ナノテクノロジー・非侵襲手術

治療における痛みの軽減

最終更新日:2016/06/14

推定市場規模
約200億ドル

 外科手術などによって人体を切開したり、人体の一部を切除する施術において、患者には耐え難い痛みが生じうる。また、悪性腫瘍の増殖を抑えるために、抗がん剤を投与すると、副作用として吐き気や脱毛などが発症する。
これに対して、麻酔などによって感覚をなくすことがあるが、体質によっては使うと危険な場合があり注意を要する。
 このような痛みは患者のQOLを著しく低下するため、身体への侵襲が少なく痛みのない治療法が望まれており、血液中を巡り病気を見つけ次第リ治療に当たるナノマシンなどの研究が進んでいる。
 この市場はWinterGreen Research, Inc.の世界市場規模調査によると、2012年で32億ドルと試算され、2019年には約6倍となる約200億ドルに拡大すると予想されている。

未来への変化の兆し

  • 小型カプセル内視鏡

     内視鏡検査は食道癌や胃癌等の発見に有用な手段として広く活用されているが、現在はチューブ状の内視鏡を口腔内に挿入するという手段のため、処置時に息苦しさや嘔吐感などの苦痛を伴う。
     現在、カプセル型の内視鏡の実用化に向けた動きがある。これは内視鏡を内蔵したカプセルを飲むという内服液のような手法を用い、患者の負担を軽くし必要な体内の情報を得るやり方だ。

     2001年Given Imaging社で開発された小腸カプセルによって「カプセル内視鏡」という技術が大きく実用化に向けて動き出した。これは約2cm程度のカプセルを患者が飲むことで体内の全長6~7mに及ぶ小腸内を痛みや違和感を伴う事無く検査が行えることで注目を浴びた。
     小腸は胃や大腸と違いチューブを体内に入れるという従来の手法では届きにくい場所にあり、X線診断などに頼らざるを得ず簡易な検査が行えなかった。
    更に、この飲み込んだカプセルは万が一排泄されず体内に残った場合にも100~200時間で自然崩壊し、人体に影響がないことが実証されている。

     このように無痛かつ簡易な検査や治療法が実用化することで、早期に適切な治療が可能となる。また安価な検査・治療であれば途上国でも広く使用することが出来るだろう。 小型カプセル内視鏡
  • 血管内を泳ぐロボット

     従来の外科手術においては麻酔技術の向上により感覚を無くす研究も行われているが、患者の体質によってはそもそも麻酔自体の使用が難しいケースもある。
     そこでわずか髪の毛数本分の太さのロボットを血管内に挿入し、施術を行うという手法が注目されている。

     生体分子で組み立てる「分子ロボット」は人工細胞であり、血液中を泳いで移動し患部にたどり着くと医療行為を行うことを想定し研究が進んでいる。
     DNAによる信号処理によってロボットの動きを制御し、患部をピンポイントに処置する事で薬の服用時のような副作用などの悪影響も抑えることができ早期発見・治療が可能となる。
     東京工業大学等の研究室では生体高分子から人工細胞や分子ロボットを作る方法論の構築を行おこなっており、東京大学ではナノマシンと呼ばれる血液中を泳ぎ病気を検出しだい治療に当たるといった研究も進んでいる。

     これらが実用化されれば患部の観察、撮影に留まらず遠隔操作によってその場で適切な手術を行い、動脈拡張や損傷細胞の修復なども可能になると考えられている。 血管内を泳ぐロボット
  • 手術時の負担を軽減する

     近年では、切開や穿刺を極力少なくする低侵襲型の手術も増加傾向にあるが、その際のモニタリングにおいては血管カテーテルの挿入などが行えず、血液循環状況の正確な把握などが難しかった。
     しかし、非侵襲且つ従来よりも正確な状況把握が可能な技術の研究が進むことでこうした問題を解決できるかもしれない。

     エドワーズライフサイエンス社が2015年秋に発売した製品では、センサー付きのカフを指に巻くだけで心拍出量などの測定が可能であり、従来の血管カテーテルの挿入による測定と比べて遜色のない性能があるという。

     心拍出量は、手術中の患者の「循環管理」における指標の1つに過ぎないが、今後こうした非侵襲型の循環管理技術が充実することで、従来よりもより正確に、そして身体への負担が少ない医療が可能になるかもしれない。 手術時の負担を軽減する
  • 異物の排出に小型ロボットを使う

     米国では小さな子どもなどがボタン電池を誤って飲みこむ事故が年間3500件発生しているという。
    一旦体内に入り込んだ異物を摘出するのは難しく、吐き出せずに放置すればそのまま人体に悪影響を及ぼす原因ともなりうる。

     米国マサチューセッツ工科大学(MIT)、英国シェフィールド大学、東京工業大学の共同研究チームが開発するのは、上記のような状況の時に小型のロボットを飲み込み、そのロボットが体内で異物を排出させるために働く「Ingestible origami robot」と呼ばれるものだ。

     薬のようにカプセルの中にこのロボットを入れ、飲み込むと胃の中でカプセルが溶け、ロボットが磁場の変化を頼りに移動し、異物を体外へ排出するためのサポートを行うという。
     今後はこのロボットにセンサーを取り付けることで、磁場の変化に頼らず自律運動するタイプなどの研究を進める予定だ。

     技術の発達によって体内で移動し治療を施す小型ロボットの研究は世界中で進んでおり、今後こうした技術の実用化が待たれている。 異物の排出に小型ロボットを使う

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