遺伝子情報利用・ゲノム編集

個人差による薬の副作用の解消

最終更新日:2017/07/04

推定市場規模
450億ドル

 これまで医療は疾患中心であり、その状態は個々人で千差万別であるため、同じ病気であっても同じ治療法を適用することが必ずしも正しくない場合があった。
しかし、近年急速にDNA配列の解読や個々人で異なる一塩基多型 (SNP) の特定、DNAマイクロアレイなどによる大量情報処理技術が発達した。これらの情報を利用したテーラーメイド医療として、患者ごとの遺伝子情報や生活習慣から得た情報に基づいて処方し、個々人に適切な治療が施されるため、薬の副作用を減らし、治療効果を最大化するとともに、医療コストの削減がなされると期待されている。
 また、Jain PharmaBiotech調べによる世界市場規模は2019年には450億ドルにのぼると予想されており、個別化医療の進展は、薬剤の有効性・安全性向上や予防医療の推進による患者 QOLの向上、効率的医療による医療費の削減といった課題への光明といえる。

未来への変化の兆し

  • 治療効果の最適化

     ゲノム分野の発展に伴い患者の個人差に配慮した「テーラーメード医療」を目的としたDNAセンシングデバイスの開発が以前より推進されてきた。 しかし従来から活用されている無機半導体を用いた場合、デバイスの微細化を試みると応答感度(強度・応答速度など)が減少するという問題があった。

     早稲田大学から有機単分子膜を利用した新たなデバイス構造が提案されている。 これは有機単分子膜を形成したディスク基板に生体物質を結合させ磁気・光磁気によるスキャンで二次元検出を行い、種々のサンプルを簡便かつ同時計測を可能とする。
     つまりオンチップで簡便かつ高感度なDNAセンシングが可能となり、今後のテーラーメード医療に有効であると期待されているのである。

     これまで、バイオセンシングの分野はその大きな可能性と共に前述のようあ精度・安定性の問題や導入コストの問題があり、なかなか一般的な医療へと普及しえなかった。
     近年急速に改善された新たな技術によって、こうした問題を解決し、世界中の患者によりフィットした医療が実現しつつある。 治療効果の最適化
  • 医療費の節約

     従来の医療ではある疾患に対しての処方は規定通りのものが行われ、患者ごとの生活習慣や病歴、体質などを含めた最適化した処方とは言いづらい状況にあった。
     しかし技術の向上によりこれからは遺伝子情報・生活習慣・病歴などに基づき患者の個人差を踏まえた最適な治療を施すことで、過剰な分量の投薬無くなり医療費の削減につながることが期待されている。

     SAP・米スタンフォード大学医学部・ドイツ国立腫瘍医療センターは2014年にリアルタイム個別化医療を推し進めるため「SAP HANAヘルスケア・プラットフォーム」をそれまでの研究フェーズから臨床のフェーズへと動き始めた。
     これは研究者・病院・製薬会社・保険会社に対して患者の生体・生活習慣・診療のデータを提供することで病気の予防・治療を個人最適化する。疾患の状態に対して処方も細かく最適化できるため患者の健康状態をサポートしやすくなるものである。

     こうした研究は患者への治療最適化が促進されるだけでなく、患者の健康状態をリアルタイム分析することを可能にし、人種・居住地域ごとのゲノムのばらつきやパターン解析を推し進め、病気の予防や遺伝子が発病や症状に与える影響についての解明など、様々な分野に活用可能なものとして注目を浴びている。 医療費の節約
  • 遺伝子データによる個別がん医療

     大手製薬・化学薬品会社が多く存在し、それら企業の総資産額が1440億フラン(約17兆5847億円)とも言われるスイスでは、遺伝子解析データを元にした患者ごとに最適化した医薬品投与の研究について特に意欲的である。

     抗がん剤の製造・販売で世界のトップに立つスイス製薬大手のロシュやノバルティスはすでに、個別化医療をビジネスモデルに取り入れており、現在臨床試験の最終段階にある同社の抗がん剤の約7割が、遺伝子診断法を使った治療に使えると取材に答えている。

     2015年6月には米国国立がん研究所(NCI)の進める「NCI-Matchプログラム」にロシュ・ノバルティス両社が参加し、米国2,400カ所の医療施設の協力を得て大規模な臨床実験プログラムが行われた。個別のがんと最適な治療薬をマッチさせることを目的としている。
     高い技術力を持つわりに、米国に比べて十分な投資環境があるとは言えなかった欧州のこうした技術について、今後の投資や米国などとも連動したデータ収集が進むことで、効果的に個別最適されたがん医療の形が見えてくるかもしれない。 遺伝子データによる個別がん医療
  • アレルギーの原因を遺伝子編集で取り除く

     医療における個人差にも様々な種類があるが、その中でも「食品アレルギー」による悩みを抱える人は多い。
    卵や小麦粉など、間違って摂取した場合人によっては命を落とす危険性を孕んでいる。
    現在、こうした課題に対して「原因となる成分をゲノム編集によって取り除く」という試みが進みつつある。

     食物アレルギーの代表格ともいえる「卵アレルギー」は「オボムコイド」という物質が原因と言われているが、この物質を予め取り除いたニワトリが誕生したという報告が、イギリス科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。

     産業技術総合研究所と農業食品産業技術総合研究機構が行った研究では、産卵後の鶏卵から精子の基となる始発生殖細胞という遺伝子を取り出しゲノム編集を行う。それをニワトリの卵に移植しふ化をさせることで、アレルギーを起こす原因であるオボムコイドを持たないニワトリが生まれたという。
     また、このゲノム編集を行った雄と、行っていない雌を交配させ生まれた子どもも、父親同様にオボムコイド遺伝子が無いという結果が出ており、さらに交配を進めてもオボムコイド遺伝子を受け継ぐ子供は生まれなかった。

     いまだ研究成果の初期段階ではあるが、この研究を更に進めることで患者のアレルギーを起こしにくいワクチンや医薬品を、卵を使って作ることが可能になってくることを目指しているという。

     現在の治療法は、ある程度均一化されたものが多く、そのため患者によっては治療効果が無かったり、逆に副作用に悩まされるなどの課題があったが、こうしたゲノム編集のアプローチを応用することで、より患者の状況に即した治療法の確立が見込めるかもしれない アレルギーの原因を遺伝子編集で取り除く

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