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図面 (9)

課題

新規脳機能改善剤を提供するものであり、特に、脳機能改善作用が、脳浮腫抑制作用脳機能保護作用、脳エネルギー代謝改善作用または脳梗塞巣縮小作用としての改善作用である脳機能改善剤を提供する。

解決手段

式(I)

化1

[式中、R1 が水酸基を示す場合にはR2 は水素原子を示し、または、R1 およびR2 が合してオキソ基を示す。R3 は、水素原子、アルカリ金属または1〜3価アルコール残基を示す。R1 が水酸基を、R2 、R3 が水素原子を示す場合には2〜10量体であってもよい。]で表される化合物を有効成分として含有する脳機能改善剤。

概要

背景

近年、脳血管疾患交通事故等による頭部外傷患者が増加してきており、この場合には脳浮腫や、脳エネルギー代謝障害を伴うことが多い。このような原因としては、脂肪を多く摂取するように変化してきた食生活や、老齢人口の増加により脳血管障害等が増加していることが考えられている。

ところでこの脳機能障害のひとつである脳浮腫は、種々の病因により脳実質の水分含量が増加し、これにより脳容積の増加が惹起された状態をいい、脳浮腫は一時的に神経細胞の代謝、機能障害を起こすだけでなく、頭蓋内圧亢進させ、脳循環障害代謝障害を引き起こす。これらの変化は脳浮腫をさらに増悪させ、脳ヘルニアに進行し致命的な結果をもたらす場合もある。このような脳浮腫は、その発生の原因により、以下の血管原性浮腫細胞原性浮腫の2種に大きく分類される。

血管原性浮腫:脳毛細血管血液脳関門破綻することにより、血管から血液成分が脳組織内に漏出して細胞間隙貯留することにより発生する。脳挫傷脳腫瘍、脳腫、脳出血頭蓋内血腫等を原因とする。
細胞障害性浮腫:脳実質のエネルギー代謝が障害され、乳酸蓄積し細胞が障害を受けることにより発生する。脳虚血低酸素血症乳酸アシドーシス等を原因とする。

このような病態に対して行われている脳浮腫の治療法薬剤としては以下のようなものがあげられる。
高張溶液:高張溶液の投与により血液浸透圧を上昇させ、脳組織内の水分を血管内に引き込むことを利用して脳浮腫を軽減する。しかしこの方法では、血液中薬剤濃度が低下すると血液浸透圧も低下するため、逆に組織内に水が引き込まれるリバウンド現象が認められる。

副腎皮質ステロイド:血液脳関門の維持・膜の安定・抗炎症作用髄液産生抑制作用により脳腫瘍や脳膿瘍による血管原性浮腫の治療に用いられる。しかしながら、虚血性神経細胞障害を悪化させたとする報告がある。

抗酸化剤虚血時や細胞障害時に発生するフリーラジカル消去することにより脳浮腫を軽減する。

カルシウム拮抗剤:浮腫が起きると脳組織内にカルシウムが流入して遅発性神経細胞死が起きるため、これを阻害する目的で投与する。しかしながら、カルシウム拮抗剤には血管拡張作用があるため、脳血流量を増加しかえって脳浮腫を増悪する場合もある。

バルビタール療法:脳の代謝を抑制し、脳の酸素およびブドウ糖消費を低下させ、虚血に対する抵抗性を高め、乳酸蓄積とアシドーシス進展を抑制し、脳を保護する。しかしながら、バルビタールが効力を示す用量では、呼吸抑制および循環毒性が現れるため、呼吸管理、循環管理が必要である。

概要

新規脳機能改善剤を提供するものであり、特に、脳機能改善作用が、脳浮腫抑制作用脳機能保護作用、脳エネルギー代謝改善作用または脳梗塞巣縮小作用としての改善作用である脳機能改善剤を提供する。

式(I)

[式中、R1 が水酸基を示す場合にはR2 は水素原子を示し、または、R1 およびR2 が合してオキソ基を示す。R3 は、水素原子、アルカリ金属または1〜3価アルコール残基を示す。R1 が水酸基を、R2 、R3 が水素原子を示す場合には2〜10量体であってもよい。]で表される化合物を有効成分として含有する脳機能改善剤。

目的

したがって、脳浮腫の抑制・治療に用いる優れた薬剤、特にリバウンド等の副作用がない薬剤の開発が求められているのが現状である。本発明者らは、これらの問題点を解決すべく鋭意検討した結果、β−ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはそのエステル誘導体について脳機能改善作用を検討したところ、これら化合物が脳浮腫に対して、脳中電解質および脳エネルギー代謝を改善することにより脳浮腫抑制作用を示すこと、さらには脳エネルギー代謝改善により脳内ミトコンドリアの保護が行われ、脳虚血により引き起こされた脳梗塞巣の縮小作用があることを確認した。したがって、本発明は、脳機能改善剤を提供するものであり、特に、脳機能改善作用が、脳浮腫抑制作用、脳機能保護作用、脳エネルギー代謝改善作用または脳梗塞巣縮小作用としての改善作用である脳機能改善剤を提供することを課題とする。

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
1件

この技術が所属する分野

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請求項1

式(I)

請求項

ID=000003HE=020 WI=055 LX=0325 LY=0450[式中、R1 が水酸基を示す場合にはR2 は水素原子を示し、または、R1 およびR2 が合してオキソ基を示す。R3 は、水素原子、アルカリ金属または1〜3価アルコール残基を示す。R1 が水酸基を、R2 、R3 が水素原子を示す場合には2〜10量体であってもよい。]で表される化合物を有効成分として含有する脳機能改善剤

請求項2

式(I)の化合物がβ−ヒドロキシ酪酸、β−ヒドロキシ酪酸ナトリウムおよびβ−ヒドロキシ酪酸エステルから選ばれる1種または2種以上である請求項1記載の脳機能改善剤。

請求項3

請求項1記載の式(I)の化合物を有効成分として含有する脳浮腫抑制剤

請求項4

請求項1記載の式(I)の化合物を有効成分として含有する脳機能保護剤

請求項5

請求項1記載の式(I)の化合物を有効成分として含有する脳エネルギー代謝改善剤

請求項6

請求項1記載の式(I)の化合物を有効成分として含有する脳梗塞巣縮小剤。

技術分野

0001

本発明は、脳機能改善剤係り、詳細には、脳浮腫抑制作用脳機能保護作用、脳エネルギー代謝改善作用または脳梗塞巣縮小作用等を示す脳機能改善剤に関する。

背景技術

0002

近年、脳血管疾患交通事故等による頭部外傷患者が増加してきており、この場合には脳浮腫や、脳エネルギー代謝障害を伴うことが多い。このような原因としては、脂肪を多く摂取するように変化してきた食生活や、老齢人口の増加により脳血管障害等が増加していることが考えられている。

0003

ところでこの脳機能障害のひとつである脳浮腫は、種々の病因により脳実質の水分含量が増加し、これにより脳容積の増加が惹起された状態をいい、脳浮腫は一時的に神経細胞の代謝、機能障害を起こすだけでなく、頭蓋内圧亢進させ、脳循環障害代謝障害を引き起こす。これらの変化は脳浮腫をさらに増悪させ、脳ヘルニアに進行し致命的な結果をもたらす場合もある。このような脳浮腫は、その発生の原因により、以下の血管原性浮腫細胞原性浮腫の2種に大きく分類される。

0004

血管原性浮腫:脳毛細血管血液脳関門破綻することにより、血管から血液成分が脳組織内に漏出して細胞間隙貯留することにより発生する。脳挫傷脳腫瘍、脳腫、脳出血頭蓋内血腫等を原因とする。
細胞障害性浮腫:脳実質のエネルギー代謝が障害され、乳酸蓄積し細胞が障害を受けることにより発生する。脳虚血低酸素血症乳酸アシドーシス等を原因とする。

0005

このような病態に対して行われている脳浮腫の治療法薬剤としては以下のようなものがあげられる。
高張溶液:高張溶液の投与により血液浸透圧を上昇させ、脳組織内の水分を血管内に引き込むことを利用して脳浮腫を軽減する。しかしこの方法では、血液中薬剤濃度が低下すると血液浸透圧も低下するため、逆に組織内に水が引き込まれるリバウンド現象が認められる。

0006

副腎皮質ステロイド:血液脳関門の維持・膜の安定・抗炎症作用髄液産生抑制作用により脳腫瘍や脳膿瘍による血管原性浮腫の治療に用いられる。しかしながら、虚血性神経細胞障害を悪化させたとする報告がある。

0007

抗酸化剤虚血時や細胞障害時に発生するフリーラジカル消去することにより脳浮腫を軽減する。

0008

カルシウム拮抗剤:浮腫が起きると脳組織内にカルシウムが流入して遅発性神経細胞死が起きるため、これを阻害する目的で投与する。しかしながら、カルシウム拮抗剤には血管拡張作用があるため、脳血流量を増加しかえって脳浮腫を増悪する場合もある。

0009

バルビタール療法:脳の代謝を抑制し、脳の酸素およびブドウ糖消費を低下させ、虚血に対する抵抗性を高め、乳酸蓄積とアシドーシス進展を抑制し、脳を保護する。しかしながら、バルビタールが効力を示す用量では、呼吸抑制および循環毒性が現れるため、呼吸管理、循環管理が必要である。

発明が解決しようとする課題

0010

したがって、脳浮腫の抑制・治療に用いる優れた薬剤、特にリバウンド等の副作用がない薬剤の開発が求められているのが現状である。本発明者らは、これらの問題点を解決すべく鋭意検討した結果、β−ヒドロキシ酪酸またはその塩もしくはそのエステル誘導体について脳機能改善作用を検討したところ、これら化合物が脳浮腫に対して、脳中電解質および脳エネルギー代謝を改善することにより脳浮腫抑制作用を示すこと、さらには脳エネルギー代謝改善により脳内ミトコンドリアの保護が行われ、脳虚血により引き起こされた脳梗塞巣の縮小作用があることを確認した。したがって、本発明は、脳機能改善剤を提供するものであり、特に、脳機能改善作用が、脳浮腫抑制作用、脳機能保護作用、脳エネルギー代謝改善作用または脳梗塞巣縮小作用としての改善作用である脳機能改善剤を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0011

しかして本発明は、式(I)

0012

0013

[式中、R1 が水酸基を示す場合にはR2 は水素原子を示し、または、R1 およびR2 が合してオキソ基を示す。R3 は、水素原子、アルカリ金属または1〜3価アルコール残基を示す。R1 が水酸基を、R2 、R3 が水素原子を示す場合には2〜10量体であってもよい。]で表される化合物を有効成分として含有する脳機能改善剤を提供する。

0014

すなわち、本発明は式(I)で表される化合物[以下、化合物(1)と称する場合もある]を含有することを特徴とする脳機能改善剤を提供するものであり、特に、β−ヒドロキシ酪酸、β−ヒドロキシ酪酸ナトリウムおよび/またはβ−ヒドロキシ酪酸エステルを用いることを特徴とする脳機能改善剤を提供するものである。

0015

その態様において、本発明は、上記式(I)で表される化合物(1)の脳機能改善作用が、脳浮腫抑制作用、脳機能保護作用、脳エネルギー代謝改善作用、脳梗塞巣縮小作用等の改善作用を示す脳機能改善剤を提供する。したがって、本発明はその具体的態様においては、上記式(I)で表される化合物(1)を有効成分として含有する脳浮腫抑制剤、脳機能保護剤、脳エネルギー代謝改善剤さらには脳梗塞巣縮小剤を提供するものでもある。

0016

式(I)で表される化合物(1)の代表的化合物たるβ−ヒドロキシ酪酸(以下、BHBと略記する場合もある)はケトン体アセトンアセト酢酸、β−ヒドロキシ酪酸)の一つであって、脂肪酸の分解により肝臓で生成される化合物である。β−ヒドロキシ酪酸は糖尿病患者の尿中から発見されたこと、飢餓時に血中の値が高くなることから代謝の最終産物であり、生体にとって不必要な物と考えられていた。しかし、オウエン(Owen)らの肥満症患者による5〜6週間絶食時の代謝の研究[J. Clin. Invest. 46(10), 1589-1595(1967)]により、β−ヒドロキシ酪酸がブドウ糖にかわって、脳でエネルギーとして利用されていることが明らかとなった。

0017

β−ヒドロキシ酪酸は水溶性でありその分子量は104と小さく、β−ヒドロキシ酪酸1gあたり3.8kcalのエネルギーを持つが、正常時においてはその血中濃度は0−3mg/dlと低い値を示し、利用されることもなく尿中、呼気中排泄される。絶食時、飢餓時には血中濃度が20−30mg/dl以上に上昇し、利用が始まる。これにより、β−ヒドロキシ酪酸が絶食時、飢餓時においてはブドウ糖にかわりうるエネルギー物質となることができる。生成されたβ−ヒドロキシ酪酸は肝臓を除く心臓腎臓、脳、筋肉で代謝、利用される。

0018

特開昭58−201746号では、「3−ヒドキロシ酪酸から誘導された塩及び該塩を含有する薬剤組成物」を用いて、心筋代謝保護作用のあることを報告している。また、井らは[日本救急医学雑誌4(5), 484 (1993)]は、頭部外傷時にβ−ヒドロキシ酪酸を静脈内投与することにより、髄液中ケトン体濃度の上昇と乳酸濃度の減少を報告している。しかしながら、式(I)で表される化合物(1)に脳エネルギー代謝障害時にエネルギー代謝改善効果があり、脳浮腫抑制作用、脳機能保護作用または脳梗塞巣縮小作用等の脳機能改善作用があることは知られていない。

0019

本発明者らは、β−ヒドロキシ酪酸ナトリウムを静脈内に投与した後致死量シアン化カリウム(KCN)を静脈内投与する時、延命作用があることを見いだした。シアン化カリウムは細胞内ミトコンドリアのチトクロームオキシダーゼを阻害し、電子伝達系酸素利用を抑制し、ATPの産生を停止させるために細胞毒性発現すると考えられている。この作用を阻害するには、脳内へのグルコース取り込み促進、ミトコンドリアのコハク酸酸化促進、脳血流量増加等の作用が必要であるという報告がある。本発明者らは、β−ヒドロキシ酪酸を静脈から持続的に注入することにより、延命作用を認めたが、これは、β−ヒドロキシ酪酸の血中濃度が高まり、脳ATPの産生能が高まり、その結果、脳内にATPが蓄積されると考えられる。すなわち、β−ヒドロキシ酪酸の持続投与の後、致死量のシアン化カリウムを投与してアノシアを誘導しても脳内ミトコンドリアの抵抗性が増加しているため、延命効果が認められていると考えられる。

0020

更に本発明者らの検討によれば、動物モデルの両側総頸動脈結紮して脳虚血を誘発させ、脳浮腫を惹起する段階でβ−ヒドロキシ酪酸を静脈より投与することにより、脳浮腫の発生を抑制することができることを見出した。このときの脳内のATP濃度を測定すると、高レベルに保持されていることから、β−ヒドロキシ酪酸が代謝され、TCAサイクルに組み込まれることによりATPの産生の増加あるいは消費の抑制が行われ、これによりNa+ /K+ −ATPase活性保持されることで、細胞内に滞留するナトリウム塩および水が汲み出された結果、脳浮腫が抑制されたものと考えられる。

0021

また本発明者らは、中大脳動脈閉塞による局所脳虚血後、再潅流することにより局所梗塞巣を作製する動物モデルにおいて、閉塞と共にβ−ヒドロキシ酪酸を投与すると、脳梗塞巣の明らかな縮小が確認された。このことは、β−ヒドロキシ酪酸が脳エネルギー代謝を改善し、ミトコンドリアの保護を行ったためである。

発明を実施するための最良の形態

0022

本発明は、式(I)で表される化合物(1)を有効成分として含有することを特徴とする脳機能改善剤を提供するものであるが、式中、アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウムリチウムなどを示し、1〜3価のアルコール残基としては、メチルアルコールエチルアルコールブチルアルコール等のC1 〜C12の1価アルコールエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール等の2価アルコール、グリセリン等の3価アルコール、酒石酸、コハク酸等の酸をあげることができる。

0023

このような化合物(1)としては、アセト酢酸、β−ヒドロキシ酪酸、β−ヒドロキシ酪酸のナトリウム塩、エステルなどを用いることができる。エステルとしては、たとえばメチルエステルエチルエステルグリセリルエステルモノエステルジエステルトリエステル)等であってもよい。また、R1 が水酸基の場合には、2〜10量体等のオリゴマーであってもよい。

0024

本発明の脳機能改善剤は、例えば、頭部外傷、脳腫瘍、脳出血、頭蓋内血腫、脳虚血後期などの血管原性浮腫(Vasogenic edema)や、脳虚血、重傷頭部外傷、低酸素血症などの細胞障害性浮腫(Cytotoxic edema)の患者等に適用することができる。

0025

本発明の脳機能改善剤は、例えば点滴静注される輸液中に一定濃度ずつ加えて投与するのが好ましいほか、経腸輸液や静脈注射することもできる。また、これらの薬剤は、特に水溶液として使用されることが望ましい。

0026

このように輸液に用いる場合の薬液の濃度は、患者の体重にも左右されるが、一般的には5〜500mMの濃度の薬液を投与速度毎時1〜2ml/kgの範囲で投与することが好ましく、10〜300mM、望ましくは20〜100mMの濃度の薬液を投与するのが特に好ましい。これらの薬剤を投与する期間は、患者の状態にも左右されるが、一般的には、1〜7日以内の期間に亘って投与するのが好ましい。

0027

以下の本発明の化合物(1)の脳機能改善作用を実施例にて説明する。
A):脳浮腫抑制作用:
実施例1:β−ヒドロキシ酪酸ナトリウムの投与量と作用の関係:
雄性Wistar系ラット(体重:158.8±1.2g)を用いて、β−ヒドロキシ酪酸ナトリウムを投与して両側総頚動脈結紮・切断時における脳浮腫抑制作用を検討した。用量は3.1,6.3,12.5,25,50,100,200および400mg/kg/hrとし(それぞれ2.5,5.0,10,20,40,80,160および320mMに調製したβ−ヒドロキシ酪酸ナトリウム溶液を、10ml/kg/hrの速度で投与)、5時間の投与を行った。

0028

ラットにエーテル導入麻酔を行い、0.5%イソフルレン・70%笑気・30%酸素の維持麻酔下に頚部正中線に沿って切開し、迷走神経を傷つけないように注意深く結合組織剥離して、両側総頚動脈を露出した。

0029

次に右外頚静脈に輸液投与用カニューレを挿入して、他端を背部導出した。露出した総頚動脈縫合糸で頭側と心臓側の二箇所で結紮し、その間で切断した。切開部を縫合し、直ちに10ml/kg/hrの速度でインフュージョンポンプを用いて静脈内に5時間持続投与した。

0030

動物は投与終了後に断頭し、直ちに全脳摘出し、小脳および延髄を除去し、大脳湿重量を測定した。次に105℃で24時間乾燥し、大脳乾燥重量を求め、脳水分含量を次式に従って求めた。
脳水分含量(%)=(大脳湿重量−大脳乾燥重量)/大脳湿重量×100

0031

β−ヒドロキシ酪酸ナトリウムの用量と脳水分含量の関係は、図1に示すとおりであった。(但し、図中、BHBNaはβ−ヒドロキシ酪酸ナトリウムを表し、BHBMeはβ−ヒドロキシ酪酸メチルエステルを表す。)

0032

偽手術群の脳水分含量は79.56±0.05%であった。両側総頚動脈結紮・生理食塩液投与群では81.89±0.13%と偽手術群に比し有意に高値を示し、明らかな脳浮腫が認められた。

0033

β−ヒドロキシ酪酸ナトリウムの各投与群における脳水分量は、いずれも生理食塩液群に比して低値を示し、6.3mg/kg/hr以上の用量で有意差(p<0.01)が認められ、β−ヒドロキシ酪酸ナトリウムによる脳浮腫の抑制・治療効果が認められた。

0034

実施例2:β−ヒドロキシ酪酸メチルエステルの投与量と作用の関係:
実施例1と同様にして25mg/kg/hrの投与量で5時間投与した。その結果を図1に併せて表示した。

0035

実施例3:以下に掲げる処方量を採り、輸液剤の製造方法により調製を行った。
β−ヒドロキシ酪酸メチルエステル2.42g
塩化ナトリウム2.05g
塩化カリウム1.47g
ブドウ糖50.00g
上記の処方量を約950mlの水に溶解し、水酸化ナトリウムを用いてpHを7.0に調整し、1000mlにメスアップをし、0.45μmメンブランフィルターを用いてろ過を行った後、500ml宛ガラスバイアル瓶充填し、高圧蒸気滅菌を行い、着色、沈殿のない良好な輸液剤が得られた。この輸液剤を用いて実施例1と同様の動物実験を行った結果、脳水分含量はいずれも生理食塩液投与群に比して低値を示し、脳浮腫抑制効果が認められた。

0036

B):脳機能保護作用:
実施例4:
試験材料および方法)
1.使用動物
試験には、6〜9週齢の雄性ウイスター(Wistar)系ラット(日本エスエルシー株式会社)を用いた。これらの動物は温度23±3℃、湿度55±15%、照明時間12時間(7時点灯、19時消灯)の環境下で飼育した。飼料固形飼料MFオリエンタ酵母工業株式会社)、水は水道水自由摂取させた。本試験は1群6〜8匹のラットを用いて行った。

0037

2.被験物質および対照物質
1)被験物質
名称:β−ヒドロキシ酪酸ナトリウム(純度99.8%)
β−ヒドロキシ酪酸は、試験終了後の品質に変化はなかった。また、投与液は調製後1週間は安定であり、所定濃度に調製されていることを確認した。
2)対照物質
(1)製品名:生理食塩液
製造元:株式会社大塚製薬工場
(2)製品名:グレノール注(商品名)
製造元:清水製薬株式会社

0038

3.用量および投与法
β−ヒドロキシ酪酸ナトリウムの用量は50mg/kg/hrおよび100mg/kg/hrとし(80mMおよび160mMに調製した溶液を使用)、グレノールの用量は臨床用量である5ml/kg/hrとした。投与速度は各群とも5ml/kg/hrとし、右外頚静脈に留置したカニューレより1時間投与した。また、β−ヒドロキシ酪酸ナトリウムの投与時間による効果を検討するため、β−ヒドロキシ酪酸ナトリウム100mg/kg/hrを3時間投与(160mMに調製した溶液を使用)した群を設けた。

0039

4.試験方法
ラットはエーテルで導入麻酔後、0.5%イソフルレン・70%笑気・30%酸素の維持麻酔下に手術を行った。投与用カニューレは右外頚静脈に挿入し、他端を背部に導出後、背部筋肉に固定した。このカニューレより被験物質および対照物質を所定量投与し、投与後直ちにシアン化カリウム(KCN:3mg/kg)を投与した。生存時間はシアン化カリウムを投与した直後から呼吸停止までの時間を測定することにより算出した。

0040

5.統計処理
測定値平均値±標準誤差(S.E.)で表わした。群間における有意差検定一元分散分析を行い、有意な場合はダンネット(Dunnett)の多重比較検定により行った。また危険率はp<0.05を有意差ありとした。

0041

(試験結果)図2にβ−ヒドロキシ酪酸ナトリウムの投与量と生存時間の関係を、図3にβ−ヒドロキシ酪酸ナトリウムの投与時間と生存時間の関係を示した。シアン化カリウム誘導アノキシアによる生存時間は、生理食塩液投与群と比較してβ−ヒドロキシ酪酸ナトリウム50および100mg/kg/hrの1時間投与により有意に延長した(44.6±1.6秒vs.58.8±2.4秒,58.8±1.2秒、図2)。しかしながら、グレノール投与群は生存時間が延長する傾向を示したものの、生理食塩液投与群と比較して有意な差は認められなかった。(44.6±1.6秒vs.52.8±2.3秒、図2)。β−ヒドロキシ酪酸ナトリウム100mg/kg/hrの3時間投与は、β−ヒドロキシ酪酸ナトリウム100mg/kg/hrの1時間投与と有意な差はなかった。(58.2±2.2秒,61.0±1.6秒、図3)。

0042

シアン化カリウムは細胞内ミトコンドリアのチトクロームオキシダーゼを阻害し、電子伝達系での酸素利用を抑制してATP産生を停止させるために細胞毒性を発現すると考えられており、脳内へのグルコース取り込み促進作用、ミトコンドリアのコハク酸酸化の促進作用、脳血流増加作用などの作用が抗アノキシア作用の発現に関与すると報告されている。今回の実験で用いた両側総頚動脈結紮(BLCO)6時間による脳水分含量の増加を有意に抑制する用量のβ−ヒドロキシ酪酸は、シアン化カリウム誘導アノキシアに対しても有意な生存時間の延長を示した。しかしながら、グレノール投与群では生存時間に有意な延長はみられなかった。したがって、BLCO誘導脳浮腫に対してβ−ヒドロキシ酪酸が等張溶液にもかかわらず、グレノールと同様に脳水分含量の増加を抑制したのは、脳循環代謝改善作用により発現した可能性が考えられ、グレノールとは作用機序が異なると考えられる。

0043

C):脳エネルギー代謝改善作用:
実施例5:
(試験材料および方法)
1.使用動物
試験には、雄性ウイスター(Wistar)系ラット(日本エスエルシー株式会社)を、入荷後1週間の予備飼育ののち試験に用いた。これらの動物は温度23±2℃、湿度55±10%、照明時間12時間(7時点灯、19時消灯)の環境下で飼育した。飼料は固形飼料(MF:オリエンタル酵母工業株式会社)、水は水道水を自由摂取させた。試験使用時の体重は172.1±6.7gであった。

0044

2.被験物質および対照物質
1)被験物質
名称:β−ヒドロキシ酪酸ナトリウム(以下、BHBNaと略す)
BHBNaは室温、5か月の保存で安定であり、試験終了後の品質に変化はなかった。また、投与液は調製後1週間は安定であり、所定濃度に調製されていることを確認した。
2)対照物質
名 称:日本薬局方生理食塩液
製造元:株式会社大塚製薬工場

0045

3.試験群および投与量
25mg/kg/hrの用量について検討した。なお、試験群には20mMに調製したBHBNa溶液を、対照群には生理食塩液を、10ml/kg/hrの速度で5時間投与した。

0046

4.試験方法
ラットにエーテルで導入麻酔を行い、0.5%イソフルレン・70%笑気・30%酸素の維持麻酔下に頚部正中線に沿って切開し、迷走神経を傷つけないように注意深く結合組織を剥離して両側総頚動脈を露出した。次に右外頚静脈に輸液投与用カニューレを挿入して他端を背部に導出した。露出した総頚動脈を縫合糸で頭側と心臓側の二箇所で結紮し、その間で切断した。切開部を縫合し、直ちに10ml/kg/hrの速度でインフュージョンポンプを用いて静脈内に5時間持続投与した。偽手術群は試験群同様に両側総頚動脈を露出し、結紮・切断することなく縫合した。動物は投与終了後に断頭し、直ちに全脳を摘出し、小脳および延髄を除去し、大脳湿重量を測定した。次に105℃で24時間乾燥し、大脳乾燥重量を求め、脳水分含量を次式に従って求めた。
脳水分含量(%)=(大脳湿重量−大脳乾燥重量)/大脳湿重量×100
脳は乾燥質量秤量後、脳100mgに対し1mlの精密分析用HNO3 (0.6N)に溶解し、125℃で無色透明になるまで湿式灰化した。灰化後、最終液量を1mlに精製水でメスアップし、溶液中のNa+ およびK+ 含量を炎光光度計FLAME−30C:日本分光メディカル株式会社)を用いて測定した。測定には各群9例のラットを用いた。

0047

5.統計処理
測定値は平均値±標準誤差(S.E.)で表わした。群間における有意差検定は一元分散分析を行い、ダンネット(Dunnett)の多重比較検定により行った。また危険率は5%未満を有意差ありとした。

0048

(試験結果)両側総頚動脈結紮ラットにおけるBHBNaによる脳水分および脳内電解質(Na+ ,K+ )含量の関係を表1および図4〜6に示した。

0049

0050

両側総頸動脈切断によって、生理食塩液群では対照群に比し脳水分およびNa+ 含量の有意(p<0.01)な増加およびK+ 含量の有意(p<0.01)な減少がみられた。BHBNaを持続投与することにより、生理食塩液群に比し脳水分および脳内Na+ 含量の増加に有意(p<0.01)な抑制がみられた。しかし、脳内K+ 含量に対し有意差はみられなかった。

0051

実施例6:
(試験材料および方法)
1.使用動物
試験には、雄性ウイスター(Wistar)系ラット(日本エスエルシー株式会社)を試験に用いた。これらの動物は温度23±3℃、湿度55±15%、照明時間12時間(7時点灯、19時消灯)の環境下で飼育した。飼料は固形飼料(MF:オリエンタル酵母工業株式会社)、水は水道水を自由摂取させた。試験使用時の体重は161.7〜249.0gであった。

0052

2.使用物質および対照物質
1)被験物質
名称:β−ヒドロキシ酪酸ナトリウム(以下、BHBNaと略す)
2)対照物質
名称:グリオール(Glyceol、商品名)
成分 100ml中含有量
濃グリセリン10g
果糖5g
塩化ナトリウム0.9g
発売元中外製薬株式会社

0053

3)媒体
(1)媒体1
媒体名:日本薬局方生理食塩液(Saline)
発売元:大塚製薬株式会社
(2)媒体2
媒体名:日本薬局方注射用蒸留水
発売元:大塚製薬株式会社

0054

3.被験液の調製
BHBNa0.2gを量し、注射用蒸留水に溶解し、全量を10mlとし2.0%BHBNa溶液を調製した。次に2.0%BHBNa溶液9mlに生理食塩液を加え全量を30mlとし、0.6%BHBNa溶液を調製した。なお、各溶液はディスミック−25CS(DISMIC−25CS;0.2μm、ADVANTEC東洋製)で濾過滅菌し、被験液とした。

0055

4.脳虚血モデルの作製
動物にエーテルで導入麻酔を行い、0.5%イソフルレン・70%笑気・30%酸素の維持麻酔下に両側総頚動脈(以下BLCと略す)を露出した。次に右外頚動脈に投与用カニューレを留置した。露出したBLCを縫合糸で頭側と心臓側の二箇所で結紮し、その間で切断した。切開部を縫合後、直ちにインフュージョンポンプを用いて、生理食塩液、0.6%BHBNa(30mg/kg)あるいはグリセオールを5ml/kg/hrの速度で持続投与を行った。偽手術群はBLCを露出するが、結紮・切断することなく縫合した。

0056

虚血3時間後、動物の頭部にマイクロウエーブアプリケーター(TMW−6402C、東製)を用いて、5kW、2秒間の照射条件でマイクロウエーブを照射して瞬間加熱処理し、脳組織中の酵素活性代謝産物の変動および分解を停止させた。あらかじめ秤量しておいた氷冷10%トリクロロ酢酸(TCA)3ml入り試験管に小脳と延髄を除いた大脳組織投入して再び秤量した後、ホモジナイザー(Physcotron、日音医科器械製作所)を用いて氷冷下に粉砕した。ホモジネート液を15分間の遠心分離(4℃、3000rpm)を行い、上清採取した。沈渣はさらに2mlの10%TCAを加えホモジナイズし、これを遠心分離して得られた上清を前記の上清と合わせて攪拌試料液とした。試料液は二分し、その一方に水飽和エーテル3mlを加え、攪拌後に15分間の遠心分離(4℃、3000rpm)を行い、エーテル層上層)を除去した。このエーテル処理は3度繰り返して行った。この抽出液についてATPを測定した。乳酸の測定用試料として、もう一方のエーテル未処理の試料を使用し測定した。なお、大脳重量は上記の秤量値の差から求めた。ATPはLumat LB9507(EG&GBERTHOLD製)を用いて酵素法(Luciferin-Luciferase法)にて測定し、測定値はμmoles /脳湿重量gで表した。乳酸はデタミナーLA(協和メディクス製)を用いて酵素法(Lactate dehydrogenase 法)にて測定し、測定値はμmoles /脳湿重量gで表した。

0057

5.統計処理
測定値は平均値±標準誤差(S.E.)で表わした。群間における有意差検定は一元分散分析を行い、有意な場合はシィッフェ(Scheffe)の多重比較検定により行った。また危険率は5%未満を有意差ありとした。

0058

(結果)脳組織ATPおよび乳酸量の変化をそれぞれ図7、8に示した。
1.正常ラットにおけるBHBNaの影響
BLCを結紮することなしに3時間持続投与しても脳組織ATPおよび乳酸量に有意な変化は認められなかった。

0059

2.BLC結紮ラットにおけるBHBNaおよびGlyceolの影響
1)脳組織ATPの変化
脳組織ATP量は偽手術群の1.85±0.13μmoles /脳湿重量gから結紮3時間後には生理食塩液群で0.52±0.10μmoles /脳湿重量gと有意に減少した。BHBNa30mg/kg/hrを結紮直後から持続投与すると結紮3時間後の脳組織ATP量は1.56±0.10μmoles /脳湿重量gで生理食塩液群に比し有意に減少が抑制され、その程度は偽手術群とほぼ同等であった。グリセオールを結紮直後から持続投与すると3時間後の脳組織ATP量は1.00±0.04μmoles /脳湿重量gで生理食塩液群との間に有意差は認められなかった。

0060

2)脳組織乳酸の変化
脳組織乳酸量は偽手術群の0.61±0.12μmoles /脳湿重量gから結紮3時間後には生理食塩液群で11.39±0.85μmoles /脳湿重量gと有意に増加した。BHBNa30mg/kg/hrを結紮直後から持続投与すると結紮3時間後の脳組織乳酸量は1.36±0.17μmoles /脳湿重量gで生理食塩液群に比し有意に増加が抑制された。グリセオールを結紮直後から持続投与すると3時間後の脳組織乳酸量は7.16±0.54μmoles /脳湿重量gで生理食塩液群に比し有意に増加が抑制されたが、偽手術群と比較すると有意に高値を示した。

0061

D):脳梗塞巣縮小作用:
実施例7:
(試験材料および方法)
1.使用動物
試験には、8週齢の雄性ウイスター(Wistar)系ラット(日本チャールス・リバー株式会社)を試験に用いた。これらの動物は温度23±3℃、湿度55±15%、照明時間12時間(7時間点灯、19時間消灯)の環境下で飼育した。飼料は固形飼料(MF:オリエンタル酵母株式会社)、水は水道水を自由摂取させた。使用時動物の体重は270.6〜338.9gであった。

0062

2.被験物質および対照物質
1)被験物質
名称:β−ヒドロキシ酪酸ナトリウム(以下、BHBNaと略す)
2)媒体
(1)媒体1
媒体名:日本薬局方生理食塩液(Saline)
発売元:大塚製薬株式会社
(2)媒体2
媒体名:日本薬局方注射用蒸留水
発売元:大塚製薬株式会社

0063

3.被験液の調製
BHBNa0.2gを秤量し、注射用蒸留水に溶解し、全量を10mlとし、2.0%BHBNa溶液を調製した。次に2.0%BHBNa溶液9mlに生理食塩液を加え全量を30mlとし、0.6%BHBNa溶液(30mg/kg)を調製した。なお、各溶液はディスミック−25CS(DISMIC−25CS;0.2μm,ADVANTEC東洋製)で濾過滅菌し、被験液とした。

0064

4.中大脳動脈閉塞・再潅流モデルの作製
1)中大脳動脈閉塞モデル
動物をエーテル麻酔下に頚部正中切開を加え、迷走神経の保持に留意しつつ右頚動脈分岐部に達した。右頚動脈分岐部を中心に総頚動脈および外頚動脈を周囲結合組織および脂肪組織より剥離した。外頚動脈より分岐する後頭骨動脈および上甲状腺動脈をそれぞれ剥離して、6−0絹糸にて二重結紮・切断後、外頚動脈を5−0絹糸にて二重結紮・切断した。さらに右頚動脈分岐部より内頚動脈の周囲の結合組織を剥離し、その先で分岐する突口蓋動脈を露出した。次いで外頚動脈を切開し、同部より塞栓糸を内頚動脈に向けて21mm挿入した。以上の操作により、塞栓糸の先端は中大脳動脈分岐部を越えて、前大脳動脈内に約1〜2mm入り、塞栓糸の体部で中大脳動脈を閉塞する。なお、偽手術群は、内頚動脈に塞栓糸を入れることなしに縫合し、屠殺時間まで飼育した。

0065

2)再潅流モデル
中大脳動脈を閉塞した塞栓糸を2時間留置後、エーテル麻酔下で抜き去り、血流再開通した。

0066

5.被験薬および対照薬の投与
塞栓糸挿入後から直ちにインフージョンポンプを用いて、試験前日に大腿静脈に挿入したカニューレより生理食塩液および0.6%BHBNaを5ml/kg/hrの速度で屠殺時間(24時間)まで持続投与を行なった。

0067

6.脳組織標本の作製および染色法
動物は再潅流処置24時間後に屠殺し、大脳を摘出した。摘出した大脳はBrain Slicer(MUROMACHIKIAICo.Ltd.)で前脳より耳介間側(終脳側)へ7mmの場所から厚さ2mmで冠状切断した。切り出した脳切片は、正常ミトコンドリアを染色する2%2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライドTTC)の生理食塩液に30分間浸し、その後、脳切片を10% neutral-buffered folmalinで固定した。

0068

7.梗塞巣の計測
TTC染色を施した脳断切片をフィルムスキャナーを用いてコンピューター上に取り込み、画像解析ソフト(NIH Image)により行った。脳切片面積に占めるミトコンドリア死滅率脳梗塞率)の算出は非染色部位の面積を計測し全脳切片面積に対する百分率(%)として表した。

0069

(結果)得られた脳梗塞率の結果を表2に示した。

0070

0071

表中の結果からも明らかなように、中大脳動脈を2時間閉塞・24時間再潅流条件下に生理食塩液を閉塞直後から持続投与すると、脳梗塞率は全例平均で35.18±2.69%となり、その脳梗塞の分布範囲は、塞栓糸挿入側と同側(右側)において中大脳動脈潅流域皮質側頭葉)、前大脳動脈潅流域皮質(頭頂葉)および線条体内・外部に至り、虚血中心部だけにとどまらず、虚血周縁部と思われる頭頂葉および線条体内部まで広がることが示唆された。これに対して、BHBNa(30mg/kg/hr)を虚血処理後から同様に連続投与すると、脳梗塞率は全例平均で18.99±1.59%となり、生理食塩液投与群に比較して縮小された。この時の脳閉塞は、主に虚血中心部にみられ、虚血周縁部への梗塞範囲の拡大はほとんど観察されなかった。

0072

実施例8:毒性試験
(a) ウイスター(Wistar)系ラットを使用し、β−ヒドロキシ酪酸ナトリウム(以下、BHBNaと略す)を経口投与し、その観察を行った。BHBNaは、雄性ならびに雌性ラットにおける2000mg/kgの単回投与で、いずれも異常なく生存したことが観察された。
(b) ウイスター(Wistar)系雄性ラットを使用し、BHBNaを2週間にわたる反復経口投与を行った。その結果、BHBNaの500mg/kg〜2000mg/kgの投与ですべて異常なく生存したことが観察された。

0073

実施例9:以下に掲げる処方量を採り、輸液剤の製造方法により調製を行った。
β−ヒドロキシ酪酸モノグリセリルエステル16.0 g
塩化ナトリウム3.15g
塩化カリウム0.30g
上記の処方量を約950mlの水に溶解し、塩酸もしくは水酸化ナトリウムを用いてpHを7.0に調整し、1000mlにメスアップをし、0.20μmメンブランフィルターを用いてろ過を行った後、500ml宛ガラス製バイアル瓶に充填し、高圧蒸気滅菌を行い、着色、沈殿のない良好な輸液剤が得られた。

0074

実施例10:以下の表3に掲げる処方量を採り、実施例3と同様の方法により、着色、沈殿のない良好な輸液剤が得られた。

0075

0076

[表中、BHBはβ−ヒドロキシ酪酸を、BHBNaはβ−ヒドロキシ酪酸ナトリウムを、BHBMeはβ−ヒドロキシ酪酸メチルエステルを、BHB−oligo(3mar)はβ−ヒドロキシ酪酸重合体(3量体)を示す。]

発明の効果

0077

以上詳述したとおり、本発明の式(I)で表される化合物(1)を有効成分として含有することを特徴とする薬剤は、脳浮腫の抑制作用、脳機能の保護作用、脳エネルギー代謝障害の抑制作用ならびに脳梗塞巣縮小等の作用を有し、したがって脳機能改善治療剤として大きな効果を持つものである。

図面の簡単な説明

0078

図1β−ヒドロキシ酪酸ナトリウムおよびβ−ヒドロキシ酪酸メチルエステルの投与量と脳水分含量の関係図である。
図2β−ヒドロキシ酪酸ナトリウムの投与量と生存時間の関係図である。
図3β−ヒドロキシ酪酸ナトリウムの投与時間と生存時間の関係図である。
図4β−ヒドロキシ酪酸ナトリウムと脳水分含量の関係図である。
図5β−ヒドロキシ酪酸ナトリウムとナトリウムイオン含量の関係図である。
図6β−ヒドロキシ酪酸ナトリウムとカリウムイオン含量の関係図である。
図7β−ヒドロキシ酪酸ナトリウムと脳内ATP濃度示す図である。
図8β−ヒドロキシ酪酸ナトリウムと脳内乳酸濃度を示す図である。

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