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目的
構成
効果
概要
背景
筋ジストロフィー〔進行性筋ジストロフィー(progressive muscular dystroprh:PMD)〕は、進行性に筋組織の変性が起こり、筋力の低下と筋萎縮が著しくなり、随意運動が困難となる代表的な遺伝性疾患の一種である。原因には膜異常説、神経原説、血管異常説などがあるが、詳細は不明であり治療法も確立していない。遺伝的進行性筋ジストロフィーの病理学的特徴は、白筋又は赤筋の変性壊死で、筋原繊維の崩壊にはリソソーム性プロテアーゼ(lysosomal protease)が重要な働きをしていると考えられている。例えば、骨格筋のAL帯に局在し、アクチンとミオシンとの間に介在しているタンパク質であるC−タンパク質が分解されると、筋原繊維の構造の安定性が弱まり、崩壊壊死が促進されることが予想されており、このようなプロテアーゼの探索は、筋ジストロフィーの発症原因や治療法等の研究において極めて重要な位置を占めている。前記のC−タンパク質を分解するプロテアーゼとしては、ニューランド等によりMMCP−4(Biochem.J.,294,127−135,1993)が報告されている。
概要
新規なプロテアーゼを提供する。
アミノ酸残基45個からなるアミノ末端領域以外の領域に、Ala IleSer Val Tyr Lys Ile のアミノ酸配列領域と、Gly Gly Thr(又はIle) Ser (又はHis) Glu Tyr Val Pro Tyr Ala Ala Xaa(未同定アミノ酸) Thr Glyのアミノ酸配列領域とを有する。
目的
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 1件
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この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
技術分野
背景技術
0002
筋ジストロフィー〔進行性筋ジストロフィー(progressive muscular dystroprh:PMD)〕は、進行性に筋組織の変性が起こり、筋力の低下と筋萎縮が著しくなり、随意運動が困難となる代表的な遺伝性疾患の一種である。原因には膜異常説、神経原説、血管異常説などがあるが、詳細は不明であり治療法も確立していない。遺伝的進行性筋ジストロフィーの病理学的特徴は、白筋又は赤筋の変性壊死で、筋原繊維の崩壊にはリソソーム性プロテアーゼ(lysosomal protease)が重要な働きをしていると考えられている。例えば、骨格筋のAL帯に局在し、アクチンとミオシンとの間に介在しているタンパク質であるC−タンパク質が分解されると、筋原繊維の構造の安定性が弱まり、崩壊壊死が促進されることが予想されており、このようなプロテアーゼの探索は、筋ジストロフィーの発症原因や治療法等の研究において極めて重要な位置を占めている。前記のC−タンパク質を分解するプロテアーゼとしては、ニューランド等によりMMCP−4(Biochem.J.,294,127−135,1993)が報告されている。
発明が解決しようとする課題
0003
前記のMMCP−4は、T細胞の培養液中の骨髄由来のマスト細胞から見出されたプロテアーゼであるのに対し、本発明者は、筋ジストロフィー症状を示す哺乳動物の骨格筋に特異的に存在し、C−タンパク質を分解する新規なプロテアーゼを見出した。本発明はこうした知見に基づくものである。
課題を解決するための手段
0004
従って、本発明は、アミノ酸残基45個からなるアミノ末端領域以外の領域に、配列表の配列番号2の配列で表される領域と、配列表の配列番号3〜6の配列のいずれか1つで表される領域とを有することを特徴とするプロテアーゼに関する。
0005
本発明のプロテアーゼは、以下に示す理化学的性質を有する。
(1)分子量
分子量は約27,000である。例えば、後述する実施例1及び2に示すように、単離精製した本発明のプロテアーゼを、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定して、確認することができる。
0006
(2)作用及び基質特異性
本発明のプロテアーゼは、骨格筋の筋原線維構成成分であるC−タンパク質に対して強い分解活性を示す。また、変性カゼインも加水分解する。牛血清アルブミンに対しては、弱い分解活性しか示さない。合成ペプチド基質に対しては、チロシンのカルボキシル末端側のペプチド結合を特によく加水分解するが、プロリン、アラニン、メチオニン、グルタミン、グルタミン酸、リジン、アルギニンなどのカルボキシル末端側のペプチド結合に対してはほとんど作用を示さない。合成ペプチド基質(0.1mM)に対する作用を表1に示す。
0007
表1において使用する略称の意味するところは、次に示すとおりである。Suc:サクシニル基、MCA:4−メチルクマリル−7−アミド残基、Boc:t−ブチルオキシカルボニル基、OBzl:オルトベンゾイル基、Glt:グルタリル−(4−カルボキシブチリル−)基、Z:ベンジルオキシカルボニル基、L:ロイシン残基、V:バリン残基、Y:チロシン残基、S:セリン残基、G:グリシン残基、P:プロリン残基、I:イソロイシン残基、A:アラニン残基、M:メチオニン残基、H:ヒスチジン残基、Q:グルタミン残基、E:グルタミン酸残基、K:リジン残基、T:スレオニン残基、R:アルギニン残基、D:アスパラギン酸残基、及びF:フェニルアラニン残基。
0008
基質相対活性(%)
Suc−L−L−V−Y−MCA 100
Suc−S−S−L−Y−MCA 41.7
Suc−L−Y−MCA 3.00
Suc−G−P−L−G−P−MCA 0.01
Suc−I−A−MCA 0.03
Suc−L−M−MCA 0.27
Suc−H−H−Q−MCA 0.03
Suc−H−Q−E−MCA 0.01
Suc−A−E−MCA 0.00
Boc−E−K−K−MCA 0.07
Boc−L−S−T−R−MCA 0.06
Boc−A−G−P−R−MCA 0.06
Boc−L−R−R−MCA 0.06
Boc−E(OBzl)−A−R−MCA 0.06
Boc−D(OBzl)−P−R−MCA 0.22
Boc−F−S−R−MCA 0.17
Boc−G−G−R−MCA 0.07
Boc−G−K−R−MCA 0.02
Boc−I−E−G−R−MCA 0.05
Boc−G−R−R−MCA 0.02
Boc−L−G−R−MCA 0.02
Boc−L−K−R−MCA 0.02
Boc−Q−A−R−MCA 0.09
Boc−G−R−MCA 0.03
Glt−G−R−MCA 0.03
Z−R−R−MCA 0.02
Z−F−R−MCA 0.02
0009
(3)酵素活性の測定方法
本発明のプロテアーゼの活性測定には、レゾルフィン若しくはフルオレセインイソチオシアネート(以下、FITCと称する)で標識した変性カゼインを基質として測定する方法、又は4−メチルクマリル−7−アミド(以下、MCAと称する)で標識した合成ペプチド、すなわちサクシニル−L−ロイシル−L−ロイシル−L−バリル−L−チロシン−MCA(以下、Suc−L−L−V−Y−MCAと称する)を基質として測定する方法を使用する。
0010
(A)レゾルフィン又はFITCで標識した変性カゼインを基質として測定する方法
レゾルフィン又はFITC標識の変性カゼイン0.5mg/ml(終濃度)を含むトリス−グリシン緩衝液〔(終濃度)0.14Mトリス−グリシン,pH8.5及び0.5M塩化ナトリウム〕80μlに、プロテアーゼ(10μg/ml溶液)10μlを加え、30℃、1時間反応させた後、50%トリクロロ酢酸溶液10μlを添加することにより酵素反応を停止させる。遠心操作後、採取した上清80μlを0.75Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.8)120μlに添加し、レゾルフィン標識変性カゼインを使用した場合には波長574nmの吸光度測定から、FITC標識変性カゼインを使用した場合には励起波長495nmによる蛍光波長520nmの蛍光強度測定から、分解された変性カゼイン量を定量し、プロテアーゼ活性を求める。
0011
(B)MCAで標識した合成ペプチドSuc−L−L−V−Y−MCAを基質として測定する方法
0.5Mトリス−グリシン緩衝液(pH9)10μl、5M塩化ナトリウム20μl及び純水59μlの混合液89μlに、プロテアーゼ(10μg/ml溶液)10μlを加え、引続き直ちに、ジメチルスルフォキシドに溶解した1mMのSuc−L−L−V−Y−MCAを1μl(終濃度10μM)添加攪拌し、30℃、20分間反応させた後、2M塩化ナトリウムを含む0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.3)1.4mlを添加することにより酵素反応を停止させる。遠心操作後、採取した上清の励起波長380nmによる蛍光波長460nmの蛍光強度を測定し、MCAの蛍光強度の標準線を使って加水分解された基質量を定量し、プロテアーゼ活性を求める。本明細書中においては、この測定条件を標準反応条件とする。また、20分間に合成ペプチドSuc−L−L−V−Y−MCAの1ナノモルを分解する酵素量を1単位と定義する。
0012
(4)至適pH及び安定pH範囲
本発明のプロテアーゼの酵素活性の至適pHは、約pH9である。例えば、後述する実施例3に示す方法で測定して、確認することができる。中性より酸性領域では酵素活性は弱く、pH6以下の酸性ではほぼ完全に活性を示さなくなる(図1参照)。緩衝液として、酢酸緩衝液(0.05M酢酸─酢酸ナトリウム、pH2.8〜4.8)、リン酸緩衝液(0.05Mリン酸ナトリウム−水酸化ナトリウム、pH4.9〜7.6)、トリス−塩酸緩衝液(0.05Mトリス−塩酸、pH7.4〜8.5)、トリス−グリシン緩衝液(0.05Mトリス−グリシン、pH7.8〜9.8)、及びグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(0.05Mグリシン−水酸化ナトリウム、pH8.4〜10.2)を用いた場合、牛血清アルブミン(1mg/ml)の存在下で氷冷しておけば、安定pH範囲はpH4.0〜10.2である。
0015
(7)各種阻害剤、活性化剤及び安定化剤の影響
本発明のプロテアーゼは、各種阻害剤に対して、α−キモトリプシン様のセリンプロテアーゼの性質を示す。合成ペプチドSuc−L−L−V−Y−MCAを基質として使用し、各種阻害剤の効果を調べた結果を表2及び表3に示す。
0016
阻害剤相対活性
阻害剤無添加 100%
キモスタチン16μM 7
160μM 1
PMSF 0.1mM 51
1.0mM 5
APMSF40μM 107
400μM 93
アプロチニン0.15μM 111
1.50μM 101
TLCK 0.1mM 106
1.0mM 94
TPCK0.1mM 63
1.0mM 59
0017
0018
例えば、キモトリプシン又はカテプシンA、B若しくはDの阻害剤であるキモスタチンにより活性を阻害される。また、トリプシン、キモトリプシンの阻害剤であるフェニルメタンスルホニルフルオライド(PMSF)で完全に阻害される。トリプシンの阻害剤であるアプロチニン又はL−1−クロロ−3−(4−トシルアミド)−7−アミノ−2−ヘプタノンハイドロクロライド(TLCK)では阻害されない。また、キモトリプシンの阻害剤であるL−1−クロロ−3−(4−トシルアミド)−4−フェニル−2−ブタノン(TPCK)で阻害されるが、トリプシン若しくはカテプシンBの阻害剤であるロイペプチン、トリプシン又はカテプシンA若しくはBの阻害剤であるアンチパイン、カテプシンDの阻害剤であるペプスタチン、又は血漿セリンプロテアーゼの阻害剤である4−(アミジノフェニル)メタンスルホニルフルオライド(APMSF)は、いずれも活性を阻害しない。更に、チオールプロテアーゼの阻害剤であるE−64、メタロプロテアーゼの阻害剤であるホスホラミドン、金属キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エクソペプチダーゼの阻害剤であるベスタチン、又は表には示していないがSH基阻害剤であるN−エチルマレイミド(NEM)若しくはp−クロロ−マーキュリックベンゾイックアシッド(PCMB)は、いずれも活性を阻害しない。
0020
(8)アミノ末端領域のアミノ酸配列
本発明のプロテアーゼは、アミノ末端領域に配列表の配列番号1の配列で表されるアミノ酸残基45個からなるアミノ酸配列を有する(なお、配列番号1の配列中でXaaは、未同定のアミノ酸残基である)。このアミノ酸配列は、アミノ末端の20アミノ酸残基及びDNAの全塩基配列が確定されている公知のプロテアーゼMMCP−4のN末端領域のアミノ酸配列と一致する。
0021
(9)アミノ末端領域以外の領域のアミノ酸配列
本発明のプロテアーゼは、前記アミノ酸残基45個からなるアミノ末端領域以外の領域に配列表の配列番号2の配列で表されるアミノ酸配列を有する。更に、本発明のプロテアーゼは、前記のアミノ末端領域以外の領域に配列表の配列番号3〜6の配列で表されるアミノ酸配列のいずれか1つを同時に有する。これらのアミノ酸配列は、前記のプロテアーゼMMCP−4の塩基配列から推測されるアミノ酸配列とは全く異なる配列であり、更に、その他の公知のアミノ酸配列又はその他の公知の遺伝子配列から推測されるアミノ酸配列のいずれとも異なる配列である。従って、本発明のプロテアーゼは、公知のタンパク質とは明らかに異なる新規なプロテアーゼである。
0022
(10)精製方法
本発明のプロテアーゼは、例えば、筋ジストロフィー症状を示す哺乳動物、好ましくは、遺伝性筋ジストロフィーマウスの骨格筋から、通常のタンパク質精製に用いられる方法を組み合わせることによって、調製することができる。例えば、後述する実施例1に記載したように、遺伝性筋ジストロフィーマウス骨格筋の破砕懸濁液から、アフィニティークロマトグラフィー及びゲル濾過を用いることにより、SDS─ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によって単一バンドとして検出される程度にまで精製することができる。
0023
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1:本発明のプロテアーゼの抽出・精製
筋ジストロフィー症状を示す哺乳動物として、ヒトのDuchenne型筋ジストロフィーと同様にジストロフィン遺伝子に異常をもった遺伝性筋ジストロフィーマウス(C57BL/10ScSn−MDX)を用いた。
0024
遺伝性筋ジストロフィーマウスの骨格筋100gを、A緩衝液〔0.6M塩化ナトリウムを含有する10mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.8)〕2000ml中に懸濁し、懸濁液を遠心分離(6500×g,20分間)した。沈殿物をA緩衝液で洗浄するため、A緩衝液2000mlに再懸濁し、続いて遠心分離(6500×g,20分間)を行なった。この洗浄操作を更に2回繰り返した後、3回目の再懸濁液をナイロンメッシュ(婦人用ナイロンストッキング)で濾過した。この濾過液を再度、遠心分離(6500×g,20分間)した。この遠心分離による沈殿物をB緩衝液〔2M塩化ナトリウムを含有する10mMトリス−塩酸緩衝液(pH10.3)〕100mlに懸濁し、0.1M水酸化ナトリウム溶液で懸濁液のpHを正確にpH10.3に調整した。この懸濁液を遠心分離(100000×g,60分間)し、上清を氷冷中に保存する一方、沈澱物をB緩衝液100mlに再懸濁してから遠心(100000×g,60分間)し、新たな上清を得た。この新たな上清と、先に氷冷中に保存した上清とを合わせて、粗抽出液とした。
0025
続いて、この粗抽出液を、レマビーン由来トリプシンインヒビターを固定化したアガロース(シグマ社)を充填したカラムに流し込んでアフィニティークロマトグラフィーを行ない、本発明のプロテアーゼ活性画分を得た。以下、この画分を酵素標品として用いた。精製の各ステップの結果を表4に示す。
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