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図面 (11)

目的

光の光量や波長に関する情報を扱うことのできる新規動作原理に基づく電子装置を得る。

構成

光伝導効果と、励起されたキャリア捕獲するトラップ準位と、エネルギーバンドギャップとを有する材料に、当該材料のエネルギーバンドギャップ以上のエネルギーに相当する波長の第1の光を照射し、さらに当該材料のエネルギーバンドギャップ以下のエネルギーに相当する波長の第2の光を照射し、その際に当該材料を透過する透過光を測定するとにより、前記第1の光に関する情報である、照射の有無、照射光量(照射強度×照射時間)、波長、の内少なくとも一つについての情報を得る。そしてこのことを利用し、光センサー光量計、第1の光を入力とするメモリ装置、第1の光を入力とし第2の光を出力する素子、を実現する。

概要

背景

従来より知られている光センサーとしては、半導体が有する光感度を利用したもの、感光物質を用いたもの、光電効果を利用したもの、等々が知られている。従来より広く知られている光を検出する装置としては、光エネルギー電気エネルギーに変換する光起電力効果を利用したもの、光の照射によって半導体の導電率が変化する光伝導効果を利用したものがある。前者としては、珪素半導体PN接合PIN接合を利用した光電変換素子、後者としては、フォトダイオードフォトトランジスタが知られている。

また照射された光や放射線照射量を当該材料の発光現象によって測定する装置も知られている。

また、光による書込みや、光による読出といったメモリー機能を有する電子装置としては、一般に光ディスクと呼ばれるものが広く知られている。

〔発明に到る過程〕以下において本発明に至る背景について説明する。図1には、有磁場マイクロ波CVD法で作製された1mm角多結晶ダイヤモンド薄膜(15 μm厚)に一対の金の電極を設け、この一対の電極間電圧印加し、この一対の電極間におけるダイヤモンド薄膜の光感度を測定した結果が示されている。

図1には、ダイヤモンド薄膜に照射される光のエネルギー(PHOTO ENERGY)と光感度(PHOTOSENSITIVITY)の対数値との関係、さらにはダイヤモンド薄膜に照射される光のエネルギー(PHOTO ENERGY)とダイヤモンド薄膜の透過率(TRANSMISSON) との関係が示されている。ここで横軸は光のエネルギー(PHOTO ENERGY)で表記されているが、実際に対応するのは光の波長である。即ち図1における横軸は、光の波長を電子ボルト(eV)単位に換算したもの(光エネルギーまたは光子エネルギーともいわれ、光子のエネルギーhνをeV単位で示したもの)である。なお、本明細書においては、波長(λnm)をeV単位(E(λ)で表記)に換算する概算式として、λ×E(λ)=1240を用いることとする。

図1において、白丸で示されるプロット点は、ダイヤモンド薄膜の透過率の波長依存性を示すものであり、右側のスケールで読み取る。また、黒塗り三角で示されるプロット点は、180nm 〜350nm (eV単位換算で約6.9ev 〜約3.3eV に相当する)の波長を有する重水素ランプの光を15μW/cm2の強度で照射しながら横軸に示すエネルギーに相当する波長を有する光を照射し、その際におけるダイヤモンド薄膜の光感度を示したものである。また黒丸は、重水素ランプを照射すること無しに、単に横軸に相当する波長を有する光を照射した際の光感度を示したものである。

まず、白丸で示されるプロット点に着目すると、5.5eV付近から透過率が急激に低下していることが見て取れ、このことよりこのダイヤモンド薄膜のエネルギーバンドギャップがおよそ5.5eV(波長換算で約230nm 弱に相当)であることが分かる。また黒丸のプロット点に着目すると、照射光のエネルギーが高くなるにつれて、即ち照射光の波長が短くなるにつれて、光感度が増大する特性を示していることが見て取れる。

また黒塗りの三角点で示されるプロット点に着目すると、約2.8eV(波長換算で約440nm)以上のエネルギーを有する波長領域において、光感度がほとんど一定の値をとり、約5eV(波長換算で約250nm)付近からは重水素ランプによる紫外線の照射が無い場合である黒丸のプロット点と近い値をとることが見て取れる。また、重水素ランプによる紫外線を照射しながら光感度を測定した場合のプロット点(黒塗りの三角点)と重水素ランプによる紫外線を照射しないで光感度を測定した場合のプロット点(黒丸)とを比較した場合、約5eV以上においては、両者のプロット点が示す曲線がほとんど同一の軌跡を示しているのに対し、約5eV以下においては、その曲線の軌跡が大きく異なっていることが分かる。

そしてこの約5eVというエネルギーはダイヤモンドのエネルギーバンドギャップである約5.5eV に極めて近い値であり、両者は概略一致していると見ることができる。

図1を見ると、重水素ランプからの紫外線が照射されることによって約5eV以下(波長換算で約250nm 以上)に相当する光に対する光感度が影響を受けていることが見てとれる。このことから約5eV以下の光を照射した際の光感度の値は、重水素ランプからの紫外線の内5eV以上の光の照射に関する情報を含んでいることが理解される。

以上のことから、ダイヤモンドのエネルギーバンドギャップに概略相当する波長より短い波長の紫外線がダイヤモンドに照射された場合、その情報は、ダイヤモンドのエネルギーバンドギャップに概略相当する波長より長い波長の光をダイヤモンドに照射し、その際の光感度の値から読み出すことができる、ということが結論される。

図2に前述の多結晶ダイヤモンド薄膜に180nm 〜350nm の波長を有する重水素ランプからの光を照射した時の照射時間(UV IRRADIATIONTIME) と光伝導電流(PHOTOCURRENT)との関係を示す。即ち図2は多結晶ダイヤモンド薄膜における、180nm 〜350nm の波長を持つ紫外線に対する光伝導電流の時間依存性を示したものである。この場合の光伝導電流は、前述のダイヤモンド薄膜に上記重水素ランプからの光を照射した状態で、一対の電極間に一定の電圧を印加し、その際にダイヤモンド薄膜に流れる電流値を測定したものである。図2には3つの曲線が示されているが、白丸が34μW/cm2 の強度で紫外線を照射した場合のデータであり、黒塗りの三角が15μW/cm2 の強度で紫外線を照射した場合のデータであり、黒点(曲線で補間してあるプロット点)が7μW/cm2 の強度で紫外線を照射した場合のデータである。

また黒点で示すデータの右端は、パルス状の光伝導電流が流れたことを示すものである。このパルス状の光伝導電流は、重水素ランプの照射終了後に360nm 〜800nm の波長を有する白色光をダイヤモンド薄膜に照射し、その際に流れた光伝導電流である。

図2より、重水素ランプからの照射光の強さによって、飽和する光伝導電流の値が異なることがわかる。この関係を調べたデータを図3に示す。図3に示すのは、重水素ランプの照射光の強さの対数値(横軸)と、重水素ランプの非照射時における伝導電流と重水素ランプの照射によって飽和した伝導電流(光伝導電流)の対数比縦軸)との関係を示したものである。即ち図3は、ダイヤモンド薄膜に紫外線を照射した場合の照射強度と、明と暗の光伝導電流の比との関係を示すものである。図3より、紫外線の強度と飽和する光伝導電流との関係において、およそ3桁の範囲で明確な比例関係成立していることが分かる。

さらに、この重水素ランプを用いた紫外線の照射強度(横軸)と光伝導電流が飽和するのに要する時間(縦軸)との関係を示したデータを図4に示す。図4において、縦軸は光伝導電流が90%飽和するまでに要する時間を示す。

図4を見ると、紫外線の照射強度が弱い時は光伝導電流が飽和するのに永い時間を要するが、紫外線の照射強度が強いときは飽和する時間が短いということが分かる。

図2に示すグラフの右側には、ダイヤモンド薄膜に、7μW/cm2 の照射強度で重水素ランプからの紫外線を十分照射した後において、同様にダイヤモンド薄膜に、白色光を照射した際における光伝導電流の変化(パルス状の電流が流れた状態)が示されている。この重水素ランプからの紫外線の照射光量(μWs)と、紫外線の照射後における白色光の照射によるパルス状の光伝導電流の最大値(Arbitary Unit(相対値) で示す)との関係を図5のデータ(イ)で示す。(イ)のデータは左側のスケールで読み取る。また、(ロ)のデータは、重水素ランプからの紫外線の照射光量と、5分間白色光を照射した際における光伝導電流の総量(Arbitary unit(相対値))との関係を示し、右側のスケールで読み取る。

照射光量は、(照射強度×照射時間、またはその積分値)で定義されドーズ量とも呼ばれる。そしてその単位はμWs/cm2 で表される。また、光伝導電流の総量は、図2に示される白色光の照射に従う光伝導電流の5分間に流れた積分値(図2でいうとその面積、即ち時間で積分した値)を示すものであり、図5においてはその相対値(Arbitary unit) が示されている。

図5のデータ(イ)を見ると、ダイヤモンド薄膜への紫外線の照射光量と、紫外線照射後において白色光をダイヤモンド薄膜へ照射した際における光伝導電流の最大値とは、比例関係にあることがわかる。また(イ)のデータから、紫外線の各照射強度に対応したプロット点(黒丸、黒三角、白丸)が概略同一直線上に乗っており、このことから、白色光の照射に伴う光伝導電流の最大値は、紫外線の照射強度ではなく、その照射光量を正確に反映したものであることが理解される。

また(ロ)のデータより、ダイヤモンド薄膜に照射された紫外線の照射光量と、紫外線照射後において白色光を5分間照射し、その際に流れた光伝導電流の総量とは比例関係にあることが分かる。このことから、白色光の照射に従う光伝導電流の総量より、紫外線の照射光量を求められることが理解される。

以上の議論より、「多結晶ダイヤモンド薄膜に照射された重水素ランプからの紫外線の光量を、この多結晶ダイヤモンド薄膜に照射される白色光に対する光伝導電流の最大値または所定時間内の光伝導電流の総量を測定することで、知ることができる」ということが結論される。即ち、白色光を多結晶ダイヤモンド薄膜に照射された紫外線の光量を読みだすための読出光として用いることが可能であると結論される。

なお、白色光に従う光伝導電流の最大値の値は、微小な時間における光伝導電流の総量(光伝導電流の微小時間における積分値)と考えれることができ、この微小な時間を所定の時間として定義すると、光伝導電流の最大値を測定することも、所定時間内の光伝導電流の総量を測定することも、本質的には同じことであると理解される。

また、図2の右側に示すように、紫外線の照射後に白色光を照射し、その際におけるパルス状の光伝導電流の最大値を測定すると、白色光の照射に従って、その値は緩やかに減少していく。このことから、照射された紫外線に関する情報は、白色光の照射に従って読みだされて消去されてしまうことが理解される。

図2に示すのは、読出光として360nm 〜800nm の波長を有する白色光を用いた例であるが、単一の波長を有する光を上記の読出光として用いた場合でも、図5と同様なデータを得ることができる。図6は、読出光として単一の波長を有する光を用いた場合のデータである。図6は、横軸に波長をeV単位のエネルギーに換算した値をとり、縦軸には横軸に相当する波長の読出光を照射した際に光伝導電流が最大値から90%に減少するまでの時間、即ち光伝導電流が10%に減少するまでの時間をとったものである。なお単一の波長を有する光を得る手段としては、分光器を用いた。

図6を見ると、紫外線の光量を読みだすための読出光の波長のエネルギーが小さい程、即ちその波長が長いほど、長い時間をかけて光伝導電流が減少していくことがわかる。また読出のための光の波長のエネルギーが大きいと、早く光伝導電流が減少してしまうことがわかる。このことから、紫外線の光量を読みだすための読出光の波長のエネルギーが小さい程、読みだしてしまうのに時間がかかることが理解される。逆に、波長のエネルギーが大きければ、短時間に読みだしてしまうことができると理解される。

読出のための光を連続して照射すると、その波長によって変化があるものの図2の右側に示されているように光伝導電流が徐々に減少していってしまう。そして十分に読出光(この場合は360nm 〜800nm の波長を有する白色光)を照射した後において、即ち光伝導電流が十分減少してしまった後において、一端読出光の照射を止め、再び読出光を照射しても再びパルス状の光伝導電流が流れることはない。このことは、十分な光量の読出光を照射すると、照射された紫外線の光量に関する情報は失われてしまうことを意味する。特に図2に示すのは読出光として白色光を用いた場合の例であり、この場合図2に示すように短時間でその情報が読み出されてしまう。しかしこのことを利用し、紫外線によって書き込まれた情報を消去することができる。

一方、照射時間の短いパルス光を読出光として用いた場合、やはり図5に示すような紫外線の照射光量と読出光の照射に従う光伝導電流の最大値との比例関係が得られる。この場合、パルス光でもって読出光を照射する毎に紫外線の照射光量をほぼ正確に反映した光伝導電流の最大値を得ることができる。従って、紫外線の照射光量を複数回読み出すことができる。勿論読出を重ねていくと、読出光の照射に従う光伝導電流の最大値は程度の差はあれ、徐々に減少していく。

このパルス光を用いた場合の読出の回数は、図6に示すデータによって概略知ることができる。例えば、読出光の波長として、2.4eV に相当するエネルギーを有する波長である約520nm の光を読出光として用い、一回の読出に要する照射時間をミリセカンドオーダーとすると、103 回以上の読出において紫外線の照射光量を知ることができる。さらにこの場合、単に紫外線が照射されたかどうか(照射の有無)を知るだけであるならば、104 回以上の読出を行うことができる。当然、読出のためのパルス光の波長を短くすると、正確な紫外線の照射光量を読みだすことのできる回数は、図6(縦軸に読出回数、横軸にパルス光の波長に相当するエネルギーの値をとればよい)に示すような傾向で減少する。

また、読出光としてパルス光を用いた場合でも、その照射強度が大きいと紫外線の照射光量の正確な測定の回数は少なくなる。逆に読出光の強度が小さいと、それだけ読出回数は多くできることになる。

なお以上図1〜図6に示す基礎データは、紫外線の光源として波長180nm 〜350nm の領域を有する重水素ランプを用いた場合のものなので、これらのデータは、その照射光量に関する情報がダイヤモンド薄膜中に書き込まれると同時に、読出光として作用するダイヤモンドのエネルギーバンドギャップより低いエネルギーに相当する波長約230nm 以上の光によって同時に読み出されていた場合のものであると考えられる。しかし、この実験に用いた重水素ランプの照射強度スペクトルは、短波長側が強く、長波長になるに従って低下していく形をしているので、ダイヤモンドのエネルギーバンドギャップに相当する約230nm 以上の波長を有する光の影響は小さいものと考えられる。

この考察を確かめるために重水素ランプの照射と同時に230nm 以上の波長に強い強度分布を有する水銀ランプからの照射光をまず照射し、その後に白色光の照射に従う光伝導電流を測定した。この場合、この光伝導電流の値は小さく、その値と重水素ランプ並びに水銀ランプの照射光量との間に図5に示すような関係を得ることができなかった。このことから、約230nm 以上の照射光は、約230nm 以下の波長の光の照射に多きな影響を与えていることが分かる。また、この場合、約230nm 以下の波長の光の照射光量に関する情報がダイヤモンド薄膜中に正確に書き込まれていないことが結論される。そしてまた、重水素ランプから照射される約230nm 以上の波長の光の影響は小さいことが確認される。

また重水素ランプからの紫外線の照射を行なわずに、水銀ランプからの照射のみを行い、その後に白色光の照射に従う光伝導電流を測定した場合、図2や図5に示すような有意なデータは得られなかった。これは、水銀ランプからの光に含まれる波長領域のほとんどが、ダイヤモンドのエネルギーバンドギャップの値である約5.5eV 以下のエネルギーに相当するからであると考えられる。また、水銀ランプの照射と同時に白色光の照射を行なった場合であっても特に有意なデータを得ることはできなかった。

以上の考察によって得られたことを以下にまとめる。
(その1)ダイヤモンドに照射された当該ダイヤモンドのエネルギーバンドギャップより高いエネルギーに相当する波長を有する紫外線に関する情報(特にその照射光量)は、ダイヤモンドのエネルギーバンドギャップより低い波長のエネルギーを有する読出光に対する光伝導電流から知ることができる。即ち、ダイヤモンドに照射された約230nm より短い波長を有する紫外線に関する情報を、このダイヤモンドに照射される約230nm より長い波長を有する読出光により読み出すことができる。特に紫外線の照射光量に関しては、高い精度で測定することができる。
(その2)読出光をパルス光とすることで、複数回の読出を行うことができる。
(その3)読出光の波長を長くすることで、読出回数を多くすることができる。
(その4)読出光の強度を弱くすることで、読出回数を多くすることができる。
(その5)読出光として白色光を用いたり、読出光の照射光量を多くしたりし、時間をかけて書き込まれた情報を読出してしまうことで、照射された紫外線の光量に関する情報を消去することができる。

上記(その1)において、「紫外線に関する情報」というのは、当該ダイヤモンド材料に照射される紫外線の、照射光量、照射の有無、波長の違い(後述)、の少なくとも一つの情報に関する情報という意味である。

以下において、照射された紫外線の光量に関する情報がダイヤモンド中においてどの様に蓄えられているか、その動作モデルについて考察する。図1を見ると、約5eVより低いエネルギーに相当する光をダイヤモンドに照射し、その際の光伝導電流(図1に記載されているのは光感度)を測定することで、ダイヤモンドに照射された約5eVより高いエネルギーに相当する紫外線に関する情報(具体的にはその照射の有無)が得られることがわかる。また、図1を見ると、黒丸のプロット点と三角のプロット点とは約5eV以下において異なる光感度を有していることが見て取れ、またその相違も約5eV以下のエネルギー全域に渡っていることが判る。このことより、ダイヤモンド薄膜に照射される紫外線に関する情報は、ダイヤモンドが有する約5.5eV のエネルギーバンドギャップ全域に渡って分布していると考えることができる。

ここで、以下のようなモデルを考え、図1〜図6に示されるような実験データについて考察する。

(a)多結晶ダイヤモンド結晶中には多くの不純物格子欠陥が存在しており、これらがエネルギーバンドギャップ全域に渡ってトラップ準位を形成している。
(b) そこで、ダイヤモンド結晶中において電子正孔対を光励起することのできる紫外線が照射されることで、光励起されたキャリア(電子または正孔)が発生し、紫外線の照射光量に関する情報に対応した状態でトラップ準位に捕獲される。
(c) そして、このトラップ準位から励起されるに必要なエネルギーを有する光、即ちダイヤモンドのエネルギーバンドギャップ以下のエネルギーに相当する光が読出光として照射されると、トラップ準位に捕獲されたキャリアが励起され、この励起されたキャリアに起因してダイヤモンドの電気抵抗が低下し、印加されているバイアス電圧に対応した光伝導電流が流れる。そして、この光伝導電流から紫外線の照射光量が測定される。またこのモデルによれば、図5のデータ(ロ)に示される白色光の照射に従う光伝導電流の総量は、トラップ準位から励起されたキャリアの数を反映したものであると理解される。
そして、図2に示すように白色光の照射により、紫外線の光量に関する情報を読み出して消去してしまうということは、紫外線の照射により、トッラプ準位に捕獲されたキャリアが、白色光によって全て光伝導電流に寄与するキャリアとして励起しつくしてしまった状態と理解することができる。

上記モデルによれば、前述の水銀ランプを用いた実験において、水銀ランプからの照射光量を白色光の照射に従う光伝導電流より読み取ることができなかった理由は以下のようにして一応理解される。

水銀ランプの照射強度スペクトルは、そのほとんどが約230nm 以上の波長領域にあるので、極わずかに存在するダイヤモンドのエネルギーバンドギャップより高いエネルギーに相当する波長の光(第1の光)によって、電子−正孔対即ちキャリアが生成され、第1の光の照射光量に対応してトラップ準位に捕獲される。しかし、同時に照射される約230nm 以上の波長の光によってトラップ準位に捕獲されたキャリアは捕獲と同時に励起されてしまう。言い換えるならば、見かけ上トラップ準位に捕獲されたキャリアの数は極めて少なくなってしまう。従って、その後の白色光の照射の際の光伝導電流から、水銀ランプからの照射光量に関する情報を得ることができなくなる。

いずれにしても、トラップ準位に捕獲されたキャリアの数に起因する白色光の照射に従う光伝導電流は微小なものとなってしまい、その値は水銀ランプの照射光量を正確に反映したものではなくなってしまうと考えられる。

また、水銀ランプからの光の照射と同時に白色光を照射し、その際の光伝導電流を測定した場合において、有意なデータが得られなかった理由も、そもそもこの場合、トラップ準位に捕獲されるキャリアが極めて少ないと見なせる状況が実現されていた、と考えることによって理解することができる。

上記モデルを用いて、図1〜図6に示す実験データを考察した結果を以下に示す。
A.紫外線が照射されるに従って、キャリアによりトラップ準位が段々と埋まっていき、最終的には飽和する。言い換えるならば、トラップ準位にキャリアが徐々に捕獲されていくが、上限が存在する。
B.読出光の照射に従う光伝導電流の値は、上記トラップ準位に捕獲されたキャリアの数に関係していると考えられる。
C.トラップ準位が埋まっていく割合いは、紫外線のトータルのエネルギー(エネルギーの総量)に依存すると考えられる。(波長が一定ならば、トータルのエネルギーはその光量に依存する)
D.ダイヤモンドに照射された紫外線のエネルギーの総量によって、トラップ準位に捕獲されるキャリアの数が決まると考えられる。
E.白色光の照射に従う光伝導電流は、トラップ準位に捕獲されているキャリアの数に依存すると考えられる。即ち、白色光の照射に従う光伝導電流積算値は、ダイヤモンドに照射された紫外線のエネルギーの総量を反映したものであると理解される。

また、上記の考察をさらに発展させると、「紫外線のエネルギーとしては、その照射強度の他にその波長の有するエネルギーが考えられ、このことを考慮するならば、紫外線の照射光量を定め、紫外線の波長を変化させた場合、その波長のエネルギーに従ってトラップ準位に捕獲されるキャリアの数が当然異なるはずである。」「よってこの場合、読出光の照射に従う光伝導電流の値は、紫外線の波長によって異なるはずである。」ということが結論される。

以上の考察より、「紫外線の照射光量を一定に定め、異なる波長領域を有する複数の紫外線を個別にダイヤモンドに照射し、さらに読出光の照射に従う光伝導電流の値を測定することにより、先に照射された紫外線の波長の違いを検出できる」ということが結論される。なお、図1〜図6のデータが得られた実験は、波長領域即ちその照射強度のスペクトルが同一の紫外線(重水素ランプからの放射光)を用い、その照射光量を変化させることによって、ダイヤモンドに照射された紫外線のエネルギーの総量を変化させた場合であると理解される。

上記の考察結果を実験的に裏付ける実験データが得られている。この実験データは、重水素ランプの光を分光器によって特定の波長領域に分割し、その分割した紫外線を用いて、この紫外線の波長とその後の読出光(白色光)の照射に従う光伝導電流の値との関係を調べたものである。この実験データより、波長180nmの紫外線と波長200nm の紫外線とでは、対応する読出光の照射に従う光伝導電流の値に相違が確認された。勿論、照射光量はそれぞれ等しくなるように努めたことはいうまでもない。しかしながら、重水素ランプを分光すると、照射強度が1/10以下に大きく減衰してしまうので、読出光に従う十分な大きさの光伝導電流が得られず、紫外線の波長と読出光の照射に従う光伝導電流との明確な関係を得ることはできなかった。

ここで上記のモデルについて考察すると、上記のモデルが適用できる材料の条件としては、
(イ)光伝導効果を有する。(光感度を持つ)
(ロ)励起された電子を捕獲する何らかのトラップ準位を有する。
(ハ)エネルギーバンドギャップを有する。
といった事項が必要であることが結論される。上記のような物性は、基本的に半導体と呼ばれている材料全てに備わっているものである。

本発明者らは、上記考察に基づいて、「ダイヤモンド以外の材料でも上記(イ)〜(ハ)に示す物性を有しているならば、その材料は図1〜図6に示すような光に対する性質原理的には有しており、その性質を利用することができる」、言い換えるならば、「ダイヤモンド以外の材料でも上記(イ)〜(ハ)に示す物性を有しているならば、原理的には図1〜図6に示すような実験データが得られ、その性質を利用することができる」、という認識に至ったものである。

上記認識に基づき、材料として上記(イ)〜(ハ)の物性を有する材料を用いるとした場合、前記(その1)〜(その5)の内容は以下のように変更される。
(その1’)当該材料に照射された当該材料のエネルギーバンドギャップより高いエネルギーに相当する波長を有する光(書込み光)のエネルギーの総量に対応する情報は、当該材料のエネルギーバンドギャップより低いエネルギーに相当する波長を有する読出光に対する光伝導電流より知ることができる。特にその情報として、照射された書込み光の総量に対応する情報、または書込み光の照射光量に関する情報を正確に知ることができる。
(その2’)読出光をパルス光とすることで、複数回の読出を行うことができる。
(その3’)読出光の波長を長くすることで、読出回数を多くすることができる。
(その4’)読出光の強度を弱くすることで、読出回数を多くすることができる。
(その5’)当該材料のエネルギーバンドギャップより低いエネルギーに相当する光(読出光)を、ある程度の波長領域を有せしめて(トータルのエネルギーが大きい)、あるいはある程度の光量でもって(トータルのエネルギーが大きい)、あるいはその照射時間を長くして(トータルのエネルギーが大きい)、当該材料に照射し、書き込まれた情報を読みだしてしまうことにより、書き込まれた情報を消去することができる。

上記(その1’)における「照射された書込み光のエネルギーの総量に対応する情報」としては、当該材料に照射される当該材料のエネルギーバンドギャップより高いエネルギーに相当する波長を有する光の、照射の有無、照射光量の違い、波長の違い、またはその照射強度のスペクトルの違い(トータルのエネルギーが異なれば、その違いは当然トラップされたキャリアの数に関係する)、の内少なくとも一つに関する情報を挙げることができる。

ここで、「光伝導電流が流れる」、ということが、当該材料のエネルギーバンドギャップより低いエネルギーに相当する波長の光(読出光)のエネルギーによって、トラップ準位から励起されたキャリアに起因する現象であることを考慮すると、読出光の照射によって光伝導電流が流れる場合、トラップ準位からキャリアを励起するために、読出光の光子のエネルギーが失われることが結論される。光子のエネルギーが失われるということは、当該材料中において読出光の光子の数が減少するということである。一方読出光は、当該材料のエネルギーバンドギャップより低いエネルギーに相当する波長の光であるから、その多くは当該材料を透過するはずである。従って、読出光が当該材料を透過すると、トラップ準位から励起するキャリアの数に比例して、その光子が失われることになる。言い換えるならば、読出光が当該材料を透過すると、トラップ準位から励起するキャリア数に比例して、透過光量が減少する、ということが結論される。

読出光の照射に従うトラップ準位から励起されるキャリアが多いということは、読み出しに際しての光伝導電流の値が大きいということである。言い換えるならば、書込み光の照射光量が大きい、ということである。よって、書込み光の照射光量が多い場合、読出に際し、それだけ多くの読出光の光子が当該材料を透過する際に失われることになる。すなわちこの場合、当該材料を透過する読出光の光量が少なくなる、ということが結論される。以上の議論より、読出に際して失われる読出光の光子の数は、書込み光の照射光量を反映したものであるとの結論を得ることができる。

以上の考察より、原理的には以下のことが結論される。「当該材料に対する書込み光の照射光量は、当該材料を透過する読出光の光量によって知ることができる」

以上の考察は、書込み光の照射光量に着目して成されたものである。しかしながら、書込み光の照射光量を一定として書込み光の波長を変化させた場合も、書込み光の波長によってトラップ準位に捕獲されるキャリアの数が異なると考えられるので、同様な考え方によって、以下のことが結論される。「当該材料に対する書込み光の波長の違いは、当該材料を透過する読出光の光量によって知ることができる」

以上の考察をまとめると、以下のことが結論される。「当該材料に対する書込み光の照射の有無、光量の違い、波長の違い、の内少なくとも一つに関する情報を、当該材料を透過する読出光の光量によって知ることができる」、言い換えるならば、、「当該材料に対する書込み光のエネルギーの総量は、当該材料を透過する読出光の光量によって知ることができる」

例えば、10μWs/cm2 の光量を有する書込み光と、20μWs/cm2 の光量を有する書込み光と、に対する当該材料を透過する読出光の光量について考える。この場合、読出の際にトラップ準位から励起するキャリアの数がそれぞれの書込み光の照射光量に対応して異なるのだから、当然当該材料中で失われる光子の数がそれぞれ異なり、結果としてその透過光量が異なることになる。従って、書込み光の照射光量の違いを読出光の透過光量の違いから判別できることになる。

本発明は、以上の様な考察によって得られたものであり、「読出光の透過光量を知ることで、書込み光の照射光量やその波長の違いを知ることができる」という見地立ち、行われたものである。

概要

光の光量や波長に関する情報を扱うことのできる新規動作原理に基づく電子装置を得る。

光伝導効果と、励起されたキャリアを捕獲するトラップ準位と、エネルギーバンドギャップとを有する材料に、当該材料のエネルギーバンドギャップ以上のエネルギーに相当する波長の第1の光を照射し、さらに当該材料のエネルギーバンドギャップ以下のエネルギーに相当する波長の第2の光を照射し、その際に当該材料を透過する透過光を測定するとにより、前記第1の光に関する情報である、照射の有無、照射光量(照射強度×照射時間)、波長、の内少なくとも一つについての情報を得る。そしてこのことを利用し、光センサー、光量計、第1の光を入力とするメモリ装置、第1の光を入力とし第2の光を出力する素子、を実現する。

目的

本発明は、以下の機能の内少なくとも一つの機能を有する電子装置を提供することを目的とする。
・光の照射の有無や照射光量の違い、さらには光の波長の違いを検出できる装置
・光の照射光量や波長の違いを情報として扱うことのできるメモリー装置
・光の照射光量や波長の違いを情報として扱うことのできる演算装置
・光の総エネルギーに対応した情報を検出することのできる装置
・光の総エネルギーに対応した情報を扱うことのできるメモリー装置
・光の総エネルギーに対応した情報を扱うことのできる演算装置

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

光伝導効果と、励起されたキャリア捕獲するトラップ準位と、エネルギーバンドギャップと、を有した材料を用いた電子装置であって、当該材料のエネルギーバンドギャップより高いエネルギーに相当する波長を有する第1の光を当該材料に照射する手段と、当該材料のエネルギーバンドギャップより低いエネルギーに相当する波長を有する第2の光を当該材料に照射する手段と、当該材料を透過する前記第2の光の光量を測定する手段と、前記第2の光の透過光量より、前記当該材料に照射された第1の光に関する情報を得る手段と、を有することを特徴とする電子装置。

請求項2

請求項1において、第1の光に関する情報は、当該材料に対する第1の光の照射の有無に関するものであることを特徴とする電子装置。

請求項3

請求項1において、第1の光に関する情報は、当該材料に対する第1の光の照射光量であること特徴とする電子装置。

請求項4

請求項1において、第1の光に関する情報は、当該材料に対する第1の光の波長の違いに関するものであることを特徴とする電子装置。

請求項5

請求項1において、第1の光と第2の光とが同時に照射されることを特徴とする電子装置。

請求項6

請求項1において、第1の光の照射後に第2の光が照射されることを特徴とする電子装置。

請求項7

請求項1において、第2の光の透過光量を測定する方法として、第2の光の当該材料に対する透過光のスペクトルを測定することを特徴とする電子装置。

請求項8

請求項1において、第1の光を入力とし、第2の光の当該材料に対する透過光を出力する電子装置。

請求項9

請求項1において、当該材料のエネルギーバンドギャップをEgとし、第1の光の波長に相当するエネルギーをE1 とし、第2の光の波長に相当するエネルギーをE2 とすると、E2 <Eg <E1が成立することを特徴とする電子装置。

請求項10

請求項1において、第1の光の波長の下限は、当該材料が光感度を有する波長領域の下限によって決まり、第2の光の波長の上限は、当該材料が光感度を有する波長領域の上限によって決まることを特徴とする電子装置。

請求項11

請求項1において、透過光量として、単位時間当たりの透過光量を測定することにより、透過する光の強度を得ることを特徴とする電子装置。

請求項12

請求項1において、光量が光の強度を時間で積分した値として定義されることを特徴とする電子装置。

請求項13

第1の光の波長の下限は、X線またはγ線の領域であることを特徴とする電子装置。

請求項14

請求項1において、第2の光の波長の上限は、赤外線の領域であることを特徴とする電子装置。

請求項15

請求項1において、第2の光の波長の上限は、可視光線の領域であることを特徴とする電子装置。

請求項16

請求項1において、第1の光の波長の下限は、紫外線の領域であることを特徴とする電子装置。

請求項17

請求項1において、光伝導効果と、励起されたキャリアを捕獲するトラップ準位と、エネルギーバンドギャップと、を有した材料としてダイヤモンド薄膜を用いることを特徴とする電子装置。

請求項18

光伝導効果と、励起されたキャリアを捕獲するトラップ準位と、エネルギーバンドギャップと、を有した材料を用いた電子装置の動作方法であって、当該材料に当該材料のエネルギーバンドギャップより高いエネルギーに相当する波長を有する第1の光を照射する動作と、当該材料のエネルギーバンドギャップより低いエネルギーに相当する波長を有する第2の光を当該材料に照射する動作と、当該材料を透過する前記第2の光の光量を測定することにより、前記当該材料に照射された第1の光に関する情報を得る動作と、を有することを特徴とする電子装置の動作方法。

請求項19

請求項18において、第1の光に関する情報は、当該材料に対する第1の光の照射の有無に関するものであることを特徴とする電子装置の動作方法。

請求項20

請求項18において、第1の光に関する情報は、当該材料に対する第1の光の照射光量であること特徴とする電子装置の動作方法。

請求項21

請求項18において、第1の光に関する情報は、当該材料に対する第1の光の波長の違いに関するものであることを特徴とする電子装置の動作方法。

請求項22

請求項18において、第1の光と第2の光とが同時に照射されることを特徴とする電子装置の動作方法。

請求項23

請求項18において、第1の光の照射後に第2の光が照射されることを特徴とする電子装置の動作方法。

請求項24

請求項18において、第2の光の透過光量を測定する方法として、第2の光の当該材料に対する透過光のスペクトルを測定することを特徴とする電子装置の動作方法。

請求項25

請求項18において、第1の光を入力とし、第2の光の当該材料に対する透過光を出力する電子装置の動作方法。

請求項26

請求項18において、当該材料のエネルギーバンドギャップをEg とし、第1の光の波長に相当するエネルギーをE1 とし、第2の光の波長に相当するエネルギーをE2 とすると、E2 <Eg <E1が成立することを特徴とする電子装置の動作方法。

請求項27

請求項18において、第2の光の照射の後に、第2の光の照射の際に変化する第2の光の透過光量に対応する第1の光の照射を行い、複数回に渡る第2の光の照射に際して、常に一定の透過光量が得られるようにすることを特徴とする電子装置の動作方法。

請求項28

請求項18において、第1の光の波長の下限は、当該材料が光感度を有する波長領域の下限によって決まり、第2の光の波長の上限は、当該材料が光感度を有する波長領域の上限によって決まることを特徴とする電子装置の動作方法。

請求項29

請求項18において、透過光量として、単位時間当たりの透過光量を測定することにより、透過する光の強度を得ることを特徴とする電子装置の動作方法。

請求項30

請求項18において、光量が光の強度を時間で積分した値として定義されることを特徴とする電子装置の動作方法。

請求項31

請求項18において、第1の光の波長の下限は、X線またはγ線の領域であることを特徴とする電子装置の動作方法。

請求項32

請求項18において、第2の光の波長の上限は、赤外線の領域であることを特徴とする電子装置の動作方法。

請求項33

請求項18において、第2の光の波長の上限は、可視光線の領域であることを特徴とする電子装置の動作方法。

請求項34

請求項18において、第1の光の波長の下限は、紫外線の領域であることを特徴とする電子装置の動作方法。

請求項35

請求項18において、光伝導効果と、励起されたキャリアを捕獲するトラップ準位と、エネルギーバンドギャップと、を有した材料としてダイヤモンド薄膜が用いられることを特徴とする電子装置の動作方法。

技術分野

0001

本発明は、以下の示す機能を少なくとも一つ有する電子装置及びその動作方法に関する。
・光を検出する機能
・光の光量を測定する機能
・光によって情報を書込み、光によって情報を読み出すメモリー機能
・光を入力とし、光を出力とする演算機能

背景技術

0002

従来より知られている光センサーとしては、半導体が有する光感度を利用したもの、感光物質を用いたもの、光電効果を利用したもの、等々が知られている。従来より広く知られている光を検出する装置としては、光エネルギー電気エネルギーに変換する光起電力効果を利用したもの、光の照射によって半導体の導電率が変化する光伝導効果を利用したものがある。前者としては、珪素半導体PN接合PIN接合を利用した光電変換素子、後者としては、フォトダイオードフォトトランジスタが知られている。

0003

また照射された光や放射線照射量を当該材料の発光現象によって測定する装置も知られている。

0004

また、光による書込みや、光による読出といったメモリー機能を有する電子装置としては、一般に光ディスクと呼ばれるものが広く知られている。

0005

〔発明に到る過程〕以下において本発明に至る背景について説明する。図1には、有磁場マイクロ波CVD法で作製された1mm角多結晶ダイヤモンド薄膜(15 μm厚)に一対の金の電極を設け、この一対の電極間電圧印加し、この一対の電極間におけるダイヤモンド薄膜の光感度を測定した結果が示されている。

0006

図1には、ダイヤモンド薄膜に照射される光のエネルギー(PHOTO ENERGY)と光感度(PHOTOSENSITIVITY)の対数値との関係、さらにはダイヤモンド薄膜に照射される光のエネルギー(PHOTO ENERGY)とダイヤモンド薄膜の透過率(TRANSMISSON) との関係が示されている。ここで横軸は光のエネルギー(PHOTO ENERGY)で表記されているが、実際に対応するのは光の波長である。即ち図1における横軸は、光の波長を電子ボルト(eV)単位に換算したもの(光エネルギーまたは光子エネルギーともいわれ、光子のエネルギーhνをeV単位で示したもの)である。なお、本明細書においては、波長(λnm)をeV単位(E(λ)で表記)に換算する概算式として、λ×E(λ)=1240を用いることとする。

0007

図1において、白丸で示されるプロット点は、ダイヤモンド薄膜の透過率の波長依存性を示すものであり、右側のスケールで読み取る。また、黒塗り三角で示されるプロット点は、180nm 〜350nm (eV単位換算で約6.9ev 〜約3.3eV に相当する)の波長を有する重水素ランプの光を15μW/cm2の強度で照射しながら横軸に示すエネルギーに相当する波長を有する光を照射し、その際におけるダイヤモンド薄膜の光感度を示したものである。また黒丸は、重水素ランプを照射すること無しに、単に横軸に相当する波長を有する光を照射した際の光感度を示したものである。

0008

まず、白丸で示されるプロット点に着目すると、5.5eV付近から透過率が急激に低下していることが見て取れ、このことよりこのダイヤモンド薄膜のエネルギーバンドギャップがおよそ5.5eV(波長換算で約230nm 弱に相当)であることが分かる。また黒丸のプロット点に着目すると、照射光のエネルギーが高くなるにつれて、即ち照射光の波長が短くなるにつれて、光感度が増大する特性を示していることが見て取れる。

0009

また黒塗りの三角点で示されるプロット点に着目すると、約2.8eV(波長換算で約440nm)以上のエネルギーを有する波長領域において、光感度がほとんど一定の値をとり、約5eV(波長換算で約250nm)付近からは重水素ランプによる紫外線の照射が無い場合である黒丸のプロット点と近い値をとることが見て取れる。また、重水素ランプによる紫外線を照射しながら光感度を測定した場合のプロット点(黒塗りの三角点)と重水素ランプによる紫外線を照射しないで光感度を測定した場合のプロット点(黒丸)とを比較した場合、約5eV以上においては、両者のプロット点が示す曲線がほとんど同一の軌跡を示しているのに対し、約5eV以下においては、その曲線の軌跡が大きく異なっていることが分かる。

0010

そしてこの約5eVというエネルギーはダイヤモンドのエネルギーバンドギャップである約5.5eV に極めて近い値であり、両者は概略一致していると見ることができる。

0011

図1を見ると、重水素ランプからの紫外線が照射されることによって約5eV以下(波長換算で約250nm 以上)に相当する光に対する光感度が影響を受けていることが見てとれる。このことから約5eV以下の光を照射した際の光感度の値は、重水素ランプからの紫外線の内5eV以上の光の照射に関する情報を含んでいることが理解される。

0012

以上のことから、ダイヤモンドのエネルギーバンドギャップに概略相当する波長より短い波長の紫外線がダイヤモンドに照射された場合、その情報は、ダイヤモンドのエネルギーバンドギャップに概略相当する波長より長い波長の光をダイヤモンドに照射し、その際の光感度の値から読み出すことができる、ということが結論される。

0013

図2に前述の多結晶ダイヤモンド薄膜に180nm 〜350nm の波長を有する重水素ランプからの光を照射した時の照射時間(UV IRRADIATIONTIME) と光伝導電流(PHOTOCURRENT)との関係を示す。即ち図2は多結晶ダイヤモンド薄膜における、180nm 〜350nm の波長を持つ紫外線に対する光伝導電流の時間依存性を示したものである。この場合の光伝導電流は、前述のダイヤモンド薄膜に上記重水素ランプからの光を照射した状態で、一対の電極間に一定の電圧を印加し、その際にダイヤモンド薄膜に流れる電流値を測定したものである。図2には3つの曲線が示されているが、白丸が34μW/cm2 の強度で紫外線を照射した場合のデータであり、黒塗りの三角が15μW/cm2 の強度で紫外線を照射した場合のデータであり、黒点(曲線で補間してあるプロット点)が7μW/cm2 の強度で紫外線を照射した場合のデータである。

0014

また黒点で示すデータの右端は、パルス状の光伝導電流が流れたことを示すものである。このパルス状の光伝導電流は、重水素ランプの照射終了後に360nm 〜800nm の波長を有する白色光をダイヤモンド薄膜に照射し、その際に流れた光伝導電流である。

0015

図2より、重水素ランプからの照射光の強さによって、飽和する光伝導電流の値が異なることがわかる。この関係を調べたデータを図3に示す。図3に示すのは、重水素ランプの照射光の強さの対数値(横軸)と、重水素ランプの非照射時における伝導電流と重水素ランプの照射によって飽和した伝導電流(光伝導電流)の対数比縦軸)との関係を示したものである。即ち図3は、ダイヤモンド薄膜に紫外線を照射した場合の照射強度と、明と暗の光伝導電流の比との関係を示すものである。図3より、紫外線の強度と飽和する光伝導電流との関係において、およそ3桁の範囲で明確な比例関係成立していることが分かる。

0016

さらに、この重水素ランプを用いた紫外線の照射強度(横軸)と光伝導電流が飽和するのに要する時間(縦軸)との関係を示したデータを図4に示す。図4において、縦軸は光伝導電流が90%飽和するまでに要する時間を示す。

0017

図4を見ると、紫外線の照射強度が弱い時は光伝導電流が飽和するのに永い時間を要するが、紫外線の照射強度が強いときは飽和する時間が短いということが分かる。

0018

図2に示すグラフの右側には、ダイヤモンド薄膜に、7μW/cm2 の照射強度で重水素ランプからの紫外線を十分照射した後において、同様にダイヤモンド薄膜に、白色光を照射した際における光伝導電流の変化(パルス状の電流が流れた状態)が示されている。この重水素ランプからの紫外線の照射光量(μWs)と、紫外線の照射後における白色光の照射によるパルス状の光伝導電流の最大値(Arbitary Unit(相対値) で示す)との関係を図5のデータ(イ)で示す。(イ)のデータは左側のスケールで読み取る。また、(ロ)のデータは、重水素ランプからの紫外線の照射光量と、5分間白色光を照射した際における光伝導電流の総量(Arbitary unit(相対値))との関係を示し、右側のスケールで読み取る。

0019

照射光量は、(照射強度×照射時間、またはその積分値)で定義されドーズ量とも呼ばれる。そしてその単位はμWs/cm2 で表される。また、光伝導電流の総量は、図2に示される白色光の照射に従う光伝導電流の5分間に流れた積分値(図2でいうとその面積、即ち時間で積分した値)を示すものであり、図5においてはその相対値(Arbitary unit) が示されている。

0020

図5のデータ(イ)を見ると、ダイヤモンド薄膜への紫外線の照射光量と、紫外線照射後において白色光をダイヤモンド薄膜へ照射した際における光伝導電流の最大値とは、比例関係にあることがわかる。また(イ)のデータから、紫外線の各照射強度に対応したプロット点(黒丸、黒三角、白丸)が概略同一直線上に乗っており、このことから、白色光の照射に伴う光伝導電流の最大値は、紫外線の照射強度ではなく、その照射光量を正確に反映したものであることが理解される。

0021

また(ロ)のデータより、ダイヤモンド薄膜に照射された紫外線の照射光量と、紫外線照射後において白色光を5分間照射し、その際に流れた光伝導電流の総量とは比例関係にあることが分かる。このことから、白色光の照射に従う光伝導電流の総量より、紫外線の照射光量を求められることが理解される。

0022

以上の議論より、「多結晶ダイヤモンド薄膜に照射された重水素ランプからの紫外線の光量を、この多結晶ダイヤモンド薄膜に照射される白色光に対する光伝導電流の最大値または所定時間内の光伝導電流の総量を測定することで、知ることができる」ということが結論される。即ち、白色光を多結晶ダイヤモンド薄膜に照射された紫外線の光量を読みだすための読出光として用いることが可能であると結論される。

0023

なお、白色光に従う光伝導電流の最大値の値は、微小な時間における光伝導電流の総量(光伝導電流の微小時間における積分値)と考えれることができ、この微小な時間を所定の時間として定義すると、光伝導電流の最大値を測定することも、所定時間内の光伝導電流の総量を測定することも、本質的には同じことであると理解される。

0024

また、図2の右側に示すように、紫外線の照射後に白色光を照射し、その際におけるパルス状の光伝導電流の最大値を測定すると、白色光の照射に従って、その値は緩やかに減少していく。このことから、照射された紫外線に関する情報は、白色光の照射に従って読みだされて消去されてしまうことが理解される。

0025

図2に示すのは、読出光として360nm 〜800nm の波長を有する白色光を用いた例であるが、単一の波長を有する光を上記の読出光として用いた場合でも、図5と同様なデータを得ることができる。図6は、読出光として単一の波長を有する光を用いた場合のデータである。図6は、横軸に波長をeV単位のエネルギーに換算した値をとり、縦軸には横軸に相当する波長の読出光を照射した際に光伝導電流が最大値から90%に減少するまでの時間、即ち光伝導電流が10%に減少するまでの時間をとったものである。なお単一の波長を有する光を得る手段としては、分光器を用いた。

0026

図6を見ると、紫外線の光量を読みだすための読出光の波長のエネルギーが小さい程、即ちその波長が長いほど、長い時間をかけて光伝導電流が減少していくことがわかる。また読出のための光の波長のエネルギーが大きいと、早く光伝導電流が減少してしまうことがわかる。このことから、紫外線の光量を読みだすための読出光の波長のエネルギーが小さい程、読みだしてしまうのに時間がかかることが理解される。逆に、波長のエネルギーが大きければ、短時間に読みだしてしまうことができると理解される。

0027

読出のための光を連続して照射すると、その波長によって変化があるものの図2の右側に示されているように光伝導電流が徐々に減少していってしまう。そして十分に読出光(この場合は360nm 〜800nm の波長を有する白色光)を照射した後において、即ち光伝導電流が十分減少してしまった後において、一端読出光の照射を止め、再び読出光を照射しても再びパルス状の光伝導電流が流れることはない。このことは、十分な光量の読出光を照射すると、照射された紫外線の光量に関する情報は失われてしまうことを意味する。特に図2に示すのは読出光として白色光を用いた場合の例であり、この場合図2に示すように短時間でその情報が読み出されてしまう。しかしこのことを利用し、紫外線によって書き込まれた情報を消去することができる。

0028

一方、照射時間の短いパルス光を読出光として用いた場合、やはり図5に示すような紫外線の照射光量と読出光の照射に従う光伝導電流の最大値との比例関係が得られる。この場合、パルス光でもって読出光を照射する毎に紫外線の照射光量をほぼ正確に反映した光伝導電流の最大値を得ることができる。従って、紫外線の照射光量を複数回読み出すことができる。勿論読出を重ねていくと、読出光の照射に従う光伝導電流の最大値は程度の差はあれ、徐々に減少していく。

0029

このパルス光を用いた場合の読出の回数は、図6に示すデータによって概略知ることができる。例えば、読出光の波長として、2.4eV に相当するエネルギーを有する波長である約520nm の光を読出光として用い、一回の読出に要する照射時間をミリセカンドオーダーとすると、103 回以上の読出において紫外線の照射光量を知ることができる。さらにこの場合、単に紫外線が照射されたかどうか(照射の有無)を知るだけであるならば、104 回以上の読出を行うことができる。当然、読出のためのパルス光の波長を短くすると、正確な紫外線の照射光量を読みだすことのできる回数は、図6(縦軸に読出回数、横軸にパルス光の波長に相当するエネルギーの値をとればよい)に示すような傾向で減少する。

0030

また、読出光としてパルス光を用いた場合でも、その照射強度が大きいと紫外線の照射光量の正確な測定の回数は少なくなる。逆に読出光の強度が小さいと、それだけ読出回数は多くできることになる。

0031

なお以上図1図6に示す基礎データは、紫外線の光源として波長180nm 〜350nm の領域を有する重水素ランプを用いた場合のものなので、これらのデータは、その照射光量に関する情報がダイヤモンド薄膜中に書き込まれると同時に、読出光として作用するダイヤモンドのエネルギーバンドギャップより低いエネルギーに相当する波長約230nm 以上の光によって同時に読み出されていた場合のものであると考えられる。しかし、この実験に用いた重水素ランプの照射強度スペクトルは、短波長側が強く、長波長になるに従って低下していく形をしているので、ダイヤモンドのエネルギーバンドギャップに相当する約230nm 以上の波長を有する光の影響は小さいものと考えられる。

0032

この考察を確かめるために重水素ランプの照射と同時に230nm 以上の波長に強い強度分布を有する水銀ランプからの照射光をまず照射し、その後に白色光の照射に従う光伝導電流を測定した。この場合、この光伝導電流の値は小さく、その値と重水素ランプ並びに水銀ランプの照射光量との間に図5に示すような関係を得ることができなかった。このことから、約230nm 以上の照射光は、約230nm 以下の波長の光の照射に多きな影響を与えていることが分かる。また、この場合、約230nm 以下の波長の光の照射光量に関する情報がダイヤモンド薄膜中に正確に書き込まれていないことが結論される。そしてまた、重水素ランプから照射される約230nm 以上の波長の光の影響は小さいことが確認される。

0033

また重水素ランプからの紫外線の照射を行なわずに、水銀ランプからの照射のみを行い、その後に白色光の照射に従う光伝導電流を測定した場合、図2図5に示すような有意なデータは得られなかった。これは、水銀ランプからの光に含まれる波長領域のほとんどが、ダイヤモンドのエネルギーバンドギャップの値である約5.5eV 以下のエネルギーに相当するからであると考えられる。また、水銀ランプの照射と同時に白色光の照射を行なった場合であっても特に有意なデータを得ることはできなかった。

0034

以上の考察によって得られたことを以下にまとめる。
(その1)ダイヤモンドに照射された当該ダイヤモンドのエネルギーバンドギャップより高いエネルギーに相当する波長を有する紫外線に関する情報(特にその照射光量)は、ダイヤモンドのエネルギーバンドギャップより低い波長のエネルギーを有する読出光に対する光伝導電流から知ることができる。即ち、ダイヤモンドに照射された約230nm より短い波長を有する紫外線に関する情報を、このダイヤモンドに照射される約230nm より長い波長を有する読出光により読み出すことができる。特に紫外線の照射光量に関しては、高い精度で測定することができる。
(その2)読出光をパルス光とすることで、複数回の読出を行うことができる。
(その3)読出光の波長を長くすることで、読出回数を多くすることができる。
(その4)読出光の強度を弱くすることで、読出回数を多くすることができる。
(その5)読出光として白色光を用いたり、読出光の照射光量を多くしたりし、時間をかけて書き込まれた情報を読出してしまうことで、照射された紫外線の光量に関する情報を消去することができる。

0035

上記(その1)において、「紫外線に関する情報」というのは、当該ダイヤモンド材料に照射される紫外線の、照射光量、照射の有無、波長の違い(後述)、の少なくとも一つの情報に関する情報という意味である。

0036

以下において、照射された紫外線の光量に関する情報がダイヤモンド中においてどの様に蓄えられているか、その動作モデルについて考察する。図1を見ると、約5eVより低いエネルギーに相当する光をダイヤモンドに照射し、その際の光伝導電流(図1に記載されているのは光感度)を測定することで、ダイヤモンドに照射された約5eVより高いエネルギーに相当する紫外線に関する情報(具体的にはその照射の有無)が得られることがわかる。また、図1を見ると、黒丸のプロット点と三角のプロット点とは約5eV以下において異なる光感度を有していることが見て取れ、またその相違も約5eV以下のエネルギー全域に渡っていることが判る。このことより、ダイヤモンド薄膜に照射される紫外線に関する情報は、ダイヤモンドが有する約5.5eV のエネルギーバンドギャップ全域に渡って分布していると考えることができる。

0037

ここで、以下のようなモデルを考え、図1図6に示されるような実験データについて考察する。

0038

(a)多結晶ダイヤモンド結晶中には多くの不純物格子欠陥が存在しており、これらがエネルギーバンドギャップ全域に渡ってトラップ準位を形成している。
(b) そこで、ダイヤモンド結晶中において電子正孔対を光励起することのできる紫外線が照射されることで、光励起されたキャリア(電子または正孔)が発生し、紫外線の照射光量に関する情報に対応した状態でトラップ準位に捕獲される。
(c) そして、このトラップ準位から励起されるに必要なエネルギーを有する光、即ちダイヤモンドのエネルギーバンドギャップ以下のエネルギーに相当する光が読出光として照射されると、トラップ準位に捕獲されたキャリアが励起され、この励起されたキャリアに起因してダイヤモンドの電気抵抗が低下し、印加されているバイアス電圧に対応した光伝導電流が流れる。そして、この光伝導電流から紫外線の照射光量が測定される。またこのモデルによれば、図5のデータ(ロ)に示される白色光の照射に従う光伝導電流の総量は、トラップ準位から励起されたキャリアの数を反映したものであると理解される。
そして、図2に示すように白色光の照射により、紫外線の光量に関する情報を読み出して消去してしまうということは、紫外線の照射により、トッラプ準位に捕獲されたキャリアが、白色光によって全て光伝導電流に寄与するキャリアとして励起しつくしてしまった状態と理解することができる。

0039

上記モデルによれば、前述の水銀ランプを用いた実験において、水銀ランプからの照射光量を白色光の照射に従う光伝導電流より読み取ることができなかった理由は以下のようにして一応理解される。

0040

水銀ランプの照射強度スペクトルは、そのほとんどが約230nm 以上の波長領域にあるので、極わずかに存在するダイヤモンドのエネルギーバンドギャップより高いエネルギーに相当する波長の光(第1の光)によって、電子−正孔対即ちキャリアが生成され、第1の光の照射光量に対応してトラップ準位に捕獲される。しかし、同時に照射される約230nm 以上の波長の光によってトラップ準位に捕獲されたキャリアは捕獲と同時に励起されてしまう。言い換えるならば、見かけ上トラップ準位に捕獲されたキャリアの数は極めて少なくなってしまう。従って、その後の白色光の照射の際の光伝導電流から、水銀ランプからの照射光量に関する情報を得ることができなくなる。

0041

いずれにしても、トラップ準位に捕獲されたキャリアの数に起因する白色光の照射に従う光伝導電流は微小なものとなってしまい、その値は水銀ランプの照射光量を正確に反映したものではなくなってしまうと考えられる。

0042

また、水銀ランプからの光の照射と同時に白色光を照射し、その際の光伝導電流を測定した場合において、有意なデータが得られなかった理由も、そもそもこの場合、トラップ準位に捕獲されるキャリアが極めて少ないと見なせる状況が実現されていた、と考えることによって理解することができる。

0043

上記モデルを用いて、図1図6に示す実験データを考察した結果を以下に示す。
A.紫外線が照射されるに従って、キャリアによりトラップ準位が段々と埋まっていき、最終的には飽和する。言い換えるならば、トラップ準位にキャリアが徐々に捕獲されていくが、上限が存在する。
B.読出光の照射に従う光伝導電流の値は、上記トラップ準位に捕獲されたキャリアの数に関係していると考えられる。
C.トラップ準位が埋まっていく割合いは、紫外線のトータルのエネルギー(エネルギーの総量)に依存すると考えられる。(波長が一定ならば、トータルのエネルギーはその光量に依存する)
D.ダイヤモンドに照射された紫外線のエネルギーの総量によって、トラップ準位に捕獲されるキャリアの数が決まると考えられる。
E.白色光の照射に従う光伝導電流は、トラップ準位に捕獲されているキャリアの数に依存すると考えられる。即ち、白色光の照射に従う光伝導電流積算値は、ダイヤモンドに照射された紫外線のエネルギーの総量を反映したものであると理解される。

0044

また、上記の考察をさらに発展させると、「紫外線のエネルギーとしては、その照射強度の他にその波長の有するエネルギーが考えられ、このことを考慮するならば、紫外線の照射光量を定め、紫外線の波長を変化させた場合、その波長のエネルギーに従ってトラップ準位に捕獲されるキャリアの数が当然異なるはずである。」「よってこの場合、読出光の照射に従う光伝導電流の値は、紫外線の波長によって異なるはずである。」ということが結論される。

0045

以上の考察より、「紫外線の照射光量を一定に定め、異なる波長領域を有する複数の紫外線を個別にダイヤモンドに照射し、さらに読出光の照射に従う光伝導電流の値を測定することにより、先に照射された紫外線の波長の違いを検出できる」ということが結論される。なお、図1図6のデータが得られた実験は、波長領域即ちその照射強度のスペクトルが同一の紫外線(重水素ランプからの放射光)を用い、その照射光量を変化させることによって、ダイヤモンドに照射された紫外線のエネルギーの総量を変化させた場合であると理解される。

0046

上記の考察結果を実験的に裏付ける実験データが得られている。この実験データは、重水素ランプの光を分光器によって特定の波長領域に分割し、その分割した紫外線を用いて、この紫外線の波長とその後の読出光(白色光)の照射に従う光伝導電流の値との関係を調べたものである。この実験データより、波長180nmの紫外線と波長200nm の紫外線とでは、対応する読出光の照射に従う光伝導電流の値に相違が確認された。勿論、照射光量はそれぞれ等しくなるように努めたことはいうまでもない。しかしながら、重水素ランプを分光すると、照射強度が1/10以下に大きく減衰してしまうので、読出光に従う十分な大きさの光伝導電流が得られず、紫外線の波長と読出光の照射に従う光伝導電流との明確な関係を得ることはできなかった。

0047

ここで上記のモデルについて考察すると、上記のモデルが適用できる材料の条件としては、
(イ)光伝導効果を有する。(光感度を持つ)
(ロ)励起された電子を捕獲する何らかのトラップ準位を有する。
(ハ)エネルギーバンドギャップを有する。
といった事項が必要であることが結論される。上記のような物性は、基本的に半導体と呼ばれている材料全てに備わっているものである。

0048

本発明者らは、上記考察に基づいて、「ダイヤモンド以外の材料でも上記(イ)〜(ハ)に示す物性を有しているならば、その材料は図1図6に示すような光に対する性質原理的には有しており、その性質を利用することができる」、言い換えるならば、「ダイヤモンド以外の材料でも上記(イ)〜(ハ)に示す物性を有しているならば、原理的には図1図6に示すような実験データが得られ、その性質を利用することができる」、という認識に至ったものである。

0049

上記認識に基づき、材料として上記(イ)〜(ハ)の物性を有する材料を用いるとした場合、前記(その1)〜(その5)の内容は以下のように変更される。
(その1’)当該材料に照射された当該材料のエネルギーバンドギャップより高いエネルギーに相当する波長を有する光(書込み光)のエネルギーの総量に対応する情報は、当該材料のエネルギーバンドギャップより低いエネルギーに相当する波長を有する読出光に対する光伝導電流より知ることができる。特にその情報として、照射された書込み光の総量に対応する情報、または書込み光の照射光量に関する情報を正確に知ることができる。
(その2’)読出光をパルス光とすることで、複数回の読出を行うことができる。
(その3’)読出光の波長を長くすることで、読出回数を多くすることができる。
(その4’)読出光の強度を弱くすることで、読出回数を多くすることができる。
(その5’)当該材料のエネルギーバンドギャップより低いエネルギーに相当する光(読出光)を、ある程度の波長領域を有せしめて(トータルのエネルギーが大きい)、あるいはある程度の光量でもって(トータルのエネルギーが大きい)、あるいはその照射時間を長くして(トータルのエネルギーが大きい)、当該材料に照射し、書き込まれた情報を読みだしてしまうことにより、書き込まれた情報を消去することができる。

0050

上記(その1’)における「照射された書込み光のエネルギーの総量に対応する情報」としては、当該材料に照射される当該材料のエネルギーバンドギャップより高いエネルギーに相当する波長を有する光の、照射の有無、照射光量の違い、波長の違い、またはその照射強度のスペクトルの違い(トータルのエネルギーが異なれば、その違いは当然トラップされたキャリアの数に関係する)、の内少なくとも一つに関する情報を挙げることができる。

0051

ここで、「光伝導電流が流れる」、ということが、当該材料のエネルギーバンドギャップより低いエネルギーに相当する波長の光(読出光)のエネルギーによって、トラップ準位から励起されたキャリアに起因する現象であることを考慮すると、読出光の照射によって光伝導電流が流れる場合、トラップ準位からキャリアを励起するために、読出光の光子のエネルギーが失われることが結論される。光子のエネルギーが失われるということは、当該材料中において読出光の光子の数が減少するということである。一方読出光は、当該材料のエネルギーバンドギャップより低いエネルギーに相当する波長の光であるから、その多くは当該材料を透過するはずである。従って、読出光が当該材料を透過すると、トラップ準位から励起するキャリアの数に比例して、その光子が失われることになる。言い換えるならば、読出光が当該材料を透過すると、トラップ準位から励起するキャリア数に比例して、透過光量が減少する、ということが結論される。

0052

読出光の照射に従うトラップ準位から励起されるキャリアが多いということは、読み出しに際しての光伝導電流の値が大きいということである。言い換えるならば、書込み光の照射光量が大きい、ということである。よって、書込み光の照射光量が多い場合、読出に際し、それだけ多くの読出光の光子が当該材料を透過する際に失われることになる。すなわちこの場合、当該材料を透過する読出光の光量が少なくなる、ということが結論される。以上の議論より、読出に際して失われる読出光の光子の数は、書込み光の照射光量を反映したものであるとの結論を得ることができる。

0053

以上の考察より、原理的には以下のことが結論される。「当該材料に対する書込み光の照射光量は、当該材料を透過する読出光の光量によって知ることができる」

0054

以上の考察は、書込み光の照射光量に着目して成されたものである。しかしながら、書込み光の照射光量を一定として書込み光の波長を変化させた場合も、書込み光の波長によってトラップ準位に捕獲されるキャリアの数が異なると考えられるので、同様な考え方によって、以下のことが結論される。「当該材料に対する書込み光の波長の違いは、当該材料を透過する読出光の光量によって知ることができる」

0055

以上の考察をまとめると、以下のことが結論される。「当該材料に対する書込み光の照射の有無、光量の違い、波長の違い、の内少なくとも一つに関する情報を、当該材料を透過する読出光の光量によって知ることができる」、言い換えるならば、、「当該材料に対する書込み光のエネルギーの総量は、当該材料を透過する読出光の光量によって知ることができる」

0056

例えば、10μWs/cm2 の光量を有する書込み光と、20μWs/cm2 の光量を有する書込み光と、に対する当該材料を透過する読出光の光量について考える。この場合、読出の際にトラップ準位から励起するキャリアの数がそれぞれの書込み光の照射光量に対応して異なるのだから、当然当該材料中で失われる光子の数がそれぞれ異なり、結果としてその透過光量が異なることになる。従って、書込み光の照射光量の違いを読出光の透過光量の違いから判別できることになる。

0057

本発明は、以上の様な考察によって得られたものであり、「読出光の透過光量を知ることで、書込み光の照射光量やその波長の違いを知ることができる」という見地立ち、行われたものである。

発明が解決しようとする課題

0058

本発明は、以下の機能の内少なくとも一つの機能を有する電子装置を提供することを目的とする。
・光の照射の有無や照射光量の違い、さらには光の波長の違いを検出できる装置
・光の照射光量や波長の違いを情報として扱うことのできるメモリー装置
・光の照射光量や波長の違いを情報として扱うことのできる演算装置
・光の総エネルギーに対応した情報を検出することのできる装置
・光の総エネルギーに対応した情報を扱うことのできるメモリー装置
・光の総エネルギーに対応した情報を扱うことのできる演算装置

課題を解決するための手段

0059

本明細書において開示する主要な構成は、光伝導効果と、励起されたキャリアを捕獲するトラップ準位と、エネルギーバンドギャップと、を有した材料を用いた電子装置であって、当該材料のエネルギーバンドギャップより高いエネルギーに相当する波長を有する第1の光を当該材料に照射する手段と、当該材料のエネルギーバンドギャップより低いエネルギーに相当する波長を有する第2の光を当該材料に照射する手段と、当該材料を透過する前記第2の光の光量を測定する手段と、前記第2の光の透過光量より、前記当該材料に照射された第1の光に関する情報を得る手段と、を有することを特徴とする電子装置、を要旨とする。

0060

光伝導効果というのは、当該材料に光を照射すると、当該材料に吸収された光のエネルギーによって、電子とホールとの対がキャリアとして励起生成され、当該材料の電気抵抗が低下する現象のことをいう。この光伝導効果は、半導体材料が有している代表的な性質である。

0061

エネルギーバンドギャップ(単にバンドギャップまたはエネルギーバンド幅ともいう)とは、バンド理論における禁止帯禁止バンド(forbidden band)) の幅のことをいう。励起されたキャリアを捕獲するトラップ準位(単にトラップともいう)とは、励起された電子やホールを捕獲する性質を有するもので、当該材料中に存在する格子欠損や不純物や不対結合手に起因する準位のことである。このトラップ準位のエネルギーレベルは、エネルギーバンドギャップ内に存在する。現存する材料特に半導体材料中には、上記のような励起されたキャリアを捕獲するトラップ準位が程度の差はあれ必ず存在している。本発明において特にトラップ準位を人為的に導入した材料を用いなけれなばならないということはない。しかしながら、キャリアを捕獲するトラップ準位の数を人為的に制御した材料を用いることは、有用である。このトラップ準位の数を人為的に制御する方法としては、材料の作製時の作製条件の設定、適当な不純物の添加、適当な熱処理手段や光照射、さらにはレーザー光の照射やマイクロ波の照射、等々の方法を挙げることができる。

0062

このキャリアを捕獲するトラップ準位を有する材料としては、多結晶構造を有する半導体材料等が好適である。これは多結晶構造中の結晶粒界に格子欠損や不対結合手が数多く存在しているからである。また一般の非単結晶半導体材料も格子欠損や不対結合手を数多く含んでいるので利用することができる。しかしながら、その構造が弱く、強光の照射によって分子レベルにおける構造が変化してしまうような材料は不適当であると考えられる。例えば、本発明における第1の光または第2の光の照射によって、アモルファス珪素のような劣化、あるいは相変化(例えば、結晶化や非晶質化)が生じてしまう材料は不適当であると考えられる。即ち、本発明に利用できる材料としては、分子レベルでの構造がしっかりしており、明確なバンド構造を有しているものが好ましいと考えられる。

0063

当該材料のエネルギーバンドギャップより高いエネルギーに相当する波長の第1の光、というのは、例えば当該材料のエネルギーバンドギャップを仮に5eVとした場合、5eVより高いエネルギーに相当する波長の光、即ち約250nm より短い波長の光のことをいう。勿論、200nm 〜300nm の波長を有する光であっても、波長約250nm より長い波長領域の光の総エネルギー(Σhν)が波長約250nm より短い波長領域の光の総エネルギー(Σhν)に対して実用上無視できる、あるいは実用上許容できるものであれば、上記第1の光として用いることができる。例えば、ダイヤモンドに対しては書込み光(第1の光)と読出光(第2の光)との両方の波長成分を持つ重水素ランプを第1の光の光源として利用しても、必要とする波長領域の光のトータルのエネルギー(照射強度や波長のエネルギーに関係する)が不用とする波長領域のトータルのエネルギーに対して実用上十分大きければ問題はないことが確かめられている。(図1図3に示す場合の例)なお、図1をみても分かるように、一般に半導体材料、特に非単結晶半導体材料のエネルギーバンドギャップは明確なものではなくブロードである。また、同じ材料でも不純物の量や結晶の状態によってエネルギーバンドギャップは異なる。従って、当該材料の概略のエネルギーバンドギャップを目安として、ある程度の余裕をもって第1の光の波長と第2の光の波長とを決定することが好ましい。

0064

また、光を照射する手段としては、各種ランプ、各種レーザ発信装置荷電粒子のエネルギーを用いた装置、以上のような光を発する装置から光を導く装置(例えば光ファイバーや光を遮るシャッター)、自然界に存在する光を無選択あるいは選択的に導く光学系、または単に光が照射される構成(単に露呈している構成も含まれる)を挙げることができる。本発明においては、第1の光と第2の光とが、当該材料のエネルギーバンドギャップに相当する波長を境にして異なっているので、当該材料に照射される光の波長を選択する必要がある場合がある。例えば第1の光として、広い波長領域を有する光を用いる場合、書込み光である第1の光によって情報が書き込まれると同時に第2の光の波長に相当する光によって情報が読出されないようにする必要がある。この場合、特定の波長領域の光のみを選択的に取り出し、第1の光として当該材料に照射する必要がある。このような場合には、適当なフィルタを上記光を照射する手段として用いる必要がある。

0065

当該材料のエネルギーバンドギャップより低いエネルギーに相当する波長の第2の光、というのは、例えば当該材料のエネルギーバンドギャップを仮に5eVとした場合、5eVより低いエネルギーに相当する波長を有する光、即ち約250nm より長い波長を有する光のことをいう。勿論、読出に際して障害がなければ、波長約250nm 以下の短波長領域を含んでいる光を用いてもよい。。

0066

上記第1の光、あるいは第2の光として特定の波長の光を用いるのであれば、単一の波長を有するレーザ光を利用することが有用である。レーザ光は赤外領域から紫外領域まで各種知られており、使用する材料のエネルギーバンドギャプや実施態様に合わせて選択することができる。また装置の小型化のため固体レーザー半導体レーザーも含む)を用いることも有用である。

0067

例えば第1の光の照射光量を情報として扱う場合、第1の光を照射する手段としては、異なる照射光量を照射することのできる機能が必要とされる。一方第2の光は、特にその照射光量を変化させる機能を必要とされない。また、第1の光または第2の光をパルス光とすることも情報の書込みや読み取りを行う上で有効である。

0068

当該材料を透過する前記第2の光の光量を測定する手段、というのは、当該材料に対して第2の光を照射し、その際に当該材料を透過する第2の光の光量、即ち透過光量を測定する手段のことである。この第2の光の透過光量として、単位時間におけるものを測定すれば、その光量は透過光の強度になる。即ち、第2の光の透過光量を測定する代わりに、当該材料を透過した第2の光の強度を測定してもよい。このことは、光量が光の照射強度と光の照射時間との積で示されることを考えれば明らかである。

0069

第2の光は、当該材料のエネルギーバンドギャップより低いエネルギー相当する波長であるので、当該材料にダイヤモンド材料のようにワイドバンドギャップ材料を用いた場合には、周知の可視光領域の光を検出する機能を有する珪素を用いたフォトダイオードを当該材料を透過した第2の光の光量を測定する手段として用いることができる。また、当該材料として、単結晶珪素バンド幅約1.1eV)等のナローバンドギャップ材料を用いた場合は、1000nm以上の波長領域に対して感度を有するGeやInAsさらにはInSbを用いたフォトダイオードを用いることができる。また、フォトダイオード部で発生した信号を増幅して外部へ取り出すことができる受光素子であるアバランシュフォトダイオードやフォトトランジスタ等を上記光量を測定する手段として用いることもできる。また、前記手段として撮像管を用いることもできる。

0070

また、当該材料を透過した光子(フォトン)の数を正確に測定する必要がある場合には、光電子倍増管を用いることも有用である。

0071

この第2の光の照射の際における当該材料を透過した第2の光の光量は、第1の光の照射光量や波長に関する情報を含んでおり、予め第1の光の当該材料に対する照射光量と当該材料を透過する第2の光の光量との関係、または第1の光の波長と第2の光の透過光量との関係、または第1の光の照射光量と波長とを組み合わせて構成した情報と、第2の光の透過光量との関係、を調べておくことにより、第1の光を被測定物とした光検出装置、第1の光を書込み光としたメモリ装置、第1の光を入力とし第2の光の透過光を出力する素子、等を実現することができる。

0072

また、第2の光としてある程度のスペクトル分布を有する光を用いた場合、第2の光の当該材料の通過によって、波長に依存した形で光子の吸収が起こり、そのスペクトル分布が変化する場合も考えられる。即ち、特定の波長の光が吸収されることによって、当該材料の透過光のスペクトルが変化する場合が考えられる。この場合は、そのスペクトルの変化を検出することによって、第1の光の照射に関する情報を知ることができる。この動作は、当該材料を透過する第2の光において、特定の波長の光の光量の変化を捉えることによって、それ以前に照射された第1の光の照射に関する情報(例えばその光量)を得る、と理解することができる。

0073

本願発明における、光伝導効果と、励起されたキャリアを捕獲するトラップ準位と、エネルギーバンドギャップと、を有した材料として、広く半導体材料として知られている材料を用いることができる。特にダイヤモンドと同じような明確な動作を期待できる材料として、炭化珪素(SiC )を挙げることができる。炭化珪素の薄膜は、その作製がダイヤモンドに比較して容易であり、またそのエネルギーバンドギャップが3eV程度であるので、ダイヤモンドに近い動作を期待することができる。また非単結晶半導体材料や単結晶半導体材料を用いることもできる。さらにまた、光を照射すると自由電子−正孔対の発生によってその電気抵抗が低下する性質を有する光伝導材料と呼ばれる材料を用いることもできる。また、化合物半導体や不純物を添加した半導体材料であっても本発明で規定する条件を満たす材料であれば利用することができる。

0074

例えば炭化珪素を用いた場合、書込み光である第1の光として波長248nm(5eVに相当)のKrFエキシマレーザ光や400nm 以下のスペクトルに強い強度を有する水銀ランプを用い、読出光である第2の光として波長633nm(約2eVに相当)のHe-Neレーザー可視光半導体レーザー(700nm〜800nm の波長を有する)からの光を用いることができる。

0075

なお、エネルギーバンドギャップが小さい材料を用いた場合、当該材料に対する第1の光の照射光量を、当該材料に対する第2の光の透過光量によって測定することが、実際問題として困難である場合も考えられる。これは前述の〔発明の背景〕の項で説明したように、第1の光の照射に関する情報は、当該材料のエネルギーバンドギャップ内に存在しているトラップ準位に蓄えられていると考えられ、このことから考えるに、エネルギーバンドギャップの小さい材料においては、第1の光の照射光量に関する情報が5eV以上のエネルギーバンドギャップを有するダイヤモンドの場合に比較して、相対的に少ないと考えられるからである。

0076

上記の事は、第1の光として異なる波長の光を用いた場合であっても同様である。即ち、多数の情報に対応させて波長の異なる第1の光を用意し、その波長の違いによって当該材料に書き込む情報を異ならせようとしても、ナローバンドギャップ材料の場合は、その書き込まれた情報の違いを第2の光の当該材料に対する透過光量の違いによって判定することが困難である場合が考えられる。この点、ダイヤモンド材料は分子レベルでの構造が非常に安定しており、ワイドバンドギャップ材料であるということと相まって好ましい材料であるといえる。

0077

しかし、単に第1の光の照射の有無や第1の光の照射光量の大小、または第1の光の波長の違い、を第2の光の透過光量からより読み取るのであれば、必要とする特性に鑑みて各種材料を利用することができる。

0078

また、ダイヤモンドの物性に近い材料として注目されているcBN(窒化硼素)を本願発明に用いることも原理的には可能である。なお、以上列挙した材料、あるいは本願発明の構成を満足する材料中に不純物をドーピングすることにより一導電型化し、その導電率を変化させてもよい。また不純物のドーピング、または複数の材料で構成される材料(例えばSiC や化合物半導体)の組成比率の変更、作製条件の制御等を行うことによって、当該材料のエネルギーバンドギャップの値や光に対する感度やキャリアの密度や光の吸収率やトラップ準位の深さや数、さらには各種物性を制御することは有用である。

0079

本明細書で開示する他の主要な発明は、第1の光によって当該材料に書き込まれた情報を、当該材料に対する第2の光の透過光量によって読み出すことを、その要旨とするものである。この場合の透過光量というのは、透過光の強度(単位時間当たりの透過光量)を含むものであり、実施態様に合わせて、その透過光量(強度×時間)または透過光の強度(強度×単位時間)を測定すればよい。

0080

他の主要な発明は、第1の光に関する情報が、当該材料に対する第1の光の照射の有無に関するものであること、を要旨とするものである。この発明の構成を採用した場合、扱える情報は0か1を識別する情報ということになる。

0081

他の主要な発明は、第1の光に関する情報が、当該材料に対する第1の光の照射光量であること、を要旨とするものである。この発明の構成を採用した場合、単に0か1の情報のみではなく、2種類以上の情報を扱うことのできる構成を実現できる。例えば、第1の光として、5μWs/cm2、10μWs/cm2、15μWs/cm2、20μWs/cm2と4種類の光量の光を用意すれば、それぞれに対応した当該材料に対する第2の光の透過光量を判別することにより、一つの領域において4種類の情報が扱えることになる。原理的には、第2の光の読み取り精度を高くすることで、当該材料の一つの領域において、さらに多くの情報を扱うことが可能である。

0082

他の主要な発明は、第1の光に関する情報が、当該材料に対する第1の光の波長の違いに関するものであること、を要旨とするものである。この発明は、当該材料に照射される第1の光の波長の違いによって、第2の光の当該材料に対する透過光量が異なることを利用したものである。例えば、当該材料として、多結晶薄膜ダイヤモンドを用い、第1の光として、波長160nm の光(Aという情報に対応させる)と、波長200nm の光(Bという情報に対応させる)とを用意し、いずれか一方の光をダイヤモンド薄膜に照射し、しかる後にダイヤモンド薄膜に対する第2の光の透過光量の違いを判別することにより、波長160nm の光が照射されたのか、波長200nm の光が照射されたのかを知ることができる。また両方の光を同時に照射することによっても書き込まれた情報が単体の光の場合と異なり、対応する第2の光の透過光量が異なると考えられるので、この状態をCという情報に対応させると、全く第1の光の照射が無い状態をDという情報に対応させるとして、書き込まれる情報は、
A:第1の光として波長160nm の光が照射された状態
B:第1の光として波長200nm の光が照射された状態
C: 第1の光として波長160nm の光と波長200nm の光とが同時に照射された状態
D:第1の光が全く照射されない状態
の4種類ということになる。

0083

なお、上記のA〜Dの4種類の情報を書き込む場合は、その照射光量を定めて置かなければならない、これは当該材料に対する第1の光の照射光量を異ならせることによっても、当該材料に対する第2の光の透過光量が変化するからである。しかし、このことを利用し、第1の光の波長の違いと照射光量の違いとを複雑に組合せて複数の所定の情報に対応させることによって、第1の光を照射する手段をそれほど複雑にしなくても数多くの情報を扱うことができる。

0084

例えば、上記の例において、それぞれの光の照射光量を10μmWs/cm2と20μmWs/cm2の2通りに変化させ得るとした場合、または2種類の光を容易した場合、
A:波長160nm の光
B:波長200nm の光
C:10μmWs/cm2の照射光量
D:20μmWs/cm2の照射光量
上記の4通りの情報の組合せを考えると、AC,AD,ABC,ABD,AC・BD,AD・BC,AD・BD,AC・BC,照射無,の9通りの情報を扱えることになる。上記の例は、第1の光として複数の波長の光(ここでは2種類)と、複数の照射光量の光(ここでは2種類)とを用意し、それらの組み合わせを情報に対応させた場合の例である。

0085

他の主要な発明は、第1の光と第2の光とが同時に照射されることを要旨とする。第1の発明または第2の発明は、当該材料に対する第1の光の照射に関する情報を、当該材料に対する第2の光の透過光量によって読み取ることを、動作の基本とするものであるが、この動作は第1の光を照射中においても行うことができる。この場合、第2の光が照射される以前に照射された第1の光に関する情報を、第2の光の透過光量より知ることができる。

0086

他の主要な発明は、第1の光の照射後に第2の光が照射されることを要旨とするものである。この発明は、第1の光の照射が終了後に第2の光を照射することによって、第1の光の照射に関する情報を読み出すことをその基本動作とするものである。この動作の形態は、メモリーとして機能させるのに非常に重要な役割を果たすものであり、書き込まれた情報を後で読み取るという動作の基本になる。

0087

他の主要な発明は、第2の光の透過光量を測定する方法として、第2の光の透過光のスペクトルを測定すること、を要旨とするものである。第2の光としてある範囲のスペクトルを有する光を用いた場合、当該材料を透過することによって、波長領域の一部あるいは全体の光が当該材料に吸収され、そのスペクトルは変化する。よって、このスペクトルの違いを検出することによって、当該材料に吸収された第2の光の透過光量を知ることができ、このことから第1の光の照射光量や波長の違いを判別することができる。

0088

なお、ここでいうスペクトルとは、所定の光を分光した場合に得られる、各波長の光の強度分布(波長に対する光の強度分布)のことをいう。例えば、ここでいうスペクトルを視覚的に表現するには、波長を横軸、光の強度を縦軸にとって、各波長成分の光の強度をプロットすればよい。

0089

上記構成は、第2の光としてある波長領域を有した光を用いた場合に有効である。

0090

他の主要な発明は、第1の光を入力とし、第2の光の透過光を出力とすることによって、入力と出力とを有する電子装置またはその動作方法を提供することを特徴とするものである。即ち、第1の光によって当該材料中に情報を入力し、第2の光によってその情報を出力する構成をとる構成、さらには第1の光によって第2の光の当該材料に対する透過光量を制御する構成、を提供するものである。このような構成を採ることによって、光を利用した演算装置を提供することができる。本発明の構成を採る装置は、入力の情報を蓄えておくメモリー性を持っていることが特徴である。

0091

他の主要な発明は、当該材料のエネルギーバンドギャップをEg とし、第1の光の波長に相当するエネルギー(光子エネルギー)をE1 とし、第2の光の波長に相当するエネルギー(光子エネルギー)をE2 とすると、
E2 <Eg <E1
が成立すること、を要旨とするものである。

0092

他の主要な発明は、当該材料のエネルギーバンドギャップと、第1の光と、第2の光との関係を数式を用いて定めたものである。上記のようなエネルギーで規定した関係は、第1の光の波長をλ1 、第2の光の波長をλ2 、当該材料のエネルギーバンドギャップに相当する波長をλg とすると、
λ1 <λg <λ2
と書き表わすことができる。上記の2つの式は、これらの式で定めれる関係を満たした光が本発明の作用に本質的に寄与するということを定めたものであり、その作用に影響が無いのならば、あるいはその影響を無視できるのならば、上記関係式を満たさない波長領域を含む光を用いてもよい。また一般にEg は明確に定めるものではないので、Eg 近傍あるいはλg 近傍において上記関係が厳格に定めるものではない。

0093

また、Eg に相当する光(波長λg )は、第1の光としても、また第2の光としても働くと考えられるので、このことを考慮すると、上記関係式は、
E2 ≦Eg ≦E1
となる。ただし前述のように、Eg 自体が明確なものではないので、実用的にはEg に幅をもたせて、
E2 <Eg <E1
と書き表すのが妥当である。

0094

他の主要な発明は、第2の光の照射の後に第2の光の照射によって変化する第2の光の透過光量に対応する第1の光の照射を行うこと、を要旨とするものである。

0095

この発明は、第2の光の照射を複数回重ねることによって、当該材料に対する第2の光の透過光量が変化してしまう問題を解決せんとするものである。この問題は以下のように考えることによって理解される。当該材料に第1の光が照射されることによって、当該材料中のトラップ準位には第1の光の照射光量に対応した数のキャリアが捕獲される。ここで第2の光を当該材料に照射することによって、トラップ準位に比較されていたキャリアは励起される。この際、第2の光の光子のエネルギーが失われるので、励起するキャリアの数に対応した数の光子が失われる。即ち、第2の光の当該材料に対する透過光量は、当該材料中のトラップ準位から励起するキャリアの数によって影響を受けることになる。前述の〔発明の背景〕の項で説明したように、当該材料中のトラップ準位から第2の光によって励起されるキャリアの数は、トラップ準位に捕獲されているキャリアの数を反映したものであると考えられる。従って、第2の光の照射によって、トラップ準位からキャリアが開放されてしまうと、次に第2の光を照射した際にはトラップ準位に捕獲されているキャリアの数は減少しており、前回の時より少ないキャリアの数を反映した透過光量になることになる。現実問題としては、例えば第2の光として単色光のパルスを用いた場合、複数回に渡って正確な情報の読み取りを行うことができるが、原理的には上記のように考えられる。

0096

他の主要な発明は、以上のような考察に基づき行われたもので、第2の光の一回の照射によって、当該材料中のトラップ準位から励起開放されてしまうキャリアを、第1の光の照射によって補充し、見かけ上常に当該材料中のトラップ準位に捕獲されているキャリアの数を一定に保とうするものである。

0097

上記の構成をとることによって、複数回の読出に際して、常に同一の出力(第2の光の当該材料に対する透過光量の値)を得ることでき、特にメモリー装置として有用な動作を得ることができる。

0098

以下に具体的な動作の例を挙げる。
(1)当該材料中に書き込まれている所定の情報を第2の光の照射によって一回読み出した場合、第2の光の当該材料に対する透過光量がどれほど変化するか測定し、この変化量を補正するのに必要な第1の光の照射光量を求め、このデータを半導体メモリーに記憶させる。
(2)前記所定の情報を、第2の光の当該材料に対する透過光量によって読み出す毎に、前記半導体メモリーに記憶されているデータに基づいて第2の光の照射後即ち読出後において、第1の光を照射し、次の読出(第2の光の照射)に際して、当該材料に対する第2の光の透過光量が今回の読出の際の透過光量と同じ値になるようにする。
上記の動作は、書き込まれている情報の修復リフレッシュ動作)を読出毎に行うものであると考えることができる。そして、上記の動作を繰り返すことにより、何回読出を行っても同じ出力が得られる構成を実現できる。

0099

上記の動作は、一回の読出毎に書き込まれている情報の修復を行う例であるが、複数回の読出をひとまとめとして上記のような動作を実行するのでもよい。また、上記の例は、当該材料に書き込む情報として、第1の光の照射光量の違いを利用した例であるが、第1の光の波長の違いや、第1の光の照射光量と波長の違いの組み合わせを情報として利用する場合も、上記の例と同じ動作をさせることができる。この場合、第1の光としての条件を満たす適当な光をデータの修復専用に用意し、所定の光量でもってデータ修復用の光を照射する構成とすればよい。

0100

また、書き込まれている情報の違いによって、一回の読出に際して必要とされるデータ修復のための光の照射光量が異なる場合も考えられるが、この場合は、それぞれ対応する照射光量を予め調べておき、書き込まれている情報(読出の際に判明する)それぞれに対応させて、情報の修復のための光を照射すればよい。

0101

以上は、第1の光によって書き込まれた情報を保持する方法に関するものであるが、書き込まれた情報を消去するには、白色光あるいは、強度の強い光、あるいは照射光量の多い光、あるいは第2の光としての条件を満たす光で、なるべく波長の短い光(光のエネルギーが大きい)を照射し、当該材料中のトラップ準位に捕獲されているキャリアを全て励起しつくしてしまえばよい。

0102

他の主要な発明は、第1の光の波長の下限は、当該材料が光感度を有する波長領域の下限によって決まり、第2の光の波長の上限は、当該材料が光感度を有する波長領域の上限によって決まること、を要旨とするものである。本明細書で開示する発明は、当該材料に第2の光を照射した際にトラップ準位からキャリアが励起される現象を利用するものであり、当該材料に光伝導効果が存在することを前提とするものである。即ち、光のエネルギーによって電子−正孔対が励起生成され、当該材料の電気抵抗が変化する現象が見られることが必要であるということである。

0103

光伝導効果が存在するというのは、当該材料が所定の波長の光に対して光感度を有するということであり、その一例(多結晶ダイヤモンド薄膜の例)は、図1に示される。

0104

半導体材料の光伝導の種類は、真正型と外因型に分けられる。(参考文献:光物ハンドブック書店)p.557 〜558 、1989年12月10日第5版発行)真正型はGe,Se 等に見られ、エネルギーバンドギャップに相当する波長以上の長波長光に対しても、結晶中の不純物や格子欠陥等の影響で光感度を有する、即ち光伝導効果を有する。また外因型はAuやCu等の不純物をドープしたGe等に見られ、これらの不純物の影響でエネルギーバンドギャップに相当する波長以上の長波長光に対しても光感度、言い換えるならば光伝導効果を有する。このエネルギーバンドギャップに相当する波長以上の長波長光に対する光感度は、不純物や格子欠陥によって形成されるトラップ準位へのキャリアの励起、あるいはトラップ準位からのキャリアの励起に対応したものと考えられる。いずれにしても、当該材料中に不純物や格子欠陥が現実問題として存在するので、光伝導効果は当該材料のエネルギーバンドギャップに相当する波長以上の光に対しても存在する。

0105

第1の発明または第2の発明は、上記の光伝導効果を利用したものであるから、光伝導効果の効果が存在しない材料(光感度を有しない材料)、あるいは光伝導効果は存在するが(程度の問題として、バンドギャップのある材料においては、どの様な材料であっても存在はすると考えられる)その効果を利用できない材料(光感度がないと見なせる材料、実用にならない材料)は、第1の発明または第2の発明に利用できない材料ということになる。

0106

また、第1の発明または第2の発明における、第1の光の波長の下限、及び第2の光の波長の上限は、その波長の光に対して当該材料が光感度を有しているかどうか、即ち光伝導効果を有しているかどうかによって定めることができる。例えば図1には、CVD法で形成したダイヤモンド薄膜が、約1.3eV(約950nm)から、約6.2eV(約200nm)までの波長領域において光感度を有していることが示されており、この図1を見る限りにおいては、約200nm 〜約950nm の波長領域において、第1の光と第2の光とを当該ダイヤモンド薄膜のエネルギーバンドギャップを境に選べば良いことになる。

0107

ダイヤモンドが光感度を有する長波長側の限界は、1000nm以上であり、本発明者らによれば、約1200nmにおいても光感度を有していることが確認されている。前述のように、エネルギーバンドギャップより長波長側における光感度は、不純物や格子欠陥に起因するものであり、このことからも光感度の長波長側の限界は、その作製方法や、結晶の状態、さらには不純物の濃度等によって決まると考えられる。

0108

一方、古くからダイヤモンド(単結晶ダイヤモンド)がX線γ線に対して光感度を有していることが知られている。即ち、単結晶ダイヤモンドにバイアスを加えた状態でX線やγ線を照射すると、その照射エネルギーに比例して光伝導電流が流れることが確かめられている。

0109

従って、ダイヤモンドを材料として用いた場合には、第1の光としては、約5.5eV に相当する波長より短い波長でγ線の波長領域にまで渡る広い波長領域の光が利用でき、第2の光としては赤外線領域までの波長の光を利用できることが結論される。

0110

なお、X線やγ線に対して光感度を有する材料としては、単結晶珪素や単結晶ゲルマニウム等が知られており、単結晶珪素を用いたX線検出器が実用化されている。

0111

以上述べたように、第1の光の波長の下限と第2の光の波長の上限とは、当該材料が有する光感度によって決定される。言い換えるならば、当該材料の光感度が実用上問題のない程度でもって得られる波長領域の上限及び下限によって、第1の光の波長の下限と第2の光の波長の上限とが決定されることになる。

0112

また、第1の光の波長の下限を決定するための光感度の値と、第2の波長の上限を決定するための光感度の値とが異なる場合もある。例えば、図1に示すように、多結晶ダイヤモンド薄膜が有する光感度(黒丸のプロット点)は、6eVと3eVとでは異なるが、6eVの光を第2の光、3eVの光を第2の光として用いることができることを見ても明らかである。

0113

第2の光の波長の上限の物理的意味は以下の様に考えられる。前述のように当該材料のエネルギーバンドギャップより低いエネルギーに相当する波長(長波長)に対して当該材料が示す光感度は、当該材料中の格子欠陥や不純物によって、当該材料のエネルギーバンドギャップ中に形成されるトラップ準位に起因するものと考えることができる。従って、当該材料中のトラップ準位の存在を、当該材料が光感度を示す光の波長の上限によって知ることができる、と理解される。例えば、図1にその光感度を示すダイヤモンド薄膜は、約1.3eV(約950nm)に相当する深さにおいてもトラップ準位が存在している、と理解することができる。

0114

一方、第1の光の下限付近においては、光の吸収が当該材料の表面付近で起こるので、表面付近の欠陥や不純物(表面付近は内部より欠陥や不純物が多く存在している)の影響で、一般にキャリアのライフタイムは短くなり、光伝導電流は減少する。即ち、実際に測定される光感度は低下する。しかし、光伝導電流が減少しても、キャリアが高い光子のエネルギーで励起され、電子−正孔対が形成される現象はより顕著になる(即ち量子効率は高い)ので、光に対する感度が低下したものであるというわけでなない、と考えられる。

0115

よって、実測した第1の光に対しての光感度が低い材料(即ち得られる光伝導電流が小さい)であっても、その光によって電子−正孔対が生成する作用を有するのであれば、当該材料中に第1の光によって情報を書込み、第2の光によってその情報を読みだすことができる、と考えられる。このように、第1の光の波長の下限を決定するための当該材料の光感度の最小値は、上記の事項を考慮して決定する必要がある。

0116

また、第1の光の波長の下限は、当該材料の結晶構造を変えてしまうような強いエネルギーに相当するものであってはならない。即ち、当該材料を変質させてしまうほど強い光子エネルギーを有する波長であってはならない。

0117

以上のようなことと、実用上の諸問題を考慮すると、一般の半導体材料を用いた場合の第1の光の波長の下端は、当該材料のエネルギーバンドギャップ以上のエネルギーに相当する紫外線領域の波長とすることが適当であると考えられる。また、当該材料としてワイドバンドギャップ材料であるダイヤモンドや立方晶窒化硼素を用いた場合、さらにはX線やγ線に対する感度を利用できる半導体材料を用いる場合には、第1の光の波長の下限としてX線やγ線の領域まで含めることができる。なお、第1の光として紫外線以下の短波長の光を用いる場合には、高い光子のエネルギーに耐えうる強固な結晶構造(ダイヤモンドがその代表例)を有する材料を用いることが好ましい。

0118

また、第2の光の波長の上限を決めるのは、当該材料が光感度を有しているかどうかによって決まるが、一般的には赤外領域をその上限とすることができる。これは、第2の光の波長が長すぎると、当該材料に対する加熱や分解能の低下の問題があるからである。

0119

これらのことは、図2図5に示すように、当該材料に第2の光を照射し、その際に当該材料を流れる光伝導電流を測定することにより、第1の光の照射に関する情報(照射光量や波長に関する情報)を得る方法を採用する場合においても同様にいえることである。

0120

他の主要な発明は、透過光量として、単位時間当たりの透過光量を測定することにより、透過する光の強度を得ること、を要旨とするものである。

0121

透過光量は、照射強度を照射時間で積分した値(照射強度が変化しなければ、照射強度と照射時間との積)であるから、単位時間当たりの照射光量は照射強度ということになる。従って、第1の発明または第2の発明において、第2の光の透過光量を測定する代わりにその透過光の強度を測定してもよい。

0122

まず、当該材料のエネルギーバンドギャップより高いエネルギーに相当する波長の第1の光を当該材料に照射する。この際、この照射された第1の光に関する情報が当該材料中に蓄えられる。

0123

そして第1の光が照射されている状態、あるいは照射された後において、当該材料に当該材料のエネルギーバンドギャップより低いエネルギーに相当する波長を有する第2の光を照射し、この際における第2の光の当該材料における透過光量または透過光の強度を測定することで、当該材料に照射された前記第1の光に関する情報を得ることができる。特に第1の光の照射光量に対応させた情報を第2の光の透過光量から知ることができる。

0124

以下に示す実施例は、材料としてダイヤモンド(特にCVD法で作製した多結晶薄膜ダイヤモンド)を用いた場合の例であるが、光伝導効果と、励起されたキャリアを捕獲するトラップ準位と、エネルギーバンドギャップと、を有する材料であれば、基本的に以下の実施例の構成においてダイヤモンドの代わりに用いることができる。例えばワイドバンドギャップを有する各種窒化物系の化合物半導体等を用いることができる。

0125

また、以下に示す実施例において、ダイヤモンド以外の材料を用いた場合であっても、当該材料のエネルギーバンドギャップをEg とし、第1の光(書込み光)の波長に相当するエネルギーをE1 とし、第2の光(読出光)の波長に相当するエネルギーをE2 とすると、
E2 <Eg <E1
が基本的に成立していなければならない。勿論この場合、上記の関係を満たさない波長領域が存在していても、その光が上記の関係を満たす光に対してそのエネルギーが小さく、その影響を無視あるいは許容できるものであれば、そのような上記の関係を満たさない波長領域を有する光を用いることができる。

0126

〔実施例1〕本実施例は、図7にその断面の概要を示すディスク型円盤型)の装置に関する。図7に示す装置は、ディスクを回転させることによって、所定のメモリー領域に情報の書込みまたは読出、さらには情報の入力または情報の引出し、を行なう機能を有する。

0127

本実施例は、書込み光の照射によってディスクのメモリー領域(例えば2μm×2μm程度の大きさを有する領域)に書込み光の照射光量に対応させた情報を書込み、その情報を読出光の透過光量を測定することによって、読み出す構成を有する。

0128

本実施例の構成を図7を用いて説明する。図7は装置の断面図を示したものである。図において、この装置は、回転軸(72)を中心に回転するディスクを構成するダイヤモンド薄膜(71)と、書込み光(79)を照射するための重水素ランプ(180nm〜350nm)、光を遮るシャッター、光量を調節する手段、その他光学系を備えている書込み光を照射する手段(73)と、読出光(77)を照射するためのGaAlAs系の可視光半導体レーザ(波長780nm)、光を遮るシャッター、光量を調節する手段、その他光学系を備えた読出光を照射する手段(74)と、ダイヤモンド薄膜(71)を透過した読出光(78)を測定する公知の可視光領域の光量計または可視光領域の光の強度を測定する機能を有する素子(例えば珪素を用いたフォトダイオードやフォトトランジスタ)を有する透過光測定部(75)と、を有している。

0129

書込み光を照射する手段(73)と読出光を照射する手段(74)と透過光測定部(75)とは(76)に示すように紙面右方向に走査させることができ、ディスクであるダイヤモンド薄膜(71)の回転と相まって、ダイヤモンド薄膜全体を走査することができる。特に、読出光を照射する手段(74)と透過光測定部(75)とは、同期して移動し、常に(74)から照射され、ダイヤモンド薄膜(71)を透過した光(78)を透過光測定部(75)にて測定できる構成となっている。

0130

また、図面には示されていないが、各種信号を増幅するアンプや演算装置、さらには半導体メモリー等が必要に応じて配置される。また、ダイヤモンド薄膜(71)を補強するために、透過光測定部(75)側に可視光線を透過する樹脂基板等をダイヤモンド薄膜(71)と張り合わせる形で設けることも有用である。

0131

ダイヤモンド薄膜(71)は、厚さが15μm、直径が10cmの円盤形状をしており、有磁場マイクロ波CVD法によって作製されたものである。その作製条件を以下に示す。
原料メチルアルコール水素との混合気体
基板シリコン基板
基板温度800 度
マイクロ波出力4kW(2.45GHz)
一般に気相法(CVD法)によって得られたダイヤモンド薄膜は多結晶構造を有し、しかも結晶構造が強固であり、さらに大きなエネルギーバンドギャップを有しているので、ここで用いるには好適である。

0132

本実施例においては、多数のメモリー領域が形成されているダイヤモンド薄膜(71)が回転するので、書込み光と読出光とは、当該メモリー領域(例えば2μm×2μm)に対して極短時間に照射される。即ち、それぞれの光はいわばパルス光として当該メモリー領域に照射されることになる。

0133

また読出光の照射光量は、常に一定なものとするのが構成として簡単である。また、読出光の照射光量を適当に設定することで、複数回の読出を行うことができる。

0134

本実施例を動作方法の一例を以下に示す。
動作準備
・書込み光(79)の照射光量に対応した、読出光の透過光(78)の光量の値を測定し、半導体メモリーに記憶させておく。
・書込み光(79)の照射光量を所定の情報に対応させる。例えば、書込み光(79)の非照射(照射光量0)をAという情報に対応させ、10μWs/cm2 の照射光量をBという情報に対応させ、20μWs/cm2 の照射光量をCという情報に対応させる。

0135

書込み動作について〕
・前記所定の情報に対応した光量を書込み光(79)として、所定のメモリー領域に照射し、書込みの動作を行う。
読み出し動作について〕
・所定のメモリー領域に読出光(77)を照射し、その際の読出光の透過光(78)の光量を測定し、該測定した透過光量を前記半導体メモリーに記憶させた情報と照合させて、当該メモリー領域に書き込まれている情報が、Aという情報か、Bという情報か、Cという情報か、を判定する。

0136

また、書込み光を照射する手段(73)と、読出光を照射する手段(74)と、透過光測定部(75)とを、(76)に示すように走査させ、同時にディスクであるダイヤモンド薄膜(71)を回転させて、上記動作を行うことによって、複数のメモリー領域に対して連続的に上記書込み動作、および読出動作を行うことができる。

0137

本実施例の構成において扱うことのできる情報は、書込み光の照射の有無、あるいは照射光量の違いによる単に1か0かという情報であってもよいことはいうまでもないが、書込み光の照射光量に対応させて、読出光の透過光(78)の光量を細かく読み取ることによって、一つのメモリー領域で複数の情報を扱うことができる。例えば、仮に256通りに読出光の透過光量を読み取ることで、8ビットの情報を一つのメモリー領域において扱うことができる。また、書込み光の波長の違いによっても書込み光の透過光量が変化すると考えられるので、書込み光の波長の違いを読み出す方式とすることもできる。

0138

またさらに、書込み光として、その光量の違いと波長の違いとを組み合わせて、複数の所定の情報に対応させる方式としてもよい。

0139

本実施例の構成において、当該メモリー領域に対する情報の書込み時間を一定にすためには、書込み光の照射時間を一定とし、その照射強度を変化させることによって、照射光量を変化させる構成を実現する必要がある。この場合、書込み光を照射する光源の照射強度を可変する構成も有効であるが、複数の光源を利用し、必要とする照射強度に対応させて、所定の数の光源からの光を集光させ所望の照射強度を得る構成が有効である。

0140

また本実施例において、書込み光の光量を連続的に変化させる方式をとって、連続的に変化した光量を回転したディスクに照射し、その光量に対応した情報を書き込むことによって、連続的なアナログ情報を扱うこともできる。例えていうならば、アナログレコードと同じような扱い(勿論非接触で情報で読み取ることは根本的な違いである)を行うことも原理的には可能である。

0141

本実施例の構成をとることにより、大容量の非接触方式の光学的な書込みと読出とができるディスクメモリーを得ることができる。即ち、ディスクの所定のメモリー領域には光で書き込まれた所定の情報が蓄えられており、その情報は読出光の透過光量を測定することによって高速に読みだすことができる構成を得ることができる。

0142

本実施例において、ダイヤモンド薄膜(71)の導電型は特に限定されるのではなく、必要に応じて一導電型のダイヤモンド薄膜を用いることも可能である。そしてこのことは、他の材料を用いる場合であっても同様である。

0143

また、複数のメモリ領域が形成される材料(本実施例ではダイヤモンド薄膜)を固定し、書込み光と読出光とを走査して照射する構成としてもよい。

0144

また、以上の説明は、透過光(78)の光量を(75)において測定する例を示したが、(75)において透過光(78)の強度を測定する方法でもよい。

0145

〔実施例2〕本実施例は、実施例1の構成を改良したものであって、図8にその構成の概略の断面図を示す。図8において、図7と符号の同じものは実施例1と同様な構成である。図8に示す構成において、図7に示す実施例1と異なる部分は、金属の反射層(702) が設けられている点である。

0146

本実施例においては、読出光を照射する手段(74)から照射され、ダイヤモンド薄膜(71)の所定のメモリ領域に照射された読出光(77)の透過光は、反射層(702)で反射され、さらにハーフミラー(701) で反射されて透過光(78)として透過光測定部(75)に到る。そして透過光測定部(75)において、その光量が測定される。

0147

その他の構成や動作は、実施例1に示したものと同様である。即ち、透過光測定部(75)で、読出光を照射する手段(74)から照射され、ダイヤモンド薄膜(71)を透過した透過光(78)の透過光量を測定し、その透過光量から書込み光の照射光量を算出し、対応した情報を読み取るという動作である。勿論本実施例においても、書込み光の照射の有無、照射光量の違い、を書込み光の透過光量によって検出し、単に0または1の情報を読み出す方式としてもよい。また、書込み光の波長の違いを読み出す方式としてもよい。

0148

〔実施例3〕本実施例は、実施例1または実施例2において、読出行為を行うことによって書き込まれた情報が減少してしまい、読出の出力である読出光の透過光量が、読み出し回数を重ねることによって変化してしまうことを防ぐ構成に関する。

0149

発明の背景の項で説明したように、読み出し光の照射に従う光伝導電流を情報の読み出し手段として利用した場合、読出を行うことによって、当該材料のトラップ準位に捕獲されているキャリアが励起開放されてしまい、連続して読出を行うに従い(連続光を用いた場合)、または複数回の読出を行うに従い、その出力である光伝導電流は減少してしまう。このことから、当該材料における読出光の透過光量を測定した場合も、連続して透過光量を観測した場合、またはパルス光の透過光量を複数回に渡り測定した場合、読出光の透過光量が変化してしまうことが予想される。

0150

この透過光量の変化は、当該材料のトラップ準位に捕獲されているキャリアが、読出光の照射によって励起開放され、その数が減少することに起因するものと考えられる。従って、所定の光量の書込み光の照射によって、書き込まれた情報を維持するには、その書込み光の照射光量に対応したキャリアがトラップ準位に捕獲され続けるようにすればよいことになる。

0151

このことを実現するには、読出光の照射によって、トラップ準位から開放されるキャリアと同数のキャリアをトラップ準位に再び捕獲させてやればよい。

0152

トラップ準位にキャリアを捕獲させるには、書込み光の照射を行えばよので、この場合、一回の読出によって(複数回の読出をひとまとめとして考えてもよい)読み出され、トラップ準位から励起開放されてしまうキャリアと同数のキャリアをトラップ準位に捕獲させ得るように、対応する光量の書込み光の照射を行えばよい。即ち、一回の読出行為の毎に、その読出行為によってトラップ準位から励起開放されたキャリアと同数のキャリアをトラップ準位に捕獲させ得る照射光量の書込み光を照射すれば、書き込まれた情報は読出に際して見かけ上常に維持される。

0153

上記の動作を図7に示す装置で実施する場合の一例を以下に示す。
(動作をさせる前の準備)
(a)まず、書込み光(79)の照射光量と、読出光(77)の透過光(78)の透過光量との関係を予め調べ、その情報を半導体メモリーに記憶させておく。
(b)一回の読出に際して、どれほどのキャリアが読み出されてしまうかを測定する。具体的には、一回の読出によって変化する透過光(78)の変化分を測定し、その変化分に対応する書込み光(79)の照射光量を求める。そして、この情報を半導体メモリーに記憶させておく。

0154

(書込み動作)
(c) 特定の情報に対応させた光量の書込み光(79)を所定のメモリ領域に照射する。

0155

(読出動作)
(C)読出光(77)を照射し、その際の透過光(78)の光量を測定部(75)で測定し、前述のメモリーに記憶させた情報と照合させ、先に照射された書込み光(79)の照射光量を算出する。
(d)上記算出された書込み光(79)の照射光量を知ることで、所定の情報を読み出すことができる。
(e)上記読出行為の後に、前述の半導体メモリーに記憶させておいた、一回の読出において、変化する透過光(78)の光量を補償するために必要な書込み光(79)の照射光量を、書込み光を照射する手段(73)より当該メモリ領域に照射する。こうすることで、次の読出に際しても同様の透過光(78)の光量を得ることができる。

0156

以上のような動作をさせることで、複数回の読出に際して、常に一定の読出光(77)の透過光量が得られ、常に正しい書込み光(79)の照射光量を読出光(77)の透過光量から知ることができる。

0157

上記の動作は、一回の読出光の照射(読出光は常に同じ条件で照射されるものとする)によって、トラップ準位に捕獲されたキャリアの内、特定量のキャリアが失われる場合に有効な方法であるが、トラップされているキャリアの数によって(これは書込み光の照射光量に対応する)、読出の際に失われるキャリアの数が異なる場合も考えられる。即ち書込み光の照射光量の違いによって、読み出しに際しての情報の減少分が異なる場合も考えられる。

0158

この場合は、書き込まれている情報に対応して、上記(b) に示した動作を情報の種類の数だけ行うことで、対応することができる。例えば、Aという情報を読み出した場合には、読み出し後、A1の光量で書き込み光を照射すれば、Aという情報は維持され、Bという情報を読み出した場合には、読み出し後、B1の光量で書き込み光を照射すれば、Bという情報は維持され、Cという情報を読み出した場合には、読み出し後、C1の光量で書き込み光を照射すれば、Cという情報は維持され、という様に動作させればよい。

0159

以下に簡単な動作の例を示し、本実施例の動作について説明する。図9において、(A)は一つのメモリー領域に、1回目の読出光(77)の照射(パルス光)を行った際の測定部(75)からの出力(縦軸)と、2回目の読出光(77)の照射(パルス光)を行った際の測定部(75)からの出力(縦軸)とが示されている。(縦軸の出力は、測定部(75)に設けられたフォトダイオードの出力と考えればよい)この測定部(75)からの出力は、ダイヤモンド薄膜(71)を透過した読出光(78)の相対的な光量(強度でもよい)を示すものである。

0160

また(B)は、異なる情報が書き込まれたメモリー領域(a) と(b) とに、同じ条件で読出光(パルス光)を照射した際の測定部(75)からの出力(縦軸)が示されている。即ち、(B)に示されているのは、読み出しの際の出力で評価して目盛6の情報が書き込まれているメモリー領域(a) と、読み出しの際の出力で評価して目盛3の情報が書き込まれているメモリー領域(b) と、についての読み出しの際の出力を示すものである。

0161

(A)には、1回目の読出光の照射の際の読出光の透過光量(78)に比べて、2回目の読出光の照射の際の読出光の透過光量(78)が少なくなっていることが示されている。これは、読み取り回数を重ねる毎に、トラップ準位から励起するキャリアの数が減っていき、それに対応してダイヤモンド薄膜(71)中において失われる読出光の光子が減少するため、結果として読出光の透過光量が増大することを示すものである。即ち図9(A)には、1回の読出によって、3目盛分((91) で示される)の出力の減少、言い換えれば読出光の透過光量(78)が3目盛分増大することが示されている。

0162

ここで以下のように考える。
1. (A)に示されるように、1回の読み取りによって(91)で示される3目盛に相当する透過光(78)の光量が増大する。即ち、蓄えられている情報が減少する。
2. (B)から分かるように、(91)で示される3目盛分の出力の差は、3目盛分の情報をメモリー領域(a) にさらに書き込むか、3目盛分の情報をメモリー領域(b) より引き出すかすれば、解消することができる。
3. そこで、(A)において、1回目の読出と2回目の読出との間において、(91)に示す出力の差に対応する光量でもって、書込み光(79)の照射を行うと、2回目の読出に際しても、蓄えられている情報量が1回目の読出の際と同じとなるから、1回目と同じ出力を得ることができる。

0163

上記の動作は、1回の読出によって、当該メモリー領域から引き出されてしまった情報(例えば照射光量に対応した情報)を、同じ情報量でもって読出後に書込みことによって、2回目の読出に際しても、1回目と同じ情報量を読み出すことができる状況を実現したものであるといえる。

0164

本実施例においては、ダイヤモンド薄膜(71)に書き込まれた情報を保持するために書込み光(79)の照射を行ったが、書込み光に相当する光の照射手段を、書込み光を照射する手段(73)以外に別に設ける構成としてもよい。即ち、書き込まれた情報を維持する光を照射する手段を独立に設ける構成としてもよい。この場合、書き込まれた情報を維持する光が満たさなければならない条件は、書込み光が満たさなければならない条件と同一である。

0165

〔実施例4〕本実施例は、実施例1または実施例2の構成を利用した、光を入力並びに出力とした演算装置に関するものである。

0166

本実施例は実施例3に示した動作方法をさらに発展させたものであって、例えば図7図8に示す装置において、ダイヤモンド薄膜(71)に形成される複数のメモリー領域(例えば2μm角の領域)に対して、書込み光の照射により、情報の入力を行い、読出光の照射により情報の出力を行うことにより、当該メモリー領域において情報の出し入れを行う構成を提供するものである。

0167

ここで、一つメモリー領域に10単位の情報を書き込む構成を考える。この場合、10単位の情報は、書込み光の照射光量の違いによって区別するものとする。この場合、書込み光の照射によって所定の単位の情報を当該メモリー領域に入力し、読出光の照射によって、指定の情報を当該メモリー領域から引き出すことができる。

0168

以下において、情報の読出とは、単に情報を読み取るだけで、その情報は失われないことを意味するものとする。また情報を当該メモリー領域から引き出してしまうこと、即ち情報を出力し、その出力した情報は当該メモリー領域から失われてしまうことを、情報を引き出す、と表現することとする。

0169

例えば、当該メモリー領域(任意の一つのメモリー領域を考える)において、5単位の情報を入力し、3単位の情報を引き出す動作を考える。この場合、5単位の情報を入力するには、5単位の情報に対応した光量でもって書込み光を当該メモリー領域に照射すればよい。また、3単位の情報を引き出す(3単位の情報を引き出すことによって、当該メモリー領域に蓄えられている情報は2単位となる)際には、3単位分の情報を引き出してしまうのに必要な光量で、読み出し光を照射し、既に書き込まれている5単位の情報を読み出せばよい。また、実施例3に示した動作を実施することで、情報の引出しは行わずに(蓄えられる情報は5単位のまま)5単位の情報を単に読出すことができる。

0170

読出光の照射によって、当該メモリー領域から情報を引き出すには、予め所定の情報それぞれにおいて、読出光の照射によって、どれほどの情報を引き出せるのか測定し、そのデータに基づいて読出光の照射光量または照射強度またはその波長、さらにはこれらの組み合わせ、を定めればよい。

0171

本実施例の構成をとることによって、例えば図7に示す装置において、入力は書込み光(79)、出力は読出光(77)の当該材料に対する透過光(78)、という一種光演算装置を実現することができる。

0172

また、当該メモリー領域に情報を書き込むには、書込み光の照射光量またはその波長、さらにはそれらの組み合わせを利用することができる。さらに情報の消去を行うのであれば、所定のメモリー領域に白色光または当該材料のエネルギーバンドギャップより低いエネルギーに相当する広い波長領域を有する光(例えば当該材料として炭化珪素を用いるのであれば、可視光領域〜赤外領域の広い波長領域を有する光)または、書き込まれている情報を読出尽くしてしまう光量の読出光を照射し、書き込まれている情報を読み尽くしてしまえばよい。

0173

〔実施例5〕本実施例の概略の構成を図10に示す。図10に示すのは、エネルギーバンドギャップがEg の当該材料(102) に対し、光子エネルギーがE1 の第1の光(105) を入力とし、光子エネルギーがE2 の第2に光(107) の当該材料に対する透過光(106) を出力とする素子に関する。また、E1 とEg とE2 との間には、
E2 <Eg <E1
が成立していることはいうまでもない。

0174

本実施例は、第1の光(105) によって、第2の光の透過光(106) の光量または強度を制御する機能を有する。即ち、第1の光によって第2の光を制御する光素子としての機能を有する。

0175

以下において、素子を構成する当該材料(102) として、ダイヤモンドを用いた例を示す。図10において、(101) は第1の光を照射する手段であり、ダイヤモンドのエネルギーバンドギャップより高いエネルギー(光子エネルギー)に相当する波長(概略230nm より短波長)の光を照射する手段である。(104) は第2光を照射する手段であり、ダイヤモンドのエネルギーバンドギャップより低いエネルギー(光子エネルギー)に相当する波長の光(概略230nm より長波長)の光を照射する手段である。また、(103) はダイヤモンド(102) を透過した光(106) の光量または強度またはそのスペクトルの違いを検出する手段であり、公知の光検出手段(例えばフォトダイオード)によって構成される。

0176

本実施例は、実施例1〜4において説明した動作を行わすことができる。即ち、メモリー素子としても演算素子としも動作させることができる。

0177

また、(102) を構成する材料としては、ダイヤモンドの他に、光伝導効果と、励起されたキャリアを捕獲するトラップ準位と、エネルギーバンドギャップと、を有した材料であれば、基本的には用いることができる。そしてその際の、第1の光(105) や第2の光(107) 、さらには第1の光を照射する手段(101) 、第2の光を照射する手段(104) 、第2の光の透過光(106) の光量または強度を測定する手段(103) 等々は、利用する材料のエネルギーバンドギャップに鑑み、決定すればよい。

0178

以下にその一例を挙げる。
素子を構成する材料(102) :単結晶珪素(Eg =1.1eV 、約1130nmに相当)
第1の光(105) :波長780nm のレーザー光
第2の光(107) :波長1500nmのレーザー光
第1の光を照射する手段(101) :波長780nm のレーザー光を発するGaAlAs系半導体レーザ
第2の光を照射する手段(104) :波長1500nmのレーザー光を発するInP系半導体レーザー
透過光(106) を測定する手段(103) :波長1500nm付近に高い感度を有するGeを用いたフォトダイオード

0179

〔実施例6〕本実施例の概略の構成を図11に示す。図11において、図10と符号の同一のものは、実施例5において説明したのと同様である。図11に示す装置は、一対の電極(108) と(109) とを有している。また、図示はしないが、一対の電極(108) と(109) との間にバイアスを加える電源や、電極(108) と(109) との間を流れる光伝導電流を増幅するアンプや、その電流を測定する手段や、該手段によって得られたデータを処理する手段や、データを記憶する手段等が必要に応じて設けられる。

0180

この一対の電極間に電圧を加えた状態で、第2の光(107) を照射すると、図5に示すように、第1の光(105) の照射光量に比例した光伝導電流が一対の電極(108) と(109) との間に流れ、その値より第1の光(105) によって書き込まれた情報を読み出すことができる機能を有する。

0181

また、図11に示す装置は、図10に示す装置の機能をも当然有しているので、(106) の光の光量または強度によって得られる出力と、一対の電極(108) と(109)との間に流れる光伝導電流によって得られる出力の、2つの出力を有することになる。そして、この2つの出力は、それぞれ第1の光(105) の光量や波長、さらには光量と波長の組合せで作られた情報に対応する、という機能を有する。

0182

本実施例の構成を採ることで、1つの入力に対して2つの出力を有し、しかもメモリー機能を有する素子を得ることができる。出力として、光伝導電流を利用した場合であっても、実施例3並びに実施例4で示した動作をさせることができる。即ち、第2の光(読出光)(107] の一回の照射によって、次回の読出に際してどれほどの光伝導電流の低下があるか予め調べ、このデータに従って、第2の光(107) の照射の毎に第1の光を所定の光量でもって照射すれば、第2の光(107) の照射の毎に常に同じ光伝導電流の値が得られる構成を実現できる。

0183

〔実施例7〕本実施例は、実施例1または実施例2、さらには実施例6に示す構成において、ダイヤモンド薄膜(71)または素子を構成する材料(102) の代わりに炭化珪素(SiC) の薄膜を用いた例である。

0184

気相合成される炭化珪素のエネルギーバンドギャップは2〜3eV程度であり、仮に3eVと仮定するならば、相当する波長は約413nm となるので、紫外領域(400nm 以下) に強いスペクトルを有する水銀ランプを書込み光の光源として用い、波長633nm のHe-Neレーザー、または可視光領域や赤外線領域の光を発する各種半導体レーザーを読出光として利用することができる。その他、動作方法等については実施例1と同様である。また、実施例3の動作を本実施例の利用できることはいうまでもない。なお、本実施例以外の材料を用いる場合であっても、書込み光の波長及び読出光の波長は、当該材料のエネルギーバンドギャップによって定まることは前述の通りである。

0185

〔実施例8〕本実施例は、実施例1または実施例2、さらには実施例7に示す構成において、ディスク部(71)または素子を構成する材料(102) の代わりに、単結晶珪素を用いた例である。単結晶珪素のエネルギーバンドギャップは約1.1eV であり、このエネルギーに相当する波長はおよそ1130nmである。従って、書込み光としては、約1130nm以下の波長を有するGaAs系の可視光半導体レーザー(コンパクトディスクプレーヤーに用いられるものが良く知られている)を用いることができ、読出光としては、約1130nm以上の波長である1200〜1600nmの波長のレーザー光を発するInP系の半導体レーザー(光ファイバ通信に用いられるものとして知られている)を用いることができる。

0186

単結晶珪素は、エネルギーバンドギャップが約1.1eV と小さく、書き込まれる情報量(トラップ準位に捕獲されるキャリアの数)が、5eV以上のエネルギーバンドギャップを有するダイヤモンドに比較して相対的に少ないと考えられるので、確実な動作を期待できるのは、書込み光の照射光量の有無を読出光の透過光量を動作方法である。ただし、この動作方法は、一つのメモリ領域において情報として0か1の情報しか扱えないので、扱える情報量は少なくなる。勿論、書込み光の照射光量に対応する読出光の透過光量を細かく判定して、一つのメモリ領域において2種類以上の情報を扱うことのできる構成としてもよい。

0187

特定の物性を有する材料(例えばダイヤモンド)に、該材料のエネルギーバンドギャップの値によって定まる特定の波長より短い第1の光を照射し、しかる後に特定の波長より長い第2の光を照射し、その際の第2の光の透過光量を測定することで、前記第1の光に関する情報を得ることができる。そしてこのことを利用することで、全く新しい形式の光ディスクメモリー装置、あるいは演算装置を得ることができる。

0188

本発明の構成を利用した素子は、単なるメモリー機能に加えて、入力信号を積算して蓄える機能を有するので、このことを利用して、学習機能を有する演算素子を実現することができる。そしてこのような機能は、ニューラルネットワークの構成やカオス演算装置に応用することができ、さらには非ノイマン型のアナログコンピュターに広く利用することができる。

図面の簡単な説明

0189

図1ダイヤモンド薄膜に光を照射した際の光の波長に相当するエネルギーとダイヤモンド薄膜の光感度との関係を示す。
図2ダイヤモンド薄膜に紫外線を照射していった場合の照射時間と光伝導電流との関係、さらにその後の白色光の照射に従う光伝導電流を示す。
図3ダイヤモンド薄膜に紫外線を照射した場合の照射強度と明と暗の光伝導電流の比とを示す。
図4ダイヤモンド薄膜に紫外線を照射した場合の照射強度と、光伝導電流が90%飽和する時間との関係を示す。
図5ダイヤモンド薄膜に紫外線を照射した場合の照射光量と、白色光の照射に従う光伝導電流との関係を示す。
図6ダイヤモンド薄膜に紫外線を照射した後において照射される光の波長に相当するエネルギーと、その際の光伝導電流が90%減少する時間との関係を示す。
図7本発明を利用したディスクメモリー装置を示す。
図8本発明を利用したディスクメモリー装置を示す。
図9実施例の動作の例を示す。
図10 本発明を利用した光素子を示す。
図11 本発明を利用した光素子を示す。

--

0190

72回転軸
71ダイヤモンド薄膜
79書込み光
73 書込み光を照射する手段
77読出光
74 読出光を照射する手段
75透過光測定部
78 透過した読出光
702反射層
102素子を構成する材料
105 第1の光
107 第2の光
106 第2の光の透過光
101 第1の光を照射する手段
104 第2の光を照射する手段
103 透過光を検出する手段
108電極
109 電極

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