図面 (/)
※この項目の情報は公開日時点(1995年8月1日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります
図面 (0)
図面はありません
概要
背景
防水工事用アスファルトの種類と規格は、JIS K 2207の“石油アスファルト”に示されており、用途別に第1種から第4種まで分類される。この中で、一般地域での鉄筋コンクリート構造物、鉄骨構造物、これらに準ずる構造物の屋根の防水工事用としては第3種が多く用いられている。
このような建築防水用のアスファルトに求められる性能としては、JIS規格性能だけでなく、耐候性、接着性、加熱安定性(長時間の加熱においても性状が変化しない性質)、あるいは作業性といった実用性能面でも優れたものでなければならない。
従来の防水工事用アスファルトの第3種は、一般に、残渣油に減圧留出油などをカットバック材として添加し、適度な針入度または粘度に調整したものを原料油とし、場合によっては触媒を添加し、これを所定の反応条件でブローイングすることにより製造されている。
概要
高温粘度が低く、また煙や臭気の発生が少ない、作業性に優れた防水工事用アスファルトと、それを特定の原料油を用いて製造する方法とを提供する。
軟化点が95〜110℃、針入度が20〜40、引火点が280℃以上、200℃の粘度が80〜250センチポアズであることを特徴とする防水工事用ブローンアスファルトである。この防水工事用ブローンアスファルトは、100℃の粘度が100〜700センチストークスで、かつアスファルテン量が1〜10重量%の減圧蒸留残渣油を原料とし、これをブローイングすることによって製造することができる。
目的
本発明は、このような問題を解決し、高温粘度が低く、また煙や臭気の発生が少ない防水工事用アスファルトと、その製造方法とを提供することを目的とする。
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 3件
- 牽制数
- 6件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
技術分野
背景技術
0002
防水工事用アスファルトの種類と規格は、JIS K 2207の“石油アスファルト”に示されており、用途別に第1種から第4種まで分類される。この中で、一般地域での鉄筋コンクリート構造物、鉄骨構造物、これらに準ずる構造物の屋根の防水工事用としては第3種が多く用いられている。
0003
このような建築防水用のアスファルトに求められる性能としては、JIS規格性能だけでなく、耐候性、接着性、加熱安定性(長時間の加熱においても性状が変化しない性質)、あるいは作業性といった実用性能面でも優れたものでなければならない。
0004
従来の防水工事用アスファルトの第3種は、一般に、残渣油に減圧留出油などをカットバック材として添加し、適度な針入度または粘度に調整したものを原料油とし、場合によっては触媒を添加し、これを所定の反応条件でブローイングすることにより製造されている。
発明が解決しようとする課題
0005
このようにして得られる製品は、高温粘度が高い(具体的には、約200℃で約350〜1200センチポアズである)ため、約300℃で加熱溶融し、約270〜280℃で施工している。このため、施工時における熱コストが高騰するのみならず、取扱や作業上の危険性があり、しかも煙や臭気の発生もあり、施工作業員あるいは周辺住民の安全や健康面などにおける問題が生じている。
0006
本発明は、このような問題を解決し、高温粘度が低く、また煙や臭気の発生が少ない防水工事用アスファルトと、その製造方法とを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0007
本発明者らは、上記の目的を達成するために検討を重ねた結果、特定の減圧蒸留残渣油を原料とし、これをブローイングしたところ、高温粘度が低く、煙延いては臭気の発生が少なく、しかも耐候性、接着性、加熱安定性が良好であるというこれまで類を見ない優れた諸特性を有する特殊な防水工事用アスファルトが得られるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
0008
すなわち、本発明は、(1)軟化点が95〜110℃、針入度が20〜40、引火点が280℃以上、200℃の粘度が80〜250センチポアズ(以下、「cp」と略す)であることを特徴とする防水工事用ブローンアスファルト、および(2)100℃の粘度が100〜700センチストークス(以下、「cSt」と略す)で、かつアスファルテン量が1〜10重量%の減圧蒸留残渣油を原料とし、該原料をブローイングすることを特徴とする(1)に記載の防水工事用アスファルトの製造方法を要旨とする。
0009
本発明のブローンアスファルトは、軟化点が95〜110℃、好ましくは95〜100℃であり、軟化点が低すぎると、だれ長さが大きくなって、取扱性や作業性が低下し、高すぎると、溶融温度が高くなって、前述の従来技術と同様の問題、すなわち、施工時における高い熱コスト、取扱や作業上の危険性、煙や臭気の発生などが生じる。
0010
針入度は、20〜40、好ましくは20〜30であり、針入度が低すぎると、弾力性が悪く、ヒビ割れなどに結びつき、針入度が高すぎると、軟らかすぎて、だれ長さが大きくなって、上記と同様の問題が生じてしまう。
0011
引火点は、280℃以上、好ましくは285℃以上である。引火点が低すぎれば、言うまでもなく加熱時の引火の危険性がある。
0012
200℃における粘度(すなわち高温粘度)は、80〜250cp、好ましくは100〜200cpであり、該粘度が高すぎれば、前述の従来技術と同様の問題があり、低すぎれば、耐油滲み出し性、耐候性が悪くなる。ここで、油滲み出し性とは、ブローンアスファルトの内部から低分子のオイル分が滲み出す性質を言い、この滲み出しが生じるとブローンアスファルトと接触する部分が変色するなど汚染の原因となる。
0013
これら以外の特性は、JISに規格される防水工事用アスファルト第3種と同等である。なお、本発明における主な特性の具体的数値を、表1に示す。
0014
0015
表1の促進耐候性は、JIS D 0205(自動車部品の耐候性試験通則)に準拠したサンシャインウェザーメーター法(ブラックパネル温度が63℃、水スプレーが60分間照射中で12分間)による照射後における、アルミニウム板(150×70×1.3mm)と、その表面に塗布した試料アスファルト(膜厚0.65mm)との初期導通時間を示す。ここで、初期導通とは、アスファルトの劣化によりアスファルト表面に生じた亀裂が進行しアルミニウム板まで到達したことを示し、具体的には、アスファルト表面に塩化マグネシウム水溶液を塗布すると、その液とアルミニウム板との間に導電性が生じることで確認する。このようにして、最初に導通を確認したとき、その時点までの照射時間を初期導通時間とする。
0016
本発明のブローンアスファルトは、従来の防水工事用アスファルト第3種と同等以上の引火点、だれ長さ、耐候性などの性能を有し、しかも高温粘度がこれまで類を見ないほど低く、防水工事用アスファルトとして極めて有益である。
0017
また、上記のような優れた性能を有する本発明のブローンアスファルトを製造する本発明の方法は、原料油として、100℃の粘度が100〜700cSt、好ましくは200〜600cStで、アスファルテン量が1〜12重量%、好ましくは1〜10重量%の性状を有する減圧蒸留残渣油を使用する。なお、このアスファルテン量とは、n−ヘプタン不溶分量を言う。
0018
この減圧蒸留残渣油は、比較的軽質であり、例えば、ザクム原油、ムバラス原油、マーバン原油、オーマン原油、ウムシャイフ原油、バスラ原油などから得ることができる。なお、上記の性状の範囲となるのであれば、重質の減圧蒸留残渣油を適宜の量で混合して使用することもできる。
0019
本発明の方法において、100℃の粘度が100cSt未満で、かつアスファルテン量が1重量%未満のものを原料油とする場合は、得られるブローンアスファルトは、引火点が280℃よりも低くなり、しかも耐候性が悪くなる傾向があり、700cStより大きく、かつアスファルテン量が12重量%より多いものを原料油とする場合、200℃の粘度が250cpより大きいブローンアスファルトしか得られなくなる。
0020
本発明の方法におけるブローイングは、公知の方法が適用できる。このブローイングに使用する反応槽としては、下部に空気の吹込み孔を有する縦型のものが好ましい。ブローイング温度は約180〜300℃、空気吹込量は約10〜60リットル(以下、「L」と記す)/hr/kg、好ましくは約20〜30L/hr/kgとすることが適している。ブローイング時間は、ブローイング温度や空気吹込量などにより変動するが、一般には、約10〜14時間とすることが適している。
0021
ただし、本発明の方法において、上記したブローイング温度、空気吹込量、ブローイング時間は、一例を挙げたにすぎず、反応槽の大きさや、原料油である減圧蒸留残渣油の性状、あるいは製品である本発明のブローンアスファルトの特性などによっても異なり、これらに何ら制限されるものではない。
0023
以上のように、本発明の方法では、特定の性状を有する減圧蒸留残渣油を原料油とすることにより、特定の特性を有する本発明の防水工事用ブローンアスファルトを得ることができるのであり、このような本発明の防水工事用ブローンアスファルトは、従来行われているような重質の減圧蒸留残渣油に軽質の留出油を混合することによっては、得ることができない。
0024
なお、本発明の方法により本発明の防水工事用ブローンアスファルトが得られる機構は、必ずしも明確ではないが、比較的軽質の減圧蒸留残渣油を原料油とした場合、ブローイング中の酸素の消費量が比較的多いため、軟化点の上昇速度は高い。その割りには針入度の低下は抑制される。また、このような低粘度、低アスファルテン量の減圧蒸留残渣油の場合、一般にアスファルテンの平均分子量が比較的小さい傾向があるため、ブローイング後のアスファルテンの分子量が比較的小さく、アスファルテンミセルは小さいものとなる。したがって、軟化点以上の温度に加熱すれば、アスファルテンのミセルがマルテン中によく分散することとなり、流動性が良くなり、高温粘度が低くなるものと推測される。
0025
実施例1
ムバラス原油、ザクム原油、オーマン原油から得られる軽質の減圧蒸留残渣油の各々40、25、15容量%を混合したものに、カフジ原油、アラビアンヘビー原油などから得られる重質の減圧蒸留残渣油20容量%を混合して原料油とした。この原料油の100℃の粘度は523cSt、アスファルテン量は8.8重量%、引火点は292℃であった。これを下部に空気の吹込み孔を有する反応槽に張込み、空気吹込量30L/hr/kg、開始温度185℃で徐々に昇温し、最高温度245℃で11時間ブローイングした。得られたブローンアスファルトの特性を表2に示す。
0026
実施例2
ザクム原油、ムバラス原油、ウムシャイフ原油、オーマン原油から得られる軽質の減圧蒸留残渣油の各々57、25、5、4容量%を混合したものに、マヤ原油、イラニアンヘビー原油などから得られる重質の減圧蒸留残渣油9容量%を混合して原料油とした。この原料油の100℃の粘度は378cSt、アスファルテン量は3.4重量%、引火点は304℃であった。これを、ブローイング時間を12.8時間とする以外は、実施例1と同様にしてブローイングした。得られたブローンアスファルトの特性を表2に併せて示す。
0027
実施例3
マーバン原油、ザクム原油、オーマン原油から得られる軽質の減圧蒸留残渣油の各々78、14、8容量%を混合して原料油とした。この原料油の100℃の粘度は208cSt、アスファルテン量は1.1重量%、引火点は292℃であった。これを、ブローイング時間を10.5時間とする以外は、実施例1と同様にしてブローイングした。得られたブローンアスファルトの特性を表2に併せて示す。
0028
比較例1
ムバラス原油、ザクム原油、マーバン原油から得られる軽質の減圧蒸留残渣油の各々30、20、15容量%を混合したものに、アラビアンヘビー原油、カフジ原油などから得られる重質の減圧蒸留残渣油35容量%を混合して原料油とした。この原料油の100℃の粘度は979cSt、アスファルテン量は10.9重量%、引火点は300℃であった。これを、ブローイング時間を10.5時間とする以外は、実施例1と同様にしてブローイングした。得られたブローンアスファルトの特性を表3に示す。
0029
比較例2
イラニアンヘビー原油から得られる重質の減圧蒸留残渣油70容量%に、イラニアンヘビー原油から得られる減圧留出油30容量%を混合して原料油とした。この原料油の100℃の粘度は220cSt、アスファルテン量は6.3重量%、引火点は273℃であった。これを、ブローイング時間を9.5時間とする以外は、実施例1と同様にしてブローイングした。得られたブローンアスファルトの特性を表3に示す。
0030
0031
0032
なお、表2〜3において、高温時加熱安定性は、内径約180mm、高さ約200mmのほうろう引きビーカーに採取したブローンアスファルト2kgを250℃で5時間連続加熱し、途中1時間毎の軟化点の変化を加熱前と比較することにより評価した。加熱後各時間の軟化点が加熱前と比較して、3℃未満の変化のとき「性状に変化なし」、3℃以上変化したとき「性状に変化あり」とした。また、溶融時(250℃)の煙の発生は、高温時加熱安定性を評価する際に発生する煙の量を肉眼により観察し、殆ど無視できるほど少ない場合を「殆どなし」とし、発生した煙により背後が見にくくなるほど多くなる場合を「多い」とした。
0033
表2〜3から明らかなように、実施例1〜3で得られた本発明のブローンアスファルトは、いずれも高温粘度が低く、促進耐候性や加熱安定性に優れるとともに、溶融時の煙の発生は殆どなく、施工性に優れたブローンアスファルトと言えるのに対し、比較例1〜2で得られた比較のブローンアスファルトは、高温粘度、引火点などの一般性状面、あるいは促進耐候性、加熱安定性、溶融時の煙の発生など実用性能面のいずれかにおいて劣るブローンアスファルトと言える。
発明の効果
0034
以上詳述したように、本発明のブローンアスファルトは、従来の防水工事用アスファルトの第3種と比較して、同等あるいはそれ以上の引火点、だれ長さ、耐候性などの性能を持つ。しかも、高温粘度が低く、従来品より約50℃低い約200〜230℃の温度で溶融できるため、溶融時に要する熱コストが大幅に低減できるとともに、溶融時の煙および臭気の発生を大幅に抑制することができる。
0035
また、本発明の方法によれば、このような優れた性能を有する本発明のブローンアスファルトを、特定の性状を有する原料油を使用し、従来のブローイング技術をそのまま適用することによって、容易に得ることができる。
技術視点だけで見ていませんか?
この技術の活用可能性がある分野
分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成