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課題
解決手段
概要
背景
経皮投与薬は、粘着剤層中に薬物を含有させ、この粘着剤層を支持体に塗布して構成してなるものである。この経皮投与薬は、皮膚、粘膜等に貼り付け、皮膚、粘膜等より直接薬物を吸収させて治療を行う目的で使用され、例えば、消炎鎮痛剤、皮膚疾患用テープ剤、鎮痒パッチ、創傷用剤等として広く用いられている。これらは、局所治療薬として用いられてきたが、最近では全身治療薬として経皮治療システム(TTS)が開発されるようになってきた。
このような用途としては、例えば、乗物酔い止め剤、狭心症薬、更年期症薬等を挙げることができる。このように治療の範囲が広がっているので、経皮投与薬に使用される支持体に対する要求は厳しくなってきており、特に、伸縮性と薬物の浸透拡散の防止性との両立した製品が望まれている。
伸縮性は、皮膚に貼ったときに皮膚の動きに追従できるために必要な特性であり、これが不充分であると、容易にはがれたり、腰部の皮膚等の動きの激しい箇所には使用できない等の問題がある。また、薬物の拡散浸透が生じると、支持体が膨潤したり、粘着剤中の薬物が減少して所定の治療効果を損なう等の欠点がある。
概要
薬物の浸透拡散がなく、しかも伸縮性に優れた経皮投与薬用支持体を提供する。
厚さ10〜200μmの軟質フィルムに、ふっ素ゴム及びふっ素系エラストマーのうち少なくとも1種からなる厚さ1〜100μmのフィルムを積層してなる経皮投与薬用支持体。
目的
本発明は、上記に鑑み、薬物の浸透拡散がなく、しかも伸縮性に優れた経皮投与薬用支持体を提供することを目的とするものである。
効果
実績
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技術分野
背景技術
0002
経皮投与薬は、粘着剤層中に薬物を含有させ、この粘着剤層を支持体に塗布して構成してなるものである。この経皮投与薬は、皮膚、粘膜等に貼り付け、皮膚、粘膜等より直接薬物を吸収させて治療を行う目的で使用され、例えば、消炎鎮痛剤、皮膚疾患用テープ剤、鎮痒パッチ、創傷用剤等として広く用いられている。これらは、局所治療薬として用いられてきたが、最近では全身治療薬として経皮治療システム(TTS)が開発されるようになってきた。
0003
このような用途としては、例えば、乗物酔い止め剤、狭心症薬、更年期症薬等を挙げることができる。このように治療の範囲が広がっているので、経皮投与薬に使用される支持体に対する要求は厳しくなってきており、特に、伸縮性と薬物の浸透拡散の防止性との両立した製品が望まれている。
0004
伸縮性は、皮膚に貼ったときに皮膚の動きに追従できるために必要な特性であり、これが不充分であると、容易にはがれたり、腰部の皮膚等の動きの激しい箇所には使用できない等の問題がある。また、薬物の拡散浸透が生じると、支持体が膨潤したり、粘着剤中の薬物が減少して所定の治療効果を損なう等の欠点がある。
発明が解決しようとする課題
0005
現在用いられている経皮投与薬用支持体としては、軟質ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、アルミ蒸着フィルム、不織布、織布等を挙げることができる。このうち、軟質ポリ塩化ビニルフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリエチレンフィルム等は柔軟性に優れているが、薬物が浸透拡散しやすい等の欠点がある。一方、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミ蒸着フィルム等は薬物の拡散浸透性防止に優れているが、伸縮性がない等の欠点があった。
0006
本発明は、上記に鑑み、薬物の浸透拡散がなく、しかも伸縮性に優れた経皮投与薬用支持体を提供することを目的とするものである。
課題を解決するための手段
0007
本発明の要旨は、経皮投与薬用支持体を、厚さ10〜200μmの軟質フィルムに、ふっ素ゴム及びふっ素系エラストマーのうち少なくとも1種からなる厚さ1〜100μmのフィルムを積層することにより構成するところにある。
0008
上記軟質フィルムは、厚さ10〜200μmである。10μm未満であると、薄くて強度が不足し支持体としての機能がなく、200μmを超えると、伸縮性が不足するので、上記範囲に限定される。好ましくは、50〜130μmである。
0009
上記軟質フィルムとしては、例えば、軟質ポリ塩化ビニル(軟質PVC)、ポリウレタン、低密度ポリエチレン、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、軟質ポリウレタン−ポリ塩化ビニルグラフト重合体(PU−PVC)等を挙げることができる。なかでも、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーが、伸縮性がよいので好ましい。ポリオレフィン系エラストマー及びスチレン系エラストマーのうち少なくとも1種からなる軟質フィルムは、伸縮性が良い特徴を有することとなる。
0010
上記スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン−(エチレン−ブタジエン)−スチレントリブロック共重合体(SEBS)30〜10重量%と、ポリプロピレン70〜90重量%との混合系熱可塑性エラストマー(ラバロンT331c、SR04、三菱化学社製)等を挙げることができる。
0011
上記SEBSの混合量は、10重量%未満であると、充分な伸縮性を得ることができず、30重量%を超えると、フィルムの引張強度が低下し加工が困難となり、薬物の浸透拡散防止性が低下する。より好ましくは20〜25重量%である。上記SEBSとしては、例えば、クレイトンG1657(シェル化学社製)等を挙げることができる。上記ポリプロピレンとしては、例えば、MA4、FX4、BC3(三菱化学社製)等を挙げることができる。
0012
上記ポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン−ブタジエン共重合体の主鎖両末端に結晶性ポリオレフィンを有するトリブロック型熱可塑性エラストマー(ダイナロン6200P、日本合成ゴム社製)等を挙げることができる。
0013
上記軟質フィルムは、押出法、カレンダーロール法等の既存の方法で製造することができる。上記軟質フィルムの上記ふっ素ゴム及びふっ素系エラストマーのうち少なくとも1種からなるフィルムとの接着面にプライマーを塗布して、接着性を向上させてもよい。
0014
本発明で使用されるふっ素ゴム及びふっ素系エラストマーのうち少なくとも1種からなるフィルムは、厚さ1〜100μmである。1μm未満であると、薬剤浸透拡散のバリヤー効果がなく、100μmを超えると、伸縮性を発現しないので、上記範囲に限定される。好ましくは、3〜50μmである。
0015
上記ふっ素ゴムとしては一般に市販されているものであれば特に限定されないが、グラビアコーター等で上記軟質フィルムへ積層する加工法を考慮すると、液状ふっ素ゴム、有機溶剤に可溶なふっ素ゴムが好ましい。
0016
上記液状ふっ素ゴムとしては、例えば、プロピレン−4ふっ化エチレン共重合液状ゴム(太平化成社製、エイトシールF−202)等を挙げることができる。上記有機溶剤に可溶なふっ素ゴムとしては、ふっ化ビニリデン−6ふっ化プロピレン−4ふっ化エチレン3元共重合ゴム(ダイキン工業社製、ダイエルG−901、G−902)、プロピレン−4ふっ化エチレン共重合ゴム(日本合成ゴム社製、アフラス150c)等を挙げることができる。
0017
上記ふっ素系エラストマーとしては、例えば、エチレン−4ふっ化エチレン共重合体とふっ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体とからなる熱可塑性エラストマー(ダイエルサーモプラスチックT−530、T−550、ダイキン工業社製)等を挙げることができる。
0018
本発明のふっ素ゴム及びふっ素系エラストマーのうち少なくとも1種からなるフィルムは、上記ふっ素ゴムの1種又は2種以上からなるものであってもよいし、上記ふっ素系エラストマーの1種又は2種以上からなるものであってもよいし、上記ふっ素ゴムの1種又は2種以上と上記ふっ素系エラストマーの1種又は2種以上とからなるものであってもよい。
0019
本発明の経皮投与薬用支持体の製造方法としては、例えば、上記軟質フィルムに、上記ふっ素ゴム及びふっ素系エラストマーのうち少なくとも1種を、そのまま又は有機溶剤に溶解させて、乾燥後1〜100μmの厚さになるようにグラビアコーター等により塗工する方法、上記ふっ素ゴム及びふっ素系エラストマーのうち少なくとも1種からなるフィルムを、押出法等により成形し、上記軟質フィルムと貼り合わせて熱融着する方法等を挙げることができる。
0020
本発明の経皮投与薬用支持体は、ふっ素ゴム及びふっ素系エラストマーのうち少なくとも1種からなるフィルム側の面に、薬物を添加した粘着剤を塗工して、経皮投与薬とすることができる。
0021
上記薬物としては経皮的に体内に吸収されて薬理効果を発揮するものであれば特に限定されず、例えば、抗炎症剤、鎮痛剤、局所刺激剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、血行促進剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、抗高血圧剤、抗菌性剤質、冠血管拡張剤等を挙げることができる。これらのうち、治療目的に応じて少なくとも1種を選択使用することができる。
0023
上記冠血管拡張剤としては特に限定されず、例えば、ニトログリセリン、ニトログリコール、ペンタエリスリトールテトラナイトレート、イソソルビドジナイトレート等を挙げることができる。上記抗ヒスタミン剤としては特に限定されず、例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸イソチベンジル、クロルフェニラミン等を挙げることができる。
0024
上記粘着剤の主成分として用いるポリマーとしては特に限定されず、例えば、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、シリコンゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等を挙げることができる。更に添加剤として、粘着付与剤、軟化剤、充填剤、抗酸化剤等を添加してもよい。
0025
上記薬物を含有した粘着剤を塗工する方法としては、溶剤に溶解して塗工後乾燥する方法、溶融して押出機よりシート状に押し出す方法等を用いることができる。これらの方法により、支持体に直接塗工してもよいし、離形紙に塗工した後支持体と貼り合わせてもよい。
0026
本発明の経皮投与薬用支持体は、軟質フィルムに、ふっ素ゴム及びふっ素系エラストマーのうち少なくとも1種からなるフィルムが積層されて構成されているので、ふっ素ゴム及びふっ素系エラストマーのうち少なくとも1種からなるフィルム層が、粘着剤中の薬物が支持体中へ溶解拡散するのを抑制する効果がある。また、ふっ素系エラストマーは高価であるので、伸縮性を有する軟質フィルムと積層する構成をとることにより、経済的に有利となる。
0027
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
0028
実施例1
軟質フィルムは、ダイナロン6200P(日本合成ゴム社製)を用いて、Tダイス押出機により、厚さ80μmのフィルムを作成した。その片面に、グラビアコーターにより、プライマーのケムロック459(ロードファーイースト社製)を塗工し、乾燥後、ケムロック607(ロードファーイースト社製)をその上に塗工し乾燥させた。バリヤー層は、ダイエルG−902(ダイキン工業社製)を用いて、固形分30重量%となるようにメチルエチルケトンに溶解させ、上記の軟質フィルムに、乾燥後膜厚が3〜5μmとなるようにグラビアコーターで塗工し、乾燥させ、その後、120℃、2分加熱処理を行った。以上の工程で経皮投与薬用支持体を得た。
0029
評価
(1)伸縮性
(i)10%モジュラス
JIS K 6732「農業用ポリ塩化ビニルフィルム」に準じて、引っ張り試験を行い、10%モジュラスを測定した。
○ 1.0N未満
△ 1.0N以上〜2.0N未満
× 2.0N以上
0030
(ii)残存伸び
デマッチャー屈曲疲労試験機(JIS K 6301に記載)を使用し、JIS1号ダンベル状サンプル片にて、75%伸びを1万回与えた。サンプル片に与える負荷を零にした(サンプルの下を固定しているチャックをはずした)時から30秒後のサンプル片の伸びを測定した。
○ 10%未満
△ 10〜15%未満
× 15%以上
0031
(2)薬物浸透拡散防止性
支持体フィルムのバリヤーフィルム面側に、薬物を含有した粘着剤を塗布した。粘着剤は、以下の処方に従って調製した。天然ゴム100重量部に、水素添加ロジン酸エステル10重量部を添加したものを、トルエンに、20重量%になるように溶解させ、更に、サリチル酸モノグリコールを2重量%になるように溶解させた。この薬物含有粘着剤トルエン溶液をシリコン表面処理した離形紙上に、乾燥後粘着剤の厚みが15μmとなるように塗工して溶剤を乾燥除去して得た。それを支持体のバリヤーフィルム面に貼り合わせて支持体−粘着剤積層体を作成し、その積層体を40℃×6カ月静置し、その後、粘着剤中のサリチル酸モノグリコールを定量して残存量を調べた。
○ 85%以上〜100%以下
△ 70%以上〜85%未満
× 70%未満
これらの評価結果を表1に示した。
0032
実施例2
バリヤー層としてアフラス150c(日本合成ゴム社製)を用いて、テトラヒドロフラン/メチルエチルケトン(重量比5/5)混合溶媒へ固形分20重量%となるように溶解させた以外は、実施例1と同様に行い、経皮投与薬用支持体を得た。その評価結果を表1に示した。
0033
実施例3
バリヤー層としてダイエルサーモプラスチックT−530(ダイキン工業社製)を用いて、Tダイス押出機にて厚さ50μmのフィルムに成形し、実施例1の軟質フィルムと張り合わせて、120℃、2分加熱処理を行い、経皮投与薬用支持体を得た。その評価結果を表1に示した。
0034
実施例4
軟質フィルムとしてラバロンT331C(三菱化学社製)を用いた以外は実施例1と同様に行って、経皮投与薬用支持体を得た。その評価結果を表1に示した。
0035
実施例5
軟質フィルムとしてラバロンT331C(三菱化学社製)を用いた以外は実施例2と同様に行って、経皮投与薬用支持体を得た。その評価結果を表1に示した。
0036
実施例6
軟質フィルムとしてラバロンT331C(三菱化学社製)を用いた以外は実施例3と同様に行って、経皮投与薬用支持体を得た。その評価結果を表1に示した。
0037
比較例1
ダイナロン6200P(日本合成ゴム社製)を用いて、Tダイス押出機により厚さ80μmのフィルムを作成し、これを経皮投与薬用支持体とした。その評価結果を表1に示した。
0038
比較例2
ラバロンT331C(三菱化学社製)を用いて、Tダイス押出機により厚さ80μmのフィルムを作成し、これを経皮投与薬用支持体とした。その評価結果を表1に示した。
0039
比較例3
可塑剤として分子量2000のポリエステル系可塑剤70重量%を含有するポリ塩化ビニル(PVC)を用いて、温度160℃のロールで溶融して厚さ80μmのシートを作成し、これを経皮投与薬用支持体とした。その評価結果を表1に示した。
0040
比較例4
バリヤーフィルム層にはPETを用いた。フィルムの製造は、押出機より成形したシートを2軸延伸により3.5μmにして行った。軟質フィルムは、PU−PVCを用いた。PU−PVCは、硬度65度(JIS−A)のドミナスK−650F(東ソー社製)を用いた。PU−PVC100重量部にCa−Zn系安定剤を1.5重量部加えてカレンダーロールにより100μmのフィルムに成形した。PETフィルムに乾燥後厚さ1μmになるようにウレタン系2液型接着剤を塗工し、これを軟質フィルムと接着して積層フィルムを得た。ウレタン系2液型接着剤は、UD417(固形分25%、セイコー化成社製)100重量部にイソシアネート系硬化剤U−4000(セイコー化成社製)を2重量部加えたものを用いた。この積層フィルムのPETフィルム面を230℃に加熱して、図1の蛇腹パターンになるように彫刻した鉄製ロールとゴムロールの間で、圧力1000kg/mで加圧し、PETフィルム面を蛇腹状に成形した。蛇腹構造の寸法は、山の縦の長さ0.8mm、山の横の長さ0.5mm、谷の縦の長さ0.8mm、谷の横の長さ0.5mm、谷の深さ40μm、山の面積/谷の面積=100%とした。以上のようにして経皮投与薬用支持体を成形した。その評価結果を表1に示した。
0041
比較例5
ウレタン系熱可塑性エラストマーフィルム(日清紡績社製、厚さ40μm)を経皮投与薬用支持体とした。その評価結果を表1に示した。
0042
発明の効果
0043
本発明の経皮投与薬用支持体は、上述の構成よりなるので、伸縮性に優れ、かつ、薬物浸透拡散防止性に優れた経皮投与薬を得ることができる。
図面の簡単な説明
--
0045
b1 山の縦の長さ
b2 山の横の長さ
c1 谷の縦の長さ
c2 谷の横の長さ
c 谷の幅
d 谷の深さ