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技術 レーザ装置

出願人 パナソニック株式会社
発明者 峯本尚尾崎祐介園田信雄
出願日 1993年3月22日 (26年10ヶ月経過) 出願番号 1993-061680
公開日 1994年5月20日 (25年8ヶ月経過) 公開番号 1994-138505
状態 特許登録済
技術分野 光偏向、復調、非線型光学、光学的論理素子 レーザ(2) レーザ(2)
主要キーワード サファイヤ板 尿素結晶 無反射コート層 非線形光学化合物 励起出力 励起半導体レーザ 多層コート 基本波パワー
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目的

1μm帯の付近波長光吸収の少ない大型で加工特性に優れる結晶を容易に得られる非線形光学材料からなる高効率な波長変換素子を備えた高効率で第2次高調波を出力できるレーザ装置を提供する。

構成

ナトリウムp−ニトフェノラート二水和物結晶の結晶水水素重水素置換する事により波長1μm帯の光吸収を低減させる。この結晶を位相整合方向に切り出し波長変換素子を作製する。この波長変換素子13をNd:YAG結晶12と出力ミラー14で構成される光共振器15内に配置し、半導体レーザ10でNd:YAG結晶12を励起することにより第2次高調波出力を得る。

概要

背景

近年、2次の非線形光学材料として大きな非線形光学特性を示す有機非線形光学材料が盛んに研究されている。例えば代表的な分子結晶材料としてはMNA(2−メチル−4−ニトロアニリン)、m−NA(m−ニトロアニリン)、MAP(メチル−(2、4−ジニトロフェニル)−アミノプロパネート)、POM(3−メチル−4−ニトロピリジン−1−オキシド)(例えば加政雄 他監修「有機非線形光学材料」シー・エム・シー社 1985年刊、またはD.S.Chemula et al.:”Nonlinear optical properties of organic molecules and crystals”Vol1,2。Academic Press(1987)等)、カルコン(特開平3−112982)等、非常にたくさん化合物が検討されている。

また有機イオン結晶としてはL−アルギニンリン酸との塩のL−アルギニンフォスフェートモノハイドレートLAP)や、2−アミノ−5−ニトロピリジンとリン酸との塩(2A5NPDP)(Z.Kotler et al.:J.Opt.Soc.Am.B Vol.9(1992)534)や2−アミノ−5−ニトロピリジンと酒石酸との塩(ANPT)(渡辺 他:日本化学学会第62年会(1991)2I08)等が知られている。

さらに有機非線形光学材料として分子結晶を用いた波長変換素子を含むレーザ装置(S.Ducharme et al.:Appl.Phys.Lett.Vol.57 (1990) 537)や Y.Kitaoka et al.:Technical Digest of Conference on Lasers and Electro−Optics(CLEO) (1991)CFA8 等)や導波路型波長変換素子を含むレーザ装置(原田 他:第39回応用物理学関係連合講演会(1992)29p−ZR−2等)が知られている。

概要

1μm帯の付近波長光吸収の少ない大型で加工特性に優れる結晶を容易に得られる非線形光学材料からなる高効率な波長変換素子を備えた高効率で第2次高調波を出力できるレーザ装置を提供する。

ナトリウムp−ニトフェノラート二水和物結晶の結晶水水素重水素置換する事により波長1μm帯の光吸収を低減させる。この結晶を位相整合方向に切り出し波長変換素子を作製する。この波長変換素子13をNd:YAG結晶12と出力ミラー14で構成される光共振器15内に配置し、半導体レーザ10でNd:YAG結晶12を励起することにより第2次高調波出力を得る。

目的

本発明は有機イオン結晶を用いた高効率な波長変換素子を備えたレーザ装置を提供する事を目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
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請求項1

半導体レーザ固体レーザ媒質光共振器及び波長変換素子を構成要素とするレーザ装置、又は、半導体レーザ、光共振器及び波長変換素子を構成要素とするレーザ装置の何れかの装置であって、前記波長変換素子に用いられる非線形光学材料が、イオン結合性水素水素結合性の水素または結晶水の水素の何れか少なくとも1種が重水素置換されており、且つ、芳香環及び金属イオンを含む有機イオン結晶を用いることを特徴とするレーザ装置。

請求項2

非線形光学材料が、前記非線形光学材料を構成する有機イオン結晶の結晶水を、加熱下および/または真空下に放置する事により除去し、次いでイオン結合性の重水素、水素結合性の重水素または重水の少なくとも1種を含む溶媒再結晶させることにより重水素置換された有機イオン結晶からなる非線形光学材料である請求項1記載のレーザ装置。

請求項3

非線形光学材料が、ナトリウムp−ニトフェノラート二水和物結晶の結晶水の水素が重水素で置換された非線形光学材料である請求項1または請求項2のいずれかに記載のレーザ装置。

請求項4

非線形光学材料が、p−ニトロフェノキシ酢酸ナトリウム一水和物結晶の結晶水の水素が重水素で置換された非線形光学材料である請求項1または請求項2のいずれかに記載のレーザ装置。

請求項5

非線形光学材料が、5−スルフォサリチル酸ジナトリウム三水和物結晶の結晶水の水素及び水酸基の水素が重水素で置換された非線形光学材料である請求項1または請求項2のいずれかに記載のレーザ装置。

技術分野

0001

本発明は、2次の非線形光学効果を有する有機イオン結晶非線形光学材料として用いた波長変換素子を備えたレーザ装置に関するものである。

背景技術

0002

近年、2次の非線形光学材料として大きな非線形光学特性を示す有機非線形光学材料が盛んに研究されている。例えば代表的な分子結晶材料としてはMNA(2−メチル−4−ニトロアニリン)、m−NA(m−ニトロアニリン)、MAP(メチル−(2、4−ジニトロフェニル)−アミノプロパネート)、POM(3−メチル−4−ニトロピリジン−1−オキシド)(例えば加政雄 他監修「有機非線形光学材料」シー・エム・シー社 1985年刊、またはD.S.Chemula et al.:”Nonlinear optical properties of organic molecules and crystals”Vol1,2。Academic Press(1987)等)、カルコン(特開平3−112982)等、非常にたくさん化合物が検討されている。

0003

また有機イオン結晶としてはL−アルギニンリン酸との塩のL−アルギニンフォスフェートモノハイドレートLAP)や、2−アミノ−5−ニトロピリジンとリン酸との塩(2A5NPDP)(Z.Kotler et al.:J.Opt.Soc.Am.B Vol.9(1992)534)や2−アミノ−5−ニトロピリジンと酒石酸との塩(ANPT)(渡辺 他:日本化学学会第62年会(1991)2I08)等が知られている。

0004

さらに有機非線形光学材料として分子結晶を用いた波長変換素子を含むレーザ装置(S.Ducharme et al.:Appl.Phys.Lett.Vol.57 (1990) 537)や Y.Kitaoka et al.:Technical Digest of Conference on Lasers and Electro−Optics(CLEO) (1991)CFA8 等)や導波路型波長変換素子を含むレーザ装置(原田 他:第39回応用物理学関係連合講演会(1992)29p−ZR−2等)が知られている。

発明が解決しようとする課題

0005

有機非線形光学材料を用いた波長変換素子を利用するレーザ装置には以下のような課題がある。

0006

有機非線形光学材料として分子結晶を用いた場合、分子同士が弱いファンアワールス結合や水素結合で結合しているため、大きな結晶を成長することが困難である場合が多い。また結晶が成長できた場合でも結晶が柔らかいため十分な面精度を持った研磨面が得難く、散乱成分が増大し基本波透過率が低くなるため波長変換素子として十分機能しないという課題がある。

0007

また、この様な分子結晶の問題点に鑑み、近年、有機分子結合強度の大きなイオン性を導入した有機イオン結晶が検討し始められている。有機イオン結晶においては、結晶中でファンデアワールス結合や水素結合より強固なイオン結合が形成されるため、比較的大型で機械的強度の大きい単結晶を簡単に得ることができる。しかし例えばLAPでは非線形光学定数が小さいため特に低パワーレーザ光変換効率が小さく、半導体レーザ光波長変換には適さないという課題がある。さらに例えば2A5NPDPやANPTにおいてはLAPより大きいな非線形光学定数を有しているが、例えば波長約1μm 帯の近赤外赤外光の基本波に対する光吸収が存在し、波長変換素子に使用した場合、十分な波長変換効率が得られないという課題がある。

0008

レーザ装置の波長変換素子として分子結晶の有機非線形光学材料を用いる場合、結晶が脆弱であるため良好な結晶端面が得らない。そのため散乱成分が増大し、基本波の高い光透過率が得られず、高効率な波長変換素子を備えたレーザ装置を得ることができない。また、例え良好な結晶端面が得られた場合でも、結晶の一部に集中した基本波光により部分的な温度上昇がおこり、温度上昇により、基本波と高調波に対する屈折率が変化し、位相整合条件(結晶中で基本波と高調波が同じ位相速度で進む条件)が崩れ、基本波の強度が大きくなっても変換効率が向上しないという課題がある。この問題を解決するため、結晶端面に熱伝導率のよいサファイヤ板張り付け(佐々木 他:光学第21巻 第5号(1992) 284)結晶にこもった熱を取り出す事が提案されている。しかし、結晶内部で発生した熱が熱伝導の悪い分子結晶を伝わって結晶表面まで到達した後に初めてサファイヤ板により放熱されるため、放熱には限界がある。またサファイヤ板は高価である等の課題がある。

0009

有機イオン結晶を用いた場合、有機分子同士は強固なイオン結合で結びついているため一般に結晶成長が容易であり、結晶硬度も大きいことが期待できる。しかし通常の有機イオン結晶を使用した波長変換素子を用いたレーザ装置では波長1μm 帯の近赤外〜赤外域に光吸収があり大きな基本波強度が得られず効率のよい波長変換素子を備えたレーザ装置を得ることができないという課題がある。

0010

本発明は有機イオン結晶を用いた高効率な波長変換素子を備えたレーザ装置を提供する事を目的とする。

課題を解決するための手段

0011

前記課題を解決するため本発明のレーザ装置は、半導体レーザ固体レーザ媒質光共振器及び波長変換素子を構成要素とするレーザ装置、又は、半導体レーザ、光共振器及び波長変換素子を構成要素とするレーザ装置の何れかの装置であって、前記波長変換素子に用いられる非線形光学材料が、イオン結合性水素水素結合性の水素または結晶水の水素の何れか少なくとも1種が重水素置換されており、且つ、芳香環及び金属イオンを含む有機イオン結晶を用いることを特徴とする。

0012

また、前記本発明のレーザ装置に於いては、非線形光学材料が、前記非線形光学材料を構成する有機イオン結晶の結晶水を、加熱下および/または真空下に放置する事により除去し、次いでイオン結合性の重水素、水素結合性の重水素または重水の少なくとも1種を含む溶媒再結晶させることにより重水素置換された有機イオン結晶からなる非線形光学材料であることが好ましい。

0013

また、前記本発明のレーザ装置に於いては、非線形光学材料が、ナトリウムp−ニトフェノラート二水和物結晶の結晶水の水素が重水素で置換された非線形光学材料であることが好ましい。

0014

また、前記本発明のレーザ装置に於いては、非線形光学材料が、p−ニトロフェノキシ酢酸ナトリウム一水和物結晶の結晶水の水素が重水素で置換された非線形光学材料であることが好ましい。

0015

また、前記本発明のレーザ装置に於いては、非線形光学材料が、5−スルフォサリチル酸ジナトリウム三水和物結晶の結晶水の水素及び水酸基の水素が重水素で置換された非線形光学材料であることが好ましい。

0016

尚、ここでイオン結合性の水素とはイオン結合可能な水素であり各種有機無機酸、無機塩基に含まれる解離可能な水素であり、水素結合性の水素とは水素結合可能な水素である。

0017

本発明のレーザ装置を用いることにより効率のよい波長変換素子を備えたレーザ装置を提供できる理由を説明する。

0018

非線形光学材料として有機イオン結晶を用いることにより、分子間の結合にイオン結合を導入することが可能となる。そして従来の分子結晶に比べて結晶成長の容易な、硬度が大きく加工性のよい結晶を得ることができる。その結果、結晶の切断・研磨等の波長変換素子作製プロセスを高精度で実施する事が可能となる。そして良好な面精度を持った波長変換素子を実現でき、散乱等による光の透過率低下を防止することが出来る。

0019

次に金属イオン、好ましくは解離度の大きな金属イオンを含む有機イオン結晶を用いることにより
(1)アミン塩より強固なイオン結合を導入する事が可能となる。
(2)結晶の密度を大きくすることが可能となる。
また、材料の熱伝導率kは
k=Cp・α・ρ
ここにCp:比熱(J・g-1・K-1)
α :熱拡散率(m2 ・sec-1)
ρ :密度 (g・m-3)
である。従って熱伝導率は、密度が大きいほどまた結晶が堅くて熱拡散率が大きいほど、大きくなる。従って金属イオンを含む有機イオン結晶において比較的良好な熱伝導を有する波長変換用素子を実現できる。さらに、
(3)アミン塩の場合にしばしば問題となるアミン劣化酸化等によると考えられる)による着色の問題(例えば佐々木孝友 他:日本結晶成長学会誌Vol.16 (1989) 34)などの欠点がない等の特徴を有する。

0020

また芳香環を有することにより芳香環のπ電子による大きな非線形光学特性を発現する事が可能となる。有機イオン結晶のイオン結合性の水素、水素結合性の水素、結晶水の水素の少なくとも1種を重水素化した材料を波長変換素子として利用する事により、波長変換素子の加工精度が向上するとともに、波長1μm 帯(特に波長0.7μm 〜1.1μm 程度)の基本波の透過率を大きくすることが可能となり、高効率波長変換素子を備えたレーザ装置が実現出来る。なお、本発明の非線形光学材料中の重水素置換する水素(有機イオン結晶のイオン結合性の水素、水素結合性の水素、結晶水の水素)としては例えば水酸基の水素、カルボキシル基の水素、スルフォン酸基の水素またはニトロ基、あるいはケトン基等の電子吸引基の隣の炭素に結合した水素など、いわゆる解離しやすい活性水素のことである。

0021

有機イオン結晶中にはイオン結合性の水素、水素結合性の水素、結晶水の水素の他にも炭素原子直接共有結合した水素が存在する。しかし炭素原子に直接共有結合した水素が波長1μm 帯、特に半導体レーザ、半導体レーザ励起のNd:YAGレーザや半導体レーザ励起のNd:YVO4レーザ発振波長である0.7μm 〜1.1μm 帯、の光吸収に与える影響は、前記解離可能な活性水素よりはるかに小さい。

0022

解離可能な活性水素は比較的大きな変位分子振動や分子回転をしている。従って、これらの分子振動による赤外光吸収は特定の赤外波長で現われるのではなく比較的広い波長範囲にわたって現われる。そしてこの基本モード高次のモードによる光吸収が波長0.7μm 〜1.1μm 帯の広い波長範囲にわたって現れやすいので、解離可能な水素による基本波の光吸収が共有結合で炭素原子等に結合している水素より特に大きくなる。さらに炭素原子等に直接共有結合した水素は重水素を含む溶媒から再結晶するだけでは重水素に置換できず、非線形光学化合物を重水素原料から新規に合成する必要があるため著しく高価なものとなってしまう。従って解離可能な水素を重水素に置換する事により、効率よくしかも安価に0.7μm 〜1.1μm 帯の光吸収を低減できる。

0023

また、前記本発明のレーザ装置に於いて、非線形光学材料が、前記非線形光学材料を構成する有機イオン結晶の結晶水を、加熱下および/または真空下に放置する事により除去し、次いでイオン結合性の重水素、水素結合性の重水素または重水の少なくとも1種を含む溶媒で再結晶させることにより重水素置換された有機イオン結晶からなる非線形光学材料である好ましい態様とすることにより、重水素置換の効率が良くなり、容易に重水素置換率の高い非線形光学材料とすることができる。

0024

また、前記本発明のレーザ装置に於いて、非線形光学材料が、ナトリウムp−ニトロフェノラート二水和物結晶の結晶水の水素が重水素で置換された非線形光学材料である好ましい態様とすることにより、ナトリウムp−ニトロフェノラート二水和物は吸収端波長515nmでかつ比較的大きな非線形光学定数を持ち大型の光学的均一性に優れた結晶を短期間に成長することが可能である。さらに結晶水の水素を重水素に置換することにより波長1μm 帯の近赤外〜赤外での光透過率を改善することができる。従って低パワーの半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ光やNd:YVO4レーザ光の波長変換に適した材料となる。

0025

また、前記本発明のレーザ装置に於いて、非線形光学材料が、p−ニトロフェノキシ酢酸ナトリウム一水和物結晶の結晶水の水素が重水素で置換された非線形光学材料である好ましい態様とすることにより、p−ニトロフェノキシ酢酸ナトリウム一水和物結晶の結晶水の水素が重水素で置換された有機イオン結晶は吸収端波長が約410nmと比較的短波長である。従って波長840nm帯のAlGaAs系の半導体レーザや波長980nm帯のInGaAs系歪超格子構造を用いた半導体レーザの2次高調波を吸収する事なく波長変換素子用の結晶として有効である。さらに結晶水の水素を重水素に置換することにより波長0.7μm 〜1.1μm帯の近赤外〜赤外での光透過率を改善することができる。

0026

また、前記本発明のレーザ装置に於いて、非線形光学材料が、5−スルフォサリチル酸ジナトリウム三水和物結晶の結晶水の水素及び水酸基の水素が重水素で置換された非線形光学材料である好ましい態様とすることにより、5−スルフォサリチル酸ジナトリウム三水和物結晶の結晶水の水素及び水酸基の水素が重水素で置換された有機イオン結晶は吸収端波長が約370nmであり、より短波長の第2次高調波発生に有効である。

0027

以下実施例を用いて本発明を説明する。有機イオン結晶ではイオン結合性の水素、水素結合性の水素、あるいは結晶水の水素が一般に通常の分子結晶より多く存在する。これらの水素は、分子振動や回転等により2μm 以上の波長域に強い赤外吸収を起こす。この分子振動や回転等の高次モードよる赤外吸収が、波長変換に利用する1μm 帯の近赤外〜赤外光の波長と一致するため通常の有機イオン結晶を波長変換素子に利用しても基本波光の透過率が大きくならず、その結果高効率な波長変換素子を備えたレーザ装置を実現できない。これらイオン結合性の水素、水素結合性の水素、結晶水は共有結結合している水素とは異なり重水(D2 O)、重メタノール(CH3OD)、重エタノール(C2 H5 OD)、重アセトン(CD3 COCD3 )、等の水素結合性の重水素、またはケトン基あるいはニトロ基のとなりの炭素に結合した解離可能な重水素を含む溶媒中で再結晶を繰り返すことで簡単に重水素と置換できる。

0028

非線形光学材料としては2次の非線形光学効果を示し、芳香環及び金属イオンを含む有機イオン結晶であり、イオン結合性の水素、水素結合性水素、または結晶水の水素の少なくとも1種を重水素で置換した材料である。金属イオン、好ましくは解離度の大きな金属(イオン化エネルギーの小さな金属)イオンを含む有機イオン結晶を用いることにより(1)アミン塩より強固なイオン結合を導入する事が可能となり、さらに(2)結晶の密度を大きくすることが可能となり、比較的良好な熱伝導を有する波長変換用素子を作製できる。

0029

解離度の大きな金属イオンとしてはアルカリ金属イオンアルカリ土類金属イオン、貴土類金属イオンなどが望ましい。また結晶密度を大きくするためには鉛イオンビスマスイオン、貴土類金属イオン等が望ましい。従って波長変換用素子にレーザ光を集光しても、それによる温度上昇が小さく、素子の温度変化による位相整合のずれ、変換効率の低下等の問題が起こりにくい。

0030

また芳香環を有する非線形光学材料を用いることにより芳香環のπ電子による大きな非線形光学特性を利用する事が可能となる。ここで適度の非線形光学定数の大きさと発生する高調波の波長より小さな吸収端波長を有した材料を得るため、芳香環としてはベンゼン環フラン環オキサゾール環等の単環で共役長が短いものがよく、強すぎない適当な強度の電子ドナー置換基電子アクセプター性置換基を有していることが望ましい。

0031

非線形光学材料としてより望ましくはナトリウムp−ニトロフェノラート二水和物(化1)の結晶水の水素を重水素化した有機イオン結晶、p−ニトロフェノキシ酢酸ナトリウム一水和物(化2)結晶の結晶水の水素が重水素で置換された有機イオン結晶または5−スルフォサリチル酸ジナトリウム三水和物(化3)結晶の結晶水及び水酸基の水素が重水素で置換された有機イオン結晶である。

0032

0033

0034

0035

有機イオン結晶の結晶水の水素を重水素に置換するには、これらの有機イオン結晶を、例えば、重水中で再結晶する事で可能である。重水置換率の向上のためには、これらの有機イオン結晶を加熱および/または真空下に放置して結晶水をできるだけ取り除いた後、重水で数回再結晶する事により重水置換率を向上する事が出来る。加熱温度真空度や有機イオン結晶の種類によって異なるので一概に規定できないが、例えば、特に限定するものではないが100℃以上が好ましく、その化合物の分解温度以下で行う。真空としては特に限定はなく、真空度が高ければ高い程結晶水が効率良く除去される。通常は、容易に入手できる真空装置能力上からは10-6Torr程度までの真空が用いられる。

0036

波長変換素子の作製のためは上記有機イオン結晶の結晶を成長し、位相整合方向に切断する。次に光の散乱や反射を防ぐため研磨及びコーティングを行なう。有機イオン結晶は通常の分子結晶比べて比較的硬いため切断や研磨を容易に行なうことができる。コーティングは特に限定するものではなが例えばSiO2 ,TiO2 ,MgF2 等の誘電体膜多層コート通常用いられる。直接コーティング処理を行なう代わりに基本波及び高調波が透過し易いように無反射コートした光学ガラスマッチング液樹脂を介して接着してもよい。これらのマッチング液や樹脂としては屈折率が本発明の非線形光学材料に近いものから選択すればよく、例えばマッチング液としては1−ブロモナフタレンが、樹脂としてはエポキシ系の樹脂等が用いられる。

0037

この様に作成した素子を、半導体レーザと固体レーザ媒質と光共振器と波長変換素子を構成要素とするレーザ装置(内部共振器型)、又は半導体レーザと光共振器と波長変換素子を構成要素とするレーザ装置(外部共振器型)において、前記波長変換素子を用いることにより高効率な波長変換素子を備えたレーザ装置となる。この時、通常の分子結晶を用いた場合問題となる熱の問題を解決することが可能である。これは有機イオン結晶、特に解離度の大きな金属(イオン化エネルギーの小さな金属)イオンを含む有機イオン結晶、では分子間が強固なイオン結合で結合しているため結晶の硬度が大きくなること、イオン結晶中の金属イオンにより結晶密度が大きくなること、の2つの効果により熱伝導が分子結晶より大きくなるためである。通常の分子結晶を波長変換素子として用いた場合、結晶の一部に集光した基本波により部分的な温度上昇がおこり位相整合条件(結晶中で基本波と高調波が同じ位相速度で進む条件)が崩れる。そのため基本波の強度が大きくなっても変換効率が向上しないという問題を金属イオンを含む有機イオン結晶用いることにより回避する事が出来、その結果高効率な波長変換素子を備えたレーザ装置となる。

0038

以下具体的実施例を用いてさらに詳細に説明する。
実施例1
ナトリウムp−ニトロフェノラート二水和物として東京化成工業(株)製試薬(4−ニトロフェノールナトリウム二水和物として販売されているもの)をメタノールにより再結晶精製を3回繰り返し単結晶を得た。これを試料1とする。この試料1についての熱重量測定を行った。昇温速度は10℃/分で、室温から600℃まで測定した。温度約100℃から約170℃の範囲で全重量の18.5%が失われた。これは結晶に対する結晶水の重量比18.3%とよく一致することから、この温度範囲で結晶中の結晶水がすべて失われたと考えられる。

0039

試料1を30.0g、メノウ乳鉢を用いよく粉砕した後、ナス型フラスコに入れ、結晶水を取り除くため、約200℃の油浴を用いて加熱した。加熱は試料をかき混ぜながら行った。試料の結晶水が失われ、色が黄色から赤色に変わりきった時点から約30分後、ナス型フラスコ内の口に三方コックを取り付け、空気を10-3Torrの真空に排気した。その間、約200℃の油浴による加熱は続けられ、結晶水をほとんど取り除いた。

0040

その後、空気の排気を続けながら、試料を室温下で放冷した。試料が室温付近まで冷却された後、ナス型フラスコ内に窒素ガスを導入し約1気圧に保った。その後、試料を約40℃に保ち、三方コックの一方から窒素ガスを吹き込みながら、もう一方から注射器を用いて重水(D2 O)を少しずつ加えていった。270ml加えたところ、試料は完全に溶解し、オレンジ色の溶液となった。その間試料溶液は約40℃に保った。その後、フラスコを空気が入らないように密栓し、溶液を冷却した。十分冷却したところ、黄色の結晶が析出した。この再結晶操作は、試料1の結晶水の水素原子重水素原子と置きかえるために行なったものである。結晶を風乾し試料2とし、重量を測定したところ、28.2gであった。

0041

なお、NMRスペクトル核磁気共鳴スペクトル)の測定より、結晶水の水素が重水素への置換率は96%であった。試料2の粉末に対して、ジャーナルオブアプライフィジックス39(1968年)第3798頁に記載されている、クルツ(Kurtz)の方法にしたがって、粉末法によって第2次高調波発生(SHG)を測定した。試料はメノウ乳鉢により粉砕して用い、光源にはNd:YAGレーザー(波長1064nm)を用いた。SHG強度は、尿素の値の約10倍となり、優れた非線形光学特性が観測された。

0042

次に試料2を11.5g、メタノール−d(CH3OD)60ccに40℃で溶解し飽和溶液を調製した。この飽和溶液より温度降下法により結晶育成を行なった。育成開始温度は40℃で1日に1℃〜2℃ずつ徐冷した。約10日間で15mm×10mm×7mmの大きな光学的に良好な結晶(試料3)が得られた。なお、育成中、結晶を含んだ溶液は、空気中の水分子の影響を避けるため、窒素雰囲気下に保った。

0043

試料3のビッカース硬度を測定したところ、34という大きな値であった。この値は、例えば代表的な非線形光学特性を有する分子結晶2−(N−プロリノール)−5−ニトロピリジン(PNP)結晶のビッカース硬度16の約2倍、尿素結晶のビッカース硬度9の3倍以上である。また試料3の吸収端波長は、分光光度計を用い透過法により測定した結果、約515nmであった。

0044

なお、本実施例の結晶育成は温度降下法によったが、溶媒蒸発法すなわち、結晶を溶解した溶液の溶媒をゆっくりと蒸発させて、結晶を析出、成長させる方法を用いてもよい。

0045

図1を用いて本発明によるレーザ装置の説明を行なう。図1は本発明のレーザ装置の概略を示す図であり、10は半導体レーザ、11は半導体レーザ光を集光するためのレンズ系、12はNd:YAG結晶、13は光波長変換素子、14は出力ミラー、16は第2次高調波を示す。本実施例ではNd:YAG結晶12の半導体レーザ側端面とミラー14の凹面との間で光共振器15が構成されている。前記光波長変換素子13は、波長1064nmと532nmの両方の波長の光が透過しやすいように無反射コートした光学ガラスをマッチング液(この場合は1−ブロモナフタレン)または樹脂(例えばエポキシ系樹脂)を介して本発明のナトリウムp−ニトロフェノラート二水和物の結晶水の水素を重水で置換した結晶(試料3より位相整合方向に切り出した結晶、厚み1〜5mm)に張り付けた構成の波長変換素子を用いた。

0046

なお、ミラー14の表面は波長1064nmの基本波は反射、波長変換された532nmの光は透過する事ができる誘電体多層膜が形成されている。またNd:YAG結晶12の端面(レンズ系11側の面)には、10の半導体レーザからの励起光(808nm)の光を透過し、波長1064nm及び第2次高調波の波長532nmの光は反射する誘電体多層膜が形成されている。半導体レーザ(波長808nm,出力1W)10を用いてNd:YAG結晶11を励起し、波長1064nmのレーザ光を発振させる。この時光共振器内では強力な基本波が光共振器内に励起されるため効率よく波長変換される。すなわち、波長1064nmのレーザ光は、光波長変換素子13を通過することによりその一部が波長変換され、532nmの第2次高調波を発生する。これらのレーザ光はミラー14に到達し、波長変換されていない波長1064nmのレーザ光はミラー14の表面で反射されて光波長変換素子13を通過し、Nd:YAG結晶12の端面で反射され再び波長変換素子13を通過し、波長変換された532nmの第2次高調波はミラー14を通過し第2次高調波16として出力され、まだ波長変換されていない波長1064nmのレーザ光は再びミラー14で反射される工程が繰り返され、こうして何度か光波長変換素子13を通過し、波長変換された532nmの第2次高調波が第2次高調波16として出力される。

0047

図2に本発明のレーザ装置の出力特性を示す。図2はナトリウムp−ニトロフェノラート二水和物の結晶水の水素を重水で置換した結晶を用いた素子(結晶厚み2.2mm)を利用した場合の結果である。横軸励起用半導体レーザパワーを、縦軸は出力ミラー14から漏れ出た基本波パワーと波長変換されたSH光(第2次高調波)パワーを示す。基本波パワーは励起用の半導体レーザパワーに比例しており、SH光パワーは半導体レーザパワーの2乗にほぼ比例している。さらに半導体レーザパワー1Wの時、4mWという大きな強度の緑色のSH光を得た。図2中、21は基本波、22はSH波特性曲線を示す。

0048

なお、本実施例では無反射コートした光学ガラスとマッチングオイルとして1−ブロモナフタレンを介して無反射コート層を形成したが、有機結晶に直接無反射コート出来る材料があれば何れでも適用出来ることは無論である。

0049

比較例1
第2次高調波発生用結晶としての試料1を用いて成長した通常の結晶水(H2O)を含むナトリウムp−ニトロフェノラート二水和物結晶を用いた場合のレーザ装置の出力特性を図3に示す。図3中、31は基本波、32はSH光の特性曲線を示す。

0050

励起用半導体レーザパワー1Wの時、1mWのSH光パワーが得られたのみである。またミラー24から漏れ出た基本波パワーを比較すると、通常の結晶水を含む試料から作成した素子を用いた場合は1.6mWであり重水を結晶水とする結晶から作成した試料を用いた場合の基本波パワーの3.2mWの1/2の強度しか得られなかった。

0051

このことは、重水を含むナトリウムp−ニトロフェノラート二水和物の場合は基本波の透過率が大きいため、光共振器内での基本波パワーが通常の水を結晶水とするナトリウムp−ニトロフェノラート二水和物の場合に比べて2倍となったことを示している。

0052

図4にH2 O(42)とD2 O(41)の光透過スペクトル石英セル試料厚み10mm)を示す。波長1μm 帯(700nm以上)の近赤外〜赤外においてD2 Oの方がH2 Oより透過率が大きく、結晶水の水素を重水素で置換することにより基本波に対する光透過率が向上し高効率な波長変換素子を備えたレーザ装置を実現できたことがわかる。

0053

比較例2
通常の結晶水を含むナトリウムp−ニトロフェノラート二水和物結晶を用いた波長変換素子を備えたレーザ装置と分子結晶である3−メチル−4−ニトロピリジン−1−オキシド(POM)結晶を用いた波長変換素子を備えたレーザ装置の出力特性の比較を図5図6に示す。

0054

図6は分子結晶であるPOM結晶を用いた波長変換素子を備えたレーザ装置の出力特性を示したものである。図6中、61は基本波、62はSH波の特性曲線を示す。

0055

基本波パワーは励起用半導体レーザパワーに比例しているが、SH光パワーは励起用半導体レーザパワー(または基本波パワー)の2乗に比例せず、複雑な特性を示す。これは以下のように考えることが出来る。励起用半導体レーザパワーが小さい時に(半導体レーザパワーが50mW〜500mWくらいまで)には結晶の角度は完全に位相整合角と一致していないので大きなSH光パワーを得られない。励起用半導体レーザパワーが中程度の時(半導体レーザパワーが500mW〜800mWくらいまで)は基本波が素子に集光された結晶の温度が上昇し位相整合条件が満たされ始めるので比較的大きなSH光強度が得られる。しかしこの時も熱伝導の悪い分子結晶を用いているため結晶に温度勾配ができかつ温度勾配の大きさが励起用半導体レーザの出力により変化するので、SH光パワーは励起用半導体レーザパワー(または基本波パワー)の2乗には比例しない。さらに励起用半導体レーザパワーを大きくした時(半導体レーザパワーが900mW〜1000mWくらいまで)は、結晶の温度が上昇し位相整合条件からはずれて来るので、基本波パワーが大きくなってもSH光パワーは小さくなる。さらに励起用半導体レーザパワーが1000mWの時のSH光のビームパターンには乱れが観測され結晶内で位相整合条件が部分的崩れていることがわかった。なお、この出力特性は常に再現せず、室温やサンプル毎により違った特性を示した。しかし、いずれの場合もSH光パワーは基本波パワー(又は励起用半導体レーザパワー)の2乗には比例しなかった。

0056

図5は通常の結晶水を含むナトリウムp−ニトロフェノラート二水和物結晶を用いた波長変換素子を備えたレーザ装置の出力特性を示したものである(図3スケールを変えて書き直した図)。図5中、51は基本波、52はSH波の特性曲線を示す。

0057

基本波パワーは励起用半導体レーザパワーに比例しており、SH光パワーは励起用半導体レーザパワーの2乗に比例している。これは熱伝導のよい有機イオン結晶を波長変換素子として利用しているため結晶内で発生した熱が速やかに結晶表面に取り出され冷却されるため結晶の温度上昇が小さく位相整合条件が崩れないためである。

0058

表1に各種非線形光学材料と光学材料の熱伝導率をレーザフラッシュ法により測定した例を示す。従来よく知られている分子結晶(m−ニトロアニリン、尿素、メチル−(2、4−ジニトロフェニル)−アミノプロパネート(MAP)、3−メチル−4−ニトロピリジン−1−オキシド(POM))の熱伝導率は0.21(W・m-1・K-1)〜0.35(W・m-1・K-1)である。有機イオン結晶L−アルギニンフォスフェートモノハイドレート(LAP)は0.59(W・m-1・K-1),さらに金属イオンを含む有機イオン結晶(ニトロフェノキシ酢酸ナトリウム一水和物結晶、ナトリウムp−ニトロフェノレート二水和物結晶、スルフォサリチル酸ジナトリウム三水和物結晶)の熱伝導率は0.6〜0.85(W・m-1・K-1)であり通常の分子結晶の2から3倍の熱伝導度を示した。また金属イオンを含む有機イオン結晶のほうがアミン塩結晶(LAP)より大きな熱伝導率を示すことがわかる。これらの熱伝導率の値は通常光学素子に使用される光学ガラスのそれと同程度の値である。この結果は、光共振器中に金属イオンを含む有機イオン結晶よりなる波長変換素子を配置したとき熱による効果が観測されなっかたことをよく説明する。なお、重水素化した有機イオン結晶の熱伝導率は、重水素化しない通常の有機イオン結晶の熱伝導率とほぼ同じ値を示した。

0059

0060

実施例2
東京化成(株)製のp−ニトロフェノキシ酢酸0.986gを55mlに溶解した溶液と水酸化ナトリウム0.203gをエタノール10mlに溶解した溶液を混合することによって、淡黄色沈澱を得た。この沈澱を取り出し、自然乾燥させ、試料4を得た。

0061

試料4のCD3OD溶液の1 H−NMRスペクトル(テトラメチルシランピークを0ppmとする)には、4.5ppmにメチレン基プロトン数は2)に基ずくシグナルが、4.8ppmに結晶水分子(プロトン数は2)に基ずくシグナルが、7.0ppmにはベンゼン環に結合したo−位の水素(プロトン数は2)に基ずくシグナルが、8.1ppmにはベンゼン環に結合したm−位の水素(プロトン数は2)に基ずくシグナルが、積分強度比、1:1:1:1で認められることから、試料4は、p−ニトロフェノキシ酢酸もしくはその塩と水をモル比1:1で含むと考えられる。

0062

また試料4および東京化成(株)製のp−ニトロフェノキシ酢酸の透過法(KB錠剤法)による赤外吸収スペクトルをそれぞれ図7図8に示す。図8スペクトルにみられるカルボキシル基に由来する吸収(1780cm-1、1738cm-1、1708cm-1;それぞれ図8中においてE,F,Gで示した)は図7のスペクトルにはみられない。さらに図8のスペクトルにはみられないカルボキシレート基に由来する吸収(1635cm-1、1609cm-1;それぞれ図7中に於てA,Bで示した。)が図7のスペクトルにみられる。上記のNMRの結果も考慮すると、試料4はp−ニトロフェノキシ酢酸塩と水をモル比1:1で含むと考えられる。また、この場合塩の陽イオンとしてはナトリウムイオンしか考えられない。

0063

さらに、試料4のDSC示差走査熱分析チャートには、試料を室温から−50℃まで冷却しても水の凍結による発熱ピークはみられず、また試料を−50℃から室温まで加熱した場合も水の融解による吸熱ピークはみられなかった。このことより試料4に含まれる水は自由水ではなく結晶水であることがわかった。

0064

以上の結果より、試料4はp−ニトロフェノキシ酢酸ナトリウム一水和物である。試料4に対して、粉末法によって第2次高調波発生(SHG)を測定した。試料はメノウ乳鉢により粉末化して用い、光源にはNd:YAGレーザ(波長1064nm)を用いた。SHG強度は、尿素の値の約10倍となり、優れた非線形光学特性が観測された。

0065

試料4の粉末を水に40℃で溶解し飽和溶液を調製した。この飽和溶液より温度降下法により結晶育成を行なった。育成開始温度は40℃で1日に2℃ずつ徐冷した。約10日間で大きな、例えば、8mm×5mm×4mmの、結晶が得られた。この結晶を試料5とした。この結晶の吸収端波長は、分光光度計を用いて透過法により測定した結果、約410nmであった。

0066

なお、本実施例の結晶育成は温度降下法によったが、溶媒蒸発法を用いてもよい。p−ニトロフェノキシ酢酸ナトリウム一水和物の結晶水の重水化について述べる。

0067

以下の操作のうち、ナス型フラスコ内を空気排気下、窒素雰囲気下の状態置くの操作は、空気中の水分の影響、例えば重水分のHとDの交換反応、を避けるためにおこなった。

0068

試料4と同様にして合成された試料を30.0g、メノウを用いてよく粉砕した後、ナス型フラスコに入れ、ナス型フラスコの口に三方コックを取り付け、ナス型フラスコ内の空気を排気して、室温の窒素ガスを導入し約1気圧に保った。その後、試料を約50℃に保ち、三方コックの一方から室温の窒素ガスを吹き込みながら、もう一方から注射器を用いて重水を少しずつ加えていった。約60ml加えたところ、試料は完全に溶解し淡黄色溶液となった。その間試料溶液は約50℃に保たれた。その後、フラスコに空気が入らないように密栓し、溶液を放冷したところ、淡黄色結晶が析出した。析出した結晶を乾燥窒素雰囲気で乾燥した。以上の重水化の操作を3回繰り返し重水化試料を作製した。この再結晶操作は、試料4の結晶水の水素を重水素に置き換えるために行ったものである。得られた粉末試料について粉末法を用いてSHGを測定した。重水化していない試料4と同程度の尿素の約10倍のSHG強度を示した。

0069

この試料の粉末を重水に40℃で溶解し飽和溶液を調整した。結晶成長温度は40℃で1日に0.2℃〜2℃ずつ徐冷した。約10日間で10mm×4mm×4mmの結晶を得た。この結晶を試料6とした。得られた試料の結晶水の重水化率はNMRの測定より91%であった。またこの結晶の吸収端波長は、分光光度計を用いて透過法により測定した結果、約410nmであった。

0070

なお実施例1と同様に、真空・加熱により結晶水を除去した後に重水中で再結晶する事により、少ない再結晶の回数で結晶水の重水化率を向上出来る。次に試料5(p−ニトロフェノキシ酢酸ナトリウム一水和物結晶)、試料6(p−ニトロフェノキシ酢酸ナトリウム一水和物の結晶水を重水で置換した結晶)より波長1064nmで位相整合する角度に結晶を切り出した。さらに実施例1と同様に結晶を研磨し、マッチングオイルを介して無反射コートした光学ガラスを結晶の両端面にはりつけて波長変換素子を作製した。これらの波長変換素子を実施例1と同様の装置の光共振器中に配置してレーザ装置とした。試料6より作製した波長変換素子を用いた場合、半導体レーザパワー1Wの時4mWという大きな第2次高調波出力を得た。

0071

試料5より作製した波長変換素子を用いた場合、半導体レーザパワー1Wの時0.4mWの第2次高調波出力を得たのみである。
実施例3
まず実施例2と同様の操作により、試料5(p−ニトロフェノキシ酢酸ナトリウム一水和物結晶)、試料6(p−ニトロフェノキシ酢酸ナトリウム一水和物の結晶水を重水で置換した結晶)を作製した。次にこれらの試料が波長980nmで位相整合する事をパルス色素レーザを用いて確認した。そして試料5、試料6を波長980nmで位相整合する角度で切り出した。次に実施例1、実施例2と同様にして波長変換素子を作製した。この時、無反射コートは波長980nmと波長490nmの両方の波長の光が透過するように誘電体多層膜をコーティングした。

0072

次に図9を用いて本発明による外部共振器型の波長変換素子を備えたレーザ装置の説明を行う。基本波光源としては波長980nmのInGaAs系歪超格子構造を有した半導体レーザ90を用いた。また光共振器は2個の凹面ミラー92(92a、92b)及び1個の平面ミラ−91より構成されるリング共振器となっている。ここで凹面ミラー92のうちで入力側のミラー92a及び平面ミラー91には波長980nm及び490nmの光が反射する誘電体多層膜のコーティングが施されている。また凹面ミラー92のうちで出力側のミラー92bには波長980nmの光は反射し490nmの光が透過する誘電体多層膜のコーティングが施されている。光波長変換素子93は表面に基本波である波長980nmの光及び第2次高調波の波長である490nmの光をを効率よく透過するように無反射コートを施した光学ガラス板をマッチング液等を介して挟み込んである。光源である半導体レーザ90の波長が2枚の凹面ミラー92及び平面ミラー91で構成されるリング共振器の共振波長と一致すると、半導体レーザ90からでた光は、この光共振器内に閉じこめられるため、共振器内での基本波(波長980nm)の光強度が増大し効率よく第2次高調波94(波長490nm)に変換される。すなわち、光波長変換素子93を通過して、第2次高調波(波長490nm)に変換された光は、出力側の凹面ミラー92bを通過し、第2次高調波94として出力し、第2次高調波(波長490nm)に変換されなかった基本波(波長980nm)の光は、出力側の凹面ミラー92bで反射され、更に平面ミラー91で反射され、次いで凹面ミラー92aで反射されて、再び、光波長変換素子93に入力される。そして第2次高調波(波長490nm)に変換された光は、出力側の凹面ミラー92bを通過して、第2次高調波94として出力し、第2次高調波(波長490nm)に変換されなかった基本波(波長980nm)の光は、再び出力側の凹面ミラー92bで反射され、前記と同様の操作が繰り返される事により、効率良く第2次高調波を取り出すことができる。。

0073

本構成のレーザ装置により基本波パワー100mWのとき第2次高調波2mWの出力を得た。また第2次高調波出力は基本波パワーの2乗に比例しており、SH光のビームパターンの乱れも観測されなっかた。

0074

重水素化しない試料から作製した波長変換素子を用いた場合、基本波パワー100mWの時第2次高調波として0. 5mWの出力を得たのみである。なお、半導体レーザ光の波長を安定化するため凹面ミラー92aからの反射戻り光を半導体レーザ90にフィードバックするする事や、出力ミラー92bから漏れでた基本波の出力をモニターし半導体レーザの電流を制御する事により安定した第2次高調波出力を得ることが出来る。

0075

さらに、基本波光源として980nmの半導体レーザ光を用いたが他の波長の半導体レーザ光源、例えば通常のAlGaAs系半導体レーザ光源、を用いてもよい。

0076

実施例4
5−スルフォサリチル酸ジナトリウム三水和物結晶の結晶水の水素及びイオン結合性(または水素結合性)の水酸基の水素を重水で置換した結晶を波長変換素子に用いたレーザ装置について以下に説明する。

0077

東京化成(株)製5−スルフォサリチル酸二水和物0.969gを10mlの純水に溶解した。次に水酸化ナトリウム0.305gを5mlの純水に溶解した。これら2種類の溶液を混合しさらに5mlの純水を加え、60℃に加熱・撹拌しながら2時間反応させた。この溶液を約10℃で1日放置して5−スルフォサリチル酸ジナトリウム三水和物結晶の無色粉末結晶を0.523g得た(試料7)。この粉末結晶をメノウ鉢で細かく粉砕し、粉末法によりSHG強度を測定したところ、尿素と同程度のSHG強度を示した。

0078

次に5−スルフォサリチル酸ジナトリウム三水和物結晶の結晶水の水素及びイオン結合性(または水素結合性)の水素である水酸基の水素を重水で置換した材料について示す。

0079

東京化成(株)製5−スルフォサリチル酸二水和物0.969gを10mlの純水に溶解した。次に水酸化ナトリウム0.305gを5mlの重水に溶解した。これら2種類の溶液を混合しさらに5mlの重水を加え、60℃に加熱・撹拌しながら2時間反応させた。この溶液を約10℃で1日放置して5−スルフォサリチル酸ジナトリウム三水和物結晶の無色粉末結晶を0.483g得た。

0080

次にこの試料を重水で3回再結晶し目的の5−スルフォサリチル酸ジナトリウム三水和物結晶の重水素化試料(試料8)とした。試料8の粉末結晶をメノウ鉢で細かく粉砕し、粉末法によりSHG強度を測定したところ、尿素と同程度のSHG強度を示した。また1 H−NMRにより結晶水及び5−スルフォサリチル酸の水酸基の水素の重水素への置換率はともに約92%であった。なおこの重水化のプロセスは乾燥窒素を満たしたグローブボックッス中で行ったが、実施例1、実施例2と同様の方法でもよい。

0081

次に試料8と同様にして合成された試料30.0gをメノウ鉢を用いてよく粉砕した後この粉末を重水に40℃で溶解し飽和溶液を調整した。結晶成長温度は40℃で1日に0.2℃〜2℃ずつ徐冷した。約20日間で20mm×13mm×33mmの非常に大型の無色透明の結晶を得た。

0082

この結晶より波長1064nmに位相整合する角度に結晶を切り出し、実施例1、実施例2と同様に波長変換素子を作製した。この波長変換素子を図1と同様の内部共振器型レーザ装置に組み込んで使用した。

0083

本実施例では励起用半導体レーザとして波長808nm,励起出力3Wのものを用いた以外は実施例1と同様の構成である。励起用半導体レーザパワー3Wの時2mWのSH光パワーが得られた。この時、SH光は励起半導体レーザパワー及び基本波パワーの2乗に比例していた。さらに熱の影響と考えられるビームパターンの乱れは観測されなっかた。

0084

試料7と同様にして合成された試料30.0gを用いて5−スルフォサリチル酸ジナトリウム三水和物の結晶(大きさ25mm×15mm×40mm)を20日間で合成した。この結晶より波長1064nmに位相整合する角度に結晶を切り出し、波長変換素子を作製した。励起用半導体半導体レーザパワー3Wの時0.3mWのSH光強度が得られたのみであった。なおこの時もSH光は励起半導体レーザパワー及び基本波パワーに比例していた。さらに熱の影響と考えられるビームパターンの乱れは観測されなっかた。

0085

なお本実施例では第2次高調波発生についての例を示したが、光和周波発生光差周波発生の場合でも本発明を用いることが出来る。又実施例では固体レーザ媒質としてNd:YAGを用いたが、他のレーザ、例えばNd:YVO4 、Ti:Al2 O3 、Nd:LiYF4 、LiNdP4 O12、Cr:LiCaAlF6、Cr:LiSrAlF6 等を用いてもよい。

発明の効果

0086

本発明は、効率良く第2次高調波を取り出すことの出来るレーザ装置を提供できる。

0087

また、前記本発明のレーザ装置に於いて、非線形光学材料が、前記非線形光学材料を構成する有機イオン結晶の結晶水を、加熱下および/または真空下に放置する事により除去し、次いでイオン結合性の重水素、水素結合性の重水素または重水の少なくとも1種を含む溶媒で再結晶させることにより重水素置換された有機イオン結晶からなる非線形光学材料である好ましい態様とすることにより、より効率良く第2次高調波を取り出すことの出来るレーザ装置を提供できる。

0088

また、前記本発明のレーザ装置に於いて、非線形光学材料が、ナトリウムp−ニトロフェノラート二水和物結晶の結晶水の水素が重水素で置換された非線形光学材料である好ましい態様とすることにより、低パワーの半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ光やNd:YVO4レーザ光の波長変換にも適した効率良く第2次高調波を取り出すことの出来るレーザ装置を提供できる。

0089

また、前記本発明のレーザ装置に於いて、非線形光学材料が、p−ニトロフェノキシ酢酸ナトリウム一水和物結晶の結晶水の水素が重水素で置換された非線形光学材料である好ましい態様とすることにより、波長840nm帯のAlGaAs系の半導体レーザや波長980nm帯のInGaAs系歪超格子構造を用いた半導体レーザに於いても2次高調波を吸収する事なく効率良く第2次高調波を取り出すことの出来るレーザ装置を提供できる。

0090

また、前記本発明のレーザ装置に於いて、非線形光学材料が、5−スルフォサリチル酸ジナトリウム三水和物結晶の結晶水の水素及び水酸基の水素が重水素で置換された非線形光学材料である好ましい態様とすることにより、さらに短波長の第2次高調波発生にも有効で、効率良く第2次高調波を取り出すことの出来るレーザ装置を提供できる。

図面の簡単な説明

0091

図1本発明の一実施例のレーザ装置の概略を示す図である。
図2本発明の実施例1におけるレーザ装置の出力特性を示す図である。
図3本発明の比較例1におけるレーザ装置の出力特性を示す図である。
図4H2 OおよびD2 Oの光透過スペクトルを示す図である。
図5本発明の比較例2におけるレーザ装置の出力特性を示す図である。
図6本発明の比較例2におけるレーザ装置の出力特性を示す図である。
図7p−ニトロフェノキシ酢酸ナトリウム一水和物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図8p−ニトロフェノキシ酢酸の赤外吸収スペクトルを示す図である。
図9本発明の別の一実施例のレーザ装置の概略を示す図である。

--

0092

13、93光波長変換素子
11レンズ系
12 Nd:YAG結晶
14出力ミラー
15光共振器
91平面ミラー
92、92a、92b凹面ミラー
10、90半導体レーザ
16、94 第2次高調波
21、31、51、61基本波
22、32、52、62 SH波

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