に高温耐摩耗性が優れていること。
(3)熱サイクルによる耐ヒートチェック性が優れていること。ヒートチェックとは、亀のに類似した微小亀裂を意味する。

一般的には、熱間鍛造型において観察される主要な損傷形態は、型の摩耗損傷、型のヒートチェック損傷、型の割れ破壊損傷などである。上記した型の摩耗損傷は、高温に加熱された金属素材が成形される際に、型表面部で金属素材が塑性流動することや、金属素材の加熱により形成された硬さの高い表面酸化層が型表面部で摺動することに起因する型表面部の損傷現象であると、一般的には言われている。

また、型のヒートチェック損傷は、熱間鍛造に起因する金型表面の加熱・冷却の繰り返しによる熱疲労現象に起因するといわれ、一種の高温塑性疲労現象であると考えられることから、衝撃強度が高く靱性が良好であり、しかも室温から作動温度までの強度(ほぼ硬さで代用できる特性)が高い程、ヒートチェック損傷は改善されると、一般的には言われている。

また型の割れ破壊は、熱間鍛造成形に伴う機械的荷重・熱的応力の繰り返し負荷により破壊する場合と、金型材料の靱性不足により脆性破壊する場合とがあるが、最近は材料進歩や設計技術の進歩により型の割れ破壊により鍛造型が寿命となるケースは少なくなっている。上記した実情を考慮し、熱間鍛造型を構成する材料としては、上記した損傷形態に抵抗性をもつ材料、代表的には、JIS−SKD61系の熱間加工合金が採用されている。しかし熱間鍛造型を構成する材料は、通常、鍛錬材であることから、靱性に優れている反面、高温硬さは必ずしも高くなく、優れた高温耐摩耗性を確保するには限界がある問題点があった。

そこで、上記した熱間鍛造型における損傷形態に対する対策として、熱間鍛造型の摩耗の損傷が著しい部位にステライト系の合金の肉盛処理を部分的に行うことが、従来より試みられている。ここでステライト系合金は、Co−Crを主要組成とする合金であり、高温において優れた耐変形性耐酸化性を備えている。特に優れた耐摩耗性を確保するためには、ステライトNo.6、ステライトNo.20、ステライトNo.21などが肉盛合金として使用される。

更に従来技術として、特開昭62−289397号公報には、肉盛用ステライト系Co基合金が開示されている。この肉盛用Co基合金は、重量%で、C:0.7〜3.0%、Si:≦2%、Mn:≦2%、Ni:≦3.0%、Cr:23〜32%、Mo:1越〜7%、W:6.5越〜14%、Fe:≦5%、残部実質的にCoの組成をもつと規定されている。この肉盛用Co基合金は、W量がかなり多めである。

更に特開昭55−76036号公報には、内燃機関エンジンバルブ及びバルブシートの肉盛用Co基合金が開示されている。この肉盛用Co基合金は、重量%で、C:1.0〜3.5%、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:20〜35%、W:5〜20%、Fe10〜30%、残部実質的にCoの組成をもつと規定されており、C、W、Fe量が多い。

概要

肉盛性及び肉盛後の耐損傷性が良好な熱間鍛造型肉盛溶接用コバルト基合金を提供する。

この熱間鍛造型肉盛溶接用コバルト基合金は、重量%で、C:0.35〜1.10%、Si:≦1.5%、Mn:≦1.5%、Ni:≦3.0%、Cr:26.0〜32.0%、Mo:0.5〜6.0%、W:0.5〜6.0%含有し、残部Co及び不可避不純物からなる。この合金は熱間鍛造型に肉盛される。

目的

更にステライト系合金の改良として、種々のCo基合金が提案されているが、熱間鍛造型で使用する肉盛を考慮して組成決定されているものではないため、上記した肉盛性と高温耐摩耗性との両立には必ずしも充分ではない。本発明は上記した実情に鑑みなされたものであり、請求項1の課題は、湯流れ性溶着肉盛性、耐溶接割れ性といった肉盛性を良好にしつつ、高温耐摩耗性を良好に確保するのに有利な熱間鍛造型肉盛溶接用コバルト基合金を提供することにある。

請求項2の課題は、肉盛性を確保した上で、高温耐摩耗性を緩和させつつ、そのぶん靱性を大幅に向上させ、これにより優れた耐ヒートチェック性を得るのに有利な熱間鍛造型肉盛溶接用コバルト基合金を提供することにある。請求項3の課題は、肉盛性を確保した上で、高温耐摩耗性と靱性とをバランスさせ、これにより高温耐摩耗性を確保しつつ耐ヒートチェック性を向上させるのに有利な熱間鍛造型肉盛溶接用コバルト基合金を提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
2件

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請求項1

重量%で、C:0.35〜1.10%、Si:≦1.5%、Mn:≦1.5%、Ni:≦3.0%、Cr:26.0〜32.0%、Mo:0.5〜6.0%、W:0.5〜6.0%含有し、残部Co及び不可避不純物からなることを特徴とする熱間鍛造肉盛溶接用コバルト基合金

請求項2

重量%で、C:0.35〜0.65%、Mo:0.5〜2.0%、W:0.5〜2.0%であることを特徴とする請求項1に記載の熱間鍛造型肉盛溶接用コバルト基合金。

請求項3

重量%で、C:0.80〜1.10%、Mo:0.5〜2.0%、W:2.0〜4.0%であることを特徴とする請求項1に記載の熱間鍛造型肉盛溶接用コバルト基合金。

技術分野

0001

本発明は熱間鍛造肉盛溶接用コバルト基合金に関する。

背景技術

0002

熱間鍛造は、鍛造型を用い、高温状態例えば1000〜1200°Cに加熱した金属素材(一般的には鋼系)を鍛造型にセットし、その後、機械的もしくは油圧などの加圧手段により金属素材を鍛造型で高圧成形する技術である。熱間鍛造は、生産効率経済性高強度化に優れた成形法であることから、自動車部品等の生産に広く適用されている。

0003

上記したように熱間鍛造は、高温状態に加熱した金属素材を加圧し、しかも極く短時間で成形する技術であるため、熱間鍛造型は過酷な機械的応力熱的応力とを受ける。そのため熱間鍛造型に対する要求特性は厳しい。一般的には、熱間鍛造型には次の(1)〜(3)が要請される。とりわけ、(3)に対する要請が強い。
(1)過酷な機械的圧力と熱的応力との負荷に耐えるべく、強度、特に高温における強度(疲労強度、硬さ)と靱性とが優れていること。
(2)高温・高圧における材料流れなどに耐えるべく、加熱軟化抵抗に優れるとともに、耐摩耗性特に高温耐摩耗性が優れていること。
(3)熱サイクルによる耐ヒートチェック性が優れていること。ヒートチェックとは、亀のに類似した微小亀裂を意味する。

0004

一般的には、熱間鍛造型において観察される主要な損傷形態は、型の摩耗損傷、型のヒートチェック損傷、型の割れ破壊損傷などである。上記した型の摩耗損傷は、高温に加熱された金属素材が成形される際に、型表面部で金属素材が塑性流動することや、金属素材の加熱により形成された硬さの高い表面酸化層が型表面部で摺動することに起因する型表面部の損傷現象であると、一般的には言われている。

0005

また、型のヒートチェック損傷は、熱間鍛造に起因する金型表面の加熱・冷却の繰り返しによる熱疲労現象に起因するといわれ、一種の高温塑性疲労現象であると考えられることから、衝撃強度が高く靱性が良好であり、しかも室温から作動温度までの強度(ほぼ硬さで代用できる特性)が高い程、ヒートチェック損傷は改善されると、一般的には言われている。

0006

また型の割れ破壊は、熱間鍛造成形に伴う機械的荷重・熱的応力の繰り返し負荷により破壊する場合と、金型材料の靱性不足により脆性破壊する場合とがあるが、最近は材料進歩や設計技術の進歩により型の割れ破壊により鍛造型が寿命となるケースは少なくなっている。上記した実情を考慮し、熱間鍛造型を構成する材料としては、上記した損傷形態に抵抗性をもつ材料、代表的には、JIS−SKD61系の熱間加工合金が採用されている。しかし熱間鍛造型を構成する材料は、通常、鍛錬材であることから、靱性に優れている反面、高温硬さは必ずしも高くなく、優れた高温耐摩耗性を確保するには限界がある問題点があった。

0007

そこで、上記した熱間鍛造型における損傷形態に対する対策として、熱間鍛造型の摩耗の損傷が著しい部位にステライト系の合金の肉盛処理を部分的に行うことが、従来より試みられている。ここでステライト系合金は、Co−Crを主要組成とする合金であり、高温において優れた耐変形性耐酸化性を備えている。特に優れた耐摩耗性を確保するためには、ステライトNo.6、ステライトNo.20、ステライトNo.21などが肉盛合金として使用される。

0008

更に従来技術として、特開昭62−289397号公報には、肉盛用ステライト系Co基合金が開示されている。この肉盛用Co基合金は、重量%で、C:0.7〜3.0%、Si:≦2%、Mn:≦2%、Ni:≦3.0%、Cr:23〜32%、Mo:1越〜7%、W:6.5越〜14%、Fe:≦5%、残部実質的にCoの組成をもつと規定されている。この肉盛用Co基合金は、W量がかなり多めである。

0009

更に特開昭55−76036号公報には、内燃機関エンジンバルブ及びバルブシートの肉盛用Co基合金が開示されている。この肉盛用Co基合金は、重量%で、C:1.0〜3.5%、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cr:20〜35%、W:5〜20%、Fe10〜30%、残部実質的にCoの組成をもつと規定されており、C、W、Fe量が多い。

発明が解決しようとする課題

0010

上記したように熱間鍛造型に肉盛されるステライト系合金は、高温において優れた耐変形性、耐酸化性を備えているものの、湯流れ性溶着肉盛性耐溶接割れ性といった肉盛性と肉盛後の高温耐摩耗性との双方を確保することは困難であった。

0011

更にステライト系合金の改良として、種々のCo基合金が提案されているが、熱間鍛造型で使用する肉盛を考慮して組成決定されているものではないため、上記した肉盛性と高温耐摩耗性との両立には必ずしも充分ではない。本発明は上記した実情に鑑みなされたものであり、請求項1の課題は、湯流れ性、溶着肉盛性、耐溶接割れ性といった肉盛性を良好にしつつ、高温耐摩耗性を良好に確保するのに有利な熱間鍛造型肉盛溶接用コバルト基合金を提供することにある。

0012

請求項2の課題は、肉盛性を確保した上で、高温耐摩耗性を緩和させつつ、そのぶん靱性を大幅に向上させ、これにより優れた耐ヒートチェック性を得るのに有利な熱間鍛造型肉盛溶接用コバルト基合金を提供することにある。請求項3の課題は、肉盛性を確保した上で、高温耐摩耗性と靱性とをバランスさせ、これにより高温耐摩耗性を確保しつつ耐ヒートチェック性を向上させるのに有利な熱間鍛造型肉盛溶接用コバルト基合金を提供することにある。

課題を解決するための手段

0013

第1発明に係る熱間鍛造型肉盛溶接用コバルト基合金は、重量%で、C:0.35〜1.10%、Si:≦1.5%、Mn:≦1.5%、Ni:≦3.0%、Cr:26.0〜32.0%、Mo:0.5〜6.0%、W:0.5〜6.0%含有し、残部Co及び不可避不純物からなることを特徴とするものである。

0014

第1発明に係る合金によれば、重量%で、C:0.4〜0.9%、Si:≦1.5%、Mn:≦1.5%、Ni:≦3.0%、Cr:26.0〜32.0%、Mo:0.9〜6.0%、W:1.0〜6.0%含有し、残部Co及び不可避の不純物からなること組成にすることもできる。第2発明に係る熱間鍛造型肉盛溶接用コバルト基合金は、請求項1において、重量%で、C:0.35〜0.65%、Mo:0.5〜2.0%、W:0.5〜2.0%であることを特徴とするものである。

0015

第3発明に係る熱間鍛造型肉盛溶接用コバルト基合金は、請求項1において、重量%で、C:0.80〜1.10%、Mo:0.5〜2.0%、W:2.0〜4.0%であることを特徴とするものである。

発明を実施するための最良の形態

0016

以下、本発明に係る熱間鍛造型肉盛溶接用コバルト基合金における成分限定理由について詳述する。
(1)CはCr、Mo、Wと結合して炭化物を形成し、それによって高温強度(高温硬さ)及び加熱軟化抵抗を改善する。しかし炭素が少なすぎると肉盛性を低下させ、過剰に多いと肉盛性は向上するものの靱性を低下させる傾向がある。従ってCは0.35〜1.10%とした。例えば0.4〜0.9%にできる。

0017

ここで第2発明の合金のように、靱性を一層向上させ耐ヒートチェック性を一層向上させる合金では、0.35〜0.65%のように炭素を少な目にできる。また第2発明の合金のように、高温耐摩耗性及び靱性をバランスさせる合金では、0.80〜1.10%のように炭素を多めにできる。なお本明細書では、特に明記していない%は重量%を意味する。
(2)Siは脱酸剤として有効であり肉盛性を改善するが.含有量が多いと靱性を低下させ易いことから、1.5%以下とした。ここで要求特性に応じてSiの上限値は1.4%、Siの下限値は1.1%にできるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
(3)Mnはオーステナイトを安定化し、また、脱酸剤としても有効であり肉盛性を改善するが、含有量が多いと靱性を低下させ易いことから、1.5%以下とした。ここで要求特性に応じてMnの上限値は1.4%、Mnの下限値は1.1%にできるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
(4)本発明に係るコバルト基合金において、Niは基本的には不純物元素であると考えられる。3.0%以下であれば弊害は殆ど認められないが、3.0%を越えて添加すると靱性を低下させることから、3.0%以下とした。
(5)Crは高温における耐熱性及び耐食性を改善するとともに、溶接肉盛状態においてはCと反応して炭化物を形成して高温強度(高温硬さとしてほぼ代用できる)及び加熱軟化抵抗を改善する。従って、26.0%以上は必要である。しかし32.0%を越えて添加しても上述の改善効果の増大は少なく、むしろ高温においてσ相析出を促進し易いなど、靱性を低下させ易く、耐ヒートチェック性の確保で不利となり易いことから、Crは26.0〜32.0%とした。この範囲において要求特性に応じてCrの上限値は30%、Crの下限値は27%にできるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
(6)Mo及びWはそれぞれ、概ね類似した効果を有しており、Cと反応して炭化物を形成し、本発明に係るコバルト基合金の高温強度(高温における疲労強度及び高温における硬さ、疲労強度)及び加熱軟化抵抗を改善させる。しかしMoが0.5%未満、Wが0.5%未満では充分な改善効果が得られない。しかしMoやWが6.0%を越えると、溶接肉盛時に溶接割れを発生し易くなるなど肉盛性を低下させるばかりでなく、肉盛層の靱性、耐ヒートチェック性を低下させる。

0018

従って、Moは0.5〜6.0%、Wは0.5%〜6.0%とした。ここで要求特性に応じて、Moの上限値は3.0%,5.0%、Moの下限値は0.7%、1.0%にでき、Wの上限値は5.0%、Wの下限値は0.7%、1.0%にできるが、必ずしもこれに限定されるものではない。ここで好ましい態様では、Moは0.5〜2.0%、Wは0.5%〜2.0%にできる。
(7)Mo量とW量との和は本発明では特に限定されないが、次のようにすることが好ましい。

0019

(Mo+W)は共に、上記したようにCと反応して炭化物を形成し、本発明に係るコバルト基合金の高温強度(高温における疲労強度及び高温における硬さ)を改善させるが、(Mo+W)が1.9%未満では充分な改善効果が得られにくい。(Mo+W)が9.0%を越えると、肉盛性を低下させ溶接肉盛時に溶接割れを発生し易くなるばかりでなく、材料の靱性も低下させ易い。従って(Mo+W)は9.0%以下が好ましい。

0020

第2発明合金のように、靱性及び耐ヒートチェック性を一層向上させる合金では、(Mo+W)は1.0%〜3.0%が好ましい。第3発明合金のように、高温耐摩耗性と靱性とをバランスさせる合金では、(Mo+W)は2.0%〜5.0%が好ましい。
(8)Coは肉盛合金の高温硬さと耐酸化性を向上させる。使用条件コスト等を考慮した場合にはCoの一部をFeで置換することもできる。この場合にはFeは3.0%以下、2.0%以下に抑えることができるが、要求特性の如何によっては5.0%以下、10%未満にできる。
(9)本発明に係る合金の形態としては、棒状、ワイヤ状粉末状にできる。棒状の場合には、溶湯鋳型鋳造して棒状に形成できる。粉末状の場合には、溶湯をガスアトマイズ等のアトマイズ法により粉末状にできる。この場合には、粉体プラズマ溶接肉盛法等において使用できる。

0021

本発明に係る合金は、例えば、TIG溶接法、アーク溶接法ガス溶接法等の手段で肉盛できる。TIG溶接法の場合には、一般的には、次の条件で肉盛できる。即ち、相手材予熱温度が250〜350°C、アルゴン流量が10〜15リットル/min、溶接電流が80〜180Aにできる。但し、これらに限定されるものではない。

0022

本発明に係る合金が肉盛される熱間鍛造型の材質としては、一般的には炭素鋼合金鋼系であり、SKD61系の熱間加工用合金を採用できる。熱間鍛造型のうち肉盛する代表的な部位としては、その割面や成形キャビティ型面がある。割面では、バリが流れる部位に肉盛することができる。

0023

本発明合金〜、本発明合金〜を、従来合金〜と共に説明する。通常の高周波溶解炉を用いて、表1に示す組成をもつCo基合金の溶湯をそれぞれ調整した。次に、これらの各溶湯をシェルモ−ルド鋳型のキャビティ注湯し、直径4mmの丸棒材を鋳造した。

0024

従来合金はステライトNo.6に相当し、従来合金はステライトNo.20に相当し、従来合金はステライトNo.21に相当する。表1から理解できるように、本発明合金〜は、従来合金つまりステライトNo.20に比較すると、C及びWが少なく、Moが多い。また本発明合金〜は、従来合金つまりステライトNo.21に比較すると、Cが多く、且つWを含有する。

0025

表1から理解できるように、本発明合金〜は、本発明合金〜と組成がほぼ類似するものの、本発明合金〜よりもCが多めである。上記したように製造した丸棒材を肉盛用の溶接棒として用いる。更に、タングステン電極を用いると共に、図1及び図2に示す長溝2aをもつ金属体2(材質;SKD61)を用い、アルゴンガス雰囲気において、TIG溶接法により、長溝2aに肉盛溶接し、肉盛層4を形成した。これにより肉盛試験片6を製作した。なお金属体2は、長さLが200mm、幅Dが60mm、高さHが40mmである。

0026

TIG溶接法の基本条件は次のようである。即ち、金属体2の予熱温度が300°C、アルゴン流量が12リットル/min、溶接電流が90〜160Aとした。この肉盛試験片6の製作における肉盛性について評価した。具体的には、肉盛性として、湯流れ性、溶着肉盛性、耐溶接割れ性を評価した。

0027

湯流れ性は、肉盛時に作業者及び検査者の双方が肉眼観察で判定した。溶着肉盛性は、肉盛層4における溶け込み不良を光学顕微鏡で観察して判定した。耐溶接割れ性は、スライス切断の前に肉盛層4に浸透液を接触させるカラーチェック試験により肉盛層4における割れの有無を判定し、更に、スライス切断した試料の肉盛層4自体、肉盛層4と金属体2との境界について光学顕微鏡で観察して判定した。

0028

更に、この肉盛試験片6の肉盛層4のうち余剰肉盛部分を除去した後に、図3に示すように肉盛試験片6を厚みt1 、厚みt2 にてスライス切断し、試料S3〜S14を形成した。その後、試料S3〜S14のうち、所定の試料の肉盛層4について、室温硬さ(ビッカ−ス硬さ:荷重20kgf)を評価した。

0029

更に別の試料の肉盛層4について、700°Cの温度で4時間保持した加熱処理後の加熱軟化特性を評価した。更に別の試料について、800°Cの温度で4時間保持した加熱処理後の加熱軟化特性も評価した。この加熱軟化特性は、加熱後に常温に戻した試料の肉盛層4の硬さ(ビッカ−ス硬さ:荷重20kgf)で評価した。

0030

また別の試料の肉盛層4について、700°Cにおける高温硬さ(ビッカ−ス硬さ:荷重20kgf)を評価した。別の試料の肉盛層4について、800°Cにおける高温硬さ(ビッカ−ス硬さ:荷重20kgf)を評価した。更に別の試料から、図5仮想線で示すノッチ8c付きシャルピー衝撃試験片8(JIS−3号試験片)を形成し、シャルピー衝撃試験機により衝撃強度を評価した。

0031

(評価)各評価結果を表2に示す。表2において、◎印は優れていることを意味し、△は劣っていることを意味する。表2から理解できるように、肉盛性については、従来合金であるステライト系合金(No.6)、従来合金であるステライト系合金(No.20)では、湯流れ性が良好であるものの、耐溶接割れ性は良好でなかった。従来合金であるステライト系合金(No.21)では溶着肉盛性が良好であるものの、湯流れ性は良好でなかった。

0032

また、C量を除いて本発明合金〜と組成が類似する本発明合金〜では、耐溶接割れ性がやや低下していたが、湯流れ性及び溶着肉盛性は良好であった。これに対して本発明合金〜では、湯流れ性、溶着肉盛性、耐溶接割れ性がいずれも◎と良好であり、従来合金〜に比較して、良好なる湯流れ性と溶着肉盛性と耐溶接割れ性とを有していた。

0033

そればかりでなく本発明合金〜は、本発明合金と組成が類似する本発明合金〜と比較しても、湯流れ性と溶着肉盛性とはほぼ同等でありながら、耐溶接割れ性も◎と優れていた。次に、溶接肉盛部材として使用した場合における諸特性について比較する。表2に示すように、C量及びW量が多い従来合金(ステライトNo.20)は室温硬さ、加熱軟化後の硬さ、高温硬さ共に最も高いが、C含有量が2.2%と最も多いこともあって、衝撃強度が3.6〔J/cm2 〕と低く、靱性が著しく低いという欠点があり、従って従来合金は、熱間鍛造型に使用する溶接肉盛部材としては充分ではない。

0034

また、従来合金はC含有量が0.23%であり、低Cのステライト合金であることから、衝撃強度が比較的良好であるが、室温硬さ、加熱軟化硬さ、高温硬さは他のステライト系の従来合金に比較してかなり低くなっており耐摩耗性が充分ではなく、従って従来合金は、熱間鍛造型に使用する溶接肉盛部材としては充分ではない。

0035

また、従来合金はC含有量が1.0%であり、従来合金と従来合金との中間的なC含有量であることから、従来合金はほぼ両者の中間的な室温硬さ、加熱軟化硬さ、高温硬さを示しているものの、衝撃強度が6.1〔J/cm2 〕にすぎず本発明合金よりも低くく、熱間鍛造型に使用する溶接肉盛部材として充分なレベルに靱性が到達していないという問題がある。

0036

これに対して本発明合金〜は適度のC量であり、湯流れ性、溶着肉盛性、耐溶接割れ性といった肉盛性の評価は◎であり、肉盛性に優れているばかりでなく、室温硬さ、加熱軟化硬さ、高温硬さも肉盛溶接用コバルト基合金として適度のレベルを確保している。更に本発明合金〜は衝撃強度についても優れている。即ち、本発明合金は14.8〔J/cm2 〕、本発明合金は12.0〔J/cm2 〕、本発明合金は10.5〔J/cm2 〕、本発明合金は10.2〔J/cm2 〕とかなり高く、従って本発明合金〜は靱性(衝撃強度)が優れている。

0037

本発明合金〜については、室温硬さ、加熱軟化硬さ、高温硬さはいずれも良好なレベルを確保しており、更に本発明合金〜よりも高C含有量つまりC:0.9%以上であることから、高温硬さが得られ、高温耐摩耗性が向上し、高温耐摩耗性の要求が激しい部位に使用するに適する。但し本発明合金〜については、衝撃強度、靱性がやや低くなり、また、湯流れ性及び溶着肉盛性が◎であるが、耐溶接割れ性にやや劣る傾向がある。

0038

(第2発明、第3発明)さて本発明合金B−からB−は第2発明に相当するものであり、肉盛性を確保した上で、高温耐摩耗性をやや緩和するものの耐ヒートチェック性を一層向上させたものである。本発明合金B−からB−は、本発明合金B−からB−に対して類似した組成をもつものの、W、Mo量が異なるものである。本発明合金B−からB−についても、前述同様に試験した。

0039

また本発明合金C−からC−は第3発明に相当するものであり、肉盛性を確保した上で、高温耐摩耗性と耐ヒートチェック性とのバランスを狙ったものである。本発明合金C−からC−は、本発明合金C−からC−に対して類似した組成をもつものの、W、Mo量が異なるものである。本発明合金C−からC−についても、前述同様に試験した。

0040

上記した第2発明を含む本発明合金B−からB−、第3発明を含む本発明合金C−からC−の組成を表3に示す。その試験結果を表4に示す。第2発明を含む本発明合金B−からB−については、低C系であり、Mo、W等の元素が適量であり、表4から理解できるように、湯流れ性、溶着肉盛性、耐溶接割れ性といった肉盛性の評価がいずれも◎であり優れていた。更に本発明合金B−からB−は衝撃強度が良好であった。殊に、本発明合金B−からB−については、C、Mo、Wが適量であり、衝撃強度が15J/cm2 以上とかなり高く、靱性がきわめて優れていた。

0041

また第3発明を含む本発明合金C−からC−については、高C系であり、Mo、W等の元素が適量であり、表4から理解できるように、湯流れ性、溶着肉盛性の評価が◎であり、耐溶接割れ性は○であるものの、全体として肉盛性が良好であり、更に、加熱軟化硬さ、高温硬さも適度なレベルとなり、しかも衝撃強度、靱性が高く、その結果として耐ヒートチェック性が優れており、高温耐摩耗性及び耐ヒートチェック性を両立できた。

0042

上記した試験結果に基づいて、第2発明の組成及びそれに近似する組成をもつ本発明合金B−〜B−に関して、衝撃強度と(Mo+W)量との関係を求め、これを図6に示す。更に、800℃で加熱した後に常温に戻したとき硬さである加熱軟化硬さと(Mo+W)量との関係を図7に示す。その加熱軟化硬さと衝撃強度との関係を図8に示す。

0043

図6に示す特性によれば、第2発明の組成及びそれに類似する組成をもつ合金では、衝撃強度を高くするには(Mo+W)量が5.0%以下、殊に3.0%以下が好ましいことがわかる。図7に示す特性によれば、(Mo+W)量が増加するにつれて加熱軟化硬さが低下する傾向があるものの、(Mo+W)量を3.0%以下とした場合であっても、Hv350以上(荷重20kgf)の硬さが得られている。熱間鍛造型肉盛用コバルト基合金としては、加熱軟化硬さがHv350以上あれば、許容される。

0044

ちなみに、代表的な熱間鍛造型であるSKD61材によれば、加熱前の常温硬さはHv400程度であったものが、800℃で4時間加熱した後に常温に戻した硬さはHv200〜230程度であり、上記した肉盛合金よりも低い。更に、上記した試験結果に基づいて、第3発明の組成及びそれに類似する組成をもつ本発明合金C−〜C−に関して、衝撃強度と(Mo+W)量との関係を求め、これを図9に示す。更に、800℃で加熱したときの加熱軟化硬さと(Mo+W)量との関係を図10に示し、800℃で加熱したときの加熱軟化硬さと衝撃強度との関係を図11に示す。

0045

図9に示す特性によれば、衝撃強度を高くするには(Mo+W)量が8.0%以下、殊に5.0%以下が好ましいことがわかる。図10に示す特性によれば、(Mo+W)量が増加するにつれて加熱軟化硬さが低下する傾向があり、(Mo+W)量を5.0%以下とした場合には加熱軟化硬さがやや低下しているものの、Hv350以上(荷重20kgf)得られている。

0046

0047

0048

0049

ID=000006HE=230 WI=108 LX=0510 LY=0300
なお本発明合金に係る組成の各元素は、各表に示した本発明合金に相当する含有量またはその付近の含有量を上限値または下限値として規定できるものである。

発明の効果

0050

第1発明〜第3発明に係る熱間鍛造型肉盛溶接用コバルト基合金によれば、湯流れ性、溶着肉盛性、耐溶接割れ性といった肉盛性が良好である。更に良好なる室温硬さ、加熱軟化硬さ、高温硬さを有するとともに、肉盛層の靱性(=衝撃強度)に優れているため、肉盛後の耐損傷性、耐ヒートチェック性が良好である。故に、過酷な機械的応力と熱的応力とが作用する熱間鍛造型における肉盛用として使用した際、高温における耐摩耗性等の耐損傷性の向上などに貢献できるいう効果が得られる。

0051

第2発明に係る熱間鍛造型肉盛溶接用コバルト基合金によれば、溶接肉盛性を確保した上で、高温耐摩耗性を緩和しつつそのぶん衝撃強度を高めており、これにより優れた耐ヒートチェック性を得るのに有利である。第3発明に係る熱間鍛造型肉盛溶接用コバルト基合金によれば、溶接肉盛性を確保した上で、加熱軟化硬さ、高温硬さを確保し、更に肉盛合金としての靱性(衝撃強度)が高く、耐ヒートチェック性に良好である。従って高温硬さ及び耐ヒートチェック性を両立させるのに有利である。

図面の簡単な説明

0052

図1肉盛した後の試験片の平面図である。
図2肉盛した後の試験片の断面図である。
図3試験片をスライス切断して材料特性を評価するための試料を試験片から採取する形態を示す平面図
図4スライス切断した試料の断面図である。
図5スライス切断した試料から衝撃試験片を形成する形態を示す構成図である。
図6第2発明の発明合金に関して、衝撃強度と(Mo+W)量との関係を示すグラフである。
図7加熱軟化硬さと(Mo+W)量との関係を示すグラフである。
図8加熱軟化硬さと衝撃強度との関係を示すグラフである。
図9第3発明の発明合金に関して、衝撃強度と(Mo+W)量との関係を示すグラフである。
図10加熱軟化硬さと(Mo+W)量との関係を示すグラフである。
図11加熱軟化硬さと衝撃強度との関係を示すグラフである。

--

0053

図中、4は肉盛層を示す。

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