図面 (/)
課題
解決手段
概要
背景
サイトカインやペプチドホルモンなど種々の生理活性蛋白質の存在が明らかにされ、また近年の遺伝子工学技術の進歩は、これら生理活性蛋白質の大量生産、臨床への適用の途を開きつつある。このような技術は、すでにインターフェロン,インターロイキン,B細胞増殖因子(BGF),B細胞分化因子(BDF),マクロファージ活性化因子(MAF),リンホトキシン(LT),腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカイン;トランスホーミンググロースファクター(TGF−α);エリスロポエチン,上皮細胞増殖因子,インスリン,ヒト成長ホルモンなどペプチド蛋白質ホルモン;B型肝炎ウイルス抗原,インフルエンザ抗原,口蹄疫ウイルス抗原,マラリア原虫抗原などのワクチンの開発に有用な病原性微生物抗原蛋白質;ペプチダーゼ(例、ティシュプラスミノーゲンアクチベーター,ウロキナーゼ,セラチオペプチダーゼなど)やリゾチームなどの酵素;ヒト血清アルブミン(HSA)などの血中蛋白成分など各種生理活性蛋白質の製造に応用されている。
しかし、これらの蛋白質は遺伝子工学手法により製造されるため、しばしば混合物中の他の物質から、最終的に必要な生産物を分離せねばならないという問題が生じている。特に問題になるのは、必要な蛋白質をコ−ドする遺伝子の発現により産生する遺伝子産物が、しばしば必要な蛋白質とそのアミノ末端にメチオニンが付加した第二番目の蛋白質との混合物であることである。付加されたメチオニン(Met)は、所望の遺伝子の発現の開始を指示する翻訳開始コドンATGの発現と、発現産物から付加したMet基を除く宿主細胞の発現系の不首尾に由来するものである。この問題は、原核性宿主および真核性宿主の両者で生ずるが、とりわけ原核性宿主における遺伝子の発現においてしばしば生ずる。発現用宿主として大腸菌を用いた発現系において特に問題となる。真核細胞および原核細胞の両者における蛋白質合成は、アミノ酸であるメチオニンをコ−ドするmRNAのコドンAUGから開始するので、とりわけ発現用宿主が大腸菌の場合、蛋白質の発現が必要とする蛋白質をさらにアミノ末端にメチオニンが付加した類似体(N−Met 類似体)との分子種の混合物であるかどうか予想できない。
事実、大腸菌のイニシェーション・ファクターIFー3においてアミノ末端にメチオニン残基を持つ分子種と持たない分子種の両者が存在すること〔ホッペ・ザイラーズ・ツァイシュリフト・フュア・フィジオリシェ・ヘミー(Hoppe Seyler'sZ.Physiol.Chem.),354巻,1415頁(1973年)〕や、大腸菌においては、その全蛋白のアミノ末端が主としてメチオニンであること(コーン・スタンプ,アウトラインズ・オブ・バイオケミストリー(Outlines of Biochemistry)4版,ジョン・ウィリー・アンド・サンズ,1976年)などが知られている。組換えDNA技術を用いて製造された蛋白としては、アミノ末端へのメチオニン残基の付加率がヒト成長ホルモンにおいて約100%〔ネイチャー(Nature),293巻,408頁(1981年)〕にも達する例が知られている。遺伝子工学技術によると、必要とする蛋白質に比べそのMet類似体が高比率に産生するという問題が知られている。ネイチャ−(Nature),293巻, 408頁(1981年)においては、ヒト成長ホルモンの製造において、実際に必要とする蛋白質に比べてそのMet類似体が多量に得られるということを示している。必要とする蛋白質とそのN−Met類似体とが混合物として産生する場合、二つの分子種の物理化学的性状における相違は、あるとしても非常に小さいものであるため、相互に分離することは、極めて困難なことである。
メチオニン残基は分子量約131で、中程度に疎水性を有し、かつ解離基を持たないため電気的に中性のアミノ酸残基である。従って蛋白質のようなそれ自体多数の解離基や疎水性基および親水性基を有する巨大分子〔例えば133個のアミノ酸残基からなるインタ−ロイキン−2ポリペプチド(I;但しXは水素原子)の分子量は約15,420である〕のアミノ末端にメチオニン残基が1残基付加しても蛋白質全体の物理化学的性質には通常大きな影響を及ぼさないと予想され、アミノ末端にメチオニン残基が付加した分子種と付加していない分子種とを相互に分離することはきわめて困難であると考えられる。この難しい問題は、多くの蛋白質において存在し、とりわけ発現用の宿主として大腸菌を用いて発現する蛋白質、特に遺伝子工学技術により製造されるインタ−ロイキン−2やインタ−フェロンを、これらのN−Met類似体から分離する場合において、厳しいものがある。インターロイキンー2は、マイトーゲンや抗原によって活性化されたT細胞によって産生されるリンホカインの1つであり、細胞障害性T細胞やナチュラルキラー細胞の増殖および分化に必須の因子であってこれらの細胞を介した免疫反応系において重要な働きをしている。また、インターフェロン−αは、ウイルスや核酸によって活性化された白血球によって産生されるリンホカインの1つであり、細胞に作用してその細胞を抗ウイルス状態にするという生物活性をもち、感染防禦系や腫瘍免疫系において重要な働きをしている。インターロイキンー2やインターフェロン−αはその生物活性から各種免疫不全症,感染症,悪性腫瘍などの治療薬として効果的に使用し得ることが期待されている。現在までにヒト末梢血リンパ球やヒトT細胞白血病株(JURKAT株)の培養上清から単離された天然型のインターロイキンー2は、分子量的に異なる幾つかの分子種から成るが、いずれもそのポリペプトド鎖に関しては互いにきわめて良く似ており、アミノ末端は例外なくアラニン残基から始まることが知られている〔特願昭59ー149248号(昭和59年7月19日出願)明細書(EPC公開第0132359号公報に対応する);プロシージング・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Pro.Natl.Acad.Sci.USA), 81巻, 2543頁(1984年)〕。
一方、現在までにヒト白血球の培養上清から単離された天然型のインターフェロン−αは、10数種のサブタイプからなるが、いずれもそのポリペプチド鎖に関しては、互いにきわめて良く似ており、アミノ末端は例外なくシスティン残基から始まることが知られている〔アチーフ・フュア・ビオヘミー・ウンド・ビオフィジッシェ(Arch.Biochem.Biophys.),221巻,1頁(1983年)〕。本発明者らは、ヒトリンパ球のインターロイキンー2遺伝子を組換えDNA技術を用いて大腸菌内で発現させることにより非グリコシル化ヒトインターロイキンー2を製造することに成功した〔特願昭58ー225079号(昭和58年11月28日出願)明細書参照;EPC公開第0145390号公報に対応する〕。該インターロイキンー2は〔図1〕に示すアミノ酸配列(該図中、Xは水素原子またはメチオニン残基を示す)からなるポリペプチド(I)を含有するものであり、アミノ末端アミノ酸としてヒト天然型と同じくアラニン残基から始まる分子種(すなわち、Xは水素原子)とともに、アミノ末端にメチオニン残基の付加したメチオニル−アラニン残基から始まる分子種(すなわち、Xはメチオニン残基)を有する。また、すでに報告されているように〔ジャーナル・オブ・インターフェロン・リサーチ(J.Interferon Res.),第1巻,381頁(1981年); ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.),第256巻,9750頁(1981年)〕、例えば、組換えDNA技術を用いて大腸菌内で発現させたインターフェロン−αAは〔図2〕に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドを含有する。アミノ末端アミノ酸としては、ヒト天然型と同じくシスティン残基から始まる分子種(すなわち、Xは水素原子)とともに、アミノ末端にメチオニン残基の付加したメチオニル−システィン残基から始まる分子種(すなわち、Xはメチオニン残基)を有する。
概要
蛋白質および該蛋白質にメチオニン残基が付加し蛋白質とを相互に分離する方法の提供。
蛋白質および該蛋白質にメチオニン残基が付加し、該蛋白質と同様の生理活性を有する蛋白質の混合物を等電点の差異に基づく分離手段に付すことにより、蛋白質と該蛋白質にメチオニン残基が付加した蛋白質とを相互に分離できる。
目的
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 1件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
蛋白質および該蛋白質にメチオニン残基が付加し、該蛋白質と同様の生理活性を有する蛋白質の混合物を等電点の差異に基づく分離手段に付すことを特徴とする蛋白質と該蛋白質にメチオニン残基が付加した蛋白質との相互分離方法。
請求項2
分離工程が(i)電場の中で蛋白質の混合物を泳動させる方法、または(ii)荷電担体に付加した蛋白質の混合物を、pH勾配または塩濃度勾配を作成して等電点の差異をもたらす荷電の相異に従って担体から順に脱離して溶出させる方法である請求項1記載の分離方法。
請求項3
請求項4
荷電担体に付加した蛋白質の混合物を荷電の相異に従って担体から順に脱離して溶出させる方法が、クロマトホ−カシング法,ファ−スト・プロテイン・リキッド・クロマトグラフ法,ジエチルアミノエチル−イオン交換カラムクロマトグラフ法,カルボキシメチル−イオン交換カラムクロマトグラフ法またはスルホプロピル−イオン交換カラムクロマトグラフ法である請求項2記載の分離方法。
請求項5
メチオニン残基が付加した蛋白質が、アミノ末端に付加したメチオニン残基を有する蛋白質である請求項1記載の分離方法。
請求項6
付加したメチオニン残基が、蛋白質のアミノ末端のみである請求項5記載の分離方法。
請求項7
蛋白質および該蛋白質にメチオニン残基が付加した蛋白質が、遺伝子工学技術で製造された蛋白質である請求項1記載の分離方法。
請求項8
請求項9
蛋白質の分子量が約3,000〜50,000である請求項1記載の分離方法。
請求項10
分子量が5,000〜30,000である請求項9記載の分離方法。
請求項11
蛋白質が30〜500のアミノ酸からなる蛋白質である請求項1記載の分離方法。
請求項12
50〜300のアミノ酸からなる蛋白質である請求項11記載の分離方法。
請求項13
蛋白質と該蛋白質にメチオニン残基が付加した蛋白質の等電点が約4〜11である請求項1記載の分離方法。
請求項14
蛋白質と該蛋白質にメチオニン残基が付加した蛋白質の等電点が約5〜8である請求項1記載の分離方法。
請求項15
蛋白質と該蛋白質にメチオニン残基が付加した蛋白質との等電点の差が約0.01以上である請求項1記載の分離方法。
請求項16
蛋白質と該蛋白質にメチオニン残基が付加した蛋白質との等電点の差が約0.1以上である請求項1記載の分離方法。
請求項17
蛋白質と該蛋白質にメチオニン残基が付加した蛋白質との等電点の差が約0.01〜0.2である請求項1記載の分離方法。
請求項18
蛋白質と該蛋白質にメチオニン残基を有する蛋白質が非グリコシル化蛋白質である請求項1記載の分離方法。
請求項19
蛋白質がサイトカインである請求項1記載の分離方法。
請求項20
請求項21
インタ−フェロンがインタ−フェロン−αである請求項20記載の分離方法。
請求項22
請求項23
蛋白質と該蛋白質にメチオニン残基が付加した蛋白質の混合物の純度が約50%以上である請求項1記載の分離方法。
請求項24
蛋白質と該蛋白質にメチオニン残基が付加した蛋白質の混合物の純度が約99%以上である請求項1記載の分離方法。
請求項25
非グリコシル化インタ−フェロン−αAとそのアミノ末端にさらにメチオニン残基を有する非グリコシル化インタ−フェロン−αAとの混合物を、ファ−スト・プロテイン・リキッド・クロマトグラフ法に付し、非グリコシル化インタ−フェロン−αAとそのアミノ末端にさらにメチオニン残基を有する非グリコシル化インタ−フェロン−αAとを相互に分離する請求項1記載の分離方法。
請求項26
非グリコシル化インタ−フェロン−αAが図2(但しXは水素原子を示す)で表わされる非グリコシル化インタ−フェロン−αAである請求項25記載の分離方法。
技術分野
(i)形質転換体の培養:形質転換体E.coli DH1/pTF4〔特願昭58−225079号(昭和58年11月28日出願)明細書参照;該出願は特開昭60−115528号公報に対応する〕を250ml容三角フラスコ内のバクト・トリプトン(デイフコ・ラボラトリーズ,アメリカ)1%,バクト・イーストエキス(デイフコ・ラボラトリーズ,アメリカ)0.5%,食塩0.5%およびテトラサイクリン7μg/mlを含む液体培地(pH7.0)50mlに接種して37℃で1晩回転振盪培養した。この培養液をカザミノ酸0.5%,グルコース0.5%およびテトラサイクリン7μg/mlを含むM9培地2.5Lの入った5L容ジャーファーメンターに移し37℃で4時間、ついで3−βインドリルアクリル酸(25μg/ml)を添加して、さらに4時間通気撹拌培養して培養液2.5Lを得た。この培養液を遠心分離し、菌体を集め、−80℃で凍結して保存した。
背景技術
0002
サイトカインやペプチドホルモンなど種々の生理活性蛋白質の存在が明らかにされ、また近年の遺伝子工学技術の進歩は、これら生理活性蛋白質の大量生産、臨床への適用の途を開きつつある。このような技術は、すでにインターフェロン,インターロイキン,B細胞増殖因子(BGF),B細胞分化因子(BDF),マクロファージ活性化因子(MAF),リンホトキシン(LT),腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカイン;トランスホーミンググロースファクター(TGF−α);エリスロポエチン,上皮細胞増殖因子,インスリン,ヒト成長ホルモンなどペプチド蛋白質ホルモン;B型肝炎ウイルス抗原,インフルエンザ抗原,口蹄疫ウイルス抗原,マラリア原虫抗原などのワクチンの開発に有用な病原性微生物抗原蛋白質;ペプチダーゼ(例、ティシュプラスミノーゲンアクチベーター,ウロキナーゼ,セラチオペプチダーゼなど)やリゾチームなどの酵素;ヒト血清アルブミン(HSA)などの血中蛋白成分など各種生理活性蛋白質の製造に応用されている。
0003
しかし、これらの蛋白質は遺伝子工学手法により製造されるため、しばしば混合物中の他の物質から、最終的に必要な生産物を分離せねばならないという問題が生じている。特に問題になるのは、必要な蛋白質をコ−ドする遺伝子の発現により産生する遺伝子産物が、しばしば必要な蛋白質とそのアミノ末端にメチオニンが付加した第二番目の蛋白質との混合物であることである。付加されたメチオニン(Met)は、所望の遺伝子の発現の開始を指示する翻訳開始コドンATGの発現と、発現産物から付加したMet基を除く宿主細胞の発現系の不首尾に由来するものである。この問題は、原核性宿主および真核性宿主の両者で生ずるが、とりわけ原核性宿主における遺伝子の発現においてしばしば生ずる。発現用宿主として大腸菌を用いた発現系において特に問題となる。真核細胞および原核細胞の両者における蛋白質合成は、アミノ酸であるメチオニンをコ−ドするmRNAのコドンAUGから開始するので、とりわけ発現用宿主が大腸菌の場合、蛋白質の発現が必要とする蛋白質をさらにアミノ末端にメチオニンが付加した類似体(N−Met 類似体)との分子種の混合物であるかどうか予想できない。
0004
事実、大腸菌のイニシェーション・ファクターIFー3においてアミノ末端にメチオニン残基を持つ分子種と持たない分子種の両者が存在すること〔ホッペ・ザイラーズ・ツァイシュリフト・フュア・フィジオリシェ・ヘミー(Hoppe Seyler'sZ.Physiol.Chem.),354巻,1415頁(1973年)〕や、大腸菌においては、その全蛋白のアミノ末端が主としてメチオニンであること(コーン・スタンプ,アウトラインズ・オブ・バイオケミストリー(Outlines of Biochemistry)4版,ジョン・ウィリー・アンド・サンズ,1976年)などが知られている。組換えDNA技術を用いて製造された蛋白としては、アミノ末端へのメチオニン残基の付加率がヒト成長ホルモンにおいて約100%〔ネイチャー(Nature),293巻,408頁(1981年)〕にも達する例が知られている。遺伝子工学技術によると、必要とする蛋白質に比べそのMet類似体が高比率に産生するという問題が知られている。ネイチャ−(Nature),293巻, 408頁(1981年)においては、ヒト成長ホルモンの製造において、実際に必要とする蛋白質に比べてそのMet類似体が多量に得られるということを示している。必要とする蛋白質とそのN−Met類似体とが混合物として産生する場合、二つの分子種の物理化学的性状における相違は、あるとしても非常に小さいものであるため、相互に分離することは、極めて困難なことである。
0005
メチオニン残基は分子量約131で、中程度に疎水性を有し、かつ解離基を持たないため電気的に中性のアミノ酸残基である。従って蛋白質のようなそれ自体多数の解離基や疎水性基および親水性基を有する巨大分子〔例えば133個のアミノ酸残基からなるインタ−ロイキン−2ポリペプチド(I;但しXは水素原子)の分子量は約15,420である〕のアミノ末端にメチオニン残基が1残基付加しても蛋白質全体の物理化学的性質には通常大きな影響を及ぼさないと予想され、アミノ末端にメチオニン残基が付加した分子種と付加していない分子種とを相互に分離することはきわめて困難であると考えられる。この難しい問題は、多くの蛋白質において存在し、とりわけ発現用の宿主として大腸菌を用いて発現する蛋白質、特に遺伝子工学技術により製造されるインタ−ロイキン−2やインタ−フェロンを、これらのN−Met類似体から分離する場合において、厳しいものがある。インターロイキンー2は、マイトーゲンや抗原によって活性化されたT細胞によって産生されるリンホカインの1つであり、細胞障害性T細胞やナチュラルキラー細胞の増殖および分化に必須の因子であってこれらの細胞を介した免疫反応系において重要な働きをしている。また、インターフェロン−αは、ウイルスや核酸によって活性化された白血球によって産生されるリンホカインの1つであり、細胞に作用してその細胞を抗ウイルス状態にするという生物活性をもち、感染防禦系や腫瘍免疫系において重要な働きをしている。インターロイキンー2やインターフェロン−αはその生物活性から各種免疫不全症,感染症,悪性腫瘍などの治療薬として効果的に使用し得ることが期待されている。現在までにヒト末梢血リンパ球やヒトT細胞白血病株(JURKAT株)の培養上清から単離された天然型のインターロイキンー2は、分子量的に異なる幾つかの分子種から成るが、いずれもそのポリペプトド鎖に関しては互いにきわめて良く似ており、アミノ末端は例外なくアラニン残基から始まることが知られている〔特願昭59ー149248号(昭和59年7月19日出願)明細書(EPC公開第0132359号公報に対応する);プロシージング・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Pro.Natl.Acad.Sci.USA), 81巻, 2543頁(1984年)〕。
発明が解決しようとする課題
0006
一方、現在までにヒト白血球の培養上清から単離された天然型のインターフェロン−αは、10数種のサブタイプからなるが、いずれもそのポリペプチド鎖に関しては、互いにきわめて良く似ており、アミノ末端は例外なくシスティン残基から始まることが知られている〔アチーフ・フュア・ビオヘミー・ウンド・ビオフィジッシェ(Arch.Biochem.Biophys.),221巻,1頁(1983年)〕。本発明者らは、ヒトリンパ球のインターロイキンー2遺伝子を組換えDNA技術を用いて大腸菌内で発現させることにより非グリコシル化ヒトインターロイキンー2を製造することに成功した〔特願昭58ー225079号(昭和58年11月28日出願)明細書参照;EPC公開第0145390号公報に対応する〕。該インターロイキンー2は〔図1〕に示すアミノ酸配列(該図中、Xは水素原子またはメチオニン残基を示す)からなるポリペプチド(I)を含有するものであり、アミノ末端アミノ酸としてヒト天然型と同じくアラニン残基から始まる分子種(すなわち、Xは水素原子)とともに、アミノ末端にメチオニン残基の付加したメチオニル−アラニン残基から始まる分子種(すなわち、Xはメチオニン残基)を有する。また、すでに報告されているように〔ジャーナル・オブ・インターフェロン・リサーチ(J.Interferon Res.),第1巻,381頁(1981年); ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.),第256巻,9750頁(1981年)〕、例えば、組換えDNA技術を用いて大腸菌内で発現させたインターフェロン−αAは〔図2〕に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドを含有する。アミノ末端アミノ酸としては、ヒト天然型と同じくシスティン残基から始まる分子種(すなわち、Xは水素原子)とともに、アミノ末端にメチオニン残基の付加したメチオニル−システィン残基から始まる分子種(すなわち、Xはメチオニン残基)を有する。
課題を解決するための手段
0007
同じ蛋白質であってもアミノ末端にメチオニン残基の付加した分子種とそうでない分子種とは蛋白質の高次構造が相互に異なる可能性があり、両者の間でin vivoおよびin vitroでの生物活性や生物学的安定性に差のある可能性もある。また、メチオニン残基のアミノ末端への付加が抗原性の増加あるいは減少をもたらす可能性もあり得よう。従って、生理学上および産業利用上の観点からアミノ末端にメチオニン残基の付加した分子種とそうでない分子種とを分離して両者をそれぞれ実質的に純粋な形で取り出すことはきわめて意義のあることである。アミノ末端へのメチオニン残基の付加率は、培養条件や蛋白質の発現レベルによって左右される可能性がある〔ジャーナル・オブ・インターフェロン・リサーチ(J.Interferon Res.),1巻,381頁(1981年)〕が、メチオニン残基の付加率を制御し得た例は今までのところ報告されていない。さらに蛋白質の精製過程においてもアミノ末端にメチオニン残基が付加した分子種と付加していない分子種とを相互に分離した例は今までのところ全く報告されていない。本発明者らは(a)インターロイキン−2とさらにそのアミノ末端にメチオニン残基を有するインターロイキン−2および(b)インターフェロン−αAとさらにそのアミノ末端にメチオニン残基を有するインターフェロン−αAとの相互分離法として、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度の差を利用する方法,透析法,限外ろ過法,ゲルろ過法およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、抗体との特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフイーなどの疎水性の差を利用する方法などを試みたが、それらを相互に分離することは全く出来なかった。
0008
本発明者らは、蛋白質とそのアミノ末端にさらにメチオニン残基を有する蛋白質(N−Met類似体)とを相互に分離することを目的として鋭意研究を行った結果、 それらが意外にも相互に異なる等電点を有する事実を発見した。メチオニンは電気的に中性のアミノ酸であるため蛋白質のアミノ末端に付加してもその蛋白質全体の電荷には全く影響を及ぼさないと考えられ、従ってインターロイキンー2のような蛋白質とそのアミノ末端にさらにメチオニン残基を有する蛋白質とが異なる等電点を有することは全く予想外の発見であった。この発見に基づき、蛋白質および該蛋白質にメチオニン残基が付加し、該蛋白質と同様の生理活性を有する蛋白質(Met−蛋白質)の混合物を等電点の差異に基づく分離手段に付すことにより蛋白質と該蛋白質にメチオニンが付加した蛋白質(Met−蛋白質)とを相互分離できることを見いだした。
0009
すなわち、本発明は、蛋白質および該蛋白質にメチオニン残基が付加し、該蛋白質と同様の生理活性を有する蛋白質の混合物を等電点の差異に基づく分離手段に付すことを特徴とする蛋白質と該蛋白質にメチオニン残基が付加した蛋白質との相互分離方法を提供するものである。
0010
本願明細書において「蛋白質」とは、糖鎖を有するものもしくは有さないもののいずれをも含み、また、例えば化学反応もしくは酵素反応により、化学的または構造的に修飾されたポリペプチドを包含する、アミノ酸の1次構造からなる高分子物質を意味する。また「Met−蛋白質」とは、上記「蛋白質」にさらにメチオニン基が付加したものを意味する。本発明は、とりわけ、所望の蛋白質およびそれと同一もしくは同様の生理活性を有するMet−蛋白質に係るものである。本発明における好ましいMet−蛋白質は、所望の蛋白質の生理活性を奏するに十分な、該蛋白質とのアミノ酸配列上の類似性を有するものである。本発明は、所望の蛋白質のそのアミノ末端にさらにメチオニン残基を付加した蛋白質(N−Met類似体)を包含するMet−蛋白質から蛋白質を分離する方法による生産物に関するものである。とりわけ、本発明は、そのN−Met類似体を実質的に含有しないインタ−ロイキン−2蛋白質の分離、およびそのN−Met類似体を実質的に含有しないインタ−フェロン−αの分離に関するものである。
0011
本願明細書において「生理活性」とは、生理学的および免疫学的活性および効果を含むインビボもしくはインビトロで生存していてもいなくてもよい細胞,細胞の一部,細胞もしくは他の生理学的作用に基づく生産物および生物学的物質を含む生体および(または)生理物質への活性または効果を意味する。上記蛋白質およびそれにメチオニン残基が付加した蛋白質(Met−蛋白質)の混合物は、通常遺伝子組換え技術で製造でき、通常大腸菌,枯草菌,酵母,動物細胞を用いて発現させることにより製造できる。上記蛋白質としては、各種生理活性蛋白質が挙げられ、例えば、インターフェロン(IFN;例、IFN−α,IFN−β,IFN−γなど),インターロイキン(例、インターロイキン−1,インターロイキン−2など),B細胞増殖因子(BGF),B細胞分化因子(BDF),マクロファージ活性化因子(MAF),リンホトキシン(LT),腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカイン;トランスホーミンググロースファクター(TGF−α);エリスロポエチン,上皮細胞増殖因子,インスリン,ヒト成長ホルモンなどペプチド蛋白質ホルモン;B型肝炎ウイルス抗原,インフルエンザ抗原,口蹄疫ウイルス抗原,マラリア原虫抗原などの病原性微生物抗原蛋白質;ペプチダーゼ(例、ティシュプラスミノーゲンアクチベーター,ウロキナーゼ,セラチオペプチダーゼなど)やリゾチームなどの酵素;ヒト血清アルブミン(HSA)などの血中蛋白成分が挙げられる。これら蛋白質の中でも、分子量約3,000〜50,000、とりわけ約5,000〜30,000のもの、 またアミノ酸数として約30〜500、 とりわけ約50〜300のものに対して、 本発明の蛋白質の相互分離方法は有利に適用ができる。
0012
また蛋白質の等電点が約4〜11とりわけ、 約5〜8のものにおいて、有利に相互分離を行うことができ、また蛋白質と該蛋白質にメチオニン残基を有する蛋白質との等電点の差が、約0.01以上、好ましくは約0.1以上とりわけ0.01〜0.2程度あることが好ましい。とりわけ、遺伝子組換え技術で製造されたインターロイキン−2やインターフェロン−αに対して、有利に本発明の相互分離方法が適用できる。ここでインターロイキン−2とは天然のヒトインターロイキン−2と同様の生物学的もしくは免疫学的活性例えばインターロイキン−2レセプターや抗インターロイキン−2抗体との結合能、を有するものであればいずれでもよく、具体的には〔図1〕で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド(I;但しXは水素原子)や、その生物学的もしくは免疫学的活性に必要な一部分のアミノ酸配列からなるフラグメントでもよく、例えばポリペプチド(I)のアミノ末端から1個のアミノ酸(EPC公開91539号公報)または4個のアミノ酸を欠くフラグメント(特願昭58−235638号,昭和58年12月13日出願,明細書参照、特開昭60−126088号公報に対応)やカルボキシル末端部分の数個のアミノ酸を欠くフラグメントなどが挙げられ、さらに上記ポリペプチド(I)の構成アミノ酸の一部が欠損しているか他のアミノ酸に置換されたもの、例えば125位のシステイン残基がセリン残基に置換されたもの(特開昭59−93093号公報)でもよい。これらのポリペプチドは、非グリコシル化ポリペプチドであることが好ましく、とりわけ〔図1〕に示すアミノ酸配列を有するIL−2が好ましい。以下の本願明細書においては、これらのインターロイキン−2をIL−2と略記し、それらのアミノ末端にさらにメチオニン残基を有するインターロイキン−2をMet−IL−2と略記することがある。
0013
ここでインターフェロン−αとは天然のヒトインターフェロン−αと同様の生物学的もしくは免疫学的活性例えばインターフェロンαレセプターや抗インターフェロンα抗体との結合能を有するものであればいずれでもよく、例えば〔図2〕で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド(II;但しXは水素原子)が挙げられる。さらにインターフェロン−αの生物学的もしくは免疫学的活性に必要な一部分のアミノ酸配列からなるフラグメントでもよく、たとえばポリペプチド(II)のアミノ末端部分の数個のアミノ酸を欠くフラグメントやカルボキシル末端部分の数個のアミノ酸を欠くフラグメントなどが挙げられ、さらに上記ポリペプチド(II)の構成アミノ酸の一部が欠損しているか他のアミノ酸に置換されたものでもよい。とりわけインターフェロン−αAが好ましい。これらのポリペプチドは非グリコシル化ポリペプチドであることが好ましい。以下の本願明細書においては、これらのインターフェロン−αAをIFN−αAと略記し、IFN−αAのアミノ末端にメチオニン残基を有するIFN−αAをMet−IFN−αAと略記することがある。上記蛋白質とそのアミノ末端にさらにメチオニン残基を有する蛋白質の混合物としては、混合蛋白質として50%以上、好ましくは80%以上、とりわけ99%以上の純度を有するものが用いられる。
0014
本発明においては、上記混合物を等電点の差異に基づく分離手段に付すことによりこれらを相互分離することができる。なお、実施例1記載の方法によれば、IL−2およびMet−IL−2の等電点はそれぞれ7.7および7.5と算出された。また、実施例6記載の方法によれば、IFN−αAおよびMet−IFN−αAの等電点は、それぞれ6.2および6.3と算出された。本発明における等電点の差異に基づく分離手段としては、等電点の差が0.01〜0.2程度である蛋白質を相互に分離する方法であればどんなものでも適用でき、たとえばアンホラインを利用する密度勾配等電点電気泳動法,ゲル等電点電気泳動法,等速度電気泳動法などの電場の中で蛋白質を泳動させる方法やクロマトホーカシング法,FPLC法(Fast Protein Liquid Chromatography),DEAE(diethylaminoethyl)−,CM(carboxymethyl)−またはSP(スルホプロピル)−イオン交換カラムクロマトグラフ法などの、溶出カラム等の荷電担体に付加した蛋白質を、pH勾配または塩濃度勾配を作成して等電点の差異をもたらす荷電の相異に従って担体から蛋白質を順に脱離して溶出させる方法など自体公知の方法やこれらを組合せた方法などが挙げられる。これらの分離法に用いられる試薬および器具類はいずれも市販されているものであり容易に入手可能である。たとえばアンホラインはLKB社(スエ−デン)から、ゲル等電点分離法に用いるゲルはセファデックスIEFとしてファルマシア社から、またPAG(ポリアクリルアミドゲル)プレートとしてLKB社から、クロマトホーカシング法の担体および溶出緩衝液はポリバッファー交換体PBE94,同PBE 118やポリバッファー74,ポリバッファー96としてファルマシア社(スエ−デン)から、FPLC法に用いるたとえばモノPカラムやモノQカラムおよび溶出用緩衝液はファルマシア社から、DEAE−イオン交換体はDEAE−トヨパールとして東洋曹達工業(株)から、CM−イオン交換体はCM−トヨパールとして東洋曹達工業(株)から、SPイオン交換体はSP−5PWとして東洋曹達工業(株)からあるいはSP−セファデックスとしてファルマシア社から入手できる。〔メソッズ・イン・エンザイモロジ−(Methodsin Enzymology, 第5巻,3−27頁(1962年)〕。
0015
市販のたとえばPAGプレート(245×110×1mm,LKB社製)を用いるゲル等電点電気泳動分離法ではPAGプレートとしてpH3.5.−9.5用プレート,pH5.5−8.5用プレートなどを、陽極液として1Mリン酸,0.4MHEPES緩衝液などを、陰極液として1M水酸化ナトリウム,0.1M水酸化ナトリウムなどを使用する。通常プレート1枚あたり10〜1000μgの蛋白質をのせて、電力は1〜200W,好ましくは10〜50Wで、温度は0〜20℃,好ましくは2〜5℃で泳動を行う。泳動時間は0.5〜50時間,通常は1.5〜5時間である。また市販のたとえばモノPカラム(0.5×20cm,ファルマシア社製)を用いるFPLC法では平衡化緩衝液として、たとえば0.025Mジエタノールアミン−塩酸緩衝液(pH9.5),0.075Mトリスー酢酸緩衝液(pH9.3)などを用い、溶出緩衝液として1%(v/v)ファルマライト(8−10.5)−5.2%(v/v)ポリバッファー96−塩酸緩衝液(pH7.0〜 8.0),10%(v/v)ポリバッファー96−塩酸緩衝液(pH6.0〜7.0)および10%(v/v)ポリバッファー96−酢酸緩衝液(pH6.0〜7.0)などを用いる。通常、0.1〜 10mgの蛋白質をのせて、1〜50ml/hの、好ましくは10〜30ml/hの流速でFPLCを行う。
0016
クロマトホーカシング法ではゲルとして市販のPBE118およびPBE94(ファルマシア社製)などを用い、平衡化緩衝液として0.025Mトリエチルアミン−塩酸緩衝液(pH11.0),0.025Mジエタノールアミン−塩酸緩衝液(pH9.4)および0.025Mジエタノールアミン−酢酸緩衝液(pH9.4)などを、溶出緩衝液として2.2%(v/v)ファルマライト(8−10.5)−塩酸緩衝液(pH7.0〜8.0), 10%(v/v)ポリバッファー96−塩酸緩衝液(pH7.0〜8.0)および10%(v/v)ポリバッファー96−酢酸緩衝液(pH6.0〜7.0)などを用いる。カラムのベッド容積としては蛋白質1gあたり0.01〜0.1,好ましくは100〜1000mlのものを用い、流速はSV=0.01〜10,好ましくはSV=0.1〜1.0でクロマトフォーカシングを行う。カラム温度は0〜30℃,好ましくは2〜5℃に保つのがよい。本発明の分離法によれば、蛋白質とそれにメチオニン残基を付加した蛋白質(Met−蛋白質)はその等電点の差異に従って、電場中で泳動するかもしくはpH勾配をつけたカラム中の担体から順に脱離して溶出されるかして互いに分離される。特にpH勾配や塩濃度勾配をつけずに、イオン交換体を用いるイソクラチック溶出法を適用しても分離しうる。所望により上記の方法に従って分離した蛋白質のみを含む画分およびそれにさらにメチオニン残基が付加した蛋白質を含む画分から実質的に純粋な蛋白質およびそれにさらにメチオニン残基が付加した蛋白質(Met−蛋白質)をそれぞれ採取することができる。この目的のためには、自体公知の塩折法,疎水クロマトグラフ法,ゲルろ過法,イオン交換クロマトグラフ法や高速液体クロマトグラフ法などの蛋白質の精製に一般的に用いられる方法を適宜組み合わせて用いればよい。
0017
本発明は、遺伝子工学技術で製造した蛋白質を、そのN−Met類似体など対応するMet−蛋白質を実質的に含まないよう分離することを初めて可能ならしめたものである。本発明により製造される蛋白質は、対応するMet−蛋白質を重量比で3%以下、好ましくは2%以下、とりわけ1以下しか含まないのである。同様に、本発明は遺伝子工学技術で製造した Met−蛋白質を、その対応する蛋白質を実質的に含まないよう分離することを初めて可能ならしめたものである。本発明により製造される Met−蛋白質は、対応する蛋白質を重量比で3%以下、好ましくは2%以下、とりわけ1%以下しか含まないものである。
0018
これまでMet−IL−2およびMet−IFN−αAを蛋白質として分離したとの報告はなく、本発明ははじめて高度に精製されたMet−IL−2蛋白質およびMet−IFN−αA蛋白質をも提供するものである。本発明により製造される蛋白質およびそれにメチオニン残基が付加した蛋白質(Met−蛋白質)は、いずれも天然の対応する蛋白質と同様の生物学的もしくは免疫学的活性を有し、高純度に精製されており夾雑蛋白質、発熱物質がきわめて少ないので注射剤原体等として安全に使用される。本発明により得られるIL−2およびMet−IL−2はいずれも正常なT細胞やナチュラルキラー細胞をその機能を保持させたまま増殖させる活性を有する。したがって、本発明により得られるIL−2およびMet−IL−2は、それぞれT細胞やナチュラルキラー細胞をインビトロで長期にわたり増殖,継代したりクローン化するのに使用できる。なお、この性質を利用してヒトIL−2の活性を測定することができる。
0019
さらに、本発明により得られるIL−2およびMet−IL−2は、たとえば腫瘍抗原を認識し、破壊する抗原特異的なキラーT細胞や抗原感作の経験の有無と無関係に腫瘍を殺す能力をもつところのナチュラルキラー細胞をインビトロで選択的に増殖させることができ、またこのキラーT細胞を生体へ移入する際に、本発明により得られるILー2またはMet−IL−2を同時に接種することにより、その抗腫瘍効果を増大させることから、温血動物(例、マウス,ラット,ウサギ,犬,ネコ,ブタ,ウマ,ヒツジ,ウシ,人など)の腫瘍の予防,治療や免疫機能低下疾患の治療のために用いることができる。本発明により得られるIL−2およびMet−IL−2はそれぞれ夾雑蛋白質による抗原性がなく低毒性である。本発明により得られるIL−2またはMet−IL−2を腫瘍の予防,治療剤として用いるには、当該物質を自体公知の担体と混合希釈して、たとえば注射剤,カプセル剤などとして非経口的にまたは経口的に投与することができる。さらに、前述したようにインビトロで増殖させたキラーT細胞やナチュラルキラー細胞と共にまたは単独で使用することができる。本発明のIL−2およびMet−IL−2は、公知の天然から分離されたヒトIL−2と実質的に同じ生物活性を有するのでこれと同様に使用することができ、細胞のIL−2受容体との解離定数がきわめて小さいことから、極く小量の投与で良い。T細胞をインビトロで増殖させる目的に使用するためには、本発明のIL−2またはMet−IL−2を約0.01〜1ユニット/ml、好ましくは約0.1〜0.5ユニット/mlの濃度で培地に添加して用いることができる。インタ−ロイキン−2の生物活性の測定は、インタ−ロイキン−2依存性細胞を用いる方法〔バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサ−チ・コミュニケ−ションズ(Biochem. Biophys. Res. Commun.),109巻,363頁(1982年)〕により行なうことができる。
0020
T細胞をインビトロで増殖させる目的に使用する具体例としては、たとえば、20%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培地にヒト末梢血より分離したT細胞(1×106個/ml)およびX線(1500ラッド)照射したB細胞トランスフォーマント(1×106個/ml)を加えて37℃,5% CO2存在下で3日間リンパ球混合培養を行なって得られるアロ抗原感作T細胞を含む細胞浮遊液に本発明のIL−2またはMet−IL−2を0.1〜0.5ユニット/mlの濃度で加え約一週間ごとに培地交換しながら約1か月間培養を続ける方法などが挙げられる。本発明により得られるIFN−αAおよびMet−IFN−αAはいずれも細胞に作用してその細胞を抗ウイルス状態にする活性を有する。なお、この性質を利用してヒトIFN−αAの活性を測定することができる。さらに、本発明により得られるIFN−αAおよびMet−IFN−αAは、抗ウイルス作用だけでなく、細胞増殖抑制作用,抗体産生抑制作用,ナチュラルキラー活性の増強作用などを併せもっている。本発明により得られるIFN−αAおよびMet−IFN−αAはそれぞれ夾雑蛋白質による抗原性がなく低毒性である。本発明により得られるIFN−αAまたはMet−IFN−αAを治療剤として用いるには、当該物質を自体公知の担体と混合希釈して、たとえば、注射剤,カプセル剤などとして非経口的にまたは経口的に投与することができる。投与量は1日当たり1×106〜1×108ユニット,好ましくは5×107〜6×107ユニットである。
0021
本願明細書,請求の範囲および図面において、アミノ酸を略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を次に挙げる。また、アミノ酸に関し光学異性体がありうる場合は、特に明示しなければL−体を示すものとする。
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
1/2Cys :ハーフシスチン
mCys :カルボキシメチルシスティン
Met :メチオニン
Gly :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニールアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
Asp/Asn : アスパラギン酸/アスパラギン
Glu/Gln : グルタミン酸/グルタミン
0022
以下の実施例および参考例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお参考例に開示した形質転換体、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)DH1/pTF4は財団法人発酵研究所(IFO)にIFO−14299として、また昭和59年4月6日から通商産業省工業技術院微生物工業技術研究所(FRI)にFERM P−7578として寄託され、 該寄託がブタペスト条約に基づく寄託に切換えられて、受託番号FERM BP−628として同研究所に保管されている。また、形質転換体エシェリヒア・コリN4830/pTB285はIFOにIFO−14437として、また昭和60年4月30日からFRIに FERMP−8199として寄託され、該寄託がブタペスト条約に基づく寄託に切換えられて受託番号FERM BP−852として同研究所に保管されている。
0023
実施例1
FPLCによるIL−2とMet−IL−2との分離:参考例1(iv)で得られたIL−2およびMet−IL−2の混合物である非グリコシル化ヒトインターロイキシン−2を含む0.005M酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.0)(蛋白質濃度,1.18mg/ml)5ml(5.9mg)を0.025Mジエタノールアミン−塩酸緩衝液(pH9.4)で平衡化したFPLC用モノPカラム(0.5×20cm,ファルマシア社製)にのせ、ついで1%(v/v)ファルマライト(8−10.5)−5.2%(v/v)ポリバッファー96−塩酸緩衝液(pH8.0)を用いてモノPカラムに吸着したタンパク質を溶出した。なおFPLCは室温下、流速30ml/hで行った。その結果、〔図2〕に示すようにpH8.0で溶出されるピーク1とpH7.9で溶出されるピーク2とに分離された。そこで、これらを分取後、FPLCで用いたポリバッファーを除去するため、トリフルオロ酢酸−アセトニトリル系を溶出溶媒とする高速液体クロマトグラフイーを行った。カラム,ウルトラポアRPSC(1.0×25cm,アルテックス社,アメリカ);カラム温度,30℃;溶出溶媒A,0.1%トリフルオロ酢酸−99.9%水;溶出溶媒B,0.1%トリフルオロ酢酸−99.9%アセトニトリル;溶出プログラム,0分(55%A+45%B)−4分(55%A+45%B)−28分(42%A+58%B)−38分(34%A+66%B)−43分(20%A+80%B)−44分(55%A+45%B);溶出速度3.0ml/min。このクロマトグラフイーによって得られた溶液をそれぞれ凍結乾燥に付し、白色粉末を得た。FPLCにおけるピーク1およびピーク2から得られたものを、それぞれP1およびP2となずけた。P1の収量は1.12mg(19.0%), P2の収量は3.01mg(51.0%)であった。次に得られたP1およびP2について蛋白化学的分析を行った。P1およびP2それぞれ 45μg(3nmol)を用い、気相プロテインシークエンサー(アプライド・バイオシステムズ社製470A型)を用いる自動エンドマン分解法によりP1およびP2のアミノ末端アミノ酸配列を決定した。フェニルチオヒダントインアミノ酸(PTH−アミノ酸)はミクロパックSP−C18カラム(バリアン社製)を用いる高速液体クロマトグラフイーにより同定した。各ステップで検出されたPTH−アミノ酸を〔表1〕に示す。
0024
0025
カルボキシル末端アミノ酸の分析は次のようにして行った。すなわちP1およびP2をヒドラジン分解用ガラス管にとり、無水ヒドラジンを加えて減圧下に封管したのち100℃で6時間加熱した。得られたヒドラジン分解物をベンズアルデヒド処理したのち、遊離アミノ酸を日立製835型アミノ酸分析計により測定した。その結果、P1およびP2ともにスレオニンのみが検出され、回収率はそれぞれ34.8%および34.0%であった。このことからP1およびP2のカルボキシル末端アミノ酸はスレオニンと同定された。アミノ酸組成分析は4%チオグリコール酸を含む定沸点塩酸を加えて減圧下に封管後、110℃で24,48,72時間、加水分解し、日立製835型アミノ酸分析計により実施した。シスチンおよびシステインは過ギ酸酸化したのち、減圧下定沸点塩酸中で24時間加水分解してアミノ酸分析計によりシステイン酸として定量した。アミノ酸分析値は24,48および72時間の加水分解で得られた値を平均して求めた。ただし、セリンおよびスレオニンの値は加水分解時間を0時間に外挿して求めた。その結果を〔表2〕に示す。アミノ末端アミノ酸配列分析およびアミノ酸組成分析の結果から、P1は〔図1〕中X=水素原子で示される分子種(IL−2)を、P2は〔図1〕中X=メチオニン残基で示される分子種(Met−IL−2)をそれぞれ98%および99%以上の純度で含んでいることが確認された。
0026
0027
次にアンフォラインPAGプレート(LKB社製)を用いてP1およびP2の等電点を測定した結果を〔図3〕に示す。原料として用いたIL−2およびMetIL−2の混合物である非グリコシル化ヒトインターロイキン−2は等電点電気泳動では2本のバンドを示すのに対し、本実施例で得られたP1およびP2は、それぞれ互いに泳動距離の異なる1本のバンドとして泳動された。また、泳動後のPAGプレート断片のpHを測定することにより、P1(IL−2)の等電点は7.7、P2(MetIL−2)の等電点は7.5と算出された。さらに、得られたP2に関して以下のようにしてトリプシン消化を行いペプチドマップを得た。すなわち、50μgのP2を含む0.02M炭酸水素ナトリウム溶液(pH8.0)100μlに、1.25μgのTPCK−トリプシン(ワシントン社製,アメリカ)を加えて37℃で28時間反応させた。反応液に1%(v/v)トリフルオロ酢酸400μlを加えて反応を停止させた。得られた消化液について下記の条件下で高速液体クロマトグラフイーを行い〔図4〕に示すマップを得た。
高速液体クロマトグラフ:バリアン社(アメリカ)5040型
カラム:ヌクレオシル5C18(マヘレーナーゲル社製,西ドイツ)
カラム温度:30℃
溶出溶媒:
A液,0.1%トリフルオロ酢酸−99.9%水(v/v)
B液,0.1%トリフルオロ酢酸−99.9%アセトニトリル(v/v)
溶出プログラム:0分(85%A+15%B)−15分(72%A+28%B)-16分(64%A+36%B)−80分(40%A+60%B)−85分(15%A+85%B)
〔直線勾配〕
溶出速度:3.0ml/分
検出法:オルトフタールアルデヒド法〔Anal.,Chem.,第43巻,880頁(1971年)〕によるポストラベル法
0028
実施例2
クロマトホーカシングによるIL−2とMet−IL−2との分離:参考例1(iv)で得られたIL−2およびMet−IL−2の混合物である非グリコシル化ヒトインターロイキンー2を含む0.005M酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.0)(蛋白質濃度,1.09mg/ml)500ml(545mg)を0.025Mジエタノールアミン−塩酸緩衝液(pH9.4)で平衡化したPBE94(ファルマシア社製)カラム(2.7×87cm)にのせ、ついで溶出液として1%(v/v)ファルマライト(8−10.5)−5.2%(v/v)ポリバッファー96−塩酸緩衝液(pH8.0)を用いてクロマトホーカシングを行った。なお、この操作は4℃,流速200ml/hで行った。その結果、〔図5〕に示すように、pH8.5で溶出されるピーク1とpH8.3で溶出されるピーク2とに分離された。実施例1で示した同様の方法でポリバッアーを除去した後のタンパクの収量はピーク1で94.8mg(17.4%),ピーク2で336mg (61.6%)であった。また、アミノ末端アミノ酸分析をダンシル化反応後、塩酸加水分解し、生じたダンシルアミノ酸をミクロパックSPカラムを用いる高速液体クロマトグラフイーで検出する方法で行った結果、ピーク1はIL−2を99.6%以上の純度でピーク2はMet−IL−2を99.5%以上の純度で含んでいることが確認された。
0029
実施例3
DEAE−トヨパールイオン交換クロマトグラフイーによるIL−2とMet−IL−2との分離:参考例1(iv)で得られたIL−2およびMet−IL−2の混合物である非グリコシル化ヒトインターロイキン−2を含む0.005M酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.0)(蛋白質濃度:1.03mg/ml)10ml(10.3mg)に等容の10mMトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)を加えてpHを8.5に調整したのち、10mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)で平衡化したDEAE−トヨパール650M(東洋曹達工業(株)製)カラム(1.0×64cm)にのせ、10mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)1Lと10mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0)1Lを用いるpH勾配法で溶出を行った。なお、この操作は4℃,流速100ml/hで行った。その結果、分離能はFPLCやクロマトフォーカシングに比べて劣っていたが、2つのピーク(ピーク1とピーク2)が検出された。それぞれのピークが重なり合わないように、ピーク1は前半分をピーク2は後半分を分取した。収量はピーク1で0.82mg(8.0%),ピーク2で1.98mg (19.2%)であった。また、ダンシル法によるアミノ末端アミノ酸分析の結果、ピーク1はIL−2を90%以上,ピーク2はMet−IL−2を95%以上含んでいることが確認された。
0030
実施例4
FPLCによるIL−2とMet−IL−2との分離:参考例1(iii)で得られたIL−2およびMet−IL−2を含む非グリコシル化ヒトインターロイキンー2部分精製標品5mlを、0.025Mジエタノールアミンー塩酸緩衝液(pH9.4)で平衡化したFPLC用モノPカラム(0.5×20cm,ファルマシア社製)にのせ、ついで1%(v/v)ファルマライト(8〜10.5)−5.2%(v/v)ポリバッファー96−塩酸緩衝液(pH8.0)を用いてモノPカラムに吸着した蛋白質を溶出した。溶出速度:25ml/h,カラム温度:室温。その結果、IL−2を含む画分(ピーク1)とMet−IL−2を含む画分(ピーク2)とに分離された。ピーク1の活性回収率は25%,ピーク2の活性回収率は54%であった。
0031
実施例5
SP−5PWカラムによるIL−2とMet−IL−2との分離:参考例2で得られたIL−2およびMet−IL−2の混合物である非グリコシル化ヒトインターロイキン−2を含む0.005M酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.0,蛋白質濃度1.03mg/ml)0.5mlを0.025Mリン酸緩衝液(pH7.4)で平衡化した高速液体クロマトグラフィー用SP−5 PWカラム(0.75×7.5cm;東洋曹達社製)にのせ0.025Mリン酸緩衝液(pH7.4)を用いて蛋白質を溶出した。カラム温度は35℃に、緩衝液の流速は0.5ml/minに設定した。クロマトグラフシステムはバリアン社製5500型液体クロマトグラフを用いた。 その結果〔図7〕に示すように、非グリコシル化インターロイキン−2は2つのピーク(ピークAおよびピークB)として溶出された。それぞれのピークを分取し(図中太実線で示す)アミノ末端アミノ酸の分析を行った結果、ピークAはMet−IL−2を、ピークBはIL−2をそれぞれ99.5%以上の純度で含んでいることが確認された。
0032
実施例6
FPLCによるIFN−αAとMet−IFN−αAとの分離:参考例3に記載の方法によって得られたIFN−αAおよびMet−IFN−αAの混合物である非グリコシル化ヒトインターフェロンαAを含む0.12M塩化ナトリウム−0.025M酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.0)(蛋白質濃度,2.96mg/ ml)1.0ml(2.96mg)を0.025Mイミダゾール−塩酸緩衝液(pH6.7)で平衡化したPD−10カラム(1.5×5cm,ファルマシア社製)にのせ脱塩を行った。 このようにして得られた非グリコシル化ヒトインターフェロンαAを含む溶出液(蛋白質濃度,1.58mg/ml)1.5ml(2.37mg)を0.025Mイミダゾール−塩酸緩衝液 (pH6.7)で平衡化したFPLC用モノPカラム(0.5×20cm,ファルマシア社製)にのせ、 ついで10%(V/V)ポリバッファー74−塩酸緩衝液(pH5.5)を用いてモノPカラムに吸着した蛋白質を溶出した。なおFPLCは室温下、流速30ml/hで行った。 その結果、〔図8〕に示すようにpH5.6で溶出されるピークIとpH5.4で溶出されるピークIIとして分離された。そこで、 これらを分取後、 FPLCで用いたポリバッファーを除去するため、トリフルオロ酢酸−アセトニトリル系を溶出溶媒とする高速液体クロマトグラフィーを行った。カラム,ウルトラポアRPSC(1.0×25cm,アルテックス社製);カラム温度,30℃;溶出溶媒A,0.1%トリフルオロ酢酸−99.9%水;溶出溶媒B,0.1%トリフルオロ酢酸−99.9%アセトニトリル;溶出プログラム,0分(60%A+40%B)−45分(45%A+55%B)−46分(60%A+40%B);溶出速度3.0ml/min。このクロマトグラフィーによって得られた溶液をそれぞれ凍結乾燥に付し、白色粉末を得た。 FPLCにおけるピークIおよびピークIIから得られたものを、それぞれPIおよびPIIとなずけた。PIの収量は0.723mg(24.4%),PIIの収量は0.945mg(31.9%)であった。
0033
次に得られたPIおよびPIIについて蛋白化学的分析を行った。PIおよびPIIを還元カルボキシメチル化したのち、それぞれ40μg(2.1nmol)を用い、気相プロティンシークエンサー(アプライド・バイオシステムズ社製470A型)を用いる自動エドマン分解法によりPIおよびPIIのアミノ末端アミノ酸配列を決定した。フェニルチオヒダントインアミノ酸(PTH−アミノ酸)はミクロパックSP−C18カラム(バリアン社製)を用いる高速液体クロマトグラフィーにより同定した。 各ステップで検出されたPTH−アミノ酸を〔表3〕に示す。
0034
0035
カルボキシル末端アミノ酸の分析を実施例1と同様にして行った結果、PIおよびPIIともにグルタミン酸のみが検出され回収率はそれぞれ12.5%および14.3%であった。アミノ酸組成分析を実施例1と同様にして行った結果を〔表4〕に示す。アミノ末端アミノ酸配列分析およびアミノ酸組成分析の結果から、PIは〔図2〕中X=メチオニン残基で示される分子種(Met−IFN−αA)を、PIIは〔図2〕中X=水素原子で示される分子種(IFN−αA)をそれぞれ98%以上の純度で含んでいることが確認された。
0036
0037
また、アンフォラインPAGプレート(LKB社製)を用いてPIおよびPIIの等電点を測定した結果、PI(Met−IFN−αA)の等電点は6.3,PII(IFN−αA)の等電点は6.2と算出された。
0038
実施例7
IL−2注射用製剤:実施例1で得られたIL−2含有溶液を、0.025M酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.0)で平衡化したCMトヨパール(東洋曹達工業(株))カラムに無菌条件下で吸着させ、0.15MのNaClを含む上記緩衝液で溶出させる。溶出液に0.15MNaClを適宜加えて希釈し、HSAを0.5%になるように添加してメンブランフイルター(孔径0.22μm)を用いてろ過後、得られたろ液を無菌的に1mlずつバイアル瓶に分注して凍結乾燥し、注射用IL−2を調製する。本注射用製剤は、用時注射用蒸留水1mlに溶解する。
0039
実施例8
IFN−αA注射用製剤:実施例6で得られたIFN−αA含有溶液を、0.025M酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.0)で平衡化したCMトヨパール(東洋曹達工業(株))カラムに無菌条件下で吸着させ、0.15MのNaClを含む上記緩衝液で溶出させる。溶出液に0.15MNaClを適宜加えて希釈し、HSAを0.5%になるように添加してメンブランフィルター(孔径0.22μm)を用いてろ過後、得られたろ液を無菌的に1mlずつバイアル瓶に分注して凍結乾燥し、注射用IFN−αAを調製する。本注射用製剤は、用時注射用蒸留水1mlに溶解する。上記注射用製剤は、それぞれ上記精製IL−2およびIFN−αAを、精製Met−IL−2およびMet−IFN−αAに置き換えることにより、Met−IL−2およびMet−IFN−αAの注射用製剤とすることができる。
図面の簡単な説明
0040
参考例1
非グリコシル化ヒトインターロイキン−2の製造I:
0041
図1参考例1で得られた非グルコシル化ヒトインターロイキシン−2蛋白質のアミノ酸配列(図中Xは、水素原子またはメチオニン残基を表わす)を示す。
図2参考例3で得られた非グリコシル化ヒトインターフェロン−αA蛋白質のアミノ酸配列(図中Xは、水素原子またはメチオニン残基を表わす)を示す。
図3実施例1におけるFPLCの結果を示す。
図4実施例1における等電点電気泳動の結果を示す。
図5実施例1におけるトリプシン消化ペプチドマッピングの結果を示す。
図6実施例2におけるクロマトホーカシングの結果を示す。
図7実施例5におけるSP−5PWイオン交換クロマトグラフィーの結果を示す。
図8実施例6におけるFPLCの結果を示す。
図9参考例3におけるプラスミドpTF1の構築図を示す。
図10参考例3におけるpTB285の構築図を示す。