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技術 精密鋳造用高速度工具鋼

出願人 大同特殊鋼株式会社
発明者 藤井利光一柳信吾
出願日 1994年8月2日 (26年4ヶ月経過) 出願番号 1994-201511
公開日 1996年2月13日 (24年10ヶ月経過) 公開番号 1996-041593
状態 特許登録済
技術分野
  • -
主要キーワード 網目間隔 微細網 研ぎ出し 二次炭化物 窒化マンガン 晶出温度 MC型 炭化物形成金属
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(1996年2月13日)のものです。
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図面 (6)

目的

鋳造後の炭化物微細化のための加工処理が不要で、精密鋳造によるニアネットシェイプの形成が可能な精密鋳造用高速度工具鋼を提供する。

構成

本発明の高速度工具鋼は精密鋳造用のものであって、Feを主成分とし、以下の成分を含有する。N:0.025重量%以上、C:0.7重量%以上2.2重量%以下、Si:3重量%以下、Mn:1.5重量%以下、Cr:3.0重量%以上6.0重量%以下、W:27重量%以下、Mo:13.5重量%以下(ただし、W+2Moは14重量%以上27重量%以下)、V:6.0重量%以下、及び不可避不純物。上記組成範囲のN(窒素)が含有されることにより、図3に示すように、鋳造時に晶出する一次炭化物網目間隔が小さくなり、材料の靱性が向上するので、精密鋳造によりニアネットシェイプを形成することが可能となる。

概要

背景

高速度工具鋼は、炭素及びCr、Mo、W等の炭化物形成金属成分を含有し、それらの炭化物晶出及び析出させることにより、特に高温での硬度耐摩耗性を高めることができる特殊鋼一種であって、歯車を製造するための歯切カッターバイト、チップドリルエンドミル等の、金属ないし木材加工用工具等に広く使用されている。

概要

鋳造後の炭化物微細化のための加工処理が不要で、精密鋳造によるニアネットシェイプの形成が可能な精密鋳造用高速度工具鋼を提供する。

本発明の高速度工具鋼は精密鋳造用のものであって、Feを主成分とし、以下の成分を含有する。N:0.025重量%以上、C:0.7重量%以上2.2重量%以下、Si:3重量%以下、Mn:1.5重量%以下、Cr:3.0重量%以上6.0重量%以下、W:27重量%以下、Mo:13.5重量%以下(ただし、W+2Moは14重量%以上27重量%以下)、V:6.0重量%以下、及び不可避不純物。上記組成範囲のN(窒素)が含有されることにより、図3に示すように、鋳造時に晶出する一次炭化物網目間隔が小さくなり、材料の靱性が向上するので、精密鋳造によりニアネットシェイプを形成することが可能となる。

目的

本発明の課題は、鋳造後の炭化物微細化のための加工処理が不要で、精密鋳造によるニアネットシェイプの形成が可能であり、工具製造の工程数が少なく材料歩留まりの高い精密鋳造用高速度工具鋼を提供することにある。

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
2件

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請求項1

Feを主成分とし、下記の成分を含有することを特徴とする精密鋳造高速度工具鋼:N :0.025重量%以上、C :0.7重量%以上2.2重量%以下、Si:3重量%以下、Mn:1.5重量%以下、Cr:3.0重量%以上6.0重量%以下、W :27重量%以下、Mo:13.5重量%以下、ただし、W+2Moは14重量%以上27重量%以下、V :6.0重量%以下、及び不可避不純物

請求項2

マトリクス中に炭化物網目状に存在する組織を有し、その網目状炭化物の平均網目間隔が50μm以下である請求項1記載の精密鋳造用高速度工具鋼。

請求項3

13重量%以下のCoを含有する請求項1又は2記載の精密鋳造用高速度工具鋼。

請求項4

Al、Nb及びTiのいずれか又は2種以上を、その合計が3重量%以下の範囲内で含有する請求項1ないし3のいずれかに記載の精密鋳造用高速度工具鋼。

請求項5

0.15重量%以下のS及び0.40重量%以下のPbのいずれか又は双方を含有する請求項1ないし4のいずれかに記載の精密鋳造用高速度工具鋼。

請求項6

希土類成分を0.60重量%以下の範囲内で含有する請求項1ないし5のいずれかに記載の精密鋳造用高速度工具鋼。

請求項7

ロックウェルスケール硬度が64以上である請求項1ないし6のいずれかに記載の精密鋳造用高速度工具鋼。

技術分野

0001

本発明は、精密鋳造に使用される高速度工具鋼に関する。

背景技術

0002

高速度工具鋼は、炭素及びCr、Mo、W等の炭化物形成金属成分を含有し、それらの炭化物晶出及び析出させることにより、特に高温での硬度耐摩耗性を高めることができる特殊鋼一種であって、歯車を製造するための歯切カッターバイト、チップドリルエンドミル等の、金属ないし木材加工用工具等に広く使用されている。

発明が解決しようとする課題

0003

従来の高速度工具鋼は、鋳造状態では凝固時に晶出する炭化物(一次炭化物)が粗い網目状に形成されているので、高速度工具鋼に必要な靱性が充分得られない。そのため、鋳造後に熱間加工等を繰り返して粗い一次炭化物組織微細均一化させる必要があり、ほぼ最終に近い製品形状(いわゆるニアネットシェイプ)を鋳造のままで達成することは事実上不可能である。そのため、最終工具形状は、上記熱間加工の後に切削熱間鍛造等により別途形成する必要が生じ、工程数が増えて材料歩留まりが低下する問題があった。一方、鋳塊を溶製せず、ガスアトマイズ等で作製した高速度工具鋼粉末熱間静水圧プレスHIP)して、炭化物が微細均一化した焼結体を用いることも行われているが、HIP法鋳造法に比べて割高であり、また、HIPにより得られたブロック状の焼結体を熱間加工して用いるため、同様にニアネットシェイプが得られない問題がある。

0004

本発明の課題は、鋳造後の炭化物微細化のための加工処理が不要で、精密鋳造によるニアネットシェイプの形成が可能であり、工具製造の工程数が少なく材料歩留まりの高い精密鋳造用高速度工具鋼を提供することにある。

0005

本発明の高速度工具鋼は精密鋳造用に使用されるものであって、Feを主成分とし、以下の成分を含有することを特徴とする:
N :0.025重量%以上、C :0.7重量%以上2.2重量%以下、Si:3重量%以下、Mn:1.5重量%以下、Cr:3.0重量%以上6.0重量%以下、W :27重量%以下、Mo:13.5重量%以下、ただし、W+2Moは14重量%以上27重量%以下、V :6.0重量%以下、及び不可避不純物

0006

高速度工具鋼の鋳造組織には、Feを主体とするマトリクス相と、鋳造時にマトリクス相中に網目状に形成される一次炭化物等が生じているが、本発明の高速度工具鋼においては成分中に上記組成範囲のN(窒素)が含有されており、晶出する一次炭化物の網目間隔(例えば2次デンドライトアーム間隔)が窒素を含有しないものに比べて小さくなる。これにより、網目状の一次炭化物が鋳造状態で微細かつ均一なものとなるので、その後の熱間加工等による一次炭化物微細化の処理が不要となり、精密鋳造により最終に近い製品形状(ニアネットシェイプ)を形成することが可能となるほか、その微細網目状の一次炭化物自体も材料全体としての硬度の増加ならびに耐摩耗性の向上に寄与するようになる。なお、鋳造された材料に焼入れ焼戻し等の熱処理を施すことにより、上記一次炭化物の他に、その熱処理によって析出する二次炭化物等が混在する組織となる。

0007

窒素の含有量は0.025重量%以下であると、一次炭化物微細化の効果が充分に得られないため靱性の低下につながる。従って、窒素の含有量は0.025重量%以上に設定される。一方、窒素の最大含有量は材料の化学成分に対応してほぼ決定され、高速度工具鋼の場合は0.1重量%程度となる。

0008

本発明の高速度工具鋼においては、マトリクス相中に網目状に存在する炭化物は、できるだけ細かい網目間隔を有することが靱性向上の上で好ましく、例えばその平均網目間隔を50μm以下とすることができる。平均網目間隔は、望ましくは35μm以下とするのがよい。

0009

次に、窒素以外の含有成分の役割について説明する。C(炭素)は、同時に添加されるCr、W、Mo、Vと炭化物を形成し、鋳造時に一次炭化物を晶出させるとともに、焼戻しにより微細な二次炭化物をマトリクス相中に析出させてこれを析出強化するほか、マトリクス相に固溶して、これを固溶強化する働きもする。これら効果は、いずれも本発明の高速度工具鋼の硬度(強度)の向上に寄与する。

0010

ここで、本発明の高速度工具鋼は、工具材料として充分な耐摩耗性と強度を確保するために、その硬度がロックウェルスケール硬度で64以上、望ましくは65以上とされるのがよいが、上記炭素の含有量が0.70重量%未満であると、炭化物の晶出及び析出による材料の強化、さらには固溶強化の効果が充分得られず、硬度が上述の範囲を下回るものとなる。また、炭素の含有量が2.2重量%を超えると、粗大な炭化物の形成量が多くなり靱性が低下する。従って、炭素の含有量は上述の範囲内のものとされる。炭素の含有量は、望ましくは0.80〜2.0重量%の範囲内で設定するのがよい。

0011

Si(硅素)は、溶湯中溶存酸素成分と結合してこれを除去する脱酸剤としての機能を果たすほか、マトリクス中に固溶してこれを強化する働きも兼ねる。Siは3重量%を超えると靱性が低下するため、それ以下の範囲内で含有量が設定され、望ましくは0.50重量%以下、さらに望ましくは0.10重量%以下とされる。

0012

Mn(マンガン)も、Siと同じく脱酸剤としての機能を果たす。その含有量が1.5重量%を超えると靱性が低下するため、それ以下の範囲内で含有量が設定され、望ましくは0.50重量%以下とされる。

0013

Cr(クロム)は炭化物形成成分の一つであり、焼戻し時にマトリクス相中にM23C6型の微細な炭化物を析出させ、材料の硬度を上昇させる。また、Crは鋼の恒温変態曲線を長時間側に移動させるので焼入れ性を高める効果もある。Crの含有量が3.0重量%未満であると炭化物による析出強化の効果が充分得られず、6.0重量%を超えると粗大な炭化物の形成量が多くなり靱性が低下する。従って、Crの含有量は上述の範囲内のものとされる。

0014

W(タングステン)とMo(モリブデン)は炭化物形成に対して同様の作用を有しており、鋳造時に微細網目状に形成されるM2C、M6C型の一次炭化物の主要成分となるとともに、焼戻し時にはM2C型の微細な炭化物としてマトリクス相中に析出し、材料の硬度の増加及び耐摩耗性の向上に寄与する。W及びMoの含有量の上限は、前者が27重量%、後者が13.5重量%とされるが、両成分が共添加される場合は、(W含有量+Mo含有量×2)の値の上限が27重量%とされる。MoはWのほぼ半分の原子量を有し、同じ含有量でWのほぼ2倍の原子数を与えるため、半分の添加量でWと同等の効果を与える。そのため、上記共添加時の含有量の上限を設定するに当たっては、Moの含有量を2倍することにより、同等の効果を与えるWの相当量換算している。

0015

これら両成分が上記上限値を超えて含有されると、粗大な炭化物の形成量が多くなり材料の靱性が低下する。また、(W含有量+Mo含有量×2)が14重量%未満となると、炭化物の晶出量ないし析出量が減少して、材料の硬度並びに耐摩耗性が不足する。なお、WとMoはいずれか一方のみを単独で添加することもできる。

0016

V(バナジウム)は高硬度のMC型の炭化物を形成し、材料の硬度を上昇させる。Vの含有量が6.0重量%を超えると材料の靱性が低下するので、Vの含有量は上述の範囲内のものとされる。

0017

本発明の高速度工具鋼には、13重量%以下のCoを含有させることができる。Coは材料の耐熱性を向上させるので、重研削用あるいは高速切削用のドリルなど、摩擦等により温度が上がりやすい環境で使用される工具等に好適な高速度鋼を得ることができる。また、Coはマトリクス相に固溶してこれを固溶強化するほか、マトリクス相の炭素固溶限度を増大させ、炭素による固溶強化を促進する効果も有し、特に大きな硬度を有する高速度工具鋼が必要な場合においても、その添加が有効となる。なお、Coを13重量%を超えて含有させると、上述の効果は飽和し、Co成分の無駄が多くなる。また、上述の効果を顕著に得るためにはCoを3重量%以上含有させることが望ましい。

0018

また、本発明の高速度工具鋼に、Al、Nb及びTiのいずれか又は2種以上を、その合計が3重量%以下の範囲内で含有させることができる。上記成分を含有させることにより、マトリクス相中にこれら成分の微細な窒化物ないし炭化物が分散析出し、結晶粒界移動に対する固着効果が生ずる。これにより、焼入れ加熱時結晶粒成長して粗大化すること、ひいては材料の靱性が低下することが抑制される。なお、上記成分を過度に含有させると上述の効果は飽和し、成分の無駄が多くなるので上記範囲内で含有量が設定される。一方、添加による効果を充分に得るためには、合計含有量が少なくとも0.04重量%程度以上であることが望ましい。ここで、合計含有量は、望ましくは0.04〜1.0重量%、の範囲内で設定するのがよい。

0019

本発明の高速度工具鋼には、0.15重量%以下のS及び0.40重量%以下のPbのいずれか又は双方を含有させることができる。これら両元素は、材料の切削性を向上させるので、精密鋳造された鋳造体に、切削等により若干の加工を施す必要がある場合には、その添加が有効となる。なお、これらの元素を過度に含有させると材料の靱性が低下するので、上記範囲内で含有量が設定される。一方、添加による効果を充分に得るためには、Sについては0.03〜0.10重量%、Pbについては0.05〜0.30重量%の範囲内で、それぞれ含有量を設定することが望ましい。

0020

本発明の高速度工具鋼には、希土類成分を0.60重量%以下の範囲内で含有させることができる。希土類成分を含有させることにより、鋳造凝固時の炭化物の晶出温度域(固液共存域)が狭くなり、晶出する網目状炭化物がさらに微細化されて材料の靱性ないし抗折力が高められる。使用される希土類成分の種類は特に限定されないが、ミッシュメタル等の非分離希土類金属が比較的安価であるので好ましく使用される。

0021

なお、上記希土類成分を過度に含有させると、上述の効果は飽和して成分の無駄が多くなる上、希土類金属は高価でありコスト高を招くこととなる。従って、上記範囲内で希土類成分の含有量が設定される。一方、添加による効果を充分に得るためには、希土類成分の合計含有量を少なくとも0.05重量%程度以上とすることが望ましい。ここで、合計含有量は、望ましくは0.05〜0.10重量%の範囲内で設定するのがよい。

0022

Feは本発明の高速度工具鋼の主成分であり、マトリクス相の主要成分をなすものである。

0023

上記の成分以外に、配合原料等から混入するP、Cu、Ni、O等の不可避不純物が、例えば合計で0.7重量%以下の範囲内で含まれていてもよい。

0024

以下、本発明の高速度工具鋼により、工具等の各種部材を製造する方法について説明する。まず、上述の合金組成が得られるように所定量の出発原料を配合し、これを高周波誘導溶解等の公知の溶解法により溶解する。ここで、上記窒素成分窒化クロム窒化マンガン等の窒素を含有する固体物質の形で配合される。次に、その溶湯減圧吸上げ鋳造法、上注ぎ減圧鋳造法上注ぎ鋳造法等の精密鋳造法により、刃先部等を除いて後加工の必要性があまりない、ニアネットシェイプを有する鋳造体を製造する。

0025

図1に、減圧吸引鋳造を行う場合の装置の例を示す。鋳造装置1は全体が大気中又は不活性ガス雰囲気中に配置されており、下部にアルミナ等で構成される坩堝2が配置され、その外側に誘導加熱コイル9が配置されている。坩堝2の上側には鋳型チャンバ3が設けられ、その内部にはセラミックシェル鋳型等の通気性鋳型4が配置されている。通気性鋳型4の内部には、所定の形状の高速度工具鋼部材を鋳造するための鋳造空間5が形成され、吸引通路部6を介して坩堝2の内側と連通している。また、鋳型チャンバ3の内側空間は吸引口7より図示しないポンプにより減圧吸引されるようになっている。なお、8は鋳型チャンバ3と鋳型4との間の気密性を保持するためのシール部材である。

0026

図示しない電源より高周波電流を誘導加熱コイル9に供給すると、坩堝2内の原料誘導加熱され溶解する。この状態で、鋳型チャンバ3の内側空間を吸引口7より減圧吸引すると、通気性鋳型4の壁部を介して鋳造空間5内も減圧されるので、坩堝2内の溶湯Mが吸引通路部6を通って鋳造空間5内へ吸い上げられ、部材の鋳造が行われる。鋳造空間5内に吸い上げられた溶湯Mは、減圧による吸引力によって空間5の隅々に偏りなく供給されるので、寸法精度の高いニアネットシェイプの鋳造体を得ることができる。

0027

上記のようにして得られる鋳造体中には、前述の微細網目状の炭化物(一次炭化物)が形成されている。なお、切削等により鋳造体に若干の加工を施す必要がある場合には、鋳造体を軟化させて切削性を高めるための焼鈍処理が、例えば800〜900℃で0.5〜2時間程度行われ、焼鈍後は鋳造体は徐冷される。

0028

次に、得られた鋳造体には、焼入れが施される。焼入れのための加熱は真空炉又は塩浴等を用いて行われ、鋳造体を所定温度、例えば1150〜1250℃程度に所定時間、例えば3〜30分程度保持することにより、凝固後の冷却時に析出した粗大な炭化物等をマトリクス相に再固溶させ、その後上記粗大な炭化物が再析出しないよう、その析出温度域(例えば900〜1000℃)を急冷して焼入れを行う。冷却は通常、真空炉を使用する場合は、不活性ガスによる加圧ガス冷却又は油冷が、塩浴を使用する場合は油冷又は塩浴焼入れが用いられる。焼入れ後の鋳造体には、炭素を過飽和に含んだマトリクス相(例えばマルテンサイト相及び残留オーステナイト相)と、前記一次炭化物相等が形成されている。

0029

焼入れ後の鋳造体は、大気炉や真空炉あるいは塩浴等を用いて所定温度、例えば500〜600℃の温度範囲で焼戻しされる。この焼戻し処理により、Cr、W、Mo、V等の微細な二次炭化物が析出すること、及び残留オーステナイト相の分解により材料の硬度が大きく増大する。焼戻し処理は、残留オーステナイト相の分解率を高めるために2回以上、成分偏析が起こりやすい太物材等には3回以上繰り返して行うことが望ましい。焼戻しにより硬化した鋳造体は、刃先研ぎ出し等の仕上げ加工が施されて最終製品とされる。

0030

以下、本発明の実施例について説明する。表1及び表2の試料番号1〜21(18〜21は比較例)の各組成を有する合金を高周波誘導溶解炉を用いて溶解し、減圧吸上げ鋳造法により歯車製造用の歯切カッタ外径30mm、内径28mm、高さ28mm)を鋳造し、試験品を得た。次に、鋳造体を、真空炉を用いて870℃で1時間の焼鈍を行った。なお、焼鈍後の冷却は600℃まで15℃/hrの速度で徐冷し、以後大気中にて空冷した。そして、焼鈍後の鋳造体に、表3に示すA〜Eの5種類の条件により、塩浴を用いた焼入れ及び焼戻しを施した。なお、焼入れは油焼入れとし、焼戻しはそれぞれ同一条件で3回繰り返した。また、焼戻し後の冷却は大気中空冷とした。

0031

焼戻しにより硬化した試験品(歯切カッタ)は、ロックウェル硬度(Cスケール)を測定後それぞれ歯切盤にセットされ、Cr合金鋼(SCr420焼ならし材)製のはすば歯車(直径22mm、高さ15mm)の歯切加工を繰り返し行い、切削不能となるまでの加工回数によりその寿命を評価した。なお、比較用として、硬度の異なる市販の粉末高速度工具鋼鋼材(HRC67及び69)で作製した2種の歯切カッタ(試料番号22、23、表2)の寿命評価も同時に行った。結果を表1及び表2に示す。なお、各番号の試験品は、上記比較品に対応させて2種の硬度レベル選別し、各硬度レベル毎に比較品の工具寿命を100として、相対値により寿命を表示している。

0032

次に、寿命評価終了後の試験品から幅5mm、厚さ3mm、長さ30mmの試験片切り出し、下部スパン20mmにて3点曲げによる抗折試験を行った。また、同じ試験片の表面を研磨及びエッチングして、形成された網目状炭化物組織の光学顕微鏡観察ならびに顕微鏡組織写真撮影を行った。そして、その組織写真に上にインク等により適宜直線を引き、その直線によって切り取られた炭化物像の網目間隔の平均値から、炭化物の網目間隔の実寸平均値を見積った。具体的には、例えば写真1視野に対し60mm及び45mmの2本の直線を引き、それぞれの直線が21個及び12個の炭化物像の網目を横切ったとすると、それら網目の写真上での平均間隔は(60÷21+45÷12)÷2=3.31mmとなる。そして、写真の倍率が例えば100倍の場合、実寸の網目間隔は3.31mm÷100=33.1μmとなる。このようにして見積った炭化物の網目間隔を表1及び表2に示す。

0033

0034

0035

0036

表1及び表2に示した結果から明らかなように、窒素含有量が0.025重量%以下の試料(比較例、試料番号18〜21)は、いずれも炭化物の網目間隔が50μm以上であり、カッタ寿命は粉末高速度工具鋼鋼材品(試料番号22、23)のそれを100としたときに、60〜90程度と低く、抗折力も200kgf/mm2程度以下に留まっている。これに対し、窒素の含有量が0.025重量%を超える本発明の高速度工具鋼(試料番号1〜17)は、炭化物網目間隔がいずれも比較例の試料よりも小さく、いずれの硬度レベルにおいても熱処理条件に関係なくカッター寿命及び抗折力が粉末高速度工具鋼鋼材品よりも高くなっており、耐久性及び靱性に優れたものであることがわかる。これらのうちでも、特に窒素含有量が0.04重量%を超える試料(試料番号2、4、6、8〜17)は、炭化物網目間隔が30μm前後まで減少しており、抗折力とカッター寿命はいずれも大きくなっている。

0037

図2図3及び図4は、それぞれ試料番号2、1及び18の光学顕微鏡組織の写真(倍率100倍)である。写真中、白く表れている部分が網目状の炭化物、やや暗く表れている部分がマトリクス相である。窒素含有量の少ない試料18(図4)の炭化物の網目間隔は大きいが、窒素含有量の少ない試料2及び1(図2及び図3)の網目間隔は小さくなっていることがわかる。なお、焼戻し時に析出する二次炭化物は非常に微細なため、倍率の低いこれらの写真には表れていない。

0038

図5は、上記実施例及び比較例の高速度工具鋼試料の抗折力を、各窒素含有量レベル毎に、試料の硬度に対してプロットしたものである。図中、実線で囲んだプロット点は窒素の含有量が0.04重量%以上の試料、一点鎖線で囲んだプロット点は窒素の含有量が0.25〜0.04重量%の試料、破線で囲んだプロット点は窒素の含有量が0.025重量%未満の試料にそれぞれ対応している。本図から明らかなように、窒素を0.025重量%以上含有する試料は、いずれの硬度においても窒素含有量が0.025重量%未満の試料よりも抗折力が大きく、窒素含有量が0.04重量%以上の場合には特に優れた抗折力を示すことがわかる。また、これら窒素含有量の高い試料は鋳造品でありながら、粉末高速度工具鋼鋼材品(図中●でプロット)と同等ないしそれ以上の抗折力を有していることがわかる。

図面の簡単な説明

0039

図1本発明の高速度工具鋼を精密鋳造するための、鋳造装置の一例を示す模式図。
図2実施例の高速度工具鋼試料の光学顕微鏡組織写真。
図3実施例の別の高速度工具鋼試料の光学顕微鏡組織写真。
図4比較例の高速度工具鋼試料の光学顕微鏡組織写真。
図5実施例及び比較例の高速度工具鋼試料の硬度と抵抗力の関係を示す図。

--

0040

1鋳造装置
3鋳型チャンバ
4 通気性鋳型

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