図面 (/)

技術 光学活性2級アルコールの製造法

出願人 三菱瓦斯化学株式会社
発明者 萩原猪佐夫油井知之
出願日 1996年6月26日 (23年8ヶ月経過) 出願番号 1996-165813
公開日 1998年1月13日 (22年2ヶ月経過) 公開番号 1998-004998
状態 特許登録済
技術分野 微生物による化合物の製造 微生物、その培養処理 有機低分子化合物及びその製造
主要キーワード 正比例関係 反応速度差 分析用ガス 相対反応速度 光学分割能 不可逆反応 速度式 ラセミアルコール
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(1998年1月13日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (2)

課題

ラセミ体の2級アルコールを簡便で経済的な方法にて光学分割する光学活性2級アルコールの製造法を見いだす。

解決手段

一般式(1): CH3CH(OH)-(CH2)mR (式中、mは 2〜8 の整数、Rは水素原子または炭素数4以下のアルキルオキシ基である。)で表されるラセミ体の2級アルコールをCandida antarcica 菌由来リパーゼの存在下にプロピオン酸ビニルと反応させ、R体を選択的にプロピオン酸エステルとする不斉エステル交換反応により光学分割を行う事を特徴とする光学活性2級アルコールの製造法。

効果

リパーゼの活性が高く、使用量が少なく、反応液量が必要最低限となり、極めて経済的で生産性の高い方法で光学活性な2級アルコールを製造できた。

概要

背景

酵素を用いる光学分割は以前より研究されており公知技術である。Klibanovらにより有機溶媒中でリパーゼ膵臓由来)を用いる不斉エステル交換反応が見いだされ(A.M. Klibanov et al. J. Am. Chem. Soc. 1985, 106,7072-7076)、2級アルコールの光学分割に利用されるようになった。例えば、有機溶媒を添加せず、反応させるエステルトリグリセリド)と2級アルコールとの溶液にリパーゼ(Pseudomomas菌由来)を加えて不斉エステル交換反応により2級アルコールを光学分割する方法が開示されている (特開昭62-166898 号; 以後、この方法をA法と略す)。

しかし、不斉エステル交換は、平衡反応であることから逆反応押さえるためにトリグリセリドを理論量の数倍用いる必要があり、必ずしも経済的な方法ではなかった。また、特開昭62-166898 号の実施例の条件によれば反応時間として36日を要しており、生産性に関して問題であり更なる改良が望まれていた。因みに、平衡反応での逆反応が無視できない条件 (反応させるエステルを過剰に用いない条件)にて光学分割を行った場合の問題点については、反応速度論に関する解析がなされており、光学純度の高い製品が得られないと言われている(Charles J. Sih et al. J. Am. Chem. Soc. 1987, -109, 2812-2817) 。

上記のごとく、不斉エステル交換反応が平衡反応であることが問題であることから反応させるエステルの種類としてビニルエステルを用いる方法が開発されている(B. Mainllard et al. Tetrahedron Lett., 1987, 28, 953 および GunterE. Jeromin et al. Tetrahedron Lett., 1991, 32, 7021)。このビニルエステルを用いる反応では、不斉エステル交換で生成する物質が、アセトアルデヒドであることから求核性が小さく逆反応が起きないため不可逆反応となり平衡反応でなくなっている。

Gunter E. Jeromin et al. Tetrahedron Lett., 1991, 32, 7021(以後、この方法をB法と略す)の条件によれば反応させるエステル量は、2級アルコールに対して1倍モルであり、この量は理論量の2倍であることからA法と比較した場合は、エステルの使用量がかなり削減されている。しかし、この反応では豚膵臓由来のリパーゼを2級アルコール 1モルに対して100g使用しており、リパーゼ使用量の削減が望まれていた。

リパーゼ使用量の削減のためには、より高活性なリパーゼを選択すればよいと考えられるが、一般に、リパーゼは、起源菌の種類によって反応性基質特異性(例えば、エナンチオ選択性)が異なることが知られている(中薫ら有機化学協会誌 53巻 668, 1995) 。従って、活性が高くてもエナンチオ選択性が小さいリパーゼでは、本発明の目的である2級アルコールの光学分割を達成できない。2級アルコールの光学分割において、高活性でしかも高いエナンチオ選択性を示すリパーゼは、知られていなかった。

概要

ラセミ体の2級アルコールを簡便で経済的な方法にて光学分割する光学活性2級アルコールの製造法を見いだす。

一般式(1): CH3CH(OH)-(CH2)mR (式中、mは 2〜8 の整数、Rは水素原子または炭素数4以下のアルキルオキシ基である。)で表されるラセミ体の2級アルコールをCandida antarcica 菌由来リパーゼの存在下にプロピオン酸ビニルと反応させ、R体を選択的にプロピオン酸エステルとする不斉エステル交換反応により光学分割を行う事を特徴とする光学活性2級アルコールの製造法。

リパーゼの活性が高く、使用量が少なく、反応液量が必要最低限となり、極めて経済的で生産性の高い方法で光学活性な2級アルコールを製造できた。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

下記一般式(1) で表されるラセミ体の2級アルコールをCandida antarcica 菌由来リパーゼの存在下にプロピオン酸ビニルと反応させ、R体を選択的にプロピオン酸エステルとする不斉エステル交換反応により光学分割を行う事を特徴とする光学活性2級アルコールの製造法。一般式(1) : CH3CH(OH)-(CH2)mR(式中、mは 2〜8 の整数、Rは水素原子または炭素数4以下のアルキルオキシ基である。)

請求項2

該リパーゼが、多孔性アクリル樹脂固定化された固定化酵素である請求項1記載の光学活性2級アルコールの製造法。

請求項3

該リパーゼの使用量が、該一般式(1) のラセミ体の2級アルコール1モルに対して 0.1〜10g/mol である請求項1記載の光学活性2級アルコールの製造法。

請求項4

該プロピオン酸ビニルの使用量が、該一般式(1) のラセミ体の2級アルコールに対して 0.3〜0.6倍モル(反応するエナンチオマーの 0.6〜1.2 倍モル)である請求項1記載の光学活性2級アルコールの製造法。

請求項5

該プロピオン酸ビニルが、ヒドロキノンを 1〜1,000ppm含むものである請求項1記載の光学活性2級アルコールの製造法。

請求項6

該不斉エステル交換反応の反応温度が、20〜40℃である請求項1記載の光学活性2級アルコールの製造法。

技術分野

反応速度定数R体 0.23 0.33 0.30 0.31

背景技術

0001

本発明はラセミ体の2級アルコールを簡便で経済的な方法にて光学分割する光学活性2級アルコールの製造法である。本発明の光学活性2級アルコールは、医農薬原料もしくは液晶等の機能材料の原料として有用な物質である。

0002

酵素を用いる光学分割は以前より研究されており公知技術である。Klibanovらにより有機溶媒中でリパーゼ膵臓由来)を用いる不斉エステル交換反応が見いだされ(A.M. Klibanov et al. J. Am. Chem. Soc. 1985, 106,7072-7076)、2級アルコールの光学分割に利用されるようになった。例えば、有機溶媒を添加せず、反応させるエステルトリグリセリド)と2級アルコールとの溶液にリパーゼ(Pseudomomas菌由来)を加えて不斉エステル交換反応により2級アルコールを光学分割する方法が開示されている (特開昭62-166898 号; 以後、この方法をA法と略す)。

0003

しかし、不斉エステル交換は、平衡反応であることから逆反応押さえるためにトリグリセリドを理論量の数倍用いる必要があり、必ずしも経済的な方法ではなかった。また、特開昭62-166898 号の実施例の条件によれば反応時間として36日を要しており、生産性に関して問題であり更なる改良が望まれていた。因みに、平衡反応での逆反応が無視できない条件 (反応させるエステルを過剰に用いない条件)にて光学分割を行った場合の問題点については、反応速度論に関する解析がなされており、光学純度の高い製品が得られないと言われている(Charles J. Sih et al. J. Am. Chem. Soc. 1987, -109, 2812-2817) 。

0004

上記のごとく、不斉エステル交換反応が平衡反応であることが問題であることから反応させるエステルの種類としてビニルエステルを用いる方法が開発されている(B. Mainllard et al. Tetrahedron Lett., 1987, 28, 953 および GunterE. Jeromin et al. Tetrahedron Lett., 1991, 32, 7021)。このビニルエステルを用いる反応では、不斉エステル交換で生成する物質が、アセトアルデヒドであることから求核性が小さく逆反応が起きないため不可逆反応となり平衡反応でなくなっている。

0005

Gunter E. Jeromin et al. Tetrahedron Lett., 1991, 32, 7021(以後、この方法をB法と略す)の条件によれば反応させるエステル量は、2級アルコールに対して1倍モルであり、この量は理論量の2倍であることからA法と比較した場合は、エステルの使用量がかなり削減されている。しかし、この反応では豚膵臓由来のリパーゼを2級アルコール 1モルに対して100g使用しており、リパーゼ使用量の削減が望まれていた。

発明が解決しようとする課題

0006

リパーゼ使用量の削減のためには、より高活性なリパーゼを選択すればよいと考えられるが、一般に、リパーゼは、起源菌の種類によって反応性基質特異性(例えば、エナンチオ選択性)が異なることが知られている(中薫ら有機化学協会誌 53巻 668, 1995) 。従って、活性が高くてもエナンチオ選択性が小さいリパーゼでは、本発明の目的である2級アルコールの光学分割を達成できない。2級アルコールの光学分割において、高活性でしかも高いエナンチオ選択性を示すリパーゼは、知られていなかった。

0007

2級アルコールをリパーゼにより不斉エステル交換で光学分割する方法において、より経済的に生産性の高い方法で実施するためには、反応させるエステル量を削減する必要があり、これに関しては、ビニルエステルを使用するB法により、かなり改善されている。ところが、このビニルエステルは、不斉エステル交換以外の反応として重合が起きることが知られており、本発明者らの知見でも反応時間が長くなると重合によりビニルエステルが減少する事が確認された。

0008

このためB法の条件では、ビニルエステルを理論量の2倍用いている。しかし、ビニルエステルを過剰に用いることは、液量が多くなり生産性が下がるばかりではなく、反応率監視しなければ反応が進みすぎてしまい生成するエステルの光学純度は低下してしまう。また、B法では、2級アルコールに対して豚肝臓由来のリパーゼを100g/mol使用して、重合反応が少ない反応時間で不斉エステル交換反応を完結させている。

課題を解決するための手段

0009

従って、重合反応が無視できる反応時間で不斉エステル交換反応を完結させれば、ビニルエステルの使用量を削減できるはずである。しかし、リパーゼの必要量が多い事は、次に示す2つの問題がある。
(1). リパーゼを回収する際に回収率は同じであっても相対量としては、大きくなり不経済となる。
(2). リパーゼを回収再利用するに伴い活性低下した分を新たに補給して同じ活性に保つ必要があるが、この場合リパーゼの総重量は、使用回数に伴って増加する。ところが、生産性を上げるためにビニルエステル量を削減した場合、反応液量が少なく、リパーゼを分散するに十分な液量が得られなくなる。

0010

上記のような問題点を鑑み、本発明者らはリパーゼによる不斉エステル交換反応により2級アルコールを光学分割する方法について鋭意検討を重ねた。その結果、驚くべき事に、反応させるエステルとしてプロピオン酸ビニルを用た場合に、Candida antarcica 菌由来のリパーゼは、リパーゼのグラム当たり反応活性が極めて高く、更にエナンチオ選択性に関しても優れていることを見いだした。更に、少量のヒドロキノンを添加することで不斉エステル交換反応を阻害することなく重合反応を押さえることができることを見いだし、経済的で生産性の高い2級アルコールの光学分割方法を完成するに至った。

0011

すなわち、本発明は、下記一般式(1) で表されるラセミ体の2級アルコールをCandida antarcica 菌由来リパーゼの存在下にプロピオン酸ビニルと反応させ、R体を選択的にプロピオン酸エステルとする不斉エステル交換反応により光学分割を行う事を特徴とする光学活性2級アルコールの製造法である。
一般式(1) : CH3CH(OH)-(CH2)mR
(式中、mは 2〜8 の整数、Rは水素原子または炭素数4以下のアルキルオキシ基である。)

0012

本発明で使用するリパーゼは、Candida antarcica 菌由来のリパーゼである。このリパーゼとしては、アクリル樹脂固定化された固定化酵素としてノボノルディスク社より市販されているもの(以下、このリパーゼを「固定化リパーゼ」と記す)が好適である。この固定化リパーゼは、2級アルコールの光学分割能を有する事で知られている豚膵臓リパーゼ、Pseudomomas 菌リパーゼに比べて反応活性が極めて高く、少量であっても高い反応速度が得られる。従って、ラセミアルコールと必要量のプロピオン酸ビニルからなる溶液でも分散攪拌することができ、リパーゼを分散させるために溶媒を添加する必要がなくなった。よって、液量が少なく極めて生産性の高い反応条件が設定可能となった。

0013

本発明を実施するには、ヒドロキノンを含有するプロピオン酸ビニルとラセミアルコールとからなる混合液に、固定化リパーゼを加えて攪拌することにより容易に行うことができる。固定化リパーゼの量は、反応速度と正比例関係にあることから反応時間の設定により適宜選択される。因みに、25℃において20時間で反応を完結させる条件としては、1.0g/モルが目安であり、固定化リパーゼの使用量に対応して反応完結時間が決定される。

0014

通常、生産性と経済的な観点から固定化リパーゼの使用量は、2級アルコール対して 0.1〜10g/モルの範囲が好ましい。ここで、反応完結とは、ラセミアルコール中のR体アルコールのほぼ全量が反応した時点であり、ラセミアルコール基準で約50%の反応率を意味する。また、プロピオン酸ビニルの使用量が、理論量よりも少ない場合(ラセミアルコールの1/2 以下の場合)には、プロピオン酸ビニルのほぼ全量が消費された時点を意味する。なお、固定化リパーゼの使用量の単位である (g/モル) とは、ラセミアルコール 1モル当たりに使用する固定化リパーゼの重量である。

0015

プロピオン酸ビニルは、不斉エステル交換反応中の重合を防止するためにヒドロキノンを添加して使用するのが好適である。ヒドロキノンの添加量は、反応時間の設定により 1〜1,000ppmの範囲で適宜選択される。例えば、反応時間が20時間以内では 1〜10ppm の添加でも重合を十分に防止できる。しかし、 100時間以上の反応時間の場合には、1,000ppmの添加が望ましい。また、ヒドロキノンは 1,000ppm 以上添加することも可能であるが、重合を防止する能力としては、差がないので無意味である。

0016

プロピオン酸ビニルの使用量は、理論量がラセミアルコールに対して 0.5倍モル(R体アルコールに対して1倍モル)である。しかし、R体アルコールのほぼ全量を反応させる場合は、反応末期での反応速度の低下を防止するためには 0.6倍モル程度まで使用する事が望ましい。因みに、 0.6倍モル以上使用しても反応速度は、向上しない。一方、生成するR体のプロピオネートを高い光学純度で得る場合には、反応率が低い反応時間で反応を停止させる方法が一般的である。このような場合には、プロピオン酸ビニルを 0.3倍モル程度用いることにより、自動的に約30%の反応率(R体基準では、60%の反応率)で反応を停止させることが可能であり、反応率を常に監視することなく実施可能である。

0017

反応温度は、所望の反応速度と製品の光学純度により 0〜70℃の範囲で適宜選択する。これは、70℃までは反応温度の上昇に伴い反応速度が増加するが、逆にエナンチオ選択性が多少低下するためであり、例えば、70℃で反応を行った場合には、短時間で反応を完結させることができるが、生成するR体のプロピオン酸エステルの光学純度は、低温で反応した場合に比べて多少低下する。通常、十分な反応速度でエナンチオ選択性の良好な範囲として、20〜40℃で不斉エステル交換反応を行うことが好適である。

発明の効果

0018

次に、不斉エステル交換反応後に、各エナンチオマーを分離する方法について説明する。不斉エステル交換反応が終了した時点で濾過により固定化リパーゼを分離し、この濾液蒸留することによりS体アルコールとR体のプロピオン酸エステルが得られる。このR体のプロピオン酸エステルは、通常のアルカリ加水分解を行うことによりR体アルコールにすることができる。

0019

本発明の効果としては、使用するリパーゼの活性が高いため使用量が少なくて済み、リパーゼを分散するための溶媒を添加する必要がなくなった。また、プロピオン酸ビニルの重合による損失がないことから使用するプロピオン酸ビニルの量は、ほぼ理論量で十分となり、経済性が向上した。更に、プロピオン酸ビニルの使用量により不斉エステル交換反応の反応率を制御することが可能となった。これらの結果、反応液量が必要最低限となり、極めて経済的で生産性の高い方法で光学活性な2級アルコールを製造できるようになった。

0020

次に、本発明の方法を実施例と比較例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:光学活性sec-ヘキサノールの製造
(1)不斉エステル交換反応。
ラセミ体のsec-ヘキサノール 1,022g(10mol)に、プロピオン酸ビニル601g(6mol) およびヒドロキノン0.006g を加え、最後にリパーゼ(Novozym 435:ノボノルディスク社製)10g を加えて、25℃で攪拌して20時間不斉エステル交換反応を行った。

0021

20時間での反応率は、50.5%であり、この時点で、濾過によりリパーゼを除去し、濾液を 100mmHgで蒸留して、沸点=85℃にてS体のsec-ヘキサノール408g(収率=80%、純度=99.7%、光学純度=99.5%ee)、沸点=106 ℃にてR体のsec-ヘキシルプロピオネート593g(収率=75%、純度=99.8%、光学純度=97.5%ee) をそれぞれ得た(今後、この不斉エステル交換で生成する原料アルコールに対応するプロピオン酸エステルを単にプロピオネートと略し、各エナンチオマーに対しては、それぞれR体、S体を付けて表す)。

0022

また、蒸留の分離不十分による混合留として、S体sec-ヘキサノール/R体プロピオネート=35%/65%からなる留分を 211g回収した。更に、上記のR体sec-ヘキシルプロピオネート 593g を、アルカリ加水分解してR体sec-ヘキサノール 337g(収率=88%、純度=99.7%、光学純度=97.3%ee)を得た。なお、生成物の同定は、NMRスペクトルによる構造解析により市販品と同一であることにより確認した。また、光学活性体であることは旋光度を測定する事により確認した。光学活性アルコールの光学純度の測定は、ピリジン無水酢酸によりアセテートに変換後、光学活性体分析用ガスクロマトグラフ(CP Cyclodexβ236M) で分析して、そのピーク面積比より求めた。

0023

(2)経時変化の測定。上記(1) で行った不斉エステル交換反応を追跡する事により、リパーゼの活性とエナンチオ選択性を測定することができる。以下に、その方法を説明する。反応追跡は、反応液の一部(約 0.2ml(ミリリットル)) を取り、無水酢酸/ピリジンを各1ml加えて、未反応の2-ヘキサノールをアセテートに変換して、この溶液を光学活性体分析用ガスクロマトグラフ(CP Cyclodexβ236M) で分析した。この分析により、不斉エステル交換されたR体はプロピオネートとして、また未反応のアルコールはアセテートとして各エナンチオマーの組成が測定できた。結果を表1に示した。

0024

経時変化
反応時間プロピオネート未反応アルコール
(hrs) R体 S体光学純度R体 S体 光学純度
0 0.0 % 0.00 % 50 % 50 % 0.0 %ee
1 12.9 % 0.03 % 99.5 %ee 37.1 % 50.0 % 14.8 %ee
2 22.8 % 0.06 % 99.5 %ee 27.2 % 49.9 % 29.5 %ee
3 29.3 % 0.10 % 99.3 %ee 20.7 % 49.9 % 41.4 %ee
5 38.9 % 0.18 % 99.1 %ee 11.1 % 49.8 % 63.6 %ee
7 43.9 % 0.20 % 99.1 %ee 6.10% 49.8 % 78.2 %ee
18 49.8 % 0.53 % 97.9 %ee 0.22% 49.5 % 99.1 %ee
20 49.9 % 0.59 % 97.7 %ee 0.13% 49.4 % 99.5 %ee

0025

この経時変化を一次反応式に従ってプロットすると直線関係となり、反応速度は各エナンチオマーの濃度に対して1次であることが判った。
一次反応式 : ln(C/Co)=−kt
C:時間tにおける濃度、Co:初期濃度、k:反応速度定数、t:反応時間そして、傾きより R体の反応速度定数=0.30 hr-1
S体の反応速度定数=0.0006 hr-1
が求まり、R体/S体の反応速度差で表されるエナンチオ選択性(E値)は、E=494 であった。この経時変化の測定結果と1次反応速度式に従ったプロットの結果を図1および図2に示した。

0026

実施例2:プロピオン酸ビニル量による反応速度の影響。
ラセミ体のsec-ヘキサノール10.2g(0.1mol)とプロピオン酸ビニル(ヒドロキノンを1,000ppm含有)3g(0.03mol) の混合液にNovozym 435 を 0.1g 加えて25℃において不斉エステル交換反応を行った。実施例1と同様にして反応の経時変化を測定した結果、R体の反応速度定数=0.31hr-1であった。

0027

又、3時間反応後の反応率は、ラセミ体のsec-ヘキサノールに対して26%(R体基準で52%)であり、プロピオネートの光学純度は、99.5%eeであった。そして、24時間反応後の反応率は、29%であり、プロピオネートの光学純度は、99.3%eeであった。一般に、生成するプロピオネートを極めて高い光学純度で得る場合には、反応率を随時監視して光学純度が下がる前に反応を停止する必要がある。しかし、本発明の方法では、プロピオン酸ビニルの量で反応率を制御することが可能であり、反応率を随時監視する必要がなく実施可能であった。

0028

参考例1:プロピオン酸ビニル量が大過剰の場合。
実施例2のプロピオン酸ビニルの量を10g(0.1mol)(ラセミ体のsec-ヘキサノールに対して 1倍モルであり、理論量の 2倍モル)用いた以外は、実施例2と全く同様に不斉エステル交換反応を行い、実施例1と同様にして反応の経時変化を測定した。R体の反応速度定数は、0.3 hr-1であり、実施例1と変化なく、プロピオン酸ビニルを過剰に用いても反応速度の上昇は見られなかった。従って、R体アルコールのほぼ全量を反応させるに必要なプロピオン酸ビニル量は、実施例1で使用した様に、ラセミアルコール基準の 0.6倍モル(R体アルコール基準で 1.2倍モル)で十分であり、これ以上の使用量は無意味であった。

0029

実施例3、4:リパーゼ使用量と反応速度の関係。
ラセミ体のsec-ヘキサノール10.2g(0.1mol)とプロピオン酸ビニル(ヒドロキノンを1,000ppm含有)6g(0.06mol) の混合液に Novozym 435を表2に示す量を添加して、25℃において不斉エステル交換反応を行った。実施例1と同様にして反応の経時変化を測定し、反応速度を測定した。結果を表2に示した。表2から反応速度は、Novozyme 435の使用量にほぼ正比例の関係にあり、Novozyme 435の使用量により任意の反応完結時間が設定可能であることが分かる。

0030

リパーゼ量と反応速度の関係
実施例3 実施例1 実施例4
Novozyme 435 使用量 0.01 g 1 g 10 g
ラセミアルコール基準の倍率0.1 g/mol 1.0 g/mol 10 g/mol
反応時間(hrs) 120 20 2
反応率(ラセミアルコール基準) 47.9 % 50.5 % 50.5 %
S体アルコールの光学純度90.4 %ee 99.5 %ee 99.4 %ee
R体アルコール の光学純度 98.4 %ee 97.7 %ee 97.4 %ee
エナンチオ選択性(E) 400 494 475
R体反応速度 0.025 hr-1 0.30 hr-1 3.1 hr-1
相対反応速度0.084 1(基準) 10.3
Novozym435相対使用量 0.1 1(基準) 10

0031

比較例2:ヒドロキノンを添加しない反応。
実施例3におけるヒドロキノン 1,000ppm 含有のプロピオン酸ビニルの代わりにヒドロキノンを含まないプロピオン酸ビニルを 6g 用いて、実施例3と同様にして不斉エステル交換反応を行い、同様に反応の経時変化を測定した。20時間後の反応率=18%であり、この時点での反応速度定数は、0.023 hr-1であった。しかし、 120時間反応させた時点での反応率は、27%と実施例3に比べて反応率が低いものであった。また、この時点でのプロピオン酸ビニルの存在量をガスクロマトグラフで分析したところ、初期添加の11%しか含まれておらず、不斉エステル交換以外に消費されていることが判った。更に、この反応液をヘキサンに加えたところポリ酢酸ビニル析出した。従って、プロピオン酸ビニルは、重合により減少していたことが判った。

0032

実施例5:反応温度による反応速度とエナンチオ選択性の違い。
ラセミ体のsec-ヘキサノール10.2g(0.1mol)とプロピオン酸ビニル(ヒドロキノンを1,000ppm含有)6g(0.06mol) の混合液に Novozym 435を 0.1g 加えて、表3に示す反応温度にて不斉エステル交換反応を行った。そして、実施例1と同様にして反応の経時変化を測定し、反応速度とエナンチオ選択性を求めた。各温度における結果を表3に示した。70℃までは、反応温度が高いほど反応速度が速くなるが、R体/S体の反応速度差で表されるエナンチオ選択性は低下した。70℃で4時間反応させた時に、反応率=50%であり、光学純度は、S体=97%ee、R体=94%eeとなった。これに対して、10℃で35時間反応させた時の反応率は、50%と同じであるが、光学純度は、S体=98.7%ee、R体=98.5%eeであった。

0033

反応温度による影響
反応温度反応速度定数(hr-1)エナンチオ
(℃) R体 S体選択性
80 1.09 0.008 140
70 1.11 0.007 153
60 0.82 0.004 196
50 0.56 0.002 241
40 0.41 0.0014 289
30 0.36 0.0009 402
20 0.24 0.0004 587
10 0.14 0.0002 729

0034

実施例6〜12
実施例1のラセミ体のsec-ヘキサノールの代わりに、表4に示す各ラセミアルコールを用いた以外は、実施例1と同様にプロピオン酸ビニル及び Novozym 435を使用して不斉エステル交換反応を行った。実施例1と同様に経時変化を測定して反応速度定数およびエナンチオ選択性を求めた。得られた結果を表4にまとめて示した。また、反応終了後、Novozym 435 を濾別し、濾液を蒸留することにより対応するS体アルコールおよびR体プロピオネートを得た。但し、実施例6および実施例11は、反応スケールを実施例1の1/100(0.1molスケール)で行い、経時変化の測定のみを行った。各実施例における結果を表4、5にまとめて示した。また、実施例12における(+)-R-7-エトキシ2-ヘプタノールのNMRスペクトルを表6に示した。

図面の簡単な説明

0035

各アルコールにおける光学分割(1)
実施例6 実施例7 実施例1 実施例8
ラセミアルコール種類 (略号) sec-BtOH sec-PtOH sec-HxOH sec-HpOH

0036

図1実施例1の不斉エステル交換反応における各反応時間での各成分の組成比を示した経時変化のグラフである。
図2実施例1の不斉エステル交換反応における組成変化を一次反応式に従ってプロットしたグラフであり、直線関係にあることから反応が一次反応であることを示している。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ