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技術 結晶配向性硬質膜を含む積層被膜部材

出願人 株式会社タンガロイ
発明者 木幡護渡辺敏行関克彦
出願日 1997年5月28日 (23年6ヶ月経過) 出願番号 1997-155835
公開日 1998年12月15日 (22年0ヶ月経過) 公開番号 1998-330914
状態 特許登録済
技術分野 CVD バイト、中ぐり工具、ホルダ及びタレット 金属の他の加工と複合作業 その他の表面処理 ダイヤモンド又は金属化合物を含有する合金 物理蒸着
主要キーワード 窒化チタン被膜 耐摩耗用 JIS規格 グロー放電発光分析装置 積層被膜 高硬度性 面強度比 積層被覆
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この項目の情報は公開日時点(1998年12月15日)のものです。
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課題

低温領域から高温領域に至るまでの広い領域において、高靭性高硬度性耐摩耗性耐酸化性耐熱衝撃性耐欠損性耐溶着性のある硬質膜および耐剥離性を有し、結晶配向性の異なる2層以上の硬質膜を積層被覆

解決手段

第1被膜層と第2被膜層の両層はチタンアルミニウムとの窒化物炭窒化物窒酸化物炭酸化物炭窒酸化物の中の1種の単層または2種以上の多層からなり、該第1被膜層はX線回折により求めた結晶面のピーク強度が(200)結晶面に最大高さを有し、該第2被膜層はX線回折により求めた結晶面のピーク強度が(111)結晶面に最大高さを有する、基材の上に、結晶の配向性が異なる第1被膜層と第2被膜層とが積層被覆されておる、結晶配向性硬質膜を含む積層被覆部材。

概要

背景

金属、合金およびセラミックス基材上に厚さが20μm以下のセラミックスの被膜被覆し、基材と被膜とのそれぞれの特性を有効に引き出して、長寿命を達成しようとした被覆部材が多数提案されている。この被覆部材における被膜方法は、大別すると化学蒸着法CVD法)と物理蒸着法PVD法)がある。これらのうち、特にPVD法により被覆された被膜は、基材の強度を劣化させることなく耐摩耗性を高める利点がある。そのために、一般に強度,耐欠損性を重要視するドリルエンドミルフライス用スロ−アウェイチップに代表される被覆切削工具の被膜は、PVD法により被覆されているのが現状である。

従来から耐摩耗性を向上させるために窒化チタンに代表されるTi化合物の被膜を被覆することはよく知られている。しかしながら、窒化チタンを代表とする金属窒化物高温酸化されやすく、耐摩耗性が著しく劣化するという問題がある。この窒化チタン被膜の酸化の問題を改善しょうとして1980年代から提案されたものに、(Ti,Al)化合物の被膜に代表される被覆部材に関するものがあり、その代表的なものとして特開昭62−56565号公報,特開平6−210502号公報,特開平6−210511号公報および特開平7−197235号公報がある。

一方、基材の表面に被覆する被膜を結晶配向させて、被膜の付着性を高めることが提案されており、その代表的なものとして特開昭56−156767号公報,特開平2−159363号公報,特開平5−287322号公報,特開平5−287323号公報および特開平5−295517号公報がある。

概要

低温領域から高温領域に至るまでの広い領域において、高靭性高硬度性、耐摩耗性、耐酸化性耐熱衝撃性、耐欠損性、耐溶着性のある硬質膜および耐剥離性を有し、結晶配向性の異なる2層以上の硬質膜を積層被覆

第1被膜層と第2被膜層の両層はチタンアルミニウムとの窒化物炭窒化物窒酸化物炭酸化物炭窒酸化物の中の1種の単層または2種以上の多層からなり、該第1被膜層はX線回折により求めた結晶面のピーク強度が(200)結晶面に最大高さを有し、該第2被膜層はX線回折により求めた結晶面のピーク強度が(111)結晶面に最大高さを有する、基材の上に、結晶の配向性が異なる第1被膜層と第2被膜層とが積層被覆されておる、結晶配向性硬質膜を含む積層被覆部材。

目的

本発明は、上述のような問題点を解決したもので、具体的には、低温領域から高温領域に至るまでの広い領域において、高靭性,高硬度性,耐摩耗性,耐酸化性,耐熱衝撃性,耐欠損性,耐溶着性のある硬質膜および耐剥離性を有し、結晶配向性の異なる2層以上の硬質膜を積層被覆することにより、さらに長寿命化を達成させた結晶配向性硬質膜を含む積層被覆部材の提供を目的とするものである。

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
5件

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請求項1

基材の上に、結晶配向性が異なる第1被膜層と第2被膜層とを積層被覆されており、該第1被膜層と該第2被膜層の両層はチタンアルミニウムとの窒化物炭窒化物窒酸化物炭酸化物炭窒酸化物の中の1種の単層または2種以上の多層からなり、該第1被膜層はX線回折により求めた結晶面のピーク強度が(200)結晶面に最大高さを有し、該第2被膜層はX線回折により求めた結晶面のピーク強度が(111)結晶面に最大高さを有することを特徴とする結晶配向性硬質膜を含む積層被覆部材。

請求項2

上記基材は、超硬合金またはサーメット焼結合金からなることを特徴とする請求項1記載の結晶配向性硬質膜を含む積層被覆部材。

請求項3

上記第1被膜層は、X線回折により求めた(111)結晶面に対する(200)結晶面の強度比が2〜100であることを特徴とする請求項1または2記載の結晶配向性硬質膜を含む積層被覆部材。

請求項4

上記第1被膜層は、該第1被膜層中に含有する金属元素であるTi元素対Al元素の原子比率が、48〜75:52〜25であることを特徴とする請求項1,2または3記載の結晶配向性硬質膜を含む積層被覆部材。

請求項5

上記第2被膜層は、X線回折により求めた(200)結晶面に対する(111)結晶面の強度比が1.5以上であることを特徴とする請求項1,2,3または4記載の結晶配向性硬質膜を含む積層被覆部材。

請求項6

上記第2被膜層は、膜厚さが0.01μm〜2.0μmであることを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載の結晶配向性硬質膜を含む積層被覆部材。

請求項7

上記第2被膜層は、該第2被膜層中に含有する金属元素であるTi元素対Al元素の原子比率が、48〜75:52〜25であることを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6記載の結晶配向性硬質膜を含む積層被覆部材。

請求項8

上記第1被膜層と上記第2被膜層の合計層厚さは、0.6μm〜5μmであって、かつ該第1被膜層の層厚さが該第2被膜層の層厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6または7記載の結晶配向性硬質膜を含む積層被覆部材。

請求項9

上記第1被膜層と上記第2被膜層とが隣接した2層以上に積層されていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7または8記載の結晶配向性硬質膜を含む積層被覆部材。

請求項10

上記第1被膜層は、上記基材側に被覆されており、上記第2被膜層は、該第1被膜層に隣接して被覆されていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8または9記載の結晶配向性硬質膜を含む積層被覆部材。

請求項11

上記第2被膜層は、上記第1被膜層によりサンドイッチ状に挟持された状態に被覆されていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9または10記載の結晶配向性硬質膜を含む積層被覆部材。

請求項12

上記積層被覆部材は、回転切削工具として用いられることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10または11記載の結晶配向性硬質膜を含む積層被覆部材。

技術分野

0001

本発明は、金属、合金またはセラミックス焼結体基材上に(200)結晶面を成長させたチタンアルミニウムとの窒化物炭窒化物窒酸化物炭酸化物炭窒酸化物でなる(Ti,Al)化合物硬質膜を1層以上と、(111)結晶面を成長させたチタンとアルミニウムとの窒化物,炭窒化物,窒酸化物,炭酸化物,炭窒酸化物でなる(Ti,Al)化合物の硬質膜を1層以上とを積層被覆した結晶配向性硬質膜を含む積層被覆部材に関し、具体的には、金属、合金またはセラミックス焼結体の基材上に結晶構造の異なる2種類の(Ti,Al)化合物の被膜を積層被覆し、さらなる耐剥離性高硬度性,および高靭性を達成させて、例えば旋削工具フライス工具ドリルエンドミルに代表される切削用工具スリッタ−などの切断刃裁断刃ダイスパンチなどの型工具ノズルなどの耐腐食耐摩耗部材に代表される耐摩耗用工具トンネル掘削ビット建築用工具に代表される土木建設用工具として最適な結晶配向性硬質膜を含む積層被覆部材に関する。

背景技術

0002

金属、合金およびセラミックスの基材上に厚さが20μm以下のセラミックスの被膜を被覆し、基材と被膜とのそれぞれの特性を有効に引き出して、長寿命を達成しようとした被覆部材が多数提案されている。この被覆部材における被膜方法は、大別すると化学蒸着法CVD法)と物理蒸着法PVD法)がある。これらのうち、特にPVD法により被覆された被膜は、基材の強度を劣化させることなく耐摩耗性を高める利点がある。そのために、一般に強度,耐欠損性を重要視するドリル、エンドミル、フライス用スロ−アウェイチップに代表される被覆切削工具の被膜は、PVD法により被覆されているのが現状である。

0003

従来から耐摩耗性を向上させるために窒化チタンに代表されるTi化合物の被膜を被覆することはよく知られている。しかしながら、窒化チタンを代表とする金属窒化物高温酸化されやすく、耐摩耗性が著しく劣化するという問題がある。この窒化チタン被膜の酸化の問題を改善しょうとして1980年代から提案されたものに、(Ti,Al)化合物の被膜に代表される被覆部材に関するものがあり、その代表的なものとして特開昭62−56565号公報,特開平6−210502号公報,特開平6−210511号公報および特開平7−197235号公報がある。

0004

一方、基材の表面に被覆する被膜を結晶配向させて、被膜の付着性を高めることが提案されており、その代表的なものとして特開昭56−156767号公報,特開平2−159363号公報,特開平5−287322号公報,特開平5−287323号公報および特開平5−295517号公報がある。

発明が解決しようとする課題

0005

(Ti,Al)化合物の被膜に関する先行技術としての特開昭62−56565号公報,特開平6−210502号公報,特開平6−210511号公報および特開平7−197235号公報には、基材の表面に(Ti,Al)の炭化物,窒化物および炭窒化物のうちの1種の単層または2種以上の複層でなる硬質被膜層を形成した耐摩耗性に優れた表面被覆硬質部材について開示されている。

0006

これらの公報に開示の表面被覆硬質部材に代表される従来の(Ti,Al)化合物の被膜は、開発当初の通りにTi化合物の被膜に比べて耐酸化性および耐摩耗性の向上した被膜ではあるが、(111)結晶面が成長した(Ti,Al)化合物の被膜であって、被膜と基材との密着性が劣ること、被膜自体の機械的性質が劣化しやすいことから、工具、特に苛酷な条件で用いられる切削工具へ適用した場合に切削性能が低下するという問題がある。つまり、同公報に記載の表面被覆硬質部材は、被膜中にAlを含有させることにより、Ti化合物の被膜に比較して被膜表面における化学的性質の向上を達成した反面、基材と被膜との界面における結晶構造的な配慮がされていないことから、被膜の耐剥離性および強度が劣り、表面被覆硬質部材の破壊靭性値および耐欠損性が低下すること、特に高速切削用工具として用いると、高温による被膜の酸化,急激な摩耗の進行,熱衝撃性による劣化および被削材との溶着により短寿命になるという問題がある。

0007

一方、結晶配向された被膜に関する先行技術としての特開昭56−156767号公報,特開平2−159363号公報,特開平5−287322号公報,特開平5−287323号公報および特開平5−295517号公報には、窒化チタン,炭化チタン炭窒化チタンでなるTi化合物の被膜を結晶配向して基材の表面に被覆した被覆硬質部材について開示されている。

0008

これらの結晶配向に関する公報に開示されている被覆硬質部材は、被膜の結晶面を配向することにより、被膜と基材との密着性が向上してはいるものの、被膜中にAlが含有されていないTi化合物の被膜であることから、特に高温における被膜自体の機械的性質が低く、被膜の強度,硬度,耐摩耗性,耐熱性および耐酸化性に未だ満足できないという問題がある。

0009

本発明は、上述のような問題点を解決したもので、具体的には、低温領域から高温領域に至るまでの広い領域において、高靭性,高硬度性,耐摩耗性,耐酸化性,耐熱衝撃性,耐欠損性,耐溶着性のある硬質膜および耐剥離性を有し、結晶配向性の異なる2層以上の硬質膜を積層被覆することにより、さらに長寿命化を達成させた結晶配向性硬質膜を含む積層被覆部材の提供を目的とするものである。

課題を解決するための手段

0010

本発明者らは、超硬合金の基材上に(Ti,Al)化合物の被膜を被覆した被覆部材が、低温領域で使用すると割合に優れた効果を発揮するのに対し、高温領域で使用するとその効果が低減されるという問題を検討していたところ、基材上に被覆される従来の(Ti,Al)化合物の被膜は(111)結晶面を成長させた被膜であること、この(111)結晶面を成長させた(Ti,Al)化合物の単一層の被膜に対比し、詳細な理由は明確ではないが、(200)結晶面を成長させた(Ti,Al)化合物の被膜と、(111)結晶面を成長させた(Ti,Al)化合物の被膜とを積層すると高硬度の傾向となること、そしてX線回折により求めた結晶面のピーク強度が(200)結晶面に最大高さを有する少なくとも1層の被膜と、X線回折により求めた結晶面のピーク強度が(111)結晶面に最大高さを有する少なくとも1層の被膜とを含む積層被膜にすると、耐剥離性,耐酸化性,耐熱衝撃性にすぐれること、また低温から高温の領域に至るまで耐摩耗性の低減が生じないこと、これらが複合されて長寿命になるという知見を得て、本発明を完成するに至ったものである。

0011

本発明の積層被覆部材は、基材の上に、結晶の配向性が異なる第1被膜層と第2被膜層とが積層被覆されており、該第1被膜層と該第2被膜層の両層はチタンとアルミニウムとの窒化物,炭窒化物,窒酸化物,炭酸化物,炭窒酸化物の中の1種の単層または2種以上の多層からなり、該第1被膜層はX線回折により求めた結晶面のピーク強度が(200)結晶面に最大高さを有し、該第2被膜層はX線回折により求めた結晶面のピーク強度が(111)結晶面に最大高さを有することを特徴とするものである。

0012

本発明の積層被覆部材における基材は、材質的には、特に制限されることがなく、被膜層を形成するときに加熱する温度に耐えることができる材質、例えば金属部材焼結合金またはセラミックス焼結体ならば問題がなく、具体的には、例えばステンレス鋼耐熱合金高速度鋼ダイス鋼Ti合金,Al合金に代表される金属部材、超硬合金,サ−メット粉末ハイスに代表される焼結合金、Al2O3系焼結体,Si3N4系焼結体,サイアロン系焼結体,ZrO2系焼結体に代表されるセラミックス焼結体を挙げることができる。これらのうち、切削用工具または耐摩耗用工具として用いるときには、超硬合金,窒素含有TiC系サ−メットもしくはセラミックス焼結体の基材が好ましい。

0013

この基材上に被覆される第1被膜層および第2被膜層の組成成分は、具体的には、例えば(Ti,Al)N、(Ti,Al)CN、(Ti,Al)NO、(Ti,Al)CO、(Ti,Al)CNOを挙げることができる。この第1被膜層および第2被膜層は、それぞれが結晶構造の異なる少なくとも1層からなり、第1被膜層および第2被膜層の中に含有する金属元素であるTi元素対Al元素の原子比率が48〜75:52〜25にあると、高硬度になること、耐剥離性,耐酸化性,耐熱衝撃性にすぐれること、長寿命になることから好ましいことである。この第1被膜層および第2被膜層は、化学量論組成または非化学量論組成からなる場合でもよい。

0014

この第1被膜層および第2被膜層のうち、第1被膜層は、第1被膜層の表面からX線回折した場合に、(200)結晶面が最大の強度ピークとなる(200)面に結晶配向された被膜である。別の表現をすると、この第1被膜層は、X線回折における(200)結晶面と(111)結晶面によるそれぞれの強度ピークの高さをh(200),h(111)としたときに、h(200)>h(111)の関係にあればよく、後述する効果を高めるために、(111)結晶面に対する(200)結晶面の強度比が2〜100の関係にあることが好ましいことである。すなわち、第1被膜層の表面からX線回折した場合における(200)結晶面と(111)結晶面により求めた、それぞれの強度ピークの高さがh(200)/h(111)=2〜100の関係にあることが好ましいことである。

0015

また、第2被膜層は、第2被膜層の表面からX線回折した場合に、(111)結晶面が最大の強度ピークとなる(111)面に結晶配向された被膜である。別の表現をすると、この第2被膜層は、X線回折における(111)結晶面と(200)結晶面によるそれぞれの強度ピークの高さをh(111),h(200)としたときに、h(111)>h(200)の関係にあればよく、後述する効果を高めるために、(200)結晶面に対する(111)結晶面の強度比が1.5以上の関係にあることが好ましいことである。すなわち、第2被膜層の表面からX線回折した場合における(111)結晶面と(200)結晶面により求めた、それぞれの強度ピークの高さがh(111)/h(200)≧1.5の関係にあることが好ましいことである。

0016

これらの第1被膜層と第2被膜層との合計した結晶配向した硬質膜は、用途または形状により被膜厚さを選定する必要があり、工具としての用途では、10μm以下でなる膜厚さであることが好ましく、第1被膜層の層厚さが第2被膜層の層厚さよりも厚く被覆されていることが好ましいことである。また、両被膜層のうち、第2被膜層厚さが0.01〜2.0μmであることが好ましいことである。特に過酷な用途であるドリル,エンドミル,リーマに代表される回転切削工具の場合には、結晶配向した硬質膜の膜厚さが0.6〜5μmであることが好ましいことである。

0017

この第1被膜層と第2被膜層との位置関係は、基材側に第1被膜層、第1被膜層に隣接して第2被膜層が積層された第1の層構成、基材側に第2被膜層、第2被膜層に隣接して第1被膜層が積層された第2の層構成、第1被膜層が第2被膜層によりサンドイッチ状に挟持された第3の層構成、第2被膜層が第1被膜層によりサンドイッチ状に挟持された第4の層構成、または、これらの第1〜第4の層構成における第1被膜層と第2被膜層の他に別の被膜層が積層された第5の層構成を代表例として挙げることができる。これらのうち、第1の層構成および第4の層構成でなる場合には、被膜表面からの硬さが高く、耐摩耗性にすぐれており、長寿命となることから好ましいことである。

0018

これらの被膜層の位置関係における第5の層構成について、さらに詳細に説明すると、第1被膜層および第2被膜層は、熱膨張係数に代表される問題から基材の材質によっては密着性に対する効果がほとんどなくなる場合がある。この場合には、基材と第1被膜層または第2被膜層との間に下地層を介在させることも好ましいことである。また、第1被膜層と第2被膜層との界面における結晶学ミスフィトエネルギーを最小とする等のために、この両層間に中間層を介在させることも好ましいことである。さらに、基材から最も離れた第1被膜層または第2被膜層の表面に最上層を形成することも好ましいことである。

0019

この第5の層構成における下地層は、基材との親和性の高い物質、具体的には、例えばTi,TiAl,Ti3Al,TiAl3,W,に代表される金属または合金,WC,Mo2C,Cr2N,TaN,VB2,NbB2,TaB2,W2B5,MoB2,CrB2,TiC,ZrC,HfC,TaC,NbC,VC,WC,Mo2C,Cr3C2,TiN,ZrN,HfN,TaN,CrN,Ti(CN),(Ti,W)C,(Ti,Ta)C,(Ti,Ta)CN,(Ti,Ta)Nの中の1種の単層または2種以上の多層でなる場合を挙げることができる。これらのうち、下地層は、Tiを含有した化合物が好ましいことである。この下地層の膜厚さは、下地層の表面に被覆される第1被膜層または第2被膜層が密着性を高めることができる膜厚さであればよく、具体的には、例えば0.01〜2μm厚さ、特に0.1〜1μm厚さでなることが好ましい。

0020

また、中間層は、具体的には、例えばTiC,ZrC,HfC,TaC,NbC,VC,WC,Mo2C,Cr3C2,TiN,ZrN,HfN,TaN,CrN,Ti(CN),(Ti,W)C,(Ti,Ta)C,(Ti,Ta)CN,(Ti,Ta)Nの中の1種の単層または2種以上の多層でなる場合を挙げることができる。これらのうち、中間層は、Tiを含有した化合物とし、かつ結晶面を配向させることが好ましいことである。この中間層の膜厚さは、中間層の表面に被覆される第1被膜層または第2被膜層の結晶学的ミスフィトエネルギーを最小とし、かつ密着性を高めることができる膜厚さであればよく、具体的には、例えば0.01〜5μm厚さ、特に0.1〜2μm厚さでなることが好ましい。

0021

さらに、最上層は、より耐熱性,耐酸化性を高める目的、表面の着色,使用前後の判別等のために形成し、具体的には、例えばAl2O3,(Al,Si)ON,(Ti,Al,Si)N,(Ti,Al,Si)ON,TiC,ZrC,HfC,TaC,NbC,VC,WC,Mo2C,Cr3C2,TiN,ZrN,HfN,TaN,CrN,Ti(CN),(Ti,W)C,(Ti,Ta)C,(Ti,Ta)CN,(Ti,Ta)Nの中の1種の単層または2種以上の多層でなる場合を挙げることができる。この最上層の膜厚さは、目的により異なるが、具体的には、例えば0.1〜5μm厚さでなることが好ましい。

0022

本発明の積層被覆部材を作製する場合に、まず基材は、従来から市販されているステンレス鋼,耐熱合金,高速度鋼,ダイス鋼,Ti合金,Al合金に代表される金属部材、超硬合金,サ−メット,粉末ハイスの焼結合金、Al2O3系焼結体,Si3N4系焼結体,サイアロン系焼結体,ZrO2系焼結体のセラミックス焼結体を基材とし、好ましくはJIS規格B4053の超硬合金の使用選択基準の中で分類されているP20〜P40,M20〜40およびK10〜K20相当の超硬合金材質、特に好ましくはP30,M20,M30,K10相当の超硬合金材質でなる基材を用いればよい。この基材の表面を、必要に応じて研磨し、超音波有機溶剤などによる洗浄処理を行った後、従来から行われている物理蒸着法(PVD法),化学蒸着法(CVD法)またはプラズマCVD法により基材上に被膜を被覆して作製することができる。

0023

基材上に被膜を被覆する場合は、必要に応じて被覆する下地層,中間層または最上層を含めて、それぞれの膜質に応じてPVD法,CVD法,またはプラズマCVD法を使い分けることもできる。これらのうち、製造工程上から全ての被膜を、イオンプレティング法またはスパッタリング法に代表されるPVD法で行うことが好ましく、この中でもイオンプレ−ティング法、特にア−クイオンプレ−ティング法で被覆処理することが好ましい。

0024

本発明の積層被覆部材における第1被膜層および第2被膜層のうち、特に第1被膜層をイオンプレ−ティング法で作製する場合について、さらに詳述すると、蒸発源としては金属チタン金属アルミニウムの2種類を独立して用いてもよく、Ti−Al合金,TiAl金属間化合物を使用してもよい。金属のイオン化の方法もア−ク放電の他、グロ−放電または高周波加熱などのいずれでもよい。イオンプレ−ティング法で使用するガスは、窒化物を生成するためのガス、すなわち窒素ガスの他、窒素を含んだアンモニアなどの窒素源ガスを用いてもよい。この反応ガスを炉内に導入し、蒸発源としての金属,合金,金属間化合物をイオン化し、基材に負のバイアス印加すると膜の結晶配向が容易となることから好ましい。特に、(200)結晶面の含有率を高めて結晶配向した(Ti,Al)化合物の被膜を形成するためには、被膜形成前の基材表面を洗浄するためのボンバード条件と被膜形成時における窒素ガスおよび/または窒素源ガスの分圧,基材へのバイアス電圧の調整が重要である。

0025

本発明の積層被覆部材は、第1被膜層である(200)結晶面に配向された(Ti,Al)化合物の被膜が被膜硬さを高め、第1被膜層と第2被膜層との積層が膜全体の破壊靭性値および耐摩耗性を向上させる作用をし、かつ基材と被膜との界面近傍残留する応力緩和する作用をし、特に超硬合金でなる基材の場合には、被膜中への残留圧縮応力を高めて、基材との密着性を顕著に高める作用をしているものである。

0026

市販されている形状SNGA120408の超硬合金(JIS規格B4053のK10相当材質)を基材とし、この基材表面を有機溶剤で洗浄した後、アーク放電プラズマPVD装置チャンバー内に設置し、(逃げ面とすくい面へ同時に被覆できる治具を用いて設置)、チャンバー内の初期条件を、温度:600℃,圧力:1×10-4Torrの真空とし、60分間保持した。次いで、圧力:1×10-3Torrの真空とし,アーク電流:70A,基材バイアス:−600Vとし、10分間保持によりボンバード処理を施した。その後の成膜条件は、TiAl金属間化合物含有のTi−Al蒸発源を用いて、圧力:20×10-3Torr,アーク電流:100A,その他の基材バイアス,窒素流量,保持時間を表1に示した(A)条件により被覆処理し、基材表面に順次第1被膜層,第2被膜層,第1被膜層からなる3層積層の本発明品1を作製した。同様に(B)条件により被覆処理し、基材表面に順次第1被膜層,第2被膜層,第1被膜層からなる3層積層の本発明品2を作製した。このうち、(A)条件の基材バイアス電圧は、段階的に変化、具体的には、例えば−40Vから一起に−100Vに変化させる方法により行い、(B)条件の基材バイアス電圧は、徐々に連続的に変化、具体的には、例えば−40Vから連続的に−100Vとする方法により行った。

0027

比較として、ボンバード処理条件における圧力:1×10-5Torrの真空,基材バイアス:−800V,保持時間:4分間、成膜条件を表1の(C)条件とした以外は、上述の本発明品1,2と同様に被覆処理をして、基材表面に第2被膜層を被覆し、比較品1を得た。

0028

こうして得た本発明品1,2と比較品1の被膜を、X線回折して、被膜の組成と結晶面の強度比を調査し、被膜が全て(Ti,Al)Nの組成からなっていること、本発明品1,2の第1被膜層の結晶面強度比(200)/(111)がそれぞれ4.1(本発明品1),5.7(本発明品2)であることおよび比較品1の第2被膜層の結晶面強度比(111)/(200)が2.5〜6.7内にあることを確認した。また、X線回折装置およびグロー放電発光分析装置を用いて、本発明品1,2および比較品1の被膜中に存在するTi元素とAl元素の原子比率を求めた結果、本発明品1がTi:Al=56:44,本発明品2がTi:Al=55:45,比較品がTi:Al=60:40からなることを確認した。

0029

次いで、走査型電子顕微鏡ビッカース硬度測定機,引っ掻き摩耗試験機に相当する被膜剥離試験機を用いて、本発明品1,2および比較品1の被膜厚さ,被膜硬さの測定、ならびに被膜の耐剥離性として、被膜が剥離されるまでの臨界剥離荷重を求めるスクラッチ強度を測定し、被膜厚さ,被膜硬さ,被膜のスクラッチ強度について、それぞれの平均値を表2に示した。

0030

次に、本発明品1,2および比較品1を用いて被削材:S48C(HB205〜223)、切削速度150m/min、送り:0.3mm/rev、切込み:1.5mm、チップ形状:SNGA120408,乾式切削試験による切削条件により旋削試験を行い、被膜の剥離,チッピングまたは平均逃げ面摩耗幅が0.1mmに達したときを寿命とし、寿命までの切削時間を求めて表2に併記した。

0031

0032

0033

実施試験1の本発明品1,2の条件のうち、成膜条件として、表3,表4および表5の成膜条件により順次、基材表面に被膜を被覆し、第1被膜層(第1層目),第2被膜層(第2層目)および第1被膜層(第3層目)からなる3層を被覆した以外は、ほぼ本発明品1,2と同様に処理し、本発明品3〜18を得た。また、成膜条件として、表3,表4および表5の成膜条件のうち、表4の成膜条件のみ行って、基材表面に第2被膜層のみ被覆して比較品2および3を得た。

0034

実施試験1と同様に、X線回折装置およびグロー放電発光分析装置を用いて、これらの本発明品3〜18および比較品2,3の被膜の組成と結晶面の強度比を調査し、被膜が全て(Ti,Al)Nの組成からなっていること、第1被膜層が(200)結晶面に最大のX線ピーク強度でなる被膜であること、第2被膜層が(111)結晶面に最大のX線ピーク強度でなる被膜であることを確認した。また、本発明品3〜18および比較品2,3の被膜中に存在するTi元素とAl元素の原子比率を求めた結果、ほぼTi:Al=60〜62:40〜38の範囲からなる(Ti,Al)Nの被膜であることを確認した。次いで、実施試験1と同様にして、これらの本発明品3〜18および比較品2,3の被膜厚さ,被膜硬度,被膜のスクラッチ強度および寿命までの切削時間を求めて、それぞれの平均値を表6に示した。

0035

0036

0037

0038

0039

第2被膜層の成膜時に窒素ガスを導入したところを、アンモニアガスメタンガスとの混合ガスを使用した以外は、実施試験1の本発明品1の条件とほぼ同様にして、本発明品19を得た。また、第2被膜層の成膜時に窒素ガスを導入したところを、アンモニアガスと一酸化炭素との混合ガスを使用した以外は、実施試験1の本発明品1の条件とほぼ同様にして、本発明品20を得た。さらに、第2被膜層の成膜時に窒素ガスを導入したところを、アンモニアガスとメタンガスと一酸化炭素との混合ガスを使用した以外は、実施試験1の本発明品1の条件とほぼ同様にして、本発明品21を得た。

0040

こうして得た本発明品19〜21の被膜を、実施試験1と同様にして調べたところ、本発明品19の被膜は、第1被膜層が(Ti,Al)Nの組成、第2被膜層が(Ti,Al)NCの組成であること、本発明品20の被膜は、第1被膜層が(Ti,Al)Nの組成、第2被膜層が(Ti,Al)NOの組成であること、本発明品34の被膜は、第1被膜層が(Ti,Al)Nの組成、第2被膜層が(Ti,Al)NCOの組成であることを確認した。この本発明品19〜21について、実施試験1と同様に被膜のスクラッチ強度および寿命までの切削時間をそれぞれ調べた結果、ほぼ本発明品1と同様の傾向を示した。

0041

成膜時の基材バイアス電圧,そのバイアス電圧における保持時間および窒素流量を表7の(D)条件とした以外は、実施試験1の本発明品1と同様の条件として本発明品22を得た。また、同じく表7の(E)条件とした以外は、実施試験1の本発明品1と同様の条件として本発明品23を得た。

0042

実施試験1の本発明品1と同様にして、本発明品22および23の被膜層の構成を調べたところ、本発明品22は、基材表面に第1被膜層,第2被膜層が順次被覆されており、本発明品23は、基材表面に第2被覆層,第1被覆層が順次被覆された構成であった。これらの被膜厚さをすくい面と逃げ面に分けて調べて、それぞれの平均被膜層厚さを表8に示した。

0043

次に、実施試験1の本発明品1と同様にして、本発明品22および23の被膜の硬さ,スクラッチ強度,結晶配向性およびTi元素とAl元素の比率を求めた結果、本発明品22は、硬さ(HV):2950,スクラッチ強度(N):80,Ti/Al(at%):56/44,第1被膜層の結晶(200)/(111):4.1,第2被膜層の結晶(111)/(200):1.8であり、本発明品23は、硬さ(HV):2970,スクラッチ強度(N):80,Ti/Al(at%):55/45,第1被膜層の結晶(200)/(111):5.7,第2被膜層の結晶(111)/(200):2.0であった。

0044

0045

発明の効果

0046

本発明の積層被覆部材は、従来の(111)結晶面に配向した(Ti,Al)Nの被膜を被覆した比較品に対比して、被膜の耐剥離性が優れており、かつ被膜自体が高硬度,高靭性,耐摩耗性,耐酸化性,耐熱衝撃性,耐欠損性,耐溶着性を有していることから、この分野での中速切削領域から高速切削領域に相当する領域において、長寿命になるという効果がある。したがって、本発明の積層被覆部材は、従来の被覆部材の領域である低速切削領域から高速切削領域に至るまで広い領域で長寿命を達成できるという優れた効果があること、従来の比較品に対比して、特にフライス用切削工具,エンドミルおよびドリルとしての回転切削工具として長寿命が期待されること、また高靭性および高硬度な積層被膜を被覆した被覆部材であることから、軽切削領域から重切削領域においても優れた効果を発揮できるものである。

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