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技術 有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法

出願人 DIC株式会社
発明者 村田一高原口和敏小野善之
出願日 1995年5月26日 (26年4ヶ月経過) 出願番号 1995-128044
公開日 1996年12月3日 (24年10ヶ月経過) 公開番号 1996-319362
状態 特許登録済
技術分野 高分子成形体の処理 高分子組成物
主要キーワード EPMA測定 金属酸化物量 立体成形品 金属酸化物濃度 溶融プレス成形 室温域 エポキシアルコキシシラン 複合体フィルム
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構成

25℃のテトラエトキシシラン液中に浸漬させた際の平衡膨潤率が1重量%以下である有機高分子を、有機溶媒及び/又は水からなる膨潤液膨潤させ、次いで、膨潤させた有機高分子中に金属アルコキシド類を含む含浸液含浸させた後、金属アルコキシド類を加水分解重縮合反応させ、金属酸化物として固定化させることを特徴とする、有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。

効果

本発明は、金属アルコキシドによって膨潤する性質を有しない有機高分子固体中に容易に、且つ任意に、金属酸化物の微細粒子ミクロに分散することにより、該有機高分子の耐熱特性剛性等の力学的特性を向上せしめ、各種の成形材料電気電子部品機械部品スポーツ用品フィルム、繊維等に有用な、有機高分子と金属酸化物の複合体の製造方法を提供できる。

概要

背景

有機高分子耐熱性剛性などの力学的特性を向上させることを目的にシリカアルミナチタニア炭酸カルシウムなどの無機微粒子ブレンドする方法は既に知られており、多くの有機高分子で実用化されている。この方法によって補強を効率的に行うためには有機高分子との密着性・親和性を高めることが重要である。

粒径の小さな微細粒子を用いた場合、表面積の増大により界面の親和性が向上するなどの理由から、できるだけ微細粒子均質分散させることが検討されている。しかしながら、粒子が微細になるほど粒子の凝集性は強まり、かえって粒径を大きくして、諸特性を低下させるという問題があった。

一方、金属アルコキシド加水分解重縮合反応させ金属酸化物とする、いわゆるゾルゲル反応を利用した有機高分子と金属酸化物の複合化の方法が幾つかの有機高分子系で検討が成されている。この方法は有機高分子中に金属アルコキシドを均質に分散させ、in-situ重合させる方法であり、ナノオーダーからミクロンオーダー金属酸化物粒子を均質分散させ、加えて樹脂と金属酸化物の親和性を向上させうることが期待されている。

例えば、これまでに、ポリエチレングリコール(J. Non-Cryst. Solids, 82巻, 210頁, 1986年)、ポリテトラメチレンオキサイド(Polymer, 30巻, 2001頁 1989年)、ポリビニルアルコール(J. Appl. Polym. Sci., 39巻, 371頁 1990年)、ポリエーテルケトン(J. Appl. Polym. Sci., 40巻, 1177頁, 1990年)、ポリメチルメタクリレート(Polymer, 33巻, 1486頁, 1992年)

、ポリ(p−フェニレンビニレン)前駆体(Polymer, 32巻, 605頁, 1991年)、ポリイミド(Polymer J., 24巻, 107頁 1992年)、ポリウレタン樹脂(特開平6−136321号公報)、ケトン樹脂(特開平5−331353号公報)等が開示されている。

しかし、これらの方法はいずれも有機高分子固体中に金属アルコキシドを均質分散させるため、有機高分子と金属アルコキシドと有機溶媒からなる均質ゾル溶液を調製することが必須であった。そのため、多量の溶媒が必要であったり、ポリプロピレンのような溶解性に乏しい有機高分子に対して適応が困難であるなどの問題があった。

一方、ブタジエンゴム(Polym. Pre., Jpn., 43巻, 3151頁 1994年)やポリジメチルシロキサンエラストマー(Makromol. Chem., 185巻, 2609頁 1984年、Makromol. Chem., 187巻, 2861頁 1986年、Polymer, 26巻, 2069頁 1985年など)などのゴム系樹脂においては、テトラエトキシシラン液にこれら有機高分子を浸漬・浸漬させて、十分膨潤させた後、これを酸及び塩基性触媒を含む水溶液中に保持して複合化する方法が開示されている。

しかしながら、この方法はテトラエトキシシランに対して膨潤性の良いゴムやエラストマーを対象とした方法であり、テトラエトキシシランに対して膨潤性を殆ど有しない他の熱可塑性有機高分子に一般的に適応出来るものではなかった。

概要

25℃のテトラエトキシシラン液中に浸漬させた際の平衡膨潤率が1重量%以下である有機高分子を、有機溶媒及び/又は水からなる膨潤液で膨潤させ、次いで、膨潤させた有機高分子中に金属アルコキシド類を含む含浸液含浸させた後、金属アルコキシド類を加水分解重縮合反応させ、金属酸化物として固定化させることを特徴とする、有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。

本発明は、金属アルコキシドによって膨潤する性質を有しない有機高分子固体中に容易に、且つ任意に、金属酸化物の微細粒子をミクロに分散することにより、該有機高分子の耐熱特性、剛性等の力学的特性を向上せしめ、各種の成形材料電気電子部品機械部品スポーツ用品フィルム、繊維等に有用な、有機高分子と金属酸化物の複合体の製造方法を提供できる。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
4件
牽制数
5件

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請求項1

25℃のテトラエトキシシラン液中に浸漬させた際の平衡膨潤率が1重量%以下である有機高分子を、有機溶媒及び/又は水からなる膨潤液膨潤させ、次いで、膨潤させた有機高分子中に金属アルコキシド類を含む含浸液含浸させた後、金属アルコキシド類を加水分解重縮合反応させ、金属酸化物として固定化させることを特徴とする、有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。

請求項2

有機高分子が、ポリアミドアクリル樹脂ポリ塩化ビニリデン樹脂ポリプロピレンポリエステルフェノキシ樹脂から選ばれる有機高分子の固形物であることを特徴とする請求項1記載の有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。

請求項3

金属アルコキシド類が、シリコンアルコキシドやシリコンアルコキシドの部分加水分解縮合物またはそれらの混合物を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。

請求項4

膨潤させた有機高分子を含浸液中に浸漬させることにより、金属アルコキシド類を有機高分子中に含浸させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。

請求項5

金属アルコキシド類を含む含浸液の蒸気を、膨潤した有機高分子に接触させることにより、金属アルコキシド類を有機高分子中に含浸させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。

請求項6

膨潤液中に、酸性触媒もしくは塩基性触媒を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。

請求項7

金属アルコキシド類を含む含浸液に、水及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。

請求項8

有機高分子中に金属アルコキシド類を含浸させた後、水蒸気雰囲気中に保持して、金属アルコキシド類の加水分解重縮合反応を促進させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。

請求項9

水蒸気雰囲気中に、有機溶媒、及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒を含むことを特徴とする請求項8記載の有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。

請求項10

25℃のテトラエトキシシラン液中に浸漬させた際の平衡膨潤率が1重量%以下である有機高分子を、有機溶媒及び/又は水からなる膨潤液と、シリコンアルコキシドやシリコンアルコキシドの部分加水分解縮合物またはそれらの混合物から選ばれる、金属アルコキシド類を含む含浸液とで、有機高分子の膨潤と金属アルコキシド含浸操作を同時に行うと共に、金属アルコキシド類が有機高分子の内部に均質浸透する前に同操作を中止し、金属アルコキシド類を固定化することを特徴とする有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。

請求項11

含有される金属酸化物粒子粒径が0.01μm〜0.2μm未満であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。

請求項12

含有された金属酸化物粒子の粒径が0.2〜5μmであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。

請求項13

請求項1〜10のいずれか1つに記載の製造方法により得られる、金属酸化物と有機高分子との複合化が有機高分子固体の厚み方向で部分的に行われ、少なくとも一部に金属酸化物と複合化されていない領域を含むことを特徴とする有機高分子と金属酸化物との複合体。

請求項14

金属酸化物との複合化領域での金属酸化物粒子の粒径が0.2μm以上であり、複合化領域で不透明もしくは半透明で、且つ金属酸化物と複合化されていない領域で透明である形態を有することを特徴とする請求項13記載の有機高分子と金属酸化物との複合体。

技術分野

0001

本発明は、有機高分子固体内に金属酸化物微細粒子マクロ凝集相分離することなく分散した有機高分子と金属酸化物からなる複合体の製造法に関するものであり、詳しくは、耐熱性耐薬品性接着性、高剛性などの力学特性に優れ、各種の成形材料フィルム、繊維等に有用な有機高分子と金属酸化物からなる複合体の製造方法に関する。

背景技術

0002

有機高分子の耐熱性、剛性などの力学的特性を向上させることを目的にシリカアルミナチタニア炭酸カルシウムなどの無機微粒子ブレンドする方法は既に知られており、多くの有機高分子で実用化されている。この方法によって補強を効率的に行うためには有機高分子との密着性・親和性を高めることが重要である。

0003

粒径の小さな微細粒子を用いた場合、表面積の増大により界面の親和性が向上するなどの理由から、できるだけ微細粒子均質分散させることが検討されている。しかしながら、粒子が微細になるほど粒子の凝集性は強まり、かえって粒径を大きくして、諸特性を低下させるという問題があった。

0004

一方、金属アルコキシド加水分解重縮合反応させ金属酸化物とする、いわゆるゾルゲル反応を利用した有機高分子と金属酸化物の複合化の方法が幾つかの有機高分子系で検討が成されている。この方法は有機高分子中に金属アルコキシドを均質に分散させ、in-situ重合させる方法であり、ナノオーダーからミクロンオーダー金属酸化物粒子を均質分散させ、加えて樹脂と金属酸化物の親和性を向上させうることが期待されている。

0005

例えば、これまでに、ポリエチレングリコール(J. Non-Cryst. Solids, 82巻, 210頁, 1986年)、ポリテトラメチレンオキサイド(Polymer, 30巻, 2001頁 1989年)、ポリビニルアルコール(J. Appl. Polym. Sci., 39巻, 371頁 1990年)、ポリエーテルケトン(J. Appl. Polym. Sci., 40巻, 1177頁, 1990年)、ポリメチルメタクリレート(Polymer, 33巻, 1486頁, 1992年)

0006

、ポリ(p−フェニレンビニレン)前駆体(Polymer, 32巻, 605頁, 1991年)、ポリイミド(Polymer J., 24巻, 107頁 1992年)、ポリウレタン樹脂(特開平6−136321号公報)、ケトン樹脂(特開平5−331353号公報)等が開示されている。

0007

しかし、これらの方法はいずれも有機高分子固体中に金属アルコキシドを均質分散させるため、有機高分子と金属アルコキシドと有機溶媒からなる均質ゾル溶液を調製することが必須であった。そのため、多量の溶媒が必要であったり、ポリプロピレンのような溶解性に乏しい有機高分子に対して適応が困難であるなどの問題があった。

0008

一方、ブタジエンゴム(Polym. Pre., Jpn., 43巻, 3151頁 1994年)やポリジメチルシロキサンエラストマー(Makromol. Chem., 185巻, 2609頁 1984年、Makromol. Chem., 187巻, 2861頁 1986年、Polymer, 26巻, 2069頁 1985年など)などのゴム系樹脂においては、テトラエトキシシラン液にこれら有機高分子を浸漬・浸漬させて、十分膨潤させた後、これを酸及び塩基性触媒を含む水溶液中に保持して複合化する方法が開示されている。

0009

しかしながら、この方法はテトラエトキシシランに対して膨潤性の良いゴムやエラストマーを対象とした方法であり、テトラエトキシシランに対して膨潤性を殆ど有しない他の熱可塑性有機高分子に一般的に適応出来るものではなかった。

0010

本発明が解決しょうとする課題は、予め調製された無機フィラーを混合充填する方法や、有機高分子と金属アルコキシドを有機溶媒に溶解させて得られる均質溶液を経て複合化する方法を用いることなく、金属アルコキシドによって膨潤する性質を有しない有機高分子固体中に、容易、且つ任意に金属酸化物の微細粒子をミクロに分散した複合体の製造方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0011

本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、金属アルコキシドに膨潤する性質を有しない有機高分子固体に対して、有機高分子固体を有機溶媒で予め膨潤させた後、金属アルコキシド類又はそれを含む溶液含浸させ、次いで、該金属アルコキシド類を有機高分子固体内で加水分解重縮合反応させることにより、容易に有機高分子固体に金属酸化物がミクロに分散した有機高分子と金属酸化物の複合体が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。

0012

本発明は、有機高分子固体に予め調製されたシリカ等の無機フィラーを混合充填することなく、また有機高分子と金属アルコキシドと有機溶媒からなる均質溶液を調製する工程を経ることなしに、有機高分子固体中に金属酸化物粒子がミクロに分散した有機高分子と金属酸化物との複合体を製造する方法に関するものであり、特に、有機高分子固体として、非ゴム系樹脂などの金属アルコキシドに殆ど膨潤しない有機高分子固体に対して有効である。

0013

即ち、本発明は、25℃のテトラエトキシシラン液中に浸漬させた際の平衡膨潤率が1重量%以下である有機高分子を、有機溶媒及び/又は水からなる膨潤液で膨潤させ、次いで、膨潤させた有機高分子中に金属アルコキシド類を含む含浸液を含浸させた後、金属アルコキシド類を加水分解重縮合反応させ、金属酸化物として固定化させることを特徴とする、有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法である。

0014

本発明の製造方法は、特に用いる有機高分子が、ポリアミドアクリル樹脂ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリプロピレン、ポリエステルフェノキシ樹脂から選ばれる有機高分子の固形物であること、用いる金属アルコキシド類が、シリコンアルコキシドやシリコンアルコキシドの部分加水分解縮合物またはそれらの混合物を用いることを特徴とする有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法である。

0015

更に本発明は、膨潤させた有機高分子を含浸液中に浸漬させることにより、金属アルコキシド類を有機高分子中に含浸させること、金属アルコキシド類を含む含浸液の蒸気を、膨潤した有機高分子に接触させることにより、金属アルコキシド類を有機高分子中に含浸させることを特徴とする有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法である。

0016

更に本発明の製造方法は、膨潤液中に、酸性触媒もしくは塩基性触媒を含むこと、金属アルコキシド類を含む含浸液に、水及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒を含むこと、及び有機高分子中に金属アルコキシド類を含浸させた後、該有機高分子を水蒸気雰囲気中に保持して、金属アルコキシド類の加水分解重縮合反応を促進させること、更に、水蒸気雰囲気中に、有機溶媒、及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒を含むことを特徴とする有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法を含むものである。

0017

更に、本発明は、25℃のテトラエトキシシラン液中に浸漬させた際の平衡膨潤率が1重量%以下である有機高分子を、有機溶媒及び/又は水からなる膨潤液と、シリコンアルコキシドやシリコンアルコキシドの部分加水分解縮合物またはそれらの混合物から選ばれる、金属アルコキシド類を含む含浸液とで、有機高分子の膨潤と金属アルコキシドの含浸操作を同時に行うと共に、金属アルコキシド類が有機高分子の内部に均質に浸透する前に同操作を中止し、金属アルコキシド類を固定化することを特徴とする有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法を含むものである。

0018

本発明の製造方法は、得られる有機高分子と金属酸化物との複合体中に含有される金属酸化物粒子の粒径が0.01μm〜0.2μm未満である有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法、また含有される金属酸化物粒子の粒径が0.2〜5μmである有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法である。

0019

更に本発明は、本発明の製造方法により得られる、金属酸化物と有機高分子との複合化が有機高分子固体の厚み方向で部分的に行われ、少なくとも一部に金属酸化物と複合化されていない領域を含むことを特徴とする有機高分子と金属酸化物との複合体、及び金属酸化物との複合化領域での金属酸化物粒子の粒径が0.2μm以上であり、複合化領域で不透明もしくは半透明で、且つ金属酸化物と複合化されていない領域で透明である形態を有することを特徴とする有機高分子と金属酸化物との複合体を含むものである。

0020

以下に、本発明を詳細に説明する。本発明に用いられる有機高分子固体は、吸着される金属アルコキシドの含有量が少ない、一般に市販されている固体状の有機高分子が使用可能である。特に、25℃のテトラエトキシシラン液中に浸漬させた際の平衡膨潤率が1重量%以下である有機高分子固体に対して有効である。

0021

具体的には、ナイロン−6などのポリアミド、ポリメタクリル酸メチルやポリメタクリル酸メチルとポリメタクリル酸共重合体などのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、フェノキシ樹脂などの単体もしくはこれらの混合物もしくは共重合物からなる有機高分子固体物が挙げられる。これら有機高分子は、シート、フィルム、繊維、ロットペレット微少球状、粉末及び各種立体成形品などの固形形態で使用される。

0022

本発明における金属アルコキシド類としては、一般式、R4-nM(OR)n(Mは珪素原子、Rは炭素数1〜6のアルキル基、n は4または3)で示されるシリコンアルコキシド系モノマーや、重合度2〜10程度のそれらの部分加水分解低縮合物またはそれらの混合物が用いられる。その他、分子量2000〜100000のラダー型シリコーン化合物を用いることや金属水酸化物を用いること、金属原子としてSi以外に、Ti、Sn、Zr、Al、Br、Tl、In、Mg、Baなどを単独または2種以上を混合して用いることも可能である。

0023

金属アルコキシド類の使用量は、使用する金属アルコキシド類や有機高分子固体の種類によって異なるため一概には規定できないが、通常、有機高分子100重量部に対して、最終的に得られる金属酸化物が0.5〜50重量部の範囲で用いられるのが好ましい。金属酸化物が0.5重量部未満では複合体中の金属酸化物濃度が小さくなり本発明の目的とする効果が明確ではなく、また50重量部を越える場合、複合体が脆くなるなどの短所が現れる。

0024

本発明に用いる有機溶媒としては、前処理工程の膨潤液中で使用する場合、含浸液と相溶し、且つ使用する有機高分子を膨潤させうる有機溶媒及び混合有機溶媒が用いられる。また金属アルコキシド類を含む含浸液中で使用する場合、金属アルコキシド類と均質に混合し得る有機溶媒及び混合有機溶媒が用いられる。

0025

また、金属アルコキシド類の含浸量を増加させる等の目的で、有機高分子を部分的に溶解させうる有機溶媒を膨潤又は含浸処理工程で用いることも可能である。これらの有機溶媒は使用する有機高分子や金属アルコキシド類の種類によって異なるため一概に規程できないが、例えば、ジエチルエーテルジオキサンテトラヒドロフラン(THF)などのエーテル系、

0029

また本発明における酸性触媒としては、ギ酸酢酸塩酸などの各種有機酸無機酸、また塩基性触媒としては、アンモニア、トリエチルアミン、ジメチルアミンエチレンジアミンブチルアミンなどの各種塩基性物質を用いることが可能である。

0030

本発明は、予め調製された無機フィラーを混合充填することなく、また、有機高分子と金属アルコキシド類を溶媒に溶解させて得られる均質溶液を用いる方法によらないで、金属アルコキシド類を有機高分子内で加水分解重縮合反応させることによって、金属酸化物と有機高分子固体を複合化する製造法に関するものである。本発明による金属酸化物と有機高分子を複合化する方法についての概略を以下に示す。

0031

本発明では、前処理工程として有機高分子固体を有機溶媒、及び/又は水からなる膨潤液で予め膨潤させた後、該膨潤物中に金属アルコキシド類又は金属アルコキシド類と有機溶媒をからなる含浸液を含浸させて、次いで、含有された金属アルコキシド類を加水分解重縮合反応させることによって金属酸化物とすることによって、金属酸化物と有機高分子との複合体を得るものである。

0032

ここで、膨潤液と金属アルコキシド類を含む含浸液を一緒にして、膨潤と含浸を同時に行うことも可能である。但し、この方法では最終的に得られる複合体中の金属酸化物濃度が低下するといった問題が生じる場合がある。なお、本発明における膨潤液とは、使用する有機高分子固体を膨潤させ、且つ含浸液と相溶する溶液であり、有機溶媒、及び/又は水、更に酸性触媒もしくは塩基性触媒を含むものが用いられる。該膨潤液は使用する有機高分子固体を1重量%以上、特に5重量%以上膨潤させうるものが好ましい。

0033

また、本発明における含浸液とは金属アルコキシド類を含む均質な溶液であり、金属アルコキシド類の他に有機溶媒、及び/又は水、及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒を含むことも可能である。前処理工程は膨潤液によって予め有機高分子固体を膨潤させておく工程であり、この工程を行うことによって続く含浸工程で含浸液の含浸操作が効率的に行われる。

0034

有機高分子固体の膨潤物は、有機高分子固体を膨潤液中に浸漬させる方法や膨潤液の蒸気に有機高分子固体を接触させる方法によって得ることが可能である。また、膨潤液中に予め水、及び/又は触媒を添加することで最終的に固定化される金属酸化物量を向上させることが可能である。

0035

含浸工程は金属アルコキシド類を有機高分子固体膨潤物中に導入する工程である。金属アルコキシド類を有機高分子固体膨潤物に含浸させる方法としては、金属アルコキシド類を含む含浸液に、有機高分子固体膨潤物を浸漬させる方法や、該含浸液の蒸気に有機高分子固体膨潤物を接触させる方法によって行うことが可能である。金属アルコキシド類の含浸量は膨潤液組成、及び/又は含浸液の組成によって変化させられる他、浸漬時間や浸漬温度などの含浸条件によっても調製が可能である。

0036

一方、有機高分子固体膨潤物中に含浸された金属アルコキシド類の重縮合反応を進め、金属酸化物としての固定化を促進させる為に、金属アルコキシド類を含浸させた後の後処理工程として、当該有機高分子固体膨潤物を水溶液中に浸漬したり、霧状にした水溶液を噴霧したり、或いは水蒸気雰囲気下で保持するなど方法を行うことが可能である。

0037

水溶液中に有機溶媒、及び/又は触媒を添加することで金属酸化物の固定化率を向上させたり、金属酸化物粒子の粒径を制御することが可能である。さらに金属アルコキシド類の反応を促進させるために、加熱、紫外線照射などの処理を反応途中に併用したり又は最終処理工程として行うことは有効である。

0038

本発明に於いては、有機高分子固体中に金属酸化物粒子がミクロに均質分散した複合体の他、膨潤液や含浸液の組成、温度・時間などの含浸条件を変化させることで、金属酸化物との複合化が有機高分子固体の厚み方向に部分的に行われ、少なくとも一部が金属酸化物と複合化されていない領域を含む形態の複合体を得ることが可能である。

0039

例えば、有機高分子固体に含浸液が目的とする厚みまで含浸された時点で含浸操作を終了させる方法や、膨潤液と金属アルコキシド類を含む含浸液を一緒にして、膨潤と含浸操作を同時に行うと共に、金属アルコキシド類が有機高分子内に均質に含浸する前に同操作を中止し、金属アルコキシド類を固定化する方法などによって得られる。

0040

更に本発明に於いては、金属アルコキシド類を含浸させた後、アンモニアや塩酸などの触媒を含む水溶液に接触させて金属酸化物に固定化する場合、触媒の種類や濃度を変えることによって金属酸化物の粒径を制御することが可能である。

0041

これによって粒径の異なる金属酸化物と有機高分子との複合体が調製できるほか、特に、アクリル樹脂などの透明性樹脂を用いた場合において顕著であるが、金属酸化物の粒径を制御することで、複合化された部分が不透明もしくは半透明で、複合化されていない部分が透明な形態の有機高分子と金属酸化物との複合体を得ることが可能となる。

0042

本発明においてはアミノアルコキシシランエポキシアルコキシシランビニルアルコキシシランメルカプトアルコキシシランなどの有機シラン化合物を少量併用することで有機高分子と金属酸化物の親和性を向上させることが可能である。

0043

以下に本発明を実施例及び比較例により、より具体的に説明するが、もとより本発明は、以下に示す実施例にのみ限定されるものではない。

0044

(実施例1)厚さ0.5mmのフィルム状のナイロン−6(宇部興産株式会社製:UBEナイロン 1022B)をメタノールと蒸留水(4:1、重量比)からなる膨潤液中に浸漬して、室温で3日間放置した。16重量%の重量増加が見られた。更に、メタノールとテトラメトキシシラン(以下、TMOSと略す。:東京化成工業社製特級試薬)(2:1、重量比)の含浸液中に室温で6日間浸漬して、シリコンアルコキシドを十分に含浸させた。重量増加は23重量%となった。

0045

次いで、0.6モル/lのアンモニア水の水蒸気雰囲気下(23℃)に1日間保持した後、80℃、真空中で24時間熱処理を行い、ナイロン−6とシリカの複合体を得た。複合体の外観はナイロン−6単体と全く代わりはなかった。

0046

蛍光X線により、Siの存在が確認された。複合体を800℃で2時間焼成したところ、約8.9重量%のシリカ残存量があった。電子線マイクロアナライザー(EPMA)で断面の厚み方向のSiを検出したところシリカが均質分散しているのが判った。走査型電子顕微鏡(SEM)により複合体断面のシリカ粒子観測したところ、粒径は20〜80nmであった。

0047

また、動的粘弾性測定により、30℃と100℃でのヤング率を測定したところ、それぞれ4000MPaと1000MPaであった。一方、ナイロン−6単体の場合、ヤング率はそれぞれ3000MPaと700MPaであった。尚、蛍光X線はリガク株式会社製の3030型を、EPMAは島津製作所株式会社製のEPM−810を、SEMは日立製作所株式会社製のS−800型を用いた。

0048

EPMA測定は出力15kV−50nAとし、SiのKα線7.124Åで検出した。SEMのサンプルは液体窒素中に10分間浸漬させた後に破断した断面をプラチナスパッタリングしたものを使用した。また、動的粘弾性測定はセイコー電子工業株式会社製のDMA−200を用いて、2℃/分で昇温して1Hzで測定した。

0049

(比較例1)実施例1で使用したナイロン−6を25℃のTMOS及びテトラエトキシシラン(以下、TEOSと略す。東京化成工業社製特級試薬)溶液に7日間浸漬させた。膨潤度は共に0.1重量%以下であった。次いで、サンプルを蒸留水中に5時間浸漬させた後、室温で24時間、更に、80℃、真空中で24時間熱処理を行った。800℃で2時間焼成したが、両者とも残存シリカは全くなく、ナイロン−6とシリカの複合体を得ることができなかった。

0050

(実施例2)実施例1で用いた厚さ0.5mmのフィルム状のナイロン−6をメタノールとTMOS(1:1、重量比)の含浸液中に室温で6日間浸漬させ、シリコンアルコキシドを含浸させた。重量増加は10重量%であった。次いで、0.6モル/lのアンモニア水の水蒸気雰囲気下(23℃)に1日間保持した後、80℃、真空中で24時間熱処理を行い、ナイロン−6とシリカの複合体を得た。複合体の外観はナイロン−6単体と全く同等のものであった。

0051

蛍光X線により、Siの存在が確認された。複合体を800℃で2時間焼成したところ、約1.3重量%のシリカ残存量があった。EPMAで断面の厚み方向のSiを検出したところシリカが均質分散しているのが判った。

0052

(比較例2)実施例1で用いたナイロン−6の1gを20gのm−クレゾールに溶解させた溶液に、0.14gの蒸留水と0.3gのTMOSを順に滴下した。60℃で7時間反応させた後、ガラス基盤上に塗布して、80℃で24時間熱風乾燥、次いで200℃で1時間真空乾燥して溶媒をキャストした。得られた塗膜不均質白濁化した外観不良のフィルムであった。

0053

一方、塗布前の溶液をメタノール中に沈殿させた得た沈殿物を80℃で2時間熱風乾燥、200℃で1時間真空乾燥してから260℃で溶融プレス成形を行った。フィルムは濃色に着色し、良好な外観のフィルムは得られなかった。

0054

(実施例3)シート状のアクリル樹脂(三菱レイヨン株式会社製、アクリライト001)をメタノール、アセトン、蒸留水(5:1:2、重量比)の膨潤液に室温で2日間浸漬した。約18重量%の重量増加があった。次いで、メタノール、アセトン、TMOS(10:1:6、重量比)の含浸液に2日間浸漬させシリコンアルコキシドを十分に含浸させた。

0055

アクリル樹脂はゴム状となり、62重量%の重量増加があった。更に、0.5モル/lのアンモニア水の飽和水蒸気雰囲気下に1日間保持した後、80℃で24時間熱処理して、アクリル樹脂とシリカとの複合体を得た。複合体は透明性に優れ、平行光透過率は約98%であった。

0056

蛍光X線によって、Siの存在が確認された。複合体を800℃で2時間焼成したところ、約7.8重量%のシリカ残存量があった。EPMAで断面の厚み方向のSiを検出したところ、シリカが均質分散しているのが判った。SEMを用いてシリカ粒子を観測したところ、シリカの粒径は50〜100nmであった。尚、光透過率は日本電色工業株式会社製の濁度計NDH−300型を用いて測定した。

0057

(比較例3)実施例3で用いたアクリル樹脂を25℃のTEOS溶液に7日間浸漬させた。膨潤度は0.1重量%以下であった。次いで、サンプルを蒸留水中に5時間浸漬させた後、室温で24時間、更に、80℃で24時間熱処理を行った。800℃で2時間焼成したが、残存シリカは全くなく、アクリル樹脂とシリカの複合体を得ることができなかった。

0058

(実施例4)実施例3で用いたシート状のアクリル樹脂をメタノールとTMOS(1:1、重量比)の含浸液に10日間浸漬し、シリケートを十分に含浸させた。アクリル樹脂はゴム状となり、110重量%の重量増加が見られた。次いで、0.35モル/lのアンモニア水の飽和水蒸気雰囲気下に1日間保持した後、80℃で24時間熱処理して、アクリル樹脂とシリカとの複合体を得た。複合体は透明性に優れ、光透過率は約96%であった。

0059

蛍光X線によって、Siの存在が確認された。複合体を800℃で2時間焼成したところ、約16重量%のシリカ残存量があった。EPMAで断面の厚み方向のSiを検出したところフィルム全体でシリカが均質分散しているのが判った。図1にEPMAの結果を示す。

0060

(実施例5)実施例3で用いたシート状のアクリル樹脂をメタノールとTMOS(1:1、重量比)の含浸液に3日間浸漬しシリコンアルコキシドを含浸させた。17.5重量%の重量増加があった。次いで、蒸留水中に5時間浸漬させた後、80℃で24時間熱処理して、アクリル樹脂とシリカとの複合体を得た。複合体の破断面を見たところ、表面部は白濁化していたが、内部は透明であった。なお、得られた複合体フィルムの平行光透過率は約54%であった。

0061

EPMAで断面の厚み方向のSiを検出したところ、表面から約60μmまではシリカがほぼ均質な濃度で分散した層であり、それより内部ではシリカは検出されなかった。SEMにより断面のシリカ粒子を観測したところ、シリカの粒径は100〜500nmであった。また、複合体を800℃で2時間焼成したところ、約2.4重量%のシリカ残存量があった。

0062

(実施例6及び実施例7)実施例5において、シリコンアルコキシドを含浸させた後、0.3モル/lのアンモニア水(実施例6)と0.9モル/lのアンモニア水(実施例7)に5時間浸漬した場合について、同様な検討を行った。複合体の破断面を見たところ、実施例7は全体が透明であったが、実施例6では表面部が乳白濁、内部が透明であった。得られた複合体フィルムの平行光透過率を測定したところ、実施例6が約85%、実施例7が約96%であった。

0063

EPMAで断面の厚み方向のSiを検出したところ、複合体は両者とも表面から約64μmまではシリカがほぼ均質な濃度で分散した層であり、それより内部ではシリカは検出されなかった。SEMにより断面のシリカ粒子を観測したところ、シリカの粒径は実施例6では50〜300nm、実施例7では20〜100nmであった。また、複合体を800℃で2時間焼成したところ、実施例6では約3.9重量%、実施例7では約4.7重量%のシリカ残存量があった。

0064

(実施例8)実施例4において、TMOSとメタノールの含浸液への浸漬時間を5日とした場合について、同様な検討を行った。なお、含浸液を含浸後の重量増加は約98重量%であった。得られた複合体は透明性に優れており、平行光透過率は約97%であった。

0065

EPMAで断面の厚み方向のSiを検出したところ、表面から約300μmまではシリカがほぼ均質な濃度で分散した層であり、それより内部(約40μm)ではシリカは検出されなかった。EPMAの結果を図2に示す。また複合体を800℃で2時間焼成したところ、約17重量%のシリカ残存量があった。

0066

(実施例9)シート状のアクリル樹脂をメタノールとTMOS(1:1、重量比)の含浸液に30℃で3日間浸漬し、シリコンアルコキシドを含浸させた。約50重量%の重量増加があった。次いで、0.04モル/lの塩酸水溶液中に5時間浸漬させた後、80℃で24時間熱処理して、アクリル樹脂とシリカとの複合体を得た。複合体の破断面を見たところ、表面部は白濁化していたが、内部は透明であった。なお、得られた複合体フィルムの平行光透過率は約16%であった。

0067

EPMAで断面の厚み方向のSiを検出したところ、表面から約170μmまではシリカがほぼ均質な濃度で分散した層であり、それより内部ではシリカは検出されなかった。EPMAの結果を図3に示す。SEMにより断面のシリカ粒子を観測したところ、シリカの粒径は200〜1000nmであった。複合体を800℃で2時間焼成したところ、約7.5重量%のシリカ残存量があった。

0068

(実施例10)0.5mm厚のポリプロピレン(ノーブレMH−8)フィルムをメタノールと蒸留水(2:1、重量比)からなる膨潤液に80℃で3時間浸漬させた。約24重量%の重量増加が見られた。次いで、TMOSとメタノール(1:1、重量比)の含浸液に室温で約5時間浸漬させた後、25℃、35%の室温中で5時間保持、更に、80℃で5時間、150℃で2時間熱処理を行いポリプロピレンとシリカの複合体を得た。

0069

蛍光X線によりSiの存在が確認された。複合体を800℃で2時間焼成したところ、約2.4重量%のシリカ残存量があった。EPMAで断面の厚み方向のSiを検出したところフィルム全体にシリカが均質分散していることが判った。

0070

(比較例4)実施例10で用いたポリプロピレンをTEOS溶液に7日間浸漬させたが、膨潤度は0.1重量%以下であった。次いで、サンプルを蒸留水中に5時間浸漬させた後、室温中で24時間放置、更に、80℃で5時間、150℃で2時間熱処理を行った。800℃で2時間焼成したが、残存シリカは全くなく、ポリプロピレンとシリカの複合体は得られなかった。

0071

(実施例11)実施例10において、前処理工程でメタノールと蒸留水(2:1、重量比)の膨潤液を用いる代わりに、メタノールとアンモニア水(0.74モル/l)(2:1、重量比)の膨潤液を用い、80℃で3時間浸漬させた。約25重量%の重量増加であった。次いで、実施例5と同様な処理を行いポリプロピレン/シリカの複合体を得た。

0072

蛍光X線によって、Siの存在が確認された。複合体を800℃で2時間焼成したところ、約6.1重量%のシリカ残存量があった。EPMAで断面の厚み方向のSiを検出したところシリカが均質分散しているのが判った。EPMAの結果を図4に示す。

0073

粘弾性測定を行ったところ、弾性率は25℃で3.6GPa、100℃で863MPaであり、室温域付近で観測されるtan δのピーク温度は59℃であった。なお、ポリプロピレン単体の25℃の弾性率は2.1GPa、100℃では425MPa、tan δピークは40℃であった。弾性率、及び耐熱性が向上しているのが判る。

0074

引張試験を行い降伏応力と弾性率を測定した。降伏応力は8.3Kg/mm2、弾性率は202Kg/mm2であった。なお、ポリプロピレン単体の降伏応力は6.7Kg/mm2、弾性率が147Kg/mm2であった。また、エポキシ樹脂チバガイギー株式会社製アラルダイト)に対する接着性を測定したところ、剥離するに必要なせん断力は、60〜80Kgであった。なお、ポリプロピレン単体の場合は、14Kgであった。エポキシ系接着剤に対する接着性が著しく向上しているのが判る。

0075

なお、引張試験と接着性試験は、島津製作所株式会社製のオートグラフを用いた。引張試験は長さを10mm、幅3mm、厚み0.5mmとして、5mm/分の速度で測定した。接着性試験は幅10mmの2枚の試験片を用意して、20mmにエポキシ樹脂を付けて重ね合わせ接着したサンプルのせん断剥離強度を測定した。接着後、3日間室温で放置した後、80℃で5時間熱処理して硬化させたサンプルを用いた。

0076

(実施例12)0.5mmのポリ塩化ビニル(三菱樹脂株式会社製 3001)のシートをアセトンと蒸留水(2:1、重量比)の膨潤液に30℃で1日間浸漬させた。約20重量%の重量増があった。次いで、TMOSとアセトン(1:1、重量比)の含浸液に6時間(30℃)浸漬させた後、20℃、35%の室温中で5時間保持し更に80℃で24時間熱処理を行いポリ塩化ビニルとシリカの複合体を得た。

0077

蛍光X線によって、Siの存在が確認された。複合体を800℃で2時間焼成したところ、約15重量%のシリカ残存量があった。EPMAで断面の厚み方向のSiを検出したところシリカが均質分散しているのが判った。

0078

(比較例5)実施例12で用いたポリ塩化ビニルをTEOS溶液に7日間浸漬させたが、膨潤度は0.1重量%以下であった。次いで、サンプルを蒸留水中に5時間浸漬させた後、室温中で24時間放置、更に、80℃で24時間熱処理を行った。800℃で2時間焼成したが、残存シリカは全くなかった。ポリ塩化ビニルとシリカの複合体は得られなかった。

0079

(実施例13)ナイロン−6フィルムをメタノールと蒸留水(2:1、重量比)の膨潤液に80℃で3時間浸漬させた。約24重量%の重量増加が見られた。次いで、TMOSとメタノール(5:1、重量比)の含浸液に30℃で約5時間浸漬させた後、更に、0.5モル/lのアンモニア水の飽和水蒸気雰囲気下に1日間保持させた。次いで、25℃、35%の室温中で5時間、80℃で24時間真空乾燥を行いナイロン−6とシリカの複合体を得た。

0080

蛍光X線によって、Siの存在が確認された。複合体を800℃で2時間焼成したところ、約5.4重量%のシリカ残存量があった。EPMAで断面の厚み方向のSiを検出したところフィルム全体にシリカが均質分散しているのが判った。EPMAの結果を図5に示す。

0081

(実施例14)ポリブチレンテレフタレート(PBT;大日本インキ化学工業社製、プラナック−128)のシートをクロロホルムに60℃で3時間浸漬させた。約28重量%の重量増加が見られた。次いで、TMOSとクロロホルム(10:1、重量比)の含浸液に30℃で約10時間浸漬させた後、更に、0.6モル/lのアンモニア水の飽和水蒸気雰囲気下に1日間保持させた。

0082

次いで、25℃、35%の室温中で5時間放置し、80℃で24時間、150℃で2時間熱処理を行いPBTとシリカの複合体を得た。蛍光X線によって、Siの存在が確認された。複合体を800℃で2時間焼成したところ、約3重量%のシリカ残存量があった。EPMAで断面の厚み方向のSiを検出したところフィルム全体にシリカが均質分散しているのが判った。

0083

(比較例6)実施例14で用いたPBTをTEOS溶液に7日間浸漬させたが、膨潤度は0.1重量%以下であった。次いで、サンプルを蒸留水中に5時間浸漬させた後、室温中で24時間放置、更に、80℃で5時間、150℃で2時間熱処理を行った。800℃で2時間焼成したが、残存シリカは全くなかった。PBTとシリカの複合体は得られなかった。

0084

(実施例15)ポリ塩化ビニルのシートをアセトンと蒸留水(2:1、重量比)の膨潤液に50℃で3時間浸漬させた。約20重量%の重量増があった。次いで、トルエンとテトラエトキシスズ(関東化学株式会社製、特級試薬)(2:1、重量比)の含浸液に6時間(30℃)浸漬させた後、20℃、35%の室温中で5時間保持し、更に、80℃で24時間、更に150℃で2時間熱処理を行いポリ塩化ビニルと酸化錫との複合体を得た。

0085

蛍光X線によって、Snの存在が確認された。複合体を800℃で2時間焼成したところ、約3重量%の酸化錫残存量があった。EPMAで断面の厚み方向のSiを検出したところ酸化錫が均質分散しているのが判った。図6にEPMA測定の結果を示す。尚、EPMA測定は出力15kV−50nAとし、SnのLα線3.600で検出した。

発明の効果

0086

本発明は、金属アルコキシドによって膨潤する性質を有しない有機高分子固体中に容易に、且つ任意に、金属酸化物の微細粒子をミクロに分散することにより、該有機高分子の耐熱特性、剛性等の力学的特性を向上せしめ、各種の成形材料、電気電子部品機械部品スポーツ用品、フィルム、繊維等に有用な、有機高分子と金属酸化物の複合体の製造方法を提供できる。

図面の簡単な説明

0087

図1実施例4で得られた有機高分子と金属酸化物の複合体のEPMA(電子線マイクロアナライザー)での測定結果を示す図である。
図2実施例8で得られた有機高分子と金属酸化物の複合体のEPMA(電子線マイクロアナライザー)での測定結果を示す図である。
図3実施例9で得られた有機高分子と金属酸化物の複合体のEPMA(電子線マイクロアナライザー)での測定結果を示す図である。
図4実施例11で得られた有機高分子と金属酸化物の複合体のEPMA(電子線マイクロアナライザー)での測定結果を示す図である。
図5実施例13で得られた有機高分子と金属酸化物の複合体のEPMA(電子線マイクロアナライザー)での測定結果を示す図である。
図6実施例15で得られた有機高分子と金属酸化物の複合体のEPMA(電子線マイクロアナライザー)での測定結果を示す図である。

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