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技術 コバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜とその製造方法,及びそれを用いた複合型薄膜磁気ヘッドと磁気記憶装置

出願人 学校法人早稲田大学日本電気株式会社茨城日本電気株式会社
発明者 逢坂哲彌斎藤美紀子山田一彦大橋啓之安江義彦
出願日 1998年1月21日 (22年5ヶ月経過) 出願番号 1998-009545
公開日 1999年3月16日 (21年3ヶ月経過) 公開番号 1999-074122
状態 特許登録済
技術分野 磁気ヘッド4(薄膜磁気ヘッド等) 磁気ヘッド5(磁束感知ヘッド) 磁気ヘッド3(複合型及び多素子型) 磁気ヘッド2(構造、製造) 磁性薄膜
主要キーワード イオウ不純物 書き込みコイル イオウ含有量 fcc相 軟質磁性材料 下地メッキ 複合薄膜 体心立方格子
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(1999年3月16日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (9)

課題

保磁力および磁歪定数が小さく,かつ20,000G以上の飽和磁束密度をもつ軟磁性膜として,コバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜とその製造方法,及びそれを用いた複合型薄膜磁気ヘッド磁気記憶装置とを提供する。

解決手段

上部磁性層2及び下部磁性層3又は上シールド層3´を形成するコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜は,コバルト含有量が40〜70重量%,鉄含有量が20〜40重量%,およびニッケル含有量が10〜20重量%であり,体心立方構造のγ相と面心立方構造のα相の混晶である結晶構造を有する。また,これらコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜は,コバルト含有量が40〜70重量%,鉄含有量が20〜40重量%,およびニッケル含有量が10〜20重量%であり,前記コバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜9,10が,体心立方構造のγ相と面心立方構造のα相の混晶となる付近での,X線回折又は電子線回折により(111)面,(200)面,及び(220)面からの回折が観測される実質的に面心立方構造を有する。

概要

背景

磁気ディスク装置に搭載させる磁気ヘッドにおいては,高密度磁気記録を行うため,ますます強くかつ急峻な書き込み磁界を発生する必要が生じている。

近年では,再生用磁気抵抗効果素子記録用インダクティブヘッド素子を有する複合型薄膜磁気ヘッドが,再生と記録に各々の素子を最適化できるための主力になっている。

書き込み磁界を強くするためには,インダクティブヘッド素子の上部磁性層,あるいは上部磁性層と下部磁性層の材料は,飽和磁束密度の高い磁性材料でなければならない。また,この磁性材料は,書き込みコイル電流を流すことで容易に励磁される必要があり,そのためには保磁力が小さく,透磁率の高い磁性材料,すなわち良好な軟磁性材料である必要がある。

上記インダクティブヘッド素子の上部磁性層および下部磁性層の磁性材料として従来よく用いられてきたのは,パーマロイ商標)と呼ばれるニッケル鉄合金膜のうち,磁歪定数に近いニッケル含有量82%程度の領域のものであった。この領域のパーマロイを以下82パーマロイと呼ぶ。この82パーマロイの飽和磁束密度は9.000〜10000G(ガウス)程度であるが,これより飽和磁束密度の高い良好な軟磁性材料を用いれば,書き込み磁界がより強くて急峻な磁気ヘッドを作ことができる。

82パーマロイ以上の飽和磁束密度を持った磁気ヘッド用軟質磁性材料として,これまで種々の材料が提案されている。特にコバルト・鉄・ニッケル三元系合金膜は保磁力,磁歪定数が小さく,さらに14000G以上の飽和磁束密度が得られることから,その組成および添加材について検討がなされている。

例えば,特開平5−20317号公報には,コバルトが60〜90重量%,鉄が3〜9重量%ニッケルが5〜15重量%であるコバルト・鉄・ニッケル膜を用いた薄膜磁気ヘッドが提案されている。

また,特開平8−241503号公報には,コバルトが60〜80重量%,鉄が8〜25重量%ニッケルが15〜25重量%であるコバルト・鉄・ニッケル膜を用いた薄膜磁気ヘッドが提案されている。

また,特開平8−321010号公報には,コバルトが60〜75重量%,鉄が3〜9重量%ニッケルが17〜25重量%であるコバルト・鉄・ニッケル膜を用いた薄膜磁気ヘッドが提案されている。

図6は従来において知られている方法で作製したコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜結晶層を示す図である。この時のめっき浴の組成および製造と実験の一例を下記表1に示す。

概要

保磁力および磁歪定数が小さく,かつ20,000G以上の飽和磁束密度をもつ軟磁性膜として,コバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜とその製造方法,及びそれを用いた複合型薄膜磁気ヘッドと磁気記憶装置とを提供する。

上部磁性層2及び下部磁性層3又は上シールド層3´を形成するコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜は,コバルト含有量が40〜70重量%,鉄含有量が20〜40重量%,およびニッケル含有量が10〜20重量%であり,体心立方構造のγ相と面心立方構造のα相の混晶である結晶構造を有する。また,これらコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜は,コバルト含有量が40〜70重量%,鉄含有量が20〜40重量%,およびニッケル含有量が10〜20重量%であり,前記コバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜9,10が,体心立方構造のγ相と面心立方構造のα相の混晶となる付近での,X線回折又は電子線回折により(111)面,(200)面,及び(220)面からの回折が観測される実質的に面心立方構造を有する。

目的

本発明は,このような問題点を克服するためのものであり,その技術的課題は,保磁力および磁歪定数が小さく,かつ20,000G以上の飽和磁束密度をもつ軟磁性膜として,コバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜とその製造方法,及びそれを用いた複合型薄膜磁気ヘッドと磁気記憶装置とを提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
7件

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請求項1

コバルト含有量が40〜70重量%,鉄含有量が20〜40重量%,およびニッケル含有量が10〜20重量%であり,体心立方構造のγ相と面心立方構造のα相の混晶である結晶構造を有することを特徴とするコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜

請求項2

請求項1のコバルト・鉄・ニッケルの磁性薄膜において,0.1重量%以下のイオウ含有量を有し特徴とする請求項1記載のコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜。

請求項3

請求項2記載のコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜を製造する方法であって,有機添加剤として界面活性剤のみを含むめっき浴を用いて,3〜20mA/cm2 の範囲の電流密度電気めっきを行うことを特徴とするコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜の製造方法。

請求項4

請求項1あるいは請求項2記載のコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜を製造する方法であって,前記コバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜を成膜後100〜300℃の温度で熱処理を行うことを特徴とするコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜の製造方法。

請求項5

コバルト含有量が40〜70重量%,鉄含有量が20〜40重量%,およびニッケル含有量が10〜20重量%であり,前記コバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜が,体心立方構造のγ相と面心立方構造のα相の混晶となる付近での,X線回折又は電子線回折により(111)面,(200)面,及び(220)面からの回折が観測される実質的に面心立方構造を有することを特徴とするコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜。

請求項6

請求項5のコバルト・鉄・ニッケルの磁性薄膜において,0.1重量%以下のイオウ含有量を有することを特徴とするコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜。

請求項7

請求項6記載のコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜を製造する方法であって,有機添加剤として界面活性剤のみを含むめっき浴を用いて,3〜20mA/cm2 の範囲の電流密度で電気めっきを行うことを特徴とするコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜の製造方法。

請求項8

請求項5又は請求項6記載のコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜を製造する方法であって,前記コバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜を成膜後100〜300℃の温度で熱処理を行うことを特徴とするコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜の製造方法。

請求項9

再生用磁気抵抗効果素子記録用インダクティブヘッド素子を有する複合型磁気ヘッドにおいて,前記インダクティブヘッド素子の上部磁極と下部磁極の全体または一部に請求項1,2,5,及び6の内のいずれかに記載のコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜を配置したことを特徴とする複合型薄膜磁気ヘッド

請求項10

請求項9の複合型薄膜磁気ヘッドと,保磁力2500エルステッド以上の磁気記録媒体とを備えたことを特徴とする磁気記憶装置

技術分野

0001

本発明は,磁気記憶装置複合型薄膜磁気ヘッド磁極材料とその製造方法,並びに磁気記憶装置用複合型薄膜磁気ヘッドとそれを用いた磁気記憶装置に関する。

背景技術

0002

磁気ディスク装置に搭載させる磁気ヘッドにおいては,高密度磁気記録を行うため,ますます強くかつ急峻な書き込み磁界を発生する必要が生じている。

0003

近年では,再生用磁気抵抗効果素子記録用インダクティブヘッド素子を有する複合型薄膜磁気ヘッドが,再生と記録に各々の素子を最適化できるための主力になっている。

0004

書き込み磁界を強くするためには,インダクティブヘッド素子の上部磁性層,あるいは上部磁性層と下部磁性層の材料は,飽和磁束密度の高い磁性材料でなければならない。また,この磁性材料は,書き込みコイル電流を流すことで容易に励磁される必要があり,そのためには保磁力が小さく,透磁率の高い磁性材料,すなわち良好な軟磁性材料である必要がある。

0005

上記インダクティブヘッド素子の上部磁性層および下部磁性層の磁性材料として従来よく用いられてきたのは,パーマロイ商標)と呼ばれるニッケル鉄合金膜のうち,磁歪定数に近いニッケル含有量82%程度の領域のものであった。この領域のパーマロイを以下82パーマロイと呼ぶ。この82パーマロイの飽和磁束密度は9.000〜10000G(ガウス)程度であるが,これより飽和磁束密度の高い良好な軟磁性材料を用いれば,書き込み磁界がより強くて急峻な磁気ヘッドを作ことができる。

0006

82パーマロイ以上の飽和磁束密度を持った磁気ヘッド用軟質磁性材料として,これまで種々の材料が提案されている。特にコバルト・鉄・ニッケル三元系合金膜は保磁力,磁歪定数が小さく,さらに14000G以上の飽和磁束密度が得られることから,その組成および添加材について検討がなされている。

0007

例えば,特開平5−20317号公報には,コバルトが60〜90重量%,鉄が3〜9重量%ニッケルが5〜15重量%であるコバルト・鉄・ニッケル膜を用いた薄膜磁気ヘッドが提案されている。

0008

また,特開平8−241503号公報には,コバルトが60〜80重量%,鉄が8〜25重量%ニッケルが15〜25重量%であるコバルト・鉄・ニッケル膜を用いた薄膜磁気ヘッドが提案されている。

0009

また,特開平8−321010号公報には,コバルトが60〜75重量%,鉄が3〜9重量%ニッケルが17〜25重量%であるコバルト・鉄・ニッケル膜を用いた薄膜磁気ヘッドが提案されている。

0010

図6は従来において知られている方法で作製したコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜結晶層を示す図である。この時のめっき浴の組成および製造と実験の一例を下記表1に示す。

0011

ID=000003HE=070 WI=082 LX=0640 LY=0500
この例に見られるように,従来この種のめっき浴においては,めっき膜の剥離を防ぐために応力緩和のための添加剤が含まれている。応力緩和のための添加剤としてはサッカリンナトリウムなどイオウを含む有機物が多く用いられている。このような添加剤は,有機物中のイオウがめっき膜中に硫化物の形で取り込まれて,引っ張り応力緩和している。めっき膜中のイオウ不純物の濃度は0.1重量%〜1重量%程度である。

0012

上記表1の条件で作製したコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜の磁歪定数ゼロの曲線図7に示す。

0013

従来知られている方法で作製したコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜において,磁歪定数ゼロが得られる組成は,ほぼコバルト90重量%・鉄10重量%の点と,コバルト60重量%・ニッケル40重量%を結ぶ線,およびコバルト60重量%・ニッケル40重量%の点と,鉄18重量%・ニッケル82重量%の点を結ぶ線の上にあり,図6に示すfcc(面心立方格子)相とbcc(体心立方格子)相の混相になる曲線付近の組成とは一致しない。

0014

上記表1の条件で作製したコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜の保磁力の分布図8に示す。図8に示すように,保磁力が5エルステッド(Oe)以下となるのは,ほぼ図6fcc相bcc相混相になる領域と,図7の磁歪定数ゼロの曲線で挟まれる領域である。言い換えると,鉄含有量15重量%〜50重量%程度の鉄・ニッケル二元合金から鉄含有量5重量%〜20重量程度の鉄・コバルト二元合金に向かって伸び帯状の領域の中に限定される。

0015

先に挙げた従来の技術,特開平5−263170号公報,特開平8−241503号公報,および特開平8−321010号公報の組成は,いずれも上記帯状の領域の中に入るものである。

発明が解決しようとする課題

0016

上述のコバルト・鉄・ニッケル膜は,いずれも鉄の含有量が25重量%以下の組成のものであり,これらの組成領域では,得られる膜の飽和磁束密度は14,000〜18,000ガウス(G)程度であり,これ以上の飽和磁束密度は実現できない。

0017

高密度記録を可能にするためには,磁気ヘッドのインダクティブヘッド素子に用いる磁性層にさらに大きな飽和磁束密度を持つ材料を採用する必要がある。

0018

本発明は,このような問題点を克服するためのものであり,その技術的課題は,保磁力および磁歪定数が小さく,かつ20,000G以上の飽和磁束密度をもつ軟磁性膜として,コバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜とその製造方法,及びそれを用いた複合型薄膜磁気ヘッドと磁気記憶装置とを提供することにある。

課題を解決するための手段

0019

前記技術的課題を達成するために,本発明のコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜では,コバルト含有量が40〜70重量%,鉄含有量が20〜40重量%,およびニッケル含有量が10〜20重量%であり,体心立方構造のγ相と面心立方構造のα相の混晶である結晶構造を有することを特徴とする。

0020

また,本発明のコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜では,コバルト含有量が40〜70重量%,鉄含有量が20〜40重量%,およびニッケル含有量が10〜20重量%であり,前記コバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜が体心立方構造のγ相と面心立方構造のα相の混晶付近の組成において,面心立方構造(fcc)を示し,X線回折電子線回折により(111)面,(200)面,及び(220)面の高次の回折まで観測されることを特徴とする。

0021

また,本発明のコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜では,前記コバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜では,0.1重量%以下のイオウ含有量を有することを特徴とする。

0022

また,本発明のコバルト・鉄・ニッケルの磁性薄膜の製造方法では,有機添加剤として界面活性剤のみを含むめっき浴を用いて,3〜20mA/cm2 の範囲の電流密度電気めっきを行うことを特徴とする。

0023

また,本発明のコバルト・鉄・ニッケルの磁性薄膜製造方法では,前記記載のコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜を成膜後100〜300℃の温度で熱処理を行うことを特徴とする。

0024

また,本発明の再生用の磁気抵抗効果素子と記録用のインダクティブヘッド素子を有する複合型磁気ヘッドにおいて,前記インダクティブヘッド素子上部磁極と下部磁極の全体または一部に前記のコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜を配置することを特徴とする。

0025

また,本発明の磁気記憶装置は,前記複合型薄膜磁気ヘッドと,保磁力2500エルステッド(Oe)以上の高保磁力磁気記録媒体とを備えていることを特徴とする。

発明を実施するための最良の形態

0026

以下,本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。

0027

図1は本発明の第1の実施の形態による複合型薄膜磁気ヘッドの要部を示す断面図である。図1に示すように,複合型薄膜磁気ヘッドは,インダクティブヘッド素子を形成する上部磁性層2および下部磁性層3にコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜を配置している。このコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜は,絶縁層1,6上にスパッタなどにより下地メッキを施した上に後述するように,電気めっきによって形成されている。

0028

上部磁性層2および下部磁性層3の膜厚は,うず電流による高周波での透磁率低下を避けるため6μm以下であり,好ましくは3μm程度である。

0029

図1に示す複合型薄膜磁気ヘッドは,下部磁性層3とギャップ層1が積層され,その上にパターニングした絶縁層4と導体層からなる書き込みコイル5を配置し,それらの上に上部磁性層2が積層されて成る記録用ヘッドと,下シールド層8の上に2つのギャップ層6に挟まれた磁気抵抗効果素子7を配置し,それらの上に上シールド層3´が積層されて成る再生用ヘッドとからなる。本第1の実施の形態では,下部磁性層3と上シールド層3´は同一のものである。ここで,下シールド層8はアルミナチタンカーバイトからなる基板13上にスパッタ等により形成されたアルミナからなる被覆層12上に形成されている。さらに,上部磁性層2上は,スパッタ等によって形成されたアルミナからなる被覆層11によって覆われている。

0030

このように構成された複合薄膜磁気ヘッドは,飽和磁束密度が高いコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜を有する効果で,従来のヘッドに比べて高い書き込み能力を持つ。飽和磁束密度の高い材料を上部磁性層2と下部磁性層3に用いることで,これらの磁性層が磁気的に過度飽和することなく強い磁界強度および高い磁界勾配を発生することができる。その結果,保磁力の大きな磁気ディスク媒体低ノイズ分解能の高い磁気記録パターンを書き込むことができる。

0031

ところで,従来の複合型薄膜磁気ヘッドは,磁気デイスク表面とヘッドの隙間を平均で40〜70nm程度にして,保磁力2,200〜2,500 Oe程度の磁気ディスクに書き込みを行っていた。

0032

本発明の複合型薄膜磁気ヘッドは,書き込み能力が高いため,磁気ディスク表面とヘッドの隙間を同等に保ちながら,2,500 Oe以上の高い保磁力を持つ磁気ディスク媒体と組み合わせることにより,より記録密度の高い磁気ディスク装置を得ることができる。

0033

なお,上部磁性層2は,形状が複雑なため,下部磁性層3より局所的な磁気飽和が早く始まる。

0034

従って,本発明のコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜は,上部磁性層のみに適用して,下部磁性層3はパーマロイで製造しても,同様の作用によりある程度書き込み能力を高める効果は認められる。

0035

図2は本発明の第2の実施の形態による複合型薄膜磁気ヘッドの要部を示す断面図である。図2に示すように,インダクティブヘッド素子のギャップ層を形成する記録用の上部磁性層2,10あるいは上部磁性層2,10と下部磁性層3,9の一部として,コバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜9,10を夫々配置している。なお,第1の実施の形態と同様に,符号11,12はアルミナからなる被覆層であり,符号13はアルミナ・チタンカーバイトからなる基板である。

0036

第2の実施の形態において,コバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜9,10は下部磁性層3,9のギャップ層1側及び上部磁性層2,10のギャップ層1側に厚さ0.3μm で配置されている。

0037

上部磁性層2,10および下部磁性層3,9の残りの部分2,3はパーマロイで形成されており,その厚さは3〜5μmである。このように構成された第2の実施の形態における複合型薄膜磁気ヘッドにおいて,コバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜9,10を,0.1μmまで薄くしても書き込み能力向上の効果が認められた。

0038

ここで,下部磁性層3,9のギャップ層1側に配置されたコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜9は,削除しても,同様の作用によりある程度書き込み能力を高める効果は認められる。但し,下部磁性層3,9をすべてパーマロイにした場合は,上部磁性層2,10のコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜10の膜厚を0.5μm以上にしても,ヘッドの発生する磁界は飽和磁束密度の比ほどは大きくならず,計算上は20%程度の増加にとどまる。但し,磁界勾配は,上部磁性層2,10の磁気的な飽和が解消されるため大幅に改善される。

0039

次に図1及び図2に示す複合ヘッドに用いたコバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜の製造について更に具体的に説明する。

0040

図3サッカリンを含まないめっき浴を用いて作製したコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜の結晶層を示す図である。この時のめっき浴の組成およびめっき条件の一例を下記表2に示す。

0041

ID=000004HE=065 WI=086 LX=0620 LY=0700
図4は,上記表2の条件で作製した本発明のコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜における,磁歪定数ゼロの曲線を示す。この場合の磁歪定数ゼロの組成は,ほぼコバルト80重量%・鉄20重量%の点と,コバルト60重量%・鉄10重量%・ニッケル30重量%を結ぶ線の上にある。サッカリンナトリウムを応力緩和の添加剤として加えた図7の場合に比べて,鉄含有量が10重量%程度多い側に移動する。

0042

図5には,上記表2の条件で作製した本発明のコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜における,保磁力の分布を示す。この場合,コバルト30〜70重量%・鉄30〜50重量%・ニッケル10〜20重量%の領域で保磁力が2.5 Oe以下になり,良好な軟磁気特性が得られる。

0043

図5図8を比較すると,応力緩和の添加剤を含まないめっき浴を用いて作製したコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜で良好な軟質磁気特性が得られる組成領域は,サッカリンナトリウムを応力緩和の添加剤として加えたコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜で良好な軟磁気特性が得られる組成に比べて,ニッケル含有量が30〜40重量%程度少なく,コバルト含有量が30〜40重量%程度多い組成領域になっている。

0044

前述したように,応力緩和の添加剤いた表1の条件で作製した場合,fcc相とbcc相の混相になるのは,コバルト80重量%と・鉄20重量%の点と鉄50重量%。ニッケル50重量%の点を結ぶ曲線付近のごく狭い領域である。これに対して応力緩和の添加剤を用いない場合,fcc相とbcc相の混相が得られる領域はかなり広く,コバルト80重量%と・鉄20重量%の点と鉄70重量%・ニッケル30重量%の点を結ぶ曲線付近で,コバルト30〜70重量%・鉄20〜50重量%・ニッケル10〜20重量%の幅広い領域に広がっている。

0045

このように,応力緩和の添加剤を含まないめっき浴を用いて作製した本発明の場合に,保磁力の小さい領域がニッケルの少ない側に移動するのは,主にfccとbcc相の混相領域がニッケルの少ない側に移動したことに起因すると考えられる。

0046

また,磁歪ゼロラインが鉄含有量の多い側にずれたことも,本発明による応力緩和の添加剤を含まないめっき浴を用いて作製したコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜が幅広い領域で良好な軟磁気特性を示す要因の一つであると考えられる。

0047

一般に,コバルト・鉄・ニッケル三元系合金においては,ニッケルの磁気モーメントへの寄与が鉄およびコバルトに比べて小さいため,ニッケルの含有量が少ない組成の方が,飽和磁束密度が大きくなる。その結果,サッカリンナトリウム等の応力緩和の添加剤を含まないめっき浴を用いて作製したコバルト・鉄・ニッケル三元系合金膜において良好な軟磁性が得られる組成での飽和磁束密度は,サッカリンナトリウムを応力緩和の有機添加剤として含むめっき浴を用いて作製したコバルト・鉄・ニッケル三元系合金膜組成において良好な軟質磁気特性が得られる組成での飽和磁束密度に比べて5,000〜8,000Gほど大きな値が得られる。

0048

また,良好な軟磁気特性が得られる結晶領域は,fcc相とbcc相の混相領域のみではなく,fcc相とbcc相の混相領域付近において,fcc相が大きく支配する領域にもまたがっていた。本発明のコバルト・鉄・ニッケル三元系合金膜では,X線回折や電子線回折の結果からもfccの結晶状態を示す(111),(200)の他に(220)からの回折が得られた。一方,サッカリンナトリウム等の有機応力緩和剤を用いたコバルト・鉄・ニッケル三元系合金膜ではfccの結晶状態を示す(111),(200)の回折パターンは得られたものの(220)の回折パターンが得られておらず,結晶性が劣っていることがわかった。このように結晶性が劣っていることは軟磁気特性,さらには飽和磁束密度の低下,また耐蝕性の低下にもつながる。

0049

本発明の添加剤を含まないコバルト・鉄・ニッケル三元系合金膜はこのような結晶性の観点からも優れた膜が得られる。

0050

以上述べたように,本発明の製造方法で製したコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜は,これまでにない大きな磁束密度と優れた軟磁気特製を兼ね備えている。

0051

ここで,上述の製造方法においては,サッカリンナトリウム等の応力緩和の有機添加剤を含まないめっき浴を用いるため,電流密度が高い場合には,膜の応力が大きく,パターンめっきをした際に剥離するという問題がある。この大きな応力による膜の剥離は電流密度を下げることにより防ぐことができる。例えば,上記表2の条件でパターンめっきを行った場合,電流密度20mA/cm2 ならば,膜厚0.3μmまで,電流密度10mA/cm2 ならば,膜厚0.1μmまで,電流密度3mA/cm2 ならば,膜厚2.0μmまでのコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜を形成できることが確認された。また,本発明のコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜は,熱処理により優れた耐蝕性を示すことも発見された。

0052

例えば,電流密度3mA/cm2 で作製したコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜の孔蝕電位は−250mVであるのに対し,200℃,1時間の真空中熱処理を施したコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜の孔蝕電位は−40mVと改善された。この熱処理の耐蝕性への効果は,100℃以上の温度から観測された。このような優れた耐蝕性はサッカリンナトリウム等の有機添加剤を使用したコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜では得られなかった。

0053

また,本発明の応力緩和剤を含まないめっき浴組成およびめっき条件の他の例を下記表3に示す。

0054

ID=000005HE=070 WI=084 LX=0630 LY=1450
上記表3の例においても,上記表2の例と同様の効果が得られた。

発明の効果

0055

以上説明したように,本発明では,高い飽和磁束密度と優れた軟磁気特製を兼ね備えた磁性薄膜の組成と結晶構造およびその製造方法を与える。

0056

また,本発明の磁性薄膜製造方法によれば,コバルト含有量が30〜70重量%,鉄含有量が20〜50重量%,ニッケル含有量が10〜20重量%で,結晶構造が体心立方構造のγ相と面心立方構造のα相の2相からなる,あるいは体心立方構造のγ相と面心立方構造のα相の2相付近の面心立方構造が大きく支配する層からなる磁性薄膜を製造することができる。この磁性薄膜は,19,000〜22,000Gという高い飽和磁束密度と,保磁力2.5 Oe以下という優れた軟磁性膜を持つ。従って,この軟磁性膜をインダクティブヘッド素子に使った複合型薄膜磁気ヘッドは,従来のヘッドに比べ発生磁界および磁界勾配を大きくできるため,高保磁力媒体と組み合わせることにより,磁気記憶装置の記録密度を高めることができる。

図面の簡単な説明

0057

図1本発明の第1の実施の形態による複合型薄膜磁気ヘッドの要部を示す断面図である。
図2本発明の第2の実施の形態による複合型薄膜磁気ヘッドの要部を示す断面図である。
図3本発明のコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜の結晶相を示す図である。
図4本発明のコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜の保磁力の等高線を示す図である。
図5本発明のコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜の磁歪定数ゼロのラインを示す図である。
図6従来技術による方法で作製したコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜の結晶相を示す図である。
図7従来技術による方法で作製したコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜の磁歪定数ゼロのラインを示す図である。
図8従来技術による方法で作製したコバルト・鉄・ニッケル三元系合金薄膜の保磁力の等高線を示す図である。

--

0058

1ギャップ層(絶縁層)
2 上部磁性層
3 下部磁性層
3´ 上シールド層
4 絶縁層
5書き込みコイル
6 絶縁層
7磁気抵抗効果素子
8 下シールド層
9 下部磁性層(コバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜)
10 上部磁性層(コバルト・鉄・ニッケル磁性薄膜)
11,12 被覆層

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