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技術 散乱吸収体内の散乱特性・吸収特性の測定方法及び装置

出願人 浜松ホトニクス株式会社
発明者 三輪光春土屋裕上田之雄
出願日 1994年11月7日 (24年1ヶ月経過) 出願番号 1994-272508
公開日 1996年5月31日 (22年6ヶ月経過) 公開番号 1996-136448
状態 特許登録済
技術分野 光学的手段による材料の調査、分析 その他の診断装置 生体の呼吸・聴力・形態・血液特性等の測定
主要キーワード 位置制御ユニット インパルス光 ゼリー状体 光切替器 近赤外線吸収スペクトル 光子流 各基準時刻 バンド型
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重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(1996年5月31日)のものです。
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図面 (13)

目的

散乱吸収体内で光が拡散伝搬する過程に対する理論的かつ実験的に十分な解析に基づいて、測定誤差を低減して計測精度を向上させる。

構成

測定装置20は、光ガイド70を介してパルス状の測定光を散乱吸収体10に出射する光源30と、散乱吸収体10から光ガイド71,72を介して異なる光入射位置光検出位置間距離ρ1 ,ρ2 に対応した測定光の時間分解計測をそれぞれ行う光検出器40,41と、複数の時間分解計測の結果に基づいて複数の測定光の平均光路長をそれぞれ算出する光路長演算部51と、光入射位置−光検出位置間距離ρ1 ,ρ2 に対応する複数の平均光路長の計算値と、散乱吸収体10内の拡散伝搬経路における散乱特性及び吸収特性を含む光拡散特性に基づいて導出した平均光路長の理論式とからなる複数の連立関係に基づいて、散乱吸収体10内の散乱係数及び吸収係数を算出する光拡散演算部52とから構成されている。

概要

背景

概要

散乱吸収体内で光が拡散伝搬する過程に対する理論的かつ実験的に十分な解析に基づいて、測定誤差を低減して計測精度を向上させる。

測定装置20は、光ガイド70を介してパルス状の測定光を散乱吸収体10に出射する光源30と、散乱吸収体10から光ガイド71,72を介して異なる光入射位置光検出位置間距離ρ1 ,ρ2 に対応した測定光の時間分解計測をそれぞれ行う光検出器40,41と、複数の時間分解計測の結果に基づいて複数の測定光の平均光路長をそれぞれ算出する光路長演算部51と、光入射位置−光検出位置間距離ρ1 ,ρ2 に対応する複数の平均光路長の計算値と、散乱吸収体10内の拡散伝搬経路における散乱特性及び吸収特性を含む光拡散特性に基づいて導出した平均光路長の理論式とからなる複数の連立関係に基づいて、散乱吸収体10内の散乱係数及び吸収係数を算出する光拡散演算部52とから構成されている。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
5件
牽制数
5件

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請求項1

所定波長を有するパルス状の測定光散乱吸収体入射する第1のステップと、この第1のステップにおいて前記測定光を入射した前記散乱吸収体の光入射位置と、前記測定光を検出する前記散乱吸収体の光検出位置とからなって、異なる光入射位置−光検出位置間距離を有する複数の組み合わせに対応する当該光検出位置で、前記散乱吸収体内を拡散伝搬した前記測定光の時間分解計測をそれぞれ行う第2のステップと、この第2のステップにおいて測定した複数の前記時間分解計測の結果に基づいて、前記光入射位置−光検出位置間距離に対応する複数の前記測定光の平均光路長をそれぞれ算出する第3のステップと、この第3のステップにおいて算出した前記光入射位置−光検出位置間距離に対応する前記複数の平均光路長の計算値と、前記散乱吸収体内の拡散伝搬経路における散乱特性及び吸収特性を含む光拡散特性に対応して導出した前記平均光路長の理論式とからなる複数の連立関係に基づいて、前記散乱吸収体内の散乱係数及び吸収係数を算出する第4のステップとを備えることを特徴とする散乱吸収体内の散乱特性・吸収特性の測定方法

請求項2

前記第1のステップは、前記散乱吸収体内の吸収成分に対して異なる吸収係数を有する当該吸収成分の種類数以上の波長を前記測定光に設定し、前記第2のステップは、前記波長それぞれに対する前記測定光の時間分解計測を行い、前記第3のステップは、前記波長それぞれに対する前記測定光の平均光路長を算出し、前記第4のステップは、前記波長それぞれに対する前記散乱吸収体内の吸収係数を算出し、前記第4のステップにおいて算出した前記波長それぞれに対する前記散乱吸収体内の吸収係数の計算値と、前記散乱吸収体内の拡散伝搬経路における前記吸収成分の寄与を含む光減衰特性に対応して導出した当該吸収係数の理論式とからなる連立関係に基づいて、前記吸収成分の濃度を算出する第5のステップをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の散乱吸収体内の散乱特性・吸収特性の測定方法。

請求項3

所定波長を有するパルス状の測定光を発生する光源と、この光源から入射した前記測定光を散乱吸収体に出射する光ガイドと、この光ガイドによって前記測定光を入射させた前記散乱吸収体の光入射位置と、前記測定光を検出する前記散乱吸収体の光検出位置とからなって、異なる光入射位置−光検出位置間距離を有する複数の組み合わせに対応する当該光検出位置で、前記散乱吸収体内を拡散伝搬した前記測定光の時間分解計測をそれぞれ行う光検出器と、この光検出器によって測定した複数の前記時間分解計測の結果に基づいて、前記光入射位置−光検出位置間距離に対応する複数の前記測定光の平均光路長をそれぞれ算出する光路長演算部と、この光路長演算部によって算出した前記光入射位置−光検出位置間距離に対応する前記複数の平均光路長の計算値と、前記散乱吸収体内の拡散伝搬経路における散乱特性及び吸収特性を含む光拡散特性に対応して導出した前記平均光路長の理論式とからなる複数の連立関係に基づいて、前記散乱吸収体内の散乱係数及び吸収係数を算出する光拡散演算部とを備えることを特徴とする散乱吸収体内の散乱特性・吸収特性の測定装置

請求項4

前記光源は、前記散乱吸収体内の吸収成分に対して異なる吸収係数を有する当該吸収成分の種類数以上の波長を前記測定光に設定する波長制御手段を有し、前記光検出器は、前記波長それぞれに対する前記測定光の光強度時間変化を測定し、前記光路長演算部は、前記波長それぞれに対する前記測定光の平均光路長を算出し、前記光拡散演算部は、前記波長それぞれに対する前記散乱吸収体内の吸収係数を算出し、前記光拡散演算部によって算出した前記波長それぞれに対する前記散乱吸収体内の吸収係数の計算値と、前記散乱吸収体内の拡散伝搬経路における前記吸収成分の寄与を含む光減衰特性に対応して導出した当該吸収係数の理論式とからなる連立関係に基づいて、前記吸収成分の濃度を算出する光吸収演算部をさらに備えることを特徴とする請求項3記載の散乱吸収体内の散乱特性・吸収特性の測定装置。

技術分野

0001

本発明は、医学、理学等の分野で非侵襲的計測技術として用いられ、散乱吸収体(例えば生体組織)内の散乱係数及び吸収係数を測定し、また、その散乱吸収体が含有する吸収成分(例えばヘモグロビン)の濃度を測定し、さらに、これらの定量値時間変化空間分布などを計測する散乱吸収体内の散乱特性吸収特性測定方法及び装置に関する。

0002

散乱吸収体内の吸収係数及び散乱係数に関して測定を行う従来技術には、測定光として連続光またはパルス光を散乱吸収体にそれぞれ入射することにより、その散乱吸収体から出射した測定光を時間積分または時間分解してそれぞれ計測するものがある。

0003

第1に、時間積分計測を行う技術においては、いわゆるベールランバート(Beer-Lambert)の法則基本原理として散乱吸収体内の吸光度を測定している。この基本原理によれば、散乱吸収体内の吸光度は、散乱吸収体が含有する吸収成分のモル吸光係数と、その吸収成分の濃度と、散乱吸収体内を透過した測定光の光路長との積に対して比例関係を有するとしている。ここで、測定光の光路長としては、測定光を入射した散乱吸収体の光入射位置と、測定光を検出した散乱吸収体の光検出位置との間の物理的距離を設定している。

0004

しかしながら、測定光の光路長は、散乱吸収体内の散乱係数及び吸収係数の両方に依存して変化してしまう。そのため、散乱吸収体内の吸光度の測定値には、測定光の光路長を一定値とする近似に起因した大きな誤差を含むという問題がある。したがって、散乱吸収体内の吸収係数や吸収成分の濃度を十分精密に測定することができない。

0005

第2に、時間分解計測を行う技術においては、散乱吸収体内でパルス幅拡張した測定光の波形解析に基づいて散乱吸収体内の吸収係数を測定している。この波形解析によれば、散乱吸収体内の吸収係数は、測定光の入射から十分な時間が進行した際に測定光の光強度の時間微分値と一致するとしている。ここで、測定光の入射から十分な時間が進行した際としては、測定光の光強度が十分に減衰したときを設定している。

0006

しかしながら、測定光の光強度が十分に減衰した場合、信号対雑音(SN)比が大幅に劣化してしまう。そのため、散乱吸収体内の吸収係数の測定値には、微弱な測定光の信号成分に対する測定に起因した大きな誤差を含むという問題がある。なお、このような先行技術に関する知見については、文献"Applied Optics, vol.28, no.12, pp.2331-2336, 1989"などに詳細に記載されている。

0007

そこで、本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、散乱吸収体内で光が拡散伝搬する過程に対する理論的かつ実験的に十分な解析に基づいて、測定誤差を低減して計測精度を向上させる散乱吸収体内の散乱特性・吸収特性の測定方法及び装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

本発明の散乱吸収体内の散乱特性・吸収特性の測定方法は、上記の目的を達成するために、(a)所定波長を有するパルス状の測定光を散乱吸収体に入射する第1のステップと、(b)この第1のステップにおいて測定光を入射した散乱吸収体の光入射位置と、測定光を検出する散乱吸収体の光検出位置とからなって、異なる光入射位置−光検出位置間距離を有する複数の組み合わせに対応する当該光検出位置で、散乱吸収体内を拡散伝搬した測定光の時間分解計測をそれぞれ行う第2のステップと、(c)この第2のステップにおいて測定した複数の時間分解計測の結果に基づいて、光入射位置−光検出位置間距離に対応する複数の測定光の平均光路長をそれぞれ算出する第3のステップと、(d)この第3のステップにおいて算出した光入射位置−光検出位置間距離に対応する複数の平均光路長の計算値と、散乱吸収体内の拡散伝搬経路における散乱特性及び吸収特性を含む光拡散特性に対応して導出した平均光路長の理論式とからなる複数の連立関係に基づいて、散乱吸収体内の散乱係数及び吸収係数を算出する第4のステップとを備えることを特徴とする。

0009

なお、(a)第1のステップは、散乱吸収体内の吸収成分に対して異なる吸収係数を有する当該吸収成分の種類数以上の波長を測定光に設定し、(b)第2のステップは、各波長に対する測定光の時間分解計測を行い、(c)第3のステップは、各波長に対する測定光の平均光路長を算出し、(d)第4のステップは、各波長に対する散乱吸収体内の吸収係数を算出し、(e)第4のステップにおいて算出した各波長に対する散乱吸収体内の吸収係数の計算値と、散乱吸収体内の拡散伝搬経路における吸収成分の寄与を含む光減衰特性に対応して導出した当該吸収係数の理論式とからなる連立関係に基づいて、吸収成分の濃度を算出する第5のステップをさらに備えることを特徴としてもよい。

0010

また、本発明の散乱吸収体内の散乱特性・吸収特性の測定装置は、上記の目的を達成するために、(a)所定波長を有するパルス状の測定光を発生する光源と、(b)この光源から入射した測定光を散乱吸収体に出射する光ガイドと、(c)この光ガイドによって測定光を入射させた散乱吸収体の光入射位置と、測定光を検出する散乱吸収体の光検出位置とからなって、異なる光入射位置−光検出位置間距離を有する複数の組み合わせに対応する当該光検出位置で、散乱吸収体内を拡散伝搬した測定光の時間分解計測をそれぞれ行う光検出器と、(d)この光検出器によって測定した複数の時間分解計測の結果に基づいて、光入射位置−光検出位置間距離に対応する複数の測定光の平均光路長をそれぞれ算出する光路長演算部と、(e)この光路長演算部によって算出した光入射位置−光検出位置間距離に対応する複数の平均光路長の計算値と、散乱吸収体内の拡散伝搬経路における散乱特性及び吸収特性を含む光拡散特性に基づいて導出した平均光路長の理論式とからなる複数の連立関係に基づいて、散乱吸収体内の散乱係数及び吸収係数を算出する光拡散演算部とを備えることを特徴とする。

0011

なお、(a)光源は、散乱吸収体内の吸収成分に対して異なる吸収係数を有する当該吸収成分の種類数以上の波長を測定光に設定する波長制御手段を有し、(b)光検出器は、各波長に対する測定光の光強度時間変化を測定し、(c)光路長演算部は、各波長に対する測定光の平均光路長を算出し、(d)光拡散演算部は、各波長に対する散乱吸収体内の吸収係数を算出し、(e)光拡散演算部によって算出した各波長に対する散乱吸収体内の吸収係数の計算値と、散乱吸収体内の拡散伝搬経路における吸収成分の寄与を含む光減衰特性に対応して導出した当該吸収係数の理論式とからなる連立関係に基づいて、吸収成分の濃度を算出する光吸収演算部をさらに備えることを特徴としてもよい。

0012

本発明の散乱吸収体内の散乱特性・吸収特性の測定方法及び装置においては、散乱と吸収の影響を受けながら散乱吸収体の内部を拡散伝搬したパルス状の測定光を散乱吸収体の外部で非侵襲的に測定し、その測定結果演算処理して散乱吸収体内の散乱特性及び吸収特性を計測する。このとき、測定光の平均光路長が散乱吸収体内の拡散伝搬経路における散乱特性及び吸収特性を含む光拡散性に依存することを利用して、異なる2種類以上の光入射位置−光検出位置間距離に対して測定した平均光路長に基づいて、散乱吸収体内の散乱係数及び吸収係数の計測を行う。

0013

ここで、散乱吸収体が含有する吸収成分に対して異なる吸収係数を有し、当該吸収成分の種類数以上の異なる種類数の波長を測定光に設定する場合、各波長に対する散乱吸収体内の吸収係数が散乱吸収体内の拡散伝搬経路における各吸収成分の寄与を含む光減衰特性に依存することを利用して、異なる波長に対して測定した吸収係数に基づいて、吸収成分の濃度の計測を行う。

0014

なお、このような計測を同一の光入射位置及び光検出位置で異なる時刻に行うことにより、これら定量値の時間変化を計測することができる。さらに、このような計測を光入射位置及び光検出位置を走査しながら行うことにより、これら定量値の空間分布を計測することができる。

0015

以下、本発明の散乱吸収体内の散乱特性・吸収特性の測定方法及び装置に係る実施例の構成及び作用について、図1ないし図12を参照して詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。

0016

(1)散乱吸収体内の散乱特性及び吸収特性の測定方法
(1.1)散乱係数及び吸収係数の測定原理
図1に示すように、散乱吸収体内に入射した光は、散乱及び吸収の作用を受けるために、減衰しつつ拡散伝搬して散乱吸収体内から出射される。すなわち、光は散乱成分によってランダムに散乱されるので、折れ曲がりながら進行する。一方、光は吸収成分によって徐々に吸収されるので、進行した距離に対応して光量を指数関数的に減衰させる。なお、散乱吸収体内において光はランダムな散乱によってほぼ全領域に拡散するが、散乱吸収体の光入射位置と異なる光検出位置で検出された光子飛跡のみ、すなわち実際の計測に利用される光子の飛跡を模式的に図示している。

0017

このような散乱吸収体内において光が拡散伝搬する過程については、光拡散理論(Photon Diffusion Theory )に基づいてかなり厳密に記述及び解析されることが周知である。この光拡散理論によれば、散乱吸収体内に入射したパルス状の測定光は、散乱及び吸収の影響を受けながら拡散伝搬する際に、そのパルス幅を拡張させることになる。なお、このような光拡散理論に関する知見については、文献"Medical Physics, vol.19, no.14, pp.879-888, 1992"などに詳細に記載されている。

0018

一方、散乱吸収体内を拡散伝搬する光子個々の振舞については、モンテカルロ(Monte Calro )法に基づいてコンピュータを利用したシミュレーションによる解析が行われている。また、散乱吸収体の物理模型生体試料などのサンプルを実際に用いて実験することも行われている。

0019

最近の知見によれば、光拡散理論から導いた解析結果と、モンテカルロ法によるシミュレーション結果と、サンプルによる実験結果との間には、それぞれ良い一致が得られている。そのため、散乱吸収体内を拡散伝搬する光の振舞は、光拡散理論に基づいて十分正確に記述することができると考えてよい。

0020

このような光拡散理論に基づいて、散乱吸収体内の光拡散方程式は、位置rにおいて時刻tのときの光子流動率φ(r,t)及び光子発生率S(r,t)に対して次式のように記述される。

0021

0022

ただし、
φ(r,t):光子流動率(Fluence Rate)[光子数・mm-2・sec-1],
D:光拡散係数(Diffusion Coefficient )[mm],
μA :吸収係数(Absorption Coefficient)[mm-1],
c:光速(light Velocity)[mm・sec-1],
S(r,t):光子発生率(Generation Rate )[光子数・mm-3・sec-1]
である。なお、光速cは、散乱吸収体内の屈折率に対応して決定されている。

0023

ここで、インパルス光源の光子発生率はデルタ関数として表されるので、
S(r,t)=δ(r,t) (2)
としてよい。そのため、原点(r=0)において初期(t=0)のときインパルス光源から散乱吸収体に入射する光は、式(2)から次式のように表される。

0024

S(0,0)=δ(0,0)=δ(0)・δ(0) (3)
したがって、インパルス光入射に対する光拡散方程式は、式(1),(3)から次式のように記述される。

0025

0026

さらに、この式(4)に用いられた種々の光学定数の間には、次式に示す関係がある。

0027

D=[3(μA +μTS)]-1 (5)
μTS=(1−g)μS (6)
ただし、
μS :散乱係数(Scattering Coefficient)[mm-1]
μTS:輸送散乱係数(Transport Scattering Coefficient)[mm-1]
g:散乱角θに対するcosθの平均値(Mean Cosine of Scattering Angle θ)
である。なお,通常の生体においては、輸送散乱係数μTSは吸収係数μA よりも数十倍大きいため、拡散定数D=(3μTS)-1と近似してよい。また光拡散係数Dは吸収係数μA を含まないとする理論もある。いずれにしても本発明は、両方の理論に適用可能である。

0028

図2に示すように、半空間を占める散乱吸収体にスポット状のパルス光を入射する場合、式(4)に示す光拡散方程式の境界条件は、散乱吸収体表面上に沿って配置したρ座標軸と、散乱吸収体表面の法線として配置したz座標軸とを用いて、負極性点光源を位置(ρ=0,z=−z0 )に置くことによって実現される。なお、通常のz0 は、輸送散乱係数μTSの逆数程度であることが好適であり、厳密には光の入射方法や散乱吸収体が含有する散乱成分の性質などに対応して変化する。この輸送散乱係数の逆数μTS-1は、光が散乱の影響を受けずに進める距離、すなわち平均自由行程または平均拡散長に相当する。

0029

このような境界条件に基づいて式(4)に示す光拡散方程式の解は、散乱吸収体表面の任意の位置(ρ,0)において時刻tのときの光強度I(ρ,0,t)[光子数・mm-2・sec-1]として、次式に示すように得られる。

0030

0031

一方、原点(ρ=0)において初期(t=0)のときインパルス光源から散乱吸収体に入射した光子は、散乱や吸収の影響を受けながら散乱吸収体内を拡散伝搬する。このとき、散乱吸収体から出射して検出された光子の平均光路長(MeanOptical Pathlength )<L>は、次式に示すように定義されている。

0032

0033

なお、このような平均光路長に関する知見については、文献"Phys. Med. Biol., vol.37, no.7, pp.1531-1560, 1992"などに詳細に記載されている。

0034

図3に示すように、式(7)における種々の光学定数をD=0.144mm,μA =0.01mm-1,c=2.2×1011mm・sec-1及びμTS=2.3mm-1として設定して時間分解計測を想定したシミュレーション結果をプロットした場合、式(8)によって算出した平均光路長に対応する光子の拡散伝搬時間tMOP は、光強度の時間変化を示す波形の重心を通過している。

0035

ここで、式(8)に式(7)を代入すると、インパルス光入射に関する光子の平均光路長<L>は、光入射位置−光検出位置間距離ρに基づいて次式のように得られる。ただし、zE =2D=2/[3(μA +μTS)]である。

0036

0037

この式(9)に示す平均光路長<L(ρ)>は、制御または設定可能な既知数として1個の光入射位置−光検出位置間距離ρと、測定対象未知数として2個の吸収係数μA 及び輸送散乱係数μTSとによって表されている。そのため、光入射位置−光検出位置間距離ρを異なる2種類以上の値に制御または設定した場合に、光強度の時間分解計測に基づいて式(8)によって2種類以上の平均光路長<L(ρ)>をそれぞれ算出することにより、2種類以上の式(9)からなる連立関係に基づいて、吸収係数μA 及び輸送散乱係数μTSをそれぞれ算出することができる。

0038

図4に示すように、より具体的には、散乱成分及び吸収成分が均一に分布した散乱吸収体に対して、原点(ρ=0)において初期(t=0)のとき所定波長を有するパルス状の測定光を入射する。続いて、異なる2種類の光入射位置−光検出位置間距離ρ1 ,ρ2 で測定光の時間分解計測をそれぞれ行う。続いて、これら2種類の時間分解計測の結果に基づいて式(8)によって2種類の平均光路長<L(ρ1 )>,<L(ρ2 )>をそれぞれ算出する。続いて、光入射位置−光検出位置間距離ρ1 及び平均光路長<L(ρ1 )>の組み合わせと、光入射位置−光検出位置間距離ρ2 及び平均光路長<L(ρ2 )>の組み合わせとを式(9)にそれぞれ代入すると、次式に示すような連立関係を得ることができる。

0039

0040

0041

このとき、これら2連の式(10),(11)は、それぞれ独立である上に、吸収係数μA 及び輸送散乱係数μTSを未知数として含んでいる。したがって、これら式(10),(11)を連立方程式として解くことにより、吸収係数μA 及び輸送散乱係数μTSをそれぞれ算出することができる。なお、このような連立方程式を解く計算は、コンピュータを利用して高速に実行することができる上に、相互に異なる多種類の光入射位置−光検出位置間距離ρに対応して平均光路長<L(ρ)>の測定を行うことによって計算精度を向上させることもできる。

0042

さて、以上では、散乱吸収体としては半空間を占める場合について説明した。しかしながら、実際には、散乱吸収体の大きさは有限である。このとき、式(4)に示す光拡散方程式の境界条件としては、散乱吸収体の表面及び外部に対して第1の負極性の点光源を位置(ρ=0,z=−z0 )に置くことによって実現される。また、散乱吸収体内を拡散伝搬する大部分の光が光拡散の条件を満足するためには、散乱吸収体を十分大きくすればよい。

0043

図5に示すように、散乱吸収体の厚さが光入射位置−光検出位置間距離に対して十分に大きいと見做せない、すなわち散乱吸収体がスラブ(Slab)状である場合、式(4)に示す光拡散方程式の境界条件として、第1の負極性の光源を設置した散乱吸収体の表面側に対向する背面側に第2の負極性と正極性の点光源をさらに導入すればよい。なお、この第2の負極性と正極性の点光源による測定光に対する影響を補正するために、原理的には無限個の点光源の設置が必要となる。しかしながら、これら点光源による測定光に対する影響は設置の順序にしたがって急激に低減するので、実際には有限個の点光源の設置で近似することができる。

0044

そのため、このような境界条件に基づいた式(4)に示す光拡散方程式の解は、散乱吸収体表面の任意の位置(ρ,0)において時刻tのときの光強度I(ρ,0,t)[光子数・mm-2・sec-1]として、次式に示すように得られる。

0045

0046

ここで、式(8)に式(12)を代入すると、インパルス光入射に関する光子の平均光路長<L(ρ)>を表す式、すなわち式(9)に相当するものが導出することができる。このような式で示す平均光路長<L(ρ)>は、前述した場合と同様に、制御または設定可能な既知数として1個の光入射位置−光検出位置間距離ρと、測定対象の未知数として2個の吸収係数μA 及び輸送散乱係数μTSとによって表されている。そのため、光入射位置−光検出位置間距離ρを異なる2種類以上の値に制御または設定した場合に、光強度の時間分解計測に基づいて式(8)によって2種類以上の平均光路長<L(ρ)>をそれぞれ算出することにより、2種類以上の理論式からなる連立関係に基づいて、吸収係数μA 及び輸送散乱係数μTSをそれぞれ算出することができる。なお、このような連立方程式を解く計算は、前述した場合と同様に、コンピュータを利用して高速に実行することができる上に、相互に異なる多種類の光入射位置−光検出位置間距離ρに対応して平均光路長<L(ρ)>の測定を行うことによって計算精度を向上させることもできる。

0047

さらに、散乱吸収体内の散乱係数及び吸収係数は、光入射位置と光検出位置との間で拡散伝搬した光の光路に沿った平均値として算出されている。これら散乱係数及び吸収係数の三次元的分布として、光入射位置−光検出位置間距離、複数の光入射位置間距離または複数の光検出位置間距離と比較して十分粗に分散している場合がある。このとき、光入射位置及び光検出位置を散乱吸収体表面に沿って走査しながら計測を行うことにより、散乱係数及び吸収係数に対する空間分布の画像化、すなわち簡単なイメージングを行うことができる。このような計測を異なる時刻に行うことにより、散乱係数及び吸収係数の時間変化をモニタすることかできる。なお、このような画像化演算は、メモリディスプレイ等を有するコンピュータを利用して高速に実行することができる。

0048

(1.2)吸収成分の濃度の測定原理
以下、散乱吸収体として生体組織を適用して具体的に説明する。

0049

図6に示すように、生体組織内の吸収成分であるヘモグロビン(Hb,HbO2 )及びミオグロビン(Mb,MbO2 )は、光の波長に依存した特有吸収スペクトルを有する。このような吸収スペクトルは、吸収成分の種類や酸化還元の状態などに対応して異なるものである。

0050

この生体組織の一つである哺乳類の脳には、主な吸収成分として水、チトクローム脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 が含まれている。なお、水及びチトクロームの近赤外線に対する吸光度は、脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 と比較して、ほぼ無視することができる程度に小さい。脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 の各吸収スペクトルは、前述したように異なっている。頭蓋骨は、近赤外線に対して散乱体と考えてよい。

0051

ここで、波長λを有する光に対する散乱吸収体内の吸収係数μA (λ)は、ベール・ランバート(Beer-Lambert)の法則に基づいて、次式で示すように表される。

0052

μA (λ)
=εHb(λ)・[Hb]+εHbO2(λ)・[HbO2 ] (13)
ただし、
μA (λ):波長λに対する吸収係数[mm-1]
εHb(λ):脱酸素化ヘモグロビンHbの波長λに対するモル吸光係数[mm-1・mM-1]
εHbO2(λ):酸素化ヘモグロビンHbO2 の波長λに対するモル吸光係数[mm-1・mM-1]
[Hb]:脱酸素化ヘモグロビンHbのモル濃度[mM]
[HbO2 ]:酸素化ヘモグロビンHbO2 のモル濃度[mM]
である。

0053

この式(13)に示す吸収係数μA (λ)は、測定可能な既知数として2個の脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 の各モル吸光係数εHb(λ),εHbO2(λ)と、測定対象の未知数として2個の脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 の各モル濃度[Hb],[HbO2 ]とによって表されている。そのため、異なる2種類以上の波長λを有する光に対して脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 の各モル吸光係数εHb(λ),εHbO2(λ)とを測定した場合に、異なる2種類以上の波長λを有する光に対して散乱吸収体内の吸収係数μA (λ)を測定することにより、2種類以上の式(13)からなる連立関係に基づいて、脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 の各モル濃度[Hb],[HbO2 ]をそれぞれ算出することができる。

0054

より具体的には、散乱吸収体において、異なる2種類の波長λ1 ,λ2 を有する光に対して前述した測定光の時間分解計測に行うことにより、散乱吸収体内の吸収係数μA (λ1 ),μA (λ2 )をそれぞれ測定する。続いて、吸収係数μA (λ1 )及び既知であるモル吸光係数εHb(λ1 ),εHbO2(λ1 )の組み合わせと、吸収係数μA (λ2 )及びモル吸光係数εHb(λ2 ),εHbO2(λ2 )の組み合わせとを式(13)にそれぞれ代入すると、次式に示すような連立関係を得ることができる。

0055

μA (λ1 )
=εHb(λ1 )・[Hb]+εHbO2(λ1 )・[HbO2 ] (14)
μA (λ2 )
=εHb(λ2 )・[Hb]+εHbO2(λ2 )・[HbO2 ] (15)
このとき、これら2連の式(14),(15)は、それぞれ独立である上に、モル濃度[Hb],[HbO2 ]を未知数として含んでいる。したがって、これら式(14),(15)を連立方程式として解くことにより、脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 の各モル濃度[Hb],[HbO2 ]と、ヘモグロビンの全モル濃度([Hb]+[HbO2 ])とをそれぞれ算出することができる。なお、このような連立方程式を解く計算は、コンピュータを利用して高速に実行することができる上に、相互に異なる多種類の波長λを有する光に対応して吸収係数μA (λ)の測定を行うことによって計算精度を向上させることもできる。

0056

このような脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 に対応するヘモグロヒン酸素飽和度Y(%)は、次式に示すように定義されている。

0057

Y={[HbO2 ]/([Hb]+[HbO2 ])}×100 (16)
そのため、吸収係数μA (λ1 ),μA (λ2 )の比は、式(14)〜(16)によって次式に示すようになる。

0058

0059

したがって、脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 に対応するヘモグロビン酸素飽和度Y(%)は、式(17)を変形して次式に示すように得られる。

0060

0061

この式(18)に示すヘモグロビン酸素飽和度Yは、測定可能な既知数として、異なる2種類の光の波長λ1 ,λ2 に対して4個の脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 の各モル吸光係数εHb(λ1 ),εHbO2(λ1),εHb(λ2 ),εHbO2(λ2 )と、2個の散乱吸収体内の吸収係数μA (λ1 ),μA (λ2 )とによって表されているので、簡単に算出することができる。

0062

さて、生体組織には、このようなヘモグロビン以外の吸収成分による影響を無視することができない場合がある。このとき、波長λを有する光に対するバックグラウンド吸収項をα(λ)として式(13)の右辺に追加すると、波長λを有する光に対する散乱吸収体内の吸収係数μA (λ)は次式で示すように表される。

0063

μA (λ)
=εHb(λ)・[Hb]+εHbO2(λ)・[HbO2 ]+α(λ) (19)
この式(19)に示す吸収係数μA (λ)は、測定可能な既知数として2個の脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 の各モル吸光係数εHb(λ),εHbO2(λ)と、測定対象の未知数として2個の脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 の各モル濃度[Hb],[HbO2 ]及び1個のバックグラウンド吸収項α(λ)とによって表されている。そのため、異なる3種類以上の波長λを有する光に対して脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 の各モル吸光係数εHb(λ),εHbO2(λ)とを測定した場合に、異なる3種類以上の波長λを有する光に対して散乱吸収体内の吸収係数μA (λ)を測定することにより、3種類以上の式(19)からなる連立関係に基づいて、脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 の各モル濃度[Hb],[HbO2 ]をそれぞれ算出することができる。

0064

より具体的には、散乱吸収体において、異なる3種類の波長λ1 ,λ2 ,λ3を有する光に対して前述した測定光の時間分解計測に行うことにより、散乱吸収体内の吸収係数μA (λ1 ),μA (λ2 ),μA (λ3 )をそれぞれ測定する。続いて、吸収係数μA (λ1 )及び既知であるモル吸光係数εHb(λ1 ),εHbO2(λ1 )の組み合わせと、吸収係数μA (λ2 )及びモル吸光係数εHb(λ2 ),εHbO2(λ2 )の組み合わせと、吸収係数μA (λ3 )及びモル吸光係数εHb(λ3 ),εHbO2(λ3 )の組み合わせとを式(19)にそれぞれ代入すると、次式に示すような連立関係を得ることができる。

0065

μA (λ1 )
=εHb(λ1 )・[Hb]+εHbO2(λ1 )・[HbO2 ]
+α(λ1 ) (20)
μA (λ2 )
=εHb(λ2 )・[Hb]+εHbO2(λ2 )・[HbO2 ]
+α(λ2 ) (21)
μA (λ3 )
=εHb(λ3 )・[Hb]+εHbO2(λ3 )・[HbO2 ]
+α(λ3 ) (22)
このとき、これら3連の式(20)〜(22)は、それぞれ独立である上に、モル濃度[Hb],[HbO2 ]及びバックグラウンド吸収項α(λ1 ),α(λ2 ),α(λ3 )を未知数として含んでいる。ここで、バックグラウンド吸収項α(λ1 ),α(λ2 ),α(λ3 )が一致するように異なる3種類の波長λ1 ,λ2 ,λ3 を予め設定することができる。したがって、これら式(20),(22)を連立方程式として解くことにより、脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 の各モル濃度[Hb],[HbO2 ]と、ヘモグロビンの全モル濃度([Hb]+[HbO2 ])とをそれぞれ算出することができる。なお、このような連立方程式を解く計算は、コンピュータを利用して高速に実行することができる。

0066

また、吸収係数μA (λ2 )に対する吸収係数μA (λ1 ),μA (λ3 )の差異の比は、式(20)〜(22)によって次式に示すようになる。

0067

0068

ここで、バックグラウンド吸収項α(λ1 ),α(λ2 ),α(λ3 )が一致するように異なる3種類の波長λ1 ,λ2 ,λ3 を予め設定することにより、式(23)は次式に示すように変形される。

0069

0070

したがって、脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 に対応するヘモグロビン酸素飽和度Y(%)は、式(24)を変形して次式に示すように得られる。

0071

0072

この式(25)に示すヘモグロビン酸素飽和度Yは、測定可能な既知数として、異なる3種類の光の波長λ1 ,λ2 ,λ3 に対して6個の脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 の各モル吸光係数εHb(λ1 ),εHbO2(λ1 ),εHb(λ2 ),εHbO2(λ2 ),εHb(λ3 ),εHbO2(λ3 )と、3個の散乱吸収体内の吸収係数μA (λ1 ),μA (λ2 ),μA (λ3 )とによって表されているので、簡単に算出することができる。

0073

(2)散乱吸収体内の散乱特性及び吸収特性の測定装置
(2.1)第1実施例
本実施例は、光入射位置−光検出位置間距離に対して十分に大きい散乱吸収体の内部における散乱特性及び吸収特性を測定する測定装置である。

0074

図7に示すように、測定装置20は、測定光P0 を発生する光源20と、測定光P0 を散乱吸収体10に出射する光ガイド70と、散乱吸収体10の内部を拡散伝搬した測定光P0 を取り出す光ガイド71,72と、測定光P0 を光電変換した検出する光検出器41,42と、これら光検出器41,42から出力する各種の電気信号を処理する信号処理系とから構成されている。この信号処理系としては、散乱吸収体10の内部における散乱特性及び吸収特性に関する各種の演算処理を実行する演算処理ユニット50と、この演算処理によって算出した各種のデータを表示したり記録したりする表示記録ユニット60が設置されている。

0075

光源30は、散乱吸収体10が含有する吸収成分の種類数Nに対して、異なるN+1種類の波長λ1 ,λ2 ,…,λN+1 を有するパルス光を測定光P0 として周期fで発生し、測定光P0 のパルス発振に同期した参照信号R0 を光検出器41,42に出力するレーザダイオードである。この測定光P0 の波長λ1 ,…,λN+1 としては、散乱吸収体10の組成に対応して適宜に選択する必要がある。

0076

例えば、散乱吸収体10が生体組織である場合、ヘモグロビンやミオグロビンなどは波長約700nm〜約1000nmの光に対して大きい吸光度を有するので、測定精度を向上させる観点から、測定光P0 の波長λ1 ,…,λN+1 を近赤外領域に設定することが好適である。また、これらヘモグロビン及びミオグロビンは酸化還元状態に対応して異なる光吸収スペクトルを示すので、計測対象分別する観点から、測定光P0 の波長λ1 ,…,λN+1 を相互に分離して設定することが好適である。

0077

なお、このような測定光P0 の波長λ1 ,…,λN+1 に対する制御が可能であるならば、光源30としては、発光ダイオードなどの種々のものを適用することができる。

0078

光ガイド70は、光源30から入射した測定光P0 をスポット状に収束し、散乱吸収体10に出射するものである。図8に示すように、光ガイド70に代替する具体的な手段としては、集光レンズ図8(a)参照)、光ファイバ図8(b)参照)及びピンホール図8(c)参照)を散乱吸収体の表面に設置したり、胃カメラのように光ファイバを散乱吸収体の内面に設置したり(図8(d)参照)することなどがある。

0079

例えば、散乱吸収体10が生体組織である場合、測定光P0 は散乱吸収体10の内部で平均拡散長約2mmだけ直進するまでに散乱する。そのため、散乱吸収体10のサイズが平均拡散長よりも十分大きければ、散乱吸収体10にスポット状の測定光P0 を出射しても、測定光P0 の方向性に対する平均拡散長の影響を無視することができる。なお、比較的太いビーム光を複数の並列したスポット光として見做せることが可能であるならば、散乱吸収体10にビーム状の測定光P0 を出射することも好適である。

0080

光ガイド71,72は、散乱吸収体10の内部を拡散伝搬した測定光P0 を取り出し、光検出器41,42にそれぞれ出射するものである。図9に示すように、光ガイド71,72に代替する具体的な手段としては、散乱吸収体の表面に光検出器を直接設置したり(図9(a)参照)、光ファイバ(図9(b)参照)及び集光レンズ(図8(c)参照)を散乱吸収体の表面に設置したりすることなどがある。

0081

ここで、光ガイド70を散乱吸収体10の表面に設置した光入射位置と、光ガイド71及び光ガイド72を散乱吸収体10の表面にそれぞれ設置した光検出位置との間の物理的距離を、異なる光入射位置−光検出器間距離ρ1 ,ρ2 として設定する必要がある。なお、光ガイド70〜72と散乱吸収体10との間には、インターフェース材として散乱吸収体10にほぼ一致した屈折率及び散乱係数を有する液状体ゼリー状体を介在させることも好適である。この場合、インターフェース材を適宜選択することにより、インターフェース材の内部を拡散伝搬した測定光P0 に対する散乱吸収体10の表面反射による影響も低減することができる。

0082

光検出器41,42は、光源30から入力した参照信号R0 に基づいて、光ガイド71,72から入射して受光した測定光P0 をサンプリングして光電変換し、時間分解計測を行った検出信号M1 ,M2 として演算処理ユニット50にそれぞれ出力する光検出器である。光検出器40,41の各分光感度特性及び利得としては、測定光P0 の波長λ1 ,…,λN+1 を良好に検出するために、比較的大きいことが必要である。また、光検出器40,41の各応答周波数としては、測定光P0 の時間分解計測を良好に行うために、可能な限り大きいことが必要である。さらに、散乱吸収体10の内部を拡散伝搬した測定光P0 が蛍光などの発生によって異なる複数の波長を有する場合、光検出器40,41と散乱吸収体10との間に波長選択フィルタを配置する必要がある。

0083

なお、このような測定光P0 の波長λ1 ,…,λN+1 に対する検出が可能であるならば、光検出器40,41としては、アバランシェフォトダイオードPINフォトダイオードストリークカメラ光電管及び光電子像倍管などの種々のものを適用することができる。

0084

演算処理ユニット50は、光検出器40,41から入力した検出信号M1 ,M2 に基づいて各種の演算処理を行い、その結果をデータ信号D0として表示記録ユニット60に出力するものである。この演算処理ユニット50には、測定光P0 の波長λ1 ,…,λN+1 と光入射位置−光検出位置間距離ρ1 ,ρ2 とに対応した測定光P0 の平均光路長<L(ρ1 )>,<L(ρ2 )>をそれぞれ算出する光路長演算部51と、これら平均光路長<L(ρ1 )>,<L(ρ2 )>の各理論式からなる複数の連立関係に基づいて散乱吸収体10の内部における輸送散乱係数μTS(λ1 ),μTS(λ2 ),…,μTS(λN+1 )及び吸収係数μA (λ1 ),μA (λ2 ),…,μA (λN+1 )をそれぞれ算出する光拡散演算部52と、これら吸収係数μA (λ1 ),…,μA (λN+1 )の各理論式からなる複数の連立関係に基づいて散乱吸収体10が含有するN種類の吸収成分AC(1),AC(2),…,AC(N)の濃度[AC(1)],[AC(2)],…,[AC(N)]を算出する光吸収演算部53とが配置されている。

0085

表示記録ユニット60は、演算処理ユニット50から入力したデータ信号D0に基づいて輸送散乱係数μTS(λ1 ),…,μTS(λN+1 )及び吸収係数μA (λ1 ),…,μA (λN+1 )や吸収成分の濃度[AC(1)],…,[AC(N)]などを表示したり記録したりするコンソールモニタ、プリンタ及びメモリである。

0086

なお、測定光P0 の波長として時分割にλ1 ,…,λN+1 を順次選択して設定する場合、光源30に配置する波長選択器としては、ミラーを用いた光ビーム切替器、あるいは光スイッチを用いた光切替器を適用することができる。一方、測定光P0 の波長として同時にλ1 ,…,λN+1 を全て含んで設定する場合、光源30または光検出器40,41に配置する波長選択器としては、フィルタを用いた波長切替器を適用することができる。この場合、波長選択器と光検出器との組み合わせとして多数組を設置することにより、測定光P0 の各波長λ1 ,…,λN+1 に対する時間分解計測を並列して行うことができる。

0087

また、検出信号M1 ,M2 を低雑音で増幅する場合、光検出器40,41に配置する増幅器としては、狭帯域アンプ及びロックインアンプを適用することができる。特に、ロックインアンプを用いる場合には、パルス状の測定光P0 に対して高いダイナミックレンジで計測を行うことができる。

0088

次に、本実施例の作用について説明する。

0089

このように構成された測定装置20においては、光源30は、異なるN+1種類の波長λ1 ,…,λN+1 を有するパルス状の測定光P0 を周期fで発生し、光ガイド70を介して散乱吸収体10に出射する。この光源30は、測定光P0 のパルス発振に同期して参照信号R0 を演算処理ユニット50に出力する。そのため、測定光P0 は、散乱吸収体10の内部を拡散伝搬してパルス時間幅を拡張し、光入射位置から異なる2種類の物理的距離ρ1 ,ρ2 だけ離れた光検出位置で光ガイド71,72によって取り出される。

0090

ここで、光検出器41,42は、光源30から入力した参照信号R0 に基づいて、測定光P0 の発振タイミングとして基準時刻tB =t0 を設定するとともに、測定光P0 のサンプリング・タイミングとして測定時刻tM =t0 +Δtを設定する。これら光検出器41,42は、散乱吸収体10から光ガイド71,72を介して受光した測定光P0 を測定時刻tM に光電変換し、測定光P0 の光強度に比例したレベルを有する検出信号M1 ,M2 を増幅して演算処理ユニット50にそれぞれ出力する。続いて、光検出器40,41は、基準時刻tB =t0 +(M−1)/fと測定時刻tM =t0 +(M−1)/f+M・Δtとを設定しながら順次サンプリングし、以上の操作を連続して測定光P0 の時間分解計測を行う。ただし、M=1,2,3,…である。

0091

なお、光検出器41,42が光強度測定を行う場合、検出信号M1 ,M2 のレベルは各測定時刻tM における測定光P0 の光強度に比例している。一方、光検出器41,42が光子数測定を行う場合、検出信号M1 ,M2 のレベルは各測定時刻tM における測定光P0 の光子数に比例している。

0092

演算処理ユニット50に配置された光路長演算部51は、光検出器41,42から各サンプリング・タイミング毎に入力した検出信号M1 ,M2 に基づいて、式(8)を簡略化した次式を用いることにより、測定光P0 の波長λ1 ,…,λN+1 と光入射位置−光検出位置間距離ρ1 ,ρ2 とに対応した平均光路長<L(ρ1 )>,<L(ρ2 )>をそれぞれ算出して光拡散演算部52に出力する。

0093

0094

0095

ただし、
TM :各基準時刻tB と各測定時刻tM との時間差M・Δt,
I(ρ,TM ):測定光P0 の光強度,
n(ρ,TM ):測定光P0 の光子数
である。

0096

光拡散演算部52は、光路長演算部51によって算出した平均光路長<L(ρ1 )>,<L(ρ2 )>の各計算値を式(9)を順次代入し、式(10),(11)を連立方程式として解くことにより、吸収係数μA (λ1 ),…,μA (λN+1 )及び輸送散乱係数μTS(λ1 ),…,μTS(λN+1 )をそれぞれ算出して光吸収演算部53に出力する。

0097

光吸収演算部53は、光拡散演算部52によって算出した吸収係数μA (λ1),…,μA (λN+1 )及び輸送散乱係数μTS(λ1 ),…,μTS(λN+1 )の各計算値を、式(13)を拡張した次式に順次代入する。

0098

μA (λ)
=εAC(1) (λ)・[AC(1)]+εAC(2) (λ)・[AC(2)]
+…+εAC(N) (λ)・[AC(N)] (28)
ただし、
εAC(N) (λ):吸収成分AC(N)の波長λに対するモル吸光係数[mm-1・M-1]
[AC(N)]:吸収成分AC(N)のモル濃度[M]
である。

0099

この光吸収演算部53は、式(14),(15)を拡張した次式を連立方程式として解くことにより、異なるN種類の吸収成分の濃度[AC(1)],…,[AC(N)]を算出し、データ信号D0として表示記録ユニット60に出力する。

0100

μA (λ1 )
=εAC(1) (λ1 )・[AC(1)]+εAC(2) (λ1 )・[AC(2)]
+…+εAC(N) (λ1 )・[AC(N)] (29)
………
μA (λN )
=εAC(1) (λN )・[AC(1)]+εAC(2) (λN )・[AC(2)]
+…+εAC(N) (λN )・[AC(N)] (30)
表示記録ユニット60は、光吸収演算部53から入力した吸収係数μA (λ1),…,μA (λN+1 )及び輸送散乱係数μTS(λ1 ),…,μTS(λN+1 )の計算値と、異なるN種類の吸収成分の濃度[AC(1)],…,[AC(N)]に対して表示や記録などを行う。

0101

(2.2)第2実施例
本実施例は、散乱吸収体として人の頭部を適用し、その脳内の吸収成分であるヘモグロビンを測定対象として濃度及び酸素飽和度のモニタを行う測定装置である。

0102

図10に示すように、測定装置21は、人の頭部である散乱吸収体10の周囲に装着されたバンド型光ガイドホルダ80によって一体として固定されている。この光ガイドホルダ80は、2個のホルダ長調整部81,82によってホルダ長を散乱吸収体10の周囲長に対応して調整し、散乱吸収体10の周囲を鉢巻き状に被覆して設置されている。光ガイドホルダ80の内側に形成した内部空間83には、光源30、光検出器41,42及び光ガイド70〜72が、上記第1実施例と同様して構成されている。光ガイドホルダ80の外周部には、光検出器41,42から入力した検出信号M1 ,M2 を信号処理系(図示しない)に出力するコネクタ90が設置されている。この信号処理系としては、演算処理ユニット50及び表示記録ユニット60が、上記第1実施例と同様して構成されている。

0103

なお、散乱吸収体10は、人の脳であり、その吸収成分として脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 を含有している。光源30は、散乱吸収体10の2種類の吸収成分に対して、異なる3種類の波長λ1 ,λ2 ,λ3を有するパルス光を測定光P0 として発生する。この測定光P0 の波長λ1 〜λ3 としては、脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 の各吸光度が異なるとともに、これら2種類の吸収成分以外の吸収成分による影響として前述したバックグラウンド吸収項がほぼ一致するように設定する必要がある。

0104

次に、本実施例の作用について説明する。

0105

このように構成された測定装置21においては、光源30は、異なる3種類の波長λ1 ,λ2 ,…,λ3 を有するパルス状の測定光P0 を周期fで発生し、光ガイド70を介して散乱吸収体10に出射する。この光源30は、測定光P0 のパルス発振に同期して参照信号R0 を演算処理ユニット50に出力する。そのため、測定光P0 は、散乱吸収体10の内部を拡散伝搬してパルス時間幅を拡張し、光入射位置から異なる2種類の物理的距離ρ1 ,ρ2 だけ離れた光検出位置で光ガイド71,72によって取り出される。

0106

ここで、光検出器41,42は、光源30から入力した参照信号R0 に基づいて、測定光P0 の発振タイミングとして基準時刻tB =t0 を設定するとともに、測定光P0 のサンプリング・タイミングとして測定時刻tM =t0 +Δtを設定する。これら光検出器41,42は、散乱吸収体10から光ガイド71,72を介して受光した測定光P0 を測定時刻tM に光電変換し、測定光P0 の光強度に比例したレベルを有する検出信号M1 ,M2 を増幅し、コネクタ90を介して演算処理ユニット50にそれぞれ出力する。続いて、光検出器40,41は、基準時刻tB =t0 +(M−1)/fと測定時刻tM =t0 +(M−1)/f+M・Δtとを設定しながら順次サンプリングし、以上の操作を連続して測定光P0の時間分解計測を行う。ただし、M=1,2,3,…である。

0107

なお、光検出器41,42が光強度測定を行う場合、検出信号M1 ,M2 のレベルは各測定時刻tM における測定光P0 の光強度に比例している。一方、光検出器41,42が光子数測定を行う場合、検出信号M1 ,M2 のレベルは各測定時刻tM における測定光P0 の光子数に比例している。

0108

演算処理ユニット50に配置された光路長演算部51は、光検出器41,42から各サンプリング・タイミング毎に入力した検出信号M1 ,M2 に基づいて、式(8)を簡略化した式(26),(27)を用いることにより、測定光P0 の波長λ1 ,…,λ3 と光入射位置−光検出位置間距離ρ1 ,ρ2 とに対応した平均光路長<L(ρ1 )>,<L(ρ2 )>をそれぞれ算出して光拡散演算部52に出力する。

0109

光拡散演算部52は、光路長演算部51によって算出した平均光路長<L(ρ1 )>,<L(ρ2 )>の各計算値を式(9)を順次代入し、式(10),(11)を連立方程式として解くことにより、吸収係数μA (λ1 ),…,μA (λ3 )及び輸送散乱係数μTS(λ1 ),…,μTS(λ3 )をそれぞれ算出して光吸収演算部53に出力する。

0110

光吸収演算部53は、光拡散演算部52によって算出した吸収係数μA (λ1),…,μA (λ3 )及び輸送散乱係数μTS(λ1 ),…,μTS(λ3 )の計算値を、式(19)に順次代入して式(20)〜(21)を得るとともに、式(25)に代入してヘモグロビン酸素飽和度Yを得る。この光吸収演算部53は、式(20)〜(21)を連立方程式として解くことにより、異なる2種類の吸収成分である脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 の各濃度[Hb],[HbO2 ]を算出し、ヘモグロビン酸素飽和度Yとともにデータ信号D0として表示記録ユニット60に出力する。

0111

表示記録ユニット60は、光吸収演算部53から入力した吸収係数μA (λ1),…,μA (λ3 )及び輸送散乱係数μTS(λ1 ),…,μTS(λ3 )と、脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 の各濃度[Hb],[HbO2 ]と、ヘモグロビン酸素飽和度Yとに対して表示や記録などを行う。

0112

このような計測を異なる時刻に行うことにより、吸収係数μA (λ1 ),…,μA (λ3 )及び輸送散乱係数μTS(λ1 ),…,μTS(λ3 )と、脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 の各濃度[Hb],[HbO2]と、酸素飽和度Yとの時間変化をモニタすることができる。

0113

なお、本実施例においては、人の脳内のヘモグロビンを測定対象として設定している。しかしながら、マラソンを行っている人の脚の筋肉中のヘモグロビンを測定対象として設定しても、本実施例とほぼ同様な作用効果が得られる。

0114

(2.3)第3実施例
本実施例は、スラブ状の散乱吸収体として人の乳房を適用し、その乳房内の吸収成分であるヘモグロビンを測定対象として濃度及び酸素飽和度のモニタを行う測定装置である。

0115

図11に示すように、測定装置22は、上記第1実施例と同様して構成されている。光ガイド70〜72は、人の乳房である散乱吸収体10の表面に固定されている。これら光ガイド70と光ガイド71,72との間における散乱吸収体10の各厚さは、異なるように設定されている。光検出器41,42と信号処理系(図示しない)との間には、コネクタ90が上記第2実施例と同様にして設置されている。

0116

なお、散乱吸収体10は、人の乳房であり、その吸収成分として脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 を含有している。光源30は、散乱吸収体10の2種類の吸収成分に対して、異なる3種類の波長λ1 ,λ2 ,λ3 を有するパルス光を測定光P0 として発生する。この測定光P0 の波長λ1 ,…,λ3 としては、上記第2実施例と同様に設定する必要がある。

0117

次に、本実施例の作用について説明する。

0118

このように構成された測定装置22においては、上記第2実施例とほぼ同様にして、吸収係数μA (λ1 ),…,μA (λ3 )及び輸送散乱係数μTS(λ1 ),…,μTS(λ3 )と、脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 の各濃度[Hb],[HbO2 ]と、酸素飽和度Yとを測定して表示や記録などを行う。

0119

ただし、光拡散演算部52は、光路長演算部51によって算出した平均光路長<L(ρ1 )>,<L(ρ2 )>の各計算値を、式(8)に式(12)を代入して得られる式(9)に相当する式に順次代入し、式(10),(11)に相当する式を連立方程式として解くことにより、吸収係数μA (λ1 ),…,μA (λ3 )及び輸送散乱係数μTS(λ1 ),…,μTS(λ3 )をそれぞれ算出して光吸収演算部53に出力する。

0120

このような計測を異なる時刻に行うことにより、吸収係数μA (λ1 ),…,μA (λ3 )及び輸送散乱係数μTS(λ1 ),…,μTS(λ3 )と、脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 の各濃度[Hb],[HbO2]と、酸素飽和度Yとの時間変化をモニタすることができる。

0121

(2.4)第4実施例
本実施例は、スラブ状の散乱吸収体として人の乳房を適用し、その乳房内の吸収係数及び散乱係数と、吸収成分であるヘモグロビンの濃度及び酸素飽和度とに対する空間分布の画像化、すなわち簡単なイメージングを行う測定装置である。

0122

図12に示すように、測定装置23は、上記第1実施例と同様して構成されている。ただし、光ガイド70〜72は、人の乳房である散乱吸収体10の表面に固定されている。これら光ガイド70と光ガイド71,72との間における散乱吸収体10の各厚さは、異なるように設定されている。

0123

また、外部固定装置(図示しない)には、棒状の支持部120の一端が固定されている。この支持部120の他端には、支持部120の周りを回転する駆動部110が設置されている。この駆動部110には、略L字型曲げ成形された棒状の支持部121,122の一端が、支持部120に対して垂直に、かつ相互に平行に突出してそれぞれ固定されている。

0124

支持部120に平行に延びた支持部121,122の他端には、支持部121,122に沿って移動する駆動部111,112がそれぞれ設置されている。これら駆動部111,112には、光ガイド70〜72の一端が、支持部120に対して垂直に突出してそれぞれ配置されている。なお、駆動部72は、光ガイド71,72の間隔を一定に保持している。

0125

これら駆動部110〜112は、位置制御ユニット100からそれぞれ入力した制御信号C1 ,C2 ,C3 に基づいて、光ガイド70と光ガイド71,72とを対向して散乱吸収体10の表面全体を走査させるものである。駆動部110は、支持部120の周りを回転することにより、光ガイド70と光ガイド71,72とを対向して散乱吸収体10の軸方向に対して垂直に回転させる。駆動部111,112は、支持部121,122に沿ってそれぞれ移動することにより、光ガイド70と光ガイド71,72とを対向して散乱吸収体10の軸方向に対して平行に移動させるとともに、光ガイド70〜72を移動させることにより、光ガイド70〜72の一端を散乱吸収体10の表面に接触させる。

0126

位置制御ユニット100は、制御信号C1 ,…,C3 を駆動部110〜112に出力して光ガイド70〜72の走査を制御するとともに、制御信号C4 を光源30に出力して光ガイド70〜72の走査に同期して測定光P0 を発生させるものである。そのため、光源30は、位置制御ユニット100から入力した制御信号C4 に基づいて、光ガイド70〜72の走査に同期した測定光P0 を発生させる。

0127

なお、散乱吸収体10は、人の乳房であり、その吸収成分として脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 を含有している。光源30は、散乱吸収体10の2種類の吸収成分に対して、上記第3実施例と同様にして設定した異なる3種類の波長λ1 ,λ2 ,λ3 を有するパルス光を測定光P0 として発生する。

0128

次に、本実施例の作用について説明する。

0129

このように構成された測定装置23においては、上記第3実施例とほぼ同様にして、吸収係数μA (λ1 ),…,μA (λ3 )及び輸送散乱係数μTS(λ1 ),…,μTS(λ3 )と、脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 の各濃度[Hb],[HbO2 ]と、ヘモグロビン酸素飽和度Yとを測定して表示や記録などを行う。

0130

ただし、位置制御ユニット100による駆動部110〜112の制御に基づいて、光ガイド70と光ガイド71,72とを対向して散乱吸収体10の表面全体を走査させながら、このような計測を順次繰り返し行うことにより、吸収係数μA (λ1 ),…,μA (λ3 )及び輸送散乱係数μTS(λ1 ),…,μTS(λ3)と、脱酸素化ヘモグロビンHb及び酸素化ヘモグロビンHbO2 の各濃度[Hb],[HbO2 ]と、ヘモグロビン酸素飽和度Yと対する空間分布を画像化することができる。

0131

なお、本発明は上記諸実施例に限られるものではなく、種々の変形を行うことが可能である。

0132

例えば、上記諸実施例においては、散乱吸収体が含有する吸収成分の種類数Nに対応して、測定光に異なるN+1種類の波長を設定している。しかしながら、散乱吸収体の内部のバックグラウンド吸収を無視することができる場合には、散乱吸収体が含有する吸収成分の種類数に一致した種類数の波長を測定光に設定することにより、上記諸実施例と同様な作用効果を得ることができる。

0133

また、上記諸実施例においては、1個の光源及び2個の光検出器を用いて構成している。しかしながら、2個の光源及び1個の光検出器を用いて構成しても、上記諸実施例と同様な作用効果を得ることができる。すなわち、散乱吸収体に対して異なる2種類の光入射位置−光検出位置間距離を設定することができればよい。特に、相互に異なる多種類の光入射位置−光検出位置間距離に対応して平均光路長の測定を行うことにより、計測精度を向上させることができる。

発明の効果

0134

以上詳細に説明したように、本発明の散乱吸収体内の散乱特性・吸収特性の測定方法及び装置においては、散乱と吸収の影響を受けながら散乱吸収体の内部を拡散伝搬したパルス状の測定光を散乱吸収体の外部で非侵襲的に測定し、その測定結果を演算処理して散乱吸収体内の散乱特性及び吸収特性を計測する。このとき、測定光の平均光路長が散乱吸収体内の拡散伝搬経路における散乱特性及び吸収特性を含む光拡散性に依存することを利用して、異なる2種類以上の光入射位置−光検出位置間距離に対して測定した平均光路長に基づいて、散乱吸収体内の散乱係数及び吸収係数の計測を行う。

0135

ここで、散乱吸収体が含有する吸収成分に対して異なる吸収係数を有し、当該吸収成分の種類数以上の異なる種類数の波長を測定光に設定する場合、各波長に対する散乱吸収体内の吸収係数が散乱吸収体内の拡散伝搬経路における各吸収成分の寄与を含む光減衰特性に依存することを利用して、異なる波長に対して測定した吸収係数に基づいて、吸収成分の濃度の計測を行う。

0136

そのため、測定光の平均光路長は、測定光の時間分解計測の結果に対する時間積分によって得ることから、信号対雑音比を低減して精度良く計測されている。また、散乱吸収体内の散乱係数及び吸収係数は、散乱吸収体内の拡散伝搬経路における散乱特性及び吸収特性を含む光拡散性に導出した理論式によって得ることから、十分な解析に基づいて精度良く算出されている。

0137

したがって、散乱吸収体内で光が拡散伝搬する過程に対する理論的かつ実験的に十分な解析に基づいて、従来よりも格段に測定誤差を低減して計測精度を向上させることができる。例えば、散乱吸収体として生体組織に適用してその形態情報を得ることにより、当該生体組織が正常な組織であるのか、ある疾患を伴う組織であるかという判別が可能となり得る。

0138

なお、このような計測を同一の光入射位置及び光検出位置で異なる時刻に行うことにより、これら定量値の時間変化を計測することができる。さらに、このような計測を光入射位置及び光検出位置を走査しながら行うことにより、これら定量値の空間分布を計測することができる。

図面の簡単な説明

0139

図1散乱吸収体内において光が拡散伝搬する過程を模式的に示す断面図である。
図2光拡散方程式に対する散乱吸収体の境界条件として設定した仮想光源を模式的に示す断面図である。
図3光拡散方程式の解に基づいた時間分解計測による平均光路長のシミュレーション結果を示すグラフである。
図4散乱吸収体における平均光路長を測定する原理を模式的に示す断面図である。
図5スラブ状の散乱吸収体における平均光路長を測定する原理を模式的に示す断面図である。
図6ヘモグロビン及びミオグロビンの近赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
図7散乱吸収体内の散乱特性・吸収特性を測定する装置を模式的に示す断面図である。
図8図7の測定装置において散乱吸収体への導光方法として用いられる各種手段を模式的に示す断面図である。
図9図7の測定装置において散乱吸収体からの導光方法として用いられる各種手段を模式的に示す断面図である。
図10人の頭部内の散乱特性・吸収特性を測定する装置の要部を模式的に示す断面図である。
図11人の乳房内の散乱特性・吸収特性を測定する装置の要部を模式的に示す断面図である。
図12人の乳房内の散乱特性・吸収特性を測定してイメージングする装置を模式的に示す斜視図である。

--

0140

10…散乱吸収体、20〜23…測定装置、30…光源、40,41…光検出器、50…演算処理ユニット、51…光路長演算部、52…光拡散演算部、53…光吸収演算部、60…表示記録ユニット、70〜72…光ガイド。

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