感覚再生・ブレインマシンインターフェース

感覚の不自由からの回復

最終更新日:2016/12/12

推定市場規模
10兆円

 人間が健康で生きていくには、五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)や平衡感覚・内臓感覚など数多くの感覚が重要となる。例えば視覚は、光が網膜上の感覚細胞に対する刺激となって生じる感覚により、外界にある物体の色や形、運動きなどについての情報が得られる。そのため、受容器がダメージを受けて損傷すると、対応する感覚が機能不全に陥ることになり、その治療・回復は極めて困難である。
 これに対して、近年では再生医療が発達し、損傷した感覚器を再生することだけでなく、感覚器を代替する半導体デバイスなどが実用化されれば、感覚障害の回復に加え、新しい感覚を体験できると期待されており、弊社独自の調査によると「五感センシング」分野における世界の市場規模は、2020年までに約10兆円にもなるとされている。

未来への変化の兆し

  • 感覚機能の障害を回復する

     高齢化社会の進行に伴い網膜色素変性症などの患者が急激に増えており、全世界で1000万人を超える人が失明している。このため東北大学等では人工網膜チップを眼球内の網膜部位に埋め込むことで視覚を再現させる研究がなされている。

     また2014年大阪大学では電極チップ「人工網膜」の植え込みによる視力の回復を図る臨床研究が行われ、2件の手術を完了し医療機器として国の承認を得ることを目標としている。

     これは電流が眼球内に埋め込まれた帰還電極に当たり、はね返った電流が網膜内の神経細胞を刺激し視覚野に情報を伝える仕組みだ。
     手術後の患者はCCDカメラを内蔵した眼鏡を装着し撮影された映像を体外の小型装置で電気信号に変換したのち側頭部に埋め込んだ受信機を通じて電極チップに伝えるものだ。

     こうした研究は現段階において実際の視力ほど色や細かな情報を判別できるほどの精度には至っていないが、今後研究が進むことで近い将来細かな文字も読めるほど鮮明な視覚が手に入ると期待されている。 感覚機能の障害を回復する
  • 臓器や組織を再生させる

     胎児期の発達異常や髄膜炎などにより内耳に病変があると、聴覚の諸機能の感度や精度が低下し感音難聴になることがある。従来補聴器や人工内耳のインプラントが適用されていたが、近年は内耳の感覚細胞の再生を効率的に誘導する技術開発が行われており注目を浴びている。

     内耳の聴覚と平衡機能を司る複雑かつ繊細な構造はこれまで多くの医療法でも困難を極めてきたため、再生医療においても薬剤・遺伝子や細胞をいかに局所にピンポイントで導入するかという大きな課題があった。
     そんな中2014年に京都大学医学部附属病院では当初内耳前臨床のモデルとしては小さすぎて不適切と考えられてきたマウスに対し、薬剤や遺伝子を最も困難とされていた細胞の導入にも成功を収めた。
     これにより蝸牛神経節に導入し神経突起の伸長を確認でき、再生医療の内耳への効果を実証した。

     上記のとおり、未だこうした分野は人体を使った臨床の段階には至っていない、しかし現段階において今後十分人間への適応も可能であると考えられているため、更なる研究が進んでいる。 臓器や組織を再生させる
  • 網膜変性症の原因遺伝子特定へ

     世界保健機関(WHO)が2014年8月に発表した内容によれば、世界には3,900万人の盲目患者がいると言われている。盲目の代表的な原因として、伝染病・白内障・緑内障・怪我・遺伝などが挙げられるが、原因の1つに網膜変性症という遺伝性の病気も挙げられる。

     これまでに網膜変性症の原因遺伝子は200以上特定されているが、発症した人の約半数は原因遺伝子が不明のままであった。しかしチェコのプラハ・カレル大学、カナダのマギル大学を含む研究グループが網膜変性症で新たな原因遺伝子変異を発見した。
     網膜変性症の1つ、オリバー・マクファーレン症候群のために盲目で小人症の少女の遺伝子変異が不明だったことから、子供の失明をもたらす遺伝性のレーバー先天性黒内障やオリバー・マクファーレン症候群を患う他の人の遺伝子との比較作業を行った。
     これにより、レーバー先天性黒内障とオリバー・マクファーレン症候群を含む網膜変性症を持つ家族で遺伝子の突然変異が見られることを突き止めた。
     これはレーバー先天性黒内障では20番目の関連遺伝子変異の発見、オリバー・マクファーレン症候群では世界ではじめての関連遺伝子変異の発見である。

     このように、網膜変性症の原因遺伝子は約半数の患者が不明のままであるため今後さらに研究が進展することで先天性失明患者を今まで以上に救えると考えられている。 網膜変性症の原因遺伝子特定へ
  • 人と機械との間で高速通信するインターフェース

     脳に埋め込むインプラント型デバイスを用い、人間とコンピューター間で情報をやりとりするBMI(ブレインマシンインターフェース)の研究は以前から実施されており、実験用の昆虫では脳に電極を埋め込み外部入力で動かす実験が成功しているが、未だ実現に向けては様々な技術革新を必要としている。

     米国防高等研究計画局(DARPA)が2016年1月に発表した「脳-機械インターフェースデバイス構想」は、こうした状況を前進させるきっかけになるかもしれない。
     このデバイスは、1立法センチメートルほどの大きさのデバイスを脳に埋め込み、100万ものニューロンと接続させることを目指している。
     そしてこれを実現するためには、神経科学、合成生物学、低電力電子工学、光通信学、医療機器の生産体制などあらゆる分野での技術が要求され、今回の発表に伴い投資家などのパートナーを集めると明言している。

     まだ試作機すら無い状態ではあるが、過去にはインターネット・GPSなど現在広く普及する技術基盤を生み出したDARPAが本格的な構想を発表したことで、今後この分野の急速な技術革新が進む期待が高まっている。 人と機械との間で高速通信するインターフェース
  • 幻肢痛の治療に使われる技術

     怪我や病気によって手や足を失ったあと、多くの患者が悩まされるのが「幻肢痛」。
     無いはずの手や足が痛むという症状は、実際にはその部位が失われているため、痛み止めの投薬や麻酔は当然効き目がない。
     いくつかの治療法が存在するが、効能は個人差があり決定的な治療法が確立されていない。

     大阪大学国際医工情報センターの栁澤講師をはじめとした研究グループは2016年10月にイギリスの科学誌Natureに、BMI(ブレイン・マシン・インターフェイス)技術を活用した義手を使った新たな訓練方法を開発し、幻肢痛患者がこのI義手を使うことで、痛みをコントロールできることを発表した。

     この義手は脳活動をセンサーで計測し、信号をプログラムに解読させることで、患者が念じたとおりに動く。
     実際には無い幻肢を動かすつもりで念じ、義手を動かすことに成功し、訓練に伴い痛みも変化することが明らかになった。
     これまで明らかになっていなかった「幻肢を動かすための脳活動を痛みの関係を探る重要な手がかり」と目されている。

     手や足を失った患者は、身体的な不自由さだけでなく、こうした幻肢痛に悩まされ社会生活への支障や痛みを和らげるための長期的な投薬が大きな問題となっており、
     今後この研究が進むことで、幻肢痛の治療方法として確立される可能性があるといえます。 幻肢痛の治療に使われる技術

現在集まっている公募課題

  • 発達中の脳での大麻使用とカンナビノイドの効果(海外)

    (原題:Effects of Cannabis Use and Cannabinoids on the Developing Brain (R21))
    This Funding Opportunity Announcement (FOA) encourages exploratory/developmental grant (R21) applications from institutions and organizations that propose to study the effects and functional consequences of cannabis and cannabinoid exposures on the developing brain, from pre-, peri-, post-natal development through young adulthood in animal models and humans. Topics of interest pertaining to this PA include, but are not limited to: molecular and cellular mechanisms of cannabis/cannabinoid effects on the developing brain; long term functional consequences of cannabis/cannabinoid exposure on learning and memory, cognitive and emotional development.

    • 公開日:2014/03/26
    • 報酬など$200,000
    • 状態:open

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