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目的
構成
効果
概要
背景
多段圧延機の代表例としてゼンジミアミルが有名である。被圧延材を挟圧する作業ロールの上下に補強ロール、その上下をパッキングロール(バックアップベアリング)で支持し、バッキングロールの中央上下から上部ラック、下部ラックを介して油圧シリンダーによる圧下力を加え、作業ロール間に挟んだ被圧延材を圧延する方式である。ステンレス鋼や珪素鋼のように変形抵抗の大きい材料の圧延に対して他の圧延機にない優れた適性が認められ、普通20段に及ぶロールの相乗的な作動によって幅方向、長さ方向の厚み精度が高く、極薄物の圧延に高い評価を受けている。
多段圧延機による圧延材の製造に当っては、現在、被圧延材として提供された材料板厚と最終目標となる製品の板厚から圧下総量を知り、これを実行するための圧下スケジュールをはじめに設定する。これは各被圧延材の属する鋼種によって既知の情報としてあらかじめ与えられている材質別変形抵抗によって決定される塑性係数と、当該圧延機個有の圧延能力、生産性などを総合的に勘案して、最初から最後まで最もバランスがとれた圧下作業を各段階の圧延パスに振り当てるために、それぞれの圧下量を策定するのである。
圧下スケジュールが決れば、各圧延パスにおける圧下量を得るために必要な作業ロールの具体的な間隙を設定する必要がある。この作業ロール間隔の設定は、単にロール間距離を物理的に測定してそのまま流用できるものではなく、多数の内的な要素も十分考慮に含めて計算しないと、実情に全く適合しない結果となる。まして、多段圧延機は一般にハウジングに取り囲まれた密閉状態で運転されるから、ロール間隔を直接測定する術もなく、従来から内的な要素を含めた推定方法で判断する他なかった。
ロール間隔の推定方法として広く普及しているのは、ゲージメータ方式である。従来、一番普及しているゲージメータ式は
h=A+P/M
ここでhは圧延機出口側の板厚、Aは圧延開度、すなわち作業ロールの間隔、Pは圧延荷重、Mは圧延機の弾性係数をそれぞれ示す。そして上記の式によって間接的に圧延機の出口側板厚hを算出し、この値と目標とする基準板厚Hとを比較して板厚偏差Δh、すなわち、
Δh=H−h=H−(A+P/M)
に応じて圧延機の圧下開度を調整し、板厚を制御する板厚自動制御方式としているのである。また、このゲージメータ方式では圧延ロールへの荷重が変化し、圧延ロールの曲りが変ったとき圧延の形状が変化して板の形状が悪くなるという欠点が免れないので、前記のP/Mに補正項を付加して計算精度の向上を図った公開技報81−6580号(発明協会)もある。
概要
多段式圧延機において、現に作業ロール間に挟在する被圧延材個有の板厚と変形抵抗を圧下シリンダ位置とその負荷圧力から検出して各圧延パスの圧下スケジュールを決める。次に材料を挟まない状態での圧下シリンダの位置と負荷圧力の関係で無負荷時の推移線l0 と負荷時の推移線m0 の交点Q0 を求め、当該圧延パスの材料を挟在したときの同様の線lと線mとをから交点Qを求め、QとQ0 とを重ねた合成によって今回必要とする圧下シリンダの位置の移動量ΔSx を演算し駆動する。
多段圧延機個有の特性を記憶したうえで現在の材料個有の物性を検知して適正な圧下の負荷を自動的に算出し駆動命令を出力するので、各圧延パスごとの切捨ても板厚調整の低速運転も必要なくなる。
目的
本発明は以上に述べた課題を解決し、現在作業ローラにおいて加工を受ける非圧延材自身の個有の物性に基いて合理的な圧下スケジュールを決定し、該スケジュールを実行する各個別の圧延パスにおいては、それぞれ個有の物性に基いた加工量を自動的に加えて目標通りの製品を得る圧延方法、およびそのための制御装置の提供を目的とする。
効果
実績
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請求項1
多段圧延機の上下一対の作業ロール間で被圧延材を複数段階挟圧を反復して最終目標板厚の圧延板を得る圧延方法において、現在作業ロール間に挟在する被圧延材個有の現板厚および変形抵抗を、圧下シリンダ位置と圧下シリンダ負荷圧力との関係から検知し、当該個有の関係に基いて現在の被圧延材の最終製品に至る圧下スケジュールを決定することを特徴とする多段圧延機の圧延方法。
請求項2
請求項1において、上下一対の作業ロール間へ被圧延材を挟在したときに得られる圧下シリンダ位置と圧下シリンダ負荷圧力の変動履歴によって無負荷時の状態推移線1と負荷時の状態推移線mを求め、線mの水平に対する勾配は圧下シリンダ負荷圧力に対する圧下シリンダ位置の変動の比率とみて、既知の被圧延材が属する材質に関する変形抵抗のデーターを修正して圧下スケジュールを決定することを特徴とする多段圧延機の圧延方法。
請求項3
請求項1または2において、上下一対の作業ロールが相互に当接している状態における圧下シリンダ位置と圧下シリンダ負荷圧力の該圧延機の固定履歴によって、無負荷時の状態推移線l0 と負荷時の状態推移線m0 の交叉する点Q0 および圧下シリンダ位置S0 を求め、以後、前記圧下スケジールに基いて予定される複数段階の圧延パスに対する圧下をそれぞれの圧延パスごとに実行するため、圧延パス当初に当該被圧延材独自の前記の線lおよびmによる変動履歴の交点Qおよび圧下シリンダ位置Sを前記固定履歴と重ね、座標軸を平行移動して点Qと点Q0 を重ねて得られる合成によって、現在の真の板厚と前記圧下スケジュールに基いて予定される今回圧延パスにおいて必要とする圧下シリンダ位置の移動量を演算し駆動することを特徴とする多段圧延機の圧延方法。
請求項4
技術分野
背景技術
0002
多段圧延機の代表例としてゼンジミアミルが有名である。被圧延材を挟圧する作業ロールの上下に補強ロール、その上下をパッキングロール(バックアップベアリング)で支持し、バッキングロールの中央上下から上部ラック、下部ラックを介して油圧シリンダーによる圧下力を加え、作業ロール間に挟んだ被圧延材を圧延する方式である。ステンレス鋼や珪素鋼のように変形抵抗の大きい材料の圧延に対して他の圧延機にない優れた適性が認められ、普通20段に及ぶロールの相乗的な作動によって幅方向、長さ方向の厚み精度が高く、極薄物の圧延に高い評価を受けている。
0003
多段圧延機による圧延材の製造に当っては、現在、被圧延材として提供された材料板厚と最終目標となる製品の板厚から圧下総量を知り、これを実行するための圧下スケジュールをはじめに設定する。これは各被圧延材の属する鋼種によって既知の情報としてあらかじめ与えられている材質別変形抵抗によって決定される塑性係数と、当該圧延機個有の圧延能力、生産性などを総合的に勘案して、最初から最後まで最もバランスがとれた圧下作業を各段階の圧延パスに振り当てるために、それぞれの圧下量を策定するのである。
0004
圧下スケジュールが決れば、各圧延パスにおける圧下量を得るために必要な作業ロールの具体的な間隙を設定する必要がある。この作業ロール間隔の設定は、単にロール間距離を物理的に測定してそのまま流用できるものではなく、多数の内的な要素も十分考慮に含めて計算しないと、実情に全く適合しない結果となる。まして、多段圧延機は一般にハウジングに取り囲まれた密閉状態で運転されるから、ロール間隔を直接測定する術もなく、従来から内的な要素を含めた推定方法で判断する他なかった。
0005
ロール間隔の推定方法として広く普及しているのは、ゲージメータ方式である。従来、一番普及しているゲージメータ式は
h=A+P/M
ここでhは圧延機出口側の板厚、Aは圧延開度、すなわち作業ロールの間隔、Pは圧延荷重、Mは圧延機の弾性係数をそれぞれ示す。そして上記の式によって間接的に圧延機の出口側板厚hを算出し、この値と目標とする基準板厚Hとを比較して板厚偏差Δh、すなわち、
Δh=H−h=H−(A+P/M)
に応じて圧延機の圧下開度を調整し、板厚を制御する板厚自動制御方式としているのである。また、このゲージメータ方式では圧延ロールへの荷重が変化し、圧延ロールの曲りが変ったとき圧延の形状が変化して板の形状が悪くなるという欠点が免れないので、前記のP/Mに補正項を付加して計算精度の向上を図った公開技報81−6580号(発明協会)もある。
発明が解決しようとする課題
0006
多段圧延機の圧下スケジュールを決定する段階において、まず課題となることはスケジュール設定の基準となる被圧延材の材質的情報のばらつきである。この場合に与えられる各材質別の変形抵抗はあくまで不偏的、一般的、経験的に蓄積された過去のデータによるものであり、現時点において現実に作業ロールに供給されている被圧延材自体の個有の物性ではない。いうまでもなく同一鋼種に属する材料であっても、そのロットによって過去の熱的履歴や前工程の加工の条件、たとえばクラウンの微妙な差に起因して物性や板厚などに相当な偏差のあることは否定し難い。多段圧延に入る前に既に各ロット間に避け難い板厚の変動、変形抵抗の差があるのに、これを無視して画一的に圧下の最終に至るまでのスケジュールを割当てることは実情に即さないから、途中の段階で目標板厚との乖離を解消するために修正用の圧延パスを追加実施せざるを得ず、製品の品質と生産性の上で好ましくない影響を受けるという課題がある。
0007
圧下スケジュールの改善は圧延全期の合理化に有効であり適正化が強く望まれているが、これよりさらに深刻な課題は、具体的なロール間隔の各圧延パスにおける適正な設定である。ロール間隔の設定とこれによる各圧延パスごとの板厚制御は前記のゲージメータ方式が一般に採られているが、多段圧延機、たとえばゼンジミアミルの構造は多段階に重なったロールの最外部から上下のラックを介して油圧力を受けているから、該方式に当てはめて算出するとき基本となる被圧延材へ直接負荷する圧下力の絶対値を知ることができないという構成上の制約がある。また、既に述べたように被圧延材の変形抵抗や板厚は、前工程までの熱履歴、加工履歴の違いに基き、標準として与えられている経験値とは必ず多少の乖離があって、その程度も予知し難い不特定な要素であるから、如何に微細な補正項を加えて現実に近ずけようとしても、演算の基礎となる諸要素自体が変動するのであるから、制御の精度は保証し難いという重要な課題が残る。
0008
以上に述べたような課題があれば、現実の圧延パスにおいて具体的にどのような現象が誘発されるかといえば、まず、決定された圧下スケジュールによって作業ロールの間隔を調整し、被圧延材を噛み込ませて低速で運転を始め、出口から出てくる圧延材の板厚を測定して現圧延パスにおける目標板厚と比較しつつロール間隔を増減し、具体的には油圧シリンダーの圧力計の目盛りに合わせて総合的な圧下力を調整し、目標の板厚に一致した段階でその圧延パスの本格的な操業に移るという手順が省けない。結局、この間に流出してくる圧延材は所望の板厚ではないからオフゲージと呼ばれる規格外品として処分されるため、歩留り向上の大きな妨げとなっている。また、この犠牲をできるだけ小さくするために、各圧延パスの始動時には圧延機を低速で運転するから、この間の圧延作業は製品を生まない準備段階に過ぎず、正常運転による生産性を阻害する大きな因子となっている。このような非能率と材料のムダが各圧延パスの立ち上がりごとに繰り返され、その間の労務上、材料上の損失は無視できないマイナス要因となっているうえ、このような不確定要素がある以上、板厚の自動制御を目指してもスタートから最大の隘路として立ち塞がる障害であることは論を俟たず、圧延装置に残された数少ない非合理的部分であるともいえる。
0009
本発明は以上に述べた課題を解決し、現在作業ローラにおいて加工を受ける非圧延材自身の個有の物性に基いて合理的な圧下スケジュールを決定し、該スケジュールを実行する各個別の圧延パスにおいては、それぞれ個有の物性に基いた加工量を自動的に加えて目標通りの製品を得る圧延方法、およびそのための制御装置の提供を目的とする。
課題を解決するための手段
0010
本発明に係る多段圧延機の圧延方法は、多段圧延の上下一対の作業ロール間で被圧延材を複数段階挟圧を繰り返して最終目標板厚の圧延板を得る方法であって、現在作業ロール間に挟圧する被圧延材個有の現板厚および変形抵抗を、圧下シリンダ位置と圧下シリンダ負荷圧力との関係から検知し、当該個有の関係に基いて現在の被圧延材の最終製品に至る圧下スケジュールを決定することによって前記の課題を解決した。
0011
この方法をさらに具体的に限定すると、上下一対の作業ロール間へ被圧延材を挟圧したときに得られる圧下シリンダ位置と圧下シリンダ負荷圧力の変動履歴によって無負荷時の状態推移線lと負荷時の状態推移線mを求め、線mの水平に対する勾配は圧下シリンダ負荷圧力に対する圧下シリンダ位置の変動の比率とみて、既知の被圧延材が属する材質に関する変形抵抗のデーターを修正して圧下スケジュールを決定することが最も好ましい実施例である。
0012
また、圧下スケジュールが決定されたならば、各圧延パスごとの圧下作業を実施するために、上下一対の作業ロールが相互に当接しているキスロール状態における圧下シリンダ位置と圧下シリンダ負荷圧力の当該圧延機の固定履歴として、無負荷時の状態推移線l0 と負荷時の状態推移線m0 の交叉する点Q0 および圧下シリンダ位置S0 を求めて記憶し、以後、前記圧下スケジールに基いて予定される複数段階の圧延パスをそれぞれ実行するため、圧延パス当初に当該被圧延材独自の前記の線lおよびmによる変動履歴の交点Qおよび圧下シリンダ位置Sを固定履歴と重ね、座標軸を平行移動して点Qと点Q0 を重ねて得られる合成によって、現在の真の板厚と、前記圧下スケジュールに基いて予定される今回圧延パスにおいて必要とする圧下シリンダ位置の移動量を演算し駆動することが要件となる。
0013
ここで提案した圧延方法を実施するために使用する装置としては、ミルハウジング1内で補強ロール2およびバッキングロール3に支持される一対の作業ロール4と、該作業ロール4へ圧下力を加える圧下シリンダー機構5、該圧下力に対応して変動する圧下シリンダ位置の検出装置6、該圧下シリンダ負荷圧力の検出装置7、および前記圧下シリンダ負荷圧力、圧下シリンダ位置の検出値を入力してあらかじめ現在の被圧延材個有の変形抵抗を演算し適切に補正した圧下スケジュールを出力するとともに、複数段階の圧延パスのそれぞれにおける適正な圧下シリンダ位置を、各時点における被圧延材の情報からその都度調整する駆動信号を出力する演算装置8よりなる構成が要件である。
0014
本発明の作用を図に基いて説明する。図2は現在運転をしつつある多段圧延機へ被圧延材を挟在させた時点の無負荷時、負荷時の圧下シリンダ負荷圧力と圧下シリンダ位置の関係図であり、変動履歴と呼ぶこととする。すなわち、作動ロール間へ被圧延材を噛み込ませ、上下の圧下シリンダからの油圧力が負荷していく過程における圧下シリンダ負荷圧力を縦軸に、圧下シリンダ位置を横軸にとったものである。圧下過程の当初は僅かの勾配で直線lが描かれ、この段階は無負荷時の状態であって、この僅かな勾配は圧力油の動粘性抵抗によって生じるものであり、当該圧延機自体の個有の特性である。圧下が進むと線lは点Qを遷移点として急に立ち上がり線mへ移行する。すなわち、点Qを境に圧下は無負荷状態から負荷状態へ移行したことを現わし、この線mの勾配は圧下シリンダ位置の変化量に対する圧下シリンダ負荷圧力の変化量の割合を示すものであるから、現時点おいて作業ロール間にある被圧延材を現実に圧延するときに、圧延機内部に持つ個有の諸要素も含めた変形抵抗時の特性を示すものと解釈できる。図4は上方の曲線が既に述べた各被圧延材の所属する材料区分によって与えられる変形抵抗を縦軸に示し、横軸には全圧下率%を目盛っている。従来はこの曲線によって圧下スケジールを決定していたのであるが、本発明では、ここで得られた当該圧延機における当該被圧延材の現実の変形抵抗に既知の曲線を補正することが一つの要件となる。すなわち、既知の曲線(上)を図2によって得られた線mの勾配に合わせて修正し、現実の曲線(下)として圧下スケジールの決定の基礎に採用するのである。
0015
各段階の圧下スケジールが、たとえばΔS1 、ΔS2 、ΔS3 、ΔS4 ……のように決定されると、各圧延パスごとの圧延作業へ移行する。手順は図3で示す現に使用中の多段圧延機個有の固定履歴の記憶から始まる。作業ロール間へ被圧延材を挟まないで、(キスロールという)図2と同様に圧下シリンダ位置と圧下シリンダ負荷圧力の関係をプロットする。はじめは線l0 として僅かに右上がりの直線が得られるが、これは図2の線lと同様に無負荷時の推移線で当圧延機個有の特性である。この線l0 は点Q0 を遷移点として急に立ち上がり負荷状態に移行する。負荷状態における線m0 の勾配は圧延機内部の弾性抵抗によって生じこれも当圧延機個有の特性であり、この固定履歴はすべての圧延パスに共通する固定した関係であるから、今後の各圧延パスの実行を決める基礎のデータとして制御機構に記憶させておく。つぎに当該圧延パスの対象となる被圧延材を作業ロール間へ噛み込ませて図2と同様に今回圧延パスに関する変動履歴の圧下シリンダ位置−圧下シリンダ負荷圧力関係図を得る。両図を重ねて図2の両座標軸を平行にずらし、点Qを点Q0 に一致させると、図1のように線lと線l0 とは圧延機個有の内部要素であるから共通であり一致して重なるが、この遷移点から先の線mと線m0 とは勾配が異なり二つの独立した直線に分れる。線m0 は圧延機個有の弾性抵抗によって決るのに対し、線mはこの装置の特性値と被圧延材のその時点における塑性変形とが合成された数値として現われるためにその勾配角度は減少するからである。
0016
一方、図3において、点Q0 に対応する圧下シリンダ位置S0 と、図2において点Qに対応する圧下シリンダ位置Sとによって決るS−S0 が、本圧延パスにおいて供給された被圧延材の現実の板厚であるから、この圧延パスで予定されている圧下スケジールにおける目標圧下量をΔSx とすれば、図2と図3を合成した図1において点Qと点Q0 を重ねた点を支点とする線m0 と線m間の横軸方向の間隔ΔSが、当該圧延パスの所定の圧下スケジュールに予定される圧下量ΔSx と等しくなったとき、これに対応する圧下シリンダ負荷圧力Fの値が求める必要な圧下力に他ならない。すなわち、既に記憶された図3の関係と今回の圧延パスで入力された図2の関係とを電子的な回路に命令して図1の関係に基いて演算させれば、自動的に作動すべき圧下シリンダ負荷圧力が演算され駆動すべき信号が圧下シリンダの油圧機構へ出力されて圧延パスが実行される作用が発現する。
0017
図5は各段階における図2の関係図が圧延パスを重ねて圧延が進行するにつれて徐々に線mの勾配が立ち上がってくる態様を点Qを重ねて示した図であり、被圧延材は圧延が進むにつれて次第に加工硬化が進行して変形抵抗が増加していく傾向を見せるのである。
0018
図6は本発明実施例を示す設備の概略斜視図であり、ミルハウジング1内で補強ロール2およびバッキングロール3に支持される一対の作業ロール4と、該作業ロール4へ圧下力を加える圧下シリンダー機構5、該圧下力に対応して変動する圧下シリンダ位置の検出装置6、該圧下シリンダ負荷圧力の検出装置7、および前記圧下シリンダ負荷圧力、圧下シリンダ位置の検出値を入力してあらかじめ現在の被圧延材個有の変形抵抗を演算し適切に補正した圧下スケジュールを出力するとともに、複数段階の圧延パスのそれぞれにおける適正な圧下シリンダ位置を、各時点における被圧延材の情報からその都度調整する駆動信号を出力する演算装置よりなっている。圧下シリンダ機構は油圧シリンダー51と油圧を受けて作動する圧下ラック52および給油の配管で形成されている。圧下シリンダ位置の検出装置6はマグネットスケールを適用するとよい結果が得られる。
0019
図6の装置における器材と情報の伝達系路について示したのが図7のフローチャートであり、また、図中の演算装置8はパーソナルコンピューターであり、その処理の一例としては図8に示すフローチャートが好ましい実施例である。
0020
実際の圧延作業に当っては圧下シリンダ機構へ圧力油を供給して圧下ラック52を作動させて圧下シリンダ51を移動させたとき、バッキングロール3の軸芯位置とロール径および補強ロール、作業ロールの各ロール径から、作業ロールの移動量、すなわちロールの間隔の変位量は幾何学的に決定されるから、あらかじめ圧下シリンダ位置の移動量とロールの間隔を計算によって求めておくことが好ましい、たとえば図9は被圧延材の目標圧下量が決定したときの、ロール間隔に相当する圧下シリンダ位置の移動量を決定するうえで有効な関係図である。
0021
いままで説明してきた手順はロール間隔の設定後、張力を加えないで圧延した場合についてであるが、実際の圧延には張力を付与して圧延する場合が多いから、このときの手順としては、前記の手順に対する補正が必要となってくる。補正はいままでの説明で得られる無張力の条件で得られた圧下シリンダ位置Sまたは圧下シリンダ負荷圧力Fに補正項Kを乗じて算出すればよい。すなわち、張力下の圧下シリンダ負荷圧力Ftは
Ft=K×F
ただしK=1−[α×t1 +(1−α×t2 )]/k
α:定数
t1 :付与される後方張力
t2 :付与される前方張力
k:被圧延材の変形抵抗
発明の効果
0022
本発明は以上に述べたとおり、従来は作業員の目視による圧下シリンダ負荷圧力のメータ監視によって調整していた板厚制御を、はじめの圧下スケジールから各個別の圧延パスのそれぞれに至るまで、すべて演算処理によって実行し、しかも、その演算は当該多段圧延機個有の特性を記憶したうえで、現に圧延しようとする被圧延材独自の物性に基いた適正な圧下シリンダ負荷圧力を自動的に算出し駆動を命令するので、各圧延パスごとの最初の切捨て(オフゲージ部)も板厚調整のための低速運転もない。すなわち高歩留り、高能率に直結する効果が得られる。しかも板厚の偏差は大幅に改善されて品質の向上に大きな貢献をもたらす。この方法と装置の適用によって信頼性の高い自動運転への移行が実現し、高品質、高生産性の両立する優れた工場運営が可能となる。
0023
効果の一例として表1を示すが、これは本発明による実施例と従来技術による圧下精度を比較したものである。もちろん板厚制御以外の圧延の諸条件は同一に揃え、ゼンジミアミルによってSUS304のステンレス冷延鋼を板厚2.1mmから目標圧下量0.4mmとした第1の圧延パスを実施したものである。表1は圧延パス後の被圧延材の先端部10mにおける板厚平均値の圧延目標値に対する偏差を示したもので、比較例は従来どおり熟練した作業者の経験による手作業の調整下で圧延したものである。実施例、比較例ともに各30ずつサンプリングして板厚測定した結果、表からも明らかなように従来技術では板厚偏差の平均値xは55.97μm、標準偏差σは77.54μmであったのに対し、本発明実施例では、板厚偏差の平均値xは7.50μm、標準偏差σは11.05μmであり、本発明の歴然たる効果を明確に示している。
0024
図面の簡単な説明
0025
図1本発明の各圧延パスにおける圧下シリンダ負荷圧力を決定するための合成図である。
図2本発明の変動履歴を示す図表である。
図3同じく固定履歴を示す図表である。
図4圧下スケジュールの決定方法を示す図表である。
図5圧延パスの進行とともに変化する変動履歴の推移を示す。
図6実施例の装置を示す斜視図である。
図7各器材と情報の伝達系路を示すフローチャートである。
図8演算装置内の手順を示すフローチャートである。
図9圧下シリンダ位置とロール間隔の関係図である。