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目的
構成
概要
背景
引張試験機による試験片の引張試験を行なう際には、試験片の両端部を試験機のチャックで強く挟持した状態においてひっぱる。しかしながら、試験片が中空の管材である場合は、チャックで強く挟持すると管材自体に変形が生じて良好な挟持が維持できなくなり、最後まで引張試験を遂行することができない。
従って、従来から、管材の引張試験を行なう際には、チャックで挟持する前に、予め両端のつかみ領域内に管材内径とほぼ一致する外径を持つ心金を挿入することによって挟持による変形を抑制し、管材両端部を固定していた。
このような従来用いられていた心金の一例を図3に示す。これは、試験片である管材11の内径とほぼ一致する外径を有する略円柱の心金部材12であり、管材11の端部から中へ挿入するものである。心金部材12を管材11内へ挿入した後に、端部を引張試験機のチャックで挟持し、試験を行なう。この時、心金部材12を管材11に溶接する場合もある。
従って、管材11の端部をチャックで強く挟持しても、管材11内に心金部材12が挿入されているために管材11の変形は僅かであり、引張試験の間中、チャックの挟持に対して影響なく耐え、引張試験が問題なく行なえる。
概要
管材の挟持を行なう際に管材内に端部から挿入され、その挿入方向に向かって縮径するように穿設された穴部と、柱側面にこの穴部に連通して少なくとも一つ以上設けられた溝状切欠き部とを有する柱状の挿入部材が管材端部内に挿入された状態で、楔部材の前記挿入方向に縮径し、挿入部材の穴部に嵌合する錐状部を差し込む。
目的
本発明は、上記問題点に鑑み、引張試験を行なう場合など、管材を挟持する際に用いられ、取り外しが容易で再利用可能な管材用治具を得ることを目的とする。
効果
実績
- 技術文献被引用数
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この技術が所属する分野
技術分野
背景技術
0002
引張試験機による試験片の引張試験を行なう際には、試験片の両端部を試験機のチャックで強く挟持した状態においてひっぱる。しかしながら、試験片が中空の管材である場合は、チャックで強く挟持すると管材自体に変形が生じて良好な挟持が維持できなくなり、最後まで引張試験を遂行することができない。
0003
従って、従来から、管材の引張試験を行なう際には、チャックで挟持する前に、予め両端のつかみ領域内に管材内径とほぼ一致する外径を持つ心金を挿入することによって挟持による変形を抑制し、管材両端部を固定していた。
0004
このような従来用いられていた心金の一例を図3に示す。これは、試験片である管材11の内径とほぼ一致する外径を有する略円柱の心金部材12であり、管材11の端部から中へ挿入するものである。心金部材12を管材11内へ挿入した後に、端部を引張試験機のチャックで挟持し、試験を行なう。この時、心金部材12を管材11に溶接する場合もある。
0005
従って、管材11の端部をチャックで強く挟持しても、管材11内に心金部材12が挿入されているために管材11の変形は僅かであり、引張試験の間中、チャックの挟持に対して影響なく耐え、引張試験が問題なく行なえる。
発明が解決しようとする課題
0006
しかしながら、上記の如き心金部材は、管材自体に溶接される場合は特に取り外しが面倒であり、溶接されていなくても、チャックによる挟持の結果ある程度の管材の変形に伴って心金部材と管材とが強力に密着し、取り外しが非常に困難となる。従って従来は、多くの場合心金部材は一回使用しただけで使い捨てされていた。
0007
しかも、心金部材は試験管材毎にその形状に合わせて設計、加工されるため、製造費が高いうえに、上記のごとく使い捨てでは大幅に経費が嵩み、試験回数が多い場合にはさらに経費が増加してしまうというコスト上の問題が大きかった。
0008
また、通常は廃材の再生利用が望まれるが、管材と心金部材が異なる材質からなる場合、前述のように心金を取り外すことは非常に困難であることから、取り外し工程が必要な分、廃材の再生利用は負担となってしまう。一方、そのまま廃棄するには廃棄量が多すぎ、その処理が問題となってしまう。
0009
本発明は、上記問題点に鑑み、引張試験を行なう場合など、管材を挟持する際に用いられ、取り外しが容易で再利用可能な管材用治具を得ることを目的とする。
課題を解決するための手段
0010
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る管材用治具では、管材を挟持する際に該管材内に端部から挿入され、その挿入方向に向かって縮径するように穿設された穴部を有する柱状の挿入部材と、前記穴部に挿脱可能に差し込まれ、該穴部に嵌合するように挿入方向に縮径した錐状部を備えた楔部材とを有し、前記挿入部材は、柱側面に前記穴部に連通した溝状切欠き部が少なくとも一つ設けられたものである。
0011
本発明は、管材を良好に挟持するための治具であり、まず、管材内に端部から柱状の挿入部材を挿入し、この挿入部材に穿設された穴部に楔部材を挿脱可能に差し込むものである。挿入部材には、穴部に連通した溝状切欠き部が一つ以上柱側面に設けられており、また穴部が管材の中心軸に沿った挿入方向に向かって縮径した形状を持ち、楔部材はこの形状に応じて挿入方向に縮径し、穴部に嵌合する錐状部を持っている。
0012
このような構成において、管材内に挿入された挿入部材の穴部に楔部材の錐状部を差し込むと、錐状部は穴部に嵌合し、さらに錐状部を押し込んでいくと、穴部内面とすり合わされ、徐々に穴部内および溝状切欠き部を押し広げながら穴部の奥に進んでいくことができる。
0013
従って、挿入部材の外径は大きくなり、挿入部材の外側面が管材内面と密着して該内面を押圧することによって、挿入部材および楔部材からなる治具は管材内に強固に固定される。このように本発明の治具が固定された状態の管材を引張試験機等のチャックで挟持した場合、管材の変形もほとんどなく、良好な挟持の維持が可能となる。よって、引張試験なども最後まで行なうことができる。
0014
さらに、引張試験後など、管材の挟持状態が終了した後は、挿入部材の穴部から楔部材の錐状部を引き抜けば、挿入部材は当初の状態、即ち、穴部内や溝状切欠き部が押し広げられる前の状態に戻り、挿入部材外側面の管材内面に対する押圧・密着状態が解除され、挟持によってわずかに管材に変形が生じていたとしても、容易に管材から挿入部材を取り出すことができる。
0015
なお、穴部および溝状切欠き部が押し広げられるに伴って挿入部材の外径が拡径する状況は、溝状切欠き部の形成状態によって異なる。例えば、挿入部材に部分的に切欠き部を設けた場合、穴部と切欠き部の押し拡がりに伴って挿入部材本体に変形が生じることによって挿入部材の外径が拡径し、管材内面を押圧することができる。この場合、楔部材が引き抜かれた後に管材からの取り出しを容易にするには挿入部材が変形を解消して当初の状態に戻る必要がある。従って、挿入部材自身の変形による拡径を利用する場合はその変形が弾性限界内とする。
0016
このように挿入部材自身の変形を利用する場合は拡径の程度に限界があり、挿入部材の外径をできるだけ試験管材内径に近くしておくとが望ましい。これに対し、溝状切欠き部の形状および数によって、上記のような限界に影響されず、挿入部材の拡径幅を大きくし得る構成が得られる。
0017
即ち、挿入部材の柱側面に穴部と連通して形成される溝状切欠き部を挿入部材を横断する形で複数設け、これによって挿入部材が柱軸方向に沿って分離された2つ以上の部材から構成されるものとすれば、これらの分離部材が組み合わさって形成される穴部に楔部材を押し込んだ際に、挿入部材自身の変形を生じることなく、各部材間距離が拡がって挿入部材全体の外径を比較的大きく拡径させることができると共に、楔部材引抜後は確実に挿入部材の外径を縮径させ、容易に管材内から取り出すことができる。
0018
以上のように、本発明による挿入部材および楔部材の治具は、引張試験後など強力な挟持状態が終了した後に容易に管材から取り出すことができ、再び他の管材の挟持に用いることができる。このように、本発明の管材用治具は、繰返し使用が可能であるため、従来のように一回使用で使い捨てしていた場合に比べ、加工・製造のための労力および経費が大幅に削減できる。
0019
さらに、本発明の構成によれば、楔部材の差し込みによって挿入部材の外径が拡がって管材内面に密着し押圧するので、挿入部材そのものは管材内へ挿入可能であればよく、挿入部材の外径を予め管材の内径に一致させておく必要はないので、加工に高い精度は求められず、製造が容易である。
0020
また、管材と治具の材質が異なるものであっても、本発明の治具は取り外しが容易で繰返し使用できるものであるため、管材の廃材再利用が簡便であり、大量の廃棄物が生じるという問題も解消される。
0021
また、本発明の治具では、種々の外径サイズの挿入部材について、各穴部と楔部材の錐状部とを互いに嵌合する共通の形状にさえしておけば、使用する挿入部材を外径サイズで適宜選択することによって、各種サイズの管材を挟持する場合に幅広く用いることができる。
0022
なお、管材内に挿入された挿入部材の穴部に楔部材を差し込む際に、楔部材に押されてさらに管材内に挿入部材が入り込んでしまう可能性がある。この場合、楔部材によって穴部を押し広げ、挿入部材の外径を拡げて管材内に挿入部材を固定することができなくなってしまう。そこで、挿入部材に、管材内へ必要以上入りすぎることのないようにストッパ手段を設けておいてもよい。
0023
以下に、本発明を実施例をもって説明する。図1は、本発明の一実施例としての引張試験に用いられる管材用治具の構成を示すものであり、本治具は、図1(a)の正面図および(b)の側面図に示す略円柱状の挿入部材1と、図1(c)の正面図に示す楔部材5とからなるものである。挿入部材1は、楔部材5が差し込まれるための穴部2が挿入方向に向かって縮径するように穿設されている。
0024
さらに挿入部材1の外側部には、穴部2と連通する2つの溝状切欠き部3が、円柱軸方向に沿って、該軸を中心として対象位置に形成されている。従って、挿入部材1は、溝状切欠き部3および穴部2によって分離された2つの半円柱型部材から構成されていることになる。ここでは、穴部2はこれら2つの分離部材が向かい合って一つの円錐状に形成される。また、楔部材5は、この2つの分離部材によって形成される穴部2に嵌合する円錐状差込部6を備えている。
0025
以上のような構成の治具を、引張試験を行なう管材7に固定する場合を図2を用いて以下に説明する。まず、管材7端部内へ2つの部材からなる挿入部材1を挿入する。この時、挿入部材1は、2つの半円柱状部材が組み合わされた状態で容易に挿脱できるよう管材7の内径より小さい外径を有するものとした。
0026
また、挿入部材1の底部周辺には、管材7内の奥に入り込み過ぎないようにストッパ部4が突設されている。このように管材7内に緩く嵌め込まれた挿入部材1の穴部2に、楔部材5の円錐状差込部6を差し込む(図2の(a))。
0027
円錐状差込部6は穴部2に嵌合するが、さらに楔部材5を押し込むと、穴部2および溝状切欠き部3が押し広げられ、挿入部材1を構成する2つの分離部材の距離が拡がり、挿入部材1の全体として外径が拡径して外側部が管材7の内面に密着し、さらに内面を押圧する。これによって挿入部材1および楔部材5は管材7内にしっかり固定された状態となる。こ状態において、引張試験機のチャックで管材7端部を挟持する(図2の(b))。
0028
チャックで挟持した部分は内部に上記のごとく治具が嵌め込まれているため、管材7自信の挟持による変形は僅かである。チャックで管材7端部を挟持した状態で引張試験を行なうと、試験の間中、チャックによる管材7端部の挟持は良好に維持される。
0029
引張試験終了後は、チャックを取り外し、楔部材5の円錐状差込部6を挿入部材1の穴部2から引く抜く。挿入部材1は、楔部材5による穴部2への押圧が解除され、押し広げられた穴部2および溝状切欠き部3は当初の状態に戻り、これに伴って挿入部材1の外径も小さくなって元の緩い嵌合状態に戻る。従って、チャックの挟持により管材7に少々の変形が生じていても、容易に挿入部材1を管材7内から取り出すことができる。治具が取り外された管廃材は、再生利用することができる。
0030
同一タイプの管材について複数回引張試験を繰返す場合には、同様に、挿入部材1および楔部材2を次の試験管材内に固定してからチャックで挟持して引張試験に供すれば良い。また、穴部の形状が同一の各種外径サイズの挿入部材を用意しておけば、その穴部形状に嵌合する一種類の楔部材が共有できるので、試験管材の内径に応じて挿入部材を適宜選択することによって、各種サイズの管材について引張試験を行なう場合に対応できる。
0031
もちろん、本発明の管材用治具は、引張試験を行なう場合のみに使用されるものではなく、引張試験機のチャック挟持のように、管材の強力な挟持が良好に維持されることが望まれる場合に有効である。
0032
なお、上記実施例においては、挿入部材の穴部とこれに嵌合する楔部材の差し込み部の形状を円錐状としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、挿入部材の穴部が挿入方向に縮径した錐状で、楔部材の差込部がこれに嵌合し、差込部をさらに押し込んでいく際に、両部材が接触面ですり合わされながら差込部が穴部を押し広げることができる形状であれば良い。
0033
さらに、上記実施例においては、溝状切欠き部を2つとし、挿入部材を2つの分離された部材で構成するものとしたが、本発明はこれに限らず、挿入部材を3つ以上の分離部材で構成しても良い。
0034
また、逆に挿入部材は切欠き部によって分離されない一体型としても良い。この場合、管材内面を押圧するように挿入部材の外径を拡径するための穴部および溝状切欠き部を押し広げる楔部材の押込力が挿入部材の弾性限界内であれば、楔部材を抜取れば挿入部材の外径は元の状態に縮径し、管材から容易に取り出すことができる。このような一体型の挿入部材の場合も、切欠き部は2つ以上あっても構わない。
0035
また、本発明の管材用治具を構成する材質としては、穴部に楔部材が差し込まれて管材内面を押圧して固定された状態において引張試験機のチャックなどに管材が挟持された際に、治具自身が管材と共に変形して、後に管材から取り出せなくなることがないように、硬い材質を用いる。例えば、SUS304、SUS316、インコネル、ハステロイ、ジルカロイ等を用いることができる。
発明の効果
0036
本発明は、以上説明したとおり、繰返し使用可能な管材用治具であり、従来のように一回使用ごとに使い捨てていた場合に比べて大幅に経費が削減されるという効果がある。
0037
また、本発明の治具は、引張試験などの強力な挟持状態終了後に容易に管材から取り外すことができるので、管廃材の再生利用が簡便に行なえる。
図面の簡単な説明
0038
図1本発明の一実施例による管材用治具の構成を示すものであり、(a)は本治具構成する挿入部材の正面図で(b)は側面図、(c)は本治具を構成する楔部材の正面図である。
図2図1に示した管材用治具を管材内に固定する各過程を示す説明図である。
図3従来の管材用治具の一例を示す説明図である。
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0039
1:挿入部材
2:穴部
3:溝状切欠き部
4:ストッパ部
5:楔部
6:円錐状差込部
7:管材