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目的
構成
概要
背景
一般に樹脂は、溶融状態から固定状態へ状態変化する過程において体積収縮を生ずる。その際の収縮量は温度変化や圧力と密接な関係がある。射出成形では、溶融した高温の樹脂が高圧で金型内部に射出されて冷却固化した後、大気圧下、室温下にて取り出される。溶融樹脂が型内部で冷却固化する過程で、樹脂物性や成形品形状に起因して成形品の各部分で温度むらや圧力むらが生じ、成形品各部分の収縮量に差が生じて全体的な変形である反りが発生する。反りが発生した成形品は、外観が損なわれるばかりでなく、他の部品に組み付ける場合には致命的な欠陥となるため、殆ど全てが不良品として扱われる。このような射出成形品の反りに対して、従来は主に成形条件の設定値変更や後加工を行って対処してきた。また成形条件の設定値としては金型温度、保持圧力、保持圧力時間、及び冷却時間が変更の対称となる場合が多く、後加工としては反りが発生した成形品を所定時間熱処理したり、型枠等により矯正するものがあった。
金型温度について射出成形では、射出工程開始前の金型温度を可動側と固定側で同じにしても、金型キャビティ形状(成形品形状)によって、金型内部の樹脂は均一には冷却されない。例えば、均一な肉厚の5つの平面で構成される箱物の射出成形品を考えると、この成形品を成形するための金型が凸状型(コア型)と凹状型(キャビティ型)で構成されることになる。この場合、射出工程開始前にコア型及びキャビティ型の温度を同じにしても、特に成形品角部においてコア型に接している樹脂の冷却速度が、キャビティ型に接している樹脂に比較して遅くなる。例えば金型内部の樹脂圧力が均一であっても、このような成形品各部の不均一な冷却が反り発生の原因となっていた。
概要
射出成形品の成形品の形状に対応して成形条件を設定したり、後加工によることなく成形品の反りを有効に防止する。
射出成形において、金型内への射出後であって保持圧力工程終了後の冷却完了前の任意時間経過後に、金型5a,5bを任意の距離だけ開いた状態で成形品4の冷却を開始或いは継続し、所定時間経過後、成形品を離型させるようにしたものである。
目的
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 1件
- 牽制数
- 2件
この技術が所属する分野
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技術分野
背景技術
0002
一般に樹脂は、溶融状態から固定状態へ状態変化する過程において体積収縮を生ずる。その際の収縮量は温度変化や圧力と密接な関係がある。射出成形では、溶融した高温の樹脂が高圧で金型内部に射出されて冷却固化した後、大気圧下、室温下にて取り出される。溶融樹脂が型内部で冷却固化する過程で、樹脂物性や成形品形状に起因して成形品の各部分で温度むらや圧力むらが生じ、成形品各部分の収縮量に差が生じて全体的な変形である反りが発生する。反りが発生した成形品は、外観が損なわれるばかりでなく、他の部品に組み付ける場合には致命的な欠陥となるため、殆ど全てが不良品として扱われる。このような射出成形品の反りに対して、従来は主に成形条件の設定値変更や後加工を行って対処してきた。また成形条件の設定値としては金型温度、保持圧力、保持圧力時間、及び冷却時間が変更の対称となる場合が多く、後加工としては反りが発生した成形品を所定時間熱処理したり、型枠等により矯正するものがあった。
0003
金型温度について射出成形では、射出工程開始前の金型温度を可動側と固定側で同じにしても、金型キャビティ形状(成形品形状)によって、金型内部の樹脂は均一には冷却されない。例えば、均一な肉厚の5つの平面で構成される箱物の射出成形品を考えると、この成形品を成形するための金型が凸状型(コア型)と凹状型(キャビティ型)で構成されることになる。この場合、射出工程開始前にコア型及びキャビティ型の温度を同じにしても、特に成形品角部においてコア型に接している樹脂の冷却速度が、キャビティ型に接している樹脂に比較して遅くなる。例えば金型内部の樹脂圧力が均一であっても、このような成形品各部の不均一な冷却が反り発生の原因となっていた。
発明が解決しようとする課題
0004
そしてこれら従来の成形条件の設定値変更によって反りの発生を防止しようとする場合、以下のような諸問題を生じた。即ち、反りの発生を防止するために樹脂の種類や成形品の形状ごとに、それぞれ成形条件の設定値を変更するのは生産性を損なうのみならず、樹脂の種類によっては、成形条件が大きな制約を受ける場合があり、反りが許容値内となるように成形条件を設定できないこともある。そして反りを低減したり、防止したりするためには、保持圧力、保持圧力時間及び冷却時間を増加させることが経験的に知られているが、これらはバリの発生や成形サイクル時間の増加等の不具合を発生することがある。加えて前記した反り発生メカニズムから金型温度、保持圧力、保持圧力時間及び冷却時間を組み合わせて考える必要があり、またこれらを定量的に操作する手法がないため、成形条件の変更に時間を浪費し、これまた生産性を損ねる等の欠点があった。また後加工によって反りを修正しようとする場合も、成形品の形状によっては、熱処理によって反りを助長したり、ねじれ等他の変形を誘発する場合があるので、型枠等で矯正可能な成形品は、概ね形状の簡単なものに限られる。従って成形後加工は生産性向上に対する阻害要因の1つであった。
課題を解決するための手段
0005
このため本発明は、射出成形において、金型内への射出後であって保持圧力工程終了後の冷却完了前の任意時間経過後に、金型を任意の距離だけ開いた状態で成形品の冷却を開始或いは継続し、所定時間経過後、成形品を離型させることができるようにしたもので、これを課題解決のための手段とするものである。また本発明は、射出成形機周辺の雰囲気温度、射出時の樹脂温度、射出前の型閉工程開始から保持圧力工程終了後の型開工程開始までの金型温度、及び射出工程開始から保持圧力工程終了後の型開工程開始までの金型内樹脂圧力を、温度センサ及び圧力センサにより、一連の工程中に実時間で検出して射出工程開始から型開工程開始までの成形品の冷却状態及び圧力状態を解析する装置を具備し、さらに成形品の冷却状態及び圧力状態の解析結果から、成形品に反りを生じない金型を開くタイミングや金型を開いて成形品を冷却する時間を自動設定又は任意設定する装置を具備してなるもので、これを課題解決のための手段とするものである。
0006
本発明では、前記手段によって金型内への射出後であって、保持圧力工程終了後の冷却完了前の任意時間経過後に金型を任意量開いて成形品を冷却することにより、成形品が金型に接する部分と空気に接する部分ができ、保持圧力工程中に成形品各部において金型との関係において相対的に冷却速度が大きかった(小さかった)部分が逆に小さく(大きく)なり、型開状態での冷却時間を適当に設定すれば、射出工程開始から成形品取り出しまでの成形品各部の平均的な冷却速度が同じになって結果的に反り発生を防止することができる。これによれば、反り防止のための保持圧力、保持圧力時間、冷却時間等の複雑な成形条件の設定、変更が不要であり、また反り防止に伴う他の成形不良や不具合も発生しない。また後加工による反りの矯正といった余分な工程も完全に除去できる。
0007
更に成形機周辺の雰囲気温度、射出樹脂温度、射出前の型閉工程開始から保持圧力工程終了後の型開工程開始までの金型温度、及び射出工程開始から保持圧力工程終了後の型開工程開始までの金型内樹脂圧力を温度センサ、及び圧力センサにより一連の工程中に実時間で検出して、射出工程開始から型開工程開始までの成形品の冷却状態及び圧力状態を解析することにより、反り防止のための金型を開くタイミングや金型を開いて成形品を冷却する時間の最適値を1サイクル毎に自動的に設定、修正し、反り不良の無い成形品を連続生産できる。
0008
以下本発明の実施例を図面について説明する。先ず本発明の実施例について図1〜図3により説明すると、図1〜図3は本発明の射出成形方法による射出成形の工程の1例を示したものであり、図4はそのフローチャートを示したものである。図1はスクリュ6で可塑化溶融された樹脂が、射出工程において同スクリュ6により固定金型5aと可動金型5bとによって形成された金型キャビティ内に射出されて充満し、保持圧力工程を終了した時点の状態を示す。従来の射出成形では、保持圧力工程終了後、図1に示すように金型を閉じた状態で直ちに冷却工程へと移行し、冷却工程終了後、直ちに金型を開いて成形品を取り出す。ところが本発明では、保持圧力工程終了後、予め設定した時間だけ金型5a,5bを閉じた状態で成形品を冷却し、設定時間経過後金型を開く。ここで設定時間は0秒以上であれば何秒でもかまわない。更に図1に示したように金型5a,5bを開いた状態で所定時間だけ成形品4を冷却する。この所定時間は適宜設定、変更が随時可能であり、0秒以上であれば何秒でも構わない。そして所定時間に達したら、従来と同様突出しピン等によって成形品を離型させ取り出す。
0009
ここで本発明の射出成形機の成形品反り不良防止の効果を、図5に示したポリプロピレン(PP)樹脂の箱物成形品の成形を例にして説明する。箱物成形品の場合、図5の中で示したように通常、A面やB面の撓みが他の3つの面に比較して大きくなる。そこでここでは、A面の中で撓みが最も大きい箇所での撓み量をその成形品の反り量とした。また図6に示したように、可動金型方向に凸となる反りを内反りとして正の値で示し、固定金型方向に凸となる反りを外反りとして負の値で示した。そして図7に結果を示すと、横軸が従来の射出成形の冷却工程で定める冷却時間、縦軸は反り量を示す。本発明の射出成形機で得た成形品の冷却条件は、保持圧力工程終了後、直ちに金型を取り出し位置まで開いて、その状態で成形品を冷却し、所定時間(冷却時間)経過後成形品を取り出すものとした。
0010
通常冷却とは保持圧力工程終了後、金型を閉じた状態で成形品を冷却する従来射出成形の冷却方法である。なお前記両者の成形品において冷却条件以外の成形条件は全て同じである。また冷却時間10秒の場合、通常冷却での成形品は内反り量は0.42mmであるのに対し、本発明では外反りで反り量は0.55mmであった。また本発明で冷却時間を5秒にした場合、内反りとなり反り量は0.27mmであった。本発明の2つのデータを直線で結ぶと、冷却時間が約6.8秒のところで反り量が0となることが分かる。これは本発明の射出成形機が、金型を開いて成形品を冷却する時間を制御することで成形品の反り量を制約でき、さらに容易に反り防止を達成できることを示している。金型を開くタイミングや金型を開いて成形品を冷却する時間の設定は、射出成形機の制御盤に取り付けられた設定器によって極めて簡単に行える。更に図7に示したように、従来の射出成形機で得た成形品の反り量と同様の反り量を本発明の射出成形機で達成する場合、この実験では、本発明の冷却時間が従来に比較して約60%短縮できることが明らかであり、成形サイクル時間も短縮できる。
0011
次に本発明の射出成形機が、成形品の反りを防止できるメカニズムについて説明する。図8に前記の実験で成形した箱物成形品角部のキャビティ側金型とコア側金型内での射出、充填後の伝熱状態を模式的に示した。これは成形品形状のため、成形品角部内側の熱流束が外側より大きく、内側の冷却速度が外側に比較して小さくなる。そのため樹脂の特性から、成形品角部内側の収縮率が外側に比較して大きくなり、成形品の各面がコア型方向に凸となる内反りを発生しようとする。本発明では、保持圧力工程終了後の任意時間経過後に、図9に示したように金型を開いて成形品を冷却するため、金型内では相対的に冷却速度が大きかった成形品角部外側が、大気にさらされて逆に成形品角部内側の冷却速度より小さくなる。このため成形品角部外側の収縮量が内側より大きくなり、キャビティ型の方向に凸となる外反りを発生しようとする。そこで前記の一連の相反する方向への反り現象を利用して、保持圧力工程終了後の金型を開くタイミング及び金型を開いた状態で成形品を冷却する時間を適当に決定すれば、結果的に成形品の反りの発生を無くすることができる。
0012
図10は本発明の射出成形機の構成の1例を示す。また図11は図10の射出成形機を使用して、成形品反り防止を達成するための1例をフローチャートで示したものである。可塑化工程終了後の型閉工程開始から保持圧力工程終了までの金型温度及び成形機周辺の雰囲気温度を温度センサ13〜16及び温度センサ12で検出すると共に、射出時の樹脂温度を温度センサ19で検出し、温度変換器100に入力する。射出工程開始から保持圧力工程終了までの金型内樹脂圧力を圧力センサ17,18で検出して圧力変換器200へ入力する。保持圧力工程終了後、金型内樹脂の冷却状態及び圧力状態を検出した値、樹脂物性データベース、樹脂と金型5a,5bや雰囲気との熱伝達率、P−V−Tデータベース等を使用して、成形機に設けた解析装置300によって解析する。その解析結果を基に、保持圧力工程終了から金型5a,5bを開くまでの時間及び金型5a,5bを開いた状態での冷却時間の反り防止に対する最適値を算出し、金型解放条件自動設定、変換器400によって条件設定、変更を成形中に実時間で行う。即ち、本発明の射出成形機によれば、反り防止に対して人為的に何ら条件を設定する必要がなく、しかも樹脂温度、樹脂圧力、金型温度及び雰囲気温度が異なっても、反り防止の最適条件を自動的に設定することができる。また可塑化条件や射出条件等、金型動作以外の成形条件には全く影響を与えないため、反り防止に伴う他の成形不良が発生しない。
発明の効果
0013
以上詳細に説明した如く本発明によれば、金型内への射出後であって射出成形の冷却完了前の保持圧力工程終了後の任意時間経過後に、金型を任意の距離だけ開いた状態で成形品の冷却を開始或いは継続し、所定時間経過後、成形品を離型させればよく、成形品の反りを防止するための条件設定が極めて簡単で、保持圧力、保持圧力時間、冷却時間等の複雑な成形条件の設定や変更が不要となる。また反り防止に伴う他の成形不良や不具合も発生しない。更に後加工による反りの矯正といった余分な工程も完全に除去できる。また本発明は射出成形装置周辺の雰囲気温度、射出時の樹脂温度、射出前の型閉工程開始から保持圧力工程終了後の型開工程開始までの金型温度、及び射出工程開始から保持圧力工程終了後の型開工程開始までの金型内樹脂圧力を、温度センサ及び圧力センサにより一連の工程中に実時間で検出して、射出工程開始から型開工程開始までの成形品の冷却状態及び圧力状態を解析し、更に成形品の冷却状態及び圧力状態の解析結果から、成形品に反りを生じない金型を開くタイミングや、金型を開いて成形品を冷却する時間を自動設定する射出成形装置として、成形品を冷却するため成形品の反り防止に対して人為的に何ら条件を設定する必要がなく、成形品反りに対する成形機管理や検査工程を省くことができ、生産性が向上する。
図面の簡単な説明
0014
図1本発明の実施例に係る反り不良防止機能付射出成形機の成形品の離型工程を示す断面図である。
図2本発明の実施例に係る反り不良防止機能付射出成形機の成形品の図1に続く離型工程を示す断面図である。
図3本発明の実施例に係る反り不良防止機能付射出成形機の成形品の図2に続く離型工程を示す断面図である。
図4本発明の成形工程を示すフロー図である。
図5本発明の成形品の外観斜視図である。
図6本発明の成形品の反りの状態を示す説明図である。
図7反り防止効果の確認実験の結果を示す説明図である。
図8本発明の反り発生のメカニズムを示す説明図である。
図9本発明の反り防止のメカニズムを示す説明図である。
図10本発明の実施例に係る射出成形装置の構成例を示す系統図である。
図11本発明の射出成形装置の成形工程を示すフロー図である。