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目的
構成
概要
背景
ワイヤ放電加工は、被加工体と線状の加工電極(ワイヤ放電加工用電極線と称する)との間に、水、油等の加工液を介し、間欠的に放電を起こさせながら、被加工体をワイヤ放電加工用電極線に対して相対的に移動させることにより、被加工体を所望の形状に溶融切断する方法である。
一般に、ワイヤ放電加工においては、以下に示すような放電加工特性が要求される。
(1)被加工体の仕上り精度、加工精度および仕上り表面状態が良好なことが要求される。
(2)ワイヤ放電加工用電極線からの飛散物が、被加工体に付着しないことが要求される。
(3)放電加工時間が短いことが要求される。
(4)ワイヤ放電加工時に、ワイヤ放電加工用電極線が断線しにくいことが要求される。
(5)ワイヤ放電加工時に、ワイヤ放電加工用電極線が断線したとしても、自動結線性が良いことが要求される。
また、ワイヤ放電加工用電極線の材料としては、以下に示すような特性が要求される。
(6)ワイヤ放電加工用電極線を製造する際に、より詳しくは、線材化する工程において、該材料が、高い伸線加工特性を有することが要求される。
従来、ワイヤ放電加工用電極線の材料としては、黄銅がもっぱら使用されている。これは、黄銅は、比較的、伸線加工性に優れており、ワイヤ放電加工用電極線を製造するのが比較的容易であり、また、黄銅からなるワイヤ放電加工用電極線は、ワイヤ放電加工時に、比較的、引張り強度が高いからである。
黄銅からなるワイヤ放電加工用電極線では、Znの含有量を増せば増すほど放電加工速度が向上することは経験的に知られており、ワイヤ放電加工用電極線としては、Znの含有量の多い、7/3黄銅線、65/35黄銅線、63/37黄銅線が主として用いられている。さらにZnの含有量を増せば放電加工速度の向上が期待されるものの、Znの含有量が40重量%を超える黄銅(Cu−Zn合金)は、伸線加工特性が悪く、ワイヤ放電加工用電極線を製造する際に、焼鈍回数を増さねばならず、そのために、ワイヤ放電加工用電極線の製造コストが高くなるという問題がある。より具体的には、Znの含有量が40重量%を超える黄銅(Cu−Zn合金)を、直径が0.2mm程度の線材(ワイヤ放電加工用電極線)に伸線加工するのは、甚だ困難であるという問題がある。
現在、もっぱら使用されている65/35黄銅線は、放電加工速度が劣り、被加工体への付着量も多く、かつ、高温強度が不足しているため、放電加工用電極線の負荷張力を高くして、放電加工すると断線しやすいという問題がある。
かかる問題を解決する技術として、黄銅に、添加元素として、Al、Si、または、AlとSiを添加したワイヤ放電加工用電極線が種々提案されている。
たとえば、特開昭57−41134号公報には、Znを5重量%以上40重量%以下と、添加元素として、Alを0.1重量%以上4重量%以下を含有し、残部がCuからなるワイヤ放電加工用電極線が開示されている。
また、たとえば、特開昭59−22547号公報には、Znを20重量%以上40重量%以下と、添加元素として、Siを0.1重量%以上5重量%以下を含有し、残部がCuからなるワイヤ放電加工用電極線が開示されている。
また、たとえば、特開昭59−19639号公報には、Znを26重量%以上38重量%以下と、添加元素として、Alを0.2重量%以上1.5重量%以下と、Siを0.2重量%以上1.0重量%以下とを含有し、残部がCuからなるワイヤ放電加工用電極線が開示されている。
また、たとえば、特開昭63−207523号公報には、Znを25重量%以上40重量%以下と、添加元素として、Alを0.5重量%以上2.0重量%以下と、Siを0.01重量%以上0.19重量%以下とを含有し、残部がCuからなるワイヤ放電加工用電極線が開示されている。
上記した、特開昭59−41134号公報、特開昭59−22547号公報、特開昭59−19039号公報または特開昭63−207523号公報に記載されるワイヤ放電加工用電極線は、いずれも、Znの含有量を増加させることなく、添加元素として、Alおよび/またはSiを添加することにより、ワイヤ放電加工用電極線の製造の際の伸線加工特性の劣化を防止するとともに、ワイヤ放電加工時において、加工速度の向上を図るものである。
また、特開昭56−90943号公報には、Znを1重量%以上40重量%以下と、Mn、Mg、希土類元素のいずれか1種または2種以上を、添加元素の合計として、0.1重量%以上3重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなるワイヤ放電加工用電極線が開示されている。
特開昭56−90943号公報に記載されるワイヤ放電加工用電極線も、Znの含有量を増加させることなく、添加元素として、Mn、Mgおよび/または希土類元素を少なくとも1種添加することにより、ワイヤ放電加工用電極線の製造の際の伸線加工特性の劣化を防止するとともに、ワイヤ放電加工時において、加工速度の向上を図るものである。
また、本発明者らは、特開平5−295472号公報において、Znを0.1重量%以上45重量%以下と、Niを0.1重量%以上50重量%以下とを含有し、残部がCuからなるワイヤ放電加工用電極線を開示している。
この発明は、Niを添加することにより、放電加工特性等の向上を図るものである。
概要
優れた伸線加工特性を有する材料からなるワイヤ放電加工用電極線であって、ワイヤ放電加工時において、優れた放電加工速度や、被加工体への付着が少なく、かつ優れた高温強度を有するワイヤ放電加工用電極線を提供する。
Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、Siを0.01重量%以上1.0重量%以下と、B、In、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Ni、Mg、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.005重量%以上4.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.05重量%以上5.00重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる。
目的
本発明は、以上ような問題を解決するためになされたものであって、放電加工速度を向上させ、被加工体への付着物が少なく、かつ高温強度を持つワイヤ放電加工用電極線であって、ワイヤ放電加工用電極線を製造する際に、優れた伸線加工特性を示す材料からなる、ワイヤ放電加工用電極線を提供することを目的とする。
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 1件
この技術が所属する分野
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請求項1
Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、B、In、Ge、Sn、Ti、Fe、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を、添加元素の合計として、0.005重量%以上5.00重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる、ワイヤ放電加工用電極線。
請求項2
Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、Alを0.01重量%以上1.0重量%以下と、B、In、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Ni、Mg、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.005重量%以上4.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.05重量%以上5.00重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる、ワイヤ放電加工用電極線。
請求項3
Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、Siを0.01重量%以上1.0重量%以下と、B、In、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Ni、Mg、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.005重量%以上4.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.05重量%以上5.00重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる、ワイヤ放電加工用電極線。
請求項4
Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、Alを0.01重量%以上1.0重量%以下と、Siを0.01重量%以上1.0重量%以下と、B、In、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Ni、Mg、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.005重量%以上4.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.05重量%以上5.00重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる、ワイヤ放電加工用電極線。
請求項5
Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、Niを0.01重量%以上2.0重量%以下と、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Mg、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.005重量%以上4.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.05重量%以上5.00重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる、ワイヤ放電加工用電極線。
請求項6
Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、Mnを0.01重量%以上1.0重量%以下と、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Fe、Ni、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.005重量%以上3.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.02重量%以上4.0重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる、ワイヤ放電加工用電極線。
請求項7
Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、Mgを0.05重量%以上4.5重量%以下と、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Fe、Ni、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.005重量%以上3.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.05重量%以上5.0重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる、ワイヤ放電加工用電極線。
請求項8
Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、Mnを0.01重量%以上1.0重量%以下と、Mgを0.05重量%以上4.5重量%以下と、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Fe、Ni、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.005重量%以上3.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.1重量%以上5.0重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる、ワイヤ放電加工用電極線。
請求項9
前記添加元素の一部を構成要素とする金属間化合物を含むことを特徴とする、請求項1ないし8に記載のワイヤ放電加工用電極線。
請求項10
Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Ni、Mg、P、Sbからなる群より選択される少なくとも2種の元素を、添加元素の合計として、0.05重量%以上5.00重量%以下の範囲を満足するように含有し、かつ、前記少なくとも2種の元素の一部を構成要素とする金属間化合物を含み、残部がCuおよび不可避的不純物からなる、ワイヤ放電加工用電極線。
請求項11
前記金属間化合物の融点が、500℃以上3000℃以下であることを特徴とする、請求項8または10に記載のワイヤ放電加工用電極線。
請求項12
請求項13
前記Znを40重量%を超え45重量%以下にしたことを特徴とする、請求項1ないし11に記載のワイヤ放電加工用電極線。
技術分野
0001
本発明は、ワイヤ放電加工用電極線に関し、特に、放電加工速度の向上した、かつ被加工体への付着量が少ない等、優れた特性を有するワイヤ放電加工用電極線に関する。
背景技術
0002
ワイヤ放電加工は、被加工体と線状の加工電極(ワイヤ放電加工用電極線と称する)との間に、水、油等の加工液を介し、間欠的に放電を起こさせながら、被加工体をワイヤ放電加工用電極線に対して相対的に移動させることにより、被加工体を所望の形状に溶融切断する方法である。
0003
一般に、ワイヤ放電加工においては、以下に示すような放電加工特性が要求される。
0005
(2)ワイヤ放電加工用電極線からの飛散物が、被加工体に付着しないことが要求される。
0007
(5)ワイヤ放電加工時に、ワイヤ放電加工用電極線が断線したとしても、自動結線性が良いことが要求される。
0008
また、ワイヤ放電加工用電極線の材料としては、以下に示すような特性が要求される。
0010
従来、ワイヤ放電加工用電極線の材料としては、黄銅がもっぱら使用されている。これは、黄銅は、比較的、伸線加工性に優れており、ワイヤ放電加工用電極線を製造するのが比較的容易であり、また、黄銅からなるワイヤ放電加工用電極線は、ワイヤ放電加工時に、比較的、引張り強度が高いからである。
0011
黄銅からなるワイヤ放電加工用電極線では、Znの含有量を増せば増すほど放電加工速度が向上することは経験的に知られており、ワイヤ放電加工用電極線としては、Znの含有量の多い、7/3黄銅線、65/35黄銅線、63/37黄銅線が主として用いられている。さらにZnの含有量を増せば放電加工速度の向上が期待されるものの、Znの含有量が40重量%を超える黄銅(Cu−Zn合金)は、伸線加工特性が悪く、ワイヤ放電加工用電極線を製造する際に、焼鈍回数を増さねばならず、そのために、ワイヤ放電加工用電極線の製造コストが高くなるという問題がある。より具体的には、Znの含有量が40重量%を超える黄銅(Cu−Zn合金)を、直径が0.2mm程度の線材(ワイヤ放電加工用電極線)に伸線加工するのは、甚だ困難であるという問題がある。
0012
現在、もっぱら使用されている65/35黄銅線は、放電加工速度が劣り、被加工体への付着量も多く、かつ、高温強度が不足しているため、放電加工用電極線の負荷張力を高くして、放電加工すると断線しやすいという問題がある。
0013
かかる問題を解決する技術として、黄銅に、添加元素として、Al、Si、または、AlとSiを添加したワイヤ放電加工用電極線が種々提案されている。
0014
たとえば、特開昭57−41134号公報には、Znを5重量%以上40重量%以下と、添加元素として、Alを0.1重量%以上4重量%以下を含有し、残部がCuからなるワイヤ放電加工用電極線が開示されている。
0015
また、たとえば、特開昭59−22547号公報には、Znを20重量%以上40重量%以下と、添加元素として、Siを0.1重量%以上5重量%以下を含有し、残部がCuからなるワイヤ放電加工用電極線が開示されている。
0016
また、たとえば、特開昭59−19639号公報には、Znを26重量%以上38重量%以下と、添加元素として、Alを0.2重量%以上1.5重量%以下と、Siを0.2重量%以上1.0重量%以下とを含有し、残部がCuからなるワイヤ放電加工用電極線が開示されている。
0017
また、たとえば、特開昭63−207523号公報には、Znを25重量%以上40重量%以下と、添加元素として、Alを0.5重量%以上2.0重量%以下と、Siを0.01重量%以上0.19重量%以下とを含有し、残部がCuからなるワイヤ放電加工用電極線が開示されている。
0018
上記した、特開昭59−41134号公報、特開昭59−22547号公報、特開昭59−19039号公報または特開昭63−207523号公報に記載されるワイヤ放電加工用電極線は、いずれも、Znの含有量を増加させることなく、添加元素として、Alおよび/またはSiを添加することにより、ワイヤ放電加工用電極線の製造の際の伸線加工特性の劣化を防止するとともに、ワイヤ放電加工時において、加工速度の向上を図るものである。
0019
また、特開昭56−90943号公報には、Znを1重量%以上40重量%以下と、Mn、Mg、希土類元素のいずれか1種または2種以上を、添加元素の合計として、0.1重量%以上3重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなるワイヤ放電加工用電極線が開示されている。
0020
特開昭56−90943号公報に記載されるワイヤ放電加工用電極線も、Znの含有量を増加させることなく、添加元素として、Mn、Mgおよび/または希土類元素を少なくとも1種添加することにより、ワイヤ放電加工用電極線の製造の際の伸線加工特性の劣化を防止するとともに、ワイヤ放電加工時において、加工速度の向上を図るものである。
0021
また、本発明者らは、特開平5−295472号公報において、Znを0.1重量%以上45重量%以下と、Niを0.1重量%以上50重量%以下とを含有し、残部がCuからなるワイヤ放電加工用電極線を開示している。
0022
この発明は、Niを添加することにより、放電加工特性等の向上を図るものである。
発明が解決しようとする課題
0023
上述したように、従来の、65/35黄銅線等の黄銅からなるワイヤ放電加工用電極線は、ワイヤ放電加工時における放電加工速度が十分でないという問題があった。
0024
そして、放電加工速度の向上を図るため、Znの含有量を増加させただけの黄銅(Cu−Zn合金)からなるワイヤ放電加工用電極線は、放電加工速度の向上がなお十分でないという問題があり、しかも、ワイヤ放電加工用電極線の製造の際の伸線加工特性が著しく悪くなるという問題があった。
0025
また、上述した、黄銅に、Al、Si、AlとSi、または、Niを添加したワイヤ放電加工用電極線や、黄銅に、Mn、Mg、希土類元素を添加したワイヤ放電加工用電極線は、黄銅線に比べ、放電加工性がある程度向上するものの、なお放電加工特性が十分満足されているとは言えない。
0027
しかしながら、上述した、従来のワイヤ放電加工用電極線は、いずれも、十分に速い放電加工速度を得ることができないという問題があった。
0028
また、上述した、黄銅に、Al、Si、AlとSi、または、Niを添加したワイヤ放電加工用電極線や、黄銅に、Mn、Mg、希土類元素を添加したワイヤ放電加工用電極線は、黄銅線に比べ、ワイヤ放電加工時に、ワイヤ放電加工用電極線の断線が生じるという問題はある程度は解決されるものの、なお断線する場合があり、また、そのようにワイヤ放電加工用電極線に断線が生じた場合、自動結線性がなお十分でないという問題があった。
0029
また、ワイヤ放電加工用電極線の材料として、上述した、黄銅に、添加元素として、Al、Si、AlとSi、または、Niを添加した材料や、黄銅に、添加元素として、Mn、Mg、または、希土類元素を添加した材料を用いれば、黄銅に比べ、ワイヤ放電加工用電極線の製造時、特に伸線工程において、ある程度の伸線加工特性の向上が見られるものの、なお、伸線工程において、断線が生じやすく、そのため、伸線工程において、焼鈍回数を増さねばならず、そのような工程の増加によって、ワイヤ放電加工用電極線の製造コストが高くなるという問題が十分解決されるには至っていないという問題がある。
0030
上述したように、ワイヤ放電加工技術の分野においては、放電加工時間の短縮による加工コストの低減の要望や、ワイヤ放電加工用電極線の製造コストの低減の要望には際限がなく、より優れた放電加工特性を有し、しかも安価なワイヤ放電加工用電極線が長年望まれていた。
0031
本発明は、以上ような問題を解決するためになされたものであって、放電加工速度を向上させ、被加工体への付着物が少なく、かつ高温強度を持つワイヤ放電加工用電極線であって、ワイヤ放電加工用電極線を製造する際に、優れた伸線加工特性を示す材料からなる、ワイヤ放電加工用電極線を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0032
本発明者らは、長年、より優れた放電加工特性と、より優れた伸線加工特性とを併せ持つ、ワイヤ放電加工用電極線の材料について研究を続けてきた。
0033
より詳しくは、本発明者らは、放電加工特性の向上と、伸線加工特性の向上に寄与する元素は、Al、Si、Ni、Mn、Mg、希土類元素には限られないのではないかと考え、以下に示す基準に基づいて、黄銅に添加する添加元素のスクリーニングを行なってきた。
0034
(1)放電加工特性の向上と、伸線加工特性の向上に寄与する元素であること。
0035
(2) 毒性が低い元素であること。この基準によれば、毒性の強い、ベリリウム(Be)等が除外される。
0037
その結果、黄銅に、B、In、Ge、Sn、Ti、Fe、PまたはSbを添加すると、放電加工特性の向上と、伸線加工特性の向上が見られることを知見し、第1の発明を完成するに至った。
0038
すなわち、第1の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、B、In、Ge、Sn、Ti、Fe、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を、添加元素の合計として、0.005重量%以上5.00重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部が、Cuおよび不可避的不純物からなる。
0039
第1の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、好ましくは、添加元素が、Feにより構成されることを特徴とする。
0040
また、本発明者らは、黄銅に、Alを添加した材料に、さらに、B、In、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Ni、Mg、PまたはSbを添加すれば、黄銅にAlを添加しただけの材料に比べ、放電加工特性の向上と、伸線加工特性の向上が得られることを知見し、第2の発明を完成するに至った。
0041
すなわち、第2の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、Znを34重量%以上50重量%以下と、Alを0.01重量%以上1.0重量%以下と、B、In、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Ni、Mg、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.005重量%以上4.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.05重量%以上5.00重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる。
0042
第2の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、好ましくは、Al以外の添加元素が、Bと、In、Feと、Niと、Mgと、Pと、Sbとにより構成されることを特徴とする。
0043
さらに好ましくは、Bは0.005重量%以上1.0重量%以下であり、Inは0.005重量%以上1.0重量%以下であり、Feは0.005重量%以上0.5重量%以下であり、Niは0.01重量%以上0.5重量%以下であり、Mgは0.01重量%以上4.0重量%以下であり、Pは0.005重量%以上0.5重量%以下であり、Sbは0.01重量%以上1.0重量%以下であることを特徴する。
0044
また、第2の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、好ましくは、Al以外の添加元素が、Mgにより構成されることを特徴とする。
0045
さらに好ましくは、Mgは0.01重量%以上4.0重量%以下であることを特徴とする。
0046
また、第2の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、好ましくは、Al以外の添加元素が、Feにより構成されることを特徴とする。
0047
さらに好ましくは、Feは0.005重量%以上0.5重量%以下であることを特徴とする。
0048
さらに、本発明者らは、黄銅に、Siを添加した材料に、さらに、B、In、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Ni、Mg、PまたはSbを添加すれば、黄銅にSiを添加しただけの材料に比べ、放電加工特性の向上と、伸線加工特性の向上が得られることを知見し、第3の発明を完成するに至った。
0049
すなわち、第3の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、Siを0.01重量%以上1.0重量%以下と、B、In、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Ni、Mg、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.005重量%以上4.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.05重量%以上5.00重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる。
0050
第3の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、好ましくは、Si以外の添加元素が、Bと、Tiと、Mgとにより構成されることを特徴とする。
0051
さらに好ましくは、Bは0.005重量%以上1.0重量%以下であり、Tiは0.01重量%以上1.0重量%以下であり、Mgは0.01重量%以上4.0重量%以下であることを特徴とする。
0052
また、第3の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、好ましくは、Si以外の添加元素が、Niにより構成されることを特徴とする。
0053
さらに好ましくは、Niは0.04重量%以上4.0重量%以下であることを特徴とする。
0054
また、本発明者らは、黄銅に、AlとSiとを添加した材料に、さらに、B、In、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Ni、Mg、PまたはSbを添加すれば、黄銅に、AlとSiとを添加しただけの材料に比べ、放電加工特性の向上と、伸線加工特性の向上が得られることを知見し、第4の発明を完成するに至った。
0055
すなわち、第4の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、Alを0.01重量%以上1.0重量%以下と、Siを0.01重量%以上1.0重量%以下と、B、In、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Ni、Mg、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.005重量%以上4.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.05重量%以上5.00重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる。
0056
第4の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、好ましくは、AlとSi以外の添加元素が、Niにより構成されることを特徴とする。
0057
さらに好ましくは、Niは0.04重量%以上4.0重量%以下であることを特徴とする。
0058
また、第4の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、好ましくは、AlとSi以外の添加元素が、Inと、Geと、Snと、Feと、Niと、Mgと、Sbとにより構成されることを特徴とする。
0059
さらに好ましくは、Inは0.005重量%以上1.0重量%以下であり、Geは0.005重量%以上0.5重量%以下であり、Snは0.01重量%以上2.0重量%以下であり、Feは0.005重量%以上0.5重量%以下であり、Siは0.01重量%以上0.5重量%以下であり、Mgは0.01重量%以上4.0重量%以下であり、Sbは0.01重量%以上1.0重量%以下であることを特徴とする。
0060
また、本発明者らは、黄銅に、Niを添加した材料に、さらに、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Mg、PまたはSbを添加すれば、黄銅に、Niを添加しただけの材料に比べ、放電加工特性の向上と、伸線加工特性の向上が得られることを知見し、第5の発明を完成するに至った。
0061
すなわち、第5の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、Niを0.01重量%以上2.0重量%以下と、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Mg、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.005重量%以上4.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.05重量%以上5.00重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる。
0062
第5の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、好ましくは、Ni以外の添加元素が、Tiにより構成されることを特徴とする。
0063
さらに好ましくは、Tiは0.01重量%以上2.0重量%以下であることを特徴とする。
0064
また、第5の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、好ましくは、Ni以外の添加元素が、Inと、Mgとにより構成されることを特徴とする。
0065
さらに好ましくは、Inは0.005重量%以上1.0重量%以下であり、Mgは0.01重量%以上4.0重量%以下であることを特徴とする。
0066
また、本発明者らは、黄銅に、Mnを添加した材料に、さらに、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Fe、Ni、PまたはSbを添加すれば、黄銅に、Mnを添加しただけの材料に比べ、放電加工特性の向上と、伸線加工特性の向上が得られることを知見し、第6の発明を完成するに至った。
0067
すなわち、第6の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、Znを34重量%以上50重量%以下と、Mnを0.01重量%以上1.0重量%以下と、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Fe、Ni、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.005重量%以上3.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.02重量%以上4.0重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる。
0068
また、第6の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、好ましくは、Ni以外の添加元素が、Geにより構成されることを特徴とする。
0069
さらに好ましくは、Geは0.005重量%以上0.5重量%以下であることを特徴とする。
0070
また、本発明者らは、黄銅に、Mgを添加した材料に、さらに、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Fe、Ni、PまたはSbを添加すれば、黄銅に、Mgを添加しただけの材料に比べ、放電加工特性の向上と、伸線加工特性の向上が得られることを知見し、第7の発明を完成するに至った。
0071
すなわち、第7の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、Mgを0.05重量%以上4.5重量%以下と、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Fe、Ni、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.005重量%以上3.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.05重量%以上5.0重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる。
0072
また、本発明者らは、黄銅に、MnとMgとを添加した材料に、さらに、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Fe、Ni、PまたはSbを添加すれば、黄銅に、MnとMgを添加しただけの材料に比べ、放電加工特性の向上と、伸線加工特性の向上が得られることを知見し、第8の発明を完成するに至った。
0073
すなわち、第8の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、Mnを0.01重量%以上1.0重量%以下と、Mgを0.05重量%以上4.5重量%以下と、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Fe、Ni、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.005重量%以上3.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.1重量%以上5.0重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる。
0074
第8の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、好ましくは、MnとMg以外の添加元素が、Geと、Snと、Pとにより構成されることを特徴とする。
0075
さらに好ましくは、Geは0.005重量%以上0.5重量%以下であり、Snは0.01重量%以上2.0重量%以下であり、Pは0.005重量%以上0.5重量%以下であることを特徴とする。
0076
また、第1ないし第8の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、好ましくは、添加元素の一部を構成要素とする金属間化合物を含むことを特徴とする。
0077
また、本発明者らは、黄銅に、添加元素として、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Ni、Mg、P、Sbからなる群より選択される少なくとも2種の元素を添加した場合、添加した元素の少なくとも2種以上の元素の一部が金属間化合物の微細析出物を形成すると、特に、放電加工特性が著しく向上することを見出し、第9の発明を完成するに至った。
0078
すなわち、第9の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Ni、Mg、P、Sbからなる群より選択される少なくとも2種の元素を、添加元素の合計として、0.05重量%以上5.00重量%以下の範囲を満足するように含有し、かつ、少なくとも2種の元素の一部を構成要素とする金属間化合物を含み、残部がCuおよび不可避的不純物からなる。
0079
また、本発明の従うワイヤ放電加工用電極線は、好ましくは、金属間化合物の融点が、500℃以上3000℃以下であることを特徴とする。
0080
また、本発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、好ましくは、200℃における強度比((200℃における引張り強さ)/(室温における引張り強さ)×100)%)が、40%以上、より具体的には、40%以上90%以下であることを特徴とする。
0081
また、本発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、より好ましくは、Znを40重量%を超え45重量%以下にしたことを特徴とする。
0082
第1の発明は、Cuに、Znの他に、さらに、B、In、Ge、Sn、Ti、Fe、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を共存させるという構成により、特に、ワイヤ放電加工用電極線としてのワイヤ放電加工時における放電加工特性を著しく向上させると同時に、ワイヤ放電加工用電極線の製造の際における伸線加工特性を著しく向上させたものである。
0083
また、第2の発明は、Cuに、ZnおよびAlの他に、さらに、B、In、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Ni、Mg、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を共存させるという構成により、特に、ワイヤ放電加工用電極線としてのワイヤ放電加工時における放電加工特性を著しく向上させると同時に、ワイヤ放電加工用電極線の製造の際における伸線加工特性を著しく向上させたものである。
0084
また、第3の発明は、Cuに、ZnおよびSiの他に、さらに、B、In、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Ni、Mg、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を共存させるという構成により、特に、ワイヤ放電加工用電極線としてのワイヤ放電加工時における放電加工特性を著しく向上させると同時に、ワイヤ放電加工用電極線の製造の際における伸線加工特性を著しく向上させたものである。
0085
また、第4の発明は、Cuに、Zn、AlおよびSiの他に、さらに、B、In、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Ni、Mg、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を共存させるという構成により、特に、ワイヤ放電加工用電極線としてのワイヤ放電加工時における放電加工特性を著しく向上させると同時に、ワイヤ放電加工用電極線の製造の際における伸線加工特性を著しく向上させたものである。
0086
また、第5の発明は、Cuに、ZnおよびNiの他に、さらに、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Mg、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を共存させるという構成により、特に、ワイヤ放電加工用電極線としてのワイヤ放電加工時における放電加工特性を著しく向上させると同時に、ワイヤ放電加工用電極線の製造の際における伸線加工特性を著しく向上させたものである。
0087
また、第6の発明は、Cuに、ZnおよびMnの他に、さらに、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Fe、Ni、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を共存させるという構成により、特に、ワイヤ放電加工用電極線としてのワイヤ放電加工時における放電加工特性を著しく向上させると同時に、ワイヤ放電加工用電極線の製造の際における伸線加工特性を著しく向上させたものである。
0088
また、第7の発明は、Cuに、ZnおよびMgの他に、さらに、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Fe、Ni、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を共存させるという構成により、特に、ワイヤ放電加工用電極線としてのワイヤ放電加工時における放電加工特性を著しく向上させると同時に、ワイヤ放電加工用電極線の製造の際における伸線加工特性を著しく向上させたものである。
0089
また、第8の発明は、Cuに、Zn、MnおよびMgの他に、さらに、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Fe、Ni、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を共存させるという構成により、特に、ワイヤ放電加工用電極線としてのワイヤ放電加工時における放電加工特性を著しく向上させると同時に、ワイヤ放電加工用電極線の製造の際における伸線加工特性を著しく向上させたものである。
0090
次に、第1ないし第9の発明において、Znの含有量を限定した理由について述べる。
0091
第1ないし第9の発明において、Znの含有量を、34重量%以上50重量%以下としたのは、Znの含有量が34重量%未満では、従来のワイヤ放電加工用電極線と比較して、ワイヤ放電加工時における放電加工速度に画期的な向上が見られなく、一方、Znの含有量が50重量%を超えると、ワイヤ放電加工用電極線の製造の際の伸線加工特性が低下して、ワイヤ放電加工用電極線を製造するのが困難となるためである。
0092
第1ないし第9の発明において、Znの含有量は、より好ましくは、40重量%を超え50重量%以下であり、さらに好ましくは、40重量%を超え45重量%以下である。
0093
第1ないし第9の発明において、Znの含有量が、40重量%を超える範囲が好ましいとしたのは、従来のZnの含有量が40重量%を超えるワイヤ放電加工用電極線、より特定的にはZnの含有量が40重量%を超える黄銅(Cu−Zn合金)線と比較して、ワイヤ放電加工用電極線の製造の際の伸線加工特性に画期的な向上が認められるからである。
0094
また、第1ないし第9の発明において、Znの含有量が40重量%を超えている場合は、ワイヤ放電加工用電極線として、ワイヤ放電加工時において、優れた放電加工特性を示すからである。
0095
また、第1ないし第9の発明において、添加元素の含有量をそれぞれ限定したのは、添加元素の含有量が、第1ないし第9の発明において規定する含有量の範囲内にあれば、従来のワイヤ放電加工用電極線と比較して、ワイヤ放電加工用電極線としてのワイヤ放電加工時における放電加工特性に画期的な向上が認められ、かつ、ワイヤ放電加工用電極線の製造の際の伸線加工特性に画期的な向上が認められるからである。
0096
また、第1ないし第8の発明において、添加元素の一部を構成要素とする金属間化合物を含む場合には、従来のワイヤ放電加工用電極線と比較して、ワイヤ放電加工用電極線としてのワイヤ放電加工時における放電加工特性に画期的な向上が認められる。
0097
なお、本明細書において用いる用語「添加元素の一部を構成要素とする金属間化合物」は、より具体的には、CuZn金属間化合物以外の、たとえば、Cuと添加元素との金属間化合物、Znと添加元素との金属間化合物、添加元素同士の金属間化合物、または、CuとZnと添加元素との金属間化合物を意味する。
0098
また、第9の発明において、Cuに、Znの他に、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Ni、Mg、P、Sbからなる群より選択される少なくとも2種の元素を共存させ、かつ、当該2種の元素の一部を構成要素とする金属間加工物を含む場合には、従来のワイヤ放電加工用電極線と比較して、ワイヤ放電加工用電極線としてのワイヤ放電加工時における放電加工特性に画期的な向上が認められる。
0099
なお、本明細書において用いる用語「少なくとも2種の元素の一部を構成要素とする金属間化合物」は、より具体的には、CuZn金属間化合物以外の、たとえば、当該少なくとも2種の添加元素同士の金属間化合物、Cuと当該少なくとも2種の添加元素との金属間化合物、Znと当該少なくとも2種の添加元素との金属間化合物、または、CuとZnと当該少なくとも2種の添加元素との金属間化合物を意味する。
0100
以下、好適な実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されることはない。
0101
まず、黒鉛ルツボを用いて、Cu(純度99.99%)を融解し、Zn(純度99.99%)を添加し、続いて、B、Al、Si、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Ni、Mg、P、Sbの少なくとも1種の元素を添加して、表1〜表2に記載される種々の組成を有する鋳塊(合金材)を作製した。なお、鋳塊(合金材)を作製する際には、溶湯の表面は、木炭粉末で被覆されていることが好ましい。また、それぞれの鋳塊(合金材)の大きさは、直径40mmφ、長さ400mmであった。
0104
なお、ワイヤ放電加工用電極線の製造工程における、それぞれの合金材の伸線加工特性を評価した。
0105
より詳しくは、それぞれの合金材の伸線加工特性は、直径8mmの線を、所望の線径、より特定的には、直径0.2mmの線材に伸線する際に必要な熱処理(焼鈍し)の回数(加工性(回))により評価した。また、直径0.2mmの線材の表面に欠陥が多く、また、伸線工程において、断線が多く、結果として、直径0.2mmの線材ができなかったものを、加工不可として示した。
0106
合金材の伸線加工特性は、熱処理(焼鈍し)の回数が少ないほど、良いということになる。
0107
結果を表4に示す。次に、以上の工程により得られたワイヤ放電加工用電極線を、ワイヤ放電加工機に取付け、下記の条件で、ワイヤ放電加工を行なった。
0109
より詳しくは、ワイヤ放電加工用電極線の放電加工特性は、放電加工速度、被加工体への電極線からの飛散物の付着量、被加工体の表面性状、ワイヤ放電加工用電極線のワイヤ放電加工時における断線状況、および、断線後のワイヤ放電加工用電極線の自動結線性により評価した。
0110
なお、本明細書で用いる用語「放電加工速度」は、単位時間当り加工断面積(加工送り速度と被加工体の厚さとの積)を意味する。そして、本実施例では、放電加工速度は、従来の合金材(表3中、No.37に示される合金材)からなる、従来のワイヤ放電加工用電極線の放電加工速度を1としたときの、それぞれのワイヤ放電加工用電極線の放電加工速度を比(加工速度比)として示している。
0111
また、被加工体への電極線からの飛散物の付着量については、従来の合金材(表3中、No.37に示される合金材)からなる、従来のワイヤ放電加工用電極線からの飛散物の付着量を100としたときの、それぞれのワイヤ放電加工用電極線からの飛散物の付着量を相対的な比率として示す。
0112
また、被加工体の表面性状は、被加工体の加工後の表面が、非常に滑らかで厚さ方向での寸法差がなく、非常に良好である場合をAで、表面が滑らかで厚さ方向の寸法差がほとんどなく良好なものをBで、表面がやや粗く、厚さ方向の寸法差がやや見られるものをCで、表面が粗く、厚さ方向の中部で、タイコ状の形状を示したものをDで示した。
0113
また、ワイヤ放電加工用電極線の200℃における強度比((200℃における引張り強さ)/(室温(20℃)における引張り強さ)×100(%))を測定した。
0114
以上の結果を、表4および表5に示す。
従来例
実施例と同様にして、表3に記載される組成を有する、従来の合金材を作製した後、実施例と同様にして、従来のワイヤ放電加工用電極線を作製した。
0115
これらの従来のワイヤ放電加工用電極線の製造工程における、それぞれの合金材の伸線加工の難易度を、実施例と同様の方法により評価した。
0116
次に、従来のワイヤ放電加工用電極線をワイヤ放電加工機に取付け、実施例と同一条件で放電加工を行ない、放電特性、より詳しくは、放電加工速度、被加工体への電極線からの飛散物の付着量、被加工体の表面性状、放電加工時における、ワイヤ放電加工用電極線の断線状況、および、断線後の自動結線性について評価した。
0117
結果を表6に示す。
0118
0119
0120
0121
0122
0123
0124
表1〜表6を参照して、表1に記載される合金材No.1〜No.12から製造されるワイヤ放電加工用電極線は、表3に記載される従来の合金材No.37〜No.41から製造される従来のワイヤ放電加工用電極線に比べ、ワイヤ放電加工時における放電加工特性が著しく向上している。
0125
より具体的には、表1に記載される合金材No,1〜No.12から製造されるワイヤ放電加工用電極線は、従来の合金材No.37〜No.41から製造されるワイヤ放電加工用電極線に比べ、放電加工速度比が著しく向上し、被加工体へのワイヤ放電加工用電極線からの飛散物の付着量が著しく減少し、被加工体の加工後の表面形状が著しく向上し、また、放電加工時におけるワイヤ放電加工用電極線の断線回数が著しく減少し、また、ワイヤ放電加工用電極線の断線後の自動結線性についても問題がないことがわかる。
0126
さらに、特筆すべきことは、合金材No.1〜No.12は、Znの含有量を、37重量%以上、好ましくは、40重量%以上50重量%以下、さらに好ましくは、40重量%以上45重量%以下としても、直径0.2mmの線材まで、伸線加工が可能な点にある。
0128
また、表2に記載される合金材No.13〜No.36は、比較例としての合金材を示しており、より具体的には、添加元素の含有量の臨界値、または、Znの含有量の臨界値を示すものである。
0129
より詳しくは、表2中、合金材No.13〜No.24に示す合金材は、添加元素の含有量の臨界値を示す合金材の例を示す。
0130
すなわち、合金材No.22を参照して、添加元素の含有量が、合計で、0.004重量%以下の合金材は、伸線加工特性が、従来例(表3中、No.37、No.38、No.39またはNo.40に示す合金材)と同様であり、また、添加元素の含有量が、0.004重量%以下の合金材から製造されるワイヤ放電加工用電極線は、従来の合金材(表3中、No.37〜No.41に示す合金材)から製造されるワイヤ放電加工用電極線に比べ、放電加工特性の向上があまり見られない。
0131
他方、表2中、合金材No.16、合金材No.19、または、合金材No.23を参照して、添加元素の含有量が、合計で、6重量%以上の合金材では、伸線加工特性に問題がある。
0132
また、表2中、合金材No.25〜No.36に記載される合金材は、Znの含有量の臨界値を示す合金材の例を示す。
0133
表2中、合金材No.26、合金材No.28、合金材No.30、合金材No.31または合金材No.33を参照して、Znの含有量が、50重量%以上の合金材では、伸線加工特性に問題がある。
0134
他方、表2中、合金材No.32を参照して、Znの含有量が、34重量%程度の合金材では、伸線加工特性には問題がないものの、Znの含有量が、34重量%程度の合金材から製造されるワイヤ放電加工用電極線は、従来の合金材(表3中、No.37〜No.41に示される合金材)から製造される、従来のワイヤ放電加工用電極線に比べ、放電加工特性が向上しているとは言えない。
0135
以上の事実から、本発明に従うワイヤ放電加工用電極線のZnの含有量は、特に、以下の場合に限定されるものではないが、34重量%以上であることが好ましいと言える。
0136
なお、本実施例では、第1の発明に従うワイヤ放電加工用電極線として、合金材No.10から製造されるワイヤ放電加工用電極線の例を示したが、第1の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、合金材No.10から製造されるワイヤ放電加工用電極線に限定されるものではないことは言うまでもない。
0137
すなわち、第1の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、B、In、Ge、Sn、Ti、Fe、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を、添加元素の合計として、0.05重量%以上5.00重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる限りにおいて、実施例と同様の効果を奏することを付記しておく。また、B、In、Ge、Sn、Ti、Fe、P、Sbは、単独で用いても、2種以上を組合わせて用いてもよい。
0138
また、本実施例では、第2の発明に従うワイヤ放電加工用電極線として、合金材No.4、合金材No.5、合金材No.9から製造されるワイヤ放電加工用電極線の例を示したが、第2の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、これらの合金材から製造されるワイヤ放電加工用電極線に限定されるものではないことを付記しておく。
0139
すなわち、第2の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、Alを0.01重量%以上1.0重量%以下と、B、In、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Ni、Mg、p、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.005重量%以上4.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.05重量%以上5.00重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる限りにおいて、実施例と同様の効果を奏することを付記しておく。
0140
また、本実施例では、第3の発明に従うワイヤ放電加工用電極線として、合金材No.7から製造されるワイヤ放電加工用電極線の例を示したが、第3の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、合金材No.7から製造されるワイヤ放電加工用電極線に限定されるものではないことは言うまでもない。
0141
すなわち、第3の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、Siを0.01重量%以上1.0重量%以下と、B、In、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Ni、Mg、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.005重量%以上4.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.05重量%以上5.00重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる限りにおいて、実施例と同様の効果を奏することを付記しておく。
0142
また、本実施例では、第4の発明に従うワイヤ放電加工用電極線として、合金材No.2、合金材No.11から製造されるワイヤ放電加工用電極線の例を示したが、第4の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、これらの合金材から製造されるワイヤ放電加工用電極線に限定されるものではないことは言うまでもない。
0143
すなわち、第4の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、Alを0.01重量%以上1.0重量%以下と、Siを0.01重量%以上1.0重量%以下と、B、In、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Ni、Mg、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.005重量%以上4.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.05重量%以上5.00重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる限りにおいて、実施例と同様の効果を奏することを付記しておく。
0144
また、本実施例では、第5の発明に従うワイヤ放電加工用電極線として、合金材No.1、合金材No.2、合金材No.4、合金材No.6、合金材No.8、合金材No.11、または、合金材No.12から製造されるワイヤ放電加工用電極線の例を示したが、第5の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、これらの合金材から製造されるワイヤ放電加工用電極線に限定されるものではないことは言うまでもない。
0145
すなわち、第5の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、Niを0.01重量%以上2.0重量%以下と、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Mn、Fe、Mg、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.05重量%以上4.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.05重量%以上5.00重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる限りにおいて、実施例と同様の効果を奏することを付記しておく。
0146
また、本実施例では、第7の発明に従うワイヤ放電加工用電極線として、合金材No.4、合金材No.5、合金材No.7、合金材No.8、または、合金材No.9から製造されるワイヤ放電加工用電極線の例を示したが、第7の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、これらの合金材から製造されるワイヤ放電加工用電極線に限定されるものではないことは言うまでもない。
0147
すなわち、第7の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、Mgを0.05重量%以上4.5重量%以下と、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Fe、Ni、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.005重量%以上3.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.05重量%以上5.0重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる限りにおいて、実施例と同様の効果を相することを付記しておく。また、本実施例では、第8の発明に従うワイヤ放電加工用電極線として、合金材No.3から製造されるワイヤ放電加工用電極線の例を示したが、第8の発明のに従うワイヤ放電加工用電極線は、合金材No.3から製造されるワイヤ放電加工用電極線に限定されるものではないことは言うまでもない。
0148
すなわち、第8の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、Mnを0.01重量%以上1.0重量%以下とMgを0.05重量%以上4.5重量%以下と、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Fe、Ni、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.005重量%以上3.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.1重量%以上5.0重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる限りにおいて、実施例と同様の効果を奏することを付記しておく。
0149
なお、本実施例では、第6の発明に従うワイヤ放電加工用電極線の例を特に示さなかったが、第6の発明に従うワイヤ放電加工用電極線の例として、合金材No.1のTiをMnに変える以外は、実施例と同様にして、ワイヤ放電加工用電極線を作製したところ、この合金材は合金材No.1と同様の伸線加工特性を示し、また、この合金材から製造されるワイヤ放電加工用電極線は、合金材No.1から製造されるワイヤ放電加工用電極線と同様の効果を奏したことを付記しておく。
0150
また、第6の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、Znを34重量%以上50重量%以下と、添加元素として、Mnを0.01重量%以上1.0重量%以下と、B、Al、In、Si、Ge、Sn、Ti、Fe、Ni、P、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を0.005重量%以上3.0重量%以下とを、添加元素の合計として、0.02重量%以上4.0重量%以下の範囲を満足するように含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる限りにおいて、実施例と同様の効果を奏することを付記しておく。
0151
さらに、本発明者らは、第1ないし第8の発明に従うワイヤ放電加工用電極線の組織を、透過電子顕微鏡により観察・分析した結果、ワイヤ放電加工用電極線中に、添加元素の一部を構成要素とする金属間化合物からなる微細結晶物がまんべんなく形成されている電極線において、放電加工特性が著しく向上していることを知見するに至った。
0152
より具体的には、たとえば、合金材No.10から製造されるワイヤ放電加工用電極線において、ワイヤ放電加工用電極線の組織中に、α相、β相、CuZnの金属間化合物の他に、CuとFeとを構成要素とする金属間化合物、FeとZnとを構成要素とする金属間化合物および/またはCuとFeとZnとを構成要素とするCuFeZn等の金属間化合物がある場合において、放電加工特性が著しく向上していることを知見するに至った。
0153
また、合金材No.1から製造されるワイヤ放電加工用電極線において、ワイヤ放電加工用電極線の組織中に、α相、β相、CuZnの金属間化合物の他に、TiNi等の金属間化合物がある場合において、放電加工特性が著しく向上していることを知見するに至った。
0154
また、合金材No.2〜合金材No.9、合金材No.11、または合金材No.12から製造されるワイヤ放電加工用電極線において、ワイヤ放電加工用電極線の組織中に、α相、β相、CuZnの金属間化合物の他に、添加元素として、添加した、添加元素の一部を構成要素とする金属間化合物がある場合において、放電加工特性の著しい向上が見られることを知見するに至った。
0155
また、本実施例では、第9の発明に従うワイヤ放電加工用電極線として、合金材No.1〜合金材No.9、合金材No.11、または、合金材No.12から製造されるワイヤ放電加工用電極線の例を示したが、これらの合金材から製造されるワイヤ放電加工用電極線のうち、添加元素として添加した、少なくとも2種の元素の一部を構成要素とする金属間化合物が形成されている場合、より詳しくは、ワイヤ放電加工用電極線中に、添加元素の少なくとも2種の元素の一部を構成要素とする金属間化合物からなる微細結晶物がまんべんなく分散・形成されている場合において、放電加工特性の著しい向上が見られることを知見するに至った。
0156
より具体的には、たとえば、合金材No.2から製造されるワイヤ放電加工用電極線の組織において、α相、β相、CuZnの金属間化合物の他に、たとえば、AlとSiとを構成要素とするシリサイド、NiとSiとを構成要素とするシリサイド、AlとSiとNiとを構成要素とするシリサイド、AlとNiとを構成要素とする金属間化合物がある場合において、放電加工特性の著しい向上が見られることを知見するに至った。
0157
また、第1ないし第9の発明に従うワイヤ放電加工用電極線中に形成された微細析出物の融点を測定したところ、微細析出物(金属間化合物)の融点は、いずれも、500℃以上3000℃以下であることを知見するに至った。
0158
また、合金材No.1〜合金材No.12から製造されるワイヤ放電加工用電極線の200℃における強度比((200℃における引張り強さ)/(室温における引張り強さ)×100)%)を測定したところ、いずれも、40%以上90%以下、より特定的には、50%以上90%以下であることがわかった。
0159
表2中、合金材No.15、または、合金材No.17を参照して、これらの合金材から製造されるワイヤ放電加工用電極線は、200℃における強度比が40%未満であり、表2により明らかなように、被加工体の加工後の表面性状が悪く、ワイヤ放電加工時におけるワイヤ放電加工用電極線の断線回数が多く、さらには、断線後のワイヤ放電加工用電極線の自動結線性が劣っている。
0160
また、本発明者らが実施したワイヤ放電加工用電極線において、200℃における強度比が90%を超えるものは、製造することができなかった。
発明の効果
0161
以上、詳細に説明したように、第1ないし第9の発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、上記した構成を有する結果、以下の効果を奏する。
0162
(1)放電加工時において、本発明に従うワイヤ放電加工用電極線を用いることにより、被加工体の加工後の表面性状が良好となる。
0163
(2) 本発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、ワイヤ放電加工用電極線からの飛散物が、被加工体に付着しにくい。
0164
(3) 本発明に従うワイヤ放電加工用電極線を用いれば、従来のワイヤ放電加工用電極線に比べ、放電加工速度が向上する。すなわち、放電加工時間を短くすることができる。
0165
(4)ワイヤ放電加工時に、本発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、断線が生じにくい。すなわち、本発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、高温強度が高いものである。
0166
(5)ワイヤ放電加工時に、ワイヤ放電加工用電極線が断線したとしても、本発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、自動結線性に優れているため、使用時のトラブルが非常に少ない。
0167
(6) 本発明に従うワイヤ放電加工用電極線の材料は、ワイヤ放電加工用電極線の材料は、ワイヤ放電加工用電極線を製造する際に、より詳しくは、線材化する工程において、該材料が、高い伸線加工特性を有する。
0168
特に、実施例を参照して、本発明に従うワイヤ放電加工用電極線の材料は、Znの含有量を34重量%以上、より好ましくは、37重量%以上、さらに好ましくは、40重量%以上としても、伸線加工特性があまり劣化しない。
0169
すなわち、本発明は、上記した構成を有する結果、従来は、実用化が不可能とされた、Znの含有量が40重量%を超える含有量の、直径0.2mm程度のワイヤ放電加工用電極線を提供することができるという効果がある。
0170
また、本発明に、従うワイヤ放電加工用電極線は、ワイヤ放電加工用電極線の材料が、毒性の低い材料で構成される結果、ワイヤ放電加工時の作業安全性に優れ、また、被加工体の加工後の表面の安全性も優れている。
0171
また、本発明に従うワイヤ放電加工用電極線は、該電極線の材料が、いずれも、合金を形成しやすい材料で構成される結果、ワイヤ放電加工用電極線の製造コストを低く抑えることができるという効果も有する。