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課題
解決手段
概要
背景
(R)−(−)−ムスコンは、天然麝香の主香成分であり、天然麝香中に0.5〜2.0重量%含有されている。また、(R)−(−)−ムスコンと(S)−(+)−ムスコンとの香気を比較すると、(R)−(−)−ムスコンは、拡散性が優れたボリューム感ある強いムスク香(閾値:3ppm)であるのに対し、(S)−(+)−ムスコンは、化学的で広がりのない貧弱な弱いムスク香(閾値:10ppm)であり、(−)体の方が(+)体よりムスク香が3倍強いことが報告されている(印藤元一著、「合成香料」、492〜495頁)。
従来、この光学活性ムスコンである(R)−(−)−ムスコンは、主として以下の4つの方法で製造されていた。
出発原料として光学活性体を用いる方法。例えば、(S)−4−ブロモ−3−メチルブタンニトリルを用いる方法(J.Org.Chem.1990,55, 820〜826頁等)がある。
(E)−2−シクロペンタデセン−1−オンに触媒の存在下で、不斉マイケル反応させる方法(J.Chem. Soc., Chem. Commun,1990,795〜797頁等)がある。
3−メチル−2−シクロペンタデセン−1−オンを光学活性ホスフィン錯体を触媒として、不斉水素化する方法(特開平6−192161)がある。
酵素触媒を用いた光学分割法(第39回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会要旨集,1995,177〜178頁)がある。
概要
特定の酵素を用いることにより、光学分割された光学活性ムスコンを、従来より安価で簡便に合成することができ、且つ光学活性体を分離して得ることができる製造方法を提供する。
化1で表わされるアルコールに、有機溶媒中でアシル化剤の存在下、細菌由来の加水分解酵素を作用させることにより、不斉エステル化反応を行い、次いで加水分解し、その後酸化を行う。また、該アルコールに該酵素を作用させ、不斉エステル化反応を行い、その後生成物と未反応物とを分離した後、加水分解し酸化する。さらに、該未反応物を酸化する。
目的
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、特定の酵素を用いることにより、光学分割された光学活性ムスコンを、従来より安価で簡便に合成することができ、且つ光学活性体である(R)−(−)−ムスコン及び(S)−(+)−ムスコンを得ることができる製造方法を提供することを目的としている。
効果
実績
- 技術文献被引用数
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請求項1
請求項
ID=000003HE=025 WI=015 LX=0525 LY=0450で表わされるアルコールに、有機溶媒中でアシル化剤の存在下、細菌由来の加水分解酵素を作用させることにより、不斉エステル化反応を行い、次いで加水分解し、その後酸化を行うことを特徴とする光学活性ムスコンの製造方法。
請求項2
該有機溶媒が、ジエチルエーテル、IPE、THF等のエーテル系溶媒、アセトン、アセトニトリル、ヘキサン、シクロヘキサン及びトルエンから成る群から選ばれる一種である請求項1記載の光学活性ムスコンの製造方法。
請求項3
アシル化剤が、酢酸ビニルエステル類、酢酸イソプロペニル、コハク酸無水物等の酸無水物及びジケテンからなる群から選ばれる一種である請求項1記載の光学活性ムスコンの製造方法。
請求項4
光学活性ムスコンが、天然型の(R)−(−)−ムスコンである請求項1から3の何れか一項に記載の光学活性ムスコンの製造方法。
請求項5
化1で表わされるアルコールに、細菌由来の加水分解酵素を作用させることにより、不斉エステル化反応を行い、生成物であるエステル体と未反応物であるアルコールを分離した後、加水分解し、次いで酸化することを特徴とする光学活性ムスコンの製造方法。
請求項6
光学活性ムスコンが、天然型の(R)−(−)−ムスコンである請求項5記載の光学活性ムスコンの製造方法。
請求項7
請求項5記載の未反応物であるアルコールを酸化することにより、得られることを特徴とする光学活性ムスコンの製造方法。
請求項8
光学活性ムスコンが、(S)−(+)−ムスコンである請求項7記載の光学活性ムスコンの製造方法。
技術分野
0001
本発明は、光学活性ムスコン、特に天然型の(R)−(−)−ムスコン又は(S)−(+)−ムスコンの製造方法に関する。詳細には、細菌由来のリパーゼを用いて、(R)−(−)−ムスコンの前駆体である化1で表わされるアルコールを光学分割した後、加水分解を行い、次いで酸化することにより、麝香鹿から採取される高価な香料である天然型の(R)−(−)−ムスコンを製造する方法に関する。
背景技術
0002
(R)−(−)−ムスコンは、天然麝香の主香成分であり、天然麝香中に0.5〜2.0重量%含有されている。また、(R)−(−)−ムスコンと(S)−(+)−ムスコンとの香気を比較すると、(R)−(−)−ムスコンは、拡散性が優れたボリューム感ある強いムスク香(閾値:3ppm)であるのに対し、(S)−(+)−ムスコンは、化学的で広がりのない貧弱な弱いムスク香(閾値:10ppm)であり、(−)体の方が(+)体よりムスク香が3倍強いことが報告されている(印藤元一著、「合成香料」、492〜495頁)。
0003
従来、この光学活性ムスコンである(R)−(−)−ムスコンは、主として以下の4つの方法で製造されていた。
出発原料として光学活性体を用いる方法。例えば、(S)−4−ブロモ−3−メチルブタンニトリルを用いる方法(J.Org.Chem.1990,55, 820〜826頁等)がある。
(E)−2−シクロペンタデセン−1−オンに触媒の存在下で、不斉マイケル反応させる方法(J.Chem. Soc., Chem. Commun,1990,795〜797頁等)がある。
3−メチル−2−シクロペンタデセン−1−オンを光学活性ホスフィン錯体を触媒として、不斉水素化する方法(特開平6−192161)がある。
酵素触媒を用いた光学分割法(第39回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会要旨集,1995,177〜178頁)がある。
発明が解決しようとする課題
0004
しかしながら、上記の従来の製造方法の内、第1の方法は、いずれの製造方法も多工程であり、出発原料の合成も困難である。また、第2の方法は、高価な触媒が原料に対して約2倍モル必要であり、さらに−78℃の低温で反応を行わなければならない。さらに、第3の方法は、不斉水素化反応の基質となる(E)−及び(Z)−3−メチル−2−シクロペンタデセン−1−オンを合成する際に用いる触媒が高価で不安定なものであるばかりか、高度希釈法で合成する必要がある。さらに、不斉水素化を実行するには、(E)−体及び(Z)−体の分離を完全に行わなければならないが、それぞれの分離が困難であり、また収率も低い。さらにまた、第4の方法は、化学合成法に比べて、高価な試薬や複雑な工程を必要としない方法である。しかし、原料となるアルコールは不斉炭素が2個存在するため、図1で示すように、4種類の立体異性体が存在し、Pseudomonas sp.由来の酵素(リパーゼAK、天野製薬株式会社(製))はこれら異性体のうちの一種類のみしか選択的に反応せず、それ故に収率がかなり低い。さらに,反応時間も長い。以上のことからも光学活性ムスコンである(R)−(−)−ムスコンの工業的製造が困難である。以上のように、上記〜のいずれの製造方法も光学活性ムスコンである(R)−(−)−ムスコンの製造方法としては、満足できるものではなかった。
0005
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、特定の酵素を用いることにより、光学分割された光学活性ムスコンを、従来より安価で簡便に合成することができ、且つ光学活性体である(R)−(−)−ムスコン及び(S)−(+)−ムスコンを得ることができる製造方法を提供することを目的としている。
課題を解決するための手段
0006
以上のことから、本発明者は、酵素触媒を用いる光学活性ムスコンの製造方法について、鋭意検討した結果、出発原料として3−メチルシクロペンタデカン−1−オールを採用し、細菌由来の加水分解酵素を触媒として不斉エステル化を行った後、加水分解し、次いで酸化を行えば、上記の課題を解決できることを見出した。
0007
即ち、本発明は、化1で表わされるアルコールに、有機溶媒中でアシル化剤の存在下、細菌由来の加水分解酵素を作用させることにより、不斉エステル化反応を行い、次いで加水分解し、その後酸化を行うことを特徴とする光学活性ムスコンの製造方法である。光学活性ムスコンとしては、天然型の(R)−(−)−ムスコンを、上記の製造方法により得ることができる。また、本発明は、化1で表わされるアルコールに、細菌由来の加水分解酵素を作用させることにより、不斉エステル化反応を行い、生成物であるエステル体と未反応物であるアルコールを分離した後、加水分解し、次いで酸化することを特徴とする光学活性ムスコンの製造方法である。光学活性ムスコンとしては、天然型の(R)−(−)−ムスコンを、上記の製造方法により得ることができる。さらに、上記の未反応物であるアルコールを酸化することにより、得られることを特徴とする光学活性ムスコンの製造方法である。光学活性ムスコンとしては、(S)−(+)−ムスコンを、上記の製造方法により得ることができる。
0009
本発明において、使用できるアシル化剤即ちアシルドナーは、特に限定されるものではないが、酢酸イソプロペニルが最も好ましい。その他のアシルドナーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及び酪酸ビニル等のRが炭素数1〜17の飽和カルボン酸ビニル類、アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル等の不飽和カルボン酸ビニル類、芳香族カルボン酸ビニル類、コハク酸無水物、及びグルタル酸無水物等の酸無水物類等を挙げることができる。
0010
本発明の光学活性ムスコンの出発原料である3−メチルシクロペンタデカン−1−オールは、図1に示すように、4種類の立体異性体が存在する。しかし、本発明においては、ラセミムスコンの還元により得た3−メチルシクロペンタデカン−1−オールを原料とした場合、水酸基の立体異性体が、いかなる比率で存在しようとも、高い光学純度且つ高収率で光学活性ムスコンを得ることができる。
0011
本発明において用いられるリパーゼは、細菌由来(Alcaligenes sp.)のものが選択される。酵素の起源としてCandida cylindracea nov.sp.、 Mucor javanicus、 Aspergillus niger 等に由来するリパーゼを用いてもアシル化反応が殆ど進行しないか、進行しても得られるエステル体の光学純度が非常に低いものしか得られない。また、Pseudomonas sp. 由来のリパーゼ(リパーゼAK、天野製薬株式会社(製))を用いると非常に高い光学純度のムスコンが得られるが、収率がかなり低くなる(第39回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会要旨集,1995,177〜178頁)。本発明において用いられる細菌由来(Alcaligenes sp.)のリパーゼは、種々のものが市販されており、本発明では、これらの市販品をそのまま用いることができる。具体例としては、リパーゼQL(名糖産業社(製)、加水分解活性=30000ユニット/g。尚、37℃で1分間に1マイクロモルの脂肪酸を遊離する酵素量を1単位とした。)を挙げることができる。
0013
本発明を実施するには、反応容器に3−メチルシクロペンタデカン−1−オールを入れ、さらに有機溶媒を加え混合液とする。混合液中の3−メチルシクロペンタデカン−1−オールの濃度は、約0.04〜0.4モル/リットルとなるように調整する。次いで、得られた混合液に、アシル化剤を3−メチルシクロペンタデカン−1−オールと等モル加え、さらに細菌由来の加水分解酵素を、力価が約30000ユニット/gのもので約20〜50重量%となるように加える。リパーゼを添加した混合液を混和し、室温で攪拌することにより、不斉エステル化反応を行う。反応時間は、通常24時間〜20日間であるが、反応温度、酵素の量及び溶媒等を変えることにより、反応時間を短縮することも可能である。
0014
反応終了後、酵素を濾過除去し、反応生成物である3−メチルシクロペンタデカン−1−オールのエステル体と未反応物である3−メチルシクロペンタデカン−1−オールの混合物を回収する。得られた混合物から、反応生成物と未反応物を分離するには、蒸留あるいはシリカゲルカラムクロマトグラフィー等の操作を行う。
0015
得られたエステル体は、常法に従い、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリを用いて加水分解し、さらにジョーンズ試薬等で酸化すれば、天然型(R)−(−)−ムスコンを得ることができる。さらに、未反応物を、そのまま酸化すれば、(S)−(+)−ムスコンを得ることができる。
発明を実施するための最良の形態
0016
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例中の分析は、次の分析機器を用いておこなった。
3−メチルシクロペンタデカン−1−オールのエステル化率;
ガスクロマトグラフィー:5880A (ヒューレットパッカード(社)製)
カラム:HP-20M(Carbowax 20M)50m ×0.2mm ×0.1 μm (ヒューレットパッカード(社)製)
温度:200℃(定温)
光学活性ムスコンの旋光度;
旋光光度計:DIP−370(JASCO)
0017
(実施例1)シクロヘキサン10mlに3−メチルシクロペンタデカン−1−オール1g(4.16mmol)を溶解し、その混合物中に酢酸イソプロペニル416mg(4.16mmol)を加え、さらにリパーゼQL(名糖産業(社)製、加水分解活性=30000ユニット/g、以下同様)500mgを加え、室温で6日間攪拌した。反応の進行は、ガスクロマトグラフィーで確認し、原料と反応生成物の量がほぼ等しくなった時点をもって反応の終点とした。反応終了後、酵素を除去し、エバポレーターを用いて溶媒を留去し、反応生成物と未反応物の混合物を得た。得られた混合物から、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1(体積比))を用いて反応生成物を529mg(収率45%)と未反応物465mg(収率46.5%)を得た。得られた反応生成物はメタノール10mlに溶解し、その後水酸化ナトリウム100mgを加え、1時間還流する。反応終了後、反応溶液をジエチルエーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去し、反応生成物を412mg(3−メチルシクロペンタデカン−1−オールからの収率41.2%)得た。反応生成物は、アセトン40mlに溶解し、ジョーンズ試薬を適量加え、その後1時間撹拌する。反応終了後、反応溶液をジエチルエーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=40:1(体積比))を用いて天然型の(R)−(−)−ムスコンを398mg(3−メチルシクロペンタデカン−1−オールからの収率40.1%)単離精製した。更に、未反応物を上記と同様の方法で酸化し、(S)−(+)−ムスコン423mg(3−メチルシクロペンタデカン−1−オールからの収率42.7%)を得た。
0018
得られた(R)−(−)−ムスコンの比旋光度は[α]D25 =−11.4°(C=1.02,メタノール)であった。(R)−(−)−ムスコンの比旋光度が[α]D =−11.7°(C=0.80,メタノール)(Helv.Chim.Acta ,60巻、1977、925頁)であることから、上記の(R)−(−)−ムスコンの光学純度が文献値と極めて近いと考えられる。また、得られた(S)−(+)−ムスコンの比旋光度は[α]D25 =−11.3°(C=1.02,メタノール)であった。
0019
(実施例2)トルエン100mlに3−メチルシクロペンタデカン−1−オール1g(4.16mmol)を溶解し、その混合物中にコハク酸無水物416mg(4.16mmol)を加え、さらにリパーゼQL(名糖産業(社)製、加水分解活性=30000ユニット/g、以下同様)500mgを加え、室温で1週間攪拌した。反応終了後、酵素を除去し、1M炭酸ナトリウム水溶液で処理し、得られた水層に水酸化ナトリウム100mgを加えて1時間還流した。反応終了後、反応溶液をジエチルエーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去し、反応生成物280mg(3−メチルシクロペンタデカン−1−オールからの収率28%)を得た。また、酵素反応で未反応であったアルコールは有機層に残り、有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去し、未反応物を690mg(収率69%)得た。反応生成物及び未反応物とも実施例1と同様の方法で酸化し、それぞれ(R)−(−)−ムスコン251mg(3−メチルシクロペンタデカン−1−オールからの収率25.3%)及び(S)−(+)−ムスコン620mg(3−メチルシクロペンタデカン−1−オールからの収率62.5%)を得た。
0020
得られた(R)−(−)−ムスコンの比旋光度は[α]D25 =−11.9°(C=1.02,メタノール)であった。(R)−(−)−ムスコンの比旋光度が[α]D =−11.7°(C=0.80,メタノール)(Helv.Chim.Acta ,60巻、1977、925頁)であることから、上記の(R)−(−)−ムスコンの光学純度は天然型とほぼ同じであると考えられる。また、得られた(S)−(+)−ムスコンの比旋光度は[α]D25 =−5.7°(C=1.13,メタノール)であった。
(実施例3)シクロヘキサン100mlに3−メチルシクロペンタデカン−1−オール10g(41.6mmol)を溶解し、そこへ酢酸イソプロペニル4.16g(41.6mmol)を加え、さらにリパーゼQL(名糖産業社製、加水分解活性=30000ユニット/g以下同様)2gを加え温室で14日間攪拌した。反応の進行は、ガスクロマトグラフィーで確認し、原料と反応生成物の量がほぼ等しくなった時点をもって反応の終点とした。反応終了後、酵素を除去し、エバポレーターを用いて溶媒を留去し反応生成物と未反応物の混合物を得た。得られた混合物にトリメトキシボラン1.08g(10.4mmol)を加え減圧蒸留(110〜130℃/1mmHg)し、反応生成物を5.30g(収率45.1%)と未反応物4.72g(収率47.2%)を得た。得られた反応生成物はメタノール100mlに溶解し水酸化ナトリウム1gを加え、1.5時間還流する。反応終了後、反応溶液を酢酸エチルで抽出し飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去し、反応生成物を4.18g(3−メチルシクロペンタデカン−1−オールからの収率41.8%)得た。反応生成物は、70%アセトニトリル水溶液100mlに溶解し、臭素酸ナトリウム2.63g(17.4mmol)、硝酸第二セリウムアンモニウム0.95g(1.74mol)を加え1時間還流する。反応終了後、反応溶液をジエチルエーテルで抽出し飽和食塩水、重曹水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去する。残渣を減圧蒸留(170〜175℃/1mmHg)し(R)−(−)−ムスコン(天然型ムスコン)を4.01g(3−メチルシクロペンタデカン−1−オールからの収率40.4%)単離精製した。更に、未反応物を酸性処理した後、上記と同様の方法で酸化し、(S)−(+)−ムスコン4.25g(3−メチルシクロペンタデカン−1−オールからの収率42.9%)を得た。得られた(R)−(−)−ムスコンの比旋光度は[α]D25 =−11.5°(C=1.02,メタノール)であった。(R)−(−)−ムスコンの比旋光度が[α]D =−11.7°(C=0.80,メタノール)(Helv.Chim.Acta ,60巻、1977、925頁)であることから、上記の(R)−(−)−ムスコンの光学純度が文献値と極めて近いと考えられる。また、得られた(S)−(+)−ムスコンの比旋光度は[α]D25 =−11.4°(C=1.03,メタノール)であった。
発明の効果
0021
本発明によって、出発原料である3−メチルシクロペンタデカン−1−オールは、4種類の立体異性体が存在するが、ラセミムスコンの還元により得た3−メチルシクロペンタデカン−1−オールを原料とした場合、水酸基の立体異性体がいかなる比率で存在しようとも、光学活性ムスコンを大量に合成することが可能となり、本発明の方法は、香料として有用な光学活性ムスコンを工業的に製造することのできるきわめて有効な方法である。
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