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技術 TiAl系合金部品及びその製造方法

出願人 アイシン精機株式会社
発明者 西村和彦伊藤晴規
出願日 1996年4月29日 (24年2ヶ月経過) 出願番号 1996-132750
公開日 1997年5月13日 (23年1ヶ月経過) 公開番号 1997-125254
状態 特許登録済
技術分野 化学的被覆 金属の防食及び鉱皮の抑制
主要キーワード タングステン系金属 耐酸化皮膜 パック処理 酸化物皮膜中 酸化ニオブ膜 タングステン酸化合物 TiAl金属間化合物 真空加熱処理
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この項目の情報は公開日時点(1997年5月13日)のものです。
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課題

複雑な形状であっても,表面全体に均一な高温耐酸化皮膜を有し,耐酸化性に優れたTiAl系合金部品及びその製造方法を提供すること。

解決手段

タングステンニオブ又はタンタルのいずれかの金属元素酸化物よりなる酸化物ゾル溶液をTiAl系金属間化合物よりなる母材の表面にコーティングし,次いで真空雰囲気中において真空加熱を行う。上記金属がタングステンの場合に得られるTiAl系合金部品10は,母材11の表面に高温耐酸化皮膜12を有する。高温耐酸化皮膜12は,WO3 ・TiO2 ・Al2 O3 よりなる第1層121と,TiO2 ・Al2 O3 よりなる第2層122と,Al2 O3 よりなる第3層123とから構成される。各層121,122,123には,それぞれ金属Wが分散している。

概要

背景

概要

複雑な形状であっても,表面全体に均一な高温耐酸化皮膜を有し,耐酸化性に優れたTiAl系合金部品及びその製造方法を提供すること。

タングステンニオブ又はタンタルのいずれかの金属元素酸化物よりなる酸化物ゾル溶液をTiAl系金属間化合物よりなる母材の表面にコーティングし,次いで真空雰囲気中において真空加熱を行う。上記金属がタングステンの場合に得られるTiAl系合金部品10は,母材11の表面に高温耐酸化皮膜12を有する。高温耐酸化皮膜12は,WO3 ・TiO2 ・Al2 O3 よりなる第1層121と,TiO2 ・Al2 O3 よりなる第2層122と,Al2 O3 よりなる第3層123とから構成される。各層121,122,123には,それぞれ金属Wが分散している。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
2件

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請求項1

タングステンニオブ又はタンタルのいずれかの金属元素を含有する金属化合物溶媒とを出発原料として作製した上記金属元素の酸化物よりなる酸化物ゾル溶液を調整し,該酸化物ゾル溶液を,TiAl系金属間化合物よりなる母材の表面にコーティングし,次いで,真空雰囲気中において真空加熱を行うことにより,上記母材の表面に高温耐酸化皮膜を形成することを特徴とするTiAl系合金部品の製造方法。

請求項2

請求項1において,上記コーティング後,上記真空加熱前に,コーティングした皮膜結晶化させるための加熱を行うことを特徴とするTiAl系合金部品の製造方法。

請求項3

請求項1又は2において,上記タングステンを含有する金属化合物は,タングステン系金属アルコキシド,タングステン系金属アセチルアセトナートタングステン系塩化物タングステン酸化合物から選択される1種以上の化合物であることを特徴とするTiAl系合金部品の製造方法。

請求項4

請求項1又は2において,上記ニオブを含有する金属化合物は,ニオブ系金属アルコキシド,ニオブ系金属アセチルアセトナート,ニオブ系塩化物から選択される1種以上の化合物であることを特徴とするTiAl系合金部品の製造方法。

請求項5

請求項1又は2において,上記タンタルを含有する金属化合物は,タンタル系金属アルコキシド,タンタル系金属アセチルアセトナート,タンタル系塩化物から選択される1種以上の化合物であることを特徴とするTiAl系合金部品の製造方法。

請求項6

請求項1〜5のいずれか1項において,上記酸化物ゾル溶液には,上記金属化合物と錯体を形成するキレート剤を添加していることを特徴とするTiAl系合金部品の製造方法。

請求項7

請求項1〜6のいずれか1項において,上記真空加熱は,真空度1.3Pa〜1.3×10-5Pa,温度800〜1100℃で行うことを特徴とするTiAl系合金部品の製造方法。

請求項8

TiAl系金属間化合物からなる母材と,その表面に形成された高温耐酸化皮膜とよりなるTiAl系合金部品であって,上記高温耐酸化皮膜は,WO3 ・TiO2 ・Al2 O3 ,Nb2 O5 ・TiO2 ・Al2 O3 又はTa2 O5 ・TiO2 ・Al2 O3 のいずれかよりなる最表面に位置する第1層と,該第1層の下に位置するTiO2 ・Al2 O3 よりなる第2層と,該第2層と上記母材との間に位置するAl2 O3 よりなる第3層とから構成されており,かつ,上記高温耐酸化皮膜を構成する各層には,それぞれ上記第1層に対応する金属W,金属Nb又は金属Taのいずれかが分散していることを特徴とするTiAl系合金部品。

請求項9

請求項8において,上記高温耐酸化皮膜の厚さは5.0μm以下であり,かつ,上記第1層の厚さは0.001〜0.2μm,上記第3層の厚さは0.1〜5.0μmであることを特徴とするTiAl系合金部品。

技術分野

0001

本発明は,高温耐酸化性に優れたTiAl系合金部品及びその製造方法に関する。

0002

TiAl系金属間化合物は,Ti単体よりも軽量で,高温強度が非常に高いという優れた特性を有する。そのため,TiAl系金属間化合物を主体とするTiAl系合金部品は,ジェットエンジン部品自動車用エンジンターボチャージャー部品等の軽量,高強度が要求される部品への応用が期待されている。しかしながら,TiAl系金属間化合物は,800℃以上の高温において耐酸化性が急激に劣化するという問題を有する。

0003

この高温耐酸化性の劣化の原因は,高温下においてはTiの表面への拡散激しくなるからであると考えられる。即ち,TiAl系金属間化合物は,大気中において800℃以上で急激に酸化が進み,TiO2 が優先的に成長する。その結果,TiAl金属間化合物からなる母材表面には,最表面からTiO2 層,Al2 O3 層,TiO2 ・Al2 O3 層という3層からなる酸化スケールが形成される。

0004

そして,酸化の初期段階においては,第2層目のAl2 O3 層によって耐酸化性が確保される。これは,酸化の初期段階においては,Al2 O3 が連続して形成されているため,このAl2 O3 層によって母材から表面へのTiの拡散,及び表面から母材へのO(酸素)の拡散が抑制されるからであると考えられる。しかし,さらに酸化が進んだ場合には,Tiの拡散が進み,上記第2層目のAl2 O3 層の連続性が失われる。そのため,Al2 O3 層によるTi及びOの拡散抑制効果が損なわれ,TiAl系金属間化合物の耐酸化性は低下する。

0005

これに対し,高温耐酸化性を改善する方法として,以下の方法が提案されている。まず第1の方法は,特公平4−63148号公報に示された,TiAl系金属間化合物の表面にAl2 O3 よりなる耐酸化皮膜を形成する方法である。この方法は,低酸素雰囲気下で加熱することにより,TiAl系金属間化合物の表面において選択的にAlを酸化させてAl2 O3 層を形成し,これを耐酸化皮膜として高温耐酸化性を向上させたものである。

0006

第2の方法は,特開平5−78817号公報に示された,TiAl系金属間化合物の表面に深さ0.5μm以上の厚さを有するMo,Wの少なくとも1種の濃化層を形成する方法である。この方法は,TiAl系金属間化合物表面に耐酸化性を有するTiAl−(W,Mo)合金層を形成し,耐酸化性を向上させたものである。この濃化層を形成する手段として,スパッタリング拡散処理による方法,粉末パック処理による方法,粉末パック処理と拡散処理による方法が示されている。

0007

しかしながら,上記従来の耐酸化性改善方法においては,次の問題がある。まず,上記第1の方法においては,母材の表面に形成されるAl2 O3 層の緻密性が不十分であり,Tiの表面への拡散を十分に抑制できない。そのため,母材とAl2 O3 層との密着性や,Al2 O3 層の長期安定性に劣る。

0008

上記第2の方法においては,スパッタリング又は粉末パック処理によってW等をTiAl系金属間化合物の表面に付着させている。そのため,複雑形状又は大型形状の表面へW等を付着させることが難しく,W等の濃化層を均一に形成することが困難である。それ故,部品が複雑形状又は大型形状の場合には,部分的に耐酸化性が低い部分が残ってしまう。

0009

本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,複雑な形状または大型形状であっても,その表面全体に均一な高温耐酸化皮膜を有し,耐酸化性に優れたTiAl系合金部品及びその製造方法を提供しようとするものである。

0010

請求項1の発明は,タングステンニオブ又はタンタルのいずれかの金属元素を含有する金属化合物溶媒とを出発原料として作製した上記金属元素の酸化物よりなる酸化物ゾル溶液を調整し,該酸化物ゾル溶液を,TiAl系金属間化合物よりなる母材の表面にコーティングし,次いで,真空雰囲気中において真空加熱を行うことにより,上記母材の表面に高温耐酸化皮膜を形成することを特徴とするTiAl系合金部品の製造方法にある。

0011

本発明において最も注目すべきことは,上記酸化物ゾル溶液を用いたゾルゲル法を利用することである。そして,上記真空加熱を行うことである。

0012

上記酸化物ゾル溶液は,ゾルゲル法によって,WO3 (酸化タングステン),Nb2 O5 (酸化ニオブ)又はTa2 05 (酸化タンタル)のいずれかの皮膜を上記母材の表面に形成するためのゾル溶液である。該酸化物ゾル溶液は,上記金属化合物と溶媒とを出発原料として作製される。具体的には,アルコール等の溶媒中に上記のタングステン,ニオブ又はタンタルの金属化合物を混合して攪拌して溶解するという手順で作製する。また,上記溶媒は,金属化合物の種類に応じて,例えば,アルコール,水,又はアルコールと水との混合液トルエンキシレン等を用いることができるが,安全性を考慮すると,アルコ−ルが好ましい。

0013

次に,本発明の製造方法における作用につき説明する。本発明の製造方法においては,ゾルゲル法を用いて,上記酸化物ゾル溶液を上記母材表面にコーティングする。そのため,母材が複雑形状または大型形状である場合でも,母材表面全体に,均一な酸化物皮膜を形成することができる。

0014

また,上記酸化物皮膜を母材表面に形成した後,上記真空加熱を行う。そのため,上記酸化物皮膜中のW,Nb又はTaのいずれかと母材中のTiの拡散が起こる。一方,酸化物皮膜中のO(酸素)と真空雰囲気中に残存する微量のOによって,母材表面が酸化される。これにより,母材表面には,3つの層からなる高温耐酸化皮膜が形成される。

0015

該高温耐酸化皮膜は,WO3 ・TiO2 ・Al2 O3 ,Ta2 O5 ・TiO2・Al2 O3 又はTa2 O5 ・TiO2 ・Al2 O3 のいずれかよりなる最表面第1層と,TiO2 ・Al2 O3 よりなる第2層と,Al2 O3 層よりなる第3層とにより構成される。そして,各層には金属W,金属Nb又は金属Taのいずれかが分散してなる。即ち,上記第1層がWO3 ・TiO2 ・Al2 O3 の場合には金属Wが,Nb2 O5 ・TiO2 ・Al2 O3 の場合には金属Nbが,Ta2 O5 ・TiO2 ・Al2 O3 の場合には金属Taが,それぞれ各層に分散する。

0016

次に,請求項2の発明のように,上記酸化物ゾル溶液の出発原料として用いる上記金属化合物の種類によっては,上記コーティング後,上記真空加熱前に,コーティングした皮膜(WO3 皮膜,Nb2 O5 皮膜又はTa2 O5 皮膜のいずれか)を結晶化させるための加熱を行うことが必要である。

0017

この場合の加熱温度は,400℃以上であることが好ましい。これにより,母材表面全体のWO3皮膜,Nb2 O5 皮膜又はTa2 O5 皮膜のいずれかを均一に結晶化させることができる。上記加熱温度が400℃未満の場合には,上記皮膜が,TiAl表面に水分をわずかに含んだ非晶質の状態で存在し,真空加熱時にTiAlの酸化が促進され,後述する高温耐酸化皮膜中の第3層に位置するAl2 O3 層の緻密性が低下するという問題がある。

0018

次に,請求項3の発明のように,上記タングステンを含有する金属化合物としては,タングステン系金属アルコキシド,タングステン系金属アセチルアセトナートタングステン系塩化物タングステン酸化合物から選択される1種以上の化合物を用いることができる。具体的には,タングステン系金属アルコキシドとしては,W(OC2 H5 )6 ,W(OC3 H7 )6 ,W(OC4 H9 )6 ,W(OC2 H5 )5 ,W(OC3 H7 )5 等がある。タングステン系金属アセチルアセトナートとしては,W(O2 C5 H7 )6 ,W(O2 C5 H7 )5 等がある。タングステン系塩化物としては,WCl6 ,WCl5 ,WOCl4 等がある。タングステン酸化合物としては,H2 WO4 ,Na2 WO4 ,Na2 WO4 ・2H2 O等がある。

0019

また,請求項4の発明のように,上記ニオブを含有する金属化合物としては,ニオブ系金属アルコキシド,ニオブ系金属アセチルアセトナート,ニオブ系塩化物から選択される1種以上の化合物を用いることができる。具体的には,ニオブ系金属アルコキシドとしては,Nb(OCH3 )5 ,Nb(OC2 H5 )5 ,Nb(OC3 H7 )5 等がある。またニオブ系金属アセチルアセトナートとしては,Nb(O2 C5 H7 )5 等がある。またニオブ系塩化物としては,NbCl5,NbOCl3 等がある。

0020

また,請求項5の発明のように,上記タンタルを含有する金属化合物としては,タンタル系金属アルコキシド,タンタル系金属アセチルアセトナート,タンタル系塩化物から選択される1種以上の化合物を用いることができる。具体的には,タンタル系金属アルコキシドとしては,Ta(OCH3 )5 ,Ta(OC2 H5 )5 ,Ta(OC3 H7 )5 等がある。またタンタル系金属アセチルアセトナートとしては,Ta(O2 C5 H7 )5 等がある。またタンタル系塩化物としては,TaCl5 ,TaOCl3 等がある。

0021

また,請求項6の発明のように,上記酸化物ゾル溶液は,上記金属化合物と錯体を形成するキレート剤を添加していることが好ましい。これにより,上記酸化物ゾル溶液を安定化させることができる。上記キレート剤としては,アセチルアセトンジエタノールアミントリエタノールアミン等がある。

0022

次に,上記コーティングは,ゾルゲル法を用いて,いわゆるディップ法スピン法スプレー法等により行うことができる。

0023

また,請求項7の発明のように,上記真空加熱は,真空度1.3Pa〜1.3×10-5Pa,温度800〜1100℃で行うことが好ましい。これにより,高温耐酸化皮膜を,母材表面に均一に形成することができる。

0024

上記真空度が1.3Paを越える場合には,高温耐酸化皮膜中の第3層に位置するAl2 O3 の層の緻密性が低下するという問題があり,1.3×10-5Pa未満の場合には,TiAl母材中のAlが蒸発するという問題がある。また,上記温度が800℃未満の場合には,高温耐酸化皮膜の形成に長時間かかり,生産性が悪いという問題があり,一方1100℃を越える場合には,TiAl母材中のAlが蒸発するという問題がある。

0025

次に,請求項8の発明のように,上記製造方法により製造されたTiAl系合金部品としては,次のものがある。即ち,TiAl系金属間化合物からなる母材と,その表面に形成された高温耐酸化皮膜とよりなるTiAl系合金部品であって,上記高温耐酸化皮膜は,WO3 ・TiO2 ・Al2 O3 ,Nb2 O5 ・TiO2 ・Al2 O3 又はTa2 O5 ・TiO2 ・Al2 O3 のいずれかよりなる最表面に位置する第1層と,該第1層の下に位置するTiO2 ・Al2 O3 よりなる第2層と,該第2層と上記母材との間に位置するAl2 O3 よりなる第3層とから構成されており,かつ,上記高温耐酸化皮膜を構成する各層には,それぞれ上記第1層に対応する金属W,金属Nb又は金属Taのいずれかが分散していることを特徴とするTiAl系合金部品がある。

0026

本発明のTiAl系合金部品において最も注目すべきことは,上記母材の表面には,上記特定の3層よりなる高温耐酸化皮膜を有することである。

0027

次に,本発明のTiAl系合金部品における作用につき説明する。本発明のTiAl系合金部品は,上記高温耐酸化皮膜を有する。そして,高温耐酸化皮膜における最表面に位置する第1層は,WO3 ・TiO2 ・Al2 O3,Nb2 O5 ・TiO2 ・Al2 O3 又はTa2 O5 ・TiO2 ・Al2 O3 のいずれかよりなると共に,これに対応する金属W,金属Nb又は金属Taのいずれかが分散している。そのため,第1層は,外表面から母材へのOの拡散,及び母材から表面へのTiの拡散を抑制する。

0028

また,上記第2層及び第3層は,上記酸化物の層に金属W,金属Nb又は金属Taのいずれかが分散している。そのため,上記第2層及び第3層は,緻密化し,上記したようなO及びTiの拡散をさらに抑制する。それ故,TiAl系金属間化合物の酸化を抑制することができ,TiAl系合金部品の高温耐酸化性を大幅に向上させることができる。

0029

次に,請求項9の発明のように,上記高温耐酸化皮膜の厚さは5.0μm以下であり,かつ,上記第1層の厚さは0.001〜0.2μm,上記第3層の厚さは0.1〜5.0μmであることが好ましい。上記高温耐酸化皮膜の厚さが5.0μmを超える場合には,高温耐酸化皮膜と母材の密着性が低下するという問題がある。

0030

また,上記第1層の厚さが0.001μm未満の場合には,母材から表面へのTiの拡散を抑制する効果が低下するという問題があり,一方,0.2μmを超える場合には,第1層目の密着性が低下するという問題がある。また,上記第3層の厚さが0.1μm未満の場合には,O及びTiの拡散を抑制する効果が低下するという問題があり,一方,5.0μmを超える場合には,高温耐酸化皮膜の密着性が低下するという問題がある。

0031

実施形態例1
本発明の実施形態例にかかるTiAl系合金部品及びその製造方法につき,図1を用いて説明する。本例のTiAl系合金部品は,自動車用エンジンのターボチャージャーロータである。該TiAl系合金部品10は,図1に示すごとく,TiAl系金属間化合物からなる母材11と,その表面に形成された高温耐酸化皮膜12とよりなる。

0032

上記高温耐酸化皮膜12は,図1に示すごとく,最表面に位置するWO3 ・TiO2 ・Al2 O3 よりなる第1層121と,第1層121の下に位置するTiO2 ・Al2 O3 よりなる第2層122と,第2層122と母材11との間に位置するAl2 O3 よりなる第3層123とから構成されている。また,高温耐酸化皮膜12を構成する各層121,122,123には,それぞれ金属Wが分散している。

0033

また,図1に示すごとく,高温耐酸化皮膜12の厚さHは5.0μm以下である。また,第1層121の厚さH1は0.001〜0.2μm,第3層の厚さH3は0.1〜5.0μmである。

0034

次に,上記TiAl系合金部品10を製造するに当たっては,下記のようにタングステン化合物と溶媒とを出発原料として作製したWO3ゾル溶液をTiAl系金属間化合物よりなる母材の表面にコーティングし,次いで,真空雰囲気中において真空加熱を行った。また,本例においては,上記コーティング後,上記真空加熱前に,コーティングした皮膜を結晶化させるための加熱を行った。

0035

以下,製造方法につき詳述する。まず,タングステン化合物としてのヘキサエトキシタングステンW(OC2 H5 )6 4gと,溶媒としての1−ブタノール45.0gと,キレート剤としてのアセチルアセトン1.0gを混合し,10分間攪拌する。次いで,この溶液を117℃の温度で2時間還流した後冷却し,WO3ゾル溶液とする。

0036

次に,予めアセトンにより洗浄したTiAl系合金部品の母材に対して,ディップコーティングにより上記WO3ゾル溶液をコーティングする。ディップコーティングの引き上げ速度は60mm/minにより行う。コーティングの後,500℃の温度で30分間加熱を行い,母材表面にWO3皮膜を得る。

0037

次いで,真空度6.7×10-2Pa,温度1000℃で24時間真空加熱を行う。これにより,上記TiAl系合金部品10が得られる。

0038

次に本例の作用効果につき説明する。本例の製造方法においては,ゾルゲル法を用いて,上記WO3ゾル溶液を母材11の表面にコーティングする。そのため,母材11が,本例のターボチャージャーロータのごとく,複雑な形状である場合でも,母材11の表面全体に,均一なWO3皮膜を形成することができる。

0039

また,上記WO3皮膜を母材11の表面に形成した後,上記真空加熱を行う。そのため,上記WO3皮膜中のWと母材11中のTiの拡散が起こる。一方,WO3 皮膜中のO(酸素)と真空雰囲気中に残存する微量のOによって,母材11の表面が酸化される。これにより,図1に示すごとく,母材11の表面には,3つの層からなる高温耐酸化皮膜12が形成される。

0040

高温耐酸化皮膜12は,上述したごとく,最表面に位置するWO3 ・TiO2・Al2 O3 よりなる第1層121と,第1層121の下に位置するTiO2 ・Al2 O3 よりなる第2層122と,第2層122と母材11との間に位置するAl2 O3 よりなる第3層123とから構成され,各層には金属Wが分散している。

0041

次に,上記製造方法により得られたTiAl系合金部品10は,以下のごとく,優れた高温耐酸化性を示す。即ち,本例のTiAl系合金部品10は,高温耐酸化皮膜12を有する。そして,高温耐酸化皮膜12の最表面に位置する第1層121は,WO3 ・TiO2・Al2 O3 よりなると共に,金属Wが分散している。そのため,第1層121は,外表面から母材11へのOの拡散,及び母材11から表面へのTiの拡散を抑制する。

0042

また,上記第2層122及び第3層123は,上記酸化物の層に金属Wが分散している。そのため,第2層122及び第3層123は,緻密化し,上記したようなO及びTiの拡散をさらに抑制する。それ故,TiAl系金属間化合物の酸化を抑制することができ,TiAl系合金部品10の高温耐酸化性を大幅に向上させることができる。

0043

実施形態例2
本例においては,図2に示すごとく,実施例1において得られたTiAl系合金部品10の高温連続酸化試験を実施した。試験は,大気中において温度900℃に加熱し,その加熱保持時間に対する酸化増量(g/m2 )を測定した。

0044

また,比較のために,以下の3種類の比較品を準備し,上記高温連続酸化試験を実施した。比較品1としては,TiAl系金属間化合物のままで表面処理を何も施していない部品を用いた。

0045

比較品2としては,実施形態例1のTiAl系合金部品10と同様の手順により,ゾルゲル法によって母材表面にWO3皮膜を形成したが,真空加熱処理を行わなかった部品を用いた。比較品3としては,TiAl系合金部品の表面に実施形態例1のようなWO3皮膜形成の処理を何ら行わず,実施形態例1と同様の条件で真空加熱処理のみを施した部品を用いた。

0046

試験結果を図2に示す。図2は,横軸に900℃の加熱保持時間,縦軸に加熱前に比べて増加した酸化量をとった。実線Eは実施形態例1において製造したTiAl系合金部品10を示し,破線C1は上記比較品1,破線C2は上記比較品2,破線3は上記比較品3を示す。

0047

図2により知られるごとく,比較品1の表面処理を施していない従来のTiAl系合金部品は,約50時間まで急激に酸化量が増加し,その後も高い比率で酸化が進んだ。また,比較品2,3は,いずれも比較品1に比べて酸化増量の増加率が減少するものの,依然高い比率で酸化が進んだ。これに対し,本例のTiAl系合金部品10は,約50時間まで若干量酸化が進んだが,その後は,ほとんど酸化の進行がみられず,非常に良好な高温耐酸化性を示すことが分かった。

0048

実施形態例3
本例においては,図3に示すごとく,TiAl金属間化合物の母材11よりなるターボチャージャーロータの表面に,実施形態例1とは別の高温耐酸化被膜22を形成した。

0049

即ち,本例における高温耐酸化被膜22は,図3に示すごとく,最表面に位置するNb2 O5 ・TiO2 ・Al2 O3 よりなる第1層221と,その下に位置するTi2 O2 ・Al2 O3 よりなる第2層222と,該第2層222と母相11との間に形成されたAl2 O3 よりなる第3層223とよりなる。そして,この第1〜第3層221,222,223には,それぞれ金属Nbが分散している。

0050

このTiAl系合金部品を製造するに当たっては,実施形態例1におけるタングステン化合物に代えて,ニオブ化合物を用いて調整した酸化ニオブゾル溶液を用いる。即ち,まずニオブ化合物としてペンタエトキシニオブNb(OC2 H2 )5 を10.8gと,キレート剤としてのジエタノールアミンを3.6g準備し,これらを混合した後,1時間攪拌する。これにより,酸化ニオブゾル溶液が得られる。

0051

次に,予めアセトンにより洗浄したTiAl系合金部品の母材に対して,ディップ法により上記酸化ニオブゾル溶液をコーティングする。ディップ後の母材の引き上げ速度は3mm/秒とした。次に,コーティングした母材を,500℃の温度で30分間加熱し,母材表面に酸化ニオブ膜を形成する。

0052

次いで,酸化ニオブ膜を有する母材を,真空度1.3×10-4Pa,温度1000℃で24時間真空加熱する。その他の条件等については,実施形態例1と同様である。これにより,上記高温耐酸化被膜22を有するTiAl系合金部品20が得られる。

0053

本例により得られたTiAl系合金部品20の表面には,上記高温耐酸化被膜22が非常に均一に形成されている。そのため,実施形態例1における高温耐酸化被膜12と同様に,TiAl系合金部品の高温耐酸化性を大きく向上させることができる。その他,実施形態例1と同様の効果が得られる。

0054

実施形態例4
本例においては,図4に示すごとく,実施形態例3において得られたTiAl系合金部品20の高温連続酸化試験を実施した。試験の条件等については,実施形態例2と同様にした。

0055

また,本例においても,比較のために,以下の3種類の比較品を準備し,これらも同様に試験した。比較品4は,実施形態例2における比較品1と同様であり,TiAl系金属間化合物のままで表面処理を何も施していない部品である。

0056

比較品5は,実施形態例3と同様に母材の表面に酸化ニオブ被膜を形成したが,真空熱処理を行わなかった部品である。比較品6は,母材表面に何ら被膜形成の処理を行わず,実施形態例3と同様の条件で真空加熱処理のみを施した部品である。

0057

試験結果を図4に示す。図4における縦軸,横軸は,図2と同様とし,実施形態例3の部品を実線E3,比較品4,5,6をそれぞれ破線C4,C5,C6により示した。図4より知られるごとく,上記高温耐酸化被膜22を有する本発明品は,非常に優れた高温耐酸化性を示すことが分かる。

0058

尚,上記各実施例においては,高温耐酸化被膜を作製するための酸化物ゾル溶液としてタングステン酸化物ゾル溶液又はニオブ酸化物ゾル溶液を用いたが,これをタンタル酸化物ゾル溶液に代えた場合においても,上記と同様の効果が得られる。

発明の効果

0059

上述のごとく,本発明によれば,複雑な形状または大型形状であっても,その表面全体に均一な高温耐酸化皮膜を有し,耐酸化性に優れたTiAl系合金部品及びその製造方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

0060

図1実施形態例1のTiAl系合金部品の断面図を示す説明図。
図2実施形態例2における,加熱保持時間と酸化増量の関係を示す説明図。
図3実施形態例3のTiAl系合金部品の断面を示す説明図。
図4実施形態例4における,加熱保持時間と酸化増量の関係を示す説明図。

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0061

10,20...TiAl系合金部品,
11...母材,
12,22...高温耐酸化皮膜,
121...第1層(WO3 ・TiO2 ・Al2 O3 層に金属Wが分散した層),
122...第2層(TiO2 ・Al2 O3 層に金属Wが分散した層),
123...第3層(Al2 O3 層に金属Wが分散した層),
221...第1層(Nb2 05 ・TiO2 ・Al2 O3 層に金属Nbが分散した層),
222...第2層(TiO2 ・Al2 O3 層に金属Nbが分散した層),
223...第3層(Al2 O3 層に金属Nbが分散した層),

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