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※この項目の情報は公開日時点(1994年7月5日)のものです。
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概要
背景
熱接着性複合繊維は、接着剤を使用しなくても熱風や熱ローラによる熱で比較的簡単に不織布化できることから、紙オムツや生理用ナプキンに代表される使い捨ての衛生材料に広く利用されている。熱接着性複合繊維としては種々のものが開発されているが、特にサラッとした感じが要求される紙オムツのトップシート用の材料としては、鞘部にポリエチレンを用いた鞘芯型のもの、なかでも、鞘部にポリエチレンを用い芯部に結晶性ポリプロピレンを用いたもの(以下、PE/PP系繊維と略記することがある)が好んで使用されている。ところで、使い捨て用途の製品を安価に消費者に提供するためには、これらの製品を高い生産性の下に製造する必要があり、その一法として熱接着性複合繊維を熱ローラ法により不織布化することが行われている。
概要
熱ローラの線圧を上げて不織布化した場合でも穴開き現象の発生を抑制することができるPE/PP系の熱接着性複合繊維を提供する。
鞘部が、
A.高密度ポリエチレンと、
B.モノマーの主成分がプロピレンで共重合成分として少なくともエチレンを含むランダムコポリマー
との2成分を少なくとも含む低融点重合体からなり、芯部が結晶性ポリプロピレンからなる熱接着性複合繊維。
目的
効果
実績
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この技術が所属する分野
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技術分野
背景技術
0002
熱接着性複合繊維は、接着剤を使用しなくても熱風や熱ローラによる熱で比較的簡単に不織布化できることから、紙オムツや生理用ナプキンに代表される使い捨ての衛生材料に広く利用されている。熱接着性複合繊維としては種々のものが開発されているが、特にサラッとした感じが要求される紙オムツのトップシート用の材料としては、鞘部にポリエチレンを用いた鞘芯型のもの、なかでも、鞘部にポリエチレンを用い芯部に結晶性ポリプロピレンを用いたもの(以下、PE/PP系繊維と略記することがある)が好んで使用されている。ところで、使い捨て用途の製品を安価に消費者に提供するためには、これらの製品を高い生産性の下に製造する必要があり、その一法として熱接着性複合繊維を熱ローラ法により不織布化することが行われている。
発明が解決しようとする課題
0003
しかしながら、使い捨て用途の製品は付加価値が低いため、現在、コストダウンのためにその生産性の更なる向上が望まれている。そして、熱ローラ法による不織布の製造においてその生産性を向上させる方法としては、熱ローラの温度を上げる方法と熱ローラの線圧を上げる方法とがあるが、既存のPE/PP系繊維を材料とした場合、それぞれ下記のような問題が生じる。
0004
(1)熱ローラの温度を上げた場合
温度の上昇と共に樹脂の溶融粘度が低下するため、繊維同士の圧着点における樹脂の広がりが大きくなる。これに伴いローラへの接触面積が増大するため、ローラからの剥離力も増大する。
温度の上昇と共に芯部の強力が低下する。
ローラの回転速度が速いため、十分に冷却されないうちにローラから剥離させなくてはならない。
上記、、の原因が相俟って不織布が破れ、ローラに巻き付く。ローラへの巻き付きが起こると一度ローラの温度を下げてから巻き付いた不織布を除去しなければならないが、この除去作業には非常に手間がかかる。このため、巻き付きの起こらない方法である線圧を上げる方法が好ましい。
0005
(2)熱ローラの線圧を上げた場合
圧力の増加と共に繊維同士の圧着点における樹脂の広がりが大きくなる。これに伴いローラへの接触面積が増大するため、ローラからの剥離力も増大する。
不織布が局所的に薄くなり、弱い部分ができる。
上記(1)と同様の事情により十分に冷却されない。
上記、、の原因が相俟って穴開き現象が起こる。穴開き現象が起こると不織布としての形状(見栄え)が満足できなくなることから、商品価値が低下ないしは無くなる。
0006
熱ローラの温度・線圧と得られる不織布の性状との関係は、一般的には下記表1に示すような傾向になる。
0007
0008
熱ローラの線圧を上げた場合に生じる穴開き現象の発生を抑制するための手段としては、下記(a)〜(c)が考えられる。
(a)接着面積(単位面積当りの接着点の数)の少ないエンボスローラを使用する。
(b)ローラ表面に離型剤を塗布する。
(c)圧着点での樹脂の広がりが小さい熱接着性複合繊維を用いる。
しかしながら、上記(a)の方法は不織布強度の低下につながるため不適である。また上記(b)の方法は、離型剤がすぐに不織布に転移することから頻繁に離型剤を塗布しなければならず、非常に手間がかかる。さらに、不織布に転移した離型剤が人体に及ぼす影響については不明であるため、安全性の点で問題が残る。そこで上記(c)の方法が考慮されるが、既存のPE/PP系繊維では圧着点での樹脂の広がりが大きいため、熱ローラの線圧を上げて不織布化した場合、穴開き現象の発生を抑制することが非常に困難である。
0009
本発明は不織布製造の上述のような現況を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、熱ローラの線圧を上げて不織布化した場合でも穴開き現象の発生を抑制することができるPE/PP系の熱接着性複合繊維を提供することにある。
課題を解決するための手段
0010
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、本発明の熱接着性複合繊維は、鞘部が、
A.高密度ポリエチレンと、
B.モノマーの主成分がプロピレンで共重合成分として少なくともエチレンを含むランダムコポリマー
との2成分を少なくとも含む低融点重合体からなり、芯部が結晶性ポリプロピレンからなることを特徴とするものである。
0011
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の熱接着性複合繊維における鞘部は、上記Aの高密度ポリエチレンと上記Bのランダムコポリマーとの2成分を少なくとも含む低融点重合体からなる。ここで、前記Aの高密度ポリエチレンとしては、従来より熱接着性複合繊維の材料として使用されている種々の高密度ポリエチレンを使用することができる。
0012
また前記Bのランダムコポリマーは、上述のように主成分のプロピレンの他に共重合成分として少なくともエチレンを含むのもでなければならない。その理由は、前記Bのランダムコポリマーと前記Aの高密度ポリエチレンとは混合した状態で溶融紡糸されるわけであるが、このとき両成分が均一に混合されていないと紡糸できなくなるからである。このようなランダムコポリマーとしては、エチレン−プロピレンランダムコポリマーの他、エチレン−プロピレン−ブテン−1ランダムコポリマーのようにエチレンとプロピレンとの他にα−オレフィンを第3の共重合成分として含むものが好適に用いられる。
0013
本発明の熱接着性複合繊維における鞘部は、前記Aの高密度ポリエチレンと前記Bのランダムコポリマーとの2成分のみからなる低融点重合体であってもよいし、これらの2成分以外に第3の成分として直鎖状低密度ポリエチレンを含む3成分の低融点重合体であってもよい。第3の成分として直鎖状低密度ポリエチレンを含ませることにより、紡糸性を向上させることができる。
0014
前記Aの高密度ポリエチレンと前記Bのランダムコポリマーとの2成分のみからなる低融点重合体により鞘部を形成する場合、この低融点重合体に占めるランダムコポリマーの割合は15wt%以下とすることが好ましい。ランダムコポリマーの割合を高くするにしたがって不織布における穴開きの程度が減少するが、15wt%を超えるとポリエチレン特有の風会いがなくなる。また、5wt%未満ではランダムコポリマーを添加したことによる効果の発現が不十分である。そして、コストの点からはランダムコポリマーの割合の上限を10wt%にすることが好ましい。ランダムコポリマーの特に好ましい割合は、5〜10wt%である。
0015
第3の成分として直鎖状低密度ポリエチレンを含む3成分の低融点重合体により鞘部を形成する場合、この低融点重合体に占める直鎖状低密度ポリエチレンの割合は紡糸性が改善される程度の少量で良い。直鎖状低密度ポリエチレンの含有量を増すと前記Bのランダムコポリマーをより多く含有させても安定して紡糸することが可能となるが、前記Bのランダムコポリマーをあまり多く含有させても糸質やポリエチレン特有の風会いを損なうだけで得策でない。
0016
このような低融点重合体により鞘部を形成することにより、ポリプロピレン特有のサラッとした風合を損なうこと無く鞘部の融点を上昇させると共に、圧着時の樹脂の広がりを抑えることができる。そして、鞘部の融点を上昇させると共に圧着時の樹脂の広がりを抑えることにより、熱ローラの線圧を上げた場合でも穴開き現象の発生を抑制することが可能になる。
0017
一方、本発明の熱接着性複合繊維において芯部を形成する結晶性ポリプロピレンの種類は特に限定されるものではなく、従来より熱接着性複合繊維の材料として使用されている種々の結晶性ポリエチレンを使用することができる。
0018
本発明の熱接着性複合繊維は、鞘部および芯部の重合体として上述の重合体を用いる以外は特に限定されるものではなく、従来のPE/PP系繊維と同様に形成される。なお、本発明の熱接着性複合繊維は同心型であっても偏心型であってもよいが、特に同心型が好ましい。本発明の熱接着性複合繊維は、通常の鞘芯型複合繊維の製造方法に基づいて紡糸および延伸し、さらに常法により8〜20個/インチ程度の機械捲縮または自然捲縮を付与することにより、容易に得ることができる。このときの延伸倍率は3〜5倍とすることが好ましい。穴開き現象の発生を抑制するうえからは、延伸倍率は高いほうが好ましい。
0019
本発明の熱接着性複合繊維を材料として熱ローラ法により不織布を得るにあたっては、本発明の熱接着性複合繊維を単独使用して、またはレーヨンやポリエステル繊維等と混綿して常法によりウェッブを作製し、130〜145℃程度のローラ温度で融着させる。このときの熱ローラの線圧は、従来よりも高くすることができる。
0020
本発明の熱接着性複合繊維を用いた場合には、熱ローラの線圧を上げても圧着時の樹脂の粘度が高いため、圧着点での樹脂の広がりが小さい。このためローラからの剥離が比較的スムーズであり、ローラへの巻き付きや穴開き現象が起こらない。この結果、従来のPE/PP系繊維を用いて熱ローラ法により不織布を製造する場合よりも熱ローラの線圧を上げることができるため、高い生産速度で不織布を製造することが可能になる。
0021
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
(1)熱接着性複合繊維の製造
芯部の結晶性ポリプロピレンとして宇部興産(株)製のUBEポリプロZS1276[製品名,メルトフローレート(MFR)=30]を用い、鞘部の低融点共重合体として、高密度ポリエチレン[旭化成(株)製のサンテックJ310(製品名),MFR=20]90重量部とエチレン−プロピレンランダムコポリマー[出光石油化学(株)製の出光ポリプロY2035G(製品名),MFR=20,エチレンコンテント=4wt%]10重量部との混合物を用いて、一軸押出機2台とホール径0.6mmの複合繊維用円形ノズルとを備えた同心鞘芯型複合繊維紡糸設備により、鞘部と芯部の断面積比が4/6で単糸デーニルが6.0deである未延伸の同心鞘芯型複合繊維を得た。次いで、この同心鞘芯型複合繊維を3.7倍に延伸し、機械捲縮加工して、繊維長51mm、単糸デニール2.0de、捲縮数14個/インチのステープルファイバーからなる本発明の熱接着性複合繊維を得た。
0022
(2)不織布の製造
まず、得られたステープルファイバーをカード機に通して、目付20g/m2の均一なウェッブを作成した。次いで、ローラ径150mmφ、接着面積率17%のエンボスローラを用い、エンボスローラ温度136℃、フラットローラ温度141℃、線圧100kg/cm、ローラ速度21m/分の条件で不織布を作製した。得られた不織布の諸物性を表2に示す。
0023
比較例1
まず、鞘部の原料としてエチレン−プロピレンランダムコポリマーを用いなかった以外は実施例1と同様にしてステープルファイバーを得た。このステープルファイバーと、実施例1と同様のエンボスローラとを用いて、表2に示す条件で計3種の不織布を作製した。得られた各不織布の諸物性を表2に示す。
0024
0025
表2から明らかなように、比較例の繊維を用いた場合には、線圧を上げて行くとローラ速度を速くしても穴開き現象が顕著に現れてくる。これに対し、実施例の繊維を用いた場合には、線圧を上げてローラ速度を速くしても穴開き現象が発生せず、高速生産が可能である。そして、不織布強力およびポリエチレン特有のサラッとした風合も損なわれない。
発明の効果
0026
以上説明したように、本発明の熱接着性複合繊維を用いることにより、ポリエチレン特有のサラッとした風合を損なうことなく、強力の高い不織布を熱ローラ法により高速生産することが可能になる。