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技術 導波路型光素子、およびその製造方法

出願人 住友大阪セメント株式会社
発明者 箕輪純一郎永田裕俊日高潤本田秀紀小林正信荻原淳一
出願日 1993年7月7日 (27年4ヶ月経過) 出願番号 1993-168088
公開日 1995年1月31日 (25年9ヶ月経過) 公開番号 1995-028008
状態 特許登録済
技術分野 光集積回路 光の変調 光集積回路
主要キーワード 制御用直流電圧 ドリフト測定 単一バッファ 皮膜形成法 化学的結合力 ドリフト現象 ドリフト特性 電気的物性
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (10)

目的

DC−ドリフト現象が少なく、実用上十分な周波数帯域の広さおよび高さを有する導波路型電気光学素子およびその製造方法を提供する。

構成

基板光導波路バッファ層、および電極を有する光学素子において、誘電体材料からなるバッファ層を形成するに際し、高エネルギーイオン種を用いない気相堆積法、例えば真空蒸着法により低緻密性第1バッファ層を形成し、次に高エネルギーイオン種を用いる気相堆積法、例えばイオンアシスト真空蒸着法又はスパッタリング法により高緻密性第2バッファ層を形成する。

概要

背景

本発明の導波路型電気光学素子に関連する従来の光学素子について、その一例としてニオブ酸リチウム基板を用いたマッハツェンダ型光変調器を用いて説明する。このような従来の光学素子はニオブ酸リチウム(LiNbO3)基板上に、Ti熱拡散法によりY字形分岐路、および合波路を有するパターン導波路を形成し、この導波路の上に、誘電体材料よりなるバッファ層を形成し、その上に、前記導波路に対応する電極を配置して構成される。このような従来の光学素子の構成は、例えば、西原、名、栖原共著「光集積回路」、オーム発行、1985などに記載されている。

上記のような従来の光学素子において、素子使用環境温度が変化した場合、必要に応じ、LiNbO3基板の焦電効果により発生する電荷を、素子の電極下の部分に集中させることなく、素子表面に均一に分散させることにより温度変化に起因する素子特性変調位相)のドリフトを低減させることが必要になり、このために、当該バッファ層にくらべて低い電気抵抗を有する薄層を、バッファ層の上、又はその下に配置することが知られている(例えば、K.Seino, T.Nakazawa,Y.Kubota, M.Doi, T.Yamane and H.Hakogi ;Proc.OFC'92, San Jose, Feb.8-11, 1992(Optical Soc.Am., Wasington, 1992)pp.325 、十文字、野沢;電子情報通信学会論文誌C-1 、J75-C-1(1992)17 、および特開平5−66428号等)。

上記のような光素子の重要な構成要素の一つである誘電体バッファ層は、一般にSiO2 、又はAl2 O3 などの酸化物誘電体が用いられている。このような誘電体バッファ層の形成には、真空蒸着法イオンアシスト真空蒸着法、スパッタリング法、および化学的気相蒸着法CVD法)などのような汎用薄膜堆積方法が用いられている。上記誘電体バッファ層形成工程は、予じめ所望の導波路を、基板上に形成した後、この導波路を被覆するように、基板上に施される。

上記誘電体バッファ層を形成するSiO2 又はAl2 O3 は、高い電気的絶縁性を有し、しかもその誘電率(屈折率)が低いという特性を有し、このため導波路を伝播する光信号、および電極中を伝播する高周波電気信号がバッファ層中に散乱損失することが少ないという利点を有している。また、バッファ層を形成する誘電体物質、すなわちSiO2 、又はAl2 O3 が、基板を形成する物質、すなわちLiNbO3 と同様に酸化物であるため、基板とバッファ層との界面における化学的結合力、すなわち付着強度が高いという利点がある。

上記バッファ層を形成するための一工法として用いられる真空蒸着法は、原料物質を、真空中で加熱蒸発又は昇華させ、この蒸発源に対向して配置された基板面上に、前記気化した原料物質を付着堆積させる方法である。この真空蒸着法においては約10-5Torr以上の高い真空度雰囲気を用いるため、蒸発種の平均自由工程度が高く、基板上に均一な膜厚分布を有するバッファ層を容易に形成することができる。また真空蒸着法では、蒸発種を、電界などにより加速しないため、蒸発種の有するエネルギーが比較的小さく、このため基板表面上に入射付着する際に、基板表面を損傷することがなく、また、形成される蒸着膜に導入される内部応力も、他の成膜方法にくらべて小さいという特長を有している。

しかしながら、真空蒸着法の上記長所はそれを裏返えせば、蒸着膜の基板表面に対する付着強度が小さく、また蒸着膜の緻密度が低いという欠点にもなっている。特に、真空蒸着法による蒸着膜の緻密度が低いということは、その膜特性が光学素子の環境条件の変化に敏感に感応して変化しやすく、また高周波電界低損失伝送(例えば変調器を制御する電気信号)にとって有害な不純物、例えば水(H2 O)分子などを取り込んでしまう可能性があるなどの欠点の原因となる。

上記のような問題点を有する真空蒸着法に対して、スパッタリング法、およびイオンアシスト蒸着法は、緻密で強固な皮膜を形成するという長所があるが、その反面、蒸発種の少なくとも一部がプラズマ、或いは第二のイオンビーム(Ar,O2イオンなど)によりイオン化された状態にあり、従って高いエネルギーを有しているため、これが基板表面に衝突してこれに損傷(表面原子欠損など)を与えやすく、また得られる皮膜の内部応力も高くなるという欠点を有している。

CVD法は使用される原料化学的特性により、基板表面における原料種マイグレーションを大きくすることが可能であり、基板表面の凹凸に無関係に基板表面の被覆率(皮膜の厚さ)を一定にすることができるという長所を有しており、この長所は他の皮膜形成法では得られないものである。しかし、CVD法は、未反応種又は反応ガス種を、形成される皮膜中に取り込みやすく、かつ皮膜形成条件の設定および実施に微妙なコントロールが必要であるという問題点を有している。このため、CVD法は光学素子のバッファ層形成方法としては、現在のところあまり用いられていない。

従来方法においては、光学素子のバッファ層は、上記皮膜形成方法の一つを利用し、その単一回の皮膜形成工程により形成されていた。但し、堆積形成された皮膜の酸素欠損補填するために、酸素含有雰囲気中において、600℃程度の温度において熱処理を施すことがある。

上記のような従来のバッファ層はその皮膜形成に用いられた方法に強く依存する上述の特性を有し、このバッファ層の特性がそれを含む光学素子デバイスの特性に大きな影響を与えている。例えば、バッファ層の特性に起因する現象として、直流電圧により調整された光変調位相が経時的に変化し、それが調整点からずれてしまう現象、すなわちDC−ドリフト現象が知られている。このDC−ドリフト現象の原因については、未だ十分に解明されていないが、基板およびバッファ層の電気的物性(例えば、抵抗率、および誘導率など)に強く関係しているという見解が有力である。(十文字、野沢;電子情報通信学会論文誌C-1 、J75-C-1(1992)17 、特開平5−66428号、および特開平4−346310号等)。

また高速変調器の場合、光学素子の重要な性能として、使用周波数帯域の幅が広いこと、又は使用周波数帯域が高いこと(最近開発中の光通信では20GHz 以上における動作が望まれている)が求められているが、これらの性能は当然のことながら当該光学素子中のバッファ層の物性および種類により大きな影響を受ける。

ところで、真空蒸着法により作成されたSiO2バッファ層を有する変調器は、スパッタリング法あるいはイオンアシスト蒸着法により作成されたSiO2 バッファ層を有する変調器に比較して、長期間に渡るDC−ドリフトが著しく小さいことがわかっている。その一方で、真空蒸着SiO2 バッファ層を有する変調器は、他に比べて低い帯域特性しか示さない。DC−ドリフトは、素子の寿命を決める要因の一つであり、DC−ドリフトが小さいほど使用寿命が長い。したがって、高帯域特性が要求される超高速光通信システム用素子には、スパッタリングあるいはイオンアシスト蒸着法で作成された高性能バッファ層を用いる必要があるが、この素子はDC−ドリフトが大きく、素子寿命が短いという矛盾した結果になってしまう。

DC−ドリフトを低減する手段としては、前述した、「基板とバッファ層の電気的物性(抵抗率・誘電率等)の差」に着目して、基板よりも高い電気伝導特性を有するバッファ層を用いる方法(特開平4−346310号)、基板表面の電気伝導度基板内部より高くする方法(特開平5−66428号)、およびバッファ層中に電気伝導度の差異を層状あるいは島状にもたせる方法(特開平3−127022号、特開平3−127023号)、などが提案されている。しかし、これらの方法が、光学素子の帯域特性を同時に改善し得るものであるか否かは不明である。

概要

DC−ドリフト現象が少なく、実用上十分な周波数帯域の広さおよび高さを有する導波路型電気光学素子およびその製造方法を提供する。

基板、光導波路、バッファ層、および電極を有する光学素子において、誘電体材料からなるバッファ層を形成するに際し、高エネルギーイオン種を用いない気相堆積法、例えば真空蒸着法により低緻密性第1バッファ層を形成し、次に高エネルギーイオン種を用いる気相堆積法、例えばイオンアシスト真空蒸着法又はスパッタリング法により高緻密性第2バッファ層を形成する。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
4件

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請求項1

電気光学効果を有する基板と、この基板表面部に形成された光導波路と、前記光導波路具有基板表面上に形成され、かつ誘電体材料からなるバッファ層と、このバッファ層上の、前記光導波路の対応する位置に配置された電極を有し、前記バッファ層が、前記光導波路具有基板上に、イオン化された高エネルギー蒸発種を用いない、第1の気相堆積法により形成され、かつ、誘電体材料からなる低緻密性第1バッファ層と、および前記第1バッファ層上に、イオン化された高エネルギー蒸発種を用いる第2の気相堆積法により形成され、かつ、誘電体材料からなる高緻密性第2バッファ層と、から構成された2層構造を有することを特徴とする、導波路型電気光学素子

請求項2

電光学効果を有する基板の表面部分に、光導波路を形成し、前記光導波路具有基板表面上に、誘電体材料からなるバッファ層を形成し、前記バッファ層上の、前記光導波路に対応する位置に、電極を配置する工程を含み、前記バッファ層の形成に際し、前記光導波路具有基板上に、イオン化された高エネルギー蒸発種を発生させることのない第1の気相堆積法により、誘導体材料を堆積させて低緻密性第1バッファ層を形成し、次に、前記第1バッファ層上に、イオン化された高エネルギー蒸発種を用いる第2の気相堆積法により誘導体材料を堆積させて高緻密性第2バッファ層を形成する、ことを特徴とする導波路型電気光学素子の製造方法。

請求項3

前記第1バッファ層形成のための第1の気相堆積法が真空蒸着法であり、かつ前記第2バッファ層形成のための第2の気相堆積法が、スパッタリング法である、請求項2に記載の方法。

請求項4

前記第1バッファ層形成のための第1の気相堆積法が真空蒸着法であり、かつ前記第2バッファ層形成のための第2の気相堆積法がイオンアシスト真空蒸着法である、請求項2に記載の方法。

請求項5

同一真空蒸着装置内において、前記真空蒸着法による第1バッファ層形成に引続いて、前記イオン種を用いるイオンアシスト真空蒸着法による第2バッファ層形成が行われる、請求項4に記載の方法。

請求項6

前記第1および第2バッファ層の形成において、前記誘電体材料として、SiO2 が用いられる、請求項1〜5のいづれか1項に記載の方法。

請求項7

前記基板が、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)からなり、前記光導波路が、チタン熱拡散により形成される、請求項1〜6項のいづれか1項に記載の方法。

技術分野

0001

本発明は、導波路型電気光学素子、およびその製造方法に関する。更に詳しく述べるならば、本発明は光通信分野、光情報処理分野、および光応用計測分野などにおいて用いられる導波路型電気光学素子、特に、高速光変調器、および高速光スイッチなどの分野に有用な導波路型電気光学素子、およびその製造に関するものである。このような本発明の導波路型電気光学素子は、制御用直流電圧印加した場合、必要とする安定した動作特性を示す素子構造を有するものである。

背景技術

0002

本発明の導波路型電気光学素子に関連する従来の光学素子について、その一例としてニオブ酸リチウム基板を用いたマッハツェンダ型光変調器を用いて説明する。このような従来の光学素子はニオブ酸リチウム(LiNbO3)基板上に、Ti熱拡散法によりY字形分岐路、および合波路を有するパターン導波路を形成し、この導波路の上に、誘電体材料よりなるバッファ層を形成し、その上に、前記導波路に対応する電極を配置して構成される。このような従来の光学素子の構成は、例えば、西原、名、栖原共著「光集積回路」、オーム発行、1985などに記載されている。

0003

上記のような従来の光学素子において、素子使用環境温度が変化した場合、必要に応じ、LiNbO3基板の焦電効果により発生する電荷を、素子の電極下の部分に集中させることなく、素子表面に均一に分散させることにより温度変化に起因する素子特性変調位相)のドリフトを低減させることが必要になり、このために、当該バッファ層にくらべて低い電気抵抗を有する薄層を、バッファ層の上、又はその下に配置することが知られている(例えば、K.Seino, T.Nakazawa,Y.Kubota, M.Doi, T.Yamane and H.Hakogi ;Proc.OFC'92, San Jose, Feb.8-11, 1992(Optical Soc.Am., Wasington, 1992)pp.325 、十文字、野沢;電子情報通信学会論文誌C-1 、J75-C-1(1992)17 、および特開平5−66428号等)。

0004

上記のような光素子の重要な構成要素の一つである誘電体バッファ層は、一般にSiO2 、又はAl2 O3 などの酸化物誘電体が用いられている。このような誘電体バッファ層の形成には、真空蒸着法イオンアシスト真空蒸着法、スパッタリング法、および化学的気相蒸着法CVD法)などのような汎用薄膜堆積方法が用いられている。上記誘電体バッファ層形成工程は、予じめ所望の導波路を、基板上に形成した後、この導波路を被覆するように、基板上に施される。

0005

上記誘電体バッファ層を形成するSiO2 又はAl2 O3 は、高い電気的絶縁性を有し、しかもその誘電率(屈折率)が低いという特性を有し、このため導波路を伝播する光信号、および電極中を伝播する高周波電気信号がバッファ層中に散乱損失することが少ないという利点を有している。また、バッファ層を形成する誘電体物質、すなわちSiO2 、又はAl2 O3 が、基板を形成する物質、すなわちLiNbO3 と同様に酸化物であるため、基板とバッファ層との界面における化学的結合力、すなわち付着強度が高いという利点がある。

0006

上記バッファ層を形成するための一工法として用いられる真空蒸着法は、原料物質を、真空中で加熱蒸発又は昇華させ、この蒸発源に対向して配置された基板面上に、前記気化した原料物質を付着堆積させる方法である。この真空蒸着法においては約10-5Torr以上の高い真空度雰囲気を用いるため、蒸発種の平均自由工程度が高く、基板上に均一な膜厚分布を有するバッファ層を容易に形成することができる。また真空蒸着法では、蒸発種を、電界などにより加速しないため、蒸発種の有するエネルギーが比較的小さく、このため基板表面上に入射付着する際に、基板表面を損傷することがなく、また、形成される蒸着膜に導入される内部応力も、他の成膜方法にくらべて小さいという特長を有している。

0007

しかしながら、真空蒸着法の上記長所はそれを裏返えせば、蒸着膜の基板表面に対する付着強度が小さく、また蒸着膜の緻密度が低いという欠点にもなっている。特に、真空蒸着法による蒸着膜の緻密度が低いということは、その膜特性が光学素子の環境条件の変化に敏感に感応して変化しやすく、また高周波電界低損失伝送(例えば変調器を制御する電気信号)にとって有害な不純物、例えば水(H2 O)分子などを取り込んでしまう可能性があるなどの欠点の原因となる。

0008

上記のような問題点を有する真空蒸着法に対して、スパッタリング法、およびイオンアシスト蒸着法は、緻密で強固な皮膜を形成するという長所があるが、その反面、蒸発種の少なくとも一部がプラズマ、或いは第二のイオンビーム(Ar,O2イオンなど)によりイオン化された状態にあり、従って高いエネルギーを有しているため、これが基板表面に衝突してこれに損傷(表面原子欠損など)を与えやすく、また得られる皮膜の内部応力も高くなるという欠点を有している。

0009

CVD法は使用される原料化学的特性により、基板表面における原料種マイグレーションを大きくすることが可能であり、基板表面の凹凸に無関係に基板表面の被覆率(皮膜の厚さ)を一定にすることができるという長所を有しており、この長所は他の皮膜形成法では得られないものである。しかし、CVD法は、未反応種又は反応ガス種を、形成される皮膜中に取り込みやすく、かつ皮膜形成条件の設定および実施に微妙なコントロールが必要であるという問題点を有している。このため、CVD法は光学素子のバッファ層形成方法としては、現在のところあまり用いられていない。

0010

従来方法においては、光学素子のバッファ層は、上記皮膜形成方法の一つを利用し、その単一回の皮膜形成工程により形成されていた。但し、堆積形成された皮膜の酸素欠損補填するために、酸素含有雰囲気中において、600℃程度の温度において熱処理を施すことがある。

0011

上記のような従来のバッファ層はその皮膜形成に用いられた方法に強く依存する上述の特性を有し、このバッファ層の特性がそれを含む光学素子デバイスの特性に大きな影響を与えている。例えば、バッファ層の特性に起因する現象として、直流電圧により調整された光変調位相が経時的に変化し、それが調整点からずれてしまう現象、すなわちDC−ドリフト現象が知られている。このDC−ドリフト現象の原因については、未だ十分に解明されていないが、基板およびバッファ層の電気的物性(例えば、抵抗率、および誘導率など)に強く関係しているという見解が有力である。(十文字、野沢;電子情報通信学会論文誌C-1 、J75-C-1(1992)17 、特開平5−66428号、および特開平4−346310号等)。

0012

また高速変調器の場合、光学素子の重要な性能として、使用周波数帯域の幅が広いこと、又は使用周波数帯域が高いこと(最近開発中の光通信では20GHz 以上における動作が望まれている)が求められているが、これらの性能は当然のことながら当該光学素子中のバッファ層の物性および種類により大きな影響を受ける。

0013

ところで、真空蒸着法により作成されたSiO2バッファ層を有する変調器は、スパッタリング法あるいはイオンアシスト蒸着法により作成されたSiO2 バッファ層を有する変調器に比較して、長期間に渡るDC−ドリフトが著しく小さいことがわかっている。その一方で、真空蒸着SiO2 バッファ層を有する変調器は、他に比べて低い帯域特性しか示さない。DC−ドリフトは、素子の寿命を決める要因の一つであり、DC−ドリフトが小さいほど使用寿命が長い。したがって、高帯域特性が要求される超高速光通信システム用素子には、スパッタリングあるいはイオンアシスト蒸着法で作成された高性能バッファ層を用いる必要があるが、この素子はDC−ドリフトが大きく、素子寿命が短いという矛盾した結果になってしまう。

0014

DC−ドリフトを低減する手段としては、前述した、「基板とバッファ層の電気的物性(抵抗率・誘電率等)の差」に着目して、基板よりも高い電気伝導特性を有するバッファ層を用いる方法(特開平4−346310号)、基板表面の電気伝導度基板内部より高くする方法(特開平5−66428号)、およびバッファ層中に電気伝導度の差異を層状あるいは島状にもたせる方法(特開平3−127022号、特開平3−127023号)、などが提案されている。しかし、これらの方法が、光学素子の帯域特性を同時に改善し得るものであるか否かは不明である。

発明が解決しようとする課題

0015

本発明は、DC−ドリフト現象が著しく小さく、かつ実用上満足できる使用周波数帯域の広さおよび高さを有する導波路型電気光学素子、およびその製造方法を提供しようとするものである。

課題を解決するための手段

0016

本発明者らは、従来技術の上記問題点を解消する手段について検討を行った結果、導波路型電気光学素子のバッファ層を低緻密度低DC−ドリフト性層と、高緻密度高周波数特性層とからなる2層構造に形成することにより、上記問題点を解消し得ることを見出し、本発明の完成に成功したのである。

0017

すなわち本発明に係る導波路型電気光学素子は電気光学効果を有する基板と、この基板表面部に形成された光導波路と、前記光導波路具有基板表面上に形成され、かつ誘電体材料からなるバッファ層と、このバッファ層上の、前記光導波路の対応する位置に配置された電極を有し、前記バッファ層が、前記光導波路具有基板上に、イオン化された高エネルギー蒸発種を用いない第1の気相堆積法により形成され、かつ、誘電体材料からなる低緻密性第1バッファ層と、および前記第1バッファ層上に、イオン化された高エネルギー蒸発種を用いる第2の気相堆積法により形成され、かつ、誘電体材料からなる高緻密性第2バッファ層と、から構成された2層構造を有することを特徴とする、ものである。

0018

また本発明に係る導波路型電気光学素子の製造方法は、電光学効果を有する基板の表面部分に、光導波路を形成し、前記光導波路具有基板表面上に、誘電体材料からなるバッファ層を形成し、前記バッファ層上の、前記光導波路に対応する位置に、電極を配置する工程を含み、前記バッファ層の形成に際し、前記光導波路具有基板上に、イオン化された高エネルギー蒸発種を発生させることのない第1の気相堆積法により、誘導体材料を堆積させて低緻密性第1バッファ層を形成し、次に、前記第1バッファ層上に、イオン化された高エネルギー蒸発種を用いる第2の気相堆積法により誘導体材料を堆積させて高緻密性第2バッファ層を形成する、ことを特徴とするものである。

0019

前記本発明方法の一実施態様において、第1バッファ層形成のための第1の気相堆積法が真空蒸着法であり、かつ第2バッファ層形成のための第2の気相堆積法がスパッタリング法である。

0020

前記本発明方法の他の実施態様において、第1バッファ層形成のための第1の気相堆積法が真空蒸着法であり、かつ第2バッファ層形成のための第2の気相堆積法がイオンアシスト真空蒸着法である。

0021

前記本発明方法の一実施態様において、同一真空蒸着装置内において、前記真空蒸着法による第1バッファ層形成を行い、それに引続いて、前記イオン種を用いるイオンアシスト真空蒸着法による第2バッファ層形成が行われる。

0022

上記の本発明方法において、前記第1および第2バッファ層の形成において、前記誘電体材料として、SiO2 が用いられることが好ましい。

0023

また本発明方法において、一般に前記基板は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)からなり、前記光導波路は、チタン熱拡散により形成される。

0024

本発明の導波路型電気光学素子において、第1バッファ層は、イオン種を用いない気相堆積法により形成されるため、緻密性が比較的低いが基板表面に損傷することがなく、又は少なく、またDC−ドリフト性が小さいという長所を有し、第2バッファ層は、高エネルギーイオン種を含む気相堆積層を用いて形成されるため、使用し得る周波数帯域の幅が広く、かつ高いという長所を有している。

0025

すなわち、図1に示されているように従来の導波路型電子光学素子1は、電子光学結晶基板2、この基板表面部分に形成されている光導波路3、この光導波路3を具有する基板2の表面上に、気相堆積法により形成されたバッファ層4、およびバッファ層4の上に、前記光導波路3に対応する位置に形成されている電極5とからなるものである。

0026

これに対して、図2に示されているように、本発明の電気光学素子11は、電気光学的特性を有する結晶基板2と、その表面部分に形成された光導波路3と、この光導波路3を具有する基板2の上に形成されたバッファ層12と、バッファ層12の上に、前記光導波路3に対応する位置に配置された電極5を有し、バッファ層12は、光導波路具有基板2の直上に形成接合している低緻密性第1バッファ層13と、その上に形成されている高緻密性第2バッファ層14とからなるものである。

0027

上述のように、電気光学素子のDC−ドリフト現象は、基板と、その直上に形成されているバッファ層の物性によって大きく影響されることが知られている。図3は、LiNbO3 基板上に、真空蒸着法により形成されたSiO2 バッファ層(1)、イオンアシスト真空蒸着法により形成されたSiO2 バッファ層(2)、およびスパッタリング法により形成されたSiO2 バッファ層(3)の各々を有する3種のマッハツェンダ型光強度変調器のDC−ドリフト現象を示したものである。

0028

図3の変調器において各バッファ層の厚さは0.8μmであり、印加されたDCバイアスは+5Vであり、測定温度は100℃であった。DC−ドリフト現象の測定は、供試変調器にAC電圧重疊させて印加し、変調波形オシロスコープ上で観察記録しながら、任意の光強度ピーク位置の経時シフト追尾した。DC−ドリフト現象とは、後記するように、温度変化により加速される現象であり、温度100℃において測定されたドリフト速度は、室温(25℃)において測定されたドリフト速度の約1000倍に加速されていた。

0029

図3から明らかなように、スパッタリング法によるSiO2バッファ層、又はイオンアシスト真空蒸着法により形成されたSiO2 バッファ層を有する変調器においては、動作時間約10時間程度で、印加したバイアス電圧(5V)の80%〜90%に相当するDC−ドリフトが観察された。しかし真空蒸着法によるSiO2 バッファ層を有する変調器においては、動作時間10時間以上においてDC−ドリフトは、他の場合の約1/2程度の小さなものである。

0030

図4に、スパッタリング法SiO2バッファ層を有する変調器のDC−ドリフト速度の温度依存性アレニウスプロット)を示し、図5に真空蒸着法SiO2バッファ層を有する変調器のDC−ドリフト速度の温度依存性(アレニウスプロット)を示す。図4図5グラフにおいて、縦軸図3において、ドリフトがほゞ飽和するまでのプロファイルより算出された緩和時間(τ)の逆数を示し、横軸は、測定温度(絶対温度)の逆数1/Tを示す。

0031

図4図5には、複数個の変調器について測定した結果がプロットされている。図4図5において、プロット直線の傾きから求められたDC−ドリフトの活性化エネルギーは、いづれの変調器においても約1eVであった。すなわち図4図5は、スパッタリング法SiO2バッファ層を有する変調器と、真空蒸着法SiO2 バッファ層を有する変調器とは、ドリフト速度、および最終ドリフト量において、互に異なっているが、各々のドリフト速度の温度依存性(加速性)はほゞ等しいことを示している。

0032

図6には真空蒸着法SiO2バッファ層(1)を有する変調器、イオンアシスト蒸着法SiO2 バッファ層(2)を有する変調器、およびスパッタリング法SiO2 バッファ層(3)を有する変調器の3種のマッハツェンダ型光強度変調器について、周波数(GHz) と、減衰量(dB)との関係が示されている。これらの変調器のバッファ層の厚さはいづれも0.8μmであり、電極長は40mmであり、測定温度は室温であった。減衰率3dBで規格化した変調器の周波数帯域は真空蒸着法SiO2 バッファ層(1)を用いたとき2.9GHz であり、イオンアシスト真空蒸着法SiO2 バッファ層(2)を用いたとき5.5GHz であり、スパッタリング法SiO2 バッファ層(3)を用いたとき5.8GHz であった。すなわちバッファ層としてイオンアシスト真空蒸着法SiO2 層(2)、又はスパッタリング法SiO2 層(3)を用いることにより、変調器の使用周波数帯域が高くなることが理解される。

0033

本発明の電気光学素子は、図2に示されているように、第1バッファ層は、高エネルギーイオン種を用いることのない気相堆積法、例えば真空蒸着法により形成され、従って、低緻密性を有するものであるから、おそらくこれらのことが関係してDC−ドリフト現象が小さく、また、第1バッファ層の上には、第2バッファ層が高エネルギーイオン種を用いる気相堆積法、例えばイオンアシスト真空蒸着法、又は、スパッタリング法により形成され、従って高緻密性を有するものであるから使用周波数帯域が広く高いものである。第1および第2バッファ層の厚さを、素子の仕様、特性に合致するように設計すればよい。仕様周波数帯域が広く高いことが強く要求されるときは、第1バッファ層の厚さを薄く、第2バッファ層の厚さを厚くすればよい。

0034

本発明を、下記実施例によりさらに説明する。
実施例1
カットされたLiNbO3基板上にTi熱拡散により光導波路を形成し、この基板の導波路形成面上に、真空蒸着法により、SiO2 を厚さ100nmに堆積させて第1バッファ層を形成し、この第1バッファ層上に、rf−マグネトロンスパッタリング法によりSiO2 を厚さ900nmに堆積させて第2バッファ層を形成し、これを酸素気流中において600℃の温度で熱処理に供した。得られた第2バッファ層上の、前記光導波路に対応する位置に、Au厚膜からなる電極を形成してマッハツェンダ型変調器を作製した。

0035

図7に、上記により得られた変調器の、動作時間10-1〜102 時間におけるDC−ドリフト測定結果を示す。測定はDC−バイアス電圧+5V、測定温度100℃において行われた。図7に示された本発明の2重バッファ層を有する変調器のDC−ドリフトは、図3単一バッファ層(3)(スパッタリング法)を有するものにくらべて、より低く抑制されている。

0036

図8に、本発明による上記2重バッファ層を有する変調器の長期DC−ドリフトと、従来のスパッタリング法単一バッファ層を有する変調器の10-2日〜102 日にわたる長期DC−ドリフトとが比較して示されている。DCバイアス電圧は+5Vであり測定温度は70℃であった。また、3dB減衰で規格化したとき、実施例1の変調器の電極の周波数特性は、約5.1GHz であって、これは、従来のスパッタリング法による単一SiO2バッファ層を有するものとほゞ同一であった。

0037

実施例2
ZカットTi:LiNbO3導波路基板上に、第1のSiO2バッファ層を真空蒸着法により厚さ100nmに形成し、第2のSiO2 バッファ層をイオンアシスト蒸着法により厚さ900nm堆積後、酸素気流中600℃で熱処理した後に、電極を形成し、マッハツェンダ型変調器を作製した。図9は、この変調器の、短期のDC−ドリフト測定結果を示している(100℃、DC5V)。図3に示した、イオンアシスト蒸着法による従来品(2)に比べ、DC−ドリフトが押さえられている。3dB減衰で規格化した電極の周波数特性は、従来イオンアシスト蒸着品(2)とほぼ同レベルの5.0GHz であった。

発明の効果

0038

本発明の導波路型電気光学素子は、高速光通信等に応用する上で問題となる、DC−ドリフト特性周波数帯域特性を、同時に向上することに成功したものであって、実用上、きわめて有用なものである。また本発明方法は、このような導波路型電気光学素子を、効率よく、かつ比較的簡単な操作により製造することを可能にする。

図面の簡単な説明

0039

図1図1は、従来の導波路型電気光学素子の一例の構成を示す断面説明図。
図2図2は、本発明の導波路型電気光学素子の一例の構成を示す断面説明図。
図3図3は、互に形成方法が異なる3種バッファ層を有する従来技術の変調器の動作時間とDC−ドリフトとの関係を示すグラフ。
図4図4は、スパッタリング法によるSiO2 バッファ層を有する従来技術の変調器のDC−ドリフト特性の一例を示すグラフ。
図5図5は真空蒸着法によるSiO2 バッファ層を有する従来技術の変調器のDC−ドリフト特性の一例を示すグラフ。
図6図6は、互に異なる堆積方法により形成されたSiO2 バッファ層を有する3種の従来の変調器の周波数と減衰量との関係の一例を示すグラフ。
図7図7は本発明に係る2重バッファ層を有する変調器の短期DC−ドリフトの一例を示すグラフ。
図8図8は、本発明に係る2重バッファ層を有する変調器の一例と、従来の単一バッファ層を有する変調器の一例との長期DC−ドリフトの一例を示すグラフ。
図9図9は、本発明に係る2重バッファ層を有する変調器の他の一例の短期DC−ドリフトを示すグラフ。

--

0040

1…従来技術の電気光学素子
2…基板
3…光導波路
4,12…バッファ層
5…電極
11…本発明の電気光学素子
13…第1バッファ層
14…第2バッファ層

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