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目的
構成
概要
背景
鋼帯の連続処理プロセスは一般的に広く採用されている。例えば、冷延鋼板の連続焼鈍方法は、鋼板を連続的に加熱、均熱処理した後に、冷却、さらには必要に応じて過時効処理を施すものであり、また、溶融亜鉛めっき鋼板や合金化溶融亜鉛めっき鋼板の連続製造方法は、鋼帯を連続的に加熱、均熱、冷却処理した後に、さらに溶融亜鉛めっき処理や合金化処理を施すものである。
連続焼鈍プロセスの加熱処理方法として、古くはバーナーによる酸化炉が使用されていたが、鋼帯が酸化されるために加熱速度が制限される問題があった。この問題点を解消するために、いわゆるNOF(無酸化炉)や広義にはNOFに含められるDFF(直火型加熱還元炉)、オールラジアントチューブ型加熱炉などが開発されており、現在の連続熱処理装置はほとんどすべてこれら2種の加熱方法のいずれかを採用している。加熱初期は例外もあるが、いずれの場合でも焼鈍による鋼板組織の再結晶と、雰囲気中への水素添加により還元性にすることによるFe酸化物のFeへの還元を兼ねている。
通常の一般軟鋼では一応問題なくこれらの従来技術で製造することができるが、各種の特性を得るために鋼板に各種の添加元素を入れた場合には問題の生じることがあった。例えば、SiやMn、Crを添加した高張力鋼板の場合には通常の還元焼鈍条件ではこれらの元素は酸化されるために選択酸化され、焼鈍後にはこれら元素の酸化物の表面濃化層が著しく生成する。すなわち鋼板表面は金属鉄ではなく、これら元素の酸化物に覆われているために、化成処理性、塗装性、溶融亜鉛めっき性、電気めっき性などに著しく劣る。特に、高張力鋼板の場合には合金元素の添加量が多いために顕著に表れ、例えば溶融亜鉛めっき時に不めっきが発生し、全く製品にならず、不めっきに至らないまでもめっき密着性を阻害する。
高張力鋼板ほど顕著ではないが、一般軟鋼でも少量含有されているFeよりも酸化され易い元素の表面濃化皮膜で覆われていることにかわりはなく、実は実害が表面化していないだけで潜在的に不良要因を抱えているものであった。すなわち、上記の品質の処理条件により実用上無害化されているだけであり、処理条件によっては不良化し得るものであり、表面濃化層がなければさらなる品質の向上が期待できるものである。
これら現行プロセスの改善策として、特開平2—213460号には焼鈍後の冷却段階にてプラズマ処理することにより化成処理性を向上させる技術、特開平4−337057号にはプラズマエッチングまたはイオンビームエッチングを施した鋼帯を溶融めっきする技術が提案されており、また、特開平4—52211号には還元性ガスのプラズマジェットにより加熱すると共に酸化膜を還元する技術が提案されている。
特開平2—213460号は鋼帯にプラズマ化したガスを衝突させて連続的に移動する鋼帯表面を均一に処理し、極低炭素鋼帯の化成処理性を改善しようとするものである。通常、大気圧下での加熱処理用に使用されているプラズマトーチは図4に示す構造をしており、同心円状に位置され電源14に接続された陽極13と陰極12の間隙にアークを発生させ、該間隙に処理ガスを矢印15で示すように供給することによって、処理ガスをプラズマ化させ、高温の熱プラズマのジェット17としてトーチ先端から鋼板1に噴出させるものである。16は冷却孔である。一般に、このようなタイプの大気圧下でのプラズマは熱的ピンチ効果によって収束した円柱状に近いいわゆるプラズマジェットとなり、広い面積を均一に処理するには適さない。
したがって、特開平2—213460号に開示された技術では処理雰囲気を減圧とし直流グロー放電ないしは高周波誘起グロー放電プラズマとして広い面積を均一に処理するようにしている。しかし、このような減圧条件は、鋼帯が700℃を超える高温にあるときは、鋼帯の出入り口での大気雰囲気との遮断が困難であるため、工業的には高々700℃まででしか実現できない。
したがって、特開平2—213460号に開示された技術では鋼帯の連続焼鈍後の冷却段階で処理するのであるが、このような段階では、上述したような、鋼中の酸化され易い成分の表面濃化はすでに生じてしまっており、特開平2—213460号に具体的な実施例として開示されるような合金成分含有量の著しく少ない極低炭素鋼板などは別として、プラズマ処理によっても、十分な表面処理性の改善は望めない。また、減圧状態を維持するための大がかりな真空排気装置とシール装置が必要であり設備的に過大な負担が要求される欠点もある。
特開平4−337057号に開示された技術も減圧を前提とする点で特開平2−213460号に開示された技術と同様の欠点を有する。
特開平4—52211号は、図4に示すような通常のプラズマトーチに作動ガスとして水素等の還元性ガスを用いてプラズマジェットとしこれによって、鋼帯の加熱と表面酸化膜の還元を同時に行おうというものである。しかしこのようなプラズマジェットが広い面積の均一な処理には本来適さないものであることは前述した通りである。特に、このようなプラズマジェットは減圧プラズマに比較して、電離したガス分子と電子の両方ともが超高温となっており、トーチを鋼帯に近接させると、処理むらが発生するだけでなく、鋼帯の部分的な熱歪や場合によっては溶融をも引きおこすので、鋼帯とはできるだけ離隔して配置することが必要となる。
しかし、トーチを鋼帯から離隔して配置することは、折角プラズマ化して反応性の高まっているガスの鋼帯との直接反応の機会を低下させることに他ならない。したがって、鋼帯表面の酸化物のうちでも比較的還元され易い鉄等の酸化物は還元され、見かけ上酸化膜厚が減少するが、めっきや化成処理等の表面処理性に重大な影響をおよぼすSi,Mn,Cr等の酸化物は依然として鋼帯表面に残存する結果となる。
以上述べたように、折角、高温度、高活性であるプラズマを利用して鋼帯の表面をめっきや化成処理等の表面処理に適した状態に改質しようとする試みは、十分にその目的を達しているとは言い難いのである。
概要
金属帯の連続処理時に、金属帯表面をその後のめっきや化成処理に適したものに改質する方法および装置の提供。
鋼帯を連続的に加熱帯、均熱帯、冷却帯を通板して熱処理する、鋼帯の連続熱処理工程において、鋼帯温度が700℃以上の位置において、走査型熱プラズマ発生装置によって鋼帯表面に熱プラズマを照射する表面処理性の優れた鋼帯の連続製造方法および装置。鋼帯温度が700℃以上の加熱帯および/または均熱帯の少なくとも一部において走査型熱プラズマで処理するのがよい。
目的
本発明は、鋼帯を連続的に熱処理するに際し、鋼帯表面をその後のめっきや化成処理に適したものに改質する方法であって、従来のプラズマ処理において成し遂げられなかった処理の均一性と優れた改質効果を達成することを目的とする。
効果
実績
- 技術文献被引用数
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請求項1
鋼帯を連続的に加熱帯、均熱帯、冷却帯を通板して熱処理する、鋼帯の連続熱処理工程において、鋼帯温度が700℃以上の位置において、走査型熱プラズマ発生装置によって鋼帯表面に熱プラズマを照射することを特徴とする表面処理性の優れた鋼帯の連続製造方法。
請求項2
鋼帯温度が700℃以上の位置が加熱帯および/または均熱帯の少なくとも一部である請求項1に記載の表面処理性の優れた鋼帯の連続製造方法。
請求項3
鋼帯の加熱帯、均熱帯、冷却帯を順次連接してなる、鋼帯の連続熱処理装置において、鋼帯温度が700℃以上の位置において、走査型熱プラズマ発生装置を配置してなることを特徴とする表面処理性の優れた鋼帯の連続製造装置。
請求項4
走査型熱プラズマ発生装置は鋼帯温度が700℃以上の加熱帯および/または均熱帯の少なくとも一部に配置されている請求項3に記載の表面処理性の優れた鋼帯の連続製造装置。
技術分野
背景技術
0002
鋼帯の連続処理プロセスは一般的に広く採用されている。例えば、冷延鋼板の連続焼鈍方法は、鋼板を連続的に加熱、均熱処理した後に、冷却、さらには必要に応じて過時効処理を施すものであり、また、溶融亜鉛めっき鋼板や合金化溶融亜鉛めっき鋼板の連続製造方法は、鋼帯を連続的に加熱、均熱、冷却処理した後に、さらに溶融亜鉛めっき処理や合金化処理を施すものである。
0003
連続焼鈍プロセスの加熱処理方法として、古くはバーナーによる酸化炉が使用されていたが、鋼帯が酸化されるために加熱速度が制限される問題があった。この問題点を解消するために、いわゆるNOF(無酸化炉)や広義にはNOFに含められるDFF(直火型加熱還元炉)、オールラジアントチューブ型加熱炉などが開発されており、現在の連続熱処理装置はほとんどすべてこれら2種の加熱方法のいずれかを採用している。加熱初期は例外もあるが、いずれの場合でも焼鈍による鋼板組織の再結晶と、雰囲気中への水素添加により還元性にすることによるFe酸化物のFeへの還元を兼ねている。
0004
通常の一般軟鋼では一応問題なくこれらの従来技術で製造することができるが、各種の特性を得るために鋼板に各種の添加元素を入れた場合には問題の生じることがあった。例えば、SiやMn、Crを添加した高張力鋼板の場合には通常の還元焼鈍条件ではこれらの元素は酸化されるために選択酸化され、焼鈍後にはこれら元素の酸化物の表面濃化層が著しく生成する。すなわち鋼板表面は金属鉄ではなく、これら元素の酸化物に覆われているために、化成処理性、塗装性、溶融亜鉛めっき性、電気めっき性などに著しく劣る。特に、高張力鋼板の場合には合金元素の添加量が多いために顕著に表れ、例えば溶融亜鉛めっき時に不めっきが発生し、全く製品にならず、不めっきに至らないまでもめっき密着性を阻害する。
0005
高張力鋼板ほど顕著ではないが、一般軟鋼でも少量含有されているFeよりも酸化され易い元素の表面濃化皮膜で覆われていることにかわりはなく、実は実害が表面化していないだけで潜在的に不良要因を抱えているものであった。すなわち、上記の品質の処理条件により実用上無害化されているだけであり、処理条件によっては不良化し得るものであり、表面濃化層がなければさらなる品質の向上が期待できるものである。
0006
これら現行プロセスの改善策として、特開平2—213460号には焼鈍後の冷却段階にてプラズマ処理することにより化成処理性を向上させる技術、特開平4−337057号にはプラズマエッチングまたはイオンビームエッチングを施した鋼帯を溶融めっきする技術が提案されており、また、特開平4—52211号には還元性ガスのプラズマジェットにより加熱すると共に酸化膜を還元する技術が提案されている。
0007
特開平2—213460号は鋼帯にプラズマ化したガスを衝突させて連続的に移動する鋼帯表面を均一に処理し、極低炭素鋼帯の化成処理性を改善しようとするものである。通常、大気圧下での加熱処理用に使用されているプラズマトーチは図4に示す構造をしており、同心円状に位置され電源14に接続された陽極13と陰極12の間隙にアークを発生させ、該間隙に処理ガスを矢印15で示すように供給することによって、処理ガスをプラズマ化させ、高温の熱プラズマのジェット17としてトーチ先端から鋼板1に噴出させるものである。16は冷却孔である。一般に、このようなタイプの大気圧下でのプラズマは熱的ピンチ効果によって収束した円柱状に近いいわゆるプラズマジェットとなり、広い面積を均一に処理するには適さない。
0008
したがって、特開平2—213460号に開示された技術では処理雰囲気を減圧とし直流グロー放電ないしは高周波誘起グロー放電プラズマとして広い面積を均一に処理するようにしている。しかし、このような減圧条件は、鋼帯が700℃を超える高温にあるときは、鋼帯の出入り口での大気雰囲気との遮断が困難であるため、工業的には高々700℃まででしか実現できない。
0009
したがって、特開平2—213460号に開示された技術では鋼帯の連続焼鈍後の冷却段階で処理するのであるが、このような段階では、上述したような、鋼中の酸化され易い成分の表面濃化はすでに生じてしまっており、特開平2—213460号に具体的な実施例として開示されるような合金成分含有量の著しく少ない極低炭素鋼板などは別として、プラズマ処理によっても、十分な表面処理性の改善は望めない。また、減圧状態を維持するための大がかりな真空排気装置とシール装置が必要であり設備的に過大な負担が要求される欠点もある。
0010
特開平4−337057号に開示された技術も減圧を前提とする点で特開平2−213460号に開示された技術と同様の欠点を有する。
0011
特開平4—52211号は、図4に示すような通常のプラズマトーチに作動ガスとして水素等の還元性ガスを用いてプラズマジェットとしこれによって、鋼帯の加熱と表面酸化膜の還元を同時に行おうというものである。しかしこのようなプラズマジェットが広い面積の均一な処理には本来適さないものであることは前述した通りである。特に、このようなプラズマジェットは減圧プラズマに比較して、電離したガス分子と電子の両方ともが超高温となっており、トーチを鋼帯に近接させると、処理むらが発生するだけでなく、鋼帯の部分的な熱歪や場合によっては溶融をも引きおこすので、鋼帯とはできるだけ離隔して配置することが必要となる。
0012
しかし、トーチを鋼帯から離隔して配置することは、折角プラズマ化して反応性の高まっているガスの鋼帯との直接反応の機会を低下させることに他ならない。したがって、鋼帯表面の酸化物のうちでも比較的還元され易い鉄等の酸化物は還元され、見かけ上酸化膜厚が減少するが、めっきや化成処理等の表面処理性に重大な影響をおよぼすSi,Mn,Cr等の酸化物は依然として鋼帯表面に残存する結果となる。
発明が解決しようとする課題
0014
本発明は、鋼帯を連続的に熱処理するに際し、鋼帯表面をその後のめっきや化成処理に適したものに改質する方法であって、従来のプラズマ処理において成し遂げられなかった処理の均一性と優れた改質効果を達成することを目的とする。
課題を解決するための手段
0015
本発明者らは鋼板を高速で走行させ大量に処理する連続プロセスにおいて、高速度で表面改質処理する手段として熱プラズマ処理を有効に活用することに着目した。しかし、熱プラズマ処理を単純に、連続熱処理プロセスに適用するのみでは十分な表面処理性の達成が不可能であったことは前述したとおりである。
0016
ところで、最近、スリット状電極空間にアークを発生させ、スリット内から噴出すガスによってプラズマジェット化し、これを電極外側に設けた交番磁界によってスリット長手方向に走査する、走査型熱プラズマ発生装置が考案されている(特開平4−175000号、特開平04−262398号参照)。
0018
すなわち、本発明の第1の態様によれば、鋼帯を連続的に加熱帯、均熱帯、冷却帯を通板して熱処理する、鋼帯の連続熱処理工程において、鋼帯温度が700℃以上の位置において、走査型熱プラズマ発生装置によって鋼帯表面に熱プラズマを照射することを特徴とする表面処理性の優れた鋼帯の連続製造方法が提供される。
0019
また、本発明の第2の態様によれば、鋼帯の加熱帯、均熱帯、冷却帯を順次連接してなる、鋼帯の連続熱処理装置において、鋼帯温度が700℃以上の位置において、走査型熱プラズマ発生装置を配置してなることを特徴とする表面処理性の優れた鋼帯の連続製造装置が提供される。
0020
また、上記発明において、鋼帯温度が700℃以上の加熱帯および/または均熱帯の少なくとも一部において熱プラズマ照射するのが好ましい。
0021
以下に、本発明の具体的態様とその作用について詳述する。本発明が対象とする鋼帯の連続熱処理工程は、鋼帯を連続的に加熱帯、均熱帯、冷却帯を通板する工程を基本構成とするが、加熱帯の前に、予熱帯や通常の酸洗、脱脂設備工程を有していても良い。また、冷却帯は徐冷、急冷のいずれでも良く、また過時効帯を含むものであっても良い。さらに、冷却帯から引き続き、鋼帯を溶融めっき浴に導入し溶融めっきまで一貫して行う、連続溶融めっき工程の一部としての連続熱処理工程であっても良い。
0023
図1に連続熱処理と溶融亜鉛めっき工程を連続した一般的な溶融亜鉛めっきラインにおいて本発明を適用した例を示す。1は鋼帯などの金属帯、2は加熱帯、3は均熱帯、4は冷却帯である。また2、3、4の各処理帯で熱処理された鋼帯は、引き続き、溶融亜鉛めっき浴6に浸漬され、ワイピング装置7によって目付け量を調整され、必要に応じて合金化炉8において加熱、合金化処理されて所望の溶融亜鉛めっき鋼板が製造される。
0024
図1の例では、加熱帯2の最後端位置および均熱帯3の最後端位置において熱プラズマ処理帯5を設けて、走査型熱プラズマ処理を行えるようにしている。熱プラズマ処理帯は後述するように加熱帯および/または均熱帯の少なくとも一部に、これを配置して行えば良い。
0025
図2には熱プラズマ処理装置の構成の一例を示す。熱プラズマ処理帯5においては、熱プラズマ発生装置10を鋼帯の少なくとも一方の面側に配設し、これによるプラズマにより鋼帯1をプラズマ処理し、排気孔より排気する。このとき、プラズマ処理帯5をシールする必要があるときには、例示するようなシール装置9によりシールする。本発明においては、プラズマ発生装置として、図3に例示するような走査型プラズマ発生装置を用いるのが好ましい。
0026
本発明で使用する走査型熱プラズマ発生装置は、特開平4−175000号、特開平04−262398号に開示された形式のものが好適に使用できる。すなわち、図3に示すように、スリット状空間を挟んで電源14に接続された陽極13および陰極12を対置させ、その周囲に電源19に接続された交番磁界発生装置18を具備させる。この状態で処理ガスを矢印15で示すように供給して電流を印加すると先端のある1点でプラズマが発生するので、そのプラズマを交番磁界により走査させることによりスリット長手方向に走査する。結果的にプラズマをスリット状のジェット17とすることができるので、これを鋼帯に照射すれば鋼帯の全面を均一に処理することができる。プラズマの走査速度が遅いと板を均一に処理できなくなるので、走査速度の早い方が良好であり、100m/秒、好ましくは500m/秒が必要である。
0027
このプラズマは大気圧または大気圧に近い圧力で作動可能であるので、大がかりな差圧シール設備が不要となる。多少の圧力差が必要な場合や雰囲気組成を加熱帯前後で変える場合、鋼板との熱交換後の高温のプラズマ排ガスを回収する場合(エネルギー回収または排ガスが前後の雰囲気に外乱を及ぼす場合)には図2に示すような簡単なシール装置を設置し、加熱帯部分をボックス化する。その場合でも圧力差が小さいので、現在の連続炉でも常圧下で雰囲気制御するために使用されている程度の簡単なシール装置で十分である。通常は雰囲気ガス組成と同一の作動ガスを使用すればよく、アルゴンガス、窒素ガス、必要に応じて水素ガス、メタンガスを使用すれば良い。
0030
上述した本発明で用いる走査型プラズマ照射処理の表面改質処理の効果を調査したところ、その効果は特開平4—52211号で言われているFe酸化膜の還元効果や、特開平2—213460号で言われているイオン窒素化、イオン浸炭、表面の活性化等による化成処理性改善効果だけではないことを見いだした。すなわち、鋼板表面の各種のクリーニング効果があることを見いだした。
0031
第1の効果は加熱途中に走査型プラズマ照射処理することにより、表面濃化が起こらなくなることを見いだした。具体的には高張力鋼板でその効果が顕著に表れるが、Si,Mn,Cr,A1,Ti,B等のFeよりも易酸化性であり、通常は表面濃化する元素が表面濃化しなくなる。もちろん加熱帯と均熱帯ともに全て走査型プラズマ加熱処理とし、加熱と表面改質処理を兼ねても効果はある。ところが、加熱途中の一部で走査型プラズマ照射処理を鋼帯全面に行うだけでも、十分に、その後の表面濃化を抑制できることを見いだした。従って、現行の加熱プロセスの一部にて走査型プラズマ照射処理を行うことにより効果を発揮できる。また、加熱作用を利用しても良いし、表面改質作用のみを利用しても良いが、補助的に加熱作用を利用する方がエネルギー的に効率的である。
0032
走査型プラズマ照射処理には処理時の鋼板温度の影響があり、板温度が高温ほど効果的である。通常プロセスの場合、Si,Mn,Cr,A1,Tiなどは鋼板の再結晶温度を超える温度から表面濃化し始めるが、これは、これら元素が表面で酸化され、粒界を経由して鋼板内部からこれら元素が移動するためである。この粒界生成と関係があると思われ、走査型プラズマ照射処理時の鋼板温度が鋼板の再結晶温度以下ではその効果は小さく、再結晶温度を超えると極めて効果的である。再結晶温度は鋼板組成により異なるが、プラズマ処理時の鋼板温度として700℃以上が好ましく、さらには750℃以上、800℃以上がより好ましい。これら温度以下ではプラズマ走査処理の表面改質効果は小さいが、効果は認められ、主に加熱手段として使用しても問題はない。
0033
これらの効果はFe酸化膜の還元効果や表面の活性化では説明することができない。その効果の原因はいまだ全て明らかとは言えないが、むしろ鋼板表面や粒界を結果的に不活性化させることにより、Si,Mn,Crなどの表面濃化を抑制していると思われる。
0034
第2の効果は走査型プラズマ照射処理によりSi,Mn,Cr,A1,Ti,B等のFeよりも易酸化性元素の表面濃化酸化物皮膜を除去する作用を見いだした。従って、均熱帯の出側で走査型プラズマ照射処理することにより効果を発揮できる。均熱帯ではプラズマ処理温度の影響は認められず、材質を得るための温度でよい。これは既に再結晶しており、粒界が生成しているためと思われる。
0035
均熱帯内での走査型プラズマ処理を行う場所では均熱帯出側が最も効果的であったが、入り側や途中でも十分な効果がある。
0036
これらの効果もFe酸化膜の還元効果やイオン窒素化、浸炭、表面の活性化などからは予見されないものである。この効果の原因はいまだ全て明らかとは言えないが、プラズマ目身の温度が数万℃と高いことから、鋼板再表面の極めて薄い層がプラズマ化して除去されることや蒸発、スパッタリングしている可能性が考えられる。
0037
第1の効果と第2の効果、つまり、表面濃化防止作用と表面濃化物除去作用とを合わせ持つために、加熱帯と均熱帯の一部のいずれかで走査型プラズマ照射処理をすればその効果を発揮できる。もちろん一部だけでなくてもかまわず、加熱帯と均熱帯両方であってもかまわない。
0038
また、冷却帯で昇温を伴うプラズマ処理を行うという非効率的なプロセスは不要である。
0039
連続処理プロセスではいわゆるCALの場合、鋼帯を所定の温度に昇温後均熱帯にて均熱し、その後冷却し、冷延鋼板を製造するが、加熱帯および/または均熱帯で走査型プラズマ照射処理すれば良い。CGLの場合、鋼帯を所定の温度に昇温後均熱帯にて均熱するが、加熱帯および/または均熱帯で走査型プラズマ照射処理し、その後冷却し、溶融亜鉛めっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっき鋼板を製造する。合金化溶融亜鉛めっき鋼板はその後直ちに加熱により合金化処理して製造する。
0040
この走査型プラズマ処理により従来の熱プラズマ処理と比較して以下の利点が得られる。これらの利点により初めてプラズマによる表面改質を鋼帯の連続プロセスとして実用に耐え得るものとなった。
温度分布が均一であり、熱歪みの発生がない。
鋼板の全面を均一に表面改質処理できる。
プラズマトーチの数を著しく削減できる。
常圧の炉が使用でき、大がかりな差圧シール設備が不要。
高速で表面改質処理できる。
既設の連続焼鈍炉を小規模の改造により適用できる。
すなわち、現有の連続焼鈍炉の加熱帯出側や均熱帯出側に一部のみプラズマスキャン設備を迫加すれば良い。
0042
表面特性が改善される。特にFeよりも易酸化性元素は通常表面濃化層として表面を覆っているが、表面濃化層が著しく少ない鋼板を得られる。従って、優れた化成処理性、塗装性、溶融亜鉛めっき性、電気めっき性が得られる。
0043
特に高張力鋼板の場合に効果的であり、Si,Mn,Cr,A1,Ti,B等の表面濃化皮膜が著しく少ない鋼板が得られる。その結果、優れた化成処理性、塗装性、電気めっき性が得られ、特に問題になる溶融亜鉛めっき鋼板や合金化溶融亜鉛めっき鋼板の不めっきを解消でき、優れためっき密着性が得られる。
0044
以下に本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
(実施例)板厚1.0mm、幅1200mmの鋼板を使用し、通板速度120m/minにて室温から850℃まで昇温し、10秒間均熱した後冷却した。加熱方法はオールラジアントチューブ方式またはNOF、均熱方法はオールラジアントチューブ方式である。均熱帯雰囲気はラジアント式の場合、水素5%一窒素、NOFの場合には水素20%一窒素である。
0045
このとき、加熱帯及び均熱帯で下記の条件にて走査型プラズマ照射処理による表面改質処理を行った。
雰囲気組成:水素5%一窒素
プラズマ条件:電圧30V電流50000A 出力1500kw
作動ガス窒素500m3/Hr
電極一鋼板距離9mm
磁界条件:磁束密度5000Gauss
プラズマ数 :2台(表と裏各1台)
0046
図5、表1に示すように、走査型プラズマ照射処理により、表面濃化を抑制でき、熱歪みの発生もなかった。溶融亜鉛めっき(浴温475℃、Al 0.14%)時の不めっきも解消できた。通常のオールラジアントチューブ加熱方式では著しい表面濃化が起こった。また、通常のプラズマトーチを並べただけのものでは、約10mmφのプラズマが直接あたる部分のみが高温となり、著しい熱歪みが発生した。そのため、表面改質効果を評価することさえできなかった。同様に、走査型プラズマ照射処理後、Zn浴温度近辺まで冷却した後、溶融亜鉛めっき、合金化処理することにより、溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができた。
0047
なお、評価方法は以下の通りである。
(GDSによる表面濃化評価)
○:表面濃化はほとんどなし
△:表面濃化抑制効果あり
×:表面濃化抑制作用なし
(溶融亜鉛めっきの不めっき)
○:不めっき発生なし
×:不めっき発生あり(僅かなピンホール状のものも含む)
(化成処理性)
走査型プラズマ照射処理したものあるいはしないものにつして、日本ペイント(株)製SD500を塗工した結果の結晶形成状態を評価する。
○:良好
△:一部のみ粗大結晶あり
×:スケ、粗大結晶発生
0048
発明の効果
0049
以上説明したように、本発明による走査型プラズマ照射処理することにより、著しく優れた表面改質処理をすることができる。その結果、連続熱処理プロセスにおいて、鋼板を高速で走行させ、大量に製造することができ、また、溶融亜鉛めっき時の不めっきの解消など表面持性の優れた鋼板やめっき鋼板を製造することが可能となった。
図面の簡単な説明
0050
図1本発明の1例を示す溶融亜鉛めっき連続処理プロセスの構成図である。
図2熱プラズマ処理装置の構成の1例を示す図である。
図3走査型プラズマ照射処理装置の構成の1例を示す図である。
図4従来のプラズマトーチの構成の1例を示す図である。
図5加熱帯における走査型プラズマ照射時の鋼板温度が表面濃化に及ぼす影響を示す図である。