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技術 アルミニウム系材の抵抗溶接方法

出願人 株式会社神戸製鋼所
発明者 江間光弘
出願日 1994年11月30日 (25年11ヶ月経過) 出願番号 1994-296834
公開日 1996年6月18日 (24年5ヶ月経過) 公開番号 1996-155653
状態 特許登録済
技術分野 スポット溶接 抵抗溶接とその制御
主要キーワード アルミニウム系材 最低長 所要電流 短時間通電 溶接点数 重ね抵抗溶接 板厚範囲 引張りせん断
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図面 (19)

目的

アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる2枚以上の被溶接材抵抗溶接により接合するに際し、比較的低い電流で高い継手強度が得られるアルミニウム系材抵抗溶接方法を提供する。

構成

アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる被溶接材料重ね抵抗溶接により接合するに際し、その溶接継手部の両側あるいは片側にアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる当て板を1枚以上添えて、被溶接材であるアルミニウムまたはアルミニウム合金と、前記当て板とを同時に溶接する。

概要

背景

アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミニウム系材料(以下、単にアルミニウム系材という)の重ね抵抗溶接とは、アルミニウム系材からなる板状の被溶接材を2枚以上重ね合わせ1対の電極で狭持し、被溶接材を電極により加圧しつつ通電することによってアルミニウム系材からなる被溶接材を抵抗発熱させて溶融接合する方法である。重ね抵抗溶接(以下、単に抵抗溶接という)としては、抵抗スポット溶接が各種製造業において一般に広く利用されている。

ところが、アルミニウム系材は炭素鋼またはステンレス鋼などの鋼系材料(以下、鋼系材という)に比して電気伝導率が高いとともに、熱伝導率も高いので、抵抗が小さく発熱しにくいと同時に熱が逃げやすいため、従来、大電流短時間通電することによりアルミニウム系材を抵抗溶接している。

そのため容量の小さな鋼用の溶接機では大電流を得られず、アルミニウム系材を抵抗溶接するためには、既存の鋼用溶接機を転用できない上、高価な大容量の溶接機を導入する必要がある。また、溶接機が大型になり可搬性が無くなる。

一方、アルミニウム系材は熱伝導率が高いために板厚方向の温度勾配が小さく溶接部における断面溶け込み形状は板厚方向への溶け込みが大きいものとなり、溶融部ナゲット)は被溶接材の表面近傍にまで広がる。このため、連続打点溶接するなど電極の先端が損耗すると溶融領域が被溶接材の表面に達してしまったり、溶接部の表面に割れが発生するなど溶接部の外観が非常に悪くなると同時に電極汚損の原因にもなる。

さらにアルミニウム系材の表面には抵抗の大きな酸化膜が存在し、被溶接材料と電極との間の接触抵抗が大きいとともに板厚方向の温度勾配が小さいため、アルミニウム系材の表面温度が極めて高くなり、容易に銅合金製電極と圧着してしまうのでアルミニウム系材を連続打点溶接する場合には電極表面を頻繁に研磨する必要がある。

このように、従来のアルミニウム系材の抵抗溶接においては、所要電流が高いことによる溶接機の問題点、被溶接材の表面にまで溶融領域が達してしまったり、溶接部の表面に割れが発生するなど溶接品質上の問題点、電極の連続打点寿命が短く頻繁に研磨しなければならず生産性が低下するという問題があった。

これらの問題点を解決しアルミニウム系材の抵抗溶接性を向上させるための様々な工夫がなされてきた。先ず、第一に被溶接材のアルミニウム系材よりも抵抗の高い物質を介在させるなどして被溶接材の接合界面の抵抗を高くすることにより溶接電流の低電流化を図る技術がある。例えば、特開平4-123879号公報や特開平5-69155 号公報や特開平6-122080号公報などにこの技術が開示してある。

しかし、これらの被溶接材の接合界面の抵抗を高くすることにより溶接電流の低電流化を図る技術の問題点は接合界面のみの抵抗を高くすることが非常に難しい。被溶接材であるアルミニウム系材の表面処理により接合界面の抵抗を高くする場合、片面のみを表面処理することが難しいばかりか、表面処理した面が接合界面になるよう組み立てねばならず、構造物の設計に制約をうけ、組立工程上も問題がある。

また、接合界面に高抵抗物質インサートする方法も溶接部(ナゲット内)のみに介在させることは不可能であり、高抵抗物質として例えばFe粉末を用いた場合、溶接部近傍にFe粉末が必ず残り、これが被溶接材のアルミニウム系材と接触して電食を起こすため防食処理をしなければならないなどの問題点がある。

アルミニウム系材の抵抗溶接における低電流化を図る第二の技術として被溶接材と溶接電極との間にアルミニウム系材よりも固有抵抗の高い金属を介在させることにより低電流化を図る技術がある。例えば、特開昭57-56175号公報や特開平6-71455 号公報などにこの技術が開示してある。

しかし、これらの被溶接材と溶接電極との間にアルミニウム系材よりも固有抵抗の高い金属を介在させることにより低電流化を図る技術は、被溶接材の表面側(電極側)の方の発熱が接合界面よりも大きくなり、被溶接材の溶接部の表面まで溶融してしまう。したがって、溶接後にこれらの介在させた固有抵抗の高い金属を取り除いた場合、溶接部の外観などの点で問題がある。一方、溶接後もこれらの金属を取り除かなかった場合は、アルミニウム系材よりも固有抵抗の高い金属材料として鋼系材料などの異種金属を用いると、前述と同様に電食の問題があるので防食処理をしなければならないなどの問題がある。

さらにアルミニウム系材の抵抗溶接における電極寿命延命化技術においても様々な開発がなされている。例えば、特開平4-358094号公報などに表面処理により被溶接材と電極との間の接触抵抗を低減し電極寿命の延命化を図る方法や、特開平4-322886号公報などに被溶接材と電極との間に金属材料を介して通電し、被溶接材と電極とが直接接しないようにして電極寿命の延命化を図る方法、あるいはアルミニウム系材の抵抗スポット溶接における電極寿命延命化のための種々の電極材料開発や溶接装置開発がなされている。

また、接着剤による接合法と抵抗スポット溶接法を併用するウエルドボンド工法がある。このウエルドボンド工法によれば、接着部継手強度に寄与するため1点当たりの継手強度が高強度になり、所要の継手強度を得るための溶接点数が抵抗スポット溶接法のみの場合に比べ少なくてすみ、結果的に生産性が向上すると言われている。

概要

アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる2枚以上の被溶接材を抵抗溶接により接合するに際し、比較的低い電流で高い継手強度が得られるアルミニウム系材の抵抗溶接方法を提供する。

アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる被溶接材料を重ね抵抗溶接により接合するに際し、その溶接継手部の両側あるいは片側にアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる当て板を1枚以上添えて、被溶接材であるアルミニウムまたはアルミニウム合金と、前記当て板とを同時に溶接する。

目的

本発明は、上記のアルミニウム系材の抵抗溶接における種々の問題点、すなわち鋼系材の抵抗溶接に比べ、所要電流が高いことに起因する問題点、板厚方向の溶け込みが深いことに起因する問題点、連続打点性が短いことに起因する問題点を解決するため、比較的低い電流で高い継手強度が得られるアルミニウム系材の抵抗溶接方法を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる被溶接材料重ね抵抗溶接により接合するに際し、その溶接継手部の両側にアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる当て板を1枚以上添えて、被溶接材であるアルミニウムまたはアルミニウム合金と、前記当て板とを同時に溶接することを特徴とするアルミニウム系材抵抗溶接方法

請求項2

アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる被溶接材料を重ね抵抗溶接により接合するに際し、その溶接継手部の片側のみにアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる当て板を1枚以上添えて、被溶接材であるアルミニウムまたはアルミニウム合金と、前記当て板とを同時に溶接することを特徴とするアルミニウム系材の抵抗溶接方法。

請求項3

前記当て板の厚さが、最も薄い被溶接材料の板厚の 1/10 以上であり、4mm 以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のアルミニウム系材の抵抗溶接方法。

請求項4

前記当て板の厚さが、最も薄い被溶接材料の板厚以上であり、2mm 以下であることを特徴とする請求項1または2記載のアルミニウム系材の抵抗溶接方法。

請求項5

前記当て板の形状が、中心からの最低長さが 5mm以上である多角形または円形ないし楕円形などであることを特徴とする請求項1または2または3または4記載のアルミニウム系材の抵抗溶接方法。

請求項6

前記被溶接材の厚さが、0.4mm 以上、2.0mm 以下で、同厚または異厚であることを特徴とする請求項1または2または3または4または5記載のアルミニウム系材の抵抗溶接方法。

技術分野

0001

本発明は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミニウム系材料重ね抵抗溶接方法に関するものである。

背景技術

0002

アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミニウム系材料(以下、単にアルミニウム系材という)の重ね抵抗溶接とは、アルミニウム系材からなる板状の被溶接材を2枚以上重ね合わせ1対の電極で狭持し、被溶接材を電極により加圧しつつ通電することによってアルミニウム系材からなる被溶接材を抵抗発熱させて溶融接合する方法である。重ね抵抗溶接(以下、単に抵抗溶接という)としては、抵抗スポット溶接が各種製造業において一般に広く利用されている。

0003

ところが、アルミニウム系材は炭素鋼またはステンレス鋼などの鋼系材料(以下、鋼系材という)に比して電気伝導率が高いとともに、熱伝導率も高いので、抵抗が小さく発熱しにくいと同時に熱が逃げやすいため、従来、大電流短時間通電することによりアルミニウム系材を抵抗溶接している。

0004

そのため容量の小さな鋼用の溶接機では大電流を得られず、アルミニウム系材を抵抗溶接するためには、既存の鋼用溶接機を転用できない上、高価な大容量の溶接機を導入する必要がある。また、溶接機が大型になり可搬性が無くなる。

0005

一方、アルミニウム系材は熱伝導率が高いために板厚方向の温度勾配が小さく溶接部における断面溶け込み形状は板厚方向への溶け込みが大きいものとなり、溶融部ナゲット)は被溶接材の表面近傍にまで広がる。このため、連続打点溶接するなど電極の先端が損耗すると溶融領域が被溶接材の表面に達してしまったり、溶接部の表面に割れが発生するなど溶接部の外観が非常に悪くなると同時に電極汚損の原因にもなる。

0006

さらにアルミニウム系材の表面には抵抗の大きな酸化膜が存在し、被溶接材料と電極との間の接触抵抗が大きいとともに板厚方向の温度勾配が小さいため、アルミニウム系材の表面温度が極めて高くなり、容易に銅合金製電極と圧着してしまうのでアルミニウム系材を連続打点溶接する場合には電極表面を頻繁に研磨する必要がある。

0007

このように、従来のアルミニウム系材の抵抗溶接においては、所要電流が高いことによる溶接機の問題点、被溶接材の表面にまで溶融領域が達してしまったり、溶接部の表面に割れが発生するなど溶接品質上の問題点、電極の連続打点寿命が短く頻繁に研磨しなければならず生産性が低下するという問題があった。

0008

これらの問題点を解決しアルミニウム系材の抵抗溶接性を向上させるための様々な工夫がなされてきた。先ず、第一に被溶接材のアルミニウム系材よりも抵抗の高い物質を介在させるなどして被溶接材の接合界面の抵抗を高くすることにより溶接電流の低電流化を図る技術がある。例えば、特開平4-123879号公報や特開平5-69155 号公報や特開平6-122080号公報などにこの技術が開示してある。

0009

しかし、これらの被溶接材の接合界面の抵抗を高くすることにより溶接電流の低電流化を図る技術の問題点は接合界面のみの抵抗を高くすることが非常に難しい。被溶接材であるアルミニウム系材の表面処理により接合界面の抵抗を高くする場合、片面のみを表面処理することが難しいばかりか、表面処理した面が接合界面になるよう組み立てねばならず、構造物の設計に制約をうけ、組立工程上も問題がある。

0010

また、接合界面に高抵抗物質インサートする方法も溶接部(ナゲット内)のみに介在させることは不可能であり、高抵抗物質として例えばFe粉末を用いた場合、溶接部近傍にFe粉末が必ず残り、これが被溶接材のアルミニウム系材と接触して電食を起こすため防食処理をしなければならないなどの問題点がある。

0011

アルミニウム系材の抵抗溶接における低電流化を図る第二の技術として被溶接材と溶接電極との間にアルミニウム系材よりも固有抵抗の高い金属を介在させることにより低電流化を図る技術がある。例えば、特開昭57-56175号公報や特開平6-71455 号公報などにこの技術が開示してある。

0012

しかし、これらの被溶接材と溶接電極との間にアルミニウム系材よりも固有抵抗の高い金属を介在させることにより低電流化を図る技術は、被溶接材の表面側(電極側)の方の発熱が接合界面よりも大きくなり、被溶接材の溶接部の表面まで溶融してしまう。したがって、溶接後にこれらの介在させた固有抵抗の高い金属を取り除いた場合、溶接部の外観などの点で問題がある。一方、溶接後もこれらの金属を取り除かなかった場合は、アルミニウム系材よりも固有抵抗の高い金属材料として鋼系材料などの異種金属を用いると、前述と同様に電食の問題があるので防食処理をしなければならないなどの問題がある。

0013

さらにアルミニウム系材の抵抗溶接における電極寿命延命化技術においても様々な開発がなされている。例えば、特開平4-358094号公報などに表面処理により被溶接材と電極との間の接触抵抗を低減し電極寿命の延命化を図る方法や、特開平4-322886号公報などに被溶接材と電極との間に金属材料を介して通電し、被溶接材と電極とが直接接しないようにして電極寿命の延命化を図る方法、あるいはアルミニウム系材の抵抗スポット溶接における電極寿命延命化のための種々の電極材料開発や溶接装置開発がなされている。

0014

また、接着剤による接合法と抵抗スポット溶接法を併用するウエルドボンド工法がある。このウエルドボンド工法によれば、接着部継手強度に寄与するため1点当たりの継手強度が高強度になり、所要の継手強度を得るための溶接点数が抵抗スポット溶接法のみの場合に比べ少なくてすみ、結果的に生産性が向上すると言われている。

発明が解決しようとする課題

0015

しかし、例えば表面処理により被溶接材と電極との間の接触抵抗を低減する技術は、前述同様に片面のみを表面処理することが難しく、表面処理した面が電極側になるように組み立てねばならず、構造物の設計に制約を受け、組立工程上も問題があるなど上記の様々な電極寿命の延命化技術あるいは生産性向上技術はいずれも溶接品質や接合コストなどの点をも考慮すると実用までに至っていない。

0016

本発明は、上記のアルミニウム系材の抵抗溶接における種々の問題点、すなわち鋼系材の抵抗溶接に比べ、所要電流が高いことに起因する問題点、板厚方向の溶け込みが深いことに起因する問題点、連続打点性が短いことに起因する問題点を解決するため、比較的低い電流で高い継手強度が得られるアルミニウム系材の抵抗溶接方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0017

本発明は、アルミニウム系材からなる被溶接材を重ね抵抗溶接により接合するに際し、その溶接継手部の両側もしくは片側にアルミニウム系材からなる当て板を1枚以上添えて、被溶接材と当て板とを同時に溶接するアルミニウム系材の抵抗溶接方法である。さらに、上記当て板の板厚は、最も薄い被溶接材の板厚の1/10以上、 4mm以下で、当て板の大きさは、中心からの最低長さが 5mm以上である。被溶接材の板厚が、 0.4mm以上、 2.0mm以下で、同厚または異厚であるアルミニウム系材の抵抗溶接方法である。

0018

アルミニウム系材からなる被溶接材を抵抗溶接する場合、図1に示すように、従来の当て板を添えずに溶接し、図5に示すように引張りせん断試験を行うと図6のように溶接部で変形し破断する。これは重ね合わせ継手であるため荷重のかかる方向に段差が生じるので溶接部にモーメントが発生し変形するからである。被溶接材の板厚が増すなど剛性が大きくなると変形が少なくても破断に至るが、板厚が薄くなるなど被溶接材の剛性が小さいと低い荷重でも溶接部で変形し破断してしまう。

0019

そこで図2および図3に示すように、溶接継手部の少なくとも片側にアルミニウム系材からなる当て板を添えて、被溶接材と当て板とを同時に溶接すると、この当て板の剛性により、図7のように高い引張りせん断荷重がかかっても溶接継手部が変形しにくくなり、結果として高い継手強度が得られる。また、場合によっては溶接部だけで破断せず、図8のように母材をも破断に至るほどの高強度の継手が得られる。

0020

一方、アルミニウム系材からなる被溶接材を重ね抵抗溶接する場合、被溶接材の板厚が厚くなるほど所要の継手強度を得るために必要な溶接電流は大きくなると言われているが、当て板を添えることにより被溶接材と被溶接材の界面が増え、その結果、電極間の抵抗が増えるため当て板を添えない従来の溶接よりも比較的低い電流で大きな発熱が得られ、低電流でも溶接可能であることがわかった。

0021

したがって、溶接継手部の片側に当て板を添えても溶接継手の高強度化、溶接電流の低電流化の効果が認められるが、溶接継手の両側に当て板を添えるとその効果はさらに大きくなる。

0022

また、当て板の板厚が厚ければ厚いほど溶接継手の高強度化の効果が期待できるものの、最も厚い被溶接材の板厚の2倍よりも厚くなると溶接電流の低電流化の効果がなくなる。逆に、最も薄い被溶接材の板厚の1/10よりも薄いと溶接継手の高強度化の効果が少なくなる。最も好ましい当て板の板厚は、最も薄い被溶接材の板厚と同等以上で、かつ最も厚い被溶接材の板厚の2倍以下である。

0023

さらに本発明の抵抗溶接方法によれば、従来の当て板を添えない溶接方法よりも1溶接点あたりの継手効率が非常に高いため、所要の溶接構造物造り上げるための溶接点数は従来法による場合よりも少なくてすむ。また、従来法よりも低い溶接電流で所要の継手強度が得られることと、当て板を添えるため溶接部の板厚が厚くなり、被溶接材の電極側表面近傍にまで溶け込みが深くならないことから、従来法に比べ被溶接材の電極側表面の温度が上昇しない。その結果、銅合金製の溶接電極を損耗させなくてすみ、溶接電極の長寿命化につながる。

0024

また、当て板の大きさについては、当て板が小さくなると当て板自身の熱容量が小さくなり抵抗発熱し易いため、低電流化の効果が期待できるものの、当て板中心からの最低長さが 5mm未満になると溶接継手の高強度化の効果は少なくなる。当て板が大きくなると継手強度が高くなるが、好ましい当て板の最低長さは10mm以上である。当て板形状については特に限定しないが、多角形または円形など必要に応じて決定する。

0025

一方、被溶接材の板厚が厚くなると被溶接材自身の剛性が高くなるため引張せん断荷重がかかっても溶接部が変形しにくくなり、本発明法による溶接継手の高強度化の効果はあまり期待できなくなる。逆に、被溶接材の板厚が薄いと比較的低い溶接電流でも所要の継手強度が得られ、当て板を添えることにより母材で破断しても板厚が薄いためあまり高強度が得られないことなどから被溶接材の板厚が薄すぎても、本発明法による効果はあまり期待できなくなる。したがって、被溶接材の板厚は 0.4mm以上、 2.0mm以下で同厚または異厚でもよい。

0026

なお、本発明における当て板が構造物の一部となり得たとしても、何ら差し支えないし。本発明の効果が失われるものではない。また、被溶接材の溶接部のみを二重、三重に折り返し、本発明における当て板の代用とすることもできる。

0027

以下に、本発明の実施例について説明する。
実施例1
被溶接材としてA5182板厚1.0mm をJIS Z 3136スポット溶接継手の引張せん断方法に準拠して、30mm幅×100mm 長さに切断した試験片を準備した。一方、当て板も同じA5182 板厚1.0mm を30mm幅×30mm長さに切断したものを用い、図1〜4に示すように当て板なしの場合(比較例)、当て板を溶接継手部の片側に添えた場合、当て板を溶接継手部の両側に1枚ずつ添えた場合、当て板を溶接継手部の両側に2枚ずつ添えた場合について重ね抵抗溶接し、引張せん断試験を実施し、引張せん断荷重および溶接部の破断径を比較検討した。その結果を表1に示す。

0028

溶接条件を以下に示す。
溶接機:単相交流抵抗スポット溶接機
電極:16mmφで先端径100mm のR型電極(クロム銅合金
加圧力:3000N一段一定加圧
通電時間:140ms
溶接電流:16kA、24kA、32kA

0029

0030

表1に示すように、溶接条件を固定し、当て板なしの場合(比較例)、当て板を溶接継手部の片側に添えた場合、当て板を溶接継手部の両側に1枚ずつ添えた場合、当て板を溶接継手部の両側に2枚ずつ添えた場合を比較した結果、当て板なしの場合(比較例)に比べて、当て板を溶接継手部の片側に1枚添えただけでも、引張せん断荷重が 110%以上上昇し、当て板を溶接継手部の両側に1枚ずつ添えた場合は、 170%以上、さらに当て板を溶接継手部の両側に1枚ずつ添えた場合は、 190%以上上昇した。

0031

溶接部の破断径を比較すると、同じ溶接条件でも当て板を添えた方が破断部の径が大きくなり、当て板の枚数が増えるにしたがい破断径が大きくなり引張せん断荷重も上昇する。また、当て板を溶接継手部の両側に1枚以上ずつ添えた場合、24kA以上の電流で溶接すると被溶接材が破断する母材破断となり約5000N 以上もの非常に高い引張せん断荷重が得られた。一方、16kAという低い電流で溶接すると、当て板なしの場合(比較例)は、引張せん断荷重は高々1400N しか得られないが、当て板を溶接継手部の片側に1枚添えただけでも約 150%上昇し、当て板を溶接継手部の両側に1枚ずつ添えた場合は約 200%上昇し、さらに当て板を溶接継手部の両側に2枚ずつ添えた場合は約 300%上昇した。すなわち、16kAという比較的低い電流でも、当て板を溶接継手部の片側に1枚添えたことにより約2000N 、当て板を溶接継手部の両側に1枚ずつ添えることにより2700N 、当て板を溶接継手部の両側に2枚ずつ添えることにより4000N 以上の高い引張せん断荷重が得られている。

0032

実施例2
本例では、実施例1と同様に被溶接材としてA5182板厚1.0mm をJIS Z 3136スポット溶接継手の引張せん断方法に準拠して、30mm幅×100mm 長さに切断した試験片を準備した。一方、当て板は 0.2mmから4.0mm までの5000系(Al-Mg系) のアルミニウム材を30mm幅×30mm長さに切断したものを用いて重ね抵抗溶接し、当て板の厚さと引張せん断荷重との関係について調査した。当て板は溶接継手部の両側に1枚ずつ添え、下記のように溶接条件を固定し、当て板の厚さを変化させて溶接し、引張せん断試験を実施した。その結果を図9および図10にしめす。

0033

溶接条件を以下に示す。
溶接機:単相交流式抵抗スポット溶接機
電極:16mmφで先端径100mm のR型電極(クロム銅合金)
加圧力:3000N一段一定加圧
通電時間:140ms
溶接電流:20kA、24kA

0034

図9のように、溶接電流が20kAの場合、当て板を添えない比較例の場合は、高々1800N/点の引張せん断荷重しか得られないが、0.2mm の薄い板でも当て板として溶接部の両側に1枚ずつ添えて溶接することにより1点当たり3000N 以上の引張せん断荷重が得られる。この当て板の板厚を厚くしていくと溶接継手部の剛性が大きくなるため、1点当たりの引張せん断荷重は大きくなっていき、当て板の板厚が1.2mm 以上では約5000N/点以上の引張せん断荷重が得られた。当て板の板厚が2mm 以上になると引張せん断荷重が低下していくが、これは当て板の板厚が厚くなりすぎ継手部の熱容量が増え、当て板の板厚が1.2mm や1.6mm の場合と同じ大きさのナゲットを得るためには、より大きな入熱すなわち溶接電流が必要になるからである。

0035

本例の場合、当て板の板厚が2mm の場合の破断径は2個の平均で5.55mmであった。これに対して、当て板の板厚が1.2mm の場合は、破断径は2個の平均で6.40mm 、当て板の板厚が1.6mm の場合は、破断径は2個の平均で6.24mmであった。このように、当て板の板厚が厚くなりすぎるとナゲットが大きくならず、引張せん断荷重が低下する。当て板の板厚が1.2mm の場合と1.6mm の場合を比較すると、1.2mm の場合の破断径は6.40mm、1.6mm の場合の破断径は6.24mmであり、1.6mm の場合の方が若干破断径が小さいにもかかわらず1.2mm の場合よりも高強度が得られている。これは、1.6mm の方が剛性が大きいため当て板の効果が発揮されたものと思われる。さらに、当て板の板厚を厚くしていくと、1.2mm や1.6mm の場合よりも引張せん断荷重は低下するものの、4.0mm の当て板を用いても3000N/点以上の引張せん断荷重が得られ、当て板を添えない比較例の約2倍の高強度となっている。

0036

一方、溶接電流を24kAに上げると、図10のように引張せん断荷重が全体的に高くなり、破断形態が当て板の板厚が薄い場合は、図6のようなボタン破断となるが、当て板が1.0mm 以上に厚くなると図8のような母材破断となり非常に高い継手強度が得られる。したがって、0.2mm の薄い当て板や4.0mm という厚い当て板でも同じ溶接条件(4.0mmの場合は溶接電流が20kAの場合)で溶接した場合、比較例の当て板の無い場合よりも高い継手強度が得られる。特に被溶接材が1.0mm の場合は、 1.0mm〜2.0mm (被溶接材の板厚と同厚から2倍)の当て板を添えて溶接すると破断形態が母材破断となる非常に高い継手強度が得られている。

0037

しかし、本実施例においては、 1.0mmから2.0mm の当て板を添えた場合、最も高い継手強度が得られたが、この結果は被溶接材の板厚が異なれば最も良好な板厚範囲は異なると推定される。被溶接材料の板厚が2.0mm 以下の場合、0.2mm の薄い板でも当て板として溶接継手の両側に1枚ずつ添えると当て板を添えない比較例よりも溶融部(ナゲット)の径が大きくなり引張せん断荷重が高くなる。逆に、0.4mm という薄いアルミニウム材を被溶接材として、2.0mm という厚い当て板を添えても同じ溶接条件(溶接電流:20kA)で溶接すると、当て板を添えない比較例に比べ約3倍の引張せん断荷重が得られる。

0038

したがって、本発明では、当て板の板厚限定範囲は薄い方は、被溶接材の板厚の1/10以上とし、厚い方は、あまり厚すぎても溶接部の外観(美観) や当て板を添えることによる溶接構造物の重量増の問題点から本実施例でその効果を確認した4mm 以下とし、本実施例において母材破断となった最も薄い被溶接材の板厚の1倍以上2mm 以下を最も良好な当て板の板厚範囲として限定している。

0039

実施例3
被溶接材は実施例1と同様にA5182板厚1.0mm をJIS Z 3136スポット溶接継手の引張せん断方法に準拠して、30mm幅×100mm 長さに切断した試験片を準備した。一方、当て板も実施例1と同様にA5182 板厚1.0mm を用い、一辺の長さが10mmから50mmまでの正方形と、幅30mmで長さが10mmから100mm までの長方形の当て板を用意し、図11および12に示すように、溶接継手部の両側に1枚ずつ添えて重ね抵抗溶接し、引張せん断試験を実施しすることにより、当て板の大きさ(一辺の長さ)および当て板の長さが溶接継手強度に与える影響について調査した。溶接条件を下記のように固定して、当て板の大きさ(一辺の長さ)および当て板の長さを変化させ調査した結果を図13および図14に示す。

0040

溶接条件を以下に示す。
溶接機:単相交流式抵抗スポット溶接機
電極:16mmφで先端径100mm のR型電極(クロム銅合金)
加圧力:3000N一段一定加圧
通電時間:140ms
溶接電流:20kA

0041

図13のように、一辺の長さが10mmという小さな正方形のアルミニウム板を当て板として使用しても当て板を添えない比較例の場合に比べ約2倍の引張せん断荷重が得られた。当て板の一辺の長さが長くなり当て板の大きさが大きくなると継手強度が高くなっていくが、30mm以上に大きくしても、継手強度はあまり高くならない。一方、当て板の長さの影響についても、図14のように当て板の長さが10mm以上あれば、当て板を添えない比較例の場合に比べ約2倍の引張せん断荷重が得られ、当て板を添える効果が認められる。

0042

本例は、一辺の長さが10mm以上の正方形または長方形からなる当て板について調査したが、当て板の形状は正方形または長方形でなくとも本発明の効果が失われるものではない。例えば、図15に示すような、多角形や円形、楕円形などの場合の方が溶接構造物によっては溶接部の美観性の点から優れている場合もある。

0043

実施例4
本例では、当て板をA5182 1.2mm板厚×30mm幅×30mm長さに固定し、被溶接材の板厚を変化させて本発明法の被溶接材板厚に対する効果を調査した。被溶接材としてA5182 板厚0.4mm 、0.8mm 、1.0mm 、1.2mm 、2.0mm の5種類の板厚の異なるアルミニウム材を実施例1と同様に30mm幅×100mm 長さに切断し試験片を準備した。溶接条件を下記のように固定して、当て板なしの場合 (比較例) と当て板を溶接継手部の両側に1枚ずつ添えた場合について重ね抵抗溶接し、引張せん断試験を実施して、引張せん断荷重および溶接部の破断径を比較検討した。その結果を表2に示す。

0044

溶接条件を以下に示す。
溶接機:単相交流式抵抗スポット溶接機
電極:16mmφで先端径100mm のR型電極(クロム銅合金)
加圧力:3000N一段一定加圧
通電時間:140ms
溶接電流:20kA

0045

表2に示すように、溶接条件を固定し、当て板なしの場合 (比較例) と当て板を溶接継手部の両側に1枚ずつ添えた場合を比較すると、被溶接材の板厚が0.4mm の場合は、1.2mm の当て板を溶接継手部の両側に1枚ずつ添えることにより同じ溶接条件にもかかわらず、当て板なしの場合 (比較例) に比べ 200%以上引張せん断荷重が上昇している。この上昇率は被溶接材の板厚が0.8mm 、1.0mm 、1.2mm と増すに従い大きくなり、1.0mm 、1.2mm の場合は 300%以上にも上昇している。被溶接材の板厚が2.0mm と厚くなると、被溶接材自身の剛性が高くなるため引張せん断荷重の上昇率は低くなるものの当て板なしの場合 (比較例) に比べ 150%引張せん断荷重が上昇している。

0046

0047

実施例5
本例では、試験片ではなく実際の構造物におけるアルミニウム板の接合に本発明を適用した場合を想定し、A5182板厚1.0mm を400mm 幅×100mm 長さに切断したアルミニウム板2枚を重ね抵抗溶接する場合において、本発明を適用した場合と当て板を添えない比較例とを比較した。

0048

溶接方法はA5182 1.0mm板厚×400mm 幅×100mm 長さの板を図16のように、30mm重ね合わせ、35mmピッチで11打点溶接した。また、本発明例は、当て板としてはA5182 1.0mm 板厚×30mm幅×400mm 長さの当て板を図17のように溶接継手部の両側に1枚ずつ添えた場合と、A5182 1.0mm 板厚×30mm幅×30mm長さの当て板を図18のように溶接継手部の両側に1枚ずつ添えた場合の二通りである。溶接条件を下記のように固定した。

0049

溶接条件を以下に示す。
溶接機:単相交流式抵抗スポット溶接機
電極:16mmφで先端径100mm のR型電極(クロム銅合金)
加圧力:3000N一段一定加圧
通電時間:140ms
溶接電流:24kA

0050

溶接後、各溶接点ごとに幅30mmの試験片を切り出し、引張せん断試験を実施した。その結果を図19に示す。溶接条件が同じであるにもかかわらず、当て板を添えない比較例の場合は、引張せん断荷重が1点当たり2000N〜3000N であるのに対し、本発明例では約5000N と比較例に比べ約2倍の引張せん断荷重が得られている。

0051

以上のように、本発明法の実施例を示してきたが、溶接機や溶接条件、電極形状などが変わったとしても本発明の効果が失われるものではない。また、本発明法の効果を溶接点1点当たりの引張せん断荷重により評価してきたが、十字引張試験においても同様に本発明法により比較的低電流で高強度が得られることは実施例から容易に推定できる。また、本発明法によれば溶接部が当て板により補強されているため、当て板を添えない比較例に対し、溶接継手の疲労強度衝撃性能などが格段に向上することは明らかである。さらに、例えば油が付着するなど被溶接材の表面状態が悪く溶接性(連続打点性)の劣るアルミニウム材であっても、本発明法の当て板材の表面状態のみ良好にしておけば溶接電極を汚損することなく溶接可能となることなども容易に推定できる。

発明の効果

0052

以上述べたところから明らかなように、本発明によれば従来の抵抗溶接方法よりも比較的低い溶接電流で非常に高い継手強度が得られ、容量の小さい溶接機であっても溶接可能となり、所要の継手強度を得るための溶接点数が少なくてすみ溶接構造物の生産性が向上する効果がある。

図面の簡単な説明

0053

図1従来の抵抗溶接法を説明する図である。
図2本発明の抵抗溶接法を説明する図である。
図3本発明の抵抗溶接法を説明する図である。
図4本発明の抵抗溶接法を説明する図である。
図5従来の抵抗溶接法による継手の引張せん断試験を説明する図である。
図6従来の抵抗溶接法による継手の引張せん断試験後の破断形態を説明する図である。
図7本発明の抵抗溶接法による継手の引張せん断試験を説明する図である。
図8本発明の抵抗溶接法による継手の引張せん断試験後の破断形態を説明する図である。
図9溶接電流が20kAの場合の当て板板厚と引張せん断荷重との関係を示す図である。
図10 溶接電流が24kAの場合の当て板板厚と引張せん断荷重との関係を示す図である。
図11 実施例3の試験片形状を示す模式図である。
図12 実施例3の試験片形状を示す模式図である。
図13 当て板の一辺の長さと引張せん断荷重との関係を示す図である。
図14 当て板の長さと引張せん断荷重との関係を示す図である。
図15 当て板の形状と大きさを示す模式図である。
図16 実施例5の試験片形状を示す模式図である。
図17 実施例5の試験片形状を示す模式図である。
図18 実施例5の試験片形状を示す模式図である。
図19 実施例5の試験結果を示す図である。

--

0054

1…被溶接材、2…電極、3…当て板、M…当て板中心からの最低長さ。

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