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目的
構成
概要
背景
交流励磁同期発電機は多数のスロットを有する鉄心を固定子及び回転子に持ち、その両方に多相巻線が巻回されている。この回転子巻線は回転子の回転速度に応じた周波数にて励磁されて回転磁界を形成し、固定子巻線に電圧を誘起するものである。
しかし、この交流発電電動機には固定子及び回転子とも多数のスロットがあり、この影響によるパーミアンス脈動が空隙磁束に多数の高周波磁束を生じる。また、起磁力にも高調波成分が含まれるため、これによっても空隙磁束の高調波成分が発生することになる。そして、この空隙磁束の高調波成分が固定子巻線誘起電圧に高調波成分を発生させる。
この高周波電圧を低減する技術として特開平3−270664号公報に開示されたものがある。この従来技術は固定子のスロット数及び固定子巻線ピッチの選定により誘起電圧の高調波を抑制しようとするものである。
概要
スロット数に制限を与えることなく、巻線ピッチの選定を適切に行うことのみによって誘起電圧の高調波成分を抑制できるようにする。
図2は、起磁力高調波による誘起電圧の高調波成分について検討したものであって(a)は回転子巻線ピッチを80.0%にしたときの各固定子巻線ピッチ毎の誘起電圧の変化を示したグラフ図であり、(b)は固定子巻線ピッチを83.3%にしたときの各回転子巻線ピッチ毎の変化を示したグラフ図である。これらのグラフ図から明らかなように、固定子巻線ピッチを83.3%とし、且つ、回転子巻線ピッチを80.0%としたときに高調波成分が最も小さくなる。
目的
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、スロット数に制限を与えることなく、巻線ピッチの選定を適切に行うことのみによって、誘起電圧の高調波成分を抑制することが可能な交流励磁同期発電気を提供することを目的とする。
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 1件
- 牽制数
- 3件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
技術分野
背景技術
0002
交流励磁同期発電機は多数のスロットを有する鉄心を固定子及び回転子に持ち、その両方に多相巻線が巻回されている。この回転子巻線は回転子の回転速度に応じた周波数にて励磁されて回転磁界を形成し、固定子巻線に電圧を誘起するものである。
0003
しかし、この交流発電電動機には固定子及び回転子とも多数のスロットがあり、この影響によるパーミアンス脈動が空隙磁束に多数の高周波磁束を生じる。また、起磁力にも高調波成分が含まれるため、これによっても空隙磁束の高調波成分が発生することになる。そして、この空隙磁束の高調波成分が固定子巻線誘起電圧に高調波成分を発生させる。
0004
この高周波電圧を低減する技術として特開平3−270664号公報に開示されたものがある。この従来技術は固定子のスロット数及び固定子巻線ピッチの選定により誘起電圧の高調波を抑制しようとするものである。
発明が解決しようとする課題
0005
上記の抑制方法は、回転子起磁力高調波、回転子スロットによるパーミアンス脈動に起因する高調波、及び固定子スロットによるパーミアンス脈動に起因する高調波のすべてを固定子のスロット数と固定子巻線ピッチとにより低減しようとするものである。したがって、固定子スロット数及び固定子巻線ピッチが著しく制限され、設計の自由度が大幅に低下する結果となっていた。
0006
また、場合によっては、毎極毎相スロット数について、整数の範囲では適切な組み合わせがなく、毎極毎相スロット数が分数になることがある。しかし、毎極毎相スロット数が分数になる場合、巻線の接続は一般には難しく、巻線ピッチまで決められていると、平衡した多相巻線が困難になる場合があった。
0007
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、スロット数に制限を与えることなく、巻線ピッチの選定を適切に行うことのみによって、誘起電圧の高調波成分を抑制することが可能な交流励磁同期発電気を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0008
本発明は上記課題を解決するための手段として、複数のスロット内に固定子巻線が巻回された固定子と、複数のスロット内に回転子巻線が巻回された回転子と、を有する交流励磁同期発電機において、前記回転子のスロット高調波に対する固定子巻線の巻線係数が最小となるように、この固定子巻線の巻線ピッチを選定すると共に、前記固定子のスロット高調波に対する回転子巻線の巻線係数が最小となるように、この回転子巻線の巻線ピッチを選定したこと、を特徴とするものである。
0009
誘起電圧の高調波を抑制する方法として、空隙磁束の高調波成分を低減する方法と、空隙磁束は存在するがこの磁束の固定子巻線への鎖交を抑える方法とがある。上記構成によれば、回転子の起磁力のスロット高調波成分や回転子スロットによるパーミアンス脈動が要因となる空隙磁束密度分布については、この高調波に対する固定子巻線の巻線係数を小さくすることにより鎖交磁束を抑えることができる。また、固定子スロット高調波と次数の同じ回転子の起磁力高調波や固定子スロットのパーミアンス脈動により生じる成分で生じる高調波については、回転子の起磁力を低減することにより鎖交磁束を抑えることができる。
0010
以下、本発明の実施例を図面に基いて説明する。図1は固定子及び回転子の1極分の巻線配置を図示したものである。固定子及び回転子ともスロットを有する鉄心(1,2)に3相巻線(U,V,W)が納められており、1極対当たりのスロット数は固定子が36個、回転子が30個である。
0011
固定子巻線のU相は、図1に示すように、#1から#6のスロットの上側に納められている。すなわち、#1のコイルは#16スロットの下側コイルに、#2のコイルは#17スロットの下側コイルに、#3のコイルは#18スロットの下側コイルに、#4のコイルは図示しない#19スロットの下側コイルに、#5のコイルは図示しない#20スロットの下側コイルに、#6のコイルは図示しない#21スロットの下側コイルにつながっている。他の相についても、同様のピッチにて巻線が配置され接続されている。
0012
回転子巻線のU相は、#101から#105のスロットの上側に納められている。すなわち、#101のコイルは#113スロットの下側コイルに、#102のコイルは#114スロットの下側コイルに、#3のコイルは#15スロットの下側コイルに、#104のコイルは図示しない#116スロットの下側コイルに、#105のコイルは図示しない#117スロットの下側コイルにつながっている。他の相についても同じピッチにて巻線が配置され接続されている。
0013
上記実施例では、固定子巻線の巻線ピッチは83.3%であり、回転子スロット高調波である29次,31次の高調波に対する巻線係数が最小となる巻線ピッチになっている。また、回転子巻線の巻線ピッチは80.0%であり、固定子スロット高調波である35次,37次の高調波に対する巻線係数が最小となる巻線ピッチになっている。これらの巻線ピッチにより、固定子及び回転子とも簡単に平衡した3相巻線を得ることができる。
0014
次に、本実施例における固定子巻線の誘起電圧を数式により表わし、この数式に基いて得られた図2乃至図4すなわち誘起電圧と各巻線ピッチとの関係について考察してみる。まず、回転子巻線は平衡した3相交流で励磁されるので、その起磁力Fg は次式で表される。
0015
ID=000003HE=030 WI=098 LX=0560 LY=0950
Kwk=Ksk×Kdk
Ksk=sin(|k|αo /2):単節巻係数
αo :コイルピッチ[電気角]
Kdk=sin(|k|qβo /2)
/q×sin(|k|βo /2):分布巻係数
q :毎極毎相のスロット数
βo :スロットピッチ[電気角]
xr :回転子に静止した空隙面に沿った座標[電気角](回転子のU相巻線軸を原点とし、回転子の回転方向を正とする。)
ωp :励磁電流の角周波数
t :時間[sec](固定子と回転子のU相巻線軸が一致する時刻をt=0とする。)
ここで、起磁力Fg と空隙のパーミアンスの積が空隙の磁束になる。この空隙のパーミアンスを脈動させるものとしては固定子と回転子のスロットがあるが、これを式に示すと次式にて表される。なお、パーミアンスは各々を直流分を1として表した。
0016
ID=000009HE=020 WI=064 LX=1180 LY=1300
i,h:正の整数
Zs :極対当たりの固定子スロット数
Zr :極対当たりの回転子スロット数
xs :固定子に静止した空隙面に沿った座標[電気角](固定子のU相巻線軸を原点とし、回転子の回転方向を正とする。)
そして、パーミアンス高調波のうちi=,h=1のみを考慮すると、空隙磁束分布Bg (xs ,t)は次式となる。
0018
ID=000005HE=110 WI=130 LX=0400 LY=0300
誘起電圧の基本波成分の各周波数をω、すべりをsとおくと、ωp =sω、ωr =(1−s)ωとなる。これを上式に代入して整理すると、空隙磁束密度分布Bg は次式となる。
0019
ID=000006HE=140 WI=130 LX=0400 LY=0300
この空隙磁束Bg より、固定子巻線に鎖交する磁束φを求めると次式となる。
0020
ID=000007HE=145 WI=122 LX=0440 LY=0300
固定子巻線の誘起電圧Es は上式を微分して求められる。
0021
ID=000008HE=175 WI=126 LX=0420 LY=0300
上記(1)式の第1項は起磁力高調波、第2項〜第3項は回転子スロットによるパーミアンス脈動、第4項〜第5項は固定子スロットによるパーミアンス脈動、第6項〜第9項は回転子と固定子のスロットパーミアンスの相互作用によるものである。
0022
(1)式よりわかるように多数の高調波が発生するが、大きな値となる成分は低次の起磁力高調波、スロット高調波、スロットに起因するパーミアンス脈動による高調波によるものである。
0023
固定子及び回転子のスロット数がそれぞれ36,30の本実施例の場合、高調波次数としては5次,7次などの低次の高調波、29次,31次の回転子に起因する高調波、35次,37次の固定子に起因する高調波による成分が大きくなる。この成分への巻線ピッチの影響を、回転子の滑りが10%の場合を例にして、図2〜図4に示す。
0024
図2は起磁力高調波による誘起電圧の高調波成分を示すグラフ図であり、(a)は回転子巻線ピッチが80.0%の場合の固定子巻線ピッチの影響、(b)は固定子巻線ピッチが83.3%の場合の回転子巻線ピッチの影響を示している。図2(a)より固定子の巻線ピッチを83.3%にすることにより、起磁力高調波29次,31次による高調波の合計が低下することがわかる。また、図2(b)より回転子の巻線ピッチを80.0%にすることにより、起磁力高調波35次,37次による誘起電圧の高調波の合計が低下することがわかる。
0025
さらに、固定子と回転子との毎極毎相スロット数の差が1である本実施例の場合、固定子の5次,7次と29次,31次との巻線係数が等しく、回転子の5次,7次と35次,37次との巻線係数が等しいため、起磁力高調波5次,7次による誘起電圧の高調波の合計も低下する。
0026
図3は固定子のスロットによるパーミアンス脈動の影響により発生する高調波の回転子巻線ピッチによる変化を示しており、固定子のスロットによるパーミアンスの脈動35次,37次起磁力により発生する成分である。この図より回転子巻線ピッチが80.0%の場合に最も小さくなることがわかる。
0027
図4は回転子のスロットによるパーミアンス脈動の影響により発生する高調波の固定子巻線ピッチ及び回転子巻線ピッチによる変化を示している。高調波は回転子のスロットによるパーミアンス脈動と起磁力の基本波、5次,7次高調波との組み合わせにて発生する成分である。
0028
この図より、固定子巻線ピッチが83.3%の場合に起磁力の基本波とパーミアンスの組み合わせによる高調波が減少し、回転子巻線ピッチ80.0%の場合に起磁力の5次,7次高調波とパーミアンスの組み合わせによる高調波が減少することがわかる。
0029
上述したように、本実施例によれば、容易に3相平衡巻線が得られる83.3%及び80.0%の巻線ピッチにより、誘起電圧に含まれる高調波成分のうち、その値が大きな成分である29次,31次,35次,37次の起磁力高調波による成分や、固定子及び回転子のスロットによるパーミアンス脈動による成分を低減できる。
0030
また、固定子と回転子との毎極毎相スロット数の差が1である本実施例では、5次,7次の起磁力高調波による誘起電圧の高調波成分も低減される。
0031
なお、上記実施例では、固定子と回転子との毎極毎相スロット数の差が1の場合について説明したが、この差が1でない場合にも、起磁力高調波による成分や、固定子及び回転子のスロットによるパーミアンス脈動による成分を低減できる。また、上記実施例では、固定子のスロット数が回転子のスロット数より多い場合を説明したが、回転子側のスロット数の方が多い場合についても同様の効果が得られる。
0032
さらに、本発明はスロット数に制約を与えるものではないので、毎極毎相スロット数が整数にならない場合についても適用することができる。
発明の効果
0033
以上のように、本発明によれば、固定子巻線及び回転子巻線の巻線ピッチを最適に選定する構成としたので、スロット数に制限を与えることなく、交流励磁同期発電機の出力電圧である固定子の誘起電圧に含まれる高調波電圧を大幅に低減し、品質の良い電圧波形を得ることができる。
図面の簡単な説明
0034
図1本発明の実施例に係る固定子及び回転子の巻線配置を示す説明図。
図2起磁力高調波による誘起電圧高調波の巻線ピッチによる変化を示すグラフ図。
図3固定子のスロットによるパーミアンス脈動の影響により発生する高調波の回転子巻線ピッチによる変化を示すグラフ図。
図4回転子のスロットによるパーミアンス脈動の影響により発生する高調波の巻線ピッチによる変化を示すグラフ図。