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技術 炭素材料の表面処理方法

出願人 株式会社イオン工学研究所
発明者 佐藤裕大谷三郎朱耀せん岩本信也
出願日 1997年3月25日 (23年7ヶ月経過) 出願番号 1997-072002
公開日 1998年10月6日 (22年0ヶ月経過) 公開番号 1998-265283
状態 特許登録済
技術分野 セラミックスの後処理
主要キーワード 高温用材料 SiC皮膜 炭素繊維強化炭素材料 中間被覆層 エンジン用部材 機械部材 溶融ケイ素 マトリックス樹脂液
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図面 (3)

課題

炭素材料の表面に耐酸化性および耐腐食性を向上させるための被覆層を均一に密着性良く形成することが可能な表面処理方法を提供することである。

解決手段

炭素繊維強化炭素材料からなる基材SiOガス熱処理することにより基材の表面にSiC皮膜を形成する。その後、基材上にSi薄板を載せ、Siの融点以上の温度で熱処理を行うことにより基材の表面にSiC中間被覆層を形成する。その後、CVD法によりSiC中間被覆層の表面にSiC表面被覆層を形成する。

概要

背景

炭素材料は、軽量かつ優れた高温機械特性を有し、特に1500℃以上の高温下でも強度低下等の機械特性の劣化が起こらないため、高温用材料として注目されている。特に、炭素繊維強化炭素材料は、一般的な炭素材料に比べて強度が高く、構造用部材の材料としての応用が期待されている。このような炭素繊維強化炭素材料は、強化材となる炭素繊維織物炭化残留率の高いマトリックス樹脂液含浸または塗布して積層成形した後、硬化および焼成炭化処理を行うことにより製造される。

しかしながら、炭素繊維強化炭素材料等の炭素材料はC(炭素)を主成分とした材料であることから、酸化雰囲気中や腐食性雰囲気中での耐性に問題がある。このため、各種表面処理により炭素材料の耐酸化性および耐腐食性を改善する試みがなされている。

一般に、材料の耐酸化性を改善するためには、CVD法化学的気相成長法)等によりその材料の表面に耐酸化被覆層をコーティングする方法が用いられている。特に、炭素材料の耐酸化性を改善する方法として、炭素材料の表面に高温での耐酸化性に優れるSiC(炭化ケイ素)をCVD法によりコーディングする方法が研究されている。

しかしながら、特に炭素繊維強化炭素材料の表面に直接SiC被覆層を形成すると、基材である炭素繊維強化炭素材料の熱膨張率が非常に小さいため、基材とSiC被覆層との熱膨張率の差により、SiC被覆層にクラック剥離が生じるという問題がある。

この問題を解決するためには、炭素繊維強化炭素材料とSiC被覆層との密着性を向上させるとともに炭素繊維強化炭素材料とSiCとの熱膨張率差による応力緩和する処理を行う必要がある。密着性の向上および熱膨張率差による応力の緩和を行うためには、炭素繊維強化炭素材料の表面を改質することが考えられる。

第1の方法として、Si(ケイ素)とSiO2 (二酸化ケイ素)を混合加熱して発生するSiO(一酸化ケイ素ガスを炭素繊維強化炭素材料のCと反応させることにより、炭素繊維強化炭素材料の表面にSiC層を形成した後、そのSiC層上にCVD法によりSiC被覆層をコーティングする方法が提案されている(特公平7−94353号公報および特公平7−96473号公報)。

また、第2の方法として、Si、SiC、SiO2 、Al2 O3 等の混合粉末中に炭素繊維強化炭素材料を埋設した状態で熱処理し、その熱処理により発生するSiOガスを炭素繊維強化炭素材料のCと反応させ、炭素繊維強化炭素材料の表面にSiC層を形成する方法が提案されている。

さらに、第3の方法として、Siを有機溶剤と混合してペースト状にしたものを炭素繊維強化炭素材料の表面に塗布して加熱処理する方法が提案されている(特開昭59−152268号公報)。

概要

炭素材料の表面に耐酸化性および耐腐食性を向上させるための被覆層を均一に密着性良く形成することが可能な表面処理方法を提供することである。

炭素繊維強化炭素材料からなる基材をSiOガスで熱処理することにより基材の表面にSiC皮膜を形成する。その後、基材上にSi薄板を載せ、Siの融点以上の温度で熱処理を行うことにより基材の表面にSiC中間被覆層を形成する。その後、CVD法によりSiC中間被覆層の表面にSiC表面被覆層を形成する。

目的

本発明の目的は、炭素材料の表面に耐酸化性および耐腐食性を向上させるための被覆層を均一にかつ密着性良く形成することが可能な表面処理方法を提供することである。

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

炭素材料からなる基材上にケイ素からなる薄板を載せ、ケイ素の融点以上の温度で熱処理を行うことにより前記基材の表面に炭化ケイ素からなる第1の被覆層を形成する第1の工程と、前記第1の被覆層の表面に化学的気相成長法により炭化ケイ素からなる第2の被覆層を形成する第2の工程とを含むことを特徴とする炭素材料の表面処理方法

請求項2

前記炭素材料を気体状の一酸化ケイ素を含む雰囲気中で加熱処理した後に前記第1の工程を行うことを特徴とする請求項1記載の表面処理方法。

請求項3

前記気体状の一酸化ケイ素を含む雰囲気中での前記加熱処理において前記基材の表面に厚み1μm以下の炭化ケイ素膜を形成することを特徴とする請求項2記載の炭素材料の表面処理方法。

請求項4

前記第1の工程で、炭化ケイ素中に未反応のケイ素を残存させる条件で前記基材の表面に前記第1の被覆層を形成することを特徴とする請求項1、2または3記載の炭素材料の表面処理方法。

請求項5

前記第1の工程を不活性ガス雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の炭素材料の表面処理方法。

請求項6

前記第1の工程を減圧下で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の炭素材料の表面処理方法。

請求項7

前記ケイ素からなる薄板は、0.1mm以上1mm以下の厚みを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の炭素材料の表面処理方法。

請求項8

前記炭素材料は、炭素繊維強化炭素材料であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の炭素材料の表面処理方法。

技術分野

0001

本発明は、炭素繊維強化炭素材料等の炭素材料耐酸化性および耐腐食性を向上させるための表面処理方法に関する。

背景技術

0002

炭素材料は、軽量かつ優れた高温機械特性を有し、特に1500℃以上の高温下でも強度低下等の機械特性の劣化が起こらないため、高温用材料として注目されている。特に、炭素繊維強化炭素材料は、一般的な炭素材料に比べて強度が高く、構造用部材の材料としての応用が期待されている。このような炭素繊維強化炭素材料は、強化材となる炭素繊維織物炭化残留率の高いマトリックス樹脂液含浸または塗布して積層成形した後、硬化および焼成炭化処理を行うことにより製造される。

0003

しかしながら、炭素繊維強化炭素材料等の炭素材料はC(炭素)を主成分とした材料であることから、酸化雰囲気中や腐食性雰囲気中での耐性に問題がある。このため、各種表面処理により炭素材料の耐酸化性および耐腐食性を改善する試みがなされている。

0004

一般に、材料の耐酸化性を改善するためには、CVD法化学的気相成長法)等によりその材料の表面に耐酸化被覆層をコーティングする方法が用いられている。特に、炭素材料の耐酸化性を改善する方法として、炭素材料の表面に高温での耐酸化性に優れるSiC(炭化ケイ素)をCVD法によりコーディングする方法が研究されている。

0005

しかしながら、特に炭素繊維強化炭素材料の表面に直接SiC被覆層を形成すると、基材である炭素繊維強化炭素材料の熱膨張率が非常に小さいため、基材とSiC被覆層との熱膨張率の差により、SiC被覆層にクラック剥離が生じるという問題がある。

0006

この問題を解決するためには、炭素繊維強化炭素材料とSiC被覆層との密着性を向上させるとともに炭素繊維強化炭素材料とSiCとの熱膨張率差による応力緩和する処理を行う必要がある。密着性の向上および熱膨張率差による応力の緩和を行うためには、炭素繊維強化炭素材料の表面を改質することが考えられる。

0007

第1の方法として、Si(ケイ素)とSiO2 (二酸化ケイ素)を混合加熱して発生するSiO(一酸化ケイ素ガスを炭素繊維強化炭素材料のCと反応させることにより、炭素繊維強化炭素材料の表面にSiC層を形成した後、そのSiC層上にCVD法によりSiC被覆層をコーティングする方法が提案されている(特公平7−94353号公報および特公平7−96473号公報)。

0008

また、第2の方法として、Si、SiC、SiO2 、Al2 O3 等の混合粉末中に炭素繊維強化炭素材料を埋設した状態で熱処理し、その熱処理により発生するSiOガスを炭素繊維強化炭素材料のCと反応させ、炭素繊維強化炭素材料の表面にSiC層を形成する方法が提案されている。

0009

さらに、第3の方法として、Siを有機溶剤と混合してペースト状にしたものを炭素繊維強化炭素材料の表面に塗布して加熱処理する方法が提案されている(特開昭59−152268号公報)。

発明が解決しようとする課題

0010

しかしながら、SiOガスを炭素繊維強化炭素材料と反応させる上記の第1および第2の方法では、SiOガスとCとの反応によりCO(一酸化炭素)ガスが発生する。このCOガスにより炭素繊維強化炭素材料の表面に形成されるSiC被覆層に気孔(ポア)が生じ、表面が荒れるという問題がある。

0011

また、ペースト状にしたSiを炭素繊維強化炭素材料の表面に塗布する上記の第3の方法では、炭素繊維強化炭素材料の表面にSiC被覆層を均一に形成することが困難である。

0012

本発明の目的は、炭素材料の表面に耐酸化性および耐腐食性を向上させるための被覆層を均一にかつ密着性良く形成することが可能な表面処理方法を提供することである。

0013

本発明に係る炭素材料の表面処理方法は、炭素材料からなる基材上にケイ素からなる薄板を載せ、ケイ素の融点以上の温度で熱処理を行うことにより基材の表面に炭化ケイ素からなる第1の被覆層を形成する第1の工程と、第1の被覆層の表面に化学的気相成長法により炭化ケイ素からなる第2の被覆層を形成する第2の工程とを含むものである。

0014

本発明に係る炭素材料の表面処理方法においては、第1の工程で炭素材料からなる基材上にケイ素からなる薄板を載せて熱処理することにより、炭素材料の開気孔中に溶融ケイ素浸透し、基材の表面に均一な炭化ケイ素からなる第1の被覆層が形成される。その第1の被覆層の表面に、第2の工程で化学的気相成長法により炭化ケイ素からなる第2の被覆層が形成される。

0015

基材の表層部では、基材の炭素部分、基材の炭素と開気孔中の炭化ケイ素により構成される部分、および表面の炭化ケイ素からなる第1の被覆層が順に形成され、傾斜組成に近い構造が得られる。この傾斜組成に近い構造により、基材と第2の被覆層との熱膨張率差が緩和されるため、両者の熱膨張率差による亀裂の発生および基材と第2の被覆層との剥離の発生が抑制され、基材上に第2の被覆層が強固に結合される。

0016

また、第1の工程で基材の表面に第1の被覆層が均一に形成されるので、第2の工程で第1の被覆層の表面に第2の被覆層が均一に形成される。

0017

したがって、炭素材料の表面に耐酸化性および耐腐食性を向上させるための炭化ケイ素からなる被覆層が均一にかつ密着性良く形成される。

0018

特に、炭素材料を気体状のSiOを含む雰囲気中で加熱処理した後に第1の工程を行うことが好ましい。この場合、溶融ケイ素が浸透することが困難な開気孔(表面の空隙)の細部にまでSiOガスが浸入し、炭化ケイ素を形成する。また、基材の表面とともに開気孔の内部にも炭化ケイ素皮膜が形成される。それにより、溶融ケイ素に対する基材の塗れ性が向上し、基材表面に均一に溶融ケイ素が被覆するとともに、溶融ケイ素が炭素材料の開気孔の深部まで浸透することができる。その結果、第1の被覆層が平坦にかつ均一に形成され、第2の被覆層の均一性がより向上するとともに、基材と第2の被覆層との密着性もより向上する。

0019

気体状のSiOを含む雰囲気中での加熱処理において基材の表面に厚み1μm以下の炭化ケイ素膜を形成することが好ましい。これにより、炭化ケイ素と炭素の反応で発生するガスによる悪影響を抑制しつつ溶融ケイ素に対する基材の塗れ性を向上させることができる。

0020

第1の工程で、炭化ケイ素中に未反応のケイ素を残存させる条件で基材の表面に第1の被覆層を形成することが好ましい。この場合、高温酸化雰囲気中で基材の炭素が第1の被覆層中を拡散してきた場合に、炭化ケイ素中のケイ素がその炭素をトラップして炭化ケイ素を形成する。それにより、炭素が酸化してガスが発生することが阻止され、ガスの発生による第2の被覆層の剥離が防止される。

0021

第1の工程を不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。これにより、ケイ素および炭素の酸化が防止される。

0022

また、第1の工程を減圧下で行うことが好ましい。これにより、溶融ケイ素が基材の開気孔中に浸透しやすくなる。

0023

ケイ素からなる薄板は、0.1mm以上1mm以下の厚みを有することが好ましい。これにより、未反応のケイ素を適度な割合で含む炭化ケイ素からなる第1の被覆層を形成することが可能となる。

0024

炭素材料は、炭素繊維強化炭素材料であってもよい。この場合、多数の開気孔を有する炭素繊維強化炭素材料の表面に耐酸化性および耐腐食性を向上させる炭化ケイ素からなる被覆層を均一にかつ密着性良く形成することができる。

発明を実施するための最良の形態

0025

以下、本発明に係る炭素材料の表面処理方法の一例を詳細に説明する。ここでは、炭素材料として炭素繊維強化炭素材料を用いるものとする。

0026

(1)SiOガスによる処理
まず、炭素繊維強化炭素材料からなる基材をSiOガスで処理することにより基材の表面に薄いSiC皮膜を形成する。SiOガスは、SiO固体を加熱処理することにより発生させることができる。このため、SiO固体および基材を同一容器内に収納し、不活性ガス雰囲気中で熱処理を行う。特に、SiO固体からSiOガスを効率良く発生させて基材と十分に反応させるためには、SiOが低い温度で蒸気となる減圧下で熱処理を行うことが好ましい。

0027

SiOガスは基材と次のように反応してSiCを生成する。
SiO(気)+2C(固)→SiC(固)+CO(気)↑ ・・・(1)
2SiO(気)+3C(固)→2SiC(固)+CO2 (気)↑・・(2)
上記の反応により、基材の表面に薄いSiC皮膜が形成される。これにより、溶融Siに対する基材の塗れ性が改善されるため、次の工程で溶融Siの浸透しにくい開気孔の深部まで完全にSiが含浸し、基材を次の工程で形成されるSiC中間被覆層と強固に結合させることができる。

0028

なお、上記の反応式(1),(2)からわかるように、SiOとCの反応では、COおよびCO2 がガスとして発生するため、SiC皮膜にガスが抜けるための気孔や表面の荒れが生じる。特にSiC皮膜の厚みが厚くなると、基材とSiC皮膜の剥離が生じる場合がある。また、SiC皮膜の厚みが厚過ぎると、次の工程でSi薄板を用いた熱処理の際にSiとCの反応が起こりにくくなる。したがって、溶融Siに対する基材の塗れ性が改善される範囲内でSiC皮膜を薄く形成することが好ましい。SiC皮膜の厚みが1μm以下であっても溶融Siに対する基材の塗れ性を改善する効果が得られることを確認している。

0029

以上のSiOガスによる処理を基材に施すことにより、次の工程でSi薄板の熱処理により形成されるSiC中間被覆層と基材との密着性を向上させ、かつ均一なSiC中間被覆層を形成することが可能となる。

0030

(2)Si薄板を用いた熱処理によるSiC中間被覆層(第1の被覆層)の形成
次に、基材の表面にSi薄板(板状Si)を載せ、熱処理を行う。このSi薄板の厚みは、炭素繊維強化炭素材料の充填度や熱処理の条件により異なるが、0.1mm以上1mm以下とすることが好ましい。Si薄板の厚みが0.1mmよりも薄いと、完全なSiC層を形成することが困難となり、Si薄板の厚みが1mmよりも厚いと、SiC層中に残存するSi単体の割合が多くなりすぎる。

0031

この熱処理により溶融Siが基材の表面に均一に広がるとともに、基材の開気孔中にも溶融Siが浸透する。基材の表面および開気孔中のSiは次の反応によりSiCを生成する。

0032

Si(液)+C(固)→SiC(固) ・・・(3)
熱処理の温度は、Siの融点である1410℃以上とする。これにより、Siが十分に溶融し、基材の表面および基材の開気孔を均一に溶融Siで覆うことが可能となる。特に、溶融Siと基材のCとを効率良く反応させるためには、1500℃以上の温度で熱処理することが好ましい。

0033

また、大気中などの酸化雰囲気中で熱処理を行うと、SiおよびCの酸化が起こるため、目的とするSiC層を形成することが困難となる。このため、SiおよびCが雰囲気ガスと反応しないように、Ar(アルゴン)等の不活性ガス雰囲気中で熱処理を行う。

0034

さらに、溶融Siが基材の開気孔中に浸透しやすいように、減圧下で熱処理を行う。特に、溶融Siを開気孔のより深部まで含浸させるためには、50Torr以下の減圧下で熱処理を行うことが好ましい。

0035

上記の反応式(3)からわかるように、SiとCの反応ではCO等のガスが発生しないため、緻密かつ均一なSiC中間被覆層を形成することが可能となる。

0036

このようにして、基材の開気孔中にSiが含浸し、SiC化することにより基材の表面近傍では、基材の炭素部分、基材の炭素と開気孔中のSiCにより構成される部分、および表面のSiC層からなる部分が順に形成され、傾斜組成に近い構造が得られる。

0037

この傾斜組成に近い構造が、炭素繊維強化炭素材料からなる基材と次の工程でCVD法により形成されるSiC表面被覆層(SiCコーティング層)との熱膨張率差の緩和層として働く。その結果、両者の熱膨張率差によりSiC表面被覆層に生じる亀裂や基材とSiC表面被覆層の剥離の発生が抑制される。

0038

SiC中間被覆層の厚みは、Si薄板の厚みにより制御することができる。また、SiC中間被覆層中のSiの残存の割合は、Si薄板の厚み、熱処理の温度および熱処理の時間により制御することができる。

0039

熱処理により形成されるSiC中間被覆層にSiを残存させることにより、高温酸化雰囲気に曝された場合の酸化の進行を抑制する効果が得られる。高温下では、基材のCがSiC中間被覆層中を拡散し、SiC中間被覆層の表面で雰囲気中の酸素と反応し、COガスまたはCO2ガスを生成し、上層のSiC表面被覆層の剥離の原因となる。SiC中間被覆層中にSiが残存していると、そのSiが基材から拡散してきたCをトラップしてSiCを形成し、COガスまたはCO2 ガスの発生を防止する。また、SiC中に金属であるSiが含有すると、そのSiがSiCに働く応力を緩和する。それにより、SiC中間被覆層の靱性を向上させる効果が期待できる。

0040

(3)CVD法によるSiC表面被覆層(第2の被覆層)の形成
次に、基材上のSiC中間被覆層の表面にCVD法によりSiC表面被覆層を形成する。CVD法によるSiC表面被覆層の形成方法は特に限定されないが、耐酸化性および耐腐食性を付与するためには、緻密なSiC表面被覆層を形成することが必要である。

0041

CVD法によるSiC表面被覆層の形成における原料ガスとしては、ケイ素源またはケイ素および炭素の供給源としてハロゲン化ケイ素有機ハロゲン化ケイ素、シラン化合物有機ケイ素等を用いる。また、炭素源として、メタン(CH4 )等の炭化水素を始めとする有機化合物ガスを用いる。

0042

反応条件は原料ガス等により異なるが、炭素源となる有機化合物ガスの流量が過剰になると、遊離炭素析出し、SiC表面被覆層の耐酸化性および耐腐食性を低下させる原因となるので、炭素が共析せずにSiCのみが成長するような条件でSiC表面被覆層を形成することが好ましい。

0043

以上の表面処理により炭素繊維強化炭素材料からなる基材の耐酸化性および耐腐食性が向上する。

0044

(実施例1)実施例1では、嵩密度1.65g/cm3 の二次元炭素繊維強化炭素材料を基材として用いた。この二次元炭素繊維強化炭素材料は、炭素繊維織物を積層し、繰り返しピッチ含浸および黒鉛化処理を施したものである。この基材に厚み0.2mmおよび0.5mのSi薄板を載せ、Ar雰囲気中において圧力10Torrで1540〜1600℃まで昇温し、この状態を1時間保持して基材の表面にSiC中間被覆層を形成した。さらに、原料ガスとしてSiCl4 およびCH4を用い、キャリアガスとしてH2 を用いて、CVD法によりSiC中間被覆層の表面に厚み約50μmのSiC表面被覆層を形成した。形成条件としては、温度が1250℃であり、圧力が10Torrである。

0045

比較例として、実施例1と同じ二次元炭素繊維強化炭素材料を基材として用い、Si薄板を用いた熱処理を施さず、基材の表面に直接CVD法によりSiC表面被覆層を実施例1と同様の条件で形成した。

0046

実施例1および比較例の試料を大気中において温度1500℃で5時間の条件で繰り返し酸化試験を行い、耐酸化性を評価した。その評価結果を表1に示す。この酸化試験では、基材のCが酸化すると、COガスまたはCO2ガスが発生し、基材の重量が減少する。

0047

0048

表1に示すように、実施例1の試料では、3回目の酸化試験後も重量減少が1.4wt%以下とほとんど変化しなかった。これに対して、比較例の試料では、1回目の酸化試験で重量減少が17%となり、2回目の酸化試験で重量減少が80%以上となった。

0049

これらの結果から、Si薄板を用いた熱処理を施さない場合には、基材である炭素繊維強化炭素材料の酸化が著しく進行しているのに対して、Si薄板を用いた熱処理を施すことにより基材の酸化がほとんど進行しないことがわかる。したがって、本発明に係る表面処理方法によれば、基材の耐酸化性が向上することが確認された。

0050

(実施例2,3)実施例2では、実施例1と同じ基材を塊状のSiOと同一容器内に収納し、Ar雰囲気中において圧力90Torrで1570℃まで加熱してSiOガスを発生させ、その状態を1時間保持した後、実施例1と同様の条件でSi薄板を用いた熱処理によりSiC中間被覆層を形成した。

0051

実施例3では、実施例1と同じ基材にSiOガスによる処理を施さずにSi薄板を用いた熱処理によりSiC中間被覆層を形成した。

0052

実施例2および実施例3の試料の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、Siの含浸状態を確認した。図1に走査型電子顕微鏡による観察結果を示す。図1(a)はSiOガスによる処理が施された実施例2の試料の断面を示し、図1(b)はSiOガスによる処理が施されていない実施例3の試料の断面を示す。

0053

図1から、実施例2の試料では、基材の開気孔中にSiが浸透し、開気孔が完全に塞がれているのに対して、実施例3の試料では、基材の開気孔がSiで完全には塞がれておらず、空孔が残っていることがわかる。また、実施例2の試料では、SiC中間被覆層の表面が平坦となっているのに対して、実施例3の試料では、SiC中間被覆層の表面が均一でなく荒れた状態となっている。さらに、実施例2の試料では、Siが200μm程度の深さまで浸透しているのに対して、実施例3の試料では、Siが100μm程度の深さまでしか浸透していない。

0054

これらの結果から、SiOガスによる処理を施すことにより基材の塗れ性が向上し、溶融Siが基材の表面に均一に広がり、かつ開気孔の深部まで浸透するものと考えられる。

0055

また、実施例2の試料についてSEMを用いて表面組織の観察を行った。その結果、緻密な結晶性組織が観察された。さらに、実施例2の試料についてX線回折分析を行った。その結果を図2に示す。このX線回折分析は、厚み0.2mmのSi薄板を用いて温度1600℃で熱処理した試料について行った。

0056

図2に示すように、Siの回折ピークが見られず、β−SiCの回折ピークが強く検出されている。これにより、表面の緻密な組織層は基材のCと溶融Siとの反応により生じたSiCであると認められた。

0057

また、実施例2の試料についてAES(オージェ分析)により断面組成分析を行った。Siが含浸された開気孔の亀裂部分のSiとCの定量分析を行った結果、SiとCのモル比は、ほぼ1:1であった。これは、開気孔に浸透したSiも表面と同様にSiCを形成していることを示している。

0058

以上のように、炭素繊維強化炭素材料の表面にSi薄板を載せて熱処理することによりSiC中間被覆層を形成した後、CVD法によりSiC表面被覆層を形成することにより、優れた耐酸化性および耐腐食性を有する材料を得ることができる。また、Si薄板による熱処理に先立ってSiOガスによる処理を施すことにより密着性の強いSiC中間被覆層を形成することが可能となる。

0059

本発明に係る表面処理方法によれば、炭素繊維強化炭素材料等の炭素材料の耐酸化性および耐腐食性が向上される。したがって、炭素材料を高温の酸化雰囲気中または腐食性雰囲気中で使用する場合に、信頼性を向上させることができ、高温機械部材宇宙および航空機用部材、各種エンジン用部材等の高温部材への応用が可能となる。

図面の簡単な説明

0060

図1本発明の実施例により作製された試料の断面のSEM写真を示す図である。
図2本発明の実施例により作製された試料のX線回折パターンを示す図である。

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