図面 (/)
技術分野
背景技術
発明が解決しようとする課題
0004
電力貯蔵装置に指令を与える場合、通常は負荷の変動状況に合わせた指令を与えるため、系統内の電力潮流がどうなるかについては、特に考慮されていなかった。したがって、例えば事故または作業による1回線停止や負荷の急増などによって送電線の潮流過負荷が生じるような場合、電力貯蔵装置を用いて過負荷の解消を図る方法が示されていなかった。
0005
本発明の目的は、電力貯蔵装置を用いて電力系統内の潮流が望ましい値になるように制御できる制御装置を提供することにある。
課題を解決するための手段
0006
上記目的を達成するため、電力貯蔵装置の制御装置において、送電線に流れる電力潮流の大きさを取り込む潮流情報入力手段を備え、電力潮流の大きさに応じて電力貯蔵装置が吸収または放出する電力の大きさを決定するようにした。
0007
また、電力潮流の大きさと設定された目標値との差に応じて、吸収または放出する電力の大きさを決定するようにした。
0010
例えば送電線の両側に電力貯蔵装置が設置されている場合、一方に電力吸収、もう一方に電力放出の指令を与えることにより送電線に流れる電力潮流を調整することができる。潮流情報入力手段により実際の電力潮流の大きさが入力されるので、設定された目標値との差を計算して、その差に応じて電力貯蔵装置の吸収または放出すべき電力の大きさを指令することにより、潮流の大きさが目標値になるように制御することができる。
0011
また、2回線送電線が事故や作業により1回線停止した場合、流せる電力潮流の大きさが変わるため目標値も変化するが、運用状態情報入力手段によって1回線停止したことを知ることができ、それに応じて潮流の目標値を変更すれば、運用状態に合わせた潮流の制御を行うことができる。
0012
また、将来時点の潮流状態を予測する潮流予測手段によって将来時点での潮流過負荷が予測できるので、過負荷が発生すると予測された場合には、それを防止するようにあらかじめ電力貯蔵装置の運転スケジュールを作成しておくことにより、潮流状態を望ましい値に制御することができる。
0013
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
0015
電力貯蔵装置は電力貯蔵手段11,変換器12,変換器制御装置13とから成り、変圧器を介して電力系統の母線に接続されている。電力貯蔵手段11としては、NaS電池などの二次電池や超電導エネルギー貯蔵装置などを用いる。変換器12は電力放出時には直流電力を交流電力に、電力吸収時には交流電力を直流電力に変換するもので、サイリスタ,GTO,ダイオードなどの半導体素子を用いて構成される。変換器制御装置13は、与えられた指令値に基づいて電力放出または吸収量が指令値どおりになるよう電力変換器12を制御する。
0016
潮流情報入力手段102は、電力潮流の大きさを検出するセンサからの情報を取り込み、潮流の大きさを吸収放出量決定手段101に出力する。運用状態入力手段103は、送電線の両端に設置された遮断器の開閉情報を取り込み、2回線とも通電しているか、あるいは1回線が遮断されているかどうかを吸収放出量決定手段101に出力する。吸収放出量決定手段101は、潮流の大きさと送電線の運用状態に基づいて、それぞれの電力貯蔵装置の吸収・放出量を算出し、それぞれの変換器制御装置13に指令を与える。
0017
以下、これらを用いて母線Aから母線Bに流れる電力潮流を制御する例について説明する。
0018
まず、潮流情報入力手段102によって母線AとBとを結ぶ送電線の潮流の大きさが入力される。吸収放出量決定手段101は、入力された潮流の大きさと運用目標値とを比較し、その差に基づいて吸収放出量を算出する。運用目標値は、送電線の熱容量や系統の安定度などから決まる送電限界値をもとに設定されるもので、2回線とも送電している場合と、事故や作業で1回線が停止している場合では値が異なる。運用状態入力手段103によって2回線か1回線かが入力されるので、吸収放出量決定手段101は運用状態に応じて運用目標値を選択する。吸収放出量の算出は次のようにして行う。まず、計測した電力潮流値から目標値を引いた値、ΔPを求める。ΔPが正の場合、潮流が目標値を越えているので、母線Aの方の電力貯蔵装置はΔPだけ電力吸収量を増加させ、母線Bの方はΔPだけ電力放出量を増加させる。これにより、母線Aから母線Bに流れる潮流をΔPだけ減少させ、目標値に合わせることができる。特にこの場合は、発電機出力や他の送電線の潮流などには影響を与えずに着目する送電線の潮流だけを変化させることができる。
0019
なお、母線Aの電力貯蔵装置が電力放出を行っていたときΔPが正の場合には、放出量をΔPだけ減少させればよい。またそのとき母線Bの方が電力吸収を行っていた場合は、吸収量をΔPだけ減少させる。
0020
ΔPが負の場合は、逆に母線Aの方の電力吸収量と母線Bの方の電力放出量をそれぞれΔPだけ減少させる。
0021
本実施例によれば、2カ所に設置された電力貯蔵装置に対して吸収放出量を対で設定することにより、発電機出力など他の運用に影響を与えることなく、2カ所の間の電力潮流を望ましい値に制御できる効果がある。
0022
図1の例では、送電線の両端に電力貯蔵装置が設置されていたが、片方しか設置されていない場合でも潮流の制御ができる。図1のように母線Aから母線Bに潮流が流れている場合には、母線B側の電力貯蔵装置だけでも潮流の制御ができる。たとえば、母線Bの放出量を増加させれば(あるいは吸収量を減少させれば)潮流が減少し、逆に吸収量を増加させれば(あるいは放出量を減少させれば)潮流は増加する。ただし、その場合、吸収放出量に応じて系統全体の負荷が変化するので、その分は発電機の出力変化で対応することになる。
0023
上記の例では単純な放射状系統の場合を説明したが、図2に示すようなループ系統の場合でも、同様に潮流を制御することができる。図2の例で、母線Cから母線Bへの潮流を制御する場合も、母線Aと母線Bとに設置された電力貯蔵装置を用いて、上述したのと同様の方法により制御できる。ただしこの場合は、母線Aから母線Cへの潮流や、母線Aから母線D,E,Bへ流れる潮流も同時に変化する。
0024
他の送電線の潮流についても制御する必要がある場合には、着目すべき全ての送電線の潮流の大きさを入力し、その中から最も運用目標値に近い線路を選択し、その線路の潮流を制御するように動作させればよい。このように、複数の送電線に着目して潮流の制御を行うことも可能である。
0025
次に、予測した潮流に基づいて制御する例について説明する。上記の例では、実際に潮流を検出し、目標値との差に応じて制御を行う方法を示したが、あらかじめ潮流の大きさを予測し、予測した値に基づいて吸収放出の運転スケジュールを作成しておくことも可能である。
0026
図3において、まず、需要予測手段111が将来時点での需要を予測する。将来時点とは、例えば現在時刻が8時ならその日の10時,12時,14時といった時点である。需要予測は、過去のデータやその日の予測気温などをもとにして行う。次に潮流予測手段112が、需要予測結果と発電機の運転計画などをもとに潮流計算を行い、各時点での潮流を予測する。
0027
予想潮流計算の結果、潮流が運用目標値を超過する送電線があった場合には、その送電線の両側にある電力貯蔵装置に対して、潮流が目標値以下になるように吸収放出量スケジュールを設定する。吸収放出量の算定は、前述した方法と同様である。ただし、この場合はあくまでも予測潮流であるから、予測誤差を考慮して、ある程度のマージンを見込んだ値にしておく。
0029
また、本実施例の場合はスケジュール運転であるので、過負荷が生じる時間帯に最大限の効果が発揮できるように、過負荷が生じない時間帯を利用してあらかじめ電力を吸収・放出しておくような方法もとることができる。
0030
以上のように、本実施例によれば、1日の負荷状況を予測してあらかじめ運転スケジュールを作成しておくことにより、潮流過負荷の抑制を効率よく行える効果がある。
0031
なお、電力貯蔵装置が3カ所以上に設置されている場合は、複数の送電線についてきめ細かく制御することが可能である。例えば図3において、母線Dと母線Eにも電力貯蔵装置が設置されていれば、母線DとEとの間の潮流に応じてそれらを制御することにより、母線AとBとの間の潮流とは独立に制御することができる。
発明の効果
0032
本発明によれば、電力貯蔵装置を用いて電力系統の送電線に流れる電力潮流の大きさを望ましい値に制御できる効果がある。特に、重負荷や1回線停止などの際に潮流の過負荷を防止できる効果がある。
0033
また、送電線の両側の電力貯蔵装置を制御することで、発電機出力や他の送電線の潮流に影響を及ぼすことなく潮流制御できる効果がある。
0034
また、予測潮流に基づいて運転スケジュールを作成することにより、効率よく潮流を制御できる効果がある。
0035
また、複数の送電線の潮流を入力し、複数の電力貯蔵装置に指令を与えることにより、系統内の複数の潮流をきめ細かく制御できる効果がある。
図面の簡単な説明
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0037
11…電力貯蔵手段、12…変換器、13…変換器制御装置、21…運転スケジュール、101…吸収放出量決定手段、102…潮流情報入力手段、103…運用状態入力手段、111…需要予測手段、112…潮流予測手段。