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課題

流行性下痢症には母豚を免疫するワクチン療法が開発されているが、すべての母豚にワクチンを実施することは実際上難しく、また本病は突発的に発生することが多く、緊急的にワクチンを実施しても効果が現れるのに1〜2ケ月かかる。

解決手段

豚流行性下痢ウイルスを免疫したから採取される乳またはその乳成分ならびに該ウイルスで免疫した鶏から採取した鶏卵卵黄または鶏卵抗体を使用して、本病の予防、治療が効果的に可能となった。

概要

背景

概要

流行性下痢症には母豚を免疫するワクチン療法が開発されているが、すべての母豚にワクチンを実施することは実際上難しく、また本病は突発的に発生することが多く、緊急的にワクチンを実施しても効果が現れるのに1〜2ケ月かかる。

豚流行性下痢ウイルスを免疫したから採取される乳またはその乳成分ならびに該ウイルスで免疫した鶏から採取した鶏卵卵黄または鶏卵抗体を使用して、本病の予防、治療が効果的に可能となった。

目的

効果

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請求項1

流行性下痢ウイルスを免疫したから採取した牛乳又はその乳成分を含有することを特徴とする、豚流行性下痢ウイルスにより引き起こされる豚下痢症予防治療剤

請求項2

豚流行性下痢ウイルスを免疫した鶏が産生する鶏卵の全または卵黄ならびにその成分を含有することを特徴とする、豚流行性下痢ウイルスにより引き起こされる豚下痢症の予防治療剤。

請求項3

豚流行性下痢ウイルスに対する特異的な抗体を含む牛乳または鶏卵抗体を配合してなる、豚用配合飼料

技術分野

────────────────────────────

0001

本発明は流行性下痢に対する予防および治療を主な目的とする。さらに詳細には、主に消化管内で増殖する豚流行性下痢ウイルスにより引き起こされる豚の下痢症の予防および治療に関する。

0002

子豚期における下痢症の原因としては豚伝染性胃腸炎ウイルス、ロタウイルス、豚流行性下痢ウイルスあるいは大腸菌等による単独あるいは複数病原体の感染に起因している。豚流行性下痢は1993年から日本での発生が高まり、1996には数万頭の子豚が死亡している。本病は冬季に発生することが多く、哺乳豚の発病率は100%に及ぶことがあり、10日齢以内の子豚が感染すると下痢、脱水母乳摂取不足により死亡率が大変高くなる。

0003

細菌類に起因するものについては、該菌に対して有効な抗生物質あるいは抗菌剤投与が広く行われている。ウイルスに起因するものについては主に母豚ワクチンで免疫することにより、その母乳を介して特異抗体による感染防御能を哺乳子豚に付与する方法(受動免疫)が広く行われている。豚流行性下痢に対しても母豚を免疫するワクチンが最近開発された(例えば、日生研PED生ワクチン)。したがって、本病の流行予想される地域の農場あるいは既に発生が認められた農場では予め母豚をワクチン接種しておくことにより、その発生を防ぐことが期待できる。しかし、すべての農場でワクチンを使用することは実際上不可能に近い。本病は突発的に発生することが多く、ワクチン未使用農場において発生後、緊急的にワクチン接種を実施したとしても、ワクチン効果が現れるまでには少なくとも1〜2ケ月かかり、その間に分娩された子豚の多くは発病、死亡することになり、多大な経済的損失被る

0004

感染性下痢症の予防には、該病原因子に対する特異抗体の経口投与が有効であることが報告されている(例えば、島ら、第80回「日本畜産学大会講演要旨、1988年」)。大腸菌やロタウイルスに対する特異抗体として初乳抗体卵黄抗体血清抗体およびモノクローナル抗体が報告されている(例えば、Kuroki, M.らの「Arch. Virol., 138, 143-148, 1994」およびBridger らの「Infection and Immunity, 31, 906-910, 1981 」)。一方、流行性下痢ウイルスに対する特異抗体の効果についての報告はなく、その有効性および実用性は全く不明であった。

0005

本発明者らは、豚流行性下痢ウイルスによって引き起こされる下痢症の予防法治療法について検討を重ねた結果、豚流行性下痢ウイルスを免疫した牛から採取した乳またはその乳成分あるいは該ウイルスで免疫した鶏から得た全卵黄または卵黄抗体が有効であることを初めて見出した。

0006

本発明の豚流行性下痢ウイルスに対する特異抗体を含む牛乳または鶏卵卵黄は、例えばつぎのように製造することができるが、これに限定されるものではない。すなわち、妊娠6〜9ケ月の搾乳牛または採卵鶏に7〜14日毎に豚流行性下痢ウイルスを単独またはフロインドコンプリートアジュバントなどのアジュバントと混合、乳化したものを2〜6回皮下または筋肉内に接種して免疫を行う。そして特異抗体を含む牛乳、好ましくは出産後1〜3日の初乳または鶏卵を採取する。接種量は特に制限されず牛又は鶏を該ウイルスで免疫させるに十分な量であればよい。

0007

該ウイルスで免疫された牛の乳汁または鶏の卵黄は、該ウイルスに特異的に結合する特異抗体を含有する。したがって、特異抗体を含有する全乳脱脂乳乳清または牛乳から生成された乳汁抗体ならびに鶏卵全卵、卵黄または卵黄から生成された鶏卵抗体等いずれのものでも使用できるので、特に限定されない。

0008

豚流行性下痢ウイルスは腸管上皮細胞内で増えることから、本病による下痢症の予防、治療効果を有する本発明の特異抗体を含む牛乳または卵黄は経口投与が好ましい。本発明の乳または卵黄を経口投与する場合は液剤錠剤カプセル剤粉剤等の剤形で用いることができる。また、本発明の特異抗体を含む牛乳または卵黄の乾燥物代用乳、人口乳に添加して投与することもできる。一般的に乳又は卵黄としての1日の投与量は0.1〜20ml/kg体重であり、1回あるいはそれ以上投与される。つぎに実施例によりさらに本発明を説明する。

0009

実施例 1
妊娠8ケ月齢ホルスタイン牛2頭に不活化豚流行性下痢ウイルスZ94P5株108 .75 TCI50/ml と等量のフロインドコンプリートアジュバントを混合、乳化したもの3mlを皮下に接種した。さらにウイルス液だけを初回免疫後2週間毎に2回同様に接種した。分娩後得られた初乳を遠心により脂肪を除去し脱脂乳を採取した。得られた初乳の抗豚流行性下痢ウイルス中和抗体価は表1に示す。
表1 免疫牛初乳の抗豚流行性下痢ウイルス中和抗体価
牛番号 豚流行性下痢中和抗体価
─────────────────────
1 512
2 2048
────────────────────

0010

実施例 2
10羽の採卵鶏に不活化豚流行性下痢ウイルスZ94P5株 107.75TCID50/ mlと等量のフロインドコンプリートアジュバントを混合、乳化したもの0.5mlを筋肉内に接種した。5羽は非免疫対照鶏とした。さらにウイルス液だけを初回免疫後2週間毎に2回同様に接種した。最終免疫後2週目に鶏卵を採取し、その鶏卵卵黄から卵黄リポタンパク質を除去し抗豚流行性ウイルス中和抗体価を測定した。結果を表2に示す。
表2 免疫鶏卵卵黄の抗豚流行性下痢ウイルス中和抗体価
鶏番号豚流行性下痢中和抗体価
────────────────────────
免疫区 1 80
2 160
3 160
4 80
5 160
6 320
7 160
8 320
9 320
10 320
──────────────────────
非免疫区 11 <10
12 <10
13 <10
14 <10
15 <10
──────────────────────

0011

実施例 3
実施例1で得られた免疫牛初乳および実施例2で得られた免疫鶏卵卵黄それぞれ2mlを豚流行性下痢抗体陰性母豚から産出された2日齢豚に直接経口投与または代用乳に添加して3回/日与えた。対照群は、非免疫牛初乳または非免疫鶏卵卵黄を同様に投与した。初回投与2時間後に>102 ID50の豚流行性下痢ウイルスZ94P5株を経口接種し、攻撃試験を実施した。その後毎日、臨床症状を2週間観察した。その結果を表3に示す。非免疫初乳および非免疫卵黄を投与した対照群ではすべて下痢を発症し、それぞれ4頭中3頭および2頭中2頭が死亡したのに対し、免疫初乳投与群では4頭中2頭、免疫卵黄投与群では2頭中1頭が下痢を発症したが、数日以内に下痢が収まり、すべて生存した。免疫初乳および免疫卵黄投与による副作用は認められなかった。以上の成績から明らかなように、非免疫牛初乳または非免疫卵黄を投与した場合はすべてに下痢の発症が認められ、高い死亡率であったが、抗豚流行性下痢ウイルス抗体を含む免疫牛初乳または免疫鶏卵卵黄を投与したものについては、下痢の発症率が低下し、死亡するものは1頭もなかった。したがって、本発明の抗豚流行性下痢ウイルス免疫牛初乳および鶏卵卵黄が豚流行性下痢に対する予防、治療効果を有することが確認された。
表3 免疫牛初乳および免疫鶏卵卵黄の豚での有効性試験
試験群供試頭数下痢発症頭数 死亡頭数
─────────────────────────────
免疫牛初乳投与群 4 2 0
免疫鶏卵卵黄投与群 2 1 0
非免疫牛初乳投与群 4 4 3
非免疫鶏卵卵黄投与群 2 2 2

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