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技術 ダイヤモンドの改質方法

出願人 住友電気工業株式会社
発明者 塩見弘荻野誠司藤森直治中原恒雄
出願日 1997年6月30日 (23年5ヶ月経過) 出願番号 1997-190511
公開日 1999年1月29日 (21年10ヶ月経過) 公開番号 1999-026389
状態 拒絶査定
技術分野 アニール
主要キーワード 最大振動数 固有型 マイクロパルス 結晶改質 ボロンドープダイヤモンド マクロパルス ダイヤモンド試料 ダイポールモーメント
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(1999年1月29日)のものです。
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図面 (6)

目的

ダイヤモンド不純物を導入した場合、熱によっては活性化されない不純物を活性化しキャリヤ解放して抵抗率の低い高品質ダイヤモンドを作製すること。

構成

ダイヤモンドの中の炭素どうしの結合あるいは炭素と不純物の結合よりなる光学格子振動励起するようにその格子振動エネルギーにほぼ等しいエネルギーを持つ1種類または2種類の波長赤外光照射する。

概要

背景

半導体材料を使って電子装置を作製しようとする場合、半導体不純物イオン注入して所望の電気的性質を与える。その場合イオンエネルギーのために結晶格子乱れ伝導性が低下し或いは抵抗が低下する。そこで半導体の結晶構造秩序化し再結晶化して電気的に活性化させることがしばしば必要になる。Siなどの半導体の場合は、電気炉で加熱する事によって活性化させることができる。これは熱によって結晶構造を秩序化再結晶するものである。広くアニールとよぶ。結晶改質のためにアニール法を用いるのは半導体に限らず金属などでも広く行われる。熱のために高次格子振動励起され、自由エネルギーがより低い方へと原子が移動し易くなるので格子構造修復される。

本発明はダイヤモンド結晶改質を目的とする。このダイヤモンドもイオン注入などによって結晶に損傷を受けたものであり不純物がドープされていても格子構造が乱れているためあるいは不純物の位置がずれているために所定の電気的な特性が得られないものである。ダイヤモンドは格子エネルギーが極めて高いために1000℃以上に加熱してアニールしても十分に活性化することができない。p型、n型の不純物を低レベルでドープしても十分な伝導率のものが得られない。多くの不純物が不活性であるためである。必要以上の高レベルドープをすると余計に結晶構造が乱れてしまう。

そもそもあまり高温でアニールすると結晶以外の要素に悪影響を及ぼすことがある。高温のアニールをすると電極材料溶融変質する恐れがある。高温でも変質しない電極材料を使わなければならないがそのように好都合な電極材料は得難いものである。たとえ高温に耐える材料が見つかっても電極としては使いにくく半導体製造工程をより複雑困難にする。

もう一つの問題はダイヤモンド自体の変質の可能性である。1000℃以上の高温のアニールをすると圧力が低いと相転位が起こってダイヤモンドがグラファイトになってしまう。相転位を防ぐにはよほどの高圧掛けながらアニールしなければならない。ダイヤモンドのアニールは大型の高温高圧の炉を使用しなければならずコスト高になる。つまり熱処理によってダイヤモンドを改質するのは難しい。しかし熱以外に損傷を受けたダイヤモンドの結晶性回復する手段はいまのところ見いだせない。

熱によるのではなくて光による物質改質方法もいくつか提案されている。

特開平7−22311号「半導体材料およびその作製方法」は液晶ディスプレイにおいて薄膜トランジスタを多数作る工程に於いてアモルファスSiを活性化するためにエキシマレーザ照射を行う。液晶基板のように大きい基板の全体に単結晶Siのトランジスタを作ることはもとよりできないからアモルファスSi薄膜をRFスパッタリング法によって形成する。アモルファスであるから電子移動度が単結晶Siの場合(1350cm2 /Vs)の1/1000〜1/100程度しかない。それで短距離秩序を与えて電子移動度を上げるという処理が行われる。

KrFレーザの強い紫外光薄膜に照射する。エキシマレーザを使うのはエネルギーが高くないといけないからである。KrFは248nmの紫外光を発生する。これがアモルファスシリコンを一次的に溶融し結晶化させるように働いていた。ところが単にエキシマレーザ光の照射では移動度向上のばらつきが大きく品質が一定しない。それは酸素窒素炭素などの不純物がSi中にあり、これが結晶化において移動度向上を妨げるように作用するというのである。そこでこれは酸素、炭素、窒素などの不純物濃度極端に低くした高品質のアモルファスSiを使う、ということを提案している。波長248nmの紫外光は5eVのエネルギーをもつ光子ホトン)の集合である。光のエネルギーEと波長λの間には、λ(nm)=1240/E(eV)の関係がある。このようにアモルファスSiを結晶化させるには高いエネルギーの紫外光を使う。電子遷移を引き起こして格子構造を改善する。これが常識であった。

特開平3−76168号「ダイヤモンドを用いた電子装置の作製方法」はダイヤモンドに不純物を注入すると結晶構造が乱れるのでレーザ光を照射して構造を改良する方法を提案する。ダイヤモンドは非平衡状態で作製されているので、単純にイオン注入をして熱によるアニールをしても不純物が活性化しない。1400度の高熱を加えても平衡状態を保つので格子乱れは改善されない。

光によるアニールをするにしてもハロゲンランプでは1eV〜1.5eVの可視光から赤外線光であって効果がないとしている。それで4.8eV以上のエネルギーの光(波長が260nm以下)を真空中あるいは水素雰囲気で照射して格子欠陥を減少させる、という方法を提案している。前記のものと同じように、KrFレーザの248nmの光を照射することによって改質をしている。こえはグラファイトのsp2混成軌道をダイヤモンドのsp3 混成軌道に変換させることができると主張している。KrFレーザのパワーは30〜50mJ/cm2 としている。これも248nmのエネルギーの高い紫外光によって結晶改質を行おうとするものである。

特開平3−76169号「ダイヤモンドを用いた電子装置の作製方法」もダイヤモンドの100nm〜300nmのパルス紫外光によるレーザアニール法を述べている。これも好ましい波長は260nm以下(4.8eV以上)のエネルギーが望ましいとしている。ダイヤモンドのバンドギャップが約5eVであるためこれとほぼエネルギーの等しいKrFレーザ光(248nm)は特に効果的であると信じている。

これらのレーザアニール法はいずれも波長が100nm〜300nmの短波長のレーザ光を用いている。これはダイヤモンドのバンドギャップと同じかそれよりもエネルギーが高いので価電子帯から伝導帯への電子励起を引き起こすことができる。ダイヤモンドのレーザアニールはバンドギャップ以上のエネルギーの光が必要だと思いこまれている。それは、グラファイトのsp2軌道をダイヤモンドのsp3 軌道に変換させるためであり電子軌道に直接に働きかけることができる高いエネルギーを持つ光が必要と考えられたものであろう。

しかしこれらにおいて提案されているアニール光源は何れも紫外光であってエネルギーが高くダイヤモンドの炭素間の結合の手を分断することがある。そのためにレーザアニールによって炭素結合切れて新たな欠陥を発生させる可能性がある。またバンドギャップより高いエネルギーの光は表面近くで全部吸収され内部にまで浸透しない。

それにイオン注入によって生じる変化はダイヤモンドの一部がグラファイト化することだけではない。そのような結合形式の変化はむしろ僅かであって格子の乱れ、歪みなどによって不純物が格子間にあってキャリヤを放出できないために活性化されないのであろうと考えられる。するとより直接に格子をゆり動かすような手段が望まれる。

概要

ダイヤモンドに不純物を導入した場合、熱によっては活性化されない不純物を活性化しキャリヤを解放して抵抗率の低い高品質ダイヤモンドを作製すること。

ダイヤモンドの中の炭素どうしの結合あるいは炭素と不純物の結合よりなる光学格子振動を励起するようにその格子振動のエネルギーにほぼ等しいエネルギーを持つ1種類または2種類の波長の赤外光を照射する。

目的

ダイヤモンドは熱による処理によっては電気的な活性化が難しい。ダイヤモンドのバンドギャップにほぼ等しい260nm以下の波長のレーザ光によるアニールも提案されている。sp2軌道をsp3 軌道に変換するにはこの程度のエネルギーの光が必要である。しかしこれはエネルギーが高すぎて新たな欠陥を発生する可能性がある。結合の手を分断する可能性もある。結晶構造を回復する手段としては不十分である。これまでに提案されているレーザアニールの欠点を克服し、不純物注入して格子構造に乱れのあるダイヤモンドを、欠陥を導入することなく結晶構造を回復し電気的特性を改善する改質方法を提供する事が本発明の目的である。さらに改質されたダイヤモンドを用いた電子装置、光学装置を提供する事が本発明のさらなる目的である。

効果

実績

技術文献被引用数
4件
牽制数
2件

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請求項1

ダイヤモンド不純物を含む領域を形成する工程と、ダイヤモンドの炭素原子間光学格子振動モード或いは炭素原子不純物原子の結合の手の光学的格子振動モードに等しいエネルギー波長の光を前記不純物を含む領域に照射する工程を含むことを特徴とするダイヤモンドの改質方法

請求項2

ダイヤモンドに照射する光の波長が2μm〜15μmであることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンドの改質方法。

請求項3

ダイヤモンドに照射する光の波長が3.8μm〜6.1μmであることを特徴とする請求項2に記載のダイヤモンドの改質方法。

請求項4

自由電子レーザによって発生した単色で位相の揃ったレーザ光をダイヤモンドに照射することをを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のダイヤモンドの改質方法。

請求項5

イオン注入によって燐を不純物として注入し燐を含む領域を形成する工程と、波長が5.8μmの光を燐を含む領域に照射する工程とを含む事を特徴とするダイヤモンドの改質方法。

請求項6

ダイヤモンドに平面的または空間的に局所的に光を照射することによりダイヤモンドを局所的に改質することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のダイヤモンドの改質方法。

技術分野

0001

この発明は不純物イオン注入などによって乱れダイヤモンド結晶構造秩序化し不純物電気的に活性化する改質方法に関する。

背景技術

0002

半導体材料を使って電子装置を作製しようとする場合、半導体に不純物をイオン注入して所望の電気的性質を与える。その場合イオンエネルギーのために結晶格子が乱れ伝導性が低下し或いは抵抗が低下する。そこで半導体の結晶構造を秩序化し再結晶化して電気的に活性化させることがしばしば必要になる。Siなどの半導体の場合は、電気炉で加熱する事によって活性化させることができる。これは熱によって結晶構造を秩序化再結晶するものである。広くアニールとよぶ。結晶改質のためにアニール法を用いるのは半導体に限らず金属などでも広く行われる。熱のために高次格子振動励起され、自由エネルギーがより低い方へと原子が移動し易くなるので格子構造修復される。

0003

本発明はダイヤモンド結晶改質を目的とする。このダイヤモンドもイオン注入などによって結晶に損傷を受けたものであり不純物がドープされていても格子構造が乱れているためあるいは不純物の位置がずれているために所定の電気的な特性が得られないものである。ダイヤモンドは格子エネルギーが極めて高いために1000℃以上に加熱してアニールしても十分に活性化することができない。p型、n型の不純物を低レベルでドープしても十分な伝導率のものが得られない。多くの不純物が不活性であるためである。必要以上の高レベルドープをすると余計に結晶構造が乱れてしまう。

0004

そもそもあまり高温でアニールすると結晶以外の要素に悪影響を及ぼすことがある。高温のアニールをすると電極材料溶融変質する恐れがある。高温でも変質しない電極材料を使わなければならないがそのように好都合な電極材料は得難いものである。たとえ高温に耐える材料が見つかっても電極としては使いにくく半導体製造工程をより複雑困難にする。

0005

もう一つの問題はダイヤモンド自体の変質の可能性である。1000℃以上の高温のアニールをすると圧力が低いと相転位が起こってダイヤモンドがグラファイトになってしまう。相転位を防ぐにはよほどの高圧掛けながらアニールしなければならない。ダイヤモンドのアニールは大型の高温高圧の炉を使用しなければならずコスト高になる。つまり熱処理によってダイヤモンドを改質するのは難しい。しかし熱以外に損傷を受けたダイヤモンドの結晶性回復する手段はいまのところ見いだせない。

0006

熱によるのではなくて光による物質の改質方法もいくつか提案されている。

0007

特開平7−22311号「半導体材料およびその作製方法」は液晶ディスプレイにおいて薄膜トランジスタを多数作る工程に於いてアモルファスSiを活性化するためにエキシマレーザ照射を行う。液晶基板のように大きい基板の全体に単結晶Siのトランジスタを作ることはもとよりできないからアモルファスSi薄膜をRFスパッタリング法によって形成する。アモルファスであるから電子移動度が単結晶Siの場合(1350cm2 /Vs)の1/1000〜1/100程度しかない。それで短距離秩序を与えて電子移動度を上げるという処理が行われる。

0008

KrFレーザの強い紫外光薄膜に照射する。エキシマレーザを使うのはエネルギーが高くないといけないからである。KrFは248nmの紫外光を発生する。これがアモルファスシリコンを一次的に溶融し結晶化させるように働いていた。ところが単にエキシマレーザ光の照射では移動度向上のばらつきが大きく品質が一定しない。それは酸素窒素炭素などの不純物がSi中にあり、これが結晶化において移動度向上を妨げるように作用するというのである。そこでこれは酸素、炭素、窒素などの不純物濃度極端に低くした高品質のアモルファスSiを使う、ということを提案している。波長248nmの紫外光は5eVのエネルギーをもつ光子ホトン)の集合である。光のエネルギーEと波長λの間には、λ(nm)=1240/E(eV)の関係がある。このようにアモルファスSiを結晶化させるには高いエネルギーの紫外光を使う。電子遷移を引き起こして格子構造を改善する。これが常識であった。

0009

特開平3−76168号「ダイヤモンドを用いた電子装置の作製方法」はダイヤモンドに不純物を注入すると結晶構造が乱れるのでレーザ光を照射して構造を改良する方法を提案する。ダイヤモンドは非平衡状態で作製されているので、単純にイオン注入をして熱によるアニールをしても不純物が活性化しない。1400度の高熱を加えても平衡状態を保つので格子乱れは改善されない。

0010

光によるアニールをするにしてもハロゲンランプでは1eV〜1.5eVの可視光から赤外線光であって効果がないとしている。それで4.8eV以上のエネルギーの光(波長が260nm以下)を真空中あるいは水素雰囲気で照射して格子欠陥を減少させる、という方法を提案している。前記のものと同じように、KrFレーザの248nmの光を照射することによって改質をしている。こえはグラファイトのsp2混成軌道をダイヤモンドのsp3 混成軌道に変換させることができると主張している。KrFレーザのパワーは30〜50mJ/cm2 としている。これも248nmのエネルギーの高い紫外光によって結晶改質を行おうとするものである。

0011

特開平3−76169号「ダイヤモンドを用いた電子装置の作製方法」もダイヤモンドの100nm〜300nmのパルス紫外光によるレーザアニール法を述べている。これも好ましい波長は260nm以下(4.8eV以上)のエネルギーが望ましいとしている。ダイヤモンドのバンドギャップが約5eVであるためこれとほぼエネルギーの等しいKrFレーザ光(248nm)は特に効果的であると信じている。

0012

これらのレーザアニール法はいずれも波長が100nm〜300nmの短波長のレーザ光を用いている。これはダイヤモンドのバンドギャップと同じかそれよりもエネルギーが高いので価電子帯から伝導帯への電子励起を引き起こすことができる。ダイヤモンドのレーザアニールはバンドギャップ以上のエネルギーの光が必要だと思いこまれている。それは、グラファイトのsp2軌道をダイヤモンドのsp3 軌道に変換させるためであり電子軌道に直接に働きかけることができる高いエネルギーを持つ光が必要と考えられたものであろう。

0013

しかしこれらにおいて提案されているアニール光源は何れも紫外光であってエネルギーが高くダイヤモンドの炭素間の結合の手を分断することがある。そのためにレーザアニールによって炭素結合切れて新たな欠陥を発生させる可能性がある。またバンドギャップより高いエネルギーの光は表面近くで全部吸収され内部にまで浸透しない。

0014

それにイオン注入によって生じる変化はダイヤモンドの一部がグラファイト化することだけではない。そのような結合形式の変化はむしろ僅かであって格子の乱れ、歪みなどによって不純物が格子間にあってキャリヤを放出できないために活性化されないのであろうと考えられる。するとより直接に格子をゆり動かすような手段が望まれる。

発明が解決しようとする課題

0015

ダイヤモンドは熱による処理によっては電気的な活性化が難しい。ダイヤモンドのバンドギャップにほぼ等しい260nm以下の波長のレーザ光によるアニールも提案されている。sp2軌道をsp3 軌道に変換するにはこの程度のエネルギーの光が必要である。しかしこれはエネルギーが高すぎて新たな欠陥を発生する可能性がある。結合の手を分断する可能性もある。結晶構造を回復する手段としては不十分である。これまでに提案されているレーザアニールの欠点を克服し、不純物注入して格子構造に乱れのあるダイヤモンドを、欠陥を導入することなく結晶構造を回復し電気的特性を改善する改質方法を提供する事が本発明の目的である。さらに改質されたダイヤモンドを用いた電子装置、光学装置を提供する事が本発明のさらなる目的である。

課題を解決するための手段

0016

本発明は、上記の問題を解決する手段として、ダイヤモンド構成原子である炭素の格子振動にあるいは添加不純物と構成原子間の振動共鳴吸収する波長のレーザ光を照射する。これによって結晶構造を秩序化し電気的担体を活性化する。そして活性化されたダイヤモンドを用いてダイヤモンド電子装置、ダイヤモンド光学装置を製造する。

0017

本発明の改質方法は熱によるアニールではなく光による改質である。熱によるアニールは電気炉などによって、材料全体を融かし或いは融ける直前の温度まで加熱し、熱平衡状態を経て乱れた原子配列を正しく再構成するものである。本発明は構成原子の格子振動に共鳴する波長のレーザ光を照射して材料を溶融する事なく格子振動を直接に励起し結晶構造を秩序化する。

0018

光による改質であってしかも白色光連続スペクトル)を用いるのではなく格子振動のエネルギーに等しいエネルギーをもつ波長の単色光を用いる。エネルギーが決まっており格子振動だけを励起できるので少ないパワーで改質の効果は極めて大きい。格子振動によって共鳴吸収されるような決まった波長の単色光を用いるのが望ましい。電子遷移を引き起こさないからダイヤモンドがグラファイトに変質するという惧れもない。

0019

格子振動を励起するのが目的であるので、従来法のエキシマレーザの248nmの光によるものとは全く違う。248nmはダイヤモンドのバンドギャップ5eVにほぼ等しいので電子バンド間遷移を引き起こす。しかしそれは格子振動を誘起するという目的には無効である。格子は炭素原子相互の結合によってなる秩序である。炭素原子は電子の質量の2万倍もの質量を持つので動きが格段に遅くエネルギーも低い。

0020

熱の本質は格子振動であるから熱によって格子振動を励起するというのはごくごく自然の発想なのである。それで多くの物質の場合は熱を掛けて格子構造を回復するようにしている。ところがダイヤモンドの場合は熱による処理は効果がないということが分かっている。

0021

熱がだめなら光というのではあまりに単純にすぎる。イオン注入によって乱れた格子構造を再構築するのであるから格子振動を励起すれば良い。ところが格子振動を光によって励起することは簡単にはできない、と考えられている。ひとつは運動量pとエネルギーEの保存則が成り立たないからである。格子振動を量子化すると音響ホノンの集合ということになる。音響ホノンは波数kと振動数ωがほぼ比例する(つまり音速が一定)。光子(ホトン)がひとつ消滅してひとつのホノンが発生するというときエネルギーEと運動量pの両方が一致しなければいけない。これはありえないことである。光子がホノンを散乱させるという場合、散乱前のホノンと散乱後のホノン、ホトンという3つの対象物の間でエネルギー、運動量の保存が要求される。光はエネルギーが大きくても質量が0であるから運動量が小さくそのような保存則を満足できない。

0022

もっともホノンにも2種類ある。音響ホノンは熱の主体であり波数kによるエネルギーの分散がある。k=0でω=0であって、ω=kcs で決まる音速csをもつ。またこれは縦波ひとつと横波ふたつを持つ。これは運動量が大きいので光と相互作用ができない。

0023

音響ホノンの上に光学ホノンがある。これは音響ホノンと逆の傾向を持ちk=0で最大振動数をもつ。これも縦波と横波を持つ。光学と名前がついているのは光と相互作用する可能性があるからである。光は横波であるから光学ホノンの横波が光と相互作用することがある。光学ホノンの縦波は光と相互作用できない。横波光学ホノンがどうして光と相互作用するか?というと、イオン結晶であって2種類の正イオン負イオン単位セルにある場合、正イオンと負イオンが反対方向に変位するとダイポールモーメントPが発生するのでこれが光の電界Eと結合するのである。

0024

もちろんそれだけではいけない。運動量とエネルギーの保存則の問題がある。光は質量がないので、エネルギーが高い割には運動量が小さい。格子振動は重い原子の動きであるから運動量が大きく光とはエネルギー交換ができないというふうに思われる。ところがそれは音響ホノンでのみ言えることであって、光学ホノンでは音速というものをそもそも定義できない。k=0の近傍では波数kによるエネルギーωの分散が殆どない。つまり光学ホノンはk=0の近くで振動ωがほとんどkによらない。このため運動量が殆ど0である光と光学ホノンがエネルギー、運動量保存則を満足することができ、相互作用できるのである。

0025

光学ホノンがどうして発生するのか?というと、結晶の単位胞の中に2以上の種類の原子がある場合にそれらの原子が相対変位できるので生ずる。単位胞にひとつの原子しかない場合は3つのモードの音響ホノンだけが生ずる。ダイヤモンドは炭素原子だけでなるので音響ホノンだけかとも思えるがそうではない。

0026

ダイヤモンドの単位胞のなかに8個の炭素原子が含まれる。質量の差はないが結合の方向が異なるので振動のモードが異なる。それでひとつは音響モードを形成し、残りの7つの自由度が光学モードを形成する。幾つもの光学モードがダイヤモンドには存在するのである。これらはいくつかの分枝縮退している。そのほかのものはエネルギーが異なるがそのうちのいくつかはk=0の近くでωが殆ど一定である。その分枝はエネルギー、運動量を保存できるので光を散乱あるいは吸収することができる。

0027

しかしダイヤモンドは同一原子よりなるので原子が相対移動してもダイポールモーメントを発生しない。分極ができないのでは光と相互作用をするはずがないとも思える。しかし赤外光をダイヤモンドに照射するとある範囲で顕著な吸収が現れる。図3はダイヤモンドに赤外光を照射した時の透過率測定結果を示すグラフである。透過率グラフのうち3μm〜6μmに大きい吸収が見える。これはエネルギーに直すと0.4eV〜0.2eVのあたりである。これは炭素原子が変位することによって生ずる格子振動のエネルギーの程度である。してみればこれはダイヤモンドの光学ホノンを励起したことによる吸収であると考えられる。

0028

確かにダイヤモンドは炭素だけからなり共有結合であるが炭素原子が正規の位置からずれるとそれに伴って結合に与る電子も動く。しかし原子の運動と電子雲の運動が同一でないから局所的にダイポールが発生する。そのダイポールと光が相互作用して光から原子がエネルギーを吸収して振動が励起される。それが0.4eV〜0.2eVの吸収なのであろう。従来ダイヤモンドの格子振動と光が相互作用をするというようなことは知られておらずしたがって、格子振動のエネルギーに近いエネルギーの赤外光と照射してアニール効果を生じさせるまで格子振動を励起できるというようなことは誰も思い至らなかったのである。

0029

それでむやみに高いエネルギー(短波長)のレーザ光を当てて電子軌道を修正するという発想が一般的であったのだろうと思われる。格子の乱れと電子軌道は無関係である。格子乱れは格子振動を盛んに励起して原子を動き易くし、自由エネルギーが最小の方向へと原子を推移させることによって初めて修正される。電子を励起する必要はないし無益なことである。本発明はそのような電子軌道と格子振動の違いを強く意識し後者を励起することによって格子乱れを矯正し不純物を活性化するものである。

0030

2μm〜6μmに現れる吸収はダイヤモンドの光学ホノン励起によるものであろうと本発明者は考えている。格子振動であるから電子励起よりも大体1桁エネルギーが小さい。電子を軌道間で励起するには紫外光やそれに近い可視光が必要である。しかし格子振動を励起するには赤外光が適している。2〜6μmという広範囲の吸収が見られるのは多数の異なるモードがあるからである。

0031

先述のようにダイヤモンド単位胞には8つの炭素原子が含まれる。単位胞にs個の原子がある場合、3s個の音響モードと3(s−1)個の光学モードが立つ。従って、ダイヤモンドの場合は3個の音響モードと21の光学モードが存在する。21の光学モードはエネルギーが2μm〜10μmの程度に分布しているのであろう。21のうち7つは縦波、14は横波の光学モードである。縦波は光と相互作用しないであろう。光は横波であるからである。

0032

ところが14個の横波光学モードは光と相互作用をする。イオン結晶のように原子自体が電荷を帯びている場合は格子振動によって分極ができるので光と相互作用するということは明瞭に分かる。ダイヤモンドのように一様な炭素原子の分布が格子振動して光と相互作用するということは多少理解しがたい。しかし4本の共有結合をもつ炭素原子が何れかに偏奇すると電子雲と原子核の中心に差が生ずるはずである。その差によって分極が発生すると考えられる。分極が生じると光の横方向の電界と相互作用することができる。これが2μm〜6μmあるいは10μm程度までの吸収の原因であろうと本発明者は考える。つまりこの吸収はダイヤモンドの光学モード格子振動を励起したので発生するものである。

0033

さらに5.8μmの吸収があるがこれは燐をドープしたときに現れる新たな吸収であり、ドーズ量に比例した吸収を示す。つまり燐と炭素の格子構造の振動と考えられる。

0034

燐の他に窒素、砒素リチウムボロンなどを不純物としてイオン注入するがそれぞれ異なる波長に吸収線を生ずる。つまりこれら不純物と炭素の間の格子構造よりなる振動が励起されて光を吸収していると考える事ができる。いずれも光学ホノンの格子振動が光を吸収しているのである。2μm〜15μmの範囲に吸収線を持っている。不純物原子がホスト原子と格子構造を作るというのは不思議でも何でもないがこれが固有の振動モードを作るということは不思議に思える。が大量の不純物を注入するから表面での不純物濃度が高くてブロッホ関数記述できるような格子構造をつくるのであろう。

0035

レーザ改質の作用を述べる。気相合成法によって基板状に生成されたダイヤモンドにp型不純物またはn型不純物をイオン注入して伝導型を変化させたとする。燐、窒素、砒素、リチウム、ボロン等の不純物原子である。高エネルギーの注入をするので格子構造が擾乱を受ける。炭素原子が所定の位置からずれている。それだけでなく注入された不純物原子が所定の位置にない場合もある。ドーパント(不純物)が正しく炭素原子を置換しないとドーパントは不活性でありp型不純物、n型不純物としての作用を発揮できない。

0036

本発明はこれに格子振動エネルギーEs 或いは構成原子と不純物原子の格子振動エネルギーEt に等しいエネルギーを持つ光をレーザによってダイヤモンドに照射するのである。光のエネルギーは波数νにプランク定数hを掛けたものである。これが共鳴吸収されるのであるから、hν1 =Es 或いはhν2 =Et によって波数νが決まる。波数と波長λはλ=c/νの関係がありここから必要なレーザ光の波長が決まる。それぞれをλ1 、λ2 とする。どちらの光を先に照射しても良い。同時に照射しても差し支えない。

0037

本発明は、連続スペクトルの光ではなくて、波長が決まった単色光を使う。白色光をもしも用いたとすると一部だけが格子振動を励起するために使われるがそのほかの光は無駄になる。効率が悪い。それだけでなくいたずらに結晶温度をあげてしまう。そのためにダイヤモンドが変質しグラファイト化することもある。格子振動だけを励起する波長の光を当てるのでそのような不都合はない。白色光でなく単色光を使うので光源はレーザでなければならない。

0038

本発明において用いられるレーザ光はそれぞれの材料に固有の波長のレーザ光でなければならない。ところが気体レーザ半導体レーザは発生できる光の波長がひとつに決まっている。任意の波長の光を出すという訳にはいかない。ところが本発明は格子振動のエネルギーEs ,Et に等しいエネルギーを持つ光をダイヤモンドに照射するでのそのような波長固有型のレーザでは役に立たない。

0039

これまでEs 、Et と言う表現を用いているがその値が予め分かっているとこれを励起する光の波長を計算できる。しかしEs 等が予め分からないこともある。その場合は連続的に波長を変えて共鳴吸収がおこる波長を探す必要がある。

0040

色素レーザ波はある波長範囲で自在に波長を変化させることができる。しかし色素レーザの場合は出力が弱いし調整可能な波長幅も狭い。

0041

そこで本発明はレーザ光源として自由電子レーザを使う。これは任意の波長のレーザ光を発生させる事ができる。出力も大きいので改質のための光源として最適である。しかし自由電子レーザによって格子振動のエネルギーが一旦特定できるとその波長の光を発生できる半導体レーザやガスレーザをも使用できる可能性がある。

発明を実施するための最良の形態

0042

以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。n型不純物である燐(P)を、人工合成IIa型ダイヤモンドにイオン注入した。イオン注入は目的の元素を含むガスイオン源に入れマイクロ波、熱、光、高周波などによって励起してプラズマとし電界の作用によってこれをイオンビ−ムとして引き出し、高電圧を掛けて加速し、対象物に打ち込む方法である。これは、ドーパントなどを物質に与える方法として良く知られた方法であるから装置などの説明は省略する。燐イオン加速電圧は360keVである。

0043

ドーズ量をかえて4種類の試料を作製した。

0044

試料1: 1.00×1013/cm2

0045

試料2: 1.00×1014/cm2

0046

試料3: 1.00×1015/cm2

0047

試料4: 1.00×1016/cm2

0048

これによってダイヤモンド結晶は損傷を受けている。これを自由電子レーザの光を照射する事によって格子構造を回復する。自由電子レーザは、電子銃で発生した電子ビーム加速器によって光速近くの速度にまで加速しウイグラ磁石などからなる周期磁場の中を通過させ、磁界と電子の相互作用で光を誘導放出させ、誘導放出光反射ミラー間で往復させ反復増幅所定波長の強い光を発生させる。磁場強度磁石ピッチ電子ビームエネルギーなどを調整することによって赤外線領域から紫外線X線領域までの広い範囲に渡る波長の単色光を発生することができる。波長可変レーザであるから波長を変化させながらダイヤモンドにレーザ光を照射し吸収を測定して格子振動に共鳴する波長を探すことができる。

0049

図1によってレーザ光照射装置の概略を説明する。自由電子レーザ10は先述のように光速近くで走行する自由電子軌道を強制的に曲げ制動輻射によって光を発生させ、これを共振器間で往復させ誘導放出を繰り返して位相の揃ったレーザ光とするものである。波長は可変でありパワーは大きい。このレーザ光11をミラー12で反射させZnSeレンズ13によって収束光14とする。これが一定振幅一定周期揺動するガルバノメータミラー15によって反射され試料16の上に照射される。試料16はステージ17の上に固定されている。ビーム進路はレーザからABCDとなるが、ガルバノミラーが軸19の周りに揺動するからビームはDE、DF、DGのように変化し、試料16での照射領域18は点ではなく線分EFGとなる。更にステージ17を線分EFGに垂直方向に動かす事によって二次元広がりを持つ領域にレーザ光を当てる事ができる。

0050

この例に於いて、自由電子レーザ10から出る光は、平行光でビーム径が50mmφである。ZnSeレンズ13は焦点距離が10インチ(254mm)である。ガルバノメータミラーによって試料16面に照射されたビームの径は100μmφ〜200μmφである。

0051

ガルバノメータミラーは慣性が小さく高速の揺動が可能であり速い走査を行う事ができる。ZnSeレンズを使うのは波長の長い赤外光をも通す事ができる為である。初めに述べたようにあまりにエネルギーの高い光を当てるのは実は望ましくない。格子振動のエネルギー程度の長波長の光を当てる方が効果的であり損傷を与えないのでより好ましいのである。赤外光となると通常の酸化物ガラスは吸収が大きく使えない。石英レンズでも不適である。それで赤外線を良く通すZnSeをレンズとする。

0052

自由電子レーザの光について述べる。これは連続光ではない。図2光パワーの時間的な変動を示す。これは幅の極々短いマイクロパルスの群が間欠的に発生するようになっている。つまりパルス発振なのであるが2重にパルス的なのである。マイクロパルスの幅は数ps(ps=10-12 秒)〜10psである。これが44.8ns(ns=10-9秒)毎に発生する。マイクロパルスの持続時間は15μs(μn=10-6秒)である。つまりマイクロパルスの1群は335個のマイクロパルスの繰り返しである。この集合ひとつをマクロパルスと呼ぶ事にする。マクロパルスの周期は0.1s(100ms)である。つまり10Hzである。マイクロパルスのパワー密度は2〜9GW/cm2 (GW=109 W)である。

0053

ダイヤモンド試料面での照射領域は2mm四方正方形(0.04cm2 )である。そこへマクロパルス(10Hz)を3000ショット(5分間)打ち込んだ。試料上を走査(スキャン)しながら200μmφのビームを3000ショット打ち込んだので、面積にすると、0.942cm2 分を照射したことになる。であるから大体20パルス分程度が同じ部分に照射されることになる。

0054

波長を変えながら照射し、どの波長が適当であるかを調べる必要がある。適切な波長を決定するためにフーリエ変換赤外吸収測定法(FT−IR)によって、その吸収度の変化をIR吸収スペクトルとして測定した。試料4(ドーズ量1016cm-2)についての結果を図3に示す。横軸はレーザ光の波長(μm)である。ここでは1μm〜15μmの波長の赤外線を照射している。先に述べたように従来の光による処理は紫外である100nm〜300nm(0.1μm〜0.3μm)という非常に短い波長の光によっていた。これはエネルギーが高すぎて不都合であることは既に説明した。

0055

本発明はダイヤモンドの炭素格子振動のエネルギーと同じエネルギーの光を当てることにするので初めから赤外光を当てることにする。格子振動のエネルギーは紫外域にはなく赤外線領域にあるはずであるからである。それで1μm〜15μmの範囲にあるものと予想して波長をこの範囲で変えて吸収を測った。

0056

測定の結果から4μm〜6μmの赤外光が強く吸収されるということが分かった。これはダイヤモンドの多数の光学ホノンモードを励起することによる吸収だと考えられる。一般に格子乱れがある場合は、C−C格子振動を励起するために4μm〜6μmの光を照射するのが有効であろうということがわかる。そのほかの部分では透過率が60%〜70%であるから、30〜40%に吸収があるわけで、2μm〜15μmの波長の光でも有効である。

0057

また燐をドープしたときは5.8μmにイオン注入による吸収が新たに現れるということが分かった。これはP−C格子振動のエネルギーに等しいと考えられる。そこでこれと同じエネルギーの光を結晶に与えると格子振動が励起されるはずである。もしも光によってP−C格子振動を励起できればその近くの格子乱れが修復されるであろう。それに格子間にある燐(P)原子もこれによって揺さぶられるから自由エネルギーの低い所定の位置に推移することであろう。

0058

そこで5.8μmの波長の光を照射することにする。自由電子レーザの出射光の波長を5.8μmに固定してこれをダイヤモンド結晶に照射した。照射前と照射後での結晶の抵抗率の変化を全試料について調べ、試料4についてラマン散乱変化を調べた。イオン注入による不純物が定まった位置に入れば抵抗率は下がるはずである。ラマン分光は結晶性が向上したかどうかを調べるためである。結晶性が良くなればダイヤモンドに対応する1333cm-1のピークが上がるはずである。

0059

予想の通りであって、図4に示すように、赤外光照射前のダイヤモンドのピークが440程度であるのに、赤外光照射後のピークは530程度に上昇している。ラマンのピークはダイヤモンド結晶を同定する場合に用いられる。これが高いということはより高品質のダイヤモンドであるということである。5.8μm赤外光照射前後でのドーズ量別にダイヤモンドの抵抗率の測定値を表1に示す。

0060

0061

この表によればレーザ光照射によってダイヤモンドの結晶性が回復し抵抗率が著しく低下していることがわかる。試料1のように燐のドーズ量の少ないものは、当然に抵抗が高いのであるが、レーザ光照射によって約105 倍に導電率が上がっている。まことに著しい効果である。試料2はドーズ量が10倍であるが照射前は抵抗率が高くてn型半導体としては利用できない。それがレーザ照射によって106 倍にも導電率が高揚している。

0062

試料3はさらにドーズ量が10倍である。未処理の時は抵抗率が107 Ωcmにも達しておりなおn型半導体としては機能しない。それがレーザ照射処理によって105 倍以上に導電率が上がる。200Ωcmであれば半導体素子のn型領域として十分である。試料4はさらにドーズ量を10倍にしたものである。試料3と試料4の違いはドーズ量にすると10倍にすぎないが未処理における導電率の変化は大きく約106 倍にもなる。

0063

試料4のように高レベルに燐をドープしたときは未処理での導電率がそもそも高いのでレーザ光による効果は小さくなる。それでもレーザ処理によって約3倍に導電性が向上している。ドープ量によってその効果に違いがあるが、いずれのドープレベルにおいても、格子振動に共鳴する波長の光によって効果的にイオン注入後のダイヤモンドの結晶性を高めることができるのである。

0064

さらにホール測定により電荷の種類を調べた。これらの試料は全てn型伝導を示した(ホール係数が負)ので不純物としてドープした燐(P)が活性化して抵抗率が低下したということである。

0065

レーザ光波長依存性]試料3(ドーズ量1015/cm2 )について照射するレーザ光の波長を変えてその抵抗率変化を測定した。これは結晶性の回復の度合いの波長依存性を調べるためである。結晶性が高揚すると導電性が高まるので結晶性の評価尺度として導電性を使っているのである。図5にその結果を示す。横軸は照射したレーザ光の波長である。1μm〜20μmの範囲でレーザ光を発振させこれを試料3に照射した。初めの抵抗率は表1に示すように約6×107 Ωcmである。レーザ波長が1μmでは効果がない事が分かる。また15μm以上でも効果がない。

0066

λ=5.8μmで最も効果的であり200Ωcmに低下している。これがダイヤモンド中のP−C格子振動のエネルギーを表している事が分かる。さらにこの前後の3.8μm〜6.2μmでも抵抗率低下は著しい。3μm〜8μmのレーザ光処理によって抵抗率は103 Ωcm以下になっている。さらに2μm〜14μmまでの波長のレーザ光は抵抗率低下に何らかの効果があることがわかる。これらはC−C間の振動モードの何れかを励起するエネルギーなのであろう。

0067

ショットキーダイオード製作]こうして燐ドープn型ダイヤモンドが得られたのでその上にAl電極を形成しショットキーダイオードを製作した。このダイオードに正逆に電圧印加ダイオード特性を調べた。整流性のあることが確認された。n型領域の抵抗が低いので順方向抵抗が少ない。

0068

pn接合ダイオードの製作]燐ドープn型ダイヤモンドとボロンドープダイヤモンド接合を作りTi電極をつけpn接合ダイオードを作った。ボロンドープダイヤモンドについても本発明の手法に従ってレーザ光を照射してボロンの活性を高めることができた。ボロンドープダイヤモンドについては活性化率を7%から11%に高めることができた。pn電極間に順逆に電圧を印加し整流性があることを確認した。順方向の導電性は十分に高かった。さらに順方向に電流を流して接合部から紫外光が発生していることが確認された。つまりダイヤモンド発光ダイオードとして機能しているのである。
素子アイソレーション]自由電子レーザを素子形成部のみ照射して複数の素子の間で電気的絶縁をとることができた。つまり平面的または空間的に限定された領域にレーザ光を当ててダイヤモンドを局所的に改質することもできる。

発明の効果

0069

この発明のダイヤモンドの改質方法は、ダイヤモンドの構成原子の格子振動に共鳴吸収する波長あるいは不純物原子の格子振動に共鳴吸収する波長の赤外レーザ光を格子乱れのあるダイヤモンドに照射する。赤外光の照射により結晶構造の秩序化を図ると共に、電気的担体を活性化できる。ドーパントを活性化できるために十分な導電性をもったp型、n型ダイヤモンドを作製できる。これを利用してダイヤモンドの電子デバイス光デバイスを作製することができる。

0070

不純物を含むダイヤモンドの全てに本発明を適用することができる。イオン注入によって強制的に不純物を導入した場合について説明したが、それに限らない。不純物を含む原料ガスを使って基板の上にダイヤモンド膜エピタキシャル成長させた場合においても本発明の改質方法を利用することができる。

図面の簡単な説明

0071

図1自由電子レーザからの単色光を走査してダイヤモンド試料に照射するようにした本発明の改質方法の原理を示す構成図。
図2本発明でダイヤモンド改質のために用いた自由電子レーザのマイクロパルス群とマクロパルスの波形図。幅が数psで周期が44.8nmのマイクロパルスが15μs間持続したものがひとつのマクロパルスを構成し、マクロパルスが0.1sの周期で繰り返している。
図3本発明において波長を1μm〜15μmの範囲で変化させてドーズ量が1016cm-2の燐ドープダイヤモンドに照射したときの透過率スペクトル。横軸は波長(μm)、縦軸は透過率(%)である。
図4ドーズ量が1016cm-2の燐ドープダイヤモンドにおいて、自由電子レーザ照射前のラマンシフトスペクトルと、照射後のラマンシフトスペクトル。横軸はラマンシフト(cm-1)、縦軸は信号強度(INTENSITY )。1333cm-1がダイヤモンド結合からの信号のラマンシフトである。
図5燐のドーズ量が1016cm-2である試料において自由電子レーザ光波長を変えて照射した時の抵抗率変化を示すグラフ。横軸はレーザ光の波長(μm)で1μm〜20μmである。縦軸は抵抗率(Ωcm)である。3μm〜8μmにおいて抵抗率の低下が著しい。

--

0072

10自由電子レーザ
11レーザビーム
12ミラー
13レンズ
14 レーザビーム(収束光)
15ガルバノメータミラー
16試料
17ステージ
18照射領域
19 軸

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