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技術 発振回路

出願人 富士通株式会社富士通東和エレクトロン株式会社
発明者 佐藤良夫伊形理松田隆志高橋芳孝イワンドミトリフアブラモフ
出願日 1997年5月13日 (22年6ヶ月経過) 出願番号 1997-122493
公開日 1998年11月24日 (20年11ヶ月経過) 公開番号 1998-313216
状態 特許登録済
技術分野 電気機械共振器を用いた発振回路 弾性表面波素子とその回路網
主要キーワード 反転接続 許容値α 基本区間 遅延距離 位相特性図 振幅条件 周波数条件 バラクターダイオード
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この項目の情報は公開日時点(1998年11月24日)のものです。
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図面 (20)

課題

この発明は、発振回路に関し、小型、低コスト、高C/N比を有し、かつ広い周波数可変幅を持つ発振回路を提供することを課題とする。

解決手段

共振周波数が異なる第1及び第2の1ポート弾性表面波共振器梯子型に接続した弾性表面波フィルタを、帰還回路部に用いてなることを特徴とする。

概要

背景

従来は、移動通信の分野では、誘電体共振子を用いた発振回路や、マイクロストリップライン共振子として用いたVCOが使われてきた。しかし、前者はサイズが大きく、コストも高いため移動通信用のVCOとしては不向きである。後者は小型、低コスト周波数可変幅も十分大きくとれるが、Q値が低いためC/N比が大きくとれないという欠点がある。

また、弾性表面波共振子SAW(Surface Acoustic Wave)共振子〕や、弾性表面波フィルタ(以下、SAWフィルタと呼ぶ)を用いたVCOも報告されている。SAWフィルタの基板材料水晶を用いた発振回路は、Q値が高くC/N比も優れた特性を有するが、電圧で制御できる周波数レンジが狭い。

これを克服するため、さらに高い電気機械結合係数をもつ圧電単結晶を基板材料に用いたものが提案されている。たとえば、LiTaO3を用いた発振回路(菅原光一、山本文治、「広帯域可変弾性表面波発振回路」、電子情報通信学会技術報告書US78-12,pp21-28)や、LiNbO3を用いた発振回路(疋田光孝、住岡淳司、原行成、「SAW共振器を用いた移動無線機電圧制御発振回路の検討」、電子情報通信学会技術報告書MW90-102,pp15-20)が報告されている。

概要

この発明は、発振回路に関し、小型、低コスト、高C/N比を有し、かつ広い周波数可変幅を持つ発振回路を提供することを課題とする。

共振周波数が異なる第1及び第2の1ポート弾性表面波共振器梯子型に接続した弾性表面波フィルタを、帰還回路部に用いてなることを特徴とする。

目的

この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであり、小型、低コストでかつC/Nが高い発振回路であって、従来よりも広い周波数可変幅をもつ発振回路を提供することを課題とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
2件

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請求項1

共振周波数が異なる第1及び第2の1ポート弾性表面波共振器梯子型に接続した弾性表面波フィルタを、帰還回路部に用いてなることを特徴とする位相推移型の発振回路

請求項2

前記弾性表面波フィルタが、前記第1の1ポート弾性表面波共振器を並列腕に、前記第2の1ポート弾性表面波共振器を直列腕に、それぞれ複数個配置して構成され、前記第1の1ポート弾性表面波共振器が、所定の共振周波数frpと反共振周波数fapを有し、前記第2の1ポート弾性表面波共振器が前記反共振周波数fapに略一致する共振周波数frsを有していることを特徴とする請求項1記載の発振回路。

請求項3

前記直列腕の第2の1ポート弾性表面波共振器の共振周波数frsが、前記並列腕の第1の1ポート弾性表面波共振器の反共振周波数fapよりも高周波側に位置し、その差Δf=frs−fapを前記共振周波数frsで規格化した値が、0よりも大きく、かつ次式

請求項

ID=000003HE=010 WI=086 LX=0620 LY=0800(式中、Copは並列腕の第1の1ポート弾性表面波共振器の静電容量、Cosは直列腕の第2の1ポート弾性表面波共振器の静電容量、γは容量比)で与えられるαよりも小さいことを特徴とする請求項2記載の発振回路。

請求項4

前記第1の1ポート弾性表面波共振器と前記第2の1ポート弾性表面波共振器とが、次式、Cop/Cos<−0.32+2.82/n(式中、Copは並列腕の第1の1ポート弾性表面波共振器の静電容量、Cosは直列腕の第2の1ポート弾性表面波共振器の静電容量、nは第1の1ポート弾性表面波共振器と、第2の1ポート弾性表面波共振器とを一組とし、これらをカスケード接続した場合の段数)を満たすように設計されたことを特徴とする請求項2又は3記載の発振回路。

請求項5

前記一組の第1及び第2の1ポート弾性表面波共振器のCop/Cosの値が各段によって異なる場合、各段のCop/Cosを相加平均したものが、−0.32+2.82/nよりも小さいことを特徴とする請求項4記載の発振回路。

請求項6

前記弾性表面波フィルタが、通過帯域内での位相特性位相変化が0度から160度であることを特徴とする請求項1又は2記載の発振回路。

請求項7

前記弾性表面波フィルタが、通過帯域内での位相特性の位相変化が0度から160度であることを特徴とする請求項4記載の発振回路。

請求項8

前記弾性表面波フィルタは、LiTaO3、LiNbO3又はKNbO3のうちいずれかの圧電単結晶基板上に形成されることを特徴とする請求項1,2,4又は6記載の発振回路。

技術分野

0001

この発明は、発振回路に関し、特に、弾性表面波デバイスを用いた位相推移型の発振回路に関する。

0002

Q値の大きな共振器を用いたノイズの少ない発振回路は、電子産業の様々な分野において用いられる。発振回路は周波数を固定するものと、外部電圧により発振周波数を変えられる電圧制御型の発振回路(以下VCO:Voltage ControledOscillatorと呼ぶ)とがある。電圧制御型の発振回路は様々な電子機器で用いられているが、近年、特に移動通信光通信の分野で周波数可変幅が大きくとれ、C/N比も高い電圧制御型発振回路が求められている。特に、自動車電話携帯電話などの移動通信端末で求められる電圧制御型の発振回路は、さらに小型で低価格であることが要求されており、電圧制御型の発振回路のうち、位相推移型の発振回路が有望視されている。

背景技術

0003

従来は、移動通信の分野では、誘電体共振子を用いた発振回路や、マイクロストリップライン共振子として用いたVCOが使われてきた。しかし、前者はサイズが大きく、コストも高いため移動通信用のVCOとしては不向きである。後者は小型、低コストで周波数可変幅も十分大きくとれるが、Q値が低いためC/N比が大きくとれないという欠点がある。

0004

また、弾性表面波共振子SAW(Surface Acoustic Wave)共振子〕や、弾性表面波フィルタ(以下、SAWフィルタと呼ぶ)を用いたVCOも報告されている。SAWフィルタの基板材料水晶を用いた発振回路は、Q値が高くC/N比も優れた特性を有するが、電圧で制御できる周波数レンジが狭い。

0005

これを克服するため、さらに高い電気機械結合係数をもつ圧電単結晶を基板材料に用いたものが提案されている。たとえば、LiTaO3を用いた発振回路(菅原光一、山本文治、「広帯域可変弾性表面波発振回路」、電子情報通信学会技術報告書US78-12,pp21-28)や、LiNbO3を用いた発振回路(疋田光孝、住岡淳司、原行成、「SAW共振器を用いた移動無線機電圧制御発振回路の検討」、電子情報通信学会技術報告書MW90-102,pp15-20)が報告されている。

発明が解決しようとする課題

0006

しかし、従来の高電気機械結合係数の基板を用いたSAWデバイス(SAWフィルタもしくはSAW共振器)を使うVCOには、以下のような問題点があった。

0007

LiNbO3基板の上に形成された1ポートSAW共振器を用いたVCO
図21に、従来の1ポートSAW共振器の構成図を示す。1ポートSAW共振器は、中央部分にくし形電極からなるIDT(インターディジタルトランスデューサ)を備え、その両側に反射器を備えた構成を有する。図22は、この1ポートSAW共振器のインピーダンス周波数特性図である。ここで、縦軸はインピーダンスの虚部を示しており、frは共振周波数、faは反共振周波数である。

0008

図23は、1ポートSAW共振器を利用したVCOの回路図である。このVCOは、図22に示すように1つの共振器の共振周波数frから反共振周波数faの間でしか、原理的には周波数を可変できない。この周波数差fa-fr は、共振器の容量比γで決まり、SAW共振器の基板材料(圧電単結晶)の電気機械結合係数でほぼ決まる値である。即ち電気機械結合係数が大きいほどfa-frは大きくなり、VCOとしての周波数可変幅も大きくなる。

0009

従って従来は、電気機械結合係数の大きなLiNbO3基板を用いて、比帯域幅で2.5%程度の周波数可変幅を実現している。しかし、移動通信、特に携帯電話や無線LANの分野では、比帯域幅3〜3.5%の周波数可変幅が要求されており、このような分野では使用できなかった。

0010

LiTaO3基板の上に形成されたトランスバーサル型SAWフィルタを用いたVCO
図24に、従来のトランスパーサル型のSAWフィルタを用いたVCOの回路図を示す。このVCOは、図に示すようにLiTaO3基板の上にトランスバーサル型SAWフィルタを形成し、これを位相推移型発振回路の帰還回路部に配置して発振させるものである。この場合、トランスバーサル型フィルタ電極対数を減らし、入出力電極間遅延距離を短くすることで、原理的には周波数可変幅を広げることが可能である。

0011

しかし、TTE波(Triple Transit Echo、入出力電極間でSAWフィルタが3回反射することで生ずる遅れ波)による帯域内リップルが避けられず、それが安定な発振条件を妨げるといった問題点がある。また、この例においてもサイドロープ抑圧の観点から減らせる電極対数には限界があり、得られた周波数可変幅は比帯域幅2.5%程度しか、実現できない。

0012

この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであり、小型、低コストでかつC/Nが高い発振回路であって、従来よりも広い周波数可変幅をもつ発振回路を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0013

この発明は、共振周波数が異なる第1及び第2の1ポート弾性表面波共振器梯子型に接続した弾性表面波フィルタを、帰還回路部に用いてなる位相推移型の発振回路を提供するものである。

0014

ここで、前記弾性表面波フィルタが、前記第1の1ポート弾性表面波共振器を並列腕に、前記第2の1ポート弾性表面波共振器を直列腕に、それぞれ複数個配置して構成され、前記第1の1ポート弾性表面波共振器が、所定の共振周波数frpと反共振周波数fapを有し、前記第2の1ポート弾性表面波共振器が前記反共振周波数fapに略一致する共振周波数frsを有していることを特徴とする。この発明によれば、小型、低コストかつC/N比が高く、周波数可変幅の広い発振回路を提供することができる。

発明を実施するための最良の形態

0015

この発明の弾性表面波フィルタにおいて、前記直列腕の第2の1ポート弾性表面波共振器の共振周波数frsが、前記並列腕の第1の1ポート弾性表面波共振器の反共振周波数fapよりも高周波側に位置し、その差Δf=frs−fapを、前記共振周波数frsで規格化した値が0よりも大きく、かつ次式

0016

ID=000004HE=010 WI=086 LX=0620 LY=2150
で与えられるαよりも小さくしてもよい。

0017

ここで、Copは並列腕の第1の1ポート弾性表面波共振器の静電容量、Cosは直列腕の第2の1ポート弾性表面波共振器の静電容量、γは容量比を示す。

0018

また、前記第1の1ポート弾性表面波共振器と前記第2の1ポート弾性表面波共振器とが、次式、Cop/Cos<−0.32+2.82/n
を満たすように設計してもよい。ここで、nは第1の1ポート弾性表面波共振器と、第2の1ポート弾性表面波共振器とを一組とし、これらをカスケード接続した場合の段数を示す。

0019

また、前記一組の第1及び第2の1ポート弾性表面波共振器のCop/Cosの値が各段によって異なる場合、各段のCop/Cosを相加平均したものが−0.32+2.82/nよりも小さくしてもよい。

0020

さらに、この発明は、前記弾性表面波フィルタが、通過帯域内での位相特性位相変化が0度から160度となるようにしてもよい。また、前記弾性表面波フィルタは、LiTaO3、LiNbO3又はKNbO3のうちいずれかの圧電単結晶基板上に形成されることが、高い周波数可変幅を得る上では好ましい。

0021

この発明で用いる弾性表面波フィルタは、特開平05-183380号や特開平06-069750号公報に示されるように、1ポート弾性表面波共振器を梯子型に接続したフィルタである。以下、この弾性表面波フィルタをラダー型SAWフィルタと呼ぶ。

0022

図1図2にこの発明のラダー型SAWフィルタの構成図を示す。図1は、ラダー型SAWフィルタの基本区間の構成を示している。ここで、直列腕の1ポート弾性表面波共振器(以下、直列腕SAW共振器と呼ぶ)RS1は、信号の入出力電気端子の一方の側に直列に配置される。並列腕の1ポート弾性表面波共振器(以下、並列腕SAW共振器と呼ぶ)RP1は、信号の入出力電気端子間をつなぐ位置に並列に配置される。直列腕SAW共振器RS1の静電容量をCos、並列腕SAW共振器RP1の静電容量をCopとする。

0023

図2は、図1の基本区間の構成を、3段(n=3)に接続した構成を示している。直列腕SAW共振器RS1、RS2、RS3は直列に接続され、並列腕SAW共振器RP1、RP2、RP3は並列に接続される。この構成がフィルタ特性を示す原理については、本発明者による特開平05-183380号公報に詳述されているので、ここでは省略する。

0024

図3(a)に、この発明におけるラダー型構成を形作っている並列腕SAW共振器のインピーダンス特性と直列腕SAW共振器のインピーダンス特性の関係を示す。図3(a)に示すように、この発明では、並列腕SAW共振器の反共振周波数fapと直列腕SAW共振器の共振周波数frsとをほぼ一致させることを特徴とする。あるいは、反共振周波数fapよりも少し高周波数側に共振周波数frsが来るように設計してもよい。

0025

このような周波数の関係を備えれば、図3(b)に示すように、並列腕SAW共振器の共振周波数frpに近い周波数から直列腕SAW共振器の反共振周波数fasに近い周波数までの広い周波数レンジで、フィルタとしての通過特性が得られる。すなわち、より広い周波数可変幅を持つラダー型SAWフィルタを構成することができる。

0026

但し、Δf=frs−fapの値を広げ過ぎると、ラダー型SAWフィルタの通過特性が劣化する。すなわち、フィルタの通過帯域の中心周波数付近損失が劣化し始める。中心周波数付近の損失が劣化すると、後述するような「発振のための振幅条件」を満たさなくなり、発振は停止してしまう。従って、この損失劣化が起きない程度までしかΔfは広げることができない。その許容値αは、Δf/frsで規格化した値として次式で与えられる。
0<Δf/frs<α,

0027

0028

ここに、Copは並列腕SAW共振器の静電容量、Cosは直列腕SAW共振器の静電容量、γは基板材料で決まる共振器の容量比(=Cop/Clp=Cos/Cls、ここでClp、Clsは各共振器等価直列容量(motional capacitance))を表す。γの値は36度〜42度Yカット伝搬LiTaO3で、15程度である。なお、この許容値αの根拠については、特開平05-183380号公報に詳述されている。

0029

次に、このラダー型SAWフィルタを使って発振回路を得る条件について述べる。ラダー型SAWフィルタは図1で示したように、2つの電気端子対をもつ2ポート素子である。したがって、ラダー型SAWフィルタを用いて発振回路を構成する場合には、図4に示すような位相推移型発振回路とするのが最も適している。

0030

図4はこの発明の一実施例である位相推移型の発振回路の概略構成図である。以下に、同図を用いて発振原理を説明する。図4において、発振回路は、ラダー型SAWフィルタ1,可変移相器2,増幅器3,バッファアンプ4から構成される。ここで、特に、ラダー型SAWフィルタ1,可変移相器2,増幅器3は、発振回路のうち帰還回路部を構成し、ここで所望の周波数の発振信号が生成される。図24に示した従来のVCOでは、トランスバーサル型のSAWフィルタを帰還回路部に用いていたが、図4に示したこの発明の発振回路では、帰還回路部にラダー型のSAWフィルタを用いる点が異なる。

0031

可変移相器2は、外部から制御電圧Vtを入力し、発振信号の位相変化を決定する部分である。また、可変移相器2は、後述するように、バラクタダイオードインダクタ抵抗等を用いて構成できる。ラダー型SAWフィルタ1は、所定の通過帯域内の周波数を持つ発信信号のみを通過させる役割を果たす。

0032

発振信号はラダー型SAWフィルタ1の通過帯域内を通過した後、可変移相器2を通過し、トランジスタ等の能動素子で構成された増幅器3で電力増幅され、再びラダー型SAWフィルタ1に戻ってくる。このように発振信号は、ループ状巡回され、その帰還回路部の一部よりバッファアンプ4を通して外に取り出される。

0033

このような移相推移型発振回路が安定に発振する条件は、発振信号の振幅位相に対し、以下の関係を満たす必要がある。
振幅条件:LF+LV<G (dB) …… (1)
位相条件: φF+φV+φA=2nπ (ラジアン) …… (2)

0034

ここでは、ラダー型SAWフィルタ1の損失をLF(単位はdB)、可変移相器2の損失をLV、増幅器3のゲインをG(単位はdB)、ラダー型SAWフィルタ1の位相変化をφF(位相の単位はラジアン)、可変移相器2の位相変化をφV、増幅器3の位相変化をφA、nを任意の整数とする。

0035

この関係において、可変移相器2の位相φVを外部電圧Vtにより変化させた場合、(2)式を満たさなくなる。このとき、ラダー型SAWフィルタでは、その発振周波数が図3(b)の位相特性の関係に従って変化して自動的に位相φFが変わり、(2)式の条件を満たすようになる。この時、その発振周波数における振幅特性も(1)の関係を満たす必要があることから、フィルタの損失LFも図3(b)の振幅特性に示すように、要求される周波数可変領域(frp〜fas)に対し低損失であまり変化しないことが求められる。したがって、位相φFの変化幅ΔφFをできるだけ小さくして損失の変化が少ない周波数可変幅を得るようにすべきである。これらの結果、出力電力をあまり変化させることなく、発振周波数だけを広く変化させることができる。以上が位相推移型発振回路の基本原理である。

0036

次に実際に発信回路として制御電圧Vtを変えることにより可変移相器2の位相φVを変えて、より広い周波数可変幅を得る方法について述べる。原理的にφFの変化がラダー型SAWフィルタの通過帯域内において2π(360度)以下であれば、通過帯域内で発振する周波数条件が1つであり、安定した発振が得られる。しかし、可変移相器2の位相φVの可変幅を2πまで得ることは一般的には難しいので、ラダー型SAWフィルタの位相変化幅ΔφFが2π近くまで変化すると、通過帯域を十分活かしきれないことになる。

0037

ここで可変移相器の可変幅ΔφVが現状どの位のものが要求されているかを見積もる。可変移相器2は、図5に示すように2個のバラクターダイオードDvと、1個のインダクタンスL、及び2個の抵抗Rにより構成されるのが普通である。バラクタダイオードはバイアス電圧Vtによりその静電容量Cが変化するものであるが、現状使用されているものでは、バイアス電圧Vtを0〜20V位変化させた時、静電容量Cを0.5pFから4.5pF位まで変えることができる。この静電容量の変化幅が大きいとそれだけ位相の可変幅ΔφVを大きくすることができる。しかし、発信回路も低電圧駆動化される傾向にあるため、小さい電圧変化幅ΔVtで十分な容量変化幅、位相可変幅ΔφVを持つものが求められているが、現状では前記のような変化特性のものが一般的である。

0038

この例で可変移相器2の位相可変幅ΔφVを計算すると、携帯電話で良く使われる周波数帯である900MHz近傍では、ΔVtを20Vとした場合でΔφV=140度位(L=5nHの時)、無線LANで使われる2450MHz帯ではΔφV=160度位(L=3nHの時)となる。実際にはさらに低電圧化も必要なので、これよりも小さくなる場合も多い。従って、ラダー型SAWフィルタ1の通過帯域内の位相変化幅ΔφFも、150〜160度以下に設計する必要がある。

0039

次に、ラダー型SAWフィルタの位相変化幅ΔφFを小さくする方法について、実施例とともに述べる。ラダー型SAWフィルタの通過特性は、隣接する並列腕SAW共振器の静電容量Copと直列腕SAW共振器の静電容量Cosとの比Cop/Cosの値、及び図1に示した直並列腕SAW共振器を1単位と考えるとき、それをカスケード繋ぐ段数nなどの値により、制御することができる。一般にCop/Cosの値、及びnの値が大きくなるほど、ラダー型SAWフィルタの挿入損失は大きくなるが、阻止域での損失は大きくなり、帯域外抑圧は大きく改善される。

0040

図6図7図8に、n=3に固定した時のCop/Cosに対する通過特性の振幅並びに位相特性の変化の様子を示す。この場合の3段のカスケード接続構成は、図2に示したものと同じである。図2では、多段化する場合、損失等の改善のため、各段が対称になるよう各段毎に反転して接続している。これについては、前記した特開平05-183380号公報に詳述されている。

0041

図6図7図8において、ラダー型SAWフィルタはLiTao3基板上に形成し、中心周波数は932MHzに設定した。また、図6はCop/Cos=0.33、図7はCop/Cos=0.58、図8はCop/Cos=0.91である。

0042

図9は、この実施例のラダー型SAWフィルタの外観構成図である。ラダー型SAWフィルタは、セラミックパッケージ実装され、可変移相器2等と組合わされて、図4に示すような発振回路が構成される。

0043

図10に、図9に示したラダー型SAWフィルタの各SAW共振器の各構成要素についての具体的数値例を示す。ここで、Rs1、RS2、RS3は、直列腕のSAW共振器であり、RP1、RP2、RP3は並列腕のSAW共振器である。

0044

これらの図を比較するとわかるように、Cop/Cosが大きくなるほど挿入損失は必ず劣化するが、帯域外抑圧度は改善される。位相特性に関しては、Cop/Cosが逆に小さくなるほど、ラダー型SAWフィルタの位相変化幅ΔφFも小さくなることがわかる。図7のCop/Cos=0.58の場合で、通過帯域35MHz(比帯域幅3.7%)をカバーできる位相変化が約158度になる。従ってそれ以下のCop/Cosであれば、可変周波数幅の十分大きな発振回路が設計できる。

0045

図11は、Cop/Cos=0.58に固定し、n=2の場合のラダー型SAWフィルタの通過特性であり、図12は、このラダー型SAWフィルタの回路構成図である。図13は、Cop/Cos=0.58、n=4の場合のラダー型SAWフィルタの通過特性であり、図14は、このラダー型SAWフィルタの回路構成図である。

0046

Cop/Cosの場合と同様に、nの値が大きくなるほど挿入損失は劣化するが、帯域外抑圧度は改善される。位相特性に関しては、nの値が小さい程、位相変化幅ΔφFも小さくなり、発振回路にとっては都合が良い。

0047

具体的には図11図7図13からわかるように、n=3以下であれば、ΔφFが158度以下となる。以上からラダー型SAWフィルタの通過帯域内に対し、位相変化幅ΔφFを160度以下に保つためには、Cop/Cos<0.58、もしくはn<3とすることが条件となる。

0048

図15に、他のCop/Cos、nに対する位相変化幅ΔφFの測定結果を示す。図15において、縦軸はCop/Cos、横軸はnである。図中の各点は、ラダー型SAWフィルタの通過特性の比帯域幅が3.7%程度となるΔφFの値を示したものである。ここで、n=1.5,2.5,3.5,4.5,…というふうに0.5ずつの半整数があるのは、整数段のカスケード接続にさらに直列腕SAW共振器か、並列腕SAW共振器のいずれかのみが接続されている状態を意味している。但しn=0.5はバンドパスフィルタにならないので意味はない。たとえば、Cop/Cos=1.5、n=2のとき、ΔφF=190度であることを示している。

0049

図15よりΔφF=160度を満たすためのCop/Cosとnの関係が求められ、それを図中に曲線で示す。この曲線よりも下側におけるCop/Cos、nがΔφF<160度となる範囲であり、広帯域な周波数可変幅をもつ発振回路を設計できる条件となる。この条件は、具体的には次のような数式で示される。
Cop/Cos < −0.32+2.82/n …… (3)
この(3)式の条件を満たすように、LiTaO3基板上にラダー型SAWフィルタを形成した場合、現状用いられているの可変移相器を用いても、比帯域幅3.7%という広帯域な周波数可変幅をもつ発振回路を実現できる。

0050

次にこの(3)式に関して、周波数等を変更した場合の実施例について述べる。まず中心周波数の依存性について示す。(3)式の条件は、基板材料が決定されれば、中心周波数によらず成り立つ規則であると言える。これを具体的に示すために、同じLiTaO3基板上に形成された中心周波数2430MHz、Cop/Cos=0.3 、n=3のラダー型SAWフィルタを用いた発振回路を作成した。

0051

図16は、この発振回路の制御電圧Vtと発振周波数の関係、およびその時の発振出力電力との関係を示す。同図より出力電力が-3dB劣化するまでの周波数可変幅として88MHz(2470-2382)、比帯域幅で約3.7%(88/2430)が実現されていることが分かる。図17は、この発振回路の制御電圧Vt=10Vの時の発振スペクトルを示す。これにより、離調50KHz、分解周波数1KHzの時のC/N比として、70dB以上の良好な特性が得られている。これにより、(3)式の設計条件は中心周波数依存性がないことがわかる。

0052

次に、接続方法の違いについて述べる。図15では、多段化の接続方法として、図12図14のように各段で反転して接続したものを用いたが、図18のような反転していないノーマルな接続方法を用いてもよい。この場合も同様に、(3)式を満たすように発振回路を構成することができる。

0053

さらに図2に示すように反転接続したものを各並列腕および各直列腕で2つの共振器を1つにまとめてしまうとノーマルな接続方法と同じになる。これについても特開平05-183380号公報に詳述されている。たとえば図19では、隣りあう直並列腕共振器の静電容量の比Cop/Cosが見かけ上2倍に見える。そこでこの場合は、図2に示すように、もとの反転接続に直した状態のCop/Cosが、(3)式の条件を満たすよう設計する必要がある。

0054

さらに図20のように各段でCopやCosの値が一定でない場合もありうるが、この場合は、各段のCop/Cosの相加平均が(3)式を満たすように設計すれば位相特性が大きく異なることはない。即ち、段数をn、各段iでのCop/CosをCopi/Cosiとすると、相加平均としてのCop/Cosは、次式で与えられる。

0055

0056

また、(3)式の条件は、基板材料を変えても普遍的に成り立つものである。そこで、(3)式の条件を満たして、LiTaO3よりもさらに電気機械結合係数が大きな材料であるLiNbO3やKNbO3を用いてラダー型SAWフィルタを形成すれば、さらに大きな周波数可変幅を得ることが容易にできる。例えば、36度〜42度Ycut LiTaO3では電気機械結合係数が約5%、64度Ycut LiNbO3では11%、41度Ycut LiNbO3では17%である。周波数可変幅は、この電気機械結合係数にほぼ比例して拡大される。なぜなら、前記したように電気機械結合係数に比例して、反共振周波数fa−共振周波数frが、増加するからである。

0057

64度Ycut LiNbO3を用いれば、比帯域が8.1%程度、41度Ycut LiNbO3を用いれば、12.6% の発振回路が実現可能である。さらに近年報告されたKNbO3(例えば山之内和彦らの報告、1997年電子情報通信学会総合大会、A-11-8,p283)では、YカットX伝搬で電気機械結合係数が53%になると言われている。これを使えば比帯域約40% の超広帯域な発振回路が実現できる。

発明の効果

0058

この発明によれば、梯子型に接続した弾性表面波フィルタを位相推移型の発振回路の帰還回路部に用いるので、広い周波数可変幅をもつ発振回路を構成することができる。特に、並列腕の1ポート弾性表面波共振器の反共振周波数fapと、直列腕の1ポート弾性表面波共振器の共振周波数frsを略一致させることにより、C/Nが高く、広い周波数可変幅を持つ発振回路を提供できる。また、弾性表面波フィルタの基板材料として高い電気機械結合係数をもつLiTaO3、LiNbO3、KNbO3を用いれば、比帯域幅にして3〜40%という、従来になく非常に広い周波数可変幅をもつ発振回路を実現することができる。

図面の簡単な説明

0059

図1この発明のラダー型SAWフィルタの構成図(基本区間構成)である。
図2この発明のラダー型SAWフィルタの構成図(多段接続構成)である。
図3この発明のラダー型SAWフィルタの特性図である。
図4この発明の一実施例である位相推移型の発信回路の概略構成図である。
図5この発明に用いる可変移相器の構成図である。
図6この発明の一実施例のラダー型SAWフィルタの通過及び位相特性図である。
図7この発明の一実施例のラダー型SAWフィルタの通過及び位相特性図である。
図8この発明の一実施例のラダー型SAWフィルタの通過及び位相特性図である。
図9この発明の一実施例のラダー型SAWフィルタの外観構成図である。
図10図9の各SAW共振器の構成要素の数値を示した図である。
図11この発明の一実施例のラダー型SAWフィルタの通過特性図である。
図12図11に示したラダー型SAWフィルタの反転多段接続方法の説明図(n=2)である。
図13この発明の一実施例のラダー型SAWフィルタの通過特性図である。
図14図13に示したラダー型SAWフィルタの反転多段接続方法の説明図(n=4)である。
図15この発明の一実施例におけるCop/Cosとnに対する位相変化幅の関係図である。
図16この発明の一実施例の制御電圧Vtと発振周波数及び発振出力電力との関係図である。
図17この発明の一実施例の発振スペクトル図(制御電圧Vt=10v)である。
図18この発明のノーマルな多段接続方法の説明図である。
図19この発明のノーマルな多段接続方法の説明図である。
図20この発明のノーマルな多段接続方法の説明図である。
図21従来の1ポート弾性表面波共振器の構成図である。
図22従来の1ポート弾性表面波共振器のインピーダンス特性図である。
図23従来の1ポート弾性表面波共振器を用いたVcoの回路図である。
図24従来のトランスバーサル型のSAWフィルタを用いたVcoの回路図である。

--

0060

1ラダー型SAWフィルタ
2可変移相器
3増幅器
4バッファアンプ
RS1直列腕SAW共振器
RP1並列腕SAW共振器
Dvバラクタダイオード
fas 直列腕SAW共振器の反共振周波数
fap 並列腕SAW共振器の反共振周波数
frs 直列腕SAW共振器の共振周波数
frp 並列腕SAW共振器の共振周波数

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