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技術 IL−8結合阻害物質を有効成分として含有する脳卒中及び脳浮腫の予防または治療剤

出願人 中外製薬株式会社
発明者 山下純宏池田清延松本哲哉松島綱治
出願日 1997年4月23日 (23年7ヶ月経過) 出願番号 1997-106215
公開日 1998年7月7日 (22年4ヶ月経過) 公開番号 1998-182485
状態 特許登録済
技術分野 突然変異または遺伝子工学 微生物による化合物の製造 蛋白脂質酵素含有:その他の医薬 抗原、抗体含有医薬:生体内診断剤 化合物または医薬の治療活性 非環式または炭素環式化合物含有医薬 ペプチド又は蛋白質
主要キーワード 支配領域 クォリティ 前頚部 伏臥位 塞栓摘出術 化学合成物 塞栓子 出血性梗塞
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (3)

課題

新規な脳卒中、脳梗塞脳浮腫脳虚血再灌流障害、または脳血管透過性亢進の予防または治療剤の提供。

解決手段

IL-8抗体などのIL-8結合阻害物質を有効成分として含有する脳卒中、脳梗塞、脳浮腫、脳虚血再灌流障害、または脳血管透過性亢進の予防または治療剤。

概要

背景

IL-8は、C-X-Cケモカインサブファミリーに属する蛋白質であり、以前は単球由来好中球遊走因子(monocyte-derived neutrophil chemotactic factor)、好中球活性化蛋白−1(neutrophil attractant/activation protein-1)、好中球活性化因子(neutrophil activating factor)等と呼称されていた。IL-8は、好中球を活性化させ好中球に遊走能を獲得させる因子であり、IL-1βやTNF-α等の炎症性サイトカイン(Koch, A. E. et al., J. Investig. Med. (1995) 43, 28-38;Larsen, C. G. et al., Immunology (1989) 68, 31-36 )やPMA ,LPS等のマイトゲン(Yoshimura, T. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1987) 84, 9233-9237)、さらにはカドミウム等の重金属(Horiguchi, H. et al., Lymphokine Cytokine Res. (1993) 12, 421-428 )によって様々な細胞から産生される。また、低酸素状態に置かれたヒト臍帯静脈内皮細胞がIL-8を発現することも知られている(Karakurum, M. et al., J. Clin. Invest. (1994) 93, 1564-1570 )。

IL-8がその生物活性を発現するには、IL-8がIL-8レセプターに結合して、IL-8レセプターを発現している細胞を刺激する必要がある。IL-8が結合して細胞内にシグナルを伝達するIL-8レセプターは既にクローニングされ、そのアミノ酸配列も明らかにされている。ヒトIL-8レセプターには、IL-8レセプターA (αあるいは2)と呼称されるレセプターと、IL-8レセプターB (βあるいは1)と呼称されるレセプターが存在する(Murphy, P. M. and Tiffany, H. L., Science (1991) 253, 1280-1283 ;Holmes, W. E. et al., Science (1991) 253, 1278-1280)。両者は共に細胞膜を7回貫通する構造をしていることが想定されており、両者共に細胞質内ドメインGTP結合蛋白会合し(Horuk, R., TrendsPharmacol. Sci. (1994) 15, 159-165)、細胞内にIL-8のシグナルを伝達している。従って、IL-8とIL-8レセプターとの結合を阻害することにより、IL-8の生物活性を阻害することが可能になる。

これまでに知られているIL-8結合阻害物質には以下の物質がある。抗IL-8抗体としてはWS-4抗体(Ko, Y. et al., J. Immunol. Methods(1992) 149, 227-235),14E4, 46E5(Sticherling, M. et al., J. Immunol. (1989) 143, 1628-1634)、あるいはヒト抗体国際特許出願公開番号WO 96/33735 )が知られており、その他に、多糖体(国際特許公開番号WO 94/18989 )、化学合成物(Sola, F. et al., Invasion Metastasis (1995) 15, 222-231 )、ペプチド断片(Hayashi,S. et al., J. Immunol. (1995) 154, 814-824 )などが知られている。

IL-8の虚血再灌流障害における関与としては、以下のことが知られている。虚血再灌流障害の動物実験モデルにおいては、2時間の肺虚血後再灌流時に抗IL-8抗体を投与することにより、肺組織傷害が抑制されたことが既に報告されている(Sekido, N. et al., Nature (1993) 365, 654-657 )。一方、心筋虚血再灌流障害モデルにおいては、再灌流後心筋組織でのIL-8発現については報告されているものの(Ivey, C. L. et al., J. Clin. Invest . (1995) 95, 2720-2728;Kukielka, G. L. et al., J. Clin. Invest. (1995) 95, 89-103)、IL-8を中和することによる効果については不明である。

むしろ、再灌流によって増加するIL-8自身を再灌流前に投与することにより、心筋梗塞の形成が抑制されたことが報告されている(Lefer, A.M. et al., Br. J. Pharmacol. (1991) 103, 1153-1159 )。しかしながら、脳梗塞脳浮腫脳虚血再灌流障害ならびに脳血管透過性亢進において、IL-8が関与しているか否か不明であった。

脳卒中は発生機序から閉塞性脳血管障害出血性脳血管障害に分類され、閉塞性脳血管障害には脳梗塞、出血性脳血管障害にはくも膜下出血および脳内出血が含まれる。脳梗塞は、何らかの原因により脳動脈頚部動脈閉塞又は灌流圧低下が生じ、脳組織虚血性壊死を生じた状態をいい、さらに脳血栓症脳塞栓症血行力学的梗塞に大別される。

主として脳動脈の硬化性病変基盤に、血液粘度の上昇や灌流圧低下などが加わって動脈閉塞が生じ、脳組織の虚血性壊死となった状態を脳血栓症、心内血栓や稀に剥離した動脈壁血栓により脳動脈に塞栓を生じたものを脳塞栓症、また頭部あるいは頭蓋内脳動脈の狭窄または閉塞のために、それより末梢部の脳組織への血流が減少して梗塞が発生する場合は血行力学的梗塞と呼んでいる(曲直部寿夫、尾前照雄 監修、「脳血管障害」、ライフサイエンス出版、54-55 、1992;井裕夫ら編集最新内科学大系66巻「脳血管障害」、中山書店、28、1996)。

脳梗塞、脳内出血あるいはくも膜下出血により虚血に陥った脳組織では、虚血性脳浮腫の形成が観察される。脳梗塞の場合、脳浮腫は発症数時間後に出現し、発症後1週間前後までこの状態が続く。その後、脳浮腫は次第に減少し、梗塞巣の範囲にもよるが、発症後1カ月から3カ月の間に梗塞巣病変として固定する。脳内出血においては、破綻した動脈の末梢側血流障害血腫圧迫による循環障害組織壊死により、通常発症後6時間より血腫周辺部に脳浮腫が認められるようになる(井村裕夫ら編集最新内科学大系66巻「脳血管障害」、中山書店、289 、1996)。

くも膜下出血の場合、出血後3日〜3週間に遅発性攣縮が認められ、攣縮に伴い、脳灌流圧が低下し遅発性脳虚血を起こす。治療不応のものは脳梗塞となり、程度が強いと虚血性脳浮腫をきたす(井村裕夫ら編集最新内科学大系66巻「脳血管障害」、中山書店、163 、1996)。脳浮腫は脳の容量増大を引き起こす。脳は固い頭蓋に被われているため、脳浮腫がある程度を超えると、急激な組織圧および頭蓋内圧の上昇を引き起こし、結果的に脳障害増悪し、その後の梗塞巣病変の範囲を決定してしまう(稲村憲治、赫彰郎、日本臨床51巻「CT,MRI時代の脳卒中学上巻」、日本臨床、231-239, 1993 )。脳の一部が梗塞に陥ると、その領域が担っていた機能、例えば、認知知覚感覚、記憶等が失われることになる。

また、頭部外傷、特に脳挫傷急性硬膜下血腫、急性頭蓋内血腫の際、しばしば脳浮腫が生じる。脳浮腫は拡大性頭蓋内病変として作用し、その結果局所神経症状を現し、また頭蓋内腫脹や圧上昇により脳組織のテントヘルニア大孔ヘルニアを形成し、致命的になる(メルクマニュアル日本語版第1版、メディカルブックサービス、1405-1406 、1994)。

さらに、頭部外傷、脳内出血、くも膜下出血、脳腫瘍などの治療目的で、開頭して外科的手術を施す場合がある。その際、新たな出血を避けるため、治療対象範囲を支配領域とする血管を動脈クリップ等で一時的に閉塞し、脳血流を部分的に遮断する場合がある。その場合、目的の手術終了後に血行再開するが、その際に、虚血再灌流障害が生じる場合がある。また、脳梗塞に対する外科的治療方法の一つに、浅側頭動脈-中大脳動脈等の血管吻合手術が挙げられるが、その際にも一時的な血流遮断下に血管吻合が行われ、手術終了後に血行を再開するが、その際に、虚血再灌流障害が生じる場合がある。

概要

新規な脳卒中、脳梗塞、脳浮腫、脳虚血再灌流障害、または脳血管透過性亢進の予防または治療剤の提供。

抗IL-8抗体などのIL-8結合阻害物質を有効成分として含有する脳卒中、脳梗塞、脳浮腫、脳虚血再灌流障害、または脳血管透過性亢進の予防または治療剤。

目的

この様に、患者生命予後およびクォリティオブライフ(QOL )を左右する、脳卒中や脳浮腫の予防または治療は、臨床上極めて重要な課題である。現在のところ、脳梗塞に対する治療方法として抗血小板薬脳循環代謝改善薬などが投与されている。抗血小板薬の中には脳血栓急性期の治療に有効な薬剤が存在するが、類似の症状を示す脳出血患者及び脳塞栓患者では出血性脳梗塞を助長することから禁忌であり、使用に当たって慎重病型診断が必要とされる(原幸人、「medicina」、医学書院、32巻、11号、2217-2219 、1995)。

従って、脳梗塞や脳浮腫、あるいは再灌流療法時の脳虚血再灌流障害、手術時の一過性の脳血流遮断後の再灌流に伴う脳虚血再灌流障害に対する予防または治療法として、従来の病因論とは異なる全く新しい機序の薬剤を開発することが望まれる。本発明の目的は、かかる疾患のための新しい予防または治療剤を提供することである。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

IL-8結合阻害物質を有効成分として含有する脳卒中の予防または治療剤

請求項2

脳卒中が脳梗塞であることを特徴とする、請求項1に記載の予防または治療剤。

請求項3

脳梗塞が脳血栓症であることを特徴とする、請求項2に記載の予防または治療剤。

請求項4

脳梗塞が脳塞栓症であることを特徴とする、請求項2に記載の予防または治療剤。

請求項5

脳梗塞が血行力学的梗塞であることを特徴とする、請求項2に記載の予防または治療剤。

請求項6

脳卒中が出血性脳血管障害であることを特徴とする、請求項1に記載の予防または治療剤。

請求項7

出血性脳血管障害が脳内出血であることを特徴とする、請求項6に記載の予防または治療剤。

請求項8

出血性脳血管障害がくも膜下出血であることを特徴とする、請求項6に記載の予防または治療剤。

請求項9

IL-8結合阻害物質を有効成分として含有する脳浮腫の予防または治療剤。

請求項10

脳浮腫が虚血性脳浮腫であることを特徴とする、請求項9に記載の予防または治療剤。

請求項11

脳浮腫が頭部外傷に伴う脳浮腫であることを特徴とする、請求項9に記載の予防または治療剤。

請求項12

IL-8結合阻害物質を有効成分として含有する脳虚血再灌流障害の予防または治療剤。

請求項13

脳虚血再灌流障害が手術時の一過性脳血流遮断後の再灌流に伴う脳虚血再灌流障害であることを特徴とする、請求項12に記載の予防または治療剤。

請求項14

脳虚血再灌流障害が血栓溶解療法に伴う脳虚血再灌流障害であることを特徴とする、請求項12に記載の予防または治療剤。

請求項15

IL-8結合阻害物質を有効成分として含有する脳血管透過性亢進の予防または治療剤。

請求項16

IL-8結合阻害物質が抗IL-8抗体であることを特徴とする、請求項1,9,12または15に記載の予防または治療剤。

請求項17

抗IL-8抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする、請求項16に記載の予防または治療剤。

請求項18

抗IL-8抗体が哺乳類のIL-8に対する抗体であることを特徴とする、請求項16に記載の予防または治療剤。

請求項19

抗IL-8抗体がヒトIL-8に対する抗体であることを特徴とする、請求項16に記載の予防または治療剤。

請求項20

抗IL-8抗体がWS-4抗体であることを特徴とする、請求項16に記載の予防または治療剤。

請求項21

抗IL-8抗体がヒト型化またはキメラ化された抗体であることを特徴とする、請求項16に記載の予防または治療剤。

請求項22

抗IL-8抗体がヒト型化WS-4抗体であることを特徴とする、請求項16に記載の予防または治療剤。

技術分野

0001

本発明はインターロイキン-8(IL-8)結合阻害物質を有効成分として含有する脳卒中の予防または治療剤に関する。また、本発明はIL-8結合阻害物質を有効成分として含有する脳浮腫の予防または治療剤に関する。また、本発明はIL-8結合阻害物質を有効成分として含有する脳虚血再灌流障害の予防または治療剤に関する。さらに、本発明はIL-8結合阻害物質を有効成分として含有する脳血管透過性亢進の予防または治療剤に関する。

背景技術

0002

IL-8は、C-X-Cケモカインサブファミリーに属する蛋白質であり、以前は単球由来好中球遊走因子(monocyte-derived neutrophil chemotactic factor)、好中球活性化蛋白−1(neutrophil attractant/activation protein-1)、好中球活性化因子(neutrophil activating factor)等と呼称されていた。IL-8は、好中球を活性化させ好中球に遊走能を獲得させる因子であり、IL-1βやTNF-α等の炎症性サイトカイン(Koch, A. E. et al., J. Investig. Med. (1995) 43, 28-38;Larsen, C. G. et al., Immunology (1989) 68, 31-36 )やPMA ,LPS等のマイトゲン(Yoshimura, T. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1987) 84, 9233-9237)、さらにはカドミウム等の重金属(Horiguchi, H. et al., Lymphokine Cytokine Res. (1993) 12, 421-428 )によって様々な細胞から産生される。また、低酸素状態に置かれたヒト臍帯静脈内皮細胞がIL-8を発現することも知られている(Karakurum, M. et al., J. Clin. Invest. (1994) 93, 1564-1570 )。

0003

IL-8がその生物活性を発現するには、IL-8がIL-8レセプターに結合して、IL-8レセプターを発現している細胞を刺激する必要がある。IL-8が結合して細胞内にシグナルを伝達するIL-8レセプターは既にクローニングされ、そのアミノ酸配列も明らかにされている。ヒトIL-8レセプターには、IL-8レセプターA (αあるいは2)と呼称されるレセプターと、IL-8レセプターB (βあるいは1)と呼称されるレセプターが存在する(Murphy, P. M. and Tiffany, H. L., Science (1991) 253, 1280-1283 ;Holmes, W. E. et al., Science (1991) 253, 1278-1280)。両者は共に細胞膜を7回貫通する構造をしていることが想定されており、両者共に細胞質内ドメインGTP結合蛋白会合し(Horuk, R., TrendsPharmacol. Sci. (1994) 15, 159-165)、細胞内にIL-8のシグナルを伝達している。従って、IL-8とIL-8レセプターとの結合を阻害することにより、IL-8の生物活性を阻害することが可能になる。

0004

これまでに知られているIL-8結合阻害物質には以下の物質がある。抗IL-8抗体としてはWS-4抗体(Ko, Y. et al., J. Immunol. Methods(1992) 149, 227-235),14E4, 46E5(Sticherling, M. et al., J. Immunol. (1989) 143, 1628-1634)、あるいはヒト抗体国際特許出願公開番号WO 96/33735 )が知られており、その他に、多糖体(国際特許公開番号WO 94/18989 )、化学合成物(Sola, F. et al., Invasion Metastasis (1995) 15, 222-231 )、ペプチド断片(Hayashi,S. et al., J. Immunol. (1995) 154, 814-824 )などが知られている。

0005

IL-8の虚血再灌流障害における関与としては、以下のことが知られている。虚血再灌流障害の動物実験モデルにおいては、2時間の肺虚血後再灌流時に抗IL-8抗体を投与することにより、肺組織傷害が抑制されたことが既に報告されている(Sekido, N. et al., Nature (1993) 365, 654-657 )。一方、心筋虚血再灌流障害モデルにおいては、再灌流後心筋組織でのIL-8発現については報告されているものの(Ivey, C. L. et al., J. Clin. Invest . (1995) 95, 2720-2728;Kukielka, G. L. et al., J. Clin. Invest. (1995) 95, 89-103)、IL-8を中和することによる効果については不明である。

0006

むしろ、再灌流によって増加するIL-8自身を再灌流前に投与することにより、心筋梗塞の形成が抑制されたことが報告されている(Lefer, A.M. et al., Br. J. Pharmacol. (1991) 103, 1153-1159 )。しかしながら、脳梗塞、脳浮腫、脳虚血再灌流障害ならびに脳血管透過性亢進において、IL-8が関与しているか否か不明であった。

0007

脳卒中は発生機序から閉塞性脳血管障害出血性脳血管障害に分類され、閉塞性脳血管障害には脳梗塞、出血性脳血管障害にはくも膜下出血および脳内出血が含まれる。脳梗塞は、何らかの原因により脳動脈頚部動脈閉塞又は灌流圧低下が生じ、脳組織虚血性壊死を生じた状態をいい、さらに脳血栓症脳塞栓症血行力学的梗塞に大別される。

0008

主として脳動脈の硬化性病変基盤に、血液粘度の上昇や灌流圧低下などが加わって動脈閉塞が生じ、脳組織の虚血性壊死となった状態を脳血栓症、心内血栓や稀に剥離した動脈壁血栓により脳動脈に塞栓を生じたものを脳塞栓症、また頭部あるいは頭蓋内脳動脈の狭窄または閉塞のために、それより末梢部の脳組織への血流が減少して梗塞が発生する場合は血行力学的梗塞と呼んでいる(曲直部寿夫、尾前照雄 監修、「脳血管障害」、ライフサイエンス出版、54-55 、1992;井裕夫ら編集最新内科学大系66巻「脳血管障害」、中山書店、28、1996)。

0009

脳梗塞、脳内出血あるいはくも膜下出血により虚血に陥った脳組織では、虚血性脳浮腫の形成が観察される。脳梗塞の場合、脳浮腫は発症数時間後に出現し、発症後1週間前後までこの状態が続く。その後、脳浮腫は次第に減少し、梗塞巣の範囲にもよるが、発症後1カ月から3カ月の間に梗塞巣病変として固定する。脳内出血においては、破綻した動脈の末梢側血流障害血腫圧迫による循環障害組織壊死により、通常発症後6時間より血腫周辺部に脳浮腫が認められるようになる(井村裕夫ら編集最新内科学大系66巻「脳血管障害」、中山書店、289 、1996)。

0010

くも膜下出血の場合、出血後3日〜3週間に遅発性攣縮が認められ、攣縮に伴い、脳灌流圧が低下し遅発性脳虚血を起こす。治療不応のものは脳梗塞となり、程度が強いと虚血性脳浮腫をきたす(井村裕夫ら編集最新内科学大系66巻「脳血管障害」、中山書店、163 、1996)。脳浮腫は脳の容量増大を引き起こす。脳は固い頭蓋に被われているため、脳浮腫がある程度を超えると、急激な組織圧および頭蓋内圧の上昇を引き起こし、結果的に脳障害増悪し、その後の梗塞巣病変の範囲を決定してしまう(稲村憲治、赫彰郎、日本臨床51巻「CT,MRI時代の脳卒中学上巻」、日本臨床、231-239, 1993 )。脳の一部が梗塞に陥ると、その領域が担っていた機能、例えば、認知知覚感覚、記憶等が失われることになる。

0011

また、頭部外傷、特に脳挫傷急性硬膜下血腫、急性頭蓋内血腫の際、しばしば脳浮腫が生じる。脳浮腫は拡大性頭蓋内病変として作用し、その結果局所神経症状を現し、また頭蓋内腫脹や圧上昇により脳組織のテントヘルニア大孔ヘルニアを形成し、致命的になる(メルクマニュアル日本語版第1版、メディカルブックサービス、1405-1406 、1994)。

0012

さらに、頭部外傷、脳内出血、くも膜下出血、脳腫瘍などの治療目的で、開頭して外科的手術を施す場合がある。その際、新たな出血を避けるため、治療対象範囲を支配領域とする血管を動脈クリップ等で一時的に閉塞し、脳血流を部分的に遮断する場合がある。その場合、目的の手術終了後に血行再開するが、その際に、虚血再灌流障害が生じる場合がある。また、脳梗塞に対する外科的治療方法の一つに、浅側頭動脈-中大脳動脈等の血管吻合手術が挙げられるが、その際にも一時的な血流遮断下に血管吻合が行われ、手術終了後に血行を再開するが、その際に、虚血再灌流障害が生じる場合がある。

発明が解決しようとする課題

0013

この様に、患者生命予後およびクォリティオブライフ(QOL )を左右する、脳卒中や脳浮腫の予防または治療は、臨床上極めて重要な課題である。現在のところ、脳梗塞に対する治療方法として抗血小板薬脳循環代謝改善薬などが投与されている。抗血小板薬の中には脳血栓急性期の治療に有効な薬剤が存在するが、類似の症状を示す脳出血患者及び脳塞栓患者では出血性脳梗塞を助長することから禁忌であり、使用に当たって慎重病型診断が必要とされる(原幸人、「medicina」、医学書院、32巻、11号、2217-2219 、1995)。

0014

脳循環改善薬は、脳梗塞発作後1カ月以降の慢性期に投与される薬剤であり、急性期での使用は好ましくないと考えられている(亀山正邦編集、「脳卒中治療マニュアル」医学書院、172-173 、1991)。また、最近では発症後超急性期にいまだ不可逆的な細胞死に陥っていない領域の血流を再開させる目的で、血栓溶解療法バイパス術、血栓内膜剥離術、塞栓摘出術などの再灌流療法が行われている。しかし、心筋梗塞とは異なり、脳梗塞では脳組織が不可逆的損傷を受けた後の血行再開は、出血性梗塞や脳浮腫の増加など、組織障害増幅される虚血再灌流障害を発生させ新たな問題点として提起されている(岡田靖、「神経研究の進歩」医学書院、40巻 4号、655-665 、1996;高橋明、「medicina」、医学書院、32巻、11号、2261-2263 、1995)。

0015

このように現在、脳梗塞急性期に使用される薬剤は、出血性梗塞や虚血再灌流障害といった副作用を有していたり、対象となる病態治療効果が期待できる時間帯が限定されるなど、満足できるものではない。一方、脳浮腫に対する治療法は、過呼吸脳脊髄液ドレナージと併行して高張液ステロイド剤あるいは他の投与に頼っているが、これらの効果はほとんどの場合一過性であり、最終的な治療効果にそれほど大きな期待は持てない(亀山正邦編集、「脳卒中治療マニュアル」医学書院、34-36 、1991)。

0016

従って、脳梗塞や脳浮腫、あるいは再灌流療法時の脳虚血再灌流障害、手術時の一過性の脳血流遮断後の再灌流に伴う脳虚血再灌流障害に対する予防または治療法として、従来の病因論とは異なる全く新しい機序の薬剤を開発することが望まれる。本発明の目的は、かかる疾患のための新しい予防または治療剤を提供することである。

課題を解決するための手段

0017

本発明者らは、かかる予防または治療剤を提供すべく鋭意研究を重ねた結果、IL-8結合阻害物質により、所期の目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、IL-8結合阻害物質を有効成分として含有する脳卒中の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、IL-8結合阻害物質を有効成分として含有する脳梗塞の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、IL-8結合阻害物質を有効成分として含有する脳血栓症の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、IL-8結合阻害物質を有効成分として含有する脳塞栓症の予防または治療剤を提供する。

0018

本発明はまた、IL-8結合阻害物質を有効成分として含有する血行力学的梗塞の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、IL-8結合阻害物質を有効成分として含有する出血性脳血管障害の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、IL-8結合阻害物質を有効成分として含有する脳内出血の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、IL-8結合阻害物質を有効成分として含有するくも膜下出血の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、IL-8結合阻害物質を有効成分として含有する脳浮腫の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、IL-8結合阻害物質を有効成分として含有する虚血性脳浮腫の予防または治療剤を提供する。

0019

本発明はまた、IL-8結合阻害物質を有効成分として含有する頭部外傷に伴う脳浮腫の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、IL-8結合阻害物質を有効成分として含有する脳虚血再灌流障害の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、IL-8結合阻害物質を有効成分として含有する手術時の一過性の脳血流遮断後の再灌流に伴う脳虚血再灌流障害の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、IL-8結合阻害物質を有効成分として含有する血栓溶解療法に伴う脳虚血再灌流障害の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、IL-8結合阻害物質を有効成分として含有する脳血管透過性亢進の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、抗IL-8抗体を有効成分として含有する脳卒中の予防または治療剤を提供する。

0020

本発明はまた、抗IL-8抗体を有効成分として含有する脳梗塞の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、抗IL-8抗体を有効成分として含有する脳血栓症の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、抗IL-8抗体を有効成分として含有する脳塞栓症の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、抗IL-8抗体を有効成分として含有する血行力学的梗塞の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、抗IL-8抗体を有効成分として含有する出血性脳血管障害の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、抗IL-8抗体を有効成分として含有する脳内出血の予防または治療剤を提供する。

0021

本発明はまた、抗IL-8抗体を有効成分として含有するくも膜下出血の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、抗IL-8抗体を有効成分として含有する脳浮腫の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、抗IL-8抗体を有効成分として含有する虚血性脳浮腫の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、抗IL-8抗体を有効成分として含有する頭部外傷に伴う脳浮腫の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、抗IL-8抗体を有効成分として含有する脳虚血再灌流障害の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、抗IL-8抗体を有効成分として含有する手術時の一過性の脳血流遮断後の再灌流に伴う脳虚血再灌流障害の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、抗IL-8抗体を有効成分として含有する血栓溶解療法に伴う脳虚血再灌流障害の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、抗IL-8抗体を有効成分として含有する脳血管透過性亢進の予防または治療剤を提供する。

0022

本発明はまた、IL-8に対するモノクローナル抗体を有効成分として含有する脳梗塞、脳浮腫、脳虚血再灌流障害、脳血管透過性亢進の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、哺乳類のIL-8に対する抗体を有効成分として含有する脳梗塞、脳浮腫、脳虚血再灌流障害、脳血管透過性亢進の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、ヒトIL-8に対する抗体を有効成分として含有する脳梗塞、脳浮腫、脳虚血再灌流障害、脳血管透過性亢進の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、IL-8に対するWS-4抗体を有効成分として含有する脳梗塞、脳浮腫、脳虚血再灌流障害、脳血管透過性亢進の予防または治療剤を提供する。本発明はまた、IL-8に対するヒト型化またはキメラ化された抗体を有効成分として含有する脳梗塞、脳浮腫、脳虚血再灌流障害、脳血管透過性亢進の予防または治療剤を提供する。本発明はさらに、IL-8に対するヒト型化WS-4抗体を有効成分として含有する脳梗塞、脳浮腫、脳虚血再灌流障害、脳血管透過性亢進の予防または治療剤を提供する。

0023

1.IL-8結合阻害物質
本発明で使用されるIL-8結合阻害物質は、脳卒中、脳浮腫、脳虚血再灌流障害または脳血管透過性亢進の治療効果あるいは予防効果を有するものであれば、その由来、種類および形状を問わない。本発明で使用されるIL-8結合阻害物質はIL-8レセプターへのIL-8の結合を阻害する物質である。具体的には、IL-8と結合することにより、IL-8レセプターへのIL-8の結合を阻害してIL-8のシグナル伝達を遮断し、IL-8の生物学的活性を阻害する物質である。

0024

ヒトIL-8は、N末端において異なるプロセシングを受けるが、本発明で使用されるIL-8結合阻害物質の標的としては、IL-8の生物活性を有する限りそのアミノ酸残基数を問わない。一方、ヒトIL-8レセプターには、IL-8レセプターA (αあるいは2)と呼称されるレセプターと、IL-8レセプターB (βあるいは1)と呼称されるレセプターが存在するが、本発明で使用されるIL-8結合阻害物質によってIL-8の結合が阻害されるレセプターとしては、IL-8の生物活性を誘導する限りそのタイプを問わない。本発明で使用されるIL-8結合阻害物質としては、抗IL-8抗体が最も好ましく、後述する方法により予防または治療効果を確認すればよい。

0025

2. 抗IL-8抗体
本発明で使用される抗IL-8抗体は、脳卒中、脳浮腫、脳虚血再灌流障害、または脳血管透過性亢進の予防または治療効果を有するものであれば、その由来、種類(モノクローナルポリクローナル)および形状を問わない。本発明で使用される抗IL-8抗体は、公知の手段を用いてポリクローナルまたはモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗IL-8抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。

0026

哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマに産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクター形質転換した宿主に産生されるものがある。この抗体はIL-8と結合することにより、好中球等に発現されているIL-8レセプターへの結合を阻害してIL-8のシグナル伝達を遮断し、IL-8の生物学的活性を阻害する抗体である。

0027

このような抗体としては、WS-4抗体(Ko, Y. et al., J. Immunol. Methods(1992) 149, 227-235)やDM/C7 抗体(Mulligan, M. S. et al., J. Immunol. (1993) 150, 5585-5595 )、Pep-1 抗体およびPep-3 抗体(国際特許出願公開番号WO 92/04372 )または6G4.2.5 抗体およびA5.12.14抗体(国際特許出願公開番号WO 95/23865 ;Boylan, A.M. et al., J. Clin. Invest. (1992) 89, 1257-1267)等が挙げられる。これらのうちで、特に好ましい抗体としてWS-4抗体が挙げられる。なお、WS-4抗体産生ハイブリドーマ細胞株は、Mouse hybridoma WS-4として、工業技術院生命工学工業技術研究所県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成8 年4 月17日に、FERM BP-5507としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。

0028

抗体取得の感作抗原として使用されるIL-8は、ヒトIL-8についてはMatsushima, K. et al., J. Exp. Med. (1988) 167, 1883-1893 に、モルモットIL-8については Yoshimura, T.and Johnson, D. G., J. Immunol . (1993) 151, 6225-6236 に、ブタIL-8についてはGoodman, R. B. et al., Biochemistry (1992) 31,10483-10490 に、ウサギIL-8についてはHarada, A. et al., Int. Immunol. (1993) 5, 681-690に、イヌIL-8についてはIshikawa, J. et al., Gene (1993) 131, 305-306 に、ヒツジIL-8についてはSeow, H.F. et al., Immunol. Cell Biol.(1994) 72, 398-405 に、サルIL-8についてはVillinger, F. et al., J. Immunol. (1995) 155, 3946-3954 に開示されたそれぞれのIL-8遺伝子/アミノ酸配列を用いることによって得られる。

0029

ヒトIL-8は、種々の細胞で産生され、N末端において異なるプロセシングを受けることが報告されている(Leonard, E. J. et al., Am. J. Respir. Cell. Mol. Biol. (1990) 2, 479-486)。これまでに、79、77、72、71、70および69のアミノ酸残基数を有するIL-8が知られているが、本発明で使用される抗IL-8抗体取得のための抗原として使用され得る限りそのアミノ酸残基数を問わない。IL-8の遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中または、培養上清中から目的のIL-8タンパク質を公知の方法で精製し、この精製IL-8タンパク質を感作抗原として用いればよい。

0030

3.抗体産生ハイブリドーマ
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、IL-8を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞スクリーニングすることによって作製できる。感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげ歯類動物、例えば、マウスラットハムスター等が使用される。

0031

感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内または、皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate-Buffered Saline )や生理食塩水等で適当量希釈、懸濁したものを所望により通常のアジュバント、例えば、フロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4-21日毎に数回投与するのが好ましい。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することができる。このように免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを常法により確認した後に、哺乳動物から免疫細胞が取り出され、細胞融合に付されるが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。

0032

前記免疫細胞と融合される他方の親細胞としての哺乳動物のミエローマ細胞としては、既に公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(Kearney, J.F. et al., J. Immnol. (1979) 123, 1548-1550 ),P3x63Ag8U.1 (Yelton, D.E. et al., Current Topics in Microbiology and Immunology (1978) 81, 1-7),NS-1(Kohler, G. and Milstein, C., Eur. J. Immunol. (1976) 6, 511-519 ),MPC-11(Margulies, D. H. et al., Cell (1976) 8, 405-415 ),SP2/0(Shulman, M. et al., Nature (1978) 276, 269-270),FO(de St. Groth, S.F. and Scheidegger, D., J. Immunol. Methods(1980) 35, 1-21),S194(Trowbridge, I. S., J. Exp. Med. (1978) 148, 313-323 ),R210(Galfre, G. et al., Nature (1979) 277, 131-133 )等が好適に使用される。

0033

前記免疫細胞とミエローマ細胞の細胞融合は基本的には公知の方法、例えば、ミルステインらの方法(Galfre, G. and Milstein, C. ,MethodsEnzymol. (1981) 73, 3-46)等に準じて行うことができる。より具体的には、前記細胞融合は例えば、細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては例えば、ポリエチレングリコール(PEG )、センダイウィルスHVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は、例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1-10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清FCS)等の血清補液を併用することもできる。

0034

細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め、37℃程度に加温したPEG溶液、例えば、平均分子量1000-6000 程度のPEG 溶液を通常、30-60%(w/v )の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)が形成される。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去できる。当該ハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えば、HAT 培養液(ヒポキサンチンアミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。当該HAT 培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間、通常数日〜数週間継続する。

0035

ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよび単一クローニングが行われる。また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をin vitroでIL-8に感作し、感作リンパ球ヒト由来永久分裂能を有するミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、IL-8への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1-59878 参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原となるIL-8を免疫して抗IL-8抗体産生細胞を取得し、これを不死化させた細胞を用いてIL-8に対するヒト抗体を取得してもよい(国際特許出願公開番号WO 92/03918 ,WO 93/12227 ,WO94/02602 ,WO 94/25585 ,WO 96/33735 およびWO 96/34096 参照)。

0036

このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に移植して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。

0037

4.組換え型抗体
モノクローナル抗体として、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体を本発明に用いることができる(例えば、Borrebaeck, C.A.K. and Larrick, J.W., THERAPEUTIC MONOCLONALANTIBODIES, Publishedin the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERSLTD, 1990参照)。

0038

具体的には、抗IL-8抗体を産生するハイブリドーマから、抗IL-8抗体の可変領域(V領域)をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry (1979) 18, 5294-5299 )、AGPC法(Chomczynski, P. and Sacchi, N., Anal. Biochem. (1987) 162, 156-159)等により全RNA を調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia )等を使用して全RNA からmRNAを精製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit (Pharmacia )を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。

0039

得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V 領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit (生化学工業)等を用いて行うことができる。また、cDNAの合成および増幅を行うには5'-Ampli FINDERRACE Kit (Clontech)およびポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction ;PCR)を用いた5'-RACE 法(Frohman, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 8998-9002 ;Belyavsky, A. et al.,Nucleic AcidsRes. (1989) 17, 2919-2932 )を使用することができる。

0040

得られたPCR産物から目的とするDNA 断片を精製し、ベクターDNA と連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNA の塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法により確認する。目的とする抗IL-8抗体のV 領域をコードするDNA が得られれば、これを所望の抗体定常領域(C 領域)をコードするDNA と連結し、これを発現ベクターへ組み込む。または、抗体のV 領域をコードするDNA を、抗体C 領域のDNA を既に含む発現ベクターに組み込んでもよい。

0041

本発明で使用される抗IL-8抗体を製造するには、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサープロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させる。抗体遺伝子の発現は、抗体の重鎖(H 鎖)または軽鎖(L 鎖)をコードするDNA を別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH 鎖およびL 鎖をコードするDNA を単一の発現ベクターに組み込んで、宿主細胞を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号WO 94/11523 参照)。

0042

5.改変抗体
本発明では、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト型化(Humanized )抗体を使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。キメラ抗体は、前記のようにして得た、ヒト抗体以外の抗体V 領域をコードするDNA をヒト抗体C 領域をコードするDNA と連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 125023 、国際特許出願公開番号WO96/02576参照)。この既知の方法を用いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。

0043

なお、キメラWS-4抗体のL 鎖またはH 鎖を含むプラスミドを有する大腸菌は、各々Escherichia coli DH5α(HEF-chWS4L-gκ)およびEscherichia coli JM109(HEF-chWS4H-gγ1 )として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成6 年7 月12日に、各々FERM BP-4739およびFERMBP-4740としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体相補性決定領域(complementarity determining region;CDR)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 125023 、国際特許出願公開番号WO 96/02576 参照)。

0044

具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(frameworkregion;FR)を連結するように設計したDNA 配列を、末端部で互いにオーバーラップする部分を有する数本のオリゴヌクレオチドに分割して合成し、PCR法により一本に統合したDNA に合成する。得られたDNA をヒト抗体C 領域をコードするDNA と連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 239400 、国際特許出願公開番号WO 96/02576 参照)。CDR を介して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、ヒト型化抗体のCDR が適切な抗原結合部位を形成するように抗体のV 領域のFRのアミノ酸置換してもよい(Sato, K. et al., Cancer Res. (1993) 53, 851-856 )。

0045

キメラ抗体ならびにヒト型化抗体には、目的によってヒト抗体C 領域が使用され、例えば、 Cγ1 , Cγ2 , Cγ3 , Cγ4 を使用することができる。また、抗体またはその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C 領域を修飾してもよい。例えば、抗体のサブクラスIgG4に選択する場合、IgG4のヒンジ領域の一部のアミノ酸配列CPSCP をIgG1のヒンジ領域のアミノ酸配列CPPCP に変換する事により、IgG4の構造的不安定性を解消できる(Angal, S. et al., Mol. Immunol.(1993) 30, 105-108)。

0046

キメラ抗体はヒト以外の哺乳動物由来抗体のV 領域とヒト抗体由来のC 領域からなり、ヒト型化抗体はヒト以外の哺乳動物由来抗体のCDRとヒト抗体由来のFRおよびC 領域からなり、ヒト以外の哺乳動物由来のアミノ酸配列が最小限度に減少しているため、ヒト体内における抗原性が低下し、本発明の予防または治療剤の有効成分として有用である。本発明に使用できるヒト型化抗体の好ましい具体例としては、ヒト型化WS-4抗体が挙げられる(国際特許出願公開番号WO 96/02576 参照)。ヒト型化WS-4抗体は、マウス由来のWS-4抗体のCDR を、L 鎖についてはヒト抗体REIのFRと、H 鎖についてはヒト抗体VDH26 のFR1-3 およびヒト抗体4B4 のFR4 と連結し、抗原結合活性を有するようにFRのアミノ酸残基を一部置換したものである。

0047

なお、ヒト型化WS-4抗体のL 鎖またはH 鎖を含むプラスミドを有する大腸菌は、各々Escherichia coli DH5α(HEF-RVLa-gκ)およびEscherichia coli JM109(HEF-RVHg-gγ1 )として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成6 年7 月12日に、各々FERM BP-4738およびFERM BP-4741としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。

0048

6. 抗体修飾物
本発明で使用される抗体は、IL-8に結合し、IL-8の活性を阻害するかぎり、抗体の断片やその修飾物であってよい。例えば、抗体の断片としては、Fab、F(ab')2 、FvまたはH 鎖とL 鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。具体的には、抗体を酵素、例えば、パパインペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、または、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co, M.S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976;Better, M. and Horwitz, A. H., MethodsEnzymol. (1989) 178, 476-496 ;Pluckthun, A.and Skerra, A., Methods Enzymol. (1989) 178, 497-515;Lamoyi, E., Methods Enzymol. (1986) 121, 652-663;Rousseaux, J. et al., Methods Enzymol.(1986) 121, 663-669 ;Bird, R. E. and Walker, B. W., Trends Biotechnol.(1991) 9, 132-137 参照)。

0049

scFvは、抗体のH 鎖V 領域とL 鎖V 領域を連結することにより得られる。このscFvにおいて、H 鎖V 領域とL 鎖V 領域はリンカー、好ましくは、ペプチドリンカーを介して連結される(Huston, J. S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 5879-5883)。scFvにおけるH 鎖V 領域およびL 鎖V 領域は、上記抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V 領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12-19 残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。

0050

scFvをコードするDNA は、前記抗体のH 鎖または、H 鎖V 領域をコードするDNA 、およびL 鎖または、L 鎖V 領域をコードするDNA を鋳型とし、それらの配列のうちの所望のアミノ酸配列をコードするDNA 部分を、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNA およびその両端を各々H 鎖、L 鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。また、一旦scFvをコードするDNA が作製されれば、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いて常法に従って、scFvを得ることができる。

0051

これら抗体の断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本願特許請求の範囲でいう「抗体」にはこれらの抗体の断片も包含される。抗体の修飾物として、PEG 等の各種分子と結合した抗IL-8抗体を使用することもできる。本願特許請求の範囲でいう「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野において既に確立されている。

0052

7. 抗IL-8抗体の発現および産生
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、取得することができる。哺乳類細胞の場合、常用される有用なプロモーター、発現させる抗体遺伝子、その3'側下流にポリAシグナルを機能的に結合させたDNA を含む発現ベクターにて発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer )を挙げることができる。

0053

また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルスポリオーマウィルスアデノウィルスシミアンウィルス40SV40 )等のウィルスプロモーター/エンハンサーやヒトエロンゲーションファクター1 α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサーを用いればよい。例えば、SV 40 プロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mulligan, R. C. らの方法(Nature (1979) 277, 108-114)、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mizushima, S, らの方法(Nucleic AcidsRes. (1990) 18, 5322)に従えば容易に実施することができる。

0054

大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列、発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーターとしては、laczプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。laczプロモーターを使用する場合、Ward, E. S. らの方法(Nature (1989) 341, 544-546;FASEB J. (1992) 6, 2422-2427)に、また、araBプロモーターを使用する場合、Better, M.らの方法(Science (1988) 240, 1041-1043 )に従えばよい。

0055

抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al., J. Bacteriol. (1987) 169, 4379-4383)を使用すればよい。ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切に組み直して(refold)使用する(例えば、国際特許出願公開番号WO 96/30394 参照)。複製起源としては、SV40 、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることができ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH )遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。

0056

本発明で使用される抗体の製造のために、任意の産生系を使用することができ、抗体製造のための産生系は、in vitroおよびin vivo の産生系がある。in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。真核細胞を使用する場合、動物細胞植物細胞真菌細胞を用いる産生系がある。動物細胞としては、(1)哺乳類細胞、例えば、CHO 、COS 、ミエローマ、BHK(baby hamster kidney )、HeLa、Vero、(2)両生類細胞、例えば、アフリカツメガエル卵母細胞、あるいは(3)昆虫細胞、例えば、sf9 、sf21、Tn5が知られている。

0057

植物細胞としては、例えば、ニコティアナ(Nicotiana )属、詳しくは、ニコティアナ タバカム(Nicotiana tabacum )由来の細胞が知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、(1)酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces )属、詳しくは、サッカロミセスセレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、あるいは(2)糸状菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus )属、詳しくは、アスペルギルスニガー(Aspergillus niger )が知られている。

0058

原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌が知られている。これらの細胞に、目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより抗体が得られる。培養は、公知の方法に従い行う。例えば、哺乳類細胞用の培養液として、DMEM,MEM,RPMI1640,IMDM等を使用することができ、FCS等の血清補液を併用することもできる。また、抗体遺伝子を導入した細胞を動物の腹腔等へ移植することにより、in vivo にて抗体を産生してもよい。更なるin vivo の産生系としては、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。動物を使用する場合、哺乳類動物昆虫を用いる産生系がある。哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシを用いることができる(Glaser, V.,SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993 )。また、昆虫としては、カイコを用いることができる。

0059

植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。これらの動物または植物に抗体遺伝子を導入し、動物または植物の体内で抗体を産生させ、回収する。例えば、抗体遺伝子をヤギβカゼインのような乳汁中固有に産生される蛋白質をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA 断片をヤギの注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。トランスジェニックヤギから産生される所望抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい。(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology (1994) 12, 699-702 )。

0060

また、カイコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を挿入したバキュロウィルスをカイコに感染させ、このカイコの体液より所望の抗体を得る(Maeda, S. et al., Nature (1985) 315, 592-594)。さらに、タバコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を植物発現用ベクター、例えばpMON 530に挿入し、このベクターをアグロバクテリウムチューファエンス(Agrobacterium tumefaciens ) のようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えばニコティアナ タバカム(Nicotiana tabacum )に感染させ、本タバコの葉より所望の抗体を得る(Ma, J. K. et al., Eur. J. Immunol. (1994) 24, 131-138 )。

0061

上述のようにin vitroまたはin vivo の産生系にて抗体を産生する場合、H 鎖またはL 鎖をコードするDNA を別々に発現ベクターに組み込んで宿主を同時形質転換させてもよいし、あるいはH 鎖およびL 鎖をコードするDNA を単一の発現ベクターに組み込んで、宿主を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号WO 94/11523 参照)。

0062

8. 抗体の分離、精製
前記のように発現、産生された抗体は、細胞内外、宿主から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製はアフィニティークロマトグラフィーにより行うことができる。アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、例えば、プロテインAカラム、プロテインG カラムが挙げられる。具体的には、プロテインA カラムを用いたカラムとして、HyperD ,POROS ,Sepharose F.F.(Pharmacia )等が挙げられる。

0063

その他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、上記アフィニティークロマトグラフィー以外のクロマトグラフィーカラムフィルター限外濾過塩析透析等を適宜選択、組み合わせれば、抗体を分離、精製することができる(Antibodies:ALaboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)。アフィニティークロマトグラフィー以外のクロマトグラフィーとしては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー疎水クロマトグラフィー、ゲル濾過等が挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996)。

0064

9. 抗体の濃度測定
8で得られた抗体の濃度測定は吸光度の測定または酵素結合免疫吸着検定法(enzyme-linked immunosorbent assay ;ELISA)等により行うことができる。すなわち、吸光度の測定による場合には、得られた抗体をPBSで適当に希釈した後、280 nmの吸光度を測定し、種およびサブクラスにより吸光係数は異なるが、ヒト抗体の場合1mg/ml を1.4ODとして算出する。また、ELISA による場合は以下のように測定することができる。すなわち、0.1M重炭酸緩衝液(pH9.6 )で1μg/mlに希釈したヤギ抗ヒトIgG抗体100 μl を96穴プレート(Nunc)に加え、4℃で一晩インキュベーションし、抗体を固相化する。

0065

ブロッキングの後、適宜希釈した本発明で使用される抗体または抗体を含むサンプル、あるいは濃度標準品として既知の濃度のヒトIgG100μl を添加し、室温にて1時間インキュベーションする。洗浄後、5000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG 抗体100 μl を加え、室温にて1時間インキュベートする。洗浄後、基質溶液を加えインキュベーションの後、MICROPLATE READERModel 3550(Bio-Rad )を用いて405nm での吸光度を測定し、目的の抗体の濃度を濃度標準ヒトIgG の吸光度より算出する。

0066

10.活性の確認
本発明で使用されるIL-8結合阻害物質の活性は、下記または公知の通常知られている方法を用いて確認することができる。例えば、本発明で使用される抗IL-8抗体の抗原結合活性(Antibodies: A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory,1988)、リガンドレセプター結合阻害活性(Harada, A. et al., Int. Immunol.(1993) 5, 681-690)の測定には公知の手段を使用することができる。

0067

本発明で使用される抗IL-8抗体の抗原結合活性を測定する方法として、ELISA、EIA酵素免疫測定法)、RIA放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法を用いることができる。例えば、ELISA を用いる場合、IL-8に対するポリクローナル抗体を固相化した96穴プレートにIL-8を添加し、次いで目的の抗IL-8抗体を含む試料、例えば、抗IL-8抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を加える。アルカリフォスファターゼ等の酵素で標識した目的の抗IL-8抗体を認識する二次抗体を添加し、プレートをインキュベーション、洗浄した後、p-ニトロフェニル燐酸などの酵素基質を加えて吸光度を測定することで抗原結合活性を評価することができる。

0068

本発明で使用される抗IL-8抗体のリガンドレセプター結合阻害活性を測定する方法としては、通常のCellELISA、あるいは、リガンドレセプター結合アッセイを用いることができる。例えば、CellELISA法の場合、IL-8レセプターを発現する血液細胞あるいは癌細胞、例えば、好中球を96穴プレートで培養して接着させ、パラホルムアルデヒドなどで固定化する。あるいは、IL-8レセプターを発現する細胞の膜分画を調製して固相化した96穴プレートを作製する。これに、目的の抗IL-8抗体を含む試料、例えば、抗IL-8抗体産生細胞の培養上清や精製抗体と、放射性同位元素、例えば、125I等で標識したIL-8を添加し、プレートをインキュベーション、洗浄した後、放射活性を測定することでIL-8レセプターに結合したIL-8量を測定でき、抗IL-8抗体のリガンドレセプター結合阻害活性を評価することができる。

0069

また、細胞上のIL-8レセプターに対するIL-8の結合阻害アッセイには、IL-8レセプターを発現する血液細胞あるいは癌細胞、例えば好中球を遠心分離等の手段で分離した後、細胞懸濁液として調製する。放射性同位元素、例えば、125I等で標識したIL-8溶液、あるいは非標識のIL-8と標識IL-8の混合溶液と、濃度調製した抗IL-8抗体を含む溶液を細胞懸濁液に添加する。一定時間の後、細胞を分離し、細胞上に結合した標識IL-8の放射活性を測定すればよい。また、本発明で使用される抗IL-8抗体の好中球遊走(ケモタキシス;chemotaxis)に対する阻害能を測定する方法としては、市販されているケモタキシスチャンバーを用いた公知の通常知られている方法、例えば、Grob, P.M. らの方法(J. Biol. Chem. (1990) 265,8311-8316 )を用いることができる。

0070

具体的には、抗IL-8抗体を培養液、例えば、RPMI1640 、DMEM、MEM、IMDM等で希釈した後、濃度調製したIL-8を加え、これをフィルターで上下に仕切られたチャンバー下層分注する。次いで、調製した細胞懸濁液、例えば好中球懸濁液をチャンバー上層に添加し、一定時間放置する。遊走する細胞はチャンバーに装着されたフィルター下面に付着するので、その細胞の数を染色液あるいは蛍光抗体等を用いた方法で測定すればよい。また、顕微鏡下での肉眼による判定や計測器を用いた自動測定も可能である。

0071

11.投与方法および製剤
本発明の抗IL-8抗体等のIL-8結合阻害物質を有効成分として含有する予防または治療剤は、経口あるいは非経口的に全身あるいは局部的に投与することができる。例えば、抗IL-8抗体等の蛋白性のIL-8結合阻害物質は、点滴等の静脈内注射筋肉内注射腹腔内注射皮下注射髄腔内注射等により全身あるいは局部的に投与することができる。また、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。

0072

抗IL-8抗体等のIL-8結合阻害物質は、病気に既に悩まされる患者に、病気およびその合併症の症状を治癒するか、あるいは少なくとも部分的に阻止するために十分な量で投与される。例えば、有効投与量は、一回につき体重1kg あたり0.01mgから1000mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり5-2000mg/body の投与量を選ぶことができる。しかしながら、本発明の抗IL-8抗体等のIL-8結合阻害物質を含有する予防または治療剤はこれらの投与量に制限されるものではない。また、投与時期としては、脳卒中、脳浮腫または脳虚血再灌流障害が生じてから投与してもよいし、あるいは、一時的に脳血流が遮断された後の再灌流時や血栓溶解剤などの再灌流療法で再灌流が予測される時、あるいは血管透過性亢進予想される時に投与してもよい。

0073

本発明の抗IL-8抗体等のIL-8結合阻害物質を有効成分として含有する予防または治療剤は、常法にしたがって製剤化することができ(Remington's Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton, 米国)、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。このような担体および医薬添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤コラーゲンポリビニルアルコールポリビニルピロリドンカルボキシビニルポリマーカルボキシメチルセルロースナトリウムポリアクリル酸ナトリウムアルギン酸ナトリウム水溶性デキストランカルボキシメチルスターチナトリウムペクチンメチルセルロースエチルセルロースキサンタンガムアラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリングリセリンプロピレングリコールワセリンパラフィンステアリルアルコールステアリン酸ヒト血清アルブミンHSA)、マンニトールソルビトールラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。

0074

実際の添加物は、本発明の予防または治療剤の剤形に応じて上記の中から適宜あるいは組み合わせて選ばれるが、もちろんこれらに限定するものではない。例えば、抗IL-8抗体を注射用剤として使用する場合、精製された抗IL-8抗体を溶剤、例えば、生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液等に溶解し、それに、吸着防止剤、例えば、Tween 80、Tween 20、ゼラチン、ヒト血清アルブミン等を加えたものを使用することができる。または、使用前に溶解再構成するために凍結乾燥したものであってもよく、凍結乾燥のための賦形剤としては、例えば、マンニトール、ブドウ糖等の糖アルコールや糖類を使用することができる。

0075

12. 予防または治療効果の確認
脳梗塞、脳浮腫あるいは脳虚血再灌流障害に対する予防または治療効果の確認には、局所脳虚血モデルあるいは全脳虚血モデルが用いられる(佐野圭司 監修、「脳卒中実ハンドブック」、アイピーシー、43-51 、1990)。再灌流障害に対する効果を検討する場合にはそれぞれのモデルにおいて、一定時間の脳血流の遮断後に血行再開を行う一過性閉塞を行えばよい。一方、再灌流が必要ない場合は脳血流を遮断したまま維持する永久閉塞を行えばよい。

0076

用いられる動物としては、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、スナネズミ等が一般的であるが、抗IL-8抗体等の本発明のIL-8結合阻害物質の予防または治療効果の確認の目的には、IL-8の発現が確認されている動物であれば種を問わない。例えば、ウサギ、モルモット、ブタ、イヌ、ヒツジ、サルなどが挙げられる。

0077

局所脳虚血モデルの作成法は、脳流入血管を外部より圧迫閉塞する方法と、塞栓を注入する方法に大別される。具体的には、中大脳動脈、前大脳動脈、後交通脳動脈、内頚動脈外頚動脈椎骨動脈などの脳に血流を送っている頭蓋内の動脈あるいは頚動脈の一本あるいは全脳虚血にならない範囲内で複数本を、外科的に標的動脈焼灼する焼灼法、動脈クリップで標的動脈を閉塞する方法、糸で標的動脈を結紮する方法、あるいは光感受性色素静脈内投与して標的動脈にレーザー光照射して血栓を作製する方法などが挙げられる。あるいは血液凝固因子凝血塊、空気を投与して閉塞する。

0078

全脳虚血モデルの作成法は、内頚動脈、外頚動脈、椎骨動脈などの動脈を比較的心臓に近い部位で左右同時に閉塞すればよい。動脈の閉塞方法としては、標的動脈を焼灼する焼灼法、動脈クリップで標的動脈をクリップする方法、塞栓子を標的動脈内に留置する栓子法などが挙げられる。これらの中から任意な方法を選択し、虚血前、虚血直後、一定時間の虚血後、あるいは再灌流直前、再灌流直後、一定時間の再灌流後のいずれか任意のタイミングで抗IL-8抗体等のIL-8結合阻害物質を投与し、一定時間の虚血後あるいは一定時間の再灌流後に脳循環脳代謝神経機能等を測定し、さらに、動物を犠牲死させた後に神経病理、梗塞巣、浮腫、血管透過性亢進などについて評価する。

0079

脳循環の測定方法としては、例えば、水素クリアランス法、熱電対法、レーザードップラー法などが挙げられる(佐野圭司 監修、「脳卒中実験ハンドブック」、アイピーシー、193-240 、1990)。梗塞巣の定量方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。脳を摘出した後、一定の厚さでスライスする。スライスした脳組織を、2, 3, 5-トリフェニルテトラゾリウムクロライドTTC)あるいはニッスル染色などで障害を受けた領域を染色によって見分け定量化するか、薄片を作製してヘマトキシリンエオジン染色によって病理組織学的に見分け定量化すればよい(佐野圭司 監修、「脳卒中実験ハンドブック」、アイピーシー、587-623 、1990)。

0080

浮腫の定量方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。脳を摘出した後、一定量の組織密度勾配によって比重を測定する方法、脳組織の湿潤重量と乾燥重量の比で水分含量を測定する方法、あるいは核磁気共鳴法で観察する方法などが挙げられる(佐野圭司 監修、「脳卒中実験ハンドブック」、アイピーシー、630-635 、1990)。血管透過性亢進の定量方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。実験に用いた動物を犠牲死させる30分前に、一定濃度のエバンスブルー溶液を静脈内投与し、脳を摘出した後、一定の厚さでスライスする。スライスした脳組織のエバンスブルーによって青色に染色された領域を定量化する(佐野圭司 監修、「脳卒中実験ハンドブック」、アイピーシー、693-705 、1990)。なお、血管透過性亢進は脳浮腫を誘導するので、血管透過性亢進を指標に脳浮腫を測定する事も可能である。

0081

くも膜下出血モデルとしては、IL-8の発現が確認されている動物のくも膜下腔に血液あるいは血管攣縮を誘導する物質を注入する方法、あるいは開頭後に設置する方法、または、機械的に脳血管を針で刺したり、あるいは切断するなどの方法により出血させる方法がある(佐野圭司 監修、「脳卒中実験ハンドブック」、アイピーシー、124-125 、1990)。脳出血モデルとしては、脳内血液注入モデル、あるいは脳内マイクロバルーン膨張モデルなどがある(佐野圭司 監修、「脳卒中実験ハンドブック」、アイピーシー、134-138 、1990)。

0082

以下、参考例および実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
参考例1. ヒトIL-8に対するモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの作製
ヒトIL-8を常法によりBALB/cマウスに免疫し、免疫が成立したマウスより脾細胞を採取した。ポリエチレングリコールを使用する常法によりこの脾細胞をマウス骨髄腫細胞P3X63Ag8.653と融合させ、ヒトIL-8に対するマウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製した。ヒトIL-8に対する結合活性を指標としてスクリーニングを行った結果、ハイブリドーマ細胞株WS-4を得た。また、ハイブリドーマWS-4が産生する抗体は、ヒトIL-8の好中球への結合を阻害し中和活性を有していた。(Ko, Y. et al., J. Immunol. Methods(1992) 149, 227-235 )。

0083

ハイブリドーマWS-4が産生する抗体のH 鎖およびL 鎖のアイソタイプを、マウスモノクローナル抗体アイソタイピングキットを用いて調べた。その結果、ハイブリドーマWS-4が産生する抗体は、マウスκ型L 鎖およびマウスγ1型H 鎖を有することが明らかになった。なお、ハイブリドーマ細胞株WS-4は、Mouse hybridoma WS-4として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成8 年4月17日に、FERM BP-5507としてブダペスト条約に基づき国際寄託された。

0084

参考例2. ヒトIL-8に対するヒト型化抗体の作製
ヒト型化WS-4抗体を国際特許出願公開番号WO 96-02576 に記載の方法により作製した。参考例1で作製されたハイブリドーマWS-4から、常法により全RNA を調製し、これより一本鎖cDNAを合成した。PCR法により、マウスWS-4抗体のH 鎖ならびにL 鎖のV 領域をコードするDNA を増幅した。PCR 法に使用したプライマーは、Jones, S. T. and Bendig, M. M., Bio/Technology (1991) 9, 88-89に記載されているプライマーを用いた。PCR 法で増幅したDNA 断片を精製し、マウスWS-4抗体L 鎖V 領域をコードする遺伝子を含むDNA 断片およびマウスWS-4抗体H 鎖V 領域をコードする遺伝子を含むDNA 断片を単離した。これらのDNA 断片を各々プラスミドpUC 系クローニングベクターに連結し、大腸菌コンピテント細胞に導入して大腸菌形質転換体を得た。

0085

この形質転換体を常法により培養し、得られた菌体から上記DNA 断片を含むプラスミドを精製した。プラスミド中のV 領域をコードするDNA の塩基配列を常法に従って決定し、そのアミノ酸配列から各々のV 領域のCDRを特定した。キメラWS-4抗体を発現するベクターを作製するため、マウスWS-4抗体のL 鎖およびH 鎖のV 領域をコードするcDNAを、予めヒトC 領域をコードするDNA を連結してあるHEF ベクターにそれぞれ別に挿入した。ヒト型化WS-4抗体を作製するために、CDR移植法による遺伝子工学的手法を用いてマウスWS-4抗体のV 領域CDR をヒト抗体へ移植した。適切な抗原結合部位を形成させるため、CDR を移植した抗体のV 領域のFRのアミノ酸を一部置換する為のDNA 配列の置換をおこなった。

0086

このようにして作製したヒト型化WS-4抗体のL 鎖およびH 鎖のV 領域を、抗体として哺乳類細胞で発現させるために、各々をコードするDNA をHEFベクターに別々に挿入し、ヒト型化WS-4抗体のL 鎖またはH 鎖を発現するベクターを作製した。これら二つの発現ベクターをCOS細胞に同時に挿入することにより、ヒト型化WS-4抗体を産生する細胞株を樹立した。この細胞株を培養して得られたヒト型化WS-4抗体のIL-8への結合能およびIL-8中和能を、各々ELISAおよびIL-8/好中球結合阻害試験にて調べた。その結果、ヒト型化WS-4抗体は、マウスWS-4抗体と同程度に、ヒトIL-8に結合してIL-8の好中球への結合を阻害することが判明した。

0087

なお、ヒト型化WS-4抗体のL 鎖およびH 鎖を含むプラスミドを有する大腸菌は、各々Escherichia coli DH5α(HEF-RVLa-gκ)およびEscherichia coli JM109(HEF-RVHg-gγ1 )として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成6 年7 月12日に、各々FERM BP-4738およびFERM BP-4741としてブダペスト条約に基づき国際寄託された。

0088

実施例1.体重2.7 〜3.0kg のニュージーランド白色種雌性ウサギ(三共ラボサービス)に硫酸アトロピン(田辺製薬)0.5mg を筋肉内注射し、イソフルランアボット)3%混合気にてマスク麻酔した。耳介静脈サーフロー留置針24G(テルモ)を固定して乳酸リンゲル液(大塚製薬)を適量流入する事により点滴路を確保した。手術台仰臥位で固定して前頚部および右大腿部を剃毛したのち、前頚部縦切開にて気管露出気管切開により気管内挿管チューブ挿入固定し、人工呼吸器シナ製作所)に接続した。

0089

人工呼吸器が接続されると同時に臭化パンクロニウムオルガノテクニカ)2mg を静脈内投与し、イソフルラン濃度1.5%、酸素濃度30% 、1回換気量15〜20ml/kg 、換気回数毎分20〜25回にて、動脈血二酸化炭素分圧が32〜40mmHgとなるよう調節した。次に、右大腿部を切開後大腿動脈を剥離、サーフロー留置針24G(テルモ)を留置して血圧モニター(日本光電)に接続し血圧を実験終了まで連続的に測定した。その後、ウサギを伏臥位として頭部を定位フレームに固定した。補液は乳酸リンゲル液(大塚製薬)に濃度0.16mg/ml で臭化パンクロニウムを添加し5ml/kg/hr でシリンジポンプにて確保した耳介静脈より連続静注した。

0090

麻酔下のウサギ右眼球の前後の頭皮を切開、剥離し、眼球および眼窩内容物を止血を施しながら摘出した。視神経管ドリルにて拡大して硬膜開放し、内頚動脈、中大脳動脈(MCA )、前大脳動脈を露出させ剥離した。手術用顕微鏡下で内頚動脈、中大脳動脈起始部、前大脳動脈起始部をZEN 式クリップを用いて閉塞し、中大脳動脈閉塞モデルとした。側副血行路からの流入を防ぐ目的で、虚血中はイソフルランの濃度を3%前後に調節して平均血圧を50〜60mmHgに維持した。クリップによる閉塞にて常温2.5 時間にわたる右脳局所虚血を開始した。2.5 時間の虚血後、イソフルランの濃度を1%前後に戻して正常血圧回復させ、クリップを解除し再灌流をおこなった。対照としてクリップにて脳虚血のみを行い再灌流を行わなかった永久閉塞群を設置した。各実験の終了時点で2M塩化カリウム溶液2ml を急速静注してウサギを犠牲死させ、以下の点について評価した。

0091

1)脳組織中のIL-8濃度
脳を摘出し、右中大脳動脈支配領域の脳組織を150mg採取し、300 μl のPBS中で十分ホモジナイズした。その後、マイクロ遠心機で10,000回転、5分間遠心し、上清を回収してIL-8濃度測定まで-80 ℃にて保存した。IL-8濃度測定は以下の方法でELISAにより行った。まず、マウス抗IL-8抗体WS-4を50mM炭酸水素ナトリウム緩衝溶液(pH9.6 )にて0.5 μg/mlの濃度に希釈し、96ウェルマイクロタイタープレート(Nunc)の各ウェルに100 μl ずつ添加し4 ℃にて一晩インキュベートして固相化した。

0092

0.05%Tween 20 添加PBS(Tween-PBS)にて3度洗浄した後、1%仔牛血清アルブミンBSA )添加PBS150μl を各ウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした。Tween-PBS にて3 度洗浄した後、0.5%BSA 添加Tween-PBS にて希釈されたサンプルを100 μl ずつ加えた。またIL-8濃度の標準曲線用に、組換え型ウサギIL-8を13.7〜10,000pg/ml の濃度に0.5%BSA 添加Tween-PBS で希釈し、100 μlずつ別のウェルに播種した。その後、プレートを4 ℃で一晩インキュベートした。Tween-PBS にて5 度洗浄した後、一次抗体としてモルモット抗ウサギIL-8抗体を3%PEG 6000添加Tween-PBS で1 μg/mlに希釈し、100 μl ずつ各ウェルに加え37℃で2 時間インキュベートした。

0093

Tween-PBSにて5度洗浄した後、二次抗体としてアルカリフォスファターゼ標識抗モルモットIgG抗体(BioMakor)を0.5%BSA 添加Tween-PBS で5000倍に希釈し、100 μl を各ウェルに加え37℃で2 時間インキュベートした。Tween-PBS にて5 度洗浄した後、p-ニトロフェニルリン酸二ナトリウムを1Mジエタノールアミン(pH 9.8)で1 mg/ml の濃度に溶解し、100 μl ずつ各ウェルに加え室温で30分間インキュベートした。反応を止めるために1N水酸化ナトリウム溶液を100μl ずつ各ウェルに加え、マイクロプレートリーダー(東ソー)にて405nm における吸光度を測定し、標準曲線をもとにサンプル中のIL-8濃度を算出した。なお、100mg組織/100 μl PBSのIL-8濃度に換算した(図1)。

0094

2.5 時間虚血、2.5 時間虚血3 時間再灌流、2.5 時間虚血6 時間再灌流の各群のIL-8濃度はそれぞれ75.0±41.4pg/ml ,69.2±41.0pg/ml ,461.5 ±77.1pg/ml であり、5.5 時間虚血、8.5 時間虚血の各群においてはそれぞれ103.5 ±44.4pg/ml 、143.8 ±20.0pg/ml であった(数値は平均±標準誤差を示す)。2.5 時間虚血6 時間再灌流群では2.5 時間虚血3 時間再灌流群、8.5 時間虚血群に比べて有意に高値のIL-8が検出された(p<0.05)。このことから、虚血脳においてIL-8が産生され、再灌流3 時間以後に著明に上昇することが判明した。

0095

2)脳梗塞時の血液脳関門の破綻に対するWS-4抗体の効果
脳梗塞時の血液脳関門の破綻に対するWS-4抗体の効果を検討する目的で、2.5時間虚血6 時間再灌流実験において、クリップを解除して再灌流を開始した直後にWS-4抗体を投与する群を設置した。10mgのWS-4抗体を3ml の生理食塩水で希釈し、耳介静脈より注入した後、6 時間の再灌流をおこなった。陰性対照群としてマウス抗体(P3.6.2.8.1)10mgを同様に静注した。エバンスブルー(ナカライテスク)を乳酸リンゲル液で溶解して3%の濃度とし、6 時間の再灌流後に5ml を耳介静脈から注入、その30分後に脳を摘出した。脳をウサギ脳スライサー(ASI )を用いて2mm のスライスとし、視神経交叉から前5mm 後5mm を含む6 スライスを写真撮影した。右脳の面積とエバンスブルーで青染した領域の面積を測定し、6スライス中の右脳における体積の割合を算出した(図2)。

0096

正常脳においては血液脳関門が機能してエバンスブルーが血管を透過する事はなく、従って、エバンスブルーが脳実質を染色することはない。しかしながら、2.5 時間虚血6 時間再灌流実験において、コントロール抗体(P3.6.2.8.1) を再灌流開始直後に静注した群(N=9 )では脳の視神経交叉から前5mm 後5mm までの体積に占めるエバンスブルーに染色した体積の割合は17.6±3.2%であり、血液脳関門が破綻し、血管透過性が亢進していることを示した。一方、WS-4抗体投与群(N=9 )のエバンスブルーに染色した体積の割合は7.8 ±1.2%と著明に低下した。この結果をマンホイットニのU検定統計解析した結果、統計学的に有意差が認められた(p<0.05)。したがって、虚血再灌流における血液脳関門の破綻および血管透過性の亢進はWS-4抗体の静脈内投与により抑制された。この事は、WS-4抗体の静脈内投与により脳浮腫を抑制したと解釈できる。

0097

3)脳梗塞巣の形成に対するWS-4抗体の効果
脳梗塞時の梗塞巣形成に対するWS-4抗体の効果を検討する目的で、2.5 時間虚血12時間再灌流実験を試みた。梗塞巣形成に対する効果をより明確にする目的で、梗塞巣形成の増大を期待して、再灌流時間を前記の6 時間から12時間に延長した。

0098

尚、中大脳動脈の支配領域の血流量脳表面で測定するため、泉門点より1cm右の位置にドリルにて直径約7mm の円状に窓を開け、硬膜を露出させた。非接触型レーザードップラー血流計FLO-N1、オメガフロー)のプローブ(ST-N、オメガフロー)を定位用フレームに固定し、窓に照射して脳血流量を実験終了まで連続測定した。正常時の脳血流量に比較して、クリップで閉塞した後の血流量が70% 以下に低下し、クリップを解除した後の血流量の回復幅が正常値の30% 以上変化した個体を虚血再灌流群として採用した。結果的に採用されたのは、WS-4抗体投与群およびコントロール抗体投与群ともN=7 であった。

0099

クリップを解除して再灌流を開始した直後に10mgのWS-4抗体を耳介静脈より投与し、12時間の再灌流をおこなった。陰性コントロール群としてマウス抗体(P3.6.2.8.1)10mgを同様に静注した。12時間の再灌流後、脳を摘出し、ウサギ脳スライサー(ASI )を用いて2mm のスライスとし、視神経交叉から前5mm 後5mm を含む6 スライスを濃度2%のTTC(和光純薬工業)を添加した生理食塩水(大塚製薬)に浸し、37℃で30分間インキュベートした。この方法により、正常組織は赤色に染色され梗塞巣は染色されず、梗塞巣の定量化が可能になる。それぞれのスライスを写真撮影し、右脳の面積とTTC で染色されなかった領域の面積を測定し、視神経交叉から前5mm 後5mm を含む6 スライスにおける右脳に占めるTTC に染色した梗塞巣の体積の割合を算出した(図3)。

0100

その結果、コントロール抗体(P3.6.2.8.1)投与群の視神経交叉から前5mm 後5mm までの梗塞巣の体積は40.1±10.7% であった。一方、WS-4抗体投与群の梗塞巣の体積は14.9±7.5%と著明に低下した。この結果をマン・ホイットニのU検定で統計解析した結果、統計学的に有意差が認められた(p<0.05)。したがって、脳虚血再灌流における梗塞巣の形成・進展はWS-4抗体の静脈内投与により抑制された。これらの結果から、抗IL-8抗体は脳梗塞時の血液脳関門の破綻ならびに脳梗塞巣の形成・進展を抑制する作用を有した。また、永久梗塞群ならびに再灌流群において、IL-8産生が時間経過とともに上昇することから、抗IL-8抗体は有効投与時間帯がこれまでの薬剤より長期的であることが期待できる、脳梗塞の予防または治療剤であることが示された。

発明の効果

0101

抗IL-8抗体等のIL-8結合阻害物質の投与により、脳虚血時の血管透過性亢進による血液脳関門の破綻、ならびに梗塞巣の形成が抑制された。この事実は、抗IL-8抗体等のIL-8結合阻害物質が脳卒中、脳浮腫または脳虚血再灌流障害、脳血管透過性亢進の予防または治療剤として有用であることを示す。

図面の簡単な説明

0102

図1図1は、中大脳動脈永久閉塞モデルと中大脳動脈虚血再灌流モデルにおける脳組織中のIL-8産生量を経時的に測定したグラフである。
図2図2は、中大脳動脈 2.5時間虚血6時間再灌流モデルにおける血液脳関門の破綻に対するWS-4抗体の抑制効果を、血管透過性亢進を指標に陰性対照のP3.6.2.8.1抗体と比較したグラフである。
図3図3は、中大脳動脈 2.5時間虚血12時間再灌流モデルにおける梗塞巣の体積に対するWS-4抗体の抑制効果を、陰性対照のP3.6.2.8.1抗体と比較したグラフである。

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