心理状態の可視化、夢の記録・解析

精神の不安による疾患を克服

最終更新日:2017/01/25

推定市場規模
4.5兆円

 高齢化やストレス社会を背景に、精神疾患者数は近年増加しており、WHOによると世界で4.5億人にのぼるという。日本では、精神疾患のために1か月以上休業している国民が約47万人おり、10年を超えて長期に入院する患者がいるとの報告もある。また、精神疾患は、生活に支障をきたしたすのみならず、自殺にまで及ぶこともあり、世界では毎年80万人以上が自殺により亡くなっている。
 ところが、精神疾患は、一般的な検査では検知しづらく、抗精神薬の副作用や過剰な服用の問題などが存在している。そのため、精神疾患の早期発見や適切な治療法の開発、あるいは病院のみならず地域的な支援体制の構築が望まれている。
 この精神疾患の治療という分野での市場規模は、2015年に発表された「2015年 世界の精神神経薬市場」において日米欧合算で既に4.5兆円規模とも言われている。

未来への変化の兆し

  • 自己制御の発達

     人間は進化の過程で発達した前頭前野を活用し自己を制御する能力を獲得してきた。これにより複雑な社会環境に適応した行動を行うことが可能になったと考えられている。ところがこの能力にゆがみが生じると不安や感情をコントロールできなくなるといった事が起こりうる。そこでこの分野において患者の前頭前野の賦活量を客観的に可視化することで、自己制御を支援する試みが注目されている。
     
     2014年度日本認知科学会で「不快な感情の制御」は健全な社会機能・精神衛生を保つ上で必要とし、精神疾患等をもたない被験者に対して行った脳神経における不快情動の制御検証が発表された。ここでは不快な画像を見た際の前頭前野における不快情動の成分を明確にし、健常者が通常脳内で自己抑制する傾向を測定することができた。
     そして精神疾患を患っている人・いない人の不快情動の制御傾向を比較し、脳内の抑制ができていない成分を健常者の結果に寄せることで感情の抑制が可能になると結論付けられた。

     こうした研究はまだ成分や傾向を掴んだ程度の段階ではあるが、今後研究が進みこの成分自体をある程度コントロールする手段が実用化に至れば、投薬やカウンセリングが中心となっている精神疾患の患者に対し脳内の不快情動成分を操作するというアプローチの治療法が確立できると考えられている。 自己制御の発達
  • 脳活動の記録

     睡眠中にみた夢の内容を解読するという研究が進んでいる。
     この技術は今後解読精度の向上だけでなく、心理状態の可視化や精神疾患の診断など幅広い応用が期待されている。さらに脳に特定の周波数の電流刺激を与えることで睡眠中の脳に「これは夢である」と自覚させるといった研究もある。

     2013年4月、米科学誌サイエンスに国際電気通信基礎技術研究所が発表した内容は「睡眠中に見る夢の内容」を正答率約7割という精度で解読することに成功したというものだ。
     夢に出てきた物・生物・文字などを機能的磁気共鳴画像(fMRI)で脳のどの部位が活動しているかを記録し、脳画像だけで夢の内容を推測するプログラムである。
     これは目が覚めている時と睡眠中の脳活動バターンを比較し約7割の脳活動パターンが一致していることを把握した、そこから睡眠中の脳活動を記録すれば内容の約7割について解読する事ができるという結論に至っている。

     こうした研究は、詳細な精度については未だ課題も多く例えば脳画像から「女性」というデータが取得できてもそれが誰なのか?実際に被験者の知りあいなのか?などの情報までは取得できていない。
     今後こうした研究が更に精度高く解析できるように進み、その応用として精神疾患や記憶のトラウマを抱える患者への治療にも活用できると注目されている。 脳活動の記録
  • 双極性障害発症のメカニズム解明

     WHOの発表では、全世界で6,000万人が罹患していると推定される双極性障害(通称:躁うつ病など)は、薬物投与や精神療法など様々な治療法がある。
     しかし、実際には「なぜ発症するのか?」のメカニズムがいまだ解明されていない。
     それゆえ事前の予防が難しく、発症したかどうかを自分で気づける仕組みもない。

     2017年1月、藤田保健衛生大学、理化学研究所、日本医療研究開発機構の共同研究チームは双極性障害の発症に関連する遺伝子を発見したと発表した。
     コレステロールや青魚などに含まれる不飽和脂肪酸の代謝にも影響を与えるFADS遺伝子領域で、脂質代謝異常との関連性を初めて確認したという。
     患者約3,000人を含む6万人以上のゲノム(全遺伝情報)を比較し、病気のかかりやすさに影響する遺伝子塩基配列を90万か所以上分析した。

     今後、臨床研究が進めば発症メカニズムの解明に繋がり、また今回の「脂質異常との因果関係」について解明が進めば、食生活などを中心とした予防や、新しい治療効果も期待できるとしている。
     現在の抗精神病薬などによる治療は、再発率が高いなどまだ根本的な問題解決には至っていない。今後遺伝子研究が進むことで「再発リスクを減らす治療」などが可能になるかもしれない。 双極性障害発症のメカニズム解明

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