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技術 ヒビ様模様を有するガラス物品及びその製造方法

出願人 東洋佐々木ガラス株式会社
発明者 新井敦
出願日 1993年2月16日 (27年10ヶ月経過) 出願番号 1993-026698
公開日 1994年8月30日 (26年3ヶ月経過) 公開番号 1994-239634
状態 特許登録済
技術分野 ガラスの再成形、後処理、切断、輸送等
主要キーワード スランピング 硝子製品 曲面成形 ガラス結晶 ガラス物体 着色性物質 破壊片 装飾ガラス
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (4)

目的

熱衝撃法による独特の流れるようなヒビ様の模様表面近傍に有する装飾性のあるガラス物品と、その製造方法を提供する。

構成

徐冷点以下の温度のガラス物品を、ガラス結晶析出開始を促進する促進剤が溶解されていてかつこのガラス物品の温度よりも低温で温度差がある水溶液中に浸漬することで該ガラス物体の形状を保ったまま熱衝撃によるヒビを与え、発生したヒビの中に該水溶液を浸透させる工程と、該ガラス物体表面に付着した水溶液を除去する工程と、このガラス物体をガラス軟化点以上の温度で該ガラス物体を熱処理してヒビを融着させ、かつヒビの部分にだけガラス結晶化を生じさせる工程とからなる方法。

概要

背景

従来、ヒビ様の模様を特徴としたガラス素材の製造方法としては、強化ガラス板機械的衝撃を加えて無数ヒビ割れを与え、これをガラスまたはプラスチック製の板でサンドイッチ状に挟んで接着する方法が知られている。

また、多数のガラス粒(塊)を耐火物などの上に集積し、これを加熱軟化させて熱融着により焼結一体化する方法も知られている(特公昭55−29018号、特開平3−141128号)。

更に、特開平4−119934号では、飛散防止手段を施した強化ガラスに機械的衝撃により亀裂を発生させた後、結晶化熱処理することにより亀裂界面のみに結晶析出させる方法も提案されている。

概要

熱衝撃法による独特の流れるようなヒビ様の模様を表面近傍に有する装飾性のあるガラス物品と、その製造方法を提供する。

徐冷点以下の温度のガラス物品を、ガラス結晶の析出開始を促進する促進剤が溶解されていてかつこのガラス物品の温度よりも低温で温度差がある水溶液中に浸漬することで該ガラス物体の形状を保ったまま熱衝撃によるヒビを与え、発生したヒビの中に該水溶液を浸透させる工程と、該ガラス物体表面に付着した水溶液を除去する工程と、このガラス物体をガラス軟化点以上の温度で該ガラス物体を熱処理してヒビを融着させ、かつヒビの部分にだけガラスの結晶化を生じさせる工程とからなる方法。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

ガラス物品の全表面あるいは一部表面から内部に向かってヒビ様の模様を呈する表面近傍模様層を有し、この表面近傍模様層のヒビ様部分には、ガラス物品全体の組成成分に加えてガラス結晶析出開始促進剤、更に必要に応じて着色性物質が含まれていることを特徴とするヒビ様模様を有するガラス物品。

請求項2

徐冷点以下の所定の温度状態とした任意形状ガラス物体の一部又は全体を、ガラス結晶析出開始を促進する促進剤が溶解されていてかつ該ガラス物体の温度よりも低温所定温度差がある水溶液中に浸漬することで該ガラス物体の形状を保ったまま熱衝撃によるヒビを与えると共に、発生したヒビの中に該水溶液を浸透させる工程と、該ガラス物体表面に付着した水溶液を除去する工程と、その後、該ガラス物体のガラス軟化点以上の温度で該ガラス物体を熱処理してヒビを融着させ、かつヒビの部分にだけガラスの結晶化を生じさせる工程と、からなることを特徴とするガラス物体内部にガラスの結晶化に基づくヒビ様模様を有するガラス物品を製造する方法。

請求項3

徐冷点以下の所定の温度状態とした任意形状のガラス物体の一部又は全体に、ガラス結晶の析出開始を促進する促進剤が溶解されていてかつ該ガラス物体の温度よりも低温で所定温度差がある水溶液をかけて該ガラス物体の形状を保ったまま熱衝撃によるヒビを与えると共に、発生したヒビの中に該水溶液を浸透させる工程と、該ガラス物体表面に付着した水溶液を除去する工程と、その後、該ガラス物体のガラス軟化点以上の温度で該ガラス物体を熱処理してヒビを融着させ、かつヒビの部分にだけガラスの結晶化を生じさせる工程と、からなることを特徴とするガラス物体内部にガラスの結晶化に基づくヒビ様模様を有するガラス物品を製造する方法。

請求項4

徐冷点以下の所定の温度状態とした任意形状のガラス物体の一部又は全体を、該ガラス物体の温度よりも低温で所定温度差がある水中に浸漬することで該ガラス物体の形状を保ったまま熱衝撃によるヒビを与える工程と、該ヒビが発生したガラス物体をガラス結晶の析出開始を促進する促進剤が溶解されている水溶液中に浸漬することでヒビの中に該水溶液を浸透させる工程と、該ガラス物体表面に付着した水溶液を除去する工程と、その後、該ガラス物体のガラス軟化点以上の温度で該ガラス物体を熱処理してヒビを融着させ、かつヒビの部分にだけガラスの結晶化を生じさせる工程と、からなることを特徴とするガラス物体内部にガラスの結晶化に基づくヒビ様模様を有するガラス物品を製造する方法。

請求項5

徐冷点以下の所定の温度状態とした任意形状のガラス物体の一部又は全体に、該ガラス物体の温度よりも低温で所定温度差がある水をかけて該ガラス物体の形状を保ったまま熱衝撃によるヒビを与える工程と、該ヒビが発生したガラス物体をガラス結晶の析出開始を促進する促進剤が溶解されている水溶液中に浸漬することでヒビの中に該水溶液を浸透させる工程と、該ガラス物体表面に付着した水溶液を除去する工程と、その後、該ガラス物体のガラス軟化点以上の温度で該ガラス物体を熱処理してヒビを融着させ、かつヒビの部分にだけガラスの結晶化を生じさせる工程と、からなることを特徴とするガラス物体内部にガラスの結晶化に基づくヒビ様模様を有するガラス物品を製造する方法。

請求項6

上記ガラス結晶の析出開始を促進する促進剤が、遷移金属元素カルシウムマグネシウムから選ばれた少なくともいずれか一種以上の元素を含有するものであることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載したガラス物体内部にガラスの結晶化に基づくヒビ様模様を有するガラス物品を製造する方法。

請求項7

上記ガラス結晶の析出開始を促進する促進剤が、塩酸硫酸硝酸酢酸、これらの塩溶液、あるいはこれら2種以上の混合液であることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載したガラス物体内部にガラスの結晶化に基づくヒビ様模様を有するガラス物品を製造する方法。

技術分野

0001

本発明は、内外装材間仕切りドア等の建築材料、あるいはテーブルのトッププレート等に代表される家具、あるいは照明器具、あるいはインテリア置物花器または飾り棚等の室内装飾、さらには食器等に使用される、ヒビ様の模様を有する装飾性のあるガラス物品、及びその製造方法に関する。

背景技術

0002

従来、ヒビ様の模様を特徴としたガラス素材の製造方法としては、強化ガラス板機械的衝撃を加えて無数ヒビ割れを与え、これをガラスまたはプラスチック製の板でサンドイッチ状に挟んで接着する方法が知られている。

0003

また、多数のガラス粒(塊)を耐火物などの上に集積し、これを加熱軟化させて熱融着により焼結一体化する方法も知られている(特公昭55−29018号、特開平3−141128号)。

0004

更に、特開平4−119934号では、飛散防止手段を施した強化ガラスに機械的衝撃により亀裂を発生させた後、結晶化熱処理することにより亀裂界面のみに結晶析出させる方法も提案されている。

0005

しかしながら上記した従来の方法では、以下のような欠点があった。

0006

すなわち、上記サンドイッチ状に接着する方法は、製造工程が複雑でコストが高く、また外観が派手で落ち着き気品に満ちた味わい深さを演出しにくいという問題があった。

0007

多数のガラス粒(塊)を集積し、加熱軟化させて熱融着により焼結一体化する方法は、焼結後必ず巻き込み泡が残存し、研磨後にこの泡がガラス物品の表面に出現するという問題があった。

0008

また特開平4−119934号の方法は、機械的衝撃によりガラスに亀裂を発生させる方式であるため、対象が板状のものに限定されるとか、殆どのヒビがガラス物品の肉厚方向に貫通してこのガラス物品がバラバラに破壊してしまうのが通常であるため、板状のガラス物品の全面に予め粘着テープを貼る等の飛散防止手段を施さなければならないという手間のかかる工程を要した。更にまたこの種の方法ではガラスを強化することが前提とされ、その分工程数も多くなり、当然ながらコストも高くなってしまうという欠点があった。また、強化ガラスであることからヒビ様模様のパターンが細かく均一になってしまい、単調な外観しか得られないという欠点もあった。

0009

本発明の目的は、簡素な製造工程と比較的低温度における短時間の熱処理により、深みのあるしかも多様なパターンのヒビ様模様をガラス内部に整然と現出させうる新規なヒビ様模様を有するガラス物品を提供し、またその製造方法を提供するところにある。

0010

本発明の別の目的は、従来の機械的な衝撃を与える方法では対象物品の形状が限定されるという問題があるのに対し、対象物品の形状に制限されることなく、種々の形状のガラス物品に適用できるヒビ様模様を有するガラス物品の製造方法を提供するところにある。

0011

上記目的を実現した本発明のヒビ様の模様を有するガラス物品の特徴は、ガラス物品の全表面あるいは一部表面から内部に向かって、熱衝撃によって与えれるヒビに特有な模様を呈する表面近傍模様層を有し、この表面近傍模様層のヒビ様部分には、ガラス物品全体の組成成分に加えてガラスの結晶析出開始促進剤、更に必要に応じて着色性物質が含まれているという構成をなすところにある。

0012

かかるガラス物品において、ヒビ様の模様を呈する表面近傍模様層は、特に限定されるものではないが、表面から2〜3mm程度の深さとなるように形成されたものであることが好ましく、肉厚の表面から裏面にまでは貫通しないように形成される。ここでヒビが貫通しないというのは、ガラス物品を複数の破壊された片に分離させてしまうことがない状態をいい、ガラス物品の形状、特にその肉厚にもよるが、表面側からのヒビと裏面側からのヒビとが一部重なっていてもガラス物品が複数の破壊片とならない場合のものを排除するものではない。

0013

上記ガラス物品においてヒビ様模様部分に含有されるガラスの結晶析出開始促進剤や、場合により含有される着色性物質は、以下の方法発明の説明で具体的に明らかとなる。

0014

以上の本発明よりなるヒビ様の模様を有するガラス物品は、従来のガラス粒等を集積、焼結する方法や、成形物を機械的衝撃でヒビ入れする方法では製造できない新規な物品となり、表面近傍に限定して帯状に形成されたヒビ様の表面近傍模様層を有することで、奥行きの感じられる味わい深い模様が醸し出されるガラス物品となる。

0015

本発明のヒビ様の模様を有するガラス物品を製造する方法は、請求項2〜7の各請求項に記載した方法をその特徴とするが、特に本発明の製造方法の重要な技術的要素は、熱衝撃によってヒビを入れること、ガラスの結晶析出開始促進剤を使用すること、さらにヒビ界面部分のみに結晶析出開始促進剤を存在させることの3工程を有する点にある。本発明方法を以下詳細に説明する。

0016

本発明において用いられるガラスは、表面失透性のガラス即ち加熱によってガラス表面が結晶化(失透)するものであれば限定されることなく使用でき、ガラス組成を限定するものではない。もちろん無色透明のものであっても良いし、公知の方法によって着色を施されたものであってもかまわない。本発明者の研究によれば、窓ガラスや食器ガラスに使われている最も一般的な所謂ソーダライムシリカ系組成のガラスは、失透しやすいので好ましく用いられる。ガラス物品の形状についても何ら制限を受けるものではなく、板状、ブロック状、状、コップ状希望する形状のものを使用できる。なお、極端に角張った形状等は、熱衝撃によるヒビ入れ時に破壊する恐れがあるのでなるべくゆるやかなカーブを有する形状や板状、ブロック状のものの方が望ましい。なお、歪みや脈理等のガラスの品質上の欠点はヒビ入れ時のガラスの破壊や割れにつながるため、できるだけ品質の良いガラスを準備するべきである。

0017

本発明の第一の工程においては、上記のガラス物品を所定の温度状態にする。温度を徐冷点以下と限定したのは、徐冷点を越える温度で熱衝撃を与えると、ヒビが細か過ぎたりあるいは浸漬する水溶液沸騰してしまうなどの弊害が多くなるためである。一方、使用するガラス物体に仮に歪みが残留していた場合を考慮すると、徐冷点まで加熱することによって歪みが除去しうる。これらの点から、上記温度を徐冷点以下とした。ガラス物品を上記温度状態にするには、低温の状態のガラス物品を加熱するか、あるいは高温の状態のガラス物品を冷却する方法のいずれによってもよい。

0018

熱衝撃は、上記温度状態のガラス物品に対して熱衝撃によるヒビが入る程度の温度差がある低温水、あるいはガラスの結晶析出開始促進剤等が添加された低温水溶液を接触させる(浸漬又はかける)ことで与えられるが、一般的には100〜350℃位の温度範囲への加熱を行った後、室温〜60℃位の水溶液に浸漬するのが好ましい。なお、ガラス物体の肉厚や形状にも大きく依存するので一概には言えないが、一般的に熱衝撃の温度差が大きい程ヒビは細かく浅くなり、一方熱衝撃の温度差が小さい程ヒビは粗く深くなる傾向がある。従って、ガラス物体の肉厚や形状等が決まりさえすれば、熱衝撃の温度差をコントロールすることによってヒビの粗さや深さをかなり正確にコントロール・再現することが可能である。

0019

一方、ガラス製品製造ライン上で徐冷直後の、たとえば100〜250℃付近の温度に既に加熱された状態にあるガラス物体をそのまま使用することもできる。その場合には上述したガラス物体を加熱する工程を省くことができる。

0020

第二の工程では、加熱されたガラス物体をガラスの表面結晶の析出開始を促進する化合物を溶解した水溶液をヒビの中に浸透させるのであるが、ここでガラスの表面結晶の析出開始を促進する化合物(以下、「結晶析出開始促進剤」と呼ぶ)とは具体的に代表例をいくつか挙げれば、塩化鉄塩化コバルト塩化銅塩化カルシウム塩化マグネシウム硫酸コバルト硫酸ニッケル硫酸銅硫酸亜鉛硫酸アルミニウム硝酸クロム硝酸鉄硝酸コバルト硝酸ニッケル硝酸銅硝酸アルミニウム硝酸カリウム硝酸カルシウム酢酸コバルト酢酸ニッケル塩酸硫酸硝酸酢酸等が有効であり、またもちろんこれらの化合物の組み合わせであっても良い。水溶液の濃度としては、結晶析出開始促進剤の種類や結晶析出開始促進剤としての効果の大小によって異なるが、約0.01mol/l濃度の溶液から、より好ましくは約0.03mol/l濃度の溶液から飽和濃度溶液までの範囲で使用できる。もちろん濃度の濃い方が結晶析出開始促進剤としての効果も大きくヒビ様模様がよりはっきりと現出するので、経済性やコストとのバランスを考慮しつつなるべく濃い溶液を準備することが望ましい。

0021

結晶の析出開始が促進されるメカニズムは明らかにされておらず推察の域を出ないが、ヒビ界面に浸透した水溶液中の結晶析出開始促進剤がその後の熱処理により加熱分解あるいは酸化し、例えば酸化物等の微粒子となってヒビ界面に均一に分布して、これがガラス表面(ヒビ界面)上の異種物質として結晶核役割を果たすという説や、強い酸性の水溶液などの場合には、熱処理中にガラス表面(ヒビ界面)が侵されて荒れることにより物理的に結晶が析出しやすくなるのではないかという説、またヒビ界面に浸透した水溶液中の結晶析出開始促進剤が熱処理中にガラス表面層においてガラス中の成分と反応して、結晶しやすい組成の層を形成するといったような説、そしてもちろんこれらの組み合わせによるものという説などが考えられる。これら結晶析出開始促進剤としての効果は、実験の結果肉眼でも明白であるし、X線回折測定によっても確認されている。なお、X線回折測定の結果、ソーダライムシリカ系組成の窓ガラス板を用いた場合には、析出する主結晶はデビトライトに代表されるソーダライムシリカ系の結晶、ディオプサイドに代表される珪酸カルシウムマグネシウム系の結晶、ウォラストナイトに代表される珪酸カルシウム系の結晶、そしてクリストバライトに代表されるシリカ系の結晶、あるいはそれらの4種類の組み合わせであり、いずれもガラス自身の結晶化によるものであることが確認された。また、使用する結晶析出開始促進剤の種類によっては、析出する結晶種がある程度限定されるような傾向も一部に見られた。たとえば、特に銅を含有する結晶析出開始促進剤を使用すると、デビトライトに代表されるソーダライムシリカ系の結晶が、これに対してコバルトニッケルを含有する結晶析出開始促進剤を使用すると、ディオプサイドに代表される珪酸カルシウム・マグネシウム系の結晶が優先的に析出するような現象が全体の傾向として見られた。この現象は、例えば、P.W.McMILLAN,「GLASSERMICS(second edition)」,ACADEMIC PRESS INC.(LONDON)LTD(1979)p32〜36に記述されている「Epitaxial growth」なる現象に深く関係しているようにも思われるが、現時点では明らかでない。

0022

また、遷移金属元素を含有する結晶析出開始促進剤を使用すればその後の熱処理によりヒビ界面にのみ着色を施すこともでき、その場合にはヒビ部分に析出する結晶による装飾効果に加えて着色による模様をも楽しむことができる。遷移金属元素の濃度にもよるが、色調の種類としては、ソーダライムシリカ系組成の窓ガラス板を用いた場合、コバルトや銅による青色〜紺色系、鉄やニッケルによる緑褐色〜茶褐色系クロムによる黄緑色系がその主なものである。これらの中では、特にコバルトとクロムの着色効果が大きい。他の遷移金属元素の場合にはかなり濃度が濃くないと、具体的には0.3mol/l以上の濃度でないと現実的に十分な着色が得られない。遷移金属元素を含有しない結晶析出開始促進剤を使用した場合には、ヒビ界面部分のみに結晶が析出することによってガラス物体内部にヒビ様の白色模様が現出する。もちろん遷移金属元素を含有しない結晶析出開始促進剤を使用しても、透明着色ガラスあるいは複数の色調に着色された透明ガラスを使用することにより、色調とヒビ様模様の両方を楽しむことが可能である。

0023

本法による熱的衝撃によるヒビは、機械的衝撃による細かく均一で単調なヒビと大きく異なり、深みのあるしかも多様なパターンを表現できることにも特徴がある。たとえば、加熱したガラス板を鉛直方向に吊り下げ、ガラス板の下端からゆっくりと水溶液中に下方に向けて浸していくと、ガラス板の下端から上に向かってはい上がるような状のヒビを入れることができる。また、研磨サンドブラスト等の前処理によってガラス表面に細かい傷を付けておけば、その傷の付いた部分だけに細かく均一なヒビを入れることもでき、その場合には全体としてのデザインパターンを楽しむことができる。もちろん、前処理によってガラス表面全体に細かい傷を付けておけば、機械的衝撃によるものとほとんど同様の全面にわたる細かく均一で単調なヒビ様模様を再現することも可能である。さらには、加熱されたガラス物体のたとえば上から水溶液をかけてヒビを入れることもできそのかけ方やタイミングによって、またガラス表面への前処理と前述した熱衝撃温度差のコントロールとをうまく組み合わせることによっても、種々多様なパターンのヒビ模様を施すことができるのである。

0024

一方、「加熱されたガラス物体をガラスの表面結晶の析出開始を促進する化合物を溶解した水溶液中に浸漬して、該ガラス物体の形状を保ったまま該ガラス物体の一部又は全体に熱衝撃によるヒビを与えつつ、該水溶液をヒビの中に浸透させる」という工程を「加熱されたガラス物体の一部又は全体を水中に浸漬して該ガラス物体の形状を保ったまま熱衝撃によるヒビを与える」工程と、「その後該ヒビ入りガラス物体を表面結晶の析出開始を促進する化合物を溶解した水溶液中に浸漬して該水溶液をヒビの中に浸透させる」工程とに分けても差し支えない。この後者の方法の場合には、安価な水によってヒビが入れられるため、常に新しい水を準備することによって水温を一定に保てる、すなわち熱衝撃の温度差をコントロールしやすいといった利点や、ヒビを入れた状態でガラス物体を在庫しておき、後で必要な時に要求に合った該水溶液に浸漬できるといった小ロット生産に適しているという利点等がある。なお、ガラス物体を水中に浸漬してヒビを入れた直後に続けて該水溶液中に浸漬する場合には、該水溶液中の有効成分をヒビの中の水中に拡散させるために、該水溶液中への浸漬時間を長くとることがよい。また、ガラス物体を水中に浸漬した後大分経ってから、たとえばヒビの中の水分が完全に乾いてしまってから該水溶液中に浸漬する場合には、空気で満たされた狭いヒビの中に水溶液を十分浸透させるために減圧処理等の処置をとることがよい。どの方法を選択するかは状況に応じて決められる。

0025

なお、ヒビをガラス物体の一部のみに入れるか、全体に入れるかは所望に応じて選択できる。

0026

第三の工程において、ガラス物体表面に付着した該水溶液を水洗して除去するのは、ガラス物体表面の結晶析出開始促進剤を除去して、ガラス物体表面において結晶が析出するのを防止するためである。すなわち、この処置によって、ガラス物体内部のヒビの部分だけにガラスの結晶化を生じさせることができる。水洗工程において、あまり長い時間ヒビ入りガラス物体を水に浸しておくと、せっかくヒビの中に浸透させた結晶析出開始促進剤を含有する水溶液が染み出してしまうことになるので、ガラス物体全体に軽く水をかけて洗い流す程度が好ましい。第四の工程は、該ガラス物体をそのガラスの軟化点以上の温度で熱処理してヒビを融着させると共に、ヒビの部分だけにガラスの結晶化を生じさせる工程であり、たとえばソーダライムシリカ系組成の窓ガラス板を例にとれば、750℃〜950℃程度の温度に15分〜3時間程度保持するのが好ましい。750℃未満の温度では結晶の析出成長速度が遅く現実的でない。また、15分未満の熱処理では結晶が十分に析出成長しない。また、950℃を越える温度でしかも3時間を越えて保持したりすると、結晶析出開始促進剤が存在するヒビの部分以外のたとえばガラス物体の表面においても結晶の析出成長が起こる傾向が強まる。ガラス表面で結晶の析出成長が起こると、表面が失透して白くってしまい内部の美しいヒビ様の模様が観察できなくなってしまう。あるいは、ガラス表面の失透層を研磨等の手段によって除去する工程が必要になるという欠点を生じる。極端な場合には、ガラス表面の失透層が厚くなって内部のガラスとの間にストレスを生じ、クラックを発生することもある。本発明では、結晶析出開始促進剤をヒビ部分のみに存在させることにより、できるだけ低温度で短時間の熱処理を可能とできた。昇温速度はガラス物体が破壊しない程度でよく、具体的には2℃/分〜6℃/分位が現実的である。降温時には通常のガラスの場合と同様に徐冷することが必要である。また、熱処理に伴ってガラス物体が軟化変形するので、ガラス物体の形状によっては、内面離型剤を塗布した耐火物製の型や砂型の中にセットした後、熱処理することがよい。

0027

なお、熱処理に伴ってガラス物体が軟化変形する性質を逆に利用して、たとえば(社)日本硝子製品工業会編集発行「ガラス技術研修会(ガラスの成形技術)」、(昭60.11)、P.175に記述されている「スランピング」と呼ばれる公知の曲面加工法を応用すれば、ヒビの融着、ヒビの部分における結晶化と同時に、板状ガラス曲面加工を行うこともできる。この方法により、ガラス内部に美麗なヒビ様模様を有する間仕切り用照明器具用等の曲面成形品、あるいは皿等の食器製品を作製することが可能である。また、ガラス物体が板状のものの場合あるいは上に積み重ねられる形状の場合には、一度に複数枚(個)を重ね合わせて熱処理し、それぞれのヒビ入りガラス物体におけるヒビの融着・ヒビ部分の結晶化と同時に全体を相互に融着・一体化させることにより、さらに意匠性に勝れた装飾ガラス物品を作製することも可能である。もちろん、ヒビ入りガラス物体の複数枚を近接するように敷き並べて熱処理すれば、やはり隣同士の各ピースが相互に融着・一体化し、より大面積のものが得られることは言うまでもない。

0028

以上に述べたように、本発明によれば、簡素な製造工程と比較的低温度における短時間の熱処理により、ガラスの結晶化に基づく深みのあるしかも多様なパターンのヒビ様模様をガラス内部に整然と現出させうる。なお、このようにして得られた装飾ガラス物品を、たとえば 作花済夫、境野照雄、高橋克明編集「ガラスハンドブック」、(昭50.9.30)、書店、p484〜496に記述されているような公知の方法により、強化処理することも可能である。

0029

以下本発明の実施例について説明する。

0030

実施例1
300×300×10mmの一般的な窓ガラス板を、電気炉内で約220℃の温度に約30分間加熱・保持した。その後、下記表1,表2のNo.1〜28に示した結晶析出開始促進剤を溶解したほぼ室温の水溶液中に、上述の加熱したガラス板の全体を浸漬したところ、瞬時に窓ガラス板全体にわたって熱衝撃法独特の流れるようなヒビが入った。水溶液をヒビの中に十分に浸透させるため、そのまま約1分間ヒビ入りガラス板を水溶液中に浸漬・保持した後、水道水でヒビ入りガラス板の表面を数回水洗いした。次に、このヒビ入りガラス板を、内面に離型剤を塗布した耐火物製の型枠の中にセットし、下記表1,表2のNo.1〜28に示した条件で電気炉にて熱処理した。熱処理によって、ヒビ入りガラス板内のヒビは完全に融着すると共にガラス内部のヒビの部分のみにおいてガラスが結晶化し、流れるようなパターンの美麗なヒビ様模様が現出した。得られたヒビ様模様入り装飾ガラスには、残留歪、クラック等の実用上問題になるような欠点は一切観察されなかった。

0031

ヒビ様模様の着色の様子、析出した主結晶の種類等についても、下記表1,表2に示した。また、比較例No.29〜31についても同表2に記載した。

0032

実施例2
約直径100mm×厚さ25mmの形状に成形したソーダライムシリカ系組成の食器用ガラス製のペーパーウェイトを、徐冷炉内から約170℃の温度の状態で抜き取り、即座に室温の水道水中に浸漬してガラス全体にヒビを入れた。このヒビ入りガラスを乾燥器でよく乾燥した後、さらに室温で丸2日間放置した。その後、そのヒビ入りガラスを下記表1,表2のNo.1〜28に示した結晶析出開始促進剤を溶解したほぼ室温の水溶液中に浸漬し、さらに全体を密閉して真空ポンプで約10torrまで減圧した。水溶液をヒビの中に十分に浸透させるためにこの状態を約30分間保持した後、水道水でヒビ入りガラスの表面を数回水洗いした。次に、このヒビ入りガラスを、内面に離型剤を塗布した耐火物製の型枠の中にセットし、下記表1,表2のNo.1〜28に示した条件で熱処理した。熱処理によって、ヒビ入りガラス内のヒビは完全に融着すると共にガラス内部のヒビの部分のみにおいてガラスが結晶化し、美麗なパターンのヒビ様模様が現出した。

0033

実施例3
淡い青色に着色されたステンドグラス用の色板ガラスを150×150×5mmのサイズに切断し、電気炉内で約200℃の温度に約20分間加熱・保持した。その後、下記表1のNo.6に示す結晶析出開始促進剤を溶解したほぼ室温の水溶液中に、上述の加熱したガラス板の全体を浸漬し、色板ガラス全体にヒビを入れた。水溶液をヒビの中に十分に浸透させるため、そのまま約1分間ヒビ入り色板ガラスを水溶液中に浸漬・保持した後、水道水でヒビ入りガラス板の表面を数回水洗いした。一方これとは別に、皿状の凹部を設けた耐熱石膏製の受け型を準備した。この型の上に上述のヒビ入り色板ガラスを載せて、下記表1のNo.6に示す条件で熱処理した。熱処理によって、ヒビ入り色板ガラス内のヒビは完全に融着し、ガラス内部のヒビの部分にはガラスの結晶化が生じたが、それと同時に色板ガラス全体が受け型の凹内面に沿って軟化曲面化し、美麗な白色の図1図2に示すヒビ様模様を有する青色透明の皿ができ上がった。図3はこのヒビ様模様の一部を拡大して示した図である。

0034

0035

発明の効果

0036

本発明によれば、ガラス物品の表面から内部に向かってヒビ様の模様を呈する表面近傍模様層をもった新規なガラス物品を提供できるという効果がある。

0037

またガラスを予め強化する工程や飛散防止手段を施す手間が省略できるため、従来法に比べてはるかに簡単な製造工程で、低コスト化に上記ガラス物品を製造できるという効果もある。

0038

また更に、結晶析出開始促進剤を使用することにより、低温度での短時間の熱処理を可能にし、しかも、熱衝撃法によって発生させた多様なパターンのヒビ界面部分のみに結晶析出開始促進剤を存在させることによって、非常に美麗な深みのあるヒビ様模様をガラス内部に現出せしめることができるという効果もある。本発明は上述した種々の優れた効果を奏するものであり、その有用性は極めて大である。

図面の簡単な説明

0039

図1図1は、実施例3により製造された、熱衝撃法に独特な流れるようなパターンのヒビ様模様を有する青色透明皿の平面透視図、
図2図2は、図1のA−A′線の断面模式図
図3図3は、図1のヒビ様模様の一部拡大図である。

--

0040

1:青色透明皿、2:ヒビ様模様、3:上表面側のヒビ様模様、4:裏面側のヒビ様模様、5:ヒビ様模様に囲まれた透明ガラス部分

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