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技術 電圧印加駆動方式

出願人 インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
発明者 中村肇野口通一
出願日 1997年1月20日 (24年0ヶ月経過) 出願番号 1997-007132
公開日 1998年8月7日 (22年6ヶ月経過) 公開番号 1998-206822
状態 未査定
技術分野 液晶6(駆動) 液晶6(駆動) 液晶表示装置の制御
主要キーワード 間欠パルス 遷移特性 電圧印加駆動 発生エネルギ 弾性エネルギ 単発パルス 遷移速度 縦電極
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図面 (7)

課題

ベンド配向を有する液晶層を用いた液晶表示装置において、短い時間でベンド配向へと遷移すべく液晶層へ電圧印加する制御方式を提供すること。

解決手段

ゲート電極信号電極との電位差を10V以上に保ちつつ、信号電極と対向電極との間に10V以上の電位差を連続的または間欠的に付与する。間欠的に電圧を付与するときには、信号電極と対向電極との間に電位差を付与するオン時間は液晶層の一部が実質的に第ニ段階のスプレイ配向に遷移しはじめる時間以上であり、かつ、信号電極と対向電極との間に電位差を付与しないオフ時間は第ニ段階のスプレイ配向の液晶領域が電圧を印加する前の状態に戻るのに必要な時間以上であることが好ましい。

概要

背景

液晶表示装置は軽量、薄形の表示装置として従来のCRT表示装置代替するものとして近年一層用途が拡大されてきた。しかし、CRT表示装置に比べて液晶表示装置は視野角が小さい、動画表示特性が劣る等、表示品質上の短所があり、現在その解決が至上命題となっている。

視野角や動画表示特性の一つの解決方法液晶層をいわゆるベンド配向といわれる配向によって構成し、これを2枚のガラス基板で挟持した液晶セル(πセル)を用いることである。ベンド配向とは図6に示すように液晶の配向がガラス基板近傍においてはほぼガラス基板と水平の角度(配向角)を有しており、配向角は液晶層の中心に向かうにつれて漸次ガラス基板表面に対して垂直な角度を呈し、配向角は液晶層の中心から離れるにしたがって対向するガラス基板表面と水平になるように漸次連続的に変化し、かつ、液晶層全体にわたってねじれ構造を有しないという特徴を有するものをいう。このような配向を用いた液晶表示装置は特開昭61−116329号公報において開示されている。同公報においてπセルを液晶表示装置として活用した例が開示される。また、Philip J Bosの米国特許5,410,422号ではさらにこのようなπセルに光学補償フィルムを組み合わせて高視野角を得るという発想が開示されている。さらに、近年では内田らが特開平7−84254号公報に開示するように、πセルとともに用いる光学補償フィルムの光学特性に対して検討を加え、一層の高視野角の実現可能性示唆されている。

ベンド配向を有する液晶層を用いた液晶セルであるπセルにおいては高視野角という特性のみならず、応答速度が大きいという特性も着目されている。このことは、動画表示特性を飛躍的に改良する可能性を示すものとして極めて重要である。上述した先行技術文献の中にもこの点を示唆し、πセルの将来性について好意的な見方を示すものがほとんどである。

動画表示特性はπセルの本質的な利点であるが、その前提としてベンド配向を作り出す必要がある。πセルとして動作させるための液晶セルにおいては、何ら電界等を付与しない状態(初期状態)ではベンド配向をとっておらず、ホモニアスな配向を有しているに過ぎないからである。このホモジニアスな状態からベンド配向への遷移高速に行うことができないと、ベンド配向が有している良好な動画表示特性を十分に生かしきることができない。なお、上述したいずれもの文献はこの点について何ら考察を加えていない。

ここで、ホモジニアスな状態からベンド配向までの遷移はスプレイ配向という中間的な状態を経て行われる。液晶層に電圧印加していき、その印加電圧があるしきい電圧VCR以上になると、電圧の印加によってホモジニアス状態から遷移したスプレイ配向状態電気弾性エネルギよりベンド配向の電気弾性エネルギが低くなる。従って、単純に電気弾性エネルギのみを比較すれば、しきい値電圧VCR以上ではベンド配向状態が安定であるということになるが、スプレイ配向状態とベンド配向状態との間にエネルギ障壁が存在するためにこの間の遷移は簡単には生じない。また、この遷移が生じるための条件として転移核の発生が必要であるが、この発生エネルギ自体も高いので遷移はより一層進行しにくい状態となっている。

そこで、通常はVCRよりも数倍大きな電圧を電源投入時に印加してこの遷移を促進するということがなされている。このとき、生じる液晶の配向遷移の過程を図3から図6を用いて説明する。図3に示すように、初期状態では液晶層1はホモジニアスな状態となっている。この図において、液晶層1は二枚のガラス基板2、3によって挟持されている。これに対して、大きな電圧を印加すると、図4に示すようなスプレイ配向状態を示す。図4に示すようなスプレイ配向状態は電源投入直後のごく短い期間に観察され、セル中央面において対称な構造4を有している。図4に示したような対称な構造4をセル中央面に有するという特徴を有するスプレイ構造を第一段階スプレイ配向という。第一段階スプレイ配向はセル中央面で対称であるという点で図6に示すベンド配向に酷似しており、従って、第一段階スプレイ配向からベンド配向への遷移は極めて速い。しかし、第一段階スプレイ配向状態は極めて不安定な状態であり、図5に示すように対称な構造4は上下いずれかのガラス基板2、3近傍にすぐに移動し、より安定な第二段階スプレイ配向となる。図5では対称な構造4が下部のガラス基板2の近傍に移動した例を示す。第二段階スプレイ配向からベンド配向への遷移速度は比較的遅い。

第一段階スプレイ配向から直接ベンド配向に遷移する場合の遷移速度と第二段階スプレイ配向からベンド配向に遷移する場合の遷移速度では、前者の方が一桁速いということが奥らによって報告されている(1996年電子情報通信学会総合大会誌、88頁)。従って、第一段階スプレイ配向から直接にベンド配向状態を得ることが好ましい。しかし、上述したように第一段階スプレイ配向は不安定ゆえにその寿命は短く、かつ、その状態を維持することは困難であり、これを制御的に利用する方法は従来知られていなかった。

より詳しく観察すると、第一段階スプレイ配向から第二段階スプレイ配向への遷移は電極の外周部から徐々に進行することが判明した。特に、この傾向は電極の面積比較的広い液晶セルのピクセルの場合には顕著である。これは、マトリクス駆動の液晶表示装置の液晶セルの場合、縦電極横電極区画されているので、セル内の電界が均一ではないということも一つの原因となっているものと考えられる。例えば、通常用いられるH−COM反転と呼ばれる駆動方式においては隣り合った画素電圧極性が異なることや電極電位画素電極電位が異なること等により、電圧印加時の画素電極周辺部において、本来一様であるべきセル面に対して垂直な電界にゆがみが発生し、第二段階スプレイ配向への遷移を誘起する。画素周辺部で発生した第二段階スプレイ配向はその本来的な安定性ゆえに、画素中央部に存在する第一段階スプレイ配向を第二段階スプレイ配向へと遷移させる。従って、第一段階スプレイ配向が直接にベンド配向に遷移することは少なく、ほとんどは第二段階スプレイ配向の状態を経てベンド状態へと遷移する。このため、画素全体がベンド状態になるまでの時間は大きい。

さらに、ある画素がベンド配向に遷移したとしても、となりの画素がベンド配向へと連鎖的に遷移することも起こりにくい。なぜかというと、画素周辺に存在する電極近傍では垂直電界が他の部分よりも小さくなるために、電気弾性エネルギ的に見てベンド配向の安定性が小さく、ベンド配向へと遷移するための駆動力も小さいからである。従って、電極近傍の領域は画素から画素へとベンド配向が拡大する障壁として作用する。

以上のように、区画された画素構造を有するセル構造での従来の駆動方法では、利用できる第一段階スプレイ配向の寿命は短く、ほとんどの第一段階スプレイ配向はベンド配向への遷移速度の小さい第二段階スプレイ配向へと遷移してしまうため、十分に早いベンド配向への遷移速度が得られない。また、画素と画素との間に存在する垂直電界の小さい領域によって、画素間のベンド配向遷移が阻止され、場合によってはベンド配向への遷移が不完全であったり、全くベンド配向をとらない画素が発生したりする可能性がある。

概要

ベンド配向を有する液晶層を用いた液晶表示装置において、短い時間でベンド配向へと遷移すべく液晶層へ電圧を印加する制御方式を提供すること。

ゲート電極信号電極との電位差を10V以上に保ちつつ、信号電極と対向電極との間に10V以上の電位差を連続的または間欠的に付与する。間欠的に電圧を付与するときには、信号電極と対向電極との間に電位差を付与するオン時間は液晶層の一部が実質的に第ニ段階のスプレイ配向に遷移しはじめる時間以上であり、かつ、信号電極と対向電極との間に電位差を付与しないオフ時間は第ニ段階のスプレイ配向の液晶領域が電圧を印加する前の状態に戻るのに必要な時間以上であることが好ましい。

目的

本願発明の第一の目的はベンド配向を有する液晶層を用いた液晶表示装置において、短い時間でベンド配向へと遷移すべく液晶層へ電圧を印加する電圧印加制御方式を提供することである。本願発明の第二の目的はベンド配向を有する液晶層を用いた液晶表示装置において、ベンド配向へと遷移せずにスプレイ配向のままに残る画素領域を消滅させるべく液晶層へ電圧を印加する電圧印加制御方式を提供することである。

効果

実績

技術文献被引用数
3件
牽制数
15件

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請求項1

薄膜トランジスタマトリクス状に形成された第一の基板と、前記第一の基板に対向し対向電極が形成された第二の基板と、前記第一の基板と前記第二の基板との間に位置する液晶層と、前記薄膜トランジスタのゲート電極電圧印加する第一の電圧印加手段と、前記薄膜トランジスタのデータ線に接続された信号電極と前記対向電極との間に電圧を印加する第二の電圧印加手段とを具備する液晶表示装置において、前記液晶層の配向を変化させるための電圧印加駆動方式であって、前記ゲート電極と前記信号電極との電位差を10V以上に保ちつつ、前記信号電極と前記対向電極との間に10V以上の電位差を付与する、電圧印加駆動方式。

請求項2

請求項1に係わる電圧印加駆動方式であって、前記液晶層をベンド配向にすることを特徴とする、電圧印加駆動方式。

請求項3

請求項1または2に係わる電圧印加方式であって、前記信号電極と前記対向電極との間に電位差を付与する時間が前記ゲート電極と前記信号電極との間に電位差を維持する時間とほぼ等しいことを特徴とする、電圧印加駆動方式。

請求項4

請求項1または2に係わる電圧印加方式であって、前記信号電極と前記対向電極との間に電位差を付与する時間が前記ゲート電極と前記信号電極との間に電位差を維持する時間内で、数回に分断されていることを特徴とする、電圧印加駆動方式。

請求項5

請求項4に係わる電圧印加駆動方式であって、前記信号電極と前記対向電極との間に電位差を付与する時間は前記ゲート電極と前記信号電極との間に電位差を維持する時間の30〜70%であることを特徴とする、電圧印加駆動方式。

請求項6

請求項4に係わる電圧印加駆動方式であって、前記信号電極と前記対向電極との間に電位差を付与する時間以外の時間は前記信号電極と前記対向電極との間に0±1Vを印加することを特徴とする、電圧印加駆動方式。

請求項7

薄膜トランジスタ(TFT)がマトリクス状に形成された第一の基板と、前記第一の基板に対向し対向電極が形成された第二の基板と、前記第一の基板と前記第二の基板との間に位置する液晶層と、前記薄膜トランジスタのゲート電極に電圧を印加する第一の電圧印加手段と、前記薄膜トランジスタのデータ線に接続された信号電極と前記対向電極との間に電圧を印加する第二の電圧印加手段とを具備する液晶表示装置において、前記液晶層の配向を変化させるための電圧印加駆動方式であって、前記ゲート電極と前記信号電極との電位差を10V以上に保ちつつ、前記信号電極と前記対向電極との間に10V以上の電位差を間欠的に付与し、前記信号電極と前記対向電極との間に電位差を付与する時間は前記液晶層の一部が実質的に第二段階スプレイ配向遷移しはじめる時間以上であり、かつ、前記信号電極と前記対向電極との間に電位差を付与しない時間は前記第二段階のスプレイ配向の液晶領域が電圧を印加する前の状態に戻るのに必要な時間以上である、電圧印加駆動方式。

請求項8

薄膜トランジスタ(TFT)がマトリクス状に形成された第一の基板と、前記第一の基板に対向し対向電極が形成された第二の基板と、前記第一の基板と前記第二の基板との間に位置する液晶層と、前記薄膜トランジスタのゲート電極に電圧を印加する第一の電圧印加手段と、前記薄膜トランジスタのデータ線に接続された信号電極と前記対向電極との間に電圧を印加する第二の電圧印加手段とを具備する液晶表示装置において、前記液晶層の配向を変化させるための電圧印加駆動方式であって、前記ゲート電極と前記信号電極との電位差を前記信号電極と前記対向電極との間に電圧の印加が生じる程度に十分な大きさに保ち、前記信号電極と前記対向電極との間に第一の電位差を付与する第一の時間と、前記信号電極と前記対向電極との間に前記第一の電位差よりも小さい第二の電位差を付与する第二の時間とを交互に複数回繰り返す、電圧印加駆動方式。

請求項9

前記第二の電位差は±1Vであることを特徴とする、請求項8の電圧印加駆動方式。

発明の効果

0001

本願発明ベンド配向を有する液晶層によって構成された液晶表示装置において、液晶層を初期ホモニアス状態からベンド配向に高速遷移させるための方法に係わる。

背景技術

0001

本願発明によれば、従来の電圧印加駆動方式に比べて、パネル全体の領域をベンド配向へ遷移させるのに要する時間が3乃至10倍程度短縮され、ベンド配向へと遷移しない液晶層の領域が残ることを完全に防止できる。

0002

液晶表示装置は軽量、薄形の表示装置として従来のCRT表示装置代替するものとして近年一層用途が拡大されてきた。しかし、CRT表示装置に比べて液晶表示装置は視野角が小さい、動画表示特性が劣る等、表示品質上の短所があり、現在その解決が至上命題となっている。

0003

視野角や動画表示特性の一つの解決方法は液晶層をいわゆるベンド配向といわれる配向によって構成し、これを2枚のガラス基板で挟持した液晶セル(πセル)を用いることである。ベンド配向とは図6に示すように液晶の配向がガラス基板近傍においてはほぼガラス基板と水平の角度(配向角)を有しており、配向角は液晶層の中心に向かうにつれて漸次ガラス基板表面に対して垂直な角度を呈し、配向角は液晶層の中心から離れるにしたがって対向するガラス基板表面と水平になるように漸次連続的に変化し、かつ、液晶層全体にわたってねじれ構造を有しないという特徴を有するものをいう。このような配向を用いた液晶表示装置は特開昭61−116329号公報において開示されている。同公報においてπセルを液晶表示装置として活用した例が開示される。また、Philip J Bosの米国特許5,410,422号ではさらにこのようなπセルに光学補償フィルムを組み合わせて高視野角を得るという発想が開示されている。さらに、近年では内田らが特開平7−84254号公報に開示するように、πセルとともに用いる光学補償フィルムの光学特性に対して検討を加え、一層の高視野角の実現可能性示唆されている。

0004

ベンド配向を有する液晶層を用いた液晶セルであるπセルにおいては高視野角という特性のみならず、応答速度が大きいという特性も着目されている。このことは、動画表示特性を飛躍的に改良する可能性を示すものとして極めて重要である。上述した先行技術文献の中にもこの点を示唆し、πセルの将来性について好意的な見方を示すものがほとんどである。

0005

動画表示特性はπセルの本質的な利点であるが、その前提としてベンド配向を作り出す必要がある。πセルとして動作させるための液晶セルにおいては、何ら電界等を付与しない状態(初期状態)ではベンド配向をとっておらず、ホモジニアスな配向を有しているに過ぎないからである。このホモジニアスな状態からベンド配向への遷移を高速に行うことができないと、ベンド配向が有している良好な動画表示特性を十分に生かしきることができない。なお、上述したいずれもの文献はこの点について何ら考察を加えていない。

0006

ここで、ホモジニアスな状態からベンド配向までの遷移はスプレイ配向という中間的な状態を経て行われる。液晶層に電圧印加していき、その印加電圧があるしきい電圧VCR以上になると、電圧の印加によってホモジニアス状態から遷移したスプレイ配向状態電気弾性エネルギよりベンド配向の電気弾性エネルギが低くなる。従って、単純に電気弾性エネルギのみを比較すれば、しきい値電圧VCR以上ではベンド配向状態が安定であるということになるが、スプレイ配向状態とベンド配向状態との間にエネルギ障壁が存在するためにこの間の遷移は簡単には生じない。また、この遷移が生じるための条件として転移核の発生が必要であるが、この発生エネルギ自体も高いので遷移はより一層進行しにくい状態となっている。

0007

そこで、通常はVCRよりも数倍大きな電圧を電源投入時に印加してこの遷移を促進するということがなされている。このとき、生じる液晶の配向遷移の過程図3から図6を用いて説明する。図3に示すように、初期状態では液晶層1はホモジニアスな状態となっている。この図において、液晶層1は二枚のガラス基板2、3によって挟持されている。これに対して、大きな電圧を印加すると、図4に示すようなスプレイ配向状態を示す。図4に示すようなスプレイ配向状態は電源投入直後のごく短い期間に観察され、セル中央面において対称な構造4を有している。図4に示したような対称な構造4をセル中央面に有するという特徴を有するスプレイ構造を第一段階スプレイ配向という。第一段階スプレイ配向はセル中央面で対称であるという点で図6に示すベンド配向に酷似しており、従って、第一段階スプレイ配向からベンド配向への遷移は極めて速い。しかし、第一段階スプレイ配向状態は極めて不安定な状態であり、図5に示すように対称な構造4は上下いずれかのガラス基板2、3近傍にすぐに移動し、より安定な第二段階スプレイ配向となる。図5では対称な構造4が下部のガラス基板2の近傍に移動した例を示す。第二段階スプレイ配向からベンド配向への遷移速度は比較的遅い。

0008

第一段階スプレイ配向から直接ベンド配向に遷移する場合の遷移速度と第二段階スプレイ配向からベンド配向に遷移する場合の遷移速度では、前者の方が一桁速いということが奥らによって報告されている(1996年電子情報通信学会総合大会誌、88頁)。従って、第一段階スプレイ配向から直接にベンド配向状態を得ることが好ましい。しかし、上述したように第一段階スプレイ配向は不安定ゆえにその寿命は短く、かつ、その状態を維持することは困難であり、これを制御的に利用する方法は従来知られていなかった。

0009

より詳しく観察すると、第一段階スプレイ配向から第二段階スプレイ配向への遷移は電極の外周部から徐々に進行することが判明した。特に、この傾向は電極の面積比較的広い液晶セルのピクセルの場合には顕著である。これは、マトリクス駆動の液晶表示装置の液晶セルの場合、縦電極横電極区画されているので、セル内の電界が均一ではないということも一つの原因となっているものと考えられる。例えば、通常用いられるH−COM反転と呼ばれる駆動方式においては隣り合った画素電圧極性が異なることや電極電位画素電極電位が異なること等により、電圧印加時の画素電極周辺部において、本来一様であるべきセル面に対して垂直な電界にゆがみが発生し、第二段階スプレイ配向への遷移を誘起する。画素周辺部で発生した第二段階スプレイ配向はその本来的な安定性ゆえに、画素中央部に存在する第一段階スプレイ配向を第二段階スプレイ配向へと遷移させる。従って、第一段階スプレイ配向が直接にベンド配向に遷移することは少なく、ほとんどは第二段階スプレイ配向の状態を経てベンド状態へと遷移する。このため、画素全体がベンド状態になるまでの時間は大きい。

0010

さらに、ある画素がベンド配向に遷移したとしても、となりの画素がベンド配向へと連鎖的に遷移することも起こりにくい。なぜかというと、画素周辺に存在する電極近傍では垂直電界が他の部分よりも小さくなるために、電気弾性エネルギ的に見てベンド配向の安定性が小さく、ベンド配向へと遷移するための駆動力も小さいからである。従って、電極近傍の領域は画素から画素へとベンド配向が拡大する障壁として作用する。

発明が解決しようとする課題

0011

以上のように、区画された画素構造を有するセル構造での従来の駆動方法では、利用できる第一段階スプレイ配向の寿命は短く、ほとんどの第一段階スプレイ配向はベンド配向への遷移速度の小さい第二段階スプレイ配向へと遷移してしまうため、十分に早いベンド配向への遷移速度が得られない。また、画素と画素との間に存在する垂直電界の小さい領域によって、画素間のベンド配向遷移が阻止され、場合によってはベンド配向への遷移が不完全であったり、全くベンド配向をとらない画素が発生したりする可能性がある。

課題を解決するための手段

0012

本願発明の第一の目的はベンド配向を有する液晶層を用いた液晶表示装置において、短い時間でベンド配向へと遷移すべく液晶層へ電圧を印加する電圧印加制御方式を提供することである。本願発明の第二の目的はベンド配向を有する液晶層を用いた液晶表示装置において、ベンド配向へと遷移せずにスプレイ配向のままに残る画素領域を消滅させるべく液晶層へ電圧を印加する電圧印加制御方式を提供することである。

発明を実施するための最良の形態

0013

本願発明は薄膜トランジスタ(TFT)がマトリクス状に形成された第一の基板と、第一の基板に対向し対向電極が形成された第二の基板と、第一の基板と前記第二の基板との間に位置する液晶層と、薄膜トランジスタのゲート電極に電圧を印加する第一の電圧印加手段と、薄膜トランジスタのデータ線に接続された信号電極と対向電極との間に電圧を印加する第二の電圧印加手段とを具備する液晶表示装置に適用される。そして、本願発明は上記課題を解決すべくこのような薄膜トランジスタ液晶装置(TFT/LCD)において、液晶層の配向をベンド配向へと素早く変化させるための電圧印加駆動方式であって、ゲート電極と信号電極との電位差を10V以上に保ちつつ、信号電極と対向電極との間に10V以上の電位差を連続的または間欠的に付与するものである。間欠的に電圧を付与するときには、信号電極と対向電極との間に電位差を付与するオン時間は液晶層の一部が実質的に第二段階のスプレイ配向に遷移しはじめる時間以上であり、かつ、信号電極と対向電極との間に電位差を付与しないオフ時間は第二段階のスプレイ配向の液晶領域が電圧を印加する前の状態に戻るのに必要な時間以上であることが好ましい。

0014

本願発明の一つの実施の形態による電圧印加制御方法(第一の実施の形態という)について図1を用いて説明する。図1(a)は図1(b)に示す電圧を信号電極と対向電極間に付与し、かつ、図1(c)に示す電圧をゲート電極と信号電極に付与した場合のベンド配向領域の割合(L)を時間(T)との関係で示したものである。図1に示すように、第一の実施の形態によれば表示パネル全体のベンド配向遷移を単発パルス信号惹起するものである。原理的にはゲートをオンにすると同時に、または、その後極めて短時間の後に、対向電極と信号電極との間にバイアス信号を印加して、ベンド遷移を起こすものである。

0015

まず、ゲートをオンにするために信号電極電位Vsに対してゲート電極電位Vgを直流10V以上に設定する。つまり、Vg−Vs>10Vという条件で電圧を印加する。Vg−Vsは好ましくは20V以上である。このような領域で電圧を印加するのは、第一にいかなる信号電極電圧、及び全ての画素について確実に画素電極との間に十分な導通を確保し、ベンド配向のために有効な電界を付与するためである。また、第二に、ゲート電極電圧を高くすることにより、ゲート電極上での第一段階スプレイ配向の状態を長い時間維持でき、かつ、ベンド配向への遷移速度も大きくなるからである。

0016

VgとVsをこのような関係に保つと同時に、または、極めて短時間内に、対向電極電位Vcomを基準にして信号電極電位Vsにバイアス電圧を印加する。このときも、Vs−Vcom>10V、好ましくは、20V以上とする。Vs−Vcomに係わるパルス立ち上がり時間はなるべく短い方がよく、好ましくは50ms以下とすべきである。この立上り時間が長いとそれだけ第一段階のスプレイ配向の存在する時間が短くなるからである。

0017

Vs−Vcomに係わるパルスの印加時間はパルスの印加によって液晶中に発生する第一段階スプレイ配向の転移核の密度、転移核の発生領域が周囲に成長する速度、第一段階スプレイ配向の状態が第二段階スプレイ配向の状態に遷移するまでの時間によって左右される。例えば、第一段階スプレイ配向の転移核の密度が十分大きく、そこからの第一段階スプレイ領域の成長によって短時間で隣に存在する第一段階スプレイ領域の領域に到達する場合は、その到達までの時間パルスを印加すればよい。一方、転移核の密度が小さく、あるいは、成長速度が遅い場合は長い時間パルスを印加する必要がある。しかし、この時間は第一段階スプレイ配向の転移核が第二段階スプレイ配向に遷移するまでの時間によって制約される。

0018

図1(a)を参照すると、Vs−Vcom電圧の印加によって、ベンド配向領域の割合(L)が時間とともに線形に増大するのがわかる。この図において、T1とT2においてLに変局点を生じている。これは、時刻0〜T1まではベンド配向への遷移はホモジニアス配向→第一段階スプレイ配向→ベンド配向という早い遷移時間を有する経路で行われるのに対し、時刻T1〜T2ではベンド配向への遷移の過程に第二段階スプレイ配向の状態が介入するからである。つまり、時刻T1以降では電圧印加によって生じた第一段階スプレイ配向の領域が第ニ段階スプレイ配向へと遷移しているために、ベンド配向への遷移速度(ΔL/ΔT)が異なるのである。

0019

本願発明の他の実施の形態による電圧印加方法(第二の実施の形態という)を以下、説明する。第二の実施の形態によれば表示パネル全体のベンド配向遷移を間欠的なパルス信号で惹起するものである。第二の実施の形態はドライバ耐圧等の制約によってVs−Vcomを小さくせざるをえない場合や上述した第一段階スプレイ配向の転移核の発生密度、成長速度等により1回のパルス印加では全ての液晶領域を第一段階スプレイ配向に遷移させられない場合に好適な態様である。このような場合は、第一段階スプレイ配向が存続する期間(寿命)は比較的短く、ベンド配向領域の半径増加速度も小さい。従って、最初の電圧の印加によって生成された第一段階のスプレイ配向の液晶の領域は第二段階スプレイ配向に容易に、かつ、短時間で遷移してしまい、結果としてベンド配向に遷移する速度は遅くなる。また、Vs−Vcomを小さくせざるをえない場合は、周辺電極の両側では低い垂直電界しか生じえないため、ベンド配向に遷移せず第二段階スプレイ配向のままの画素領域が残りやすい。

0020

第二の実施の形態による電圧印加駆動波形の例を図2に示す。図2(a)は図2(b)に示す電圧を信号電極と対向電極間に付与し、かつ、図2(c)に示す電圧をゲート電極と信号電極に付与した場合のベンド配向領域の割合(L)を時間(T)との関係で示したものである。第二の実施の形態においては信号電極を基準として対向電極に一定の時間(図2(b)τonで示す)負のバイアス電圧を印加後、信号電極・対向電極間に好ましくは0V(以下、略0Vという)を一定の時間(図2(b)τoffで示す)印加して、最初のバイアス電圧印加によって第二段階スプレイ配向になった液晶の領域をホモジニアスな初期状態に戻す。その後、再度バイアス電圧印加=>略0V印加というステップを繰り返すことによって、ホモジニアス配向を第一段階スプレイ配向に遷移させ、第一段階スプレイ配向から直接ベンド配向を得ることによって、高速なベンド配向遷移を得ようとするものである。ここで、第二の実施の形態は略0Vの印加中にベンド配向の液晶領域がホモジニアス状態に戻る速度の方が、第二段階のスプレイ配向の液晶領域がホモジニアス状態に戻る速度よりも十分小さいことを利用している。これによって、一旦ベンド配向になった液晶の領域の面積が略0V印加によってホモジニアス状態になる等、減少するのを防止することができる。

0021

ここで、Vs−Vcomは10V以上である。また、オン電圧印加時間τonは第一段階のスプレイ配向が第二段階のスプレイ配向へと遷移しはじめる時間とほぼ同じ、または、その時間よりも少し長い程度に設定する。第一段階のスプレイ配向の寿命は液晶の種類やVs−Vcomの値に左右されるので、一概には説明できない。また、バイアス電圧非印加時間(略0Vの印加時間)τoffは第二段階のスプレイ配向の液晶領域をホモジニアス状態へと緩和する時間と同程度、または、これよりも少し長くする。この結果、第二の実施態様が動作可能なパルスのデユーテイー比は30〜70%で、40〜60%であることがより好ましい。繰り返しの周波数はおおむね0.5Hz〜10Hz程度であり、好ましくは1〜3Hzである。また、Vg−Vsについては第一の実施の形態と同様に、常にゲートに一定の電圧を付与する。この電圧はいかなる信号電極電圧、及び、全ての画素について確実に画素電極との間に十分な導通を確保し、ベンド配向のために有効な電界を付与するに足りる電圧である。

0022

図2(a)に示されるように、時間0からT1のτonの期間でベンド配向を有する液晶の領域が生成される。このときのベンド配向への遷移は初期状態であるホモジニアスな状態から第一段階のスプレイ配向の状態を経て、ベンド配向の状態に達する。従って、極めて短時間でベンド配向となる。次に、時間T1からT2のτoffの期間では時間0からT1のτonの期間で生成されたベンド配向を有する液晶の領域は減少しない。しかし、時間0からT1のτonの期間で生じた第二段階のスプレイ配向の液晶の領域はホモジニアスな初期状態に復元する。これは、ベンド配向の状態にある液晶がホモジニアスな状態に復元する時間よりも第二段階のスプレイ配向の状態にある液晶がホモジニアスな状態に復元する時間の方が短いからである。このことを利用すると、時間T2からT3のτonの期間でベンド配向を有する液晶の領域は時間0からT1のτonの期間でベンド配向を有する液晶の領域に加えて増大する。時間T3からT4のτoffの期間では時間T1からT2のτoffの期間と同様に、時間T2からT3のτonの期間で生じた第二段階スプレイ配向を有する液晶の領域がホモジニアスな初期状態に復元する。このような、間欠パルスによる電圧印加を行うことによって、図2(a)に示すようにベンド配向領域の割合(L)は漸次増大する。

0023

以上の二つの実施の形態に基づいて実際の液晶を用いてホモジニアス状態からベンド配向までの遷移時間について測定した結果を示す。測定に用いたのは表1に示す物性値を有する液晶である。

0024

液晶k1 k3 Δ
A 12.4 15.5 9.8
B 11.1 13.5 10.2
C 8.2 14.8 8.9
実施例としては第一の実施の形態である単発パルス方式、及び、第二の実施の形態である間欠パルス方式(3Hz、50%デユーテイ)を用いた。また、比較例として従来の駆動方式であるH−com反転で画素バイアス電圧の絶対値をVs−Vcomの値に設定したものを用いた。

0025

表2にVg−Vs=20V,Vs−Vcom=10Vの条件で駆動した場合を示す。なお、表中の数値はベンド配向に遷移するまでの時間(秒)であり、例えば、″5<″という表示はベンド遷移までに5秒以上かかることを示す。また、画面全体がベンド配向にならず、スプレイ配向が残ったままになる場合は不良として″X″で表した。

0026

本発明の実施態様 比較例
液晶第一の態様 第二の態様
A 5< 3 X
B 5< 3 10<
C 5< 2.5 10<

0027

次に、表3にVg−Vs=20V,Vs−Vcom=15Vの条件で駆動した場合を示す。

0028

次に、表4にVg−Vs=20V,Vs−Vcom=20Vの条件で駆動した場合を示す。

0029

以上の結果を概観すると、第一の実施態様、第二の実施態様ともに、従来の方法であるH−com反転を用いるよりも大幅にベンド配向への遷移時間が短縮される傾向を有している。但し、この傾向は用いる液晶の物性値によっても相当左右される。例えば、液晶A、Bではこの傾向は顕著であるが、液晶Cについてはさほど顕著ではない。

0030

次に、ベンド配向への遷移特性がもっとも良好であると思われる、液晶Cを用いて、第二の実施態様である間欠パルス方式のパルス周波数、デユーテイ比等を変えて測定を行った結果を表5、6に示す。表5ではVg−Vs=20V,Vs−Vcom=10Vの条件で間欠パルス方式で駆動した場合を示す。

0031

表6ではVg−Vs=20V,Vs−Vcom=20Vの条件で間欠パルス方式で駆動した場合を示す。

0032

以上によれば、デユーテイ比は概ね30〜70%の領域で良好な結果が得られることがわかる。また、この領域であれば、パルスの周波数は0.5〜3Hzのいずれにおいても良好な結果を得ることができる。

0033

さらに、デユーテイ比を50%に設定し、対向電極と信号電極との電位差を極小にした時(略0V印加と本明細書で称したもの)の電位差とベンド配向への遷移特性との関係を示す。ここで、Vg−Vs=20V,Vs−Vcom=20Vであり、また、パルス周波数は3Hzである。

図面の簡単な説明

0034

これによれば、対向電極と信号電極との極小の電位差は0Vに保つことが最も好ましいが、±1V程度であれば十分に本願発明の課題を解決することができることがわかる。そして、極小の電位差は好ましくは±0.8V程度以内がよい。

--

0035

図1本願発明の第一の実施態様に係わる電圧印加駆動方式を示した図である。
図2本願発明の第二の実施態様に係わる電圧印加駆動方式を示した図である。
図3ホモジニアスな初期の液晶配向状態を示す図である。
図4第一段階スプレイ配向による液晶配向状態を示す図である。
図5第二段階スプレイ配向による液晶配向状態を示す図である。
図6ベンド配向による液晶配向状態を示す図である。

0036

1液晶層
2、3ガラス基板
4対称な構造

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